(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174495
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】装飾シート、装飾材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241210BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20241210BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20241210BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241210BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B32B27/00 E
E04F13/07 B
E04F13/08 G
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092349
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】出店 純香
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩一
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA57
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(57)【要約】
【課題】意匠性の低下を抑制することが可能な、装飾シートと装飾材を提供する。
【解決手段】装飾材10が、基板7と、基板7の一方の面に積層された装飾シート1を備え、装飾シート1が、基材層2と、骨材層3と、印刷模様層4と、表面保護層5を備え、骨材層3は、骨材層3の100質量%に対する混合比が5質量%以上15質量%以下の範囲内であるアクリル樹脂と、骨材層3の100質量%に対する混合比が85質量%以上95質量%以下の範囲内である無機フィラーの混合物を含み、骨材層3の厚さは、0.2mm以上4.0mm以下の範囲内であり、無機フィラーは、粒子径分布が50μm以上500μm以下の範囲内であるフィラーを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の一方の面に積層された骨材層と、
前記骨材層の前記基材層と対向する面と反対の面に積層された印刷模様層と、
前記印刷模様層の前記骨材層と対向する面と反対の面に積層された表面保護層と、を備え、
前記骨材層は、前記骨材層の100質量%に対する混合比が5質量%以上15質量%以下の範囲内であるアクリル樹脂と、前記骨材層の100質量%に対する混合比が85質量%以上95質量%以下の範囲内である無機フィラーと、の混合物を含み、
前記骨材層の厚さは、0.2mm以上4.0mm以下の範囲内であり、
前記無機フィラーは、粒子径分布が50μm以上500μm以下の範囲内であるフィラーを含む装飾シート。
【請求項2】
前記表面保護層の前記印刷模様層と対向する面と反対の面は、三次元表面粗さにおけるスキューネス(Ssk)が-0.5以上2.0以下の範囲内である請求項1に記載した装飾シート。
【請求項3】
前記骨材層と、前記印刷模様層と、前記表面保護層と、に、型押しによるエンボス加工が施されている請求項1に記載した装飾シート。
【請求項4】
前記アクリル樹脂のガラス転移点が、-40℃以上10℃以下の範囲内である請求項1に記載した装飾シート。
【請求項5】
前記表面保護層は、アクリル、フッ素、シリコーン、又は、前記アクリル、前記フッ素及び前記シリコーンのうち少なくとも二つを混合した混合物又は共重合物を主成分として形成されている請求項1に記載した装飾シート。
【請求項6】
前記表面保護層の厚さが、3μm以上10μm以下の範囲内である請求項1に記載した装飾シート。
【請求項7】
前記無機フィラーが含む成分のうち少なくとも一つが、水和物である請求項1に記載した装飾シート。
【請求項8】
前記印刷模様層は、エポキシ樹脂を主成分として形成され、且つ前記エポキシ樹脂の100質量%に対する混合比が15質量%以下の無機顔料を含む請求項1に記載した装飾シート。
【請求項9】
前記印刷模様層には、印刷により模様が形成され、
前記模様は、天然石材の柄を用いて形成した画像データを基にして作成された少なくとも三種類の異なるパターンから形成されている請求項1に記載した装飾シート。
【請求項10】
