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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174510
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】水処理装置及び養殖支援装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A01K63/04 A
A01K63/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092367
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】519188592
【氏名又は名称】有限会社アクアデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100100376
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100143199
【弁理士】
【氏名又は名称】磯邉 毅
(72)【発明者】
【氏名】湊 明久
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CA01
2B104EA01
2B104ED21
2B104ED31
2B104ED36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】養殖手法に適合した養殖水を供給する養殖支援装置を提供する。
【解決手段】液タンクTa~Tc又は水タンクTwから受けた液体を、生簀TNK1~TNKnに伝送可能な第一連通路FRと、水タンクTWから受けた水に炭酸ガスを溶解させて水タンクTwに帰還させる第二連通路SDと、を有して構成され、所定時間、第二連通路SDと加圧ポンプPNを機能させて、炭酸ガスの溶存量を所定レベル範囲に維持する一方、適宜なタイミングで、第一連通路FRと加圧ポンプPNを機能させて、液タンク又は水タンクから受けた液体を、生簀TNK1~TNKnに供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転数を任意に変更可能な加圧ポンプの運転に基づき加圧された原水を、逆浸透膜(RO膜)に供給することで、人工海水又は人工透析液の基礎となる精製水を製造する水処理装置であって、
前記加圧ポンプの上流位置と下流位置の通液路の圧力を検出可能な圧力センサを、装置筐体に埋め込むよう配置すると共に、
前記加圧ポンプの上流位置に至る通液路の基端部に、常時閉鎖状態であるが、差込み操作に基づき開放状態に変化するワンタッチカプラを設けたことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記加圧ポンプの動作を、通信回線を経由して制御できると共に、前記加圧ポンプの上流位置及び/又は下流位置の圧力異常を、通信回線を経由して報知可能な通信処理部を設けた請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水処理装置で製造された前記精製水に基づく海水又は淡水を使用すると共に、養殖に必要な成分を含んだ溶解液を、複数の生簀に供給可能な養殖支援装置であって、
前記溶解液を貯留する一又は複数の液タンクと、淡水又は海水を貯留する水タンクと、水タンク又は液タンクから受けた液体を、複数の生簀に伝送可能な第一連通路と、水タンクから受けた液体を水タンクに帰還させる第二連通路と、第二連通路の途中に配置され、流通する液体に有効ガスを注気する注気機構と、第一連通路や第二連通路の液流を実現する加圧機構と、第一連通路又は第二連通路を機能させた状態で、前記加圧機構を機能させる制御機構と、を有して構成され、
前記制御機構は、水タンクから受けるセンサ信号又は計時タイマに基づいて、第二連通路と前記加圧機構を機能させることで、前記有効ガスの溶存量を所定レベル範囲に維持する一方、第二連通路が機能していないタイミングで、第一連通路と前記加圧機構を機能させて、液タンク又は水タンクから受けた液体を、複数の生簀に供給するよう構成され、
必要量の前記溶解液と、規定量の海水又は淡水が、必要なタイミングで複数の生簀に間欠的に供給される養殖支援装置。
【請求項4】
複数の生簀は、各々、定流量弁を通して、第一連通路に接続されている請求項3に記載の養殖支援装置。
【請求項5】
第一連通路は、液タンクは含まない経路で、前記加圧機構を含んだ循環路を形成している請求項3に記載の養殖支援装置。
【請求項6】
前記センサ信号は、pH値を示している請求項3に記載の養殖支援装置。
【請求項7】
前記注気機構は、液体が流通する注気膜の外部に、加圧状態の炭素ガスが供給される注気膜モジュールと、炭素ガスの供給を制御する電磁弁及び逆止弁と、を有して構成されている請求項3の記載の養殖支援装置。
【請求項8】
