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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174497
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20241210BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241210BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241210BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241210BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M10/052
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092352
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇史
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AK01
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ02
5H029DJ08
5H029DJ16
5H029EJ04
5H029HJ05
5H029HJ07
5H050AA02
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050DA10
5H050EA10
5H050GA02
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】 容量に寄与しない導電助剤の比率を低く抑えつつ良好な電池動作を実現することができる全固体電池を提供する。
【解決手段】 全固体電池は、固体電解質層と、前記固体電解質層の両方の主面上に設けられ、電極活物質および導電助剤を含む電極層と、を備え、前記電極層の断面における前記導電助剤の粒子径の頻度分布において、5nm以上130nm以下の範囲に、最も大きい2つのピークである第1ピークおよび第2ピークが現れ、前記粒子径の累積分布において、前記第1ピークと前記第2ピークとの間に傾きが0.7以下(%/nm)となる箇所が現れる。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層と、
前記固体電解質層の両方の主面上に設けられ、電極活物質および導電助剤を含む電極層と、を備え、
前記電極層の断面における前記導電助剤の粒子径の頻度分布において、5nm以上130nm以下の範囲に、最も大きい2つのピークである第1ピークおよび第2ピークが現れ、前記粒子径の累積分布において、前記第1ピークと前記第2ピークとの間に傾きが0.7以下(%/nm)となる箇所が現れる、全固体電池。
【請求項2】
前記頻度分布において、前記第1ピークおよび前記第2ピークは、頻度が5%以上である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記第1ピークの粒子径と前記第2ピークの粒子径との差は、20nm以上である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記電極層の断面において、粒子径が5nm以上30nm未満の前記導電助剤の面積比率が0.05%以上4%未満であり、粒子径が20nm以上130nm未満の前記導電助剤の面積比率が1%以上4%未満である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記電極層の断面において、前記導電助剤の合計の面積比率が1.05%以上8%未満である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記導電助剤は、カーボン材料である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記カーボン材料は、繊維状のカーボン材料である、請求項6に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記カーボン材料は、カーボンナノチューブである、請求項6に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記固体電解質層は、酸化物である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項10】
前記固体電解質層は、リン酸塩系酸化物である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項11】
前記固体電解質層および前記電極層は、焼結体である、請求項1に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物系固体電解質を用いた全固体電池は、有機系電解質、硫化物系固体電解質等で懸念される発火、有毒ガス発生等が起こらない安全な二次電池を提供可能な技術として期待されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-034202号公報