前記模様は、前記画像データを基にして作成された六種類以上の異なるパターンから形成されている請求項9に記載した装飾シート。
【請求項11】
前記印刷模様層は、インクジェット印刷により形成されている請求項1に記載した装飾シート。
【請求項12】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項11のうちいずれか1項に記載した装飾シートと、を備える装飾材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾シートと、装飾材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の壁面や床面を装飾する装飾材として、例えば、特許文献1に開示されている構成のものがある。特許文献1に開示されている構成の装飾材は、合成樹脂類と、骨材と、吸熱性物質とを含有するシート材と、シート材の一方の面に積層され、且つ無機系樹脂又は無機系ナノフィラーを添加した有機系樹脂を用いて形成された表面保護層を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている装飾材を含め、一般的な装飾材として、例えば、外観を石材調とした場合、シートに石目を印刷したものや、塗り壁材等が存在するが、これらの表装材は、あくまでも石材調であり、天然石材とは意匠が異なる。そのため、天然石材の雰囲気を表現する場合には、切り出した天然石材を用いて装飾シートや装飾材を形成する手法が考えられる。
しかしながら、天然石材を用いて装飾シートや装飾材を形成することは、重量等により困難である。また、天然石材を用いて装飾材を形成する場合、円柱等を形成する湾曲面への追従性が低下するため、装飾シートの表面(意匠面)に損傷が発生して、意匠性が低下する。したがって、意匠性の高い装飾シートや装飾材を形成することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点を鑑み、意匠性の低下を抑制することが可能な、装飾シートと装飾材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、基材層と、骨材層と、印刷模様層と、表面保護層とを備える装飾シートである。骨材層は、基材層の一方の面に積層された層である。印刷模様層は、骨材層の基材層と対向する面と反対の面に積層された層である。表面保護層は、印刷模様層の骨材層と対向する面と反対の面に積層された層である。そして、骨材層は、骨材層の100質量%に対する混合比が5質量%以上15質量%以下の範囲内であるアクリル樹脂と、骨材層の100質量%に対する混合比が85質量%以上95質量%以下の範囲内である無機フィラーとの混合物を含む。また、骨材層の厚さは、0.2mm以上4.0mm以下の範囲内である。さらに、無機フィラーは、粒子径分布が50μm以上500μm以下の範囲内であるフィラーを含む。
【0007】
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、基板と、基板の少なくとも一方の面に積層された装飾シートとを備える装飾材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、意匠性の低下を抑制することが可能な、装飾シートと装飾材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態における装飾シート及び装飾材の構成を示す断面図である。
【
図2】印刷模様層に形成されている模様の一例を示す図である。
【
図3】印刷模様層に形成されている模様の変形例を示す図である。
【
図4】第一実施形態の変形例における装飾シート及び装飾材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0011】
(第一実施形態)
以下、
図1を参照して、第一実施形態における装飾シート1の構成について説明する。
装飾シート1は、
図1に示すように、基材層2と、骨材層3と、印刷模様層4と、表面保護層5を備える。
【0012】
<基材層>
基材層2は、装飾シート1の基材となる層である。
第一実施形態では、一例として、基材層2の材料を、坪量が48[g/m2]のガラス不織布を用いた場合について説明する。
【0013】
<骨材層>
骨材層3は、基材層2の一方の面(
図1では、上側の面)に積層された層であり、アクリル樹脂と、無機フィラーとの混合物を含んでいる。
アクリル樹脂と無機フィラーとの混合物の坪量は、約2200[g/m
2]である。
【0014】