前記加圧機構と前記制御機構を機能させる交流電源の第1ラインと第2ラインの電流差に基づいて交流電源の供給を遮断する漏電ブレーカが配置されている請求項3に記載の養殖支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類などの養殖において、その成長促進を支援する養殖支援装置、及び、最適な養殖水を製造可能な水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、藻類とは、酸素発生型光合成を行う生物のうち、陸上植物を除いたものと定義されるが、陸上に配置した生簀に、所定の塩分濃度の海水WTを貯留して、海ぶどうや海苔などを養殖する場合もある。ここで、生簀での養殖は、気象の影響を受けにくい利点があり、液肥などを供給する養殖支援装置も各種提案されている(特許文献1~特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-191858号公報
【特許文献2】特開2011-155906号公報
【特許文献3】特開2010-022331号公報
【特許文献4】特開2006-067955号公報
【特許文献5】特開2004-267086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、藻類の種類毎に成長特性が異なるところ、特に、商品価値が高い藻類については、その成長状態に合わせて、最適な養殖手法を採る必要があり、この要請に応える養殖支援装置の完成が望まれる。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、養殖に最適な養殖水を製造可能な水処理装置、及び、養殖手法や育成状態に適合した養殖水を供給することができる養殖支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、回転数を任意に変更可能な加圧ポンプの運転に基づき加圧された原水を、逆浸透膜(RO膜)に供給することで、人工海水又は人工透析液の基礎となる精製水を製造する水処理装置であって、前記加圧ポンプの上流位置と下流位置の通液路の圧力を検出可能な圧力センサを、装置筐体に埋め込むよう配置すると共に、前記加圧ポンプの上流位置に至る通液路の基端部に、常時閉鎖状態であるが、差込み操作に基づき開放状態に変化するワンタッチカプラを設けている。
【0007】
本発明は、好適には、加圧ポンプの動作を、通信回線を経由して制御できると共に、加圧ポンプの上流位置及び/又は下流位置の圧力異常を、通信回線を経由して報知可能な通信処理部を設けるべきである。
【0008】
本発明において、回転数を任意に変更可能な加圧ポンプは、ACモータをインバータ制御しても実現されるが、好適には、DCモータ(より好適には、DCブラシレスモータ)が使用される。DCモータを使用することで、運転音が静かとなり、透析治療などを行う病院では、特に好適である。また、通信回線を経由してコンピュータ機器によって遠隔制御するのもDCモータの方が容易である。
【0009】
また、本発明は、上記した水処理装置で製造された前記精製水に基づく海水又は淡水を使用すると共に、養殖に必要な成分を含んだ溶解液を、複数の生簀に供給可能な養殖支援装置であって、前記溶解液を貯留する一又は複数の液タンクと、淡水又は海水を貯留する水タンクと、水タンク又は液タンクから受けた液体を、複数の生簀に伝送可能な第一連通路と、水タンクから受けた液体を水タンクに帰還させる第二連通路と、第二連通路の途中に配置され、流通する液体に有効ガスを注気する注気機構と、第一連通路や第二連通路の液流を実現する加圧機構と、第一連通路又は第二連通路を機能させた状態で、前記加圧機構を機能させる制御機構と、を有して構成され、前記制御機構は、水タンクから受けるセンサ信号又は計時タイマに基づいて、第二連通路と前記加圧機構を機能させることで、前記有効ガスの溶存量を所定レベル範囲に維持する一方、第二連通路が機能していないタイミングで、第一連通路と前記加圧機構を機能させて、液タンク又は水タンクから受けた液体を、複数の生簀に供給するよう構成され、必要量の前記溶解液と、規定量の海水又は淡水が、必要なタイミングで複数の生簀に間欠的に供給される。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明によれば、養殖に最適な養殖水を製造可能な水処理装置、及び、養殖手法や育成状態に適合した養殖水を供給することができる養殖支援装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る養殖支援装置を説明するシステム構成図である。
図2図1の要部である制御ユニットを説明する図面である。
図3】圧力センサを配置した別の養殖支援装置を図示した図面である。
図4図3の圧力センサを説明する図面である。
図5】養殖水や透析液の製造工程を説明する図面である。
図6図5の水処理装置の説明するシステム構成図である。
図7】水処理装置を構成する貯水ユニットを説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。図1は、複数の生簀TNK1~TNKnに、養殖水を供給する養殖支援装置EQUを説明するシステム構成図である。この養殖支援装置EQUでは、養殖に必要な肥料成分と、炭素ガスとを含んだ養殖水を生成する制御ユニットUNが、取付板BRDに固定されることで一体化されている。なお、生簀TNK1~TNKnは、各々、180リットル程度の容量を有し、内部には、最適に調整された人工海水が貯留されている。
【0013】
