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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174501
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】制御装置、移動体及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/46 20060101AFI20241210BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20241210BHJP
   F02C 9/28 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F02C9/46
H02P9/04 E
F02C9/28 A
F02C9/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092358
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 久夫
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590CA08
5H590CA21
5H590CD01
5H590CE02
5H590HA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガスタービンエンジンと発電機とを備える発電システムをより良好に制御し得る制御装置、制御方法及び制御装置を備えた移動体を提供する。
【解決手段】制御装置は、回転数センサから供給される信号に基づいて、ガスタービンエンジンの回転数である第1回転数を取得する第1回転数取得部と、回転角度センサから供給される信号に基づいて、発電機の回転数である第2回転数を取得する第2回転数取得部と、第1回転数と第2回転数とを比較する比較部と、比較部による比較結果に基づいて、第1回転数と第2回転数とのうちの低い方の回転数に基づいてガスタービンエンジン及び発電機を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンに備えられる回転数センサから供給される信号に基づいて、前記ガスタービンエンジンの回転数である第1回転数を取得する第1回転数取得部と、
前記ガスタービンエンジンにより回転される発電機に備えられる回転角度センサから供給される信号に基づいて、前記発電機の回転数である第2回転数を取得する第2回転数取得部と、
前記第1回転数と前記第2回転数とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の回転数に基づいて前記ガスタービンエンジン及び前記発電機を制御する制御部と、
を備える、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記制御部は、前記第1回転数と前記第2回転数との差が回転数差閾値以上である場合に、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の前記回転数に基づいて前記ガスタービンエンジン及び前記発電機を制御する、制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置において、
前記制御部は、要求電力に基づいて取得される目標回転数となるように前記ガスタービンエンジンを制御し、前記要求電力に基づいて取得される目標トルク値となるように前記発電機を制御する、制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置において、
前記回転数センサに異常が発生した場合に、前記回転角度センサから供給される前記信号に基づいて前記第1回転数を推定する推定部を備える、制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の制御装置において、
前記制御部は、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の前記回転数を前記ガスタービンエンジンの目標値として前記ガスタービンエンジンを制御するとともに、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の前記回転数に対応するトルク値を前記発電機の目標トルク値として前記発電機を制御する、制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置を備える移動体。
【請求項7】
ガスタービンエンジンに備えられる回転数センサから供給される信号に基づいて、前記ガスタービンエンジンの回転数である第1回転数を取得するステップと、
前記ガスタービンエンジンにより回転される発電機に備えられる回転角度センサから供給される信号に基づいて、前記発電機の回転数である第2回転数を取得するステップと、
前記第1回転数と前記第2回転数とを比較するステップと、
前記第1回転数と前記第2回転数との比較結果に基づいて、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の回転数に基づいて前記ガスタービンエンジン及び前記発電機を制御するステップと、