アクリル樹脂の、骨材層3の100質量[%]に対する混合比は、5質量[%]以上15質量[%]以下の範囲内である。
アクリル樹脂のガラス転移点は、-40[℃]以上10[℃]以下の範囲内である。
【0015】
無機フィラーの、骨材層3の100質量[%]に対する混合比は、85質量[%]以上95質量[%]以下の範囲内である。
また、無機フィラーは、粒子径分布(平均粒子径分布)が50[μm]以上500[μm]以下の範囲内であるフィラーを含む。
【0016】
また、無機フィラーが含む成分のうち少なくとも一つは、水和物である。
第一実施形態では、一例として、無機フィラーが含む成分を、炭酸カルシウムと、水酸化アルミニウムとした場合について説明する。
骨材層3の厚さは、0.2[mm]以上4.0[mm]以下の範囲内である。
【0017】
<印刷模様層>
印刷模様層4は、骨材層3の一方の面(
図1では、上側の面)に積層される層である。
また、印刷模様層4は、エポキシ樹脂を主成分として形成されている。
さらに、印刷模様層4は、エポキシ樹脂の100質量[%]に対する混合比が15質量[%]以下の無機顔料を含む。
また、印刷模様層4は、インクジェット印刷により形成されている。
【0018】
さらに、印刷模様層4には、印刷により模様が形成されている。
印刷模様層4に形成されている模様は、天然石材の柄を用いて形成した画像データ(天然石材の柄を模して形成した画像データ)を基にして作成された、少なくとも三種類の異なるパターンから形成されている。
【0019】
第一実施形態では、一例として、印刷模様層4に形成されている模様が、例えば、
図2に示すように、画像データを基にして作成された六種類以上の異なるパターンから形成されている場合について説明する。
図2に示す模様は、具体的に、天然石材の柄を用いて形成した画像データを基にして作成された六種類の異なるパターン(P1、P2、P3、P4、P5、P6)から形成されている。なお、
図2に示す模様は、天然石材の柄を用いて形成した画像データを基にして作成されたパターンを、模式的に示している。
パターンP1とパターンP2は、同一のパターンを左右に反転させて形成されている。また、パターンP3とパターンP4は、同一のパターンを上下に反転させて形成されている。さらに、パターンP5とパターンP6は、同一のパターンを上下及び左右に反転させて形成されている。
【0020】
<表面保護層>
表面保護層5は、印刷模様層4の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、装飾シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
表面保護層5の厚さは、3[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
また、表面保護層5は、アクリル、フッ素、シリコーン、又は、アクリル、フッ素及びシリコーンのうち少なくとも二つを混合した混合物又は共重合物を主成分として形成されている。
さらに、表面保護層5は、主成分の100質量[%]に対する混合比が10質量[%]以上50質量[%]以下の範囲内であるシリカ(艶消し剤)を含む。
【0021】
また、表面保護層5の印刷模様層4と対向する面と反対の面(
図1では、上側の面)は、上述した構成により、三次元表面粗さにおけるスキューネス(Ssk)が、-0.5以上2.0以下の範囲内である。
すなわち、装飾シート1の最表面は、三次元表面粗さにおけるスキューネス(Ssk)が、-0.5以上2.0以下の範囲内である。
【0022】
<エンボス>
図1に示すように、骨材層3と、印刷模様層4と、表面保護層5には、複数の箇所にエンボス6が形成されている。すなわち、骨材層3と、印刷模様層4と、表面保護層5とに、エンボス加工が施されている。
エンボス加工は、エンボス型を使用した型押しによって施す。また、エンボス型は、天然石材を原稿として型取りして形成する。なお、エンボス型は、3Dプリンターや、左官によって形成した塗り材によって形成してもよい。
なお、エンボス加工は、具体的に、基材層2の一方の面に骨材層3を積層して形成したシートのうち、骨材層3に対して行う。これにより、骨材層3に、エンボス6に対応する凹部を形成した後、印刷模様層4と表面保護層5を形成することで、骨材層3と、印刷模様層4と、表面保護層5とに、エンボス加工が施されている構成となる。したがって、骨材層3と、印刷模様層4と、表面保護層5にエンボス6が形成されている構成となる。
【0023】
(装飾材)
装飾材10は、例えば、建築物の壁面を装飾するパネルであり、装飾シート1と、基板7を備える。