図2は、一体化された制御ユニットUNについて、その正面図(a)と、側面図(b)を概略的に図示したものである。ここで、海水の循環路(第二連通路SD)と、注気膜モジュール(注気機構)SPに炭酸ガスを供給するガス通路は、図2(a)の太線で図示されている。また、取付板BRDに固定されて一体化された制御ユニットUNは、図2(b)に示す取付穴Hoを利用して、壁掛け状態で保持されている。また、炭酸ガスは、ガスタンクGSから供給される。
【0014】
図1に示す実施例では、複数(24基~80基)のTNKiでは、各々、同種の海藻が生育されており、海藻栽培に必要な各種の液肥成分(液肥)を保有する液タンクTa~Tcと、人工海水WTを保有する海水タンクTwとが配置されている。液肥成分は、特に限定されないが、硝酸、リン酸、カリウムなどを例示することができる。また、所定の液タンク、又は、海水タンクTwに、二価鉄を多く含んだ南部鉄の塊を所定時間沈めて、南部鉄の鉄分を、液肥又は海水に溶解させ、必要な鉄分を適宜に補給できるよう構成するのが好適である。
【0015】
図1に示す通り、制御ユニットUNは、炭素ガスを含んだ海水WTを生成する注気膜モジュールSPと、注気膜モジュールSPの上流位置に配置されるプレフィルタFiと、プレフィルタFiや注気膜モジュールSPに加圧水を供給する加圧ポンプPNと、加圧ポンプPNによって吸引される各部の液体を受ける接続部MXと、適所に配置される開閉電磁弁V1~V7及び圧力計P1~P4と、プログラム可能なコントローラ(Programmable Logic Controller)で構成された中央制御装置PLCと、商用電源100Vを受けて各部に必要な交流/直流電圧を給電する電源回路PWと、を中心に構成されている。
【0016】
本実施例の中央制御装置PLCには、無線LAN子機(通信処理部)が配置されており、スマホなどの所定のインターネット端末は、無線LAN親機及び無線LAN子機を経由して、中央制御装置PLCと一対一通信(例えばPeer to Peer通信)ができるよう構成されている。また、加圧ポンプPNの回転速度や、液肥の供給時間や供給頻度など、養殖支援装置EQUの動作内容を、インターネット回線上で設定することもできる。
【0017】
なお、本実施例の制御ユニットUNは、80基の生簀に、各々、100~150CC/min程度の養殖水を補給できるよう、給水能力が8~12リットル/minに設計されている。具体的には、生簀TNK1~TNKnには、100~150CC/min程度に設定された定流量弁Vcが配置されており、加圧ポンプPN、プレフィルタFi、及び、注気膜モジュールSPの構成を、上記した給水能力(12リットル/min)に適合させている。
【0018】
したがって、加圧ポンプPNを大型化すると共に、プレフィルタFiや注気膜モジュールSPを増やして並列動作させることで、給水能力を適宜に高めることができ、生簀の容積や養殖生物の特性などに対応することができる。なお、複数のプレフィルタFiは、並列接続状態で図2の下方向に増設され、複数の注気膜モジュールSPも、並列接続状態で図2の上下方向に増設される。
【0019】
何れにしても、電源回路PWは、運転スイッチSWを経由して交流100Vを受け、漏電ブレーカELBを経由した交流電圧ACを、適宜に降下させて電磁弁V1~V7に供給すると共に、直流電圧DCを生成して中央制御装置PLCの電源電圧としている。
【0020】
ここで、漏電ブレーカELBは、交流電源を供給する一対の送電ラインの電流差を常時監視しており、規定レベルを超える電流差を検出すると、漏電発生と判断して交流電源を遮断している。本実施例では、良導体である海水WTを、各所に流通させるので、万一の漏電時にも感電事故が起こらないよう対策している。
【0021】
次に、中央制御装置PLCは、適宜なON/OFF制御信号に基づいて、電磁弁V1~V7を開閉制御し、また、加圧ポンプPNの運転を開始又は停止させている。3つの液タンクTa~Tcは、各々に対応する電磁弁V1~V3を経由して接続部MXに連通しており、また、海水タンクTwは、電磁弁V4を経由して、接続部MXに連通している。
【0022】
中央制御装置PLCは、加圧ポンプPNを稼働させるタイミングでは、電源弁V1~V4の何れか一の電磁弁だけ開放しており、海水タンクTwの海水WTか、或いは、何れかの液タンクTa~Tcの液肥かの一方が、加圧ポンプPNに吸引される。
【0023】
液タンクTa~Tc及び海水タンクTwの液体は、ストレーナSTを経由して吸引されることで、異物の混入を防止している。また、海水タンクTwには、中央制御装置PLCに接続されたpHセンサSNが配置されており、海水WTのpH値が、中央制御装置PLCに把握できるよう構成されている。
【0024】
プレフィルタFiは、海水タンクTwから受けた海水WTに混入する微細異物を除去するものであり、その入口と出口には、各々、圧力計P1,P2が配置されている。プレフィルタFiに目詰まりが生じると、圧力計の差圧P1-P2が初期値より大きくなるので、初期値との偏差に基づいて、逆洗浄操作や、フィルタ材の交換が必要となる。
【0025】
そこで、中央制御装置PLCは、圧力計の差圧P1-P2を定常的に監視して、差圧P1-P2が、運転開始時の初期値と比較して、例えば0.05MPa以上となると、警報ランプなどを点滅させてフィルタ交換を報知する構成を有している。