を備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、移動体及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保するため、エネルギーの効率化に貢献する電動化技術に関する研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、圧縮機を備えるガスタービンエンジンと、ガスタービンエンジンにより駆動される発電機とを含むガスタービン発電機が示される。特許文献1の技術では、圧縮機の圧力が基準値を超え、且つ、発電機の回転数が基準値を超えた場合に、ガスタービンエンジンに供給される燃料がカットされる。これにより、特許文献1の技術は、ガスタービン発電機のオーバーランを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-219322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスタービンエンジンと発電機とを備える発電システムをより良好に制御し得る制御装置、制御方法及び制御装置を備えた移動体を提供することが望まれている。
【0006】
本発明は上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の制御装置は、ガスタービンエンジンに備えられる回転数センサから供給される信号に基づいて、前記ガスタービンエンジンの回転数である第1回転数を取得する第1回転数取得部と、前記ガスタービンエンジンにより回転される発電機に備えられる回転角度センサから供給される信号に基づいて、前記発電機の回転数である第2回転数を取得する第2回転数取得部と、前記第1回転数と前記第2回転数とを比較する比較部と、前記比較部による比較結果に基づいて、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の回転数に基づいて前記ガスタービンエンジン及び前記発電機を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本発明の移動体は、上記制御装置を備える。
【0009】
本発明の制御方法は、ガスタービンエンジンに備えられる回転数センサから供給される信号に基づいて、前記ガスタービンエンジンの回転数である第1回転数を取得するステップと、前記ガスタービンエンジンにより回転される発電機に備えられる回転角度センサから供給される信号に基づいて、前記発電機の回転数である第2回転数を取得するステップと、前記第1回転数と前記第2回転数とを比較するステップと、前記第1回転数と前記第2回転数との比較結果に基づいて、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の回転数に基づいて前記ガスタービンエンジン及び前記発電機を制御するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発電システムをより良好に制御し得る制御装置、制御方法及び制御装置を備えた移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、移動体の概略図である。
図2図2は、発電システムの概略図である。
図3図3は、各々のECUの機能ブロック図である。
図4図4は、マネージメントECUが行う処理のフローチャートである。
図5図5は、設定部が行う処理のブロック線図である。
図6図6は、エンジンECUが行う処理のフローチャートである。
図7図7は、発電機ECUが行う処理のフローチャートである。
図8図8は、発電装置の回転数とトルクとの関係を示す図である。
図9図9は、発電装置の回転数とトルクとの関係を示す図である。
図10図10は、発電装置の回転数とトルクとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[移動体10]
図1は、移動体10の概略図である。移動体10は、電気負荷を備える。以下の実施形態に係る移動体10は、電動垂直離着陸機(eVTOL機)である。なお、移動体10は、eVTOL機以外の航空機であってもよい。また、移動体10は、航空機に限らず、船舶、自動車、列車等であってもよい。
【0013】
移動体10は、8つのVTOLロータ12を備える。VTOLロータ12は、機体14に対して上方向の推力を発生させる。移動体10は、8つの電動モータ16を備える。電動モータ16は、電気負荷である。1つの電動モータ16が、1つのVTOLロータ12を駆動する。
【0014】
移動体10は、2つのクルーズロータ18を有する。クルーズロータ18は、機体14に対して前方向の推力を発生させる。移動体10は、4つの電動モータ20を備える。電動モータ20は、電気負荷である。2つの電動モータ20が、1つのクルーズロータ18を駆動する。
【0015】
移動体10は、発電装置24を含む発電システム22を備える。また、移動体10は、蓄電装置26を備える。蓄電装置26は、発電装置24によって発電される電力の一部を蓄電することが可能である。発電装置24及び蓄電装置26は、各々の電気負荷に電力を供給することが可能である。
【0016】
[発電システム22]