【特許文献2】国際公開第2014/042083号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極層において、小さい粒子径の導電助剤を用いると、電極活物質1つ1つへの電子伝導が良好となり、良好な電池動作を実現することができる。しかしながら、粒子径が小さすぎると、焼結時に当該導電助剤が熱に耐えられないおそれがある。大きい粒子径の導電助剤を用いると、電極層全体の電子伝導性が高くなり、良好な電池特性が得られる。しかしながら、粒子径が大きすぎると、電極活物質1つ1つの電子伝導パスを形成するために必要な導電助剤比率が高くなって高容量を実現できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、容量に寄与しない導電助剤の比率を低く抑えつつ良好な電池動作を実現することができる全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る全固体電池は、固体電解質層と、前記固体電解質層の両方の主面上に設けられ、電極活物質および導電助剤を含む電極層と、を備え、前記電極層の断面における前記導電助剤の粒子径の頻度分布において、5nm以上130nm以下の範囲に、最も大きい2つのピークである第1ピークおよび第2ピークが現れ、前記粒子径の累積分布において、前記第1ピークと前記第2ピークとの間に傾きが0.7以下(%/nm)となる箇所が現れる。
【0007】
上記全固体電池において、前記頻度分布における前記第1ピークおよび前記第2ピークは、頻度が5%以上であってもよい。
【0008】
上記全固体電池において、前記第1ピークの粒子径と前記第2ピークの粒子径との差は、20nm以上であってもよい。
【0009】
上記全固体電池において、前記電極層の断面における、粒子径が5nm以上30nm未満の前記導電助剤の面積比率が0.05%以上4%未満であり、粒子径が20nm以上130nm未満の前記導電助剤の面積比率が1%以上4%未満であってもよい。
【0010】
上記全固体電池において、前記電極層の断面における、前記導電助剤の合計の面積比率が1.05%以上8%未満であってもよい。
【0011】
上記全固体電池において、前記導電助剤は、カーボン材料であってもよい。
【0012】
上記全固体電池において、前記カーボン材料は、繊維状のカーボン材料であってもよい。
【0013】
上記全固体電池において、前記カーボン材料は、カーボンナノチューブであってもよい。
【0014】
上記全固体電池において、前記固体電解質層は、酸化物であってもよい。
【0015】
上記全固体電池において、前記固体電解質層は、リン酸塩系酸化物であってもよい。
【0016】
上記全固体電池において、前記固体電解質層および前記電極層は、焼結体であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容量に寄与しない導電助剤の比率を低く抑えつつ良好な電池動作を実現することができる全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】全固体電池の基本構造を示す模式的断面図である。
図2】断面を例示する図である。
図3】複数の電池単位が積層された積層型の全固体電池の部分断面斜視図である。
図4】複数の電池単位が積層された積層型の全固体電池の部分断面斜視図である。
図5】(a)は導電助剤の粒子径の頻度分布を例示する図であり、(b)は累積分布を例示する図である。
図6】(a)は導電助剤の粒子径の頻度分布を例示する図であり、(b)は累積分布を例示する図である。
図7】(a)および(b)は導電助剤を例示する斜視図であり、(c)は正極層の積層断面を例示する図である。
図8】全固体電池の製造方法のフローを例示する図である。
図9】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0020】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る全固体電池100の基本構造を示す模式的断面図である。図1で例示するように、全固体電池100は、正極層10と負極層20とによって、固体電解質層30が挟持された構造を有する。例えば、正極層10は固体電解質層30の第1主面上に形成されており、負極層20は固体電解質層30の第2主面上に形成されている。正極層10、負極層20、および固体電解質層30は、焼結体である。
【0021】
固体電解質層30は、イオン伝導性を有する固体電解質を主成分とする。固体電解質層30の固体電解質は、例えばリチウムイオン伝導性を有する酸化物系の固体電解質である。当該固体電解質は、例えば、NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質である。NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質は、高い導電率を有するとともに、大気中で安定しているという性質を有している。リン酸塩系固体電解質は、例えば、リチウムを含んだリン酸塩である。当該リン酸塩は、特に限定されるものではないが、例えば、Tiとの複合リン酸リチウム塩(例えば、LiTi(PO)などが挙げられる。または、TiをGe,Sn,Hf,Zrなどといった4価の遷移金属に一部あるいは全部置換することもできる。また、Li含有量を増加させるために、Al,Ga,In,Y,Laなどの3価の遷移金属に一部置換してもよい。