【0026】
注気膜モジュールSPは、プレフィルタFiを通過した海水WTに、必要量の炭素ガスを溶解させるための装置である。海水WTのpH値は、一般に、8.0~8.2程度(アルカリ性)であるが、炭素ガスが溶解されることで、pH値が酸性側に降下する。
【0027】
そこで、本実施例の中央制御装置PLCは、海水WTのpH値の、初期値からの降下量に基づいて、炭素ガスの溶存量を管理している。すなわち、溶存した炭素ガスも、藻類などの養殖生物による光合成や、大気中への発散により減少するが、本実施例によれば、必要な溶存量を常に維持することができる。なお、必要な溶存量は、養殖生物の特定や生育状態に応じて、適宜に設定される。
【0028】
注気膜モジュールSPは、略円筒状の基本ユニットの複数個を並列接続して、図1の上下方向に連設して構成されている。各基本ユニットは、三層複合中空糸膜(MHF)を有して構成され、本実施例では、複合膜(注気膜)の内部空間に海水WTを流入させている。
【0029】
そして、注気膜の外部空間には、加圧状態の炭素ガスが供給されており、各注気膜を通して、海水WTに、炭素ガスを溶解させることができる。なお、本実施例では、三層複合中空糸膜(MHF)を使用しているが、何ら限定されない。
【0030】
炭素ガスは、レギュレータGRを配置したガスボンベGSから、所定圧で噴出され、逆止弁Vsと、電磁弁V7を経由して、注気膜モジュールSPの外部空間に導入される。レギュレータGRの圧力設定値は、炭素ガスの、海水WTに対する必要な溶存量に対応して、0.1~0.15MPa程度に設定される。そのため、炭酸ガスの導入部には、ガス圧を計測可能な圧力計P4が配置されている。
【0031】
図示の通り、注気膜モジュールSPの出口側には、圧力計P3と手動弁Vtとが配置されている。手動弁Vtは、注気膜モジュールSPの外部空間と内外空間との圧力差を規定するもので、手動弁Vtを調整することで、圧力計P3の圧力値を、ガス圧の最低値である0.1MP以下となるよう調整する。
【0032】
なお、注気膜モジュールSPには、排水コックEXも設けられており、注気膜モジュールSPの外部空間に、水滴や結露が検出される場合は、排水コックEXを開放することで、不要物を排出することができる。
【0033】
続いて、中央制御装置PLCの動作を説明する。先に説明した通り、中央制御装置PLCは、海水WTのpH値を常時監視しており、このpH値がアルカリ側に変位して上限値を上回ると、炭酸ガス注気動作を開始する。
【0034】
炭酸ガス注気動作では、電磁弁V4と電磁弁V6と電磁弁V7を開放し、その他の電磁弁V1~V3,V5を閉鎖する。そして、加圧ポンプPNを起動して、海水タンクTw⇒プレフィルタFi⇒注気モジュールSP⇒海水タンクTwの経路(第二連通路SD)で海水WTを循環させる。
【0035】
このとき、注気モジュールSPには、加圧状態の炭酸ガスが供給されるので、これが海水WTに溶解することで、ガス溶解量が徐々に増加し、海水タンクTwのpHセンサSNのセンサ値が変化して、酸性側に降下する。そして、このpH値が下限値に達すると、炭酸ガス注気動作を終了するべく、加圧ポンプPNの運転を停止すると共に、全ての電磁弁V1~V7を閉塞する。
【0036】
なお、炭酸ガス注気動作の動作継続時間を、pH値で管理する必要は、必ずしもなく、例えば、タイマTMに基づき、所定時間だけ運転を継続したのでも良い。同様に、炭酸ガス注気動作の動作開始タイミングについても、pH値で管理する必要は、必ずしもなく、所定時間毎に炭酸ガス注気動作を開始したのでも良い。但し、この場合は、動作継続時間を、pH値で管理するのが好適である。
【0037】
続いて、液肥と海水WTの補給動作について説明する。この補給動作は、必要に応じて間欠的に実行しても良いが、簡易的には、予め規定された所定時間毎に開始される。但し、炭酸ガス注気動作が終了していることが条件であり、炭酸ガス注気動作が終了していない場合には、その終了まで待機することになる。
【0038】
以下に説明する送液ライン(第1連通路FR)を経由して、液肥や海水WTを、生簀TNK1~TNKnに供給する補給動作について、その順番は、特に限定されない。但し、ここでは、液タンクTa、液タンクTb、液タンクTc、海水タンクTwの順番で、液肥a~cや海水WTを生簀TNK1~TNKnに補給することにする。
【0039】
以下、説明すると、先ず、液タンクTaの液肥aを生簀に供給するべく、電磁弁V1と電磁弁V5だけを開放する。そして、加圧ポンプPNを起動して、液タンクTaの液肥を、並列接続されている複数の生簀TNK1~TNKnに供給する。この場合、液肥aは、各々、定流量弁Vcを経由して各生簀TNK1~TNKnに供給されるので、供給量が均一化される。また、生簀TNK1~TNKnに供給されなかった液肥aは、接続部MXに帰還して循環するので、液肥aの使用に無駄は生じない。
【0040】
そして、液肥aについて、規定の運転時間が経過すれば、液タンクTbの液肥bの補給に移行するべく、電磁弁V1を閉じた後に、電磁弁V2を開放する。その結果、液肥bが各定流量弁Vcを経由して各生簀TNK1~TNKnに均一に供給される。この場合も、供給されなかった液肥bは、接続部MXに帰還して循環する。
【0041】