図2は、発電システム22の概略図である。図3は、各々のECUの機能ブロック図である。発電システム22は、移動体10のコントローラ(不図示)から要求される電力を発生させるように動作する。発電システム22は、発電装置24及び制御装置28を備える。なお、ここでは、発電システム22が移動体10に備えられる場合を例に説明するが、これに限定されない。発電システム22が、施設、工場等に備えられてもよい。
【0017】
発電装置24は、ガスタービンエンジン30、燃料噴射装置32、発電機34及びPCU(Power Control Unit)36を備える。ガスタービンエンジン30の回転軸30aと、発電機34の回転軸34aとは互いに接続される。ガスタービンエンジン30は、発電機34を回転させる。燃料噴射装置32は、インジェクタ(不図示)を備える。インジェクタは、制御装置28から伝送される動作信号に応じて動作して、ガスタービンエンジン30の燃焼器に燃料を供給する。発電機34は、ガスタービンエンジン30によって回転されて、三相交流電力を発生させる。PCU36は、発電機34が発生させる三相交流電力を直流電力に変換する。PCU36は、AC/DCコンバータ38を備える。AC/DCコンバータ38は、複数のスイッチング素子(不図示)を備える。スイッチング素子は、制御装置28から伝送される動作信号に応じて動作して、蓄電装置26及び電気負荷に供給される直流電力を制御する。
【0018】
発電装置24は、回転数センサ40及び回転角度センサ42を備える。回転数センサ40は、ガスタービンエンジン30の回転軸30aの近傍に配される。回転角度センサ42は、発電機34の回転軸34aの近傍に配される。
【0019】
回転数センサ40は、ガスタービンエンジン30の回転数を検出する。回転数センサ40は、ガスタービンエンジン30の回転数を示すデジタル信号を制御装置28に伝送する。回転数センサ40には、例えば電磁ピックアップが用いられる。本明細書では、ガスタービンエンジン30の回転数をENG回転数(第1回転数)とも称する。「ENG」とは、「engine」の略である。
【0020】
回転角度センサ42は、発電機34の回転角度を検出する。回転角度センサ42は、発電機34の回転角度を示すアナログ信号を制御装置28に伝送する。回転角度センサ42には、例えばレゾルバが用いられる。回転角度センサ42により検出される回転角度は、制御装置28により回転数に変換される。本明細書では、発電機34の回転数をGEN回転数(第2回転数)とも称する。「GEN」とは、「generator」の略である。
【0021】
ガスタービンエンジン30の回転軸30aは、発電機34の回転軸34aとギア等を介さずに接続される。このため、ガスタービンエンジン30の実回転数と、発電機34の実回転数とは、同じである。一方、回転数センサ40により検出されるENG回転数と、回転角度センサ42により検出される回転角度から算出されるGEN回転数とは、センサの故障、ノイズ等により、異なる場合がある。
【0022】
制御装置28は、マネージメントECU(Electronic Control Unit)44、エンジンECU46、発電機ECU48及び変換装置50を備える。
【0023】
マネージメントECU44と発電機ECU48とエンジンECU46との各々は、CANバス52に接続される。マネージメントECU44と発電機ECU48とエンジンECU46との各々は、CANバス52を介して互いに通信可能である。
【0024】
図3で示すように、各々のECUは、演算部及び記憶部を備える。即ち、マネージメントECU44は、演算部54及び記憶部56を備える。エンジンECU46は、演算部58及び記憶部60を備える。発電機ECU48は、演算部62及び記憶部64を備える。
【0025】
演算部54、58、62は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサである。演算部54、58、62は、記憶部56、60、64に記憶されているプログラムを実行することにより、各装置を制御する。演算部54、58、62の少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって実現されてもよい。演算部54、58、62の少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。
【0026】
記憶部56、60、64は、コンピュータ可読記憶媒体である不図示の揮発性メモリ及び不図示の不揮発性メモリにより構成される。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)等である。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等である。データ等が、例えば、揮発性メモリに記憶される。プログラム、テーブル、マップ等が、例えば、不揮発性メモリに記憶される。記憶部56、60、64の少なくとも一部が、上述したプロセッサ、集積回路等に備えられてもよい。
【0027】
マネージメントECU44に備えられる演算部54は、取得部70、設定部72及び比較部74として機能する。取得部70は、演算部54の外部から各種の情報を取得するか又は計算等により各種の情報を取得する。設定部72は、オペレーションポイントを設定する。オペレーションポイントは、発電装置24の制御目標値である。オペレーションポイントを示す情報は、ガスタービンエンジン30の目標回転数と、発電機34の目標トルク値とを含む。比較部74は、エンジンECU46で認識されるENG回転数と、発電機ECU48で認識されるGEN回転数とを比較する。
