IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特開2024-174517高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法
<>
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図1
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図2
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図3
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図4
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図5
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図6
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図7
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図8
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図9
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図10
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図11
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図12
  • 特開-高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174517
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/01 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H02J3/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092377
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長門 秀一
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑季
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066EA01
(57)【要約】
【課題】高調波を抑制するフィルタの品質を向上させる。
【解決手段】装置1の処理部100は、品質に関する指標値に対する最適化によってフィルタの回路定数を決定する。処理部100は、電力変換器と第1回路定数を有するフィルタとを含む回路の第1高調波歪みを算出し、予め定められた基準において定められた制限値よりも第1高調波歪みが小さいことを示す第1条件が成立する場合の第1回路定数に対して、第1回路定数が含まれる基準範囲内の少なくとも1つの第2回路定数にそれぞれ対応する少なくとも1つの第2高調波歪みの中に制限値より大きい第2高調波歪みがあるか否かを判定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器から発生する高調波を抑制するフィルタを設計するための装置であって、
前記フィルタの品質に関する指標値に対する最適化によって前記フィルタの回路定数を決定する処理部と、
前記最適化の第1処理結果が保存される記憶部とを備え、
前記処理部は、
前記電力変換器と第1回路定数を有する前記フィルタとを含む回路の第1高調波歪みを算出し、
予め定められた基準において定められた制限値よりも前記第1高調波歪みが小さいことを示す第1条件が成立する場合の前記第1回路定数に対して、前記第1回路定数が含まれる基準範囲内の少なくとも1つの第2回路定数にそれぞれ対応する少なくとも1つの第2高調波歪みの中に前記制限値より大きい第2高調波歪みがあるか否かを判定する特定処理を行い、
前記少なくとも1つの第2高調波歪みの中に前記制限値より大きい第2高調波歪みがないことを示す第2条件が成立する場合、前記第1処理結果に前記第1回路定数を追加する、装置。
【請求項2】
前記第1条件は、前記制限値よりも小さい閾値よりも前記第1高調波歪みが大きいことをさらに示す、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記第1条件が成立したタイミングにおける前記第1回路定数を前記特定処理において使用する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記記憶部には、前記第1条件が成立する場合の前記フィルタの回路定数を含む第2処理結果が保存され、
前記処理部は、前記第1条件が成立する場合、前記特定処理に必要な前記第1回路定数を前記第2処理結果から取得する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記第1条件が成立する場合、前記最適化によって前記第1回路定数を変更して、前記第1高調波歪みを再算出し、前記特定処理を再実行し、前記第2条件が成立する場合の前記第1回路定数を前記第1処理結果にさらに追加する、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
電力変換器から発生する高調波を抑制するフィルタを設計するためのプログラムであって、前記プログラムは、処理回路に実行されることによって、前記処理回路に、