そして、液肥bについて、規定の運転時間が経過すれば、液タンクTcの液肥cの補給に移行するべく、電磁弁V2を閉じた後に、電磁弁V3を開放する。その結果、液肥cが各定流量弁Vcを経由して各生簀TNK1~TNKnに均一に供給される。なお、供給されなかった液肥cは、接続部MXに帰還して循環する。
【0042】
この場合も、液肥cについて、規定の運転時間が経過すれば、海水タンクTwの海水WTの補給に移行するべく、電磁弁V3を閉じた後に、電磁弁V4を開放する。その結果、炭酸ガスを所定レベルに溶存する海水WTが、各定流量弁Vcを経由して各生簀TNK1~TNKnに均一に供給される。海水WTの補給量(補給時間)は、液肥の補給量などに対応して適宜に設定される。なお、海水WTについても、接続部MXに帰還して循環するので、生簀TNK1~TNKnから溢れ出る海水を除き、廃棄される海水は生じない。
【0043】
上記の通り、本実施例では、液肥a,b,cと海水WTとを連続的に供給する。そのため、送液ライン(第1連通路FR)に残った液肥aを液肥bが押出し、その後、送液ラインに残った液肥bを液肥cが押出し、最後に送液ラインに残った液肥cを海水WTが押出すことになり、液肥a~cの使用量に無駄がなく、且つ、管理した適切量の液肥a~cを供給することができる。
【0044】
なお、液肥ごとの補給継続時間(補給量)や補給頻度は、養殖生物の育成度合いなどに応じて適宜に変更される。また、必ずしも、全ての液肥a~cを同一頻度で補給する必要はなく、生育度合いなどに応じて、補給すべき液肥が適宜に選択される。但し、最後の液肥が補給された後は、海水WTが補給されることで、液肥の実際の供給量が管理される。
【0045】
先に説明した通り、pH値の上限値及び下限値の設定値や、液肥a~c及び海水WTの供給継続時間や供給頻度は、例えば、P2P(Peer to Peer)接続された所定のインターネット端末(スマホやパソコン)で設定/変更可能であり、また、不図示のデータ入力部を経由して適宜に設定/変更可能である。また、ガスボンベGSは、必ずしも必須ではなく、空気を吸引する一方、その空気から炭酸ガスを選択的に通過させるガス分離膜(特許7083518号参照)を通して、炭酸ガスの供給源とするのも好適である。
【0046】
また、生簀内の養殖物に生物が付着する可能性もあるが、そのような生物も、高濃度の炭酸ガス環境下では活性を失うことが実験確認されている。そこで、養殖物の出荷前に、炭酸ガスの濃度レベルを上げて、付着生物を生簀の底に沈殿させることで、出荷物から異物を確実に除去することができる。
【0047】
ところで、上記の実施例では、圧力計P1~P4を使用したが、この構成に代えて、図3(a)~(b)に示すように、圧力計P1~P4に代えて、圧力センサSN1~SN4を使用するのも好適である。なお、図3の構成では、取付板BRDに制御ユニットUNを固定する構成に代えて、制御ユニットUN全体を収容ケースに収め、この収容ケースの底部に、キャスタを取り付けることで移動可能に構成している。
【0048】
図3の機器構成のように、圧力センサSNiを使用する場合には、図4(a)に示す通り、圧力計P1~P4の配置位置の筐体に、水路に繋がる通水穴H1と、ネジ溝を設けた取付穴H2とが設けられ、通水穴H1と取付穴H2の間には、連絡穴H3を設けた薄肉の接続部JNが設けられる。
【0049】
この図4(a)は、筐体の取付穴H2に、円環状のパッキンPKと、圧力センサSNと、が取り付けられた状態を図示している。また、図4(b)と図4(c)は、圧力センサSNの立体形状を図示している。図示の通り、圧力センサSNは、側面にネジ溝を設け、内部に収容孔を設けた略円柱状の大径頭部HDと、ダイヤフラム(隔膜部)THの上方と下方に、円筒状の収容孔を各々設けた小径本体部BDと、大径頭部HDと小径本体部BDの収容孔に収容される回路基板C1,C2と、を有して構成されている。
【0050】
図4(b)に示す通り、大径頭部HDには、開口孔EXが設けられており、回路基板C2に接続された配線ケーブルが、開口孔EXから導出されるよう構成されている。また、大径頭部HDには、切込み溝GVが、対角線上に形成されており、平板状の治具を、切込み溝GVに嵌合させることができるよう構成されている。
【0051】
そのため、本実施例では、圧力センサSNの小径本体部BDを、取付穴H2に収容した後、圧力センサSNの切込み溝GVに平板治具を嵌合させ、平板治具を回転させることで、圧力センサSNを、取付穴H2にネジ込むことができる。具体的には、圧力センサSNの小径本体部BDが、接続部JNに当接されるまで、平板治具を回転させることで、図4(a)に示す装着状態(埋め込み配置状態)となる。この埋め込み配置状態では、パッキンPKに封止された状態で、圧力センサSNの小径本体部BDの下方空間は、隔膜部THに至るまで、海水で満たされる。
【0052】
回路基板C1は、小径本体部BDの隔膜部THに接して感圧回路が配置されることで、隔膜部THの受ける圧力を感知している。ここで、回路基板C1は、シリコン単結晶(ピエゾ抵抗素子)を隔膜部THに用いる拡散型半導体センサを構成している。但し、拡散型半導体センサに代えて、金属(SUS)を隔膜部THに用いる金属薄膜型センサを配置しても良く、この場合には、検出精度が向上する。
【0053】