【0028】
エンジンECU46に備えられる演算部58は、取得部76(第1回転数取得部)、正常判定部78、推定部80及び制御部82として機能する。取得部76は、演算部58の外部から各種の情報を取得するか又は計算等により各種の情報を取得する。正常判定部78は、回転数センサ40及び変換装置50が正常か異常かを判定する。推定部80は、回転数センサ40に異常が発生した場合に、回転角度センサ42によって検出される回転角度に基づいてENG回転数を推定する。制御部82は、ガスタービンエンジン30の回転数が目標回転数となるようにガスタービンエンジン30の動作を制御する。具体的には、制御部82は、燃料噴射装置32を制御して、ガスタービンエンジン30への燃料供給量を調整する。
【0029】
発電機ECU48に備えられる演算部62は、取得部84(第2回転数取得部)及び制御部86として機能する。取得部84は、演算部62の外部から各種の情報を取得するか又は計算等により各種の情報を取得する。制御部86は、発電機34のトルク値が目標トルク値となるように発電機34の動作を制御する。具体的には、制御部86は、AC/DCコンバータ38を制御して、発電機34の発電電流を調整する。
【0030】
図2で示すように、変換装置50は、回転角度センサ42から伝送されるアナログ信号を、デジタル信号に変換する。回転角度センサ42がレゾルバである場合、変換装置50としては、RD(レゾルバ/デジタル)コンバータが用いられる。変換装置50は、変換後のデジタル信号を、エンジンECU46に伝送する。
【0031】
[マネージメントECU44が行う処理]
図4は、マネージメントECU44が行う処理のフローチャートである。マネージメントECU44は、発電装置24の管理に関する処理を行う。マネージメントECU44は、移動体10の電源がオンとされている間、図4で示す一連の処理を繰り返し実行する。
【0032】
ステップS1において、マネージメントECU44に備えられる取得部70は、移動体10のコントローラから要求される電力を取得する。この電力を要求電力と称する。移動体10のコントローラは、移動体10に備えられる電気機器の動作状態、移動体10の飛行状態、操縦者の操縦等に従って要求電力を算出する。移動体10のコントローラは、算出された要求電力をマネージメントECU44に伝送する。取得部70は、この要求電力を取得する。
【0033】
ステップS2において、マネージメントECU44に備えられる設定部72は、要求電力に基づいてオペレーションポイントを設定する。設定部72は、例えば、図5で示す処理を行うことにより要求回転数と要求トルク値とを取得して、オペレーションポイントを設定することが可能である。設定部72は、変換処理部90、除算処理部92及び乗算処理部94を含む。変換処理部90は、マップ88を用いて要求電力を要求回転数に変換する。除算処理部92は、変換処理部90により取得された要求回転数を要求電力で除算する。乗算処理部94は、除算処理部92により算出された除算値に換算係数96を乗算することにより要求トルク値を算出する。設定部72は、要求回転数をオペレーションポイントの目標回転数とする。設定部72は、要求トルク値をオペレーションポイントの目標トルク値とする。
【0034】
なお、変換処理部90で使用されるマップ88は、マネージメントECU44に備えられる記憶部56に予め記憶される。マップ88は、電力と回転数とを互いに対応付ける。乗算処理部94で使用される換算係数96も、記憶部56に予め記憶される。換算係数96は、除算処理部92で算出された除算値をトルク値に換算するための係数である。
【0035】
ステップS3において、設定部72は、エンジンECU46に目標回転数を伝送する。図6を用いて説明するように、エンジンECU46(制御部82)は、設定部72から伝送される目標回転数に基づいてガスタービンエンジン30の動作を制御する。また、設定部72は、発電機ECU48に目標トルク値を伝送する。図7を用いて説明するように、発電機ECU48(制御部86)は、設定部72から伝送される目標トルク値に基づいて発電機34の動作を制御する。
【0036】
ステップS4において、取得部70は、エンジンECU46から伝送されるENG回転数を取得する。ここで取得されるENG回転数は、エンジンECU46で認識されるガスタービンエンジン30の回転数である。また、取得部70は、発電機ECU48から伝送されるGEN回転数を取得する。ここで取得されるGEN回転数は、発電機ECU48で認識される発電機34の回転数である。
【0037】
ステップS5において、マネージメントECU44に備えられる比較部74は、ENG回転数とGEN回転数との差の絶対値(|ENG回転数-GEN回転数|)と、回転数差閾値とを比較する。回転数差閾値は、記憶部56に予め記憶される。ENG回転数とGEN回転数との差の絶対値が回転数差閾値以上である場合(ステップS5:YES)、処理はステップS6に移行する。ENG回転数とGEN回転数との差の絶対値が回転数差閾値以上であるというのは、エンジンECU46で認識されるENG回転数と、発電機ECU48で認識されるGEN回転数との差が大きいことを意味する。一方、ENG回転数とGEN回転数との差の絶対値が回転数差閾値未満である場合(ステップS5:NO)、図4で示す処理は終了する。ENG回転数とGEN回転数との差の絶対値が回転数差閾値未満であるというのは、エンジンECU46で認識されるENG回転数と、発電機ECU48で認識されるGEN回転数との差が小さいことを意味する。
