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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174499
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】形成方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20241210BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20241210BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20241210BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20241210BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20241210BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241210BHJP
【FI】
B28B1/30
B29C64/106
B29C64/209
B29C64/386
B33Y50/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092355
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】石関 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】大川 悠奈
(72)【発明者】
【氏名】北村 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】木村 達治
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL29
4F213WL32
4F213WL55
4F213WL56
4F213WL62
4F213WL74
4F213WL85
4F213WW02
4F213WW50
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】効率的に構造物を形成するための形成方法を提供する。
【解決手段】ノズルを移動させながらノズルから吐出される造形材で形成されるレイヤを積み上げることにより積層させた積層物410を形成する。この場合、傾斜部を有する第1領域411と、第1領域411に接続された第2領域412と、を形成する。そして、第1領域411を下方に配置することにより、上方に配置された第2領域412により、傾斜部を有する積層物410を形成し、第1領域411を遮蔽する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出される造形材で形成されるレイヤを積み上げることにより積層させた構造物を形成する方法であって、
傾斜部を有する第1領域と、前記第1領域に接続された第2領域と、を形成し、
前記第1領域を下方に配置することにより、上方に配置された前記第2領域により、前記傾斜部を有する構造物を形成し、
前記第1領域を遮蔽することを特徴とする形成方法。
【請求項2】
段差を有する階段状の台座上に、前記段差を埋めるようにレイヤを積層することにより、前記第1領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の形成方法。
【請求項3】
積層厚を変更することにより形成した傾斜部を有する前記第1領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動するノズルから吐出される造形材を積層させて形成する構造物の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の立体の構造物を形成する場合、3次元(3D)プリンタを利用することがある。この3Dプリンタにおいては、ノズルから材料を吐出させながらノズルを移動させて各レイヤを形成する。そして、各レイヤを積み重ねることにより立体形状を有する構造物を形成する。3次元プリンタを用いて、所望の形状の側面を有する構造物を形成するための構造物形成システムが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の構造物形成システムは、構造物を形成するモルタルを吐出するノズル、ロボットアーム、側面部材及び制御装置を備えている。側面部材を、ノズルの移動経路から所定間隔だけ離した位置を保ちながら、移動経路に沿って配置する。所定間隔としては、ノズルから吐出されたモルタルが、側面部材の当接面に接触するとともに、下層のモルタル層の端面の隙間を埋めることができる距離を用いる。
【0003】
また、図8(a)に示すように、傾斜形状有する構造物500を構築する場合もある。このような形状を、3Dプリンタで形成することも可能である。
図8(b)に示すように、上層部において、3Dプリンタによる各階層を小さくすることにより、階段状の傾斜形状を有する構造物501を形成することができる。
【0004】
また、図8(c)に示すように、上層部において、3Dプリンタによる各階層の積層厚を変更することにより、傾斜形状を有する構造物502を形成することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-69661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8(b)に示す構造物501では、階段状になっているため、滑らかな形状を実現することができない。また、図8(c)に示す構造物502を形成するためには、3Dプリンタにおいて、積層厚を変更する必要がある。3Dプリンタでは、この積層厚の制御は困難であるため、滑らかな形状を実現することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する形成方法は、ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出される造形材で形成されるレイヤを積み上げることにより積層させた構造物を形成する。ここでは、傾斜部を有する第1領域と、前記第1領域に接続された第2領域と、を形成し、前記第1領域を下方に配置することにより、上方に配置された前記第2領域により、前記傾斜部を有する構造物を形成し、前記第1領域を遮蔽する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効率的に構造物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における形成支援システムの構造の説明図である。