基板7は、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板等を用いて板状に形成されており、一方の面(
図1では、上側の面)に、装飾シート1が積層されている。すなわち、装飾材10は、基板7と、基板7の一方の面に積層された装飾シート1を備える。
【0024】
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この第一実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0025】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の装飾シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)骨材層3が、骨材層3の100質量[%]に対する混合比が5質量[%]以上15質量[%]以下の範囲内であるアクリル樹脂と、骨材層3の100質量[%]に対する混合比が85質量[%]以上95質量[%]以下の範囲内である無機フィラーとの混合物を含む。また、骨材層3の厚さが、0.2[mm]以上4.0[mm]以下の範囲内である。さらに、無機フィラーは、粒子径分布が50[μm]以上500[μm]以下の範囲内であるフィラーを含む。
【0026】
このため、アクリル樹脂と無機フィラーとの混合物の、骨材層3に対する混合比を上述した範囲内とし、さらに、無機フィラーの粒子径分布を上述した範囲内とすることで、装飾シート1の表面に、天然石材に類似した光沢及び質感を付与することが可能となる。
これにより、装飾シート1の表面に、天然石材のような無機物を主とする天然物に類似した意匠感を付与することが可能となるため、意匠性の低下を抑制することが可能な装飾シート1を提供することが可能となる。
【0027】
また、骨材層3の厚さを0.2[mm]以上4.0[mm]以下の範囲内とすることで、装飾シート1の、円柱等を形成する湾曲面への追従性を向上させることが可能となる。
その結果、湾曲面への追従性の低下を抑制することが可能となるため、装飾シート1の表面(意匠面)に損傷が発生することを抑制することが可能となり、意匠性の低下を抑制することが可能となる。
なお、天然石材を用いて装飾シートや装飾材を形成する際には、天然石材の上に樹脂を流し、天然石材の表層の一枚をかつら剥きのように剥離させて、シートを作成する手段もあるが、この手段では、剥いたシートの表面に気泡が発生するという不具合が存在する。また、天然石材を用いて装飾シートや装飾材を形成する際には、所望ではない異物の混入や、所望ではない流れや模様が発生し、所望の意匠を有するシートを、要望される数量で用意することが困難である。
これに対し、第一実施形態の装飾シート1であれば、気泡の発生を防止することが可能であるとともに、所望の意匠を有するシートを、要望される数量で用意することが可能となる。
【0028】
(2)表面保護層5の印刷模様層4と対向する面と反対の面が、三次元表面粗さにおけるスキューネス(Ssk)が-0.5以上2.0以下の範囲内である。
その結果、装飾シート1の表面に、天然石材のような無機物を主とする天然物に類似した触感を付与することが可能となる。
【0029】
(3)骨材層3と、印刷模様層4と、表面保護層5とに、型押しによるエンボス加工が施されている。
その結果、骨材層3と、印刷模様層4と、表面保護層5にエンボス6を形成することで、装飾シート1に凹凸模様を形成して、装飾シート1の表面に、天然石材に類似した意匠感を付与することが可能となり、装飾シート1の意匠性を向上させることが可能となる。
また、天然石材を原稿として型取りしたエンボス型を使って型押しすることで、装飾シート1の表面に対して、さらに、天然石材に類似した意匠感を付与することが可能となる。
【0030】
(4)アクリル樹脂のガラス転移点が、-40[℃]以上10[℃]以下の範囲内である。
その結果、アクリル樹脂のガラス転移点を-40[℃]以上とすることで、アクリル樹脂のガラス転移点を-40[℃]未満とした場合と比較して、印刷模様層4の経時的な密着力の低下を抑制することが可能となる。これに加え、アクリル樹脂のガラス転移点を10[℃]以下とすることで、アクリル樹脂のガラス転移点を10[℃]を超える値とした場合と比較して、装飾シート1の、湾曲面への追従性を向上させることが可能となる。
【0031】
(5)表面保護層5が、アクリル、フッ素、シリコーン、又は、アクリル、フッ素及びシリコーンのうち少なくとも二つを混合した混合物又は共重合物を主成分として形成されている。
その結果、表面保護層5に耐候性を付与することが可能となる。
【0032】