回路基板C2は、回路基板C1が検知したセンサ値を出力する出力回路を構成しており、回路基板C2から出力される圧力値は、適宜な配線を通して、開口孔EXを通過して中央制御装置PLCに伝送される。このような構成を採ることで、養殖支援装置EQU各部の水圧は、例えば、P2P(Peer to Peer)接続された所定のインターネット端末で把握することができ、また、異常発生時には、その事態を、素早くスマホなどの所定のインターネット端末に通報することができる。
【0054】
続いて、図5(a)に基づいて、養殖支援装置EQUで使用する人工海水WTの製造方法を説明する。この実施例では、人工海水WTは、養殖品質を上げるため、水道水を精製した純水に、塩分(Nacl)及び必要成分を加えて生成される。すなわち、図5(a)の構成では、原水たる水道水は、逆浸透膜(RO)を内蔵する水処理装置WATで処理されてRO処理水となり、このRO処理水を、イオン交換樹脂を内蔵するイオン交換装置IONに供給することで、純水が製造される。
【0055】
イオン交換樹脂は、水道水に含まれる+イオンを吸着する陽イオン交換樹脂と、-イオンを吸着する陰イオン交換樹脂とで構成されている。本実施例において、イオン交換を実行するのは、地域ごとに、異なる濃度で水道水に含まれるシリカ成分(イオン化されたSiO)を、確実に除去して、高品質の養殖を実現するためである。
【0056】
すなわち、本発明者の知見によれば、海藻の養殖において、養殖水にシリカ成分が含まれていると、養殖すべき本来の海藻に加えて、珪藻(珪酸質の被殻で被われた核藻類)が増殖して、養殖物の品質を劣化させる。そこで、不要な珪藻の増殖を排除するべく、本実施例では、イオン交換装置IONにおいて、RO水からシリカ成分を除去している。したがって、養殖物の種類によっては、イオン交換処理を省略することもできる(図5(a)の破線参照)。
【0057】
図5(a)の構成において、水処理装置WATは、特願2023-004818号に開示した水処理装置と類似構成であって、図6に示す構成を有している。この水処理装置WATは、水道水を受けてRO処理水を精製するが、図5(a)のように、養殖水の製造に使用されるだけでなく、図5(b)のように、透析液生成装置DIAにRO水を供給して、透析液を製造する場合にも使用される。
【0058】
以下、透析液を製造することを前提に説明すると、図6に示す通り、水処理装置WATは、通電信号SGを受けて原水ラインを開放させる開閉調整弁V1と、活性炭フィルタなどを内蔵して原水の不純物を除去するプレフィルタFiと、プレフィルタFiの上流及び下流に配置された圧力センサSN0,SN1と、プレフィルタFiの下流側に配置された加圧ポンプPUと、加圧ポンプPUの上流側に配置された圧力スイッチSWと、一対の逆浸透膜モジュールTU1,TU2で構成されたROモジュールROと、ROモジュールROの上流側に配置された運転圧力センサSN2と、ROモジュールROの下流側に配置された送水圧力センサSN3と、送水圧力センサSN3の下流側に配置された貯水ユニットBUFと、貯水ユニットBUFとRO水の出力部の間に配置されるサンプルポートPRTと、第1還流路の還流量を調整する圧力調整弁V2と、RO水の排水量を調整する流量調整弁V3と、第2還流路の還流量を調整する圧力調整弁V4と、一方向の流路を確保する逆止弁V5~V7と、加圧ポンプPUの上流側に薬液を導入可能な薬液通路の端部に配置されるカプラCPLと、圧力センサSN0~SN3などの信号を受けて加圧ポンプPUの運転を制御するコントローラPLC(Programmable Logic Controller)とを有して構成されている。
【0059】
コントローラPLCは、表示部DISPに接続されていると共に、無線LAN子機を内蔵して構成されている。そのため、コントローラPLCは、WiFi(登録商標)ルータなどの無線LAN親機を経由して、インターネット回線にも接続可能となり、所定のインターネット端末(スマホやパソコン)との間で、P2P(Peer to Peer)通信などの一対一通信が可能となる。このような構成を採ることで、水処理装置WATの運転条件をオンライン上で設定できると共に、実際の運転状態をオンライン上でリアルタイムに把握することも可能となる。また、異常事態の発生についても所定のインターネット端末に対して直ちに通報することができる。
【0060】
以上を踏まえて、図6の水処理装置WATの特徴部分から説明すると、弾性体を装着した検査口を構成するサンプルポートPRTは、特許3144775の構成を有するゴム材を内蔵している。そして、水質検査などの必要時に、ゴム材に吸入針を差し込むことで、必要量のRO水がサンプリングされる。また、圧力センサSN0~SN3は、全て図4に示す内部構造を有して構成され、各センサ出力は、コントローラPLCに伝送される。そして、各部の圧力は、所定のインターネット端末でも適宜に把握可能となっている。
【0061】
ところで、弾性体を装着したサンプルポートPRTの外径寸法と、圧力センサSNの大径頭部HDの外径寸法は、各々に形成されるネジ溝ピッチも含めて、同一構成とされている。また、この構成に対応して、サンプルポートPRTと圧力センサSN0~SN3の取付穴の形状と構造は、統一化されている。そのため、ユーザの要望に応えるべく、圧力センサSNの取付位置に、サンプルポートPRTを装着することや、逆に、サンプルポートPRTの取付位置に、圧力センサSNを装着することが可能となり、機器構成の自由度が大幅に向上する。