図2】実施形態におけるハードウェア構成の説明図である。
図3】実施形態における処理手順の説明図である。
図4】実施形態における形成方法の説明図であって、(a)は台座の形成、(b)は積層物の形成、(c)は積層物の設置、(d)は積層物の固定の説明図である。
図5】実施形態における形成方法の説明図であって、(a)は台座、(b)は台座上の積層物、(c)は台座を除去した積層物の説明図である。
図6】別例における作成手順の説明図であって、(a)は台座、(b)は台座上の積層物の説明図である。
図7】別例における作成手順の説明図であって、(a)は積層厚を変更した積層物、(b)は積層物を並べた構造物の説明図である。
図8】従来の構造物の説明図であって、(a)は傾斜部を有する構造物、(b)は傾斜分を階段状に形成した構造物、(c)は積層厚を変更した構造物の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図5を用いて、形成方法を具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態では、3Dプリンタ10を用いる。この3Dプリンタ10は、制御装置20によって制御される。
【0011】
(ハードウェア構成例)
図2は、制御装置20等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
【0012】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0013】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースである。
入力装置H12は、利用者等からの入力を受け付ける装置である。表示装置H13は、各種情報を表示する装置である。
【0014】
記憶装置H14は、制御装置20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶部である。
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、制御装置20における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。
【0015】
(3Dプリンタ10の構成)
図1に示すように、3Dプリンタ10は、吐出部としてのノズル11、ロボットアーム15を備える。
【0016】
ノズル11は、その先端部が開口した吐出口11aを有している。本実施形態では、吐出口11aは、下方を向いている。ノズル11の吐出口11aと反対側の端部には、ホース12の端部が接続されている。ホース12は、圧送ポンプ13に接続されている。この圧送ポンプ13の圧力により、ホース12を介してノズル11に供給されたモルタルは、吐出口11aから下方に吐出される。
【0017】
ノズル11には、取付部14を介してロボットアーム15が取り付けられる。ノズル11は、このロボットアーム15に支持され、このロボットアーム15の動きに従って水平方向や上下方向に移動する。ロボットアーム15は、制御装置20の制御部21からの指示によって移動が制御される。本実施形態の制御部21は、移動時においてもノズル11からのモルタルの吐出方向が常に下方になるように、ロボットアーム15を制御する。
【0018】
(制御装置20の構成)
制御装置20は、構造物形成処理を実行する制御部21を備える。そのため、記憶部に格納された構造物形成プログラムを実行することにより、制御部21は、積層管理部211、移動制御部212及び吐出量制御部213として機能する。
【0019】
積層管理部211は、積層させるモルタルの経路及び高さを管理する処理を実行する。積層管理部211は、積み上げたレイヤL1の数をカウントし、現在のモルタルの積層数を記憶し、構造物の最終的な積層数になった場合にノズル11の移動を停止する。
【0020】
移動制御部212は、経路に応じてノズル11を移動させるロボットアーム15の動きを制御する処理を実行する。
吐出量制御部213は、モルタルの圧送ポンプ13を制御して、ノズル11から吐出されるモルタルの吐出量を制御する処理を実行する。
【0021】
吐出経路記憶部22には、構造物を形成するノズル11の吐出経路データが記録される。この吐出経路データは、経路及び経路吐出幅を決定した場合に記録される。吐出経路データには、構造物識別子、レイヤ識別子毎の経路、経路吐出幅に関するデータが含まれる。
【0022】
構造物識別子データ領域には、各構造物を特定するための識別子に関するデータが記録される。
レイヤ識別子データ領域には、一筆書きで始点から終点までの各レイヤの階層数に関するデータが記録される。
【0023】
経路データ領域には、この階層における3Dプリンタ10のノズル11の経路の3次元座標が記録される。
経路吐出幅データ領域には、一方向に移動するノズル11から吐出されるモルタルにより形成される経路部の幅に関するデータが記録される。
【0024】
(形成処理)
次に、図3図5を用いて、形成処理について説明する。
図3に示すように、まず、台座を配置する(ステップS11)。本実施形態では、階層によって形状が異なる台座を形成する。例えば、3Dプリンタ10を用いて、下層に対して上層を小さくすることにより、階段形状の段差(蹴上げ)を有する台座を形成する。階段形状の台座においては、各段差(蹴上げ)の高さと、平面部(踏み面)の長さとの割合が、一定になるようにしておく。この割合により、傾斜角度が決まる。更に、平面部において、吐出経路を確保可能な大きさを形成する。更に、各段差の高さは、積層厚のほぼ整数倍になるようにしておく。
【0025】
図4(a)に示すように、3Dプリンタ10を用いて、地表面G1に、下層に対して上層が小さくなる吐出経路で台座400を形成する。そして、形成した台座400の上面には、剥離剤を塗布したり、養生テープを貼り付けたりすることにより、剥離層R1を形成する。この剥離層R1により、台座400上に形成する積層物と台座400とを分離可能にしておく。
【0026】
次に、上層積層物の形成を行なう(ステップS12)。ここでは、3Dプリンタ10を用いて、台座400上に積層物を形成する。
図4(b)に示すように、3Dプリンタ10を用いて、台座400の上層の階段形状を、積層により埋めることにより、傾斜部としての第1領域411を形成する。階段形状を埋め込んだ第1領域411上に、各階層を所望の大きさで第2領域412を積層することにより、積層物410を形成する。この場合、各階層の大きさは、構造物の大きさと傾斜角度とに応じて決める。