【0038】
ステップS5からステップS6に移行すると、設定部72は、オペレーションポイントを更新する。設定部72は、ENG回転数とGEN回転数とのうちの低い方の回転数をオペレーションポイントの目標回転数とする。また、設定部72は、記憶部56に予め記憶されるオペレーションポイントマップ(不図示)に基づいて目標回転数に対応するトルク値を取得する。設定部72は、このトルク値を目標トルク値とする。オペレーションポイントマップは、発電装置24を最も効率よく運転可能な回転数とトルク値とを互いに対応付ける。
【0039】
ステップS7において、設定部72は、ステップS3と同様に、エンジンECU46に目標回転数を伝送する。これにより、エンジンECU46は、更新後の目標回転数に基づいて、ガスタービンエンジン30の動作を制御する。また、設定部72は、ステップS3と同様に、発電機ECU48に目標トルク値を伝送する。これにより、発電機ECU48は、更新後の目標トルク値に基づいて、発電機34の動作を制御する。
【0040】
[エンジンECU46が行う処理]
図6は、エンジンECU46が行う処理のフローチャートである。エンジンECU46は、ガスタービンエンジン30の制御に関する処理を行う。エンジンECU46は、移動体10の電源がオンとされている間、図6で示す一連の処理を繰り返し実行する。
【0041】
ステップS11において、エンジンECU46に備えられる取得部76は、マネージメントECU44により設定された目標回転数を取得する。ここで取得部76は、図4で示すステップS3又はステップS7で伝送される目標回転数のうち、最新の目標回転数を取得する。
【0042】
ステップS12において、エンジンECU46に備えられる正常判定部78は、回転数センサ40が正常であるか異常であるかを判定する。例えば、正常判定部78は、ガスタービンエンジン30が動作しているにもかかわらず、回転数センサ40からデジタル信号が伝送されない場合に、回転数センサ40が正常でないと判定する。また、正常判定部78は、デジタル信号が示す回転数が、所定の正常範囲内にない場合に、回転数センサ40が正常でないと判定する。これら全ての判定において回転数センサ40が正常である場合(ステップS12:YES)、処理はステップS13に移行する。一方、これらの判定のうちのいずれかにおいて回転数センサ40が正常でない場合、正常判定部78は、回転数センサ40に異常があると判定する。この場合(ステップS12:NO)、処理はステップS14に移行する。
【0043】
ステップS12からステップS13に移行すると、取得部76は、回転数センサ40によって検出される回転数をENG回転数として取得する。これにより、エンジンECU46は、ENG回転数を認識する。
【0044】
ステップS12からステップS14に移行すると、正常判定部78は、変換装置50が正常であるか異常であるかを判定する。ここでは、正常判定部78は、ステップS12と同じ手法で判定を行うことができる。これら全ての判定において変換装置50が正常である場合(ステップS14:YES)、処理はステップS15に移行する。一方、これらの判定のうちのいずれかにおいて変換装置50が正常でない場合、正常判定部78は、変換装置50に異常があると判定する。この場合(ステップS14:NO)、処理はステップS16に移行する。
【0045】
ステップS14からステップS15に移行すると、エンジンECU46に備えられる推定部80は、変換装置50によって変換された情報に基づいてENG回転数を推定する。具体的には、推定部80は、変換装置50によってデジタル信号に変換された回転角度を回転数に変換する。推定部80は、変換後の回転数をENG回転数とする。これにより、エンジンECU46は、ENG回転数を認識する。
【0046】
ステップS14からステップS16に移行すると、推定部80は、発電機ECU48から取得したGEN回転数に基づいてENG回転数を推定する。具体的には、推定部80は、GEN回転数をENG回転数とする。これにより、エンジンECU46は、ENG回転数を認識する。
【0047】
ステップS13、ステップS15及びステップS16のいずれか1つからステップS17に移行すると、エンジンECU46に備えられる制御部82は、ガスタービンエンジン30の回転数が目標回転数となるように、ガスタービンエンジン30の動作を制御する。例えば、制御部82は、その時点で認識しているENG回転数を用いて、ガスタービンエンジン30の回転数が目標回転数となるように燃料噴射装置32を制御する。
【0048】
ステップS18において、制御部82は、その時点で認識しているENG回転数をマネージメントECU44に伝送する。ここで伝送されるENG回転数は、図4のステップS5の判定処理で使用される。
【0049】
[発電機ECU48が行う処理]
図7は、発電機ECU48が行う処理のフローチャートである。発電機ECU48は、発電機34の制御に関する処理を行う。発電機ECU48は、移動体10の電源がオンとされている間、図7で示す一連の処理を繰り返し実行する。
【0050】