より具体的には、例えば、Li1+xAlGe2-x(POや、Li1+xAlZr2-x(PO、Li1+xAlTi2-x(POなどが挙げられる。例えば、正極層10および負極層20に含有されるオリビン型結晶構造をもつリン酸塩が含む遷移金属と同じ遷移金属を予め添加させたLi-Al-Ge-PO系材料が好ましい。例えば、正極層10および負極層20にCoおよびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、Coを予め添加したLi-Al-Ge-PO系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。この場合、電極活物質が含む遷移金属の電解質への溶出を抑制する効果が得られる。正極層10および負極層20にCo以外の遷移元素およびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、当該遷移金属を予め添加したLi-Al-Ge-PO系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。
【0022】
図2で例示するように、正極層10は、電極活物質11、固体電解質12、導電助剤13などが分散する構造を有している。負極層20は、電極活物質21、固体電解質22、導電助剤23などが分散する構造を有している。正極層10が電極活物質11を備え、負極層20が電極活物質21を備えることによって、全固体電池100を二次電池として用いることができる。正極層10が固体電解質12を備え、負極層20が固体電解質22を備えることによって、正極層10および負極層20にイオン伝導性が得られる。正極層10が導電助剤13を備え、負極層20が導電助剤23を備えることによって、正極層10および負極層20に導電性が得られる。
【0023】
電極活物質11は、例えば、オリビン型結晶構造をもつ電極活物質である。オリビン型結晶構造をもつ電極活物質は、負極層20にも含有されていてもよい。このような電極活物質として、遷移金属とリチウムとを含むリン酸塩が挙げられる。オリビン型結晶構造は、天然のカンラン石(olivine)が有する結晶であり、X線回折において判別することができる。
【0024】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質の典型例として、CoおよびPを含むLiCoPOなどを用いることができる。この化学式において遷移金属のCoが置き換わったリン酸塩などを用いることもできる。ここで、価数に応じてLiやPOの比率は変動し得る。なお、遷移金属として、Co,Mn,Fe,Niなどを用いることが好ましい。CoおよびPを含む正極活物質として、LiCo10、LiCoP、LiCo(Pなどを用いることもできる。
【0025】
例えば、正極層10にのみオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合には、当該電極活物質が正極活物質として作用する。負極層20にもオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合には、その作用メカニズムは完全には判明してはいないものの、負極活物質との部分的な固溶状態の形成に基づくと推察される、放電容量の増大、ならびに、放電に伴う動作電位の上昇という効果が発揮される。
【0026】
正極層10および負極層20の両方ともオリビン型結晶構造をもつ電極活物質を含有する場合に、それぞれの電極活物質には、好ましくは、互いに同一であっても異なっていてもよい遷移金属が含まれる。「互いに同一であっても異なっていてもよい」ということは、正極層10および負極層20が含有する電極活物質が同種の遷移金属を含んでいてもよいし、互いに異なる種類の遷移金属が含まれていてもよい、ということである。正極層10および負極層20には一種だけの遷移金属が含まれていてもよいし、二種以上の遷移金属が含まれていてもよい。好ましくは、正極層10および負極層20には同種の遷移金属が含まれる。より好ましくは、両電極が含有する電極活物質は化学組成が同一である。正極層10および負極層20に同種の遷移金属が含まれていたり、同組成の電極活物質が含まれていたりすることにより、両内部電極層の組成の類似性が高まるので、全固体電池100の端子の取り付けを正負逆にしてしまった場合であっても、用途によっては誤作動せずに実使用に耐えられるという効果を有する。
【0027】
負極層20は、電極活物質21を含むことで負極層として機能する。一方の電極だけに負極活物質を含有させることによって、当該一方の電極は負極として作用し、他方の電極が正極として作用することが明確になる。しかしながら、両方の電極に負極活物質として公知である物質を含有させてもよい。電極の負極活物質については、二次電池における従来技術を適宜参照することができ、例えば、チタン酸化物、リチウムチタン複合酸化物、リチウムチタン複合リン酸塩、カーボン、リン酸バナジウムリチウムなどの化合物が挙げられる。
【0028】