【0062】
また、本実施例の加圧ポンプPUは、直流モータポンプで構成されるので、起動トルクが大きく、且つ高速回転が可能であって、回転数を任意に変更することもできる。また、インバータ制御のACポンプなどと比較して、病院などで問題になる振動や騒音を抑えることができる。更に、直流モータポンプを採用することで、モータ部をコンパクト化でき、ランニングコスト(電気代)を抑制することもできる。なお、実施例の直流モータは、ブラシレスモータである。
【0063】
なお、図示を省略しているが、図6の水処理装置WATには、RO水の流量や、適所の水温を検出するセンサも配置されており、直流モータポンプPUの回転数は、圧力センサに基づく運転圧力だけでなく、RO水の流量や水温などに基づいて適宜に変更することもできる。
【0064】
なお、直流モータポンプPUを使用する本実施例では、圧力調整弁V2を配置した第1還流路や、圧力調整弁V4を配置した第2還流路は、必ずしも必須ではない。すなわち、第1と第2の還流路は、水圧を一定レベルに維持する機能を果たしており、直流モータポンプPUを適宜に運転することで、これらを省略することもできる。但し、第1還流路や第2還流路を設ける方が運転性能に優れる。
【0065】
何れにしても、コントローラPLCは、運転圧力センサSN0~SN3からの信号に基づき、加圧ポンプPUに、適宜な制御信号CTLを送ることで、加圧ポンプPUの動作を制御している。具体的に説明すると、コントローラPLCは、予め係員が設定した設定値と、センサSN2,SN3の出力に基づく制御信号を出力することで、不必要時には、加圧ポンプPUの回転を停止させ、その後、再開条件が満たされると加圧ポンプPUの回転を再開させる。そして、運転時には、コントローラPLCは、圧力センサSN0~SN3の出力に基づいて、最適な回転数で加圧ポンプPUを回転させている。
【0066】
続いて、加圧ポンプPUの上流側に至る通水路の基端部に配置されるカプラCPLについて説明する。実施例のカプラCPLは、ソケット部とプラグ部とで構成されたワンタッチカプラであって、ソケット部にプラグ部を挿入すると、それまで閉鎖されていた通路が自動的に開口する構造を有している。具体的な内部構成は特に限定されないが、本実施例のカプラCPLは、(メス型)ソケット部と、(オス型)プラグ部とで構成され、各々の連通路の先端部は、分離状態では弾発力に基づいて閉鎖されている。そして、ソケット部とプラグ部が連結されると、互いに先端片が押し合い、弾発位置が互いに後退することで、連通路が開通する。
【0067】
特に限定されないが、本実施例では、(オス型)プラグ部が、水処理装置WATに固定され、(メス型)ソケット部は、送水ホースHSに固定されている。なお、送水ホースHSの先端部には、開閉コックCOCKが設けられている。このような構成を有するカプラCPLは、プレフィルタFiの出力水の検査や、水処理装置WAT内部の通水路の薬液洗浄に活用される。なお、不使用時、ソケット部とプラグ部は、分離状態としても良いし、結合状態を維持してもよい。
【0068】
何れにしても、薬液洗浄時には、薬液を貯留する作業バケツに、送水ホースHSの終端を漬け、原水ラインを閉じるべく開閉調整弁V1を閉鎖し、RO水の出力ラインも閉鎖する。そして、開閉調整弁V2~V4を開放した状態で、加圧ポンプPUを稼働させて、作業バケツから薬液を吸入する。次に、十分量の薬液が水処理装置WTの内部通水路に行き渡ったタイミングで、開閉コックCOCKを閉じる。なお、余分の薬液は、開放状態の開閉調整弁V3を経由して排出される。
【0069】
その後、薬液が行き渡った状態で開閉調整弁V3を閉鎖し、加圧ポンプPUの運転を続けることで、薬液を循環させて水処理装置WTの内部通水路を薬液洗浄する。そして、適当な循環動作の後、開閉調整弁V1及びV3を開放した状態で、加圧ポンプPUの運転を継続して、水処理装置WTの内部通水路をリンス洗浄する。このリンス洗浄時には、送水ホースHSの開閉コックCOCKを開放すると共に、作業バケツに十分量の水道水を貯留しておくことで、作業バケツから加圧ポンプに至る薬液通路を含めてリンス洗浄することができる。
【0070】
以上の通り、本実施例によれば、RO水の通水路の切り離し操作を必要とすることなく、薬液洗浄とリンス洗浄を実現することできる。なお、定常時、ソケット部とプラグ部が分離状態の場合には、洗浄時に、ソケット部にプラグ部を装着するだけで足りる。また、開閉コックCOCKの開閉は、必ずしも、必須ではなく、開閉コックCOCKを開放状態に維持して、ワンタッチカプラCPLを、適宜に分離又は結合させたのでも良い。なお、この場合は、ワンタッチカプラCPLは、定常時、分離状態を維持している。
【0071】
以下、開閉コックCOCKを開放状態に維持する場合について、具体的に確認する。先ず、薬液注入時には、作業バケツに薬液を貯留した状態で、ワンタッチカプラCPLを結合させて薬液注入を開始する。そして、その後、薬液循環工程に移行するタイミングで、ワンタッチカプラCPLを分離し、更にその後、作業バケツに水道水を貯留した状態で、ワンタッチカプラCPLを再結合させてリンス工程に移行する。
【0072】