ステップS21において、発電機ECU48に備えられる取得部84は、マネージメントECU44により設定された目標トルク値を取得する。ここで取得部84は、図4で示すステップS3又はステップS7で伝送される目標トルク値のうち、最新の目標トルク値を取得する。
【0051】
ステップS22において、取得部84は、回転角度センサ42によって検出される回転角度に基づいてGEN回転数を取得する。例えば、取得部84は、回転角度センサ42によって検出される回転角度を回転数に変換し、変換後の回転数をGEN回転数とする。これにより、発電機ECU48は、GEN回転数を認識する。
【0052】
ステップS23において、発電機ECU48に備えられる制御部86は、発電機34のトルク値が目標トルク値となるように、発電機34の動作を制御する。例えば、制御部86は、その時点で認識しているGEN回転数に対応するトルク値と目標トルク値とを用いて、発電機34のトルク値が目標トルク値となるようにAC/DCコンバータ38を制御する。
【0053】
ステップS24において、制御部86は、その時点で認識しているGEN回転数をマネージメントECU44に伝送する。ここで伝送されるGEN回転数は、図4のステップS5の判定処理で使用される。
【0054】
[発電システム22の作用効果]
図8図10は、発電装置24の回転数とトルクとの関係を示す図である。発電システム22は、図4のステップS4~ステップS7の処理を行うことにより、独自の効果を奏する。発電システム22の独自の効果を説明するために、先ず図4のステップS4~ステップS7の処理を行わない場合の制御について説明する。
【0055】
図8を用いて、図4のステップS4~ステップS7の処理を行わない場合のガスタービンエンジン30の動作制御に関して説明する。エンジンECU46は、例えば、回転数センサ40によって検出される回転数をENG回転数として認識する。エンジンECU46は、認識したENG回転数に基づいて、ENG回転数が目標回転数となるように、ガスタービンエンジン30の動作を制御する。
【0056】
回転数センサ40によって検出されるENG回転数は、回転数センサ40の故障、ノイズ等により、ガスタービンエンジン30の実回転数と異なる場合がある。例えば、回転数センサ40によって検出されるENG回転数が、ガスタービンエンジン30の実回転数よりも低くなる場合がある。この場合、図8で示すように、エンジンECU46が認識するENG回転数は、ガスタービンエンジン30の実回転数よりも低くなる。また、エンジンECU46が認識するENG回転数は、発電機ECU48が認識するGEN回転数よりも低くなる。この場合、エンジンECU46は、ガスタービンエンジン30の回転数を増加させる。すると、ガスタービンエンジン30が過回転となり、実回転数が回転数のリミット(回転数リミット)を超える虞がある。
【0057】
図9を用いて、図4のステップS4~ステップS7の処理を行わない場合の発電機34の動作制御に関して説明する。発電機ECU48は、回転角度センサ42によって検出される回転角度を回転数に変換し、この回転数をGEN回転数として認識する。発電機ECU48は、認識したGEN回転数に対応するトルク値に基づいて、認識したトルク値が目標トルク値となるように、発電機34の動作を制御する。
【0058】
アナログ信号を伝送する回転角度センサ42は、デジタル信号を伝送する回転数センサ40よりも故障しにくい。このため、回転角度センサ42の信頼度は、回転数センサ40の信頼度よりも高い。しかし、回転角度センサ42にも故障、ノイズ等が発生する虞がある。例えば、回転角度センサ42によって検出されるGEN回転数が、発電機34の実回転数よりも低くなる場合がある。この場合、図9で示すように、発電機ECU48が認識するGEN回転数は、発電機34の実回転数よりも低くなる。また、発電機ECU48が認識するGEN回転数は、エンジンECU46が認識するENG回転数よりも低くなる。この場合、発電機ECU48は、発電機34のトルク値を増加させる。すると、発電機34が過トルクとなり、実トルク値がリミット(発電機トルクリミット)を超える虞がある。
【0059】
図10を用いて、図4のステップS4~ステップS7の処理を行う場合の発電システム22の独自の効果に関して説明する。ステップS5において、マネージメントECU44に備えられる比較部74は、エンジンECU46が認識するENG回転数と、発電機ECU48が認識するGEN回転数との差の絶対値が回転数差閾値以上かを判定する。ENG回転数とGEN回転数との差が回転数差閾値以上である場合に、マネージメントECU44に備えられる設定部72は、ENG回転数とGEN回転数とのうちの低い方の回転数を更新後のオペレーションポイントの目標回転数とする。更に、設定部72は、目標回転数に対応するトルク値を取得し、このトルク値を更新後のオペレーションポイントの目標トルク値とする。
【0060】
発電システム22によれば、図8を用いて説明したような事象を防止することができる。即ち、発電システム22によれば、ENG回転数と実回転数(GEN回転数)との差が大きくなった場合であっても、ガスタービンエンジン30の過回転を防止することができる。また、発電システム22によれば、図9を用いて説明したような事象を防止することができる。即ち、発電システム22によれば、GEN回転数と実回転数(ENG回転数)との差が大きくなった場合であっても、発電機34の過トルクを防止することができる。