(6)表面保護層5の厚さが、3[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
その結果、表面保護層5の厚さを3[μm]以上とすることで、表面保護層5の厚さを3[μm]未満とした場合と比較して、表面保護層5に充分な耐傷性を付与することが可能となる。これに加え、表面保護層5の厚さを10[μm]以下とすることで、表面保護層5の厚さを10[μm]を超える値とした場合と比較して、装飾シート1の、湾曲面への追従性を向上させることが可能となる。
【0033】
(7)無機フィラーが含む成分のうち少なくとも一つが、水和物である。
その結果、無機フィラーの成分に水和物を用いることで、装飾シート1が燃焼した場合であっても、燃焼時に発生する熱で水分を発生させ、発熱量を低下させることが可能となる。
【0034】
(8)印刷模様層4が、エポキシ樹脂を主成分として形成され、且つエポキシ樹脂の100質量%に対する混合比が15質量%以下の無機顔料を含む。
その結果、印刷模様層4を、無機顔料を含んで形成することで、装飾シート1に対し、屋外において使用することが可能なレベルの耐候性を付与することが可能となる。
【0035】
(9)印刷模様層4に印刷により形成されている模様は、天然石材の柄を用いて形成した画像データを基にして作成された六種類以上の異なるパターンから形成されている。
その結果、印刷模様層4に形成されている模様に同じ柄が存在することを、視認者に対して気付かせることが困難となるため、装飾シート1を施工した際に、自然な意匠の装飾状態となり、より自然な意匠感を付与することが可能となる。
【0036】
(10)印刷模様層4が、インクジェット印刷により形成されている。
その結果、印刷模様層4に形成されている模様に同じ柄が存在することを、視認者に対して気付かせることが困難となるため、装飾シート1を施工した際に、自然な意匠の装飾状態となり、より自然な意匠感を付与することが可能となる。
【0037】
第一実施形態の装飾材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(11)基板7と、基板7の少なくとも一方の面に積層された装飾シート1とを備える。
その結果、意匠性の低下を抑制することが可能な、装飾材10を提供することが可能となる。
【0038】
<第一実施形態の変形例>
(1)第一実施形態では、印刷模様層4に印刷により形成されている模様は、天然石材の柄を用いて形成した画像データを基にして作成された六種類以上の異なるパターンから形成されている構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、
図3に示すように、印刷模様層4に印刷により形成されている模様を、天然石材の柄を用いて形成した画像データを基にして作成された四種類の異なるパターンから形成されている構成としてもよい。したがって、印刷模様層4に印刷により形成されている模様は、天然石材の柄を用いて形成した画像データを基にして作成された少なくとも三種類の異なるパターンから形成されている構成としてもよい。
なお、
図3に示す模様は、具体的に、天然石材の柄を用いて形成した画像データを基にして作成された四種類の異なるパターン(P1、P2、P3、P4)から形成されている。
この構成であっても、印刷模様層4に形成されている模様に同じ柄が存在することを、視認者に対して気付かせることが困難となるため、装飾シート1を施工した際に、自然な意匠の装飾状態となり、より自然な意匠感を付与することが可能となる。
【0039】
(2)第一実施形態では、装飾シート1の構成を、エンボス7が形成されている構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、
図4に示すように、装飾シート1の構成を、エンボスが形成されていない構成としてもよい。
【実施例0040】
第一実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から12の装飾シートと、比較例1及び2の装飾シートと、参考例の装飾シートについて説明する。
【0041】
(実施例1)
基材層は、坪量が48[g/m
2]のガラス不織布を用いて形成した。
骨材層は、ガラス転移点が60[℃]であるアクリル樹脂(アクリルエマルジョン)に対して、乾燥時における固形分の重量比が10:90になるように、無機フィラーを加えて形成した。なお、ガラス転移点は、数字が大きいほど流動性が低く、硬度が増加する。一方、数字が小さいほど流動性が高く、柔軟性が増加する。