固体電解質12および固体電解質22は、イオン伝導性を有する酸化物系固体電解質であれば特に限定されるものではない。固体電解質12および固体電解質22は、例えばリチウムイオン伝導性を有する酸化物系の固体電解質である。当該固体電解質は、例えば、NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質である。リン酸塩系固体電解質は、例えば、リチウムを含んだリン酸塩である。当該リン酸塩は、特に限定されるものではないが、例えば、Tiとの複合リン酸リチウム塩(例えば、LiTi(PO)などが挙げられる。または、TiをGe,Sn,Hf,Zrなどといった4価の遷移金属に一部あるいは全部置換することもできる。また、Li含有量を増加させるために、Al,Ga,In,Y,Laなどの3価の遷移金属に一部置換してもよい。より具体的には、例えば、Li1+xAlGe2-x(POや、Li1+xAlZr2-x(PO、Li1+xAlTi2-x(POなどが挙げられる。固体電解質12および固体電解質22は、例えば、固体電解質層30の主成分固体電解質と同じとすることができる。または、電極活物質がCoおよびPを含む場合に、固体電解質12,22はCoを含むことが好ましい。詳細なメカニズムについては不明であるが、共焼成時にCoを含むことで、固体電解質の耐酸化安定性が向上し易く、これによりサイクル安定性を確保しやすいためである。
【0029】
導電助剤13,23の材料は導電性を有していれば特に限定されるものではないが、一例として、導電助剤13,23の材料としてカーボン材料などが用いられている。導電助剤13,23の材料として、金属が用いられていてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。
【0030】
図3は、複数の電池単位が積層された積層型の全固体電池100aの模式的断面図である。全固体電池100aは、略直方体形状を有する積層チップ60を備える。積層チップ60において、積層方向端の上面および下面以外の4面のうちの2面である2側面に接するように、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが設けられている。当該2側面は、隣接する2側面であってもよく、互いに対向する2側面であってもよい。本実施形態においては、互いに対向する2側面(以下、2端面と称する)に接するように第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが設けられているものとする。
【0031】
以下の説明において、全固体電池100と同一の組成範囲、同一の厚み範囲、および同一の粒度分布範囲を有するものについては、同一符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0032】
全固体電池100aにおいては、複数の正極層10と複数の負極層20とが、固体電解質層30を介して交互に積層されている。複数の正極層10の端縁は、積層チップ60の第1端面に露出し、第2端面には露出していない。複数の負極層20の端縁は、積層チップ60の第2端面に露出し、第1端面には露出していない。それにより、正極層10は第1外部電極40aに導通し、負極層20は第2外部電極40bに導通している。なお、固体電解質層30は、第1外部電極40aから第2外部電極40bにかけて延在している。このように、全固体電池100aは、複数の電池単位が積層された構造を有している。
【0033】
正極層10、固体電解質層30および負極層20の積層構造の上面(図3の例では、最上層の正極層10の上面)に、カバー層50が積層されている。また、当該積層構造の下面(図3の例では、最下層の正極層10の下面)にも、カバー層50が積層されている。カバー層50は、例えば、Al、Zr、Tiなどを含む無機材料(例えば、Al、ZrO、TiOなど)を主成分とする。カバー層50は、固体電解質層30の主成分を主成分として含んでいてもよい。カバー層50は、焼結体である。
【0034】
正極層10および負極層20は、集電体層を備えていてもよい。例えば、図4で例示するように、正極層10内に第1集電体層15が設けられていてもよい。また、負極層20内に第2集電体層25が設けられていてもよい。第1集電体層15および第2集電体層25は、導電性材料を主成分とする。例えば、第1集電体層15および第2集電体層25の導電性材料として、金属、カーボンなどを用いることができる。第1集電体層15を第1外部電極40aに接続し、第2集電体層25を第2外部電極40bに接続することで、集電効率が向上する。
【0035】
上述したように、正極層10および負極層20は、導電性の観点から導電助剤を含んでいる。例えば、正極層10および負極層20において、小さい粒子径の導電助剤を用いると、電極活物質1つ1つへの電子伝導が良好となり、良好な電池動作を実現することができる。しかしながら、粒子径が小さすぎると、焼結時に当該導電助剤が熱に耐えられないおそれがある。大きい粒子径の導電助剤を用いると、電極層全体の電子伝導性が高くなり、良好な電池特性が得られる。しかしながら、粒子径が大きすぎると、電極活物質1つ1つの電子伝導パスを形成するために必要な導電助剤比率が高くなって高容量を実現できないおそれがある。
【0036】
そこで、本実施形態に係る全固体電池100,100aは、容量に寄与しない導電助剤の比率を低く抑えつつ良好な電池動作を実現することができる構成を有している。
【0037】
本実施形態においては、導電助剤13,23として、粒子径の小さい導電助剤および粒子径の大きい導電助剤の両方を用いる。具体的には、図5(a)で例示するように、正極層10の断面(例えば積層方向を含む断面)における導電助剤13の粒子径の頻度分布を算出した場合に、5nm以上130nm以下の範囲に、最も大きい2つのピークが現れる。これらの2つのピークのうち、粒子径の小さい方を第1ピークAと称し、粒子径の大きい方を第2ピークBと称する。また、図5(b)で例示するように、粒子径の累積分布を算出した場合に、第1ピークAと第2ピークBとの間に傾きが0.7以下(%/nm)となる箇所が現れる。