【0061】
発電システム22によれば、ENG回転数とGEN回転数との差が回転数差閾値以上である場合に、オペレーションポイントを更新する。これにより、ガスタービンエンジン30の制御及び発電機34の制御を過度に制限することを防止することができる。
【0062】
発電システム22においては、回転数センサ40に不具合が発生する場合に備えて、エンジンECU46に備えられる推定部80がENG回転数を推定する。発電システム22によれば、冗長性を向上させることができる。
【0063】
[付記]
上述した開示に関し、更に以下の付記を開示する。
【0064】
(付記1)
制御装置(28)は、ガスタービンエンジン(30)に備えられる回転数センサ(40)から供給される信号に基づいて、前記ガスタービンエンジンの回転数である第1回転数を取得する第1回転数取得部(76)と、前記ガスタービンエンジンにより回転される発電機(34)に備えられる回転角度センサ(42)から供給される信号に基づいて、前記発電機の回転数である第2回転数を取得する第2回転数取得部(84)と、前記第1回転数と前記第2回転数とを比較する比較部(74)と、前記比較部による比較結果に基づいて、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の回転数に基づいて前記ガスタービンエンジン及び前記発電機を制御する制御部(82、86)と、を備える。
【0065】
上記構成によれば、ENG回転数と実回転数(GEN回転数)との差が大きくなった場合であっても、ガスタービンエンジンの過回転を防止することができる。また、上記構成によれば、GEN回転数と実回転数(ENG回転数)との差が大きくなった場合であっても、発電機の過トルクを防止することができる。結果として、上記構成によれば、発電システムをより良好に制御し得る制御装置を提供することができる。
【0066】
(付記2)
付記1に記載の制御装置において、前記制御部は、前記第1回転数と前記第2回転数との差が回転数差閾値以上である場合に、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の前記回転数に基づいて前記ガスタービンエンジン及び前記発電機を制御してもよい。
【0067】
上記構成によれば、ガスタービンエンジンの制御及び発電機の制御を過度に制限することを防止することができる。結果として、上記構成によれば、発電システムをより良好に制御し得る制御装置を提供することができる。
【0068】
(付記3)
付記2に記載の制御装置において、前記制御部は、要求電力に基づいて取得される目標回転数となるように前記ガスタービンエンジンを制御し、前記要求電力に基づいて取得される目標トルク値となるように前記発電機を制御してもよい。
【0069】
(付記4)
付記1~3のいずれか1つに記載の制御装置において、前記回転数センサに異常が発生した場合に、前記回転角度センサから供給される前記信号に基づいて前記第1回転数を推定する推定部(80)を備えてもよい。
【0070】
上記構成によれば、冗長性を向上させることができる。
【0071】
(付記5)
付記1に記載の制御装置において、前記制御部は、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の前記回転数を前記ガスタービンエンジンの目標値として前記ガスタービンエンジンを制御するとともに、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の前記回転数に対応するトルク値を前記発電機の目標トルク値として前記発電機を制御してもよい。
【0072】
(付記6)
移動体(10)は、付記1~5のいずれか1つに記載の制御装置を備える。
【0073】
(付記7)
制御方法は、ガスタービンエンジンに備えられる回転数センサから供給される信号に基づいて、前記ガスタービンエンジンの回転数である第1回転数を取得するステップと、前記ガスタービンエンジンにより回転される発電機に備えられる回転角度センサから供給される信号に基づいて、前記発電機の回転数である第2回転数を取得するステップと、前記第1回転数と前記第2回転数とを比較するステップと、前記第1回転数と前記第2回転数との比較結果に基づいて、前記第1回転数と前記第2回転数とのうちの低い方の回転数に基づいて前記ガスタービンエンジン及び前記発電機を制御するステップと、を備える。
【0074】
上記構成によれば、ENG回転数と実回転数(GEN回転数)との差が大きくなった場合であっても、ガスタービンエンジンの過回転を防止することができる。また、上記構成によれば、GEN回転数と実回転数(ENG回転数)との差が大きくなった場合であっても、発電機の過トルクを防止することができる。結果として、上記構成によれば、発電システムをより良好に制御し得る制御方法を提供することができる。
【0075】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0076】
10…移動体 30…ガスタービンエンジン
34…発電機 40…回転数センサ
42…回転角度センサ 74…比較部
76…取得部(第1回転数取得部) 80…推定部
82、86…制御部 84…取得部(第2回転数取得部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10