無機フィラーとしては、粒子径分布が100[μm]以上500[μm]以下の範囲内である炭酸カルシウム(CaCO
3)を用いた。なお、炭酸カルシウムの粒子径分布は、ふるい分け法を行い、500[μm]の目は通過したが、100[μm]の目は通過しなかったものを用いて設定した。
印刷模様層は、骨材層を基材層へ均一に塗布した後に乾燥させることで、厚さが2.0[mm]のシートを形成した後、シートの表面(骨材層)に、有機顔料を用いてグラビアオフセット印刷によって形成した。
また、印刷模様層に形成する模様は、四種類のパターン(
図2を参照)を用いて形成した。
表面保護層は、アクリル樹脂を用いて、15[μm]の厚さで形成した。
さらに、表面保護層は、主成分であるアクリル樹脂の100質量[%]に対する混合比が50質量[%]であるシリカを含む。
以上により、実施例1の装飾シートを形成した。
【0042】
(実施例2)
骨材層を基材層へ塗布した後、乾燥させる前にシリコーン製のエンボス型を用いて骨材層にエンボス加工を施した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例2の装飾シートを形成した。
【0043】
(実施例3)
ガラス転移点が-7[℃]であるアクリル樹脂を用いて骨材層を形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例3の装飾シートを形成した。
【0044】
(実施例4)
ガラス転移点が-62[℃]であるアクリル樹脂を用いて骨材層を形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例4の装飾シートを形成した。
【0045】
(実施例5)
表面保護層の厚さを2[μm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例5の装飾シートを形成した。
【0046】
(実施例6)
表面保護層の厚さを3[μm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例6の装飾シートを形成した。
【0047】
(実施例7)
表面保護層の厚さを5[μm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例7の装飾シートを形成した。
【0048】
(実施例8)
表面保護層の厚さを10[μm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例8の装飾シートを形成した。
【0049】
(実施例9)
無機フィラーとして、粒子径分布が50[μm]以上500[μm]以下の範囲内である炭酸カルシウム(CaCO3)と、粒子径分布が50[μm]以上500[μm]以下の範囲内である水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を用いた点と、アクリル樹脂に対して、炭酸カルシウムと水酸化アルミニウムとを、乾燥時の固形分の重量比が10:45:45となるように加えた点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例9の装飾シートを形成した。なお、水酸化アルミニウムの粒子径分布は、炭酸カルシウムの粒子径分布と同様、ふるい分け法を行い、50[μm]の目は通過したが、500[μm]の目は通過しなかったものを用いて設定した。
【0050】
(実施例10)
有機顔料を用いて印刷模様層を形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例10の装飾シートを形成した。
【0051】
(実施例11)
印刷模様層に形成する模様を、六種類のパターン(
図3を参照)を用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例11の装飾シートを形成した。
【0052】
(実施例12)
印刷模様層を、インクジェット印刷によって形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例12の装飾シートを形成した。
【0053】
(比較例1)
無機フィラーとして、粒子径分布が1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である炭酸カルシウムを用いた点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例1の装飾シートを形成した。
【0054】
(比較例2)