【0038】
例えば、図5(a)および図5(b)の例は、平均粒子径が25nmの導電助剤と、平均粒子径が45nmの導電助剤とを、粒子の体積比率を27:1として混ぜたものである。図5(b)で、第1ピークAの近傍であるD40%以上D80%以下の傾きは4.59(%/nm)であって0.7を上回っている。第2ピークBの近傍であるD88%以上D94%以下の傾きは0.773(%/nm)であって0.7を上回っている。第1ピークAと第2ピークBとの間のD83%以上D88%以下の傾きは0.676(%/nm)であって0.7以下となっている。
【0039】
図6(a)および図6(b)の例は、平均粒子径が25nmの導電助剤と、平均粒子径が55nmの導電助剤とを、粒子の体積比率を8:1として混ぜたものである。図6(b)で、第1ピークAの近傍であるD33%以上D76%以下の傾きは4.26(%/nm)であって0.7を上回っている。第2ピークBの近傍であるD82%以上D95%以下の傾きは0.930(%/nm)であって0.7を上回っている。第1ピークAと第2ピークBとの間のD76%以上D82%以下の傾きは0.606(%/nm)であって0.7以下となっている。
【0040】
また、負極層20の断面(例えば積層方向を含む断面)における導電助剤23の粒子径の頻度分布を算出した場合にも、5nm以上130nm以下の範囲に、第1ピークAおよび第2ピークBが現れる。また、粒子径の累積分布を算出した場合に、第1ピークAと第2ピークBとの間に傾きが0.7(%/nm)となる箇所が現れる。
【0041】
この構成によれば、粒子径の小さい導電助剤が、電極活物質1つ1つの電子伝導を担うことができる。それにより、良好な電池特性が得られる。また、5nm以上130nm以下の範囲に第1ピークAが現れることから、粒子径の小さい導電助剤の粒子径が小さくなりすぎない。それにより、焼結時に熱に耐えられるようになる。一方、粒子径の大きい導電助剤が、電極層全体の電子伝導を担い、良好な電池特性が得られる。また、5nm以上130nm以下の範囲に第2ピークBが現れることから、粒子径の大きい導電助剤の粒子径が大きくなりすぎない。それにより、導電助剤比率を抑えることができる。以上のことから、容量に寄与しない導電助剤の比率を低く抑えつつ良好な電池動作を実現することができる。
【0042】
なお、頻度分布において、第1ピークAおよび第2ピークBの頻度が低いと、粒子径の小さい導電助剤の作用および粒子径の大きい導電助剤の作用が十分に得られないおそれがある。そこで、第1ピークAおよび第2ピークBの頻度に下限を設けることが好ましい。例えば、第1ピークAおよび第2ピークBの頻度は、3%以上であることが好ましく、4%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。
【0043】
また、頻度分布において、第1ピークAの粒子径と第2ピークBの粒子径との差が小さいと、粒子径の小さい導電助剤の作用および粒子径の大きい導電助剤の作用が十分に得られないおそれがある。そこで、第1ピークAの粒子径と第2ピークBの粒子径との差に下限を設けることが好ましい。例えば、第1ピークAの粒子径と第2ピークBの粒子径との差は、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。
【0044】
正極層10において、導電助剤13の量が少ないと十分な導電性が得られないおそれがあり、導電助剤13の量が多いと十分な容量が得られないおそれがある。そこで、導電助剤13の量に下限および上限を設けることが好ましい。例えば、正極層10の断面において、粒子径が5nm以上30nm未満の導電助剤13の面積比率が0.05%以上4%未満であり、粒子径が20nm以上130nm未満の導電助剤13の面積比率が1%以上4%未満であることが好ましい。また、正極層10の断面において、導電助剤13の合計の面積比率が1.05%以上8%未満であることが好ましい。
【0045】
負極層20において、導電助剤23の量が少ないと十分な導電性が得られないおそれがあり、導電助剤23の量が多いと十分な容量が得られないおそれがある。そこで、導電助剤23の量に下限および上限を設けることが好ましい。例えば、負極層20の断面において、粒子径が5nm以上30nm未満の導電助剤23の面積比率が0.05%以上4%未満であり、粒子径が20nm以上130nm未満の導電助剤23の面積比率が1%以上4%未満であることが好ましい。また、負極層20の断面において、導電助剤23の合計の面積比率が1.05%以上8%未満であることが好ましい。
【0046】
導電助剤13,23の材料は、導電性を有している材料であれば特に限定されるものではないが、カーボン材料であることが好ましい。カーボン材料は柔らかいため、固体電解質層30に対する突き破りを抑制することができる。例えば、導電助剤13,23として、繊維状のカーボン材料を用いることが好ましい。この場合、導電助剤13,23の幅が小さくなるため、板状カーボンを用いる場合と比較すると、正極層10と負極層20との間でのイオン伝導経路を確保することができる。導電助剤13,23として、カーボンナノチューブなどを用いることが好ましい。カーボンナノチューブは、中空繊維の形状を有していてやわらかいため、固体電解質層30に対する突き破りを抑制することができる。