続いて、図7に基づいて、貯水ユニットBUFについて説明する。本実施例では、図示の貯水ユニットBUFを配置することで、円筒伸縮材13の内部に余分のRO水を貯水し、その後、RO水の必要流量が増加した減圧タイミングで、円筒伸縮材13の内部の貯留水を吐出するようにしている。
【0073】
先ず、図7(a)は、貯水ユニットBUFの構成を示す概略図であり、貯水ユニットBUFは、円筒状の伸縮材13を気密状態で内包した蓄水蓄圧ユニットとして機能している。伸縮材13の形成材料は、特に限定されないが、この実施例では、硬度40~50程度のシリコーンゴムをチューブ状に形成したシリコンチューブを使用している。
【0074】
図7(b)は、円筒伸縮材の内部にRO水を貯水した蓄水蓄圧状態を概略的に図示したものであり、図7(c)は、貯留水が吐出される減圧タイミングを模式的に示している。なお、蓄水蓄圧状態(図7(b))では、円筒伸縮材の外側密閉空間に封止ガス(空気)が、RO水の水圧に平衡する圧縮状態で封止されており、この圧縮圧に基づいて、図7(c)に示す吐出状態が実現される。
【0075】
図7(a)に示す通り、貯水ユニットBUFは、両端が開放した円筒形状に形成された保持体10と、保持体10の一端に配置されるRO水の導入部11と、保持体10の他端に配置されるRO水の導出部12と、保持体10の内部に収容されて、導入部11から導出部12までRO水を流通させる防水性の円筒伸縮材13と、導入部11や導出部12を貫通させた状態で、保持体10の左右を閉栓するキャップ部14,15と、保持体10の内周面に接して円筒伸縮材13の両端を保持する保持リング16,17と、保持体10の内外を一方向に連通させる逆止弁18と、を有して構成されている。
【0076】
ここで、保持体10の左右両端の外周面と、キャップ部14,15の内周面には、互いに螺合するネジ溝が形成されている。そして、保持体10にキャップ部14,15が螺合された完成状態では、キャップ部14とキャップ部15は、各々、Oリングを介して、保持体10の開放端面に当接している。そのため、円筒伸縮材13の外周面と、保持体10の内周面との間に、空気を閉じ込めた密閉空間が形成されることになる。
【0077】
逆止弁18は、保持体10の外部から内部への通気のみが許容され、内部から外部に内部ガスが漏れない構成を有している。内部ガスは、典型的には空気であるが、その他、窒素などの不活性ガスを封止する場合には、逆止弁18を通して不活性ガスが吸入できる。
【0078】
なお、逆止弁18の配置位置は、特に限定されず、例えば、キャップ部14,15の一方に配置したのでも良い。また、便宜上、図示の左側を導入部11と称し、右側を導出部12と称したが、貯水ユニットBUFは、逆止弁18を除けば、左右対称形であり、導入部11と導出部12は、逆の位置であっても良いのは勿論である。
【0079】
導入部11と導出部12の露出終端には、不図示の通水チューブが外嵌されるが、導入部11と導出部12は、何れも、全体として円筒軸状に形成され、例えば、直径5mm程度の連通孔が軸方向に貫通することで、RO水の通水路を形成している。また、導入部11及び導出部12において、互いに対面する内側先端部11a,12aは、やや大径の隆起状態に形成されている。そして、この隆起部11a,12aの外周に、円筒伸縮材13の終端部がきつく嵌合されることで、導入部11と導出部12が、円筒伸縮材13を通して液密に連結されている。
【0080】
保持リング16,17は、導入部11と導出部12にとっては、位置決め部材であり、また、円筒伸縮材13にとっては、抜け止め部材である。そして、各保持リング16,17は、円筒伸縮材13に外嵌された状態で、隆起部11a,12aに接している。この保持リング16,17は、保持体10の内周面にほぼ達する外径と、円筒伸縮材13を、無理なく貫通させる内径と、を有して構成されており、図示の位置に限らず、軸方向の左右移動が許容される。
【0081】
ここで、保持リング16,17の内側端面16b,17bは、球面状の凹部となっており、膨張する円筒伸縮材13を、柔らかく受け止める構成となっている。一方、保持リング16,17の外側端面16a,17aは、平坦に形成されており、円筒伸縮材13の膨張量に対応する押圧力で、隆起部11a,12aを押圧することで、伸縮材13が、隆起部11a,12aから抜けることを防止している。
【0082】
以上、本実施例について、水処理装置と、養殖支援装置とを説明したが、具体的な記載内容は、特に本発明を限定するものではない。例えば、本発明は、海藻などの植物類を生簀で生育させる場合に限らず、魚類を生育させる場合にも使用可能である。この場合には、炭酸ガスに代えて、酸素が淡水又は海水に溶解され、液肥の供給に代えて、育成用の栄養成分や有効成分が供給される。
【符号の説明】
【0083】
WAT 水処理装置
PU 直流モータポンプ
SN 圧力センサ
CPL ワンタッチカプラ
PLC 通信処理部
FR 第一連通路
SD 第二連通路
TNK1~YNKn 生簀
WT 海水又は淡水
Tw 海水タンク
a,b,c 溶解液(液肥)
Ta,Tb,Tc 液タンク
SP 注気機構(注気ユニット)
PN 加圧機構(加圧ポンプ)
PLC 制御機構(コントローラ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7