無機フィラーとして、粒子径分布が500[μm]を超えるとともに1000[μm]以下の範囲内である炭酸カルシウムを用いた点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例2の装飾シートを形成した。
【0055】
(参考例)
参考例の装飾シートは、切り出した天然石材を用いて形成した装飾シートである。
【0056】
(性能評価、評価結果)
実施例1から12の装飾シートと、比較例1及び2の装飾シートと、参考例の装飾シートに対し、それぞれ、意匠性と、湾曲面への追従性と、三次元表面粗さにおけるスキューネス(Ssk)を評価した。これに加え、光沢値と、インキ密着性と、耐候性と、耐傷性と、耐火性と、印刷適性を評価した。評価結果は、表1と表2に示す。
評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0057】
<意匠性>
意匠性としては、官能評価による意匠性と、柄被りの違和感(同じ絵柄が連続することによって受ける違和感)による意匠性を評価した。
官能評価による意匠性は、10人の視認者から感想を聞き、意匠及び触感が良いという回答が8人以上であった場合を「◎」と評価し、意匠及び触感が良いという回答が5人以上であった場合を「〇」と評価した。これに加え、意匠及び触感が良いという回答が5人未満であった場合を「△」と評価した。
なお、官能評価による意匠性の理想的な評価は、「◎」である。
【0058】
柄被りの違和感による意匠性は、10人の視認者から感想を聞き、装飾シートを壁面に施工した際に、同じ柄が続いているという違和感を全く受けないという回答が8人以上であった場合を「◎」と評価し、違和感を全く受けないという回答が5人以上であった場合を「〇」と評価し、違和感を全く受けないという回答が5人未満であった場合を「△」と評価した。
なお、柄被りの違和感による意匠性の理想的な評価は、同じ柄が続いているという違和感を全く受けないという回答が10人の評価である。
【0059】
<湾曲面への追従性>
湾曲面(R曲面)への追従性は、Φ400、Φ300、Φ200、Φ100の湾曲面に、それぞれ、25[℃]の環境下で装飾シートを施工した際に、装飾シートにヒビ割れや跳ね返りが発生しなかった状態の、シートの直径を用いて評価した。
なお、湾曲面への装飾シートの施工には、接着剤として、コニシ株式会社の変性シリコン系接着剤である「エフレックスタイルワン」を用いた。
【0060】
また、表中に示す湾曲面への追従性は、数字が小さいほど、曲率が大きな湾曲面に対しても、装飾シートを施工することが可能であることを示す。
なお、湾曲面への追従性の理想的な評価は、装飾シートにヒビ割れや跳ね返りが発生しなかった状態の、シートの直径が「Φ200」の評価である。
【0061】
<三次元表面粗さにおけるスキューネス(Ssk)>
三次元表面粗さにおけるスキューネス(Ssk)は、オリンパス株式会社製の、5倍の対物レンズを備えるレーザー顕微鏡を用いて、カットオフ値λcが250[μm]の測定条件で測定した。
なお、三次元表面粗さにおけるスキューネス(Ssk)の理想的な評価は、-0.5以上2.0以下の範囲内の評価である。
【0062】
<光沢値>
光沢値は、堀場製作所製のグロスメーターを用いて、測定角度を60[°]に設定して測定した。
なお、光沢値の理想的な評価は、参考例と同等の、天然石材と同等の評価である。
【0063】
<インキ密着性>
インキ密着性は、まず、評価対象となる装飾シートからサンプルを採取し、採取したサンプルの表面に、カッターを用いて2[mm]間隔の切り込みを縦横6本ずつ入れて、25個の碁盤目を形成した。次に、碁盤目の部分に強く圧着させたセロテープ(登録商標)の端を、45[°]の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の部分におけるインキの剥がれ具合を目視で確認する。そして、インキが剥がれている碁盤目の数/25の表記で評価した。
なお、インキ密着性の理想的な評価は、0/25の評価である。
【0064】
<耐候性>
耐候性は、まず、評価対象となる装飾シートからサンプルを採取し、スガ試験機株式会社製のサンシャインウェザーメーターを用いて、120分のうち、当初の18分は降雨するモードで、採取したサンプルを、1000H(時間)、2000H、3000H、4000Hかけて放置する試験を行う。そして、試験後のサンプルを確認し、退色が確認されなかった時間を用いて評価した。
なお、耐候性の理想的な評価は、4000Hの評価である。
【0065】
<耐傷性>