【0047】
また、電極活物質の含有量を確保する観点から、積層断面において、電極活物質11が正極層10で占める面積比率および電極活物質21が負極層20で占める面積比率は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。
【0048】
一方で、固体電解質の含有量を確保する観点から、電極活物質11が正極層10で占める面積比率および電極活物質21が負極層20で占める面積比率は、75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
【0049】
導電助剤13,23などによる突き破りを抑制する観点から、固体電解質層30の厚みは、6μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましい。
【0050】
一方で、レート特性を確保する観点から、固体電解質層30の厚みは、19μm以下であることが好ましく、18μm以下であることがより好ましい。
【0051】
図7(a)は、導電助剤13,23を例示する斜視図である。図7(a)で例示するように、導電助剤13,23は、例えば、繊維状の形状を有しており、長径と短径とを有している。長径と短径との比であるアスペクト比(長径:短径)は、100:1~3000:1であることが好ましく、125:1~1000:1であることがより好ましく、150:1~500:1であることがさらに好ましい。
【0052】
十分な導電距離を確保するために、導電助剤13,23の全長は、1.5μm以上であることが好ましく、2.5μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。
【0053】
なお、導電助剤13,23は、正極層10および負極層20において直線状に延びている必要はなく、図7(b)で例示するように湾曲していてもよい。また、カーボンナノチューブを用いる場合、中空部分は、空隙であってもよく、他の部材が充填されていてもよい。なお、繊維状のカーボン材料を用いる場合には、十分な熱的安定性を実現するため、5nm以上の粒子径を有していることが好ましい。
【0054】
図7(c)は、正極層10の積層断面を例示する図である。積層断面は、全固体電池100,100aを研磨などで削ることで露出させることができる。また、積層断面は、SEM(走査型電子顕微鏡)などで観察することができる。導電助剤13の粒子径は、断面の重心を通る最も短い径を測定することで得ることができる。負極層20における導電助剤23の平均径も同様の手順で測定することができる。導電助剤13の面積比率は、例えば、画像解析ソフト(ImageJ Fiji:Schneider, C.A.,Rasband, W.S., Elieiri, K. W. "NIH Image to ImageJ: 25 years of image analysis."Nature Methods 9, 671-675, 2012)を用いて、SEM像のトータル面積に対する、導電助剤13の断面積の比率を求めることで測定することができる。負極層20における導電助剤23の面積比率も同様の手順で測定することができる。
【0055】
固体電解質層30の厚みは、全固体電池100,100aの積層断面をSEMで観察し、1層において異なる10点の厚みを測定し、その平均値を導出することによって測定することができる。
【0056】
続いて、図3で例示した全固体電池100aの製造方法について説明する。図8は、全固体電池100aの製造方法のフローを例示する図である。
【0057】
(固体電解質層用の原料粉末作製工程)
まず、上述の固体電解質層30を構成する固体電解質層用の原料粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、酸化物系固体電解質の原料粉末を作製することができる。得られた原料粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、5mmφのZrOボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0058】
(カバー層用の原料粉末作製工程)
まず、上述のカバー層50を構成するセラミックスの原料粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、カバー層用の原料粉末を作製することができる。得られた原料粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、5mmφのZrOボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0059】
(電極層用ペースト作製工程)
次に、上述の正極層10および負極層20の作製用の内部電極用ペーストを個別に作製する。例えば、電極活物質および固体電解質材料をビーズミル等で高分散化し、セラミックス粒子のみからなるセラミックスペーストを作製する。このセラミックスペーストに導電助剤13,23を混合する。繊維状のカーボンは絡み合っているため、ペースト用の溶剤と適切な分散剤を用いて超音波ホモジナイザーや湿式ジェットミルにより分散処理を行っておく。セラミックペースト、導電助剤13,23の分散液、およびバインダを混合し、電極層用ペーストを作製することができる。