【0027】
次に、台座を除去する(ステップS13)。具体的には、上層となっている積層物410を揚重して、剥離層R1で積層物410と台座400とを分離する。そして、残存している台座400を除去する。
図4(c)に示すように、台座400から分離された積層物410を、地表面G1に設置する。この場合、第1領域411が下層領域となる。
【0028】
次に、積層物の固定を行なう(ステップS14)。ここでは、積層物410の下層領域である第1領域411の一部を地中に埋め込むことにより、第1領域411の一部を固定する。この場合、第1領域411の埋め込まれた部分は、周囲から遮蔽される。
具体的には、図4(d)に示すように、第1領域411の一部を、地表面G1よりも低い位置に埋め込むことにより、積層物410を固定する。この場合、第2領域412が露出する状態で、第1領域411の段差部分が地表面G1より低い位置となるように埋め込む。この場合、例えば、予め掘削した領域に積層物410を配置した後で埋め戻す。また、盛土により、埋め込んでもよい。
【0029】
(具体例)
図5を用いて、台座、積層物の具体的な形状の一例を説明する。
図5(a)に示すように、3Dプリンタ10を用いて、階段状の台座401を形成する。この場合、1階層の吐出経路を二重化することにより、一筆書きにより1階層を形成する。更に、台座401の上面には剥離層R1を設ける。
【0030】
図5(b)に示すように、3Dプリンタ10を用いて、台座401の段差を埋めるように第1領域411を形成する。この場合も、1階層の吐出経路を二重化することにより、一筆書きにより1階層を形成する。
【0031】
図5(c)に示すように、剥離層R1で、台座401を除去することにより、積層物410を取得する。この積層物410は、台座401の形状に応じて、下層領域が階段状になるので、この下層領域を水平面に設置することにより、上層領域を傾斜させることができる。
【0032】
(作用)
下層領域に階段形状を有する積層物410を設置することにより、上層領域が傾斜する。
【0033】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、台座を配置する(ステップS11)。これにより、第1領域411に階段形状を形成する積層物410を形成することができる。
(2)本実施形態では、台座400の上面に剥離層R1を形成する。これにより、台座の除去(ステップS13)において、台座400から積層物410を容易に分離することができる。
【0034】
(3)本実施形態では、上層積層物の形成を行なう(ステップS12)。1階層の厚みは同じであるため、モルタルの積層を容易に制御することができる。
(4)本実施形態では、積層物の固定を行なう(ステップS14)。これにより、第1領域411の階段形状を、外部から見えなくするとともに、上層領域となった第2領域412は滑らかな傾斜を実現することができる。
【0035】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、台座を配置する(ステップS11)。ここでは、3Dプリンタ10を用いて、台座400を形成する。台座400は、積層物410を支持できる強度があれば、モルタルでなくてもよい。例えば、樹脂を用いた3Dプリンタにより、台座を形成してもよい。
【0036】
・上記実施形態では、台座を配置する(ステップS11)。ここでは、3Dプリンタ10を用いて台座400を形成する。段差を有する台座を用いれば、形成方法は3Dプリンタ10を用いる場合に限定されない。
【0037】
図6(a)に示すように、複数の板P1を重ね合わせて台座402を形成してもよい。この場合にも、各板P1において露出している上面には剥離層を設けておく。
そして、図6(b)に示すように、板P1によって形成された段差を埋めるように、積層物410を形成する。
【0038】
積層物の傾斜角度は、台座402の階段の段差、平面部の大きさによって決まるため、傾斜角度が同じであれば、多様な形状の形状の積層物に利用することができるので、台座を有効活用することができる。
【0039】
・上記実施形態では、台座400を用いて、傾斜部を有する積層物410を形成する。これに代えて、下層領域に積層厚さが異なる領域を設けてもよい。
図7(a)に示すように、3Dプリンタ10を用いて、下層領域421と上層領域422を有する積層物420を形成する。この場合、傾斜部としての下層領域421では、一階層において、ノズル11の高さ及び積層厚さを変更することにより、傾斜を作る。そして、上層領域422では、ノズル11の高さを変更しながら、一定の積層厚さで各階層を積層する。
【0040】
そして、図7(b)に示すように、複数の積層物420を、上層領域422の各階層が繋がるように位置合わせを行ないながら並べて配置する。
その後、下層領域421は地表面G1以下に埋設する。
これにより、地表面G1上では、上層領域422の傾斜形状において、各階層が繋がった積層物420からなる構造物を形成することができる。
【0041】
・上記実施形態では、積層物の下層領域を地中に埋め込むことにより、下層領域を遮蔽する。遮蔽方法は、地中に埋め込む方法に限定されるものではない。下層領域の周囲に壁等を設けて遮蔽するようにしてもよい。
・上記実施形態では、第2領域412を上方に積層する。ここで、第1領域411を水平面に設置した場合の傾斜に応じて、積層物の固定時に、第1領域411の端面が延長面になるように、各階層をずらして積層してもよい。
【0042】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記第1領域及び前記第2領域の形成後に、前記台座を除去することにより、前記第1積層部を傾斜させることを特徴とする請求項2に記載の形成方法。
【0043】
(b)前記台座を、前記ノズルから吐出される造形材で形成することを特徴とする請求項2又は(a)に記載の形成方法。
(c)積層厚が同じ第2領域を有する第1構造物及び第2構造物を形成し、
前記第1構造物及び前記第2構造物とを隣接させるとともに、第1構造物の第2領域と、前記第1構造物の第2領域とを、異なる階層で接続するように配置位置を調整することを特徴とする請求項1、2、(a)又は(b)に記載の形成方法。
【符号の説明】
【0044】
L1…レイヤ、10…3Dプリンタ、11…ノズル、11a…吐出口、12…ホース、14…取付部、15…ロボットアーム、20…制御装置、21…制御部、211…積層管理部、212…移動制御部、213…吐出量制御部、22…吐出経路記憶部、411…第1領域、412…第2領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8