耐傷性は、まず、評価対象となる装飾シートからサンプルを採取し、三菱鉛筆株式会社製の鉛筆である「ハイユニ」に対して、先端を研磨紙で平坦な状態とする。そして、鉛筆に750[g]の荷重をかけて、採取したサンプルの表面に対して0.8[mm/s]の速度で7[mm]の距離に亘って押し付け、サンプルの表面に傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度(鉛筆硬度)を測定する。
なお、耐傷性の理想的な評価は、4Hの評価である。
【0066】
<耐火性>
耐火性は、まず、標準石膏ボード(不燃又は準不燃)に施工用のシーラーを塗布した後に乾燥させ、次に、施工用の糊を塗布した後に、評価対象となる装飾シートの試験片を貼り付ける。その後、デシケーターの中で48時間以上かけて乾燥させる。さらに、試験片をコーンヒータで加熱することにより、発生したガスをスパーク点火機で点火・燃焼させ、燃焼させたガスの酸素濃度を測定することで、燃焼時における総発熱量(燃焼時総発熱量(MJ/m2))を調べることで評価した。なお、燃焼時総発熱量(MJ/m2)は、8.0(MJ/m2)以下である場合、防火認定を受ける不燃材料の範囲となる。
なお、耐火性の理想的な評価は、8.0(MJ/m2)以下の評価である。
【0067】
<印刷適性>
印刷適性は、幅広い印刷条件で印刷可能な場合を「◎」と評価し、条件を限定して印刷が可能な場合を「〇」と評価した。
なお、印刷適性の理想的な評価は、「◎」の評価である。
【0068】
【0069】
【0070】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から12の装飾シートは、それぞれの評価項目に対して、優れた性能を示した。一方、比較例1及び2の装飾シートは、特に、三次元表面粗さにおけるスキューネス(Ssk)と光沢値に対して、優れた性能を示すことが不可能であった。
【0071】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることが可能である。
(1)
基材層と、
前記基材層の一方の面に積層された骨材層と、
前記骨材層の前記基材層と対向する面と反対の面に積層された印刷模様層と、
前記印刷模様層の前記骨材層と対向する面と反対の面に積層された表面保護層と、を備え、
前記骨材層は、前記骨材層の100質量%に対する混合比が5質量%以上15質量%以下の範囲内であるアクリル樹脂と、前記骨材層の100質量%に対する混合比が85質量%以上95質量%以下の範囲内である無機フィラーと、の混合物を含み、
前記骨材層の厚さは、0.2mm以上4.0mm以下の範囲内であり、
前記無機フィラーは、粒子径分布が50μm以上500μm以下の範囲内であるフィラーを含む装飾シート。
(2)
前記表面保護層の前記印刷模様層と対向する面と反対の面は、三次元表面粗さにおけるスキューネス(Ssk)が-0.5以上2.0以下の範囲内である前記(1)に記載した装飾シート。
(3)
前記骨材層と、前記印刷模様層と、前記表面保護層と、に、型押しによるエンボス加工が施されている前記(1)又は(2)に記載した装飾シート。
(4)
前記アクリル樹脂のガラス転移点が、-40℃以上10℃以下の範囲内である前記(1)~(3)のいずれかに記載した装飾シート。
(5)
前記表面保護層は、アクリル、フッ素、シリコーン、又は、前記アクリル、前記フッ素及び前記シリコーンのうち少なくとも二つを混合した混合物又は共重合物を主成分として形成されている前記(1)~(4)のいずれかに記載した装飾シート。
(6)
前記表面保護層の厚さが、3μm以上10μm以下の範囲内である前記(1)~(5)のいずれかに記載した装飾シート。
(7)
前記無機フィラーが含む成分のうち少なくとも一つが、水和物である前記(1)~(6)のいずれかに記載した装飾シート。
(8)
前記印刷模様層は、エポキシ樹脂を主成分として形成され、且つ前記エポキシ樹脂の100質量%に対する混合比が15質量%以下の無機顔料を含む前記(1)~(7)のいずれかに記載した装飾シート。
(9)
前記印刷模様層には、印刷により模様が形成され、
前記模様は、天然石材の柄を用いて形成した画像データを基にして作成された少なくとも三種類の異なるパターンから形成されている前記(1)~(8)のいずれかに記載した装飾シート。
(10)
前記模様は、前記画像データを基にして作成された六種類以上の異なるパターンから形成されている前記(9)に記載した装飾シート。
(11)
前記印刷模様層は、インクジェット印刷により形成されている前記(1)~(10)のいずれかに記載した装飾シート。
(12)
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に積層された前記(1)~(11)のいずれかに記載した装飾シートと、を備える装飾材。