【0060】
内部電極用ペーストの焼結助剤とし、例えば、Li-B-O系化合物、Li-Si-O系化合物、Li-C-O系化合物、Li-S-O系化合物,Li-P-O系化合物などのガラス成分のどれか1つあるいは複数などのガラス成分が含まれている。
【0061】
(外部電極用ペースト作製工程)
次に、上述の第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの作製用の外部電極用ペーストを作製する。例えば、導電性材料、ガラスフリット、バインダ、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで外部電極用ペーストを得ることができる。
【0062】
(固体電解質グリーンシート作製工程)
固体電解質層用の原料粉末を、結着材、分散剤、可塑剤などとともに、水性溶媒あるいは有機溶媒に均一に分散させて、湿式粉砕を行うことで、所望の平均粒径を有する固体電解質スラリを得る。このとき、ビーズミル、湿式ジェットミル、各種混練機、高圧ホモジナイザーなどを用いることができ、粒度分布の調整と分散とを同時に行うことができる観点からビーズミルを用いることが好ましい。得られた固体電解質スラリにバインダを添加して固体電解質ペーストを得る。得られた固体電解質ペーストを塗工することで、固体電解質グリーンシート51を作製することができる。塗工方法は、特に限定されるものではなく、スロットダイ方式、リバースコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ドクターブレード方式などを用いることができる。湿式粉砕後の粒度分布は、例えば、レーザ回折散乱法を用いたレーザ回折測定装置を用いて測定することができる。
【0063】
(積層工程)
図9(a)で例示するように、固体電解質グリーンシート51の一面に、内部電極用ペースト52を印刷する。固体電解質グリーンシート51上で内部電極用ペースト52が印刷されていない領域には、逆パターン53を印刷する。逆パターン53として、固体電解質グリーンシート51と同様のものを用いることができる。印刷後の複数の固体電解質グリーンシート51を、交互にずらして積層する。図9(b)で例示するように、積層方向の上下から、カバーシート54を圧着することで、積層体を得る。この場合、当該積層体において、一方の端面に正極層10用の内部電極用ペースト52が露出し、他方の端面に負極層20用の内部電極用ペースト52が露出するように、略直方体形状の積層体を得る。カバーシート54は、固体電解質グリーンシート作製工程と同様の手法でカバー層用の原料粉末を塗工することで形成することができる。カバーシート54は、固体電解質グリーンシート51よりも厚く形成しておく。塗工時に厚くしてもよく、塗工したシートを複数枚重ねることで厚くしてもよい。
【0064】
次に、2端面のそれぞれに、ディップ法等で外部電極用ペースト55を塗布して乾燥させる。これにより、全固体電池100aを形成するための成型体が得られる。
【0065】
(焼成工程)
次に、得られた積層体を焼成する。焼成の条件は酸化性雰囲気下あるいは非酸化性雰囲気下で、最高温度を好ましくは400℃~1000℃、より好ましくは500℃~900℃などとすることが特に限定なく挙げられる。最高温度に達するまでにバインダを十分に除去するために酸化性雰囲気において最高温度より低い温度で保持する工程を設けてもよい。プロセスコストを低減するためにはできるだけ低温で焼成することが望ましい。焼成後に、再酸化処理を施してもよい。以上の工程により、全固体電池100aが生成される。
【0066】
なお、内部電極用ペーストと、導電性材料を含む集電体用ペーストと、内部電極用ペーストとを順に積層することで、正極層10および負極層20内に集電体層を形成することができる。
【実施例0067】
(実施例1~5)
電極活物質および固体電解質をビーズミルで高分散化し、セラミックス粒子のみからなるセラミックスペーストを作製した。導電助剤として、カーボンナノチューブを使用した。カーボンナノチューブは絡み合っているため、ペースト用の溶剤と適切な分散剤を用いて超音波ホモジナイザーや湿式ジェットミルにより分散処理を行った。カーボンナノチューブの繊維径のアスペクト比が100:1~1000:1となるように分散処理の条件を調整した。セラミックペースト、カーボンナノチューブの分散液、およびバインダを混合し、電極ペーストを作製した。その後、固体電解質層上に電極ペーストを印刷して積層し、焼成し、外部電極を形成して全固体電池を作製した。実施例1~5のそれぞれにおいて、導電助剤の量や粒子径を調整した。
【0068】
焼結後の電池の断面をイオンミリング処理により研磨し、SEM観察を行い、電極層中に含まれる各導電助剤の粒子径および面積比率を求めた。粒子径については、頻度分布および累積分布を算出した。実施例1~5の頻度分布において、5nm以上130nm以下の範囲に、最も大きい2つのピークである第1ピークAおよび第2ピークBが現れた。また、累積部分布において、第1ピークAと第2ピークBとの間に傾きが0.7以下(%/nm)となる箇所が現れた。
【0069】
実施例1では、第1ピークAの粒子径は25nmであり、第1ピークの頻度が24%であり、第2ピークBの粒子径は45nmであり、第2ピークの頻度が5.4%であり、第1ピークAと第2ピークBとの間の最小の傾きは0.67であった。実施例2では、第1ピークAの粒子径は25nmであり、第1ピークの頻度が22%であり、第2ピークBの粒子径は55nmであり、第2ピークの頻度が5.7%であり、第1ピークAと第2ピークBとの間の最小の傾きは0.61であった。実施例3では、第1ピークAの粒子径は25nmであり、第1ピークの頻度が8.7%であり、第2ピークBの粒子径は65nmであり、第2ピークの頻度が9.9%であり、第1ピークAと第2ピークBとの間の最小の傾きは0.49であった。実施例4では、第1ピークAの粒子径は20nmであり、第1ピークの頻度が5.0%であり、第2ピークBの粒子径は66nmであり、第2ピークの頻度が7.5%であり、第1ピークAと第2ピークBとの間の最小の傾きは0.53であった。実施例5では、第1ピークAの粒子径は25nmであり、第1ピークの頻度が22%であり、第2ピークBの粒子径は55nmであり、第2ピークの頻度が5.7%であり、第1ピークAと第2ピークBとの間の最小の傾きは0.61であった。
【0070】
実施例1では、粒子径が5nm以上30nm未満の導電助剤の面積比率が3.5%であり、粒子径が20nm以上130nm未満の導電助剤の面積比率が1.0%であった。実施例2では、粒子径が5nm以上30nm未満の導電助剤の面積比率が3.5%であり、粒子径が20nm以上130nm未満の導電助剤の面積比率が3.5%であった。実施例3では、粒子径が5nm以上30nm未満の導電助剤の面積比率が0.2%であり、粒子径が20nm以上130nm未満の導電助剤の面積比率が3.0%であった。実施例4では、粒子径が5nm以上30nm未満の導電助剤の面積比率が0.05%であり、粒子径が20nm以上130nm未満の導電助剤の面積比率が1.0%であった。実施例5では、粒子径が5nm以上30nm未満の導電助剤の面積比率が5.0%であり、粒子径が20nm以上130nm未満の導電助剤の面積比率が5.0%であった。
【0071】
(比較例1)
比較例1では、導電助剤の粒子径の頻度分布において、5nm以上130nm以下の範囲に、ピーク1が1つしか現れなかった。粒子径が5nm以上30nm未満の導電助剤の面積比率が3.0%であり、粒子径が20nm以上130nm未満の導電助剤の面積比率が0%であった。その他の条件は、実施例1と同じであった。
【0072】
(比較例2)
比較例2では、導電助剤の粒子径の頻度分布において、5nm以上130nm以下の範囲に、ピーク1が1つしか現れなかった。粒子径が5nm以上30nm未満の導電助剤の面積比率が0%であり、粒子径が20nm以上130nm未満の導電助剤の面積比率が3.0%であった。その他の条件は、実施例1と同じであった。
【0073】
(電池特性の評価)
実施例1~5および比較例1,2のそれぞれについて、電池特性を評価した。電池特性の評価は、25℃にてCC充放電測定(充電電流0.2C-放電電流0.2Cまたは充電電流1C-放電電流1Cとし、カット電圧上限3.6V、下限1.5V)を行った。レート特性は、0.2C放電容量100%としたときの、1C放電容量の比率を求め、当該比率が70%以上である場合を非常に良好「〇」と判定し、当該比率が60%以上である場合を良好「△」と判定し、当該比率が60%未満である場合を不良「×」と判定した。容量値は、0.2C放電容量で比較した。実施例2の放電容量を100%としたときの各電池の放電容量値の比率を求め、当該比率が90%以上である場合を非常に良好「〇」と判定し、当該比率が80%以上である場合を良好「△」と判定し、当該比率が80%未満である場合を不良「×」と判定した。
【0074】
(サイクル特性)
また、実施例1~5および比較例1,2のそれぞれについて、サイクル特性を調べた。具体的には、25℃、3.6V-1.5Vの電圧範囲で1Cにて充放電を行い、初回放電容量に対し、100サイクル後の放電容量の値が80%以上で「〇」、60%以上で「△」、60%以下で「×」と判定した。
【0075】
結果を表1に示す。実施例1~5では、レート特性、容量、サイクル特性のいずれも不良「×」とは判定されなかった。これは、導電助剤の粒子径の頻度分布において、5nm以上130nm以下の範囲に、最も大きい2つのピークである第1ピークAおよび第2ピークBが現れ、粒子径の累積分布において、第1ピークAと前記第2ピークBとの間に傾きが0.7以下(%/nm)となる箇所が現れたからであると考えられる。比較例1では、レート特性が不良「×」と判定された。これは、比較的大きい粒子径の導電助剤が含まれず、電極層全体の導電性が低くなったからであると考えられる。比較例2では、容量およびサイクル特性が不良「×」と判定された。これは、比較的小さい粒子径の導電助剤が含まれず、電極活物質1つ1つの導電パスが不足したからであると考えられる。
【表1】
【0076】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 正極層
11 電極活物質
12 固体電解質
13 導電助剤
15 第1集電体層
20 負極層
21 電極活物質
22 固体電解質
23 導電助剤
25 第2集電体層
30 固体電解質層
40a 第1外部電極
40b 第2外部電極
50 カバー層
51 固体電解質グリーンシート
52 内部電極用ペースト
53 逆パターン
54 カバーシート
55 外部電極用ペースト
60 積層チップ
70サイドマージン
100,100a 全固体電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9