前記フィルタの品質に関する指標値に対する最適化によって前記フィルタの回路定数を決定させ、
前記電力変換器と第1回路定数を有する前記フィルタとを含む回路の第1高調波歪みを算出させ、
予め定められた基準において定められた制限値よりも前記第1高調波歪みが小さことを示す第1条件が成立する場合の前記第1回路定数に対して、前記第1回路定数が含まれる基準範囲内の少なくとも1つの第2回路定数にそれぞれ対応する少なくとも1つの第2高調波歪みの中に前記制限値より大きい第2高調波歪みがあるか否かを判定する特定処理を行わせ、
前記少なくとも1つの第2高調波歪みの中に前記制限値より大きい第2高調波歪みがないことを示す第2条件が成立する場合、前記最適化の処理結果に前記第1回路定数を追加させる、プログラム。
【請求項7】
電力変換器から発生する高調波を抑制するフィルタを設計するための方法であって、
前記フィルタの品質に関する指標値に対する最適化によって前記フィルタの回路定数を決定するステップと、
前記電力変換器と第1回路定数を有する前記フィルタとを含む回路の第1高調波歪みを算出するステップと、
予め定められた基準において定められた制限値よりも前記第1高調波歪みが小さいことを示す第1条件が成立する場合の前記第1回路定数に対して、前記第1回路定数が含まれる基準範囲内の少なくとも1つの第2回路定数にそれぞれ対応する少なくとも1つの第2高調波歪みの中に前記制限値より大きい第2高調波歪みがあるか否かを判定する特定処理を行うステップと、
前記少なくとも1つの第2高調波歪みの中に前記制限値より大きい第2高調波歪みがないことを示す第2条件が成立する場合、前記最適化の処理結果に前記第1回路定数を追加するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高調波を抑制するフィルタを設計するための装置、プログラム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高調波を抑制するフィルタ(高調波抑制フィルタ)を設計するための構成が知られている。たとえば、特許第6272396号(特許文献1)には、高圧直流送電システムの複同調フィルタの設計方法が開示されている。特許文献1の設計方法によれば、効率性および高調波の低減を考慮して、高調波電圧規制値および高調波電流許容レベルを満足する最適なR,L,Cコンビネーションを有する、高圧直流送電システムの複同調フィルタを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6272396号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高調波抑制フィルタの品質に関する指標値(たとえば、電圧歪み、電流歪み、製造コスト、回路定数の値、あるいは電力損失等)が所望の値となるように高調波抑制フィルタの回路定数を選択化することによって、高調波抑制フィルタを最適化することができる。しかし、高調波抑制フィルタの最適化に基づいて高調波抑制フィルタが製造されても、様々な要因(たとえば製造誤差(製造ばらつき)あるいは経年劣化)によって実際の高調波抑制フィルタにおいては最適な回路定数が実現されない可能性がある。このような場合、実際に製造された高調波抑制フィルタは、最適な回路定数から想定される品質を有さず、高調波に関して予め定められた基準(たとえば「高圧または特別高圧で受電する需要家の高調波抑制ガイドライン」)を満たさない可能性がある。
【0005】
特許文献1においては、L,Cコンビネーションケースに対して高調波を低減するための最適化を行うことが開示されている。しかし、高調波抑制フィルタの最適化に基づいて実際に製造された高調波抑制フィルタに最適な回路定数が実現されないことについて考慮されていない。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高調波を抑制するフィルタの品質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係る装置は、電力変換器から発生する高調波を抑制するフィルタを設計するための装置である。装置は、処理部と、記憶部とを備える。処理部は、フィルタの品質に関する指標値に対する最適化によってフィルタの回路定数を決定する。記憶部には、最適化の第1処理結果が保存される。処理部は、電力変換器と第1回路定数を有するフィルタとを含む回路の第1高調波歪みを算出し、予め定められた基準において定められた制限値よりも第1高調波歪みが小さいことを示す第1条件が成立する場合の第1回路定数に対して、第1回路定数が含まれる基準範囲内の少なくとも1つの第2回路定数にそれぞれ対応する少なくとも1つの第2高調波歪みの中に制限値より大きい第2高調波歪みがあるか否かを判定する特定処理を行い、少なくとも1つの第2高調波歪みの中に制限値より大きい第2高調波歪みがないことを示す第2条件が成立する場合、第1処理結果に第1回路定数を追加する。
【0008】
本開示の他の局面に係るプログラムは、電力変換器から発生する高調波を抑制するフィルタを設計するためのプログラムである。プログラムは、処理回路に実行されることによって、処理回路に、フィルタの品質に関する指標値に対する最適化によってフィルタの回路定数を決定させ、電力変換器と第1回路定数を有するフィルタとを含む回路の第1高調波歪みを算出させ、予め定められた基準において定められた制限値よりも第1高調波歪みが小さことを示す第1条件が成立する場合の第1回路定数に対して、第1回路定数が含まれる基準範囲内の少なくとも1つの第2回路定数にそれぞれ対応する少なくとも1つの第2高調波歪みの中に制限値より大きい第2高調波歪みがあるか否かを判定する特定処理を行わせ、少なくとも1つの第2高調波歪みの中に制限値より大きい第2高調波歪みがないことを示す第2条件が成立する場合、最適化の処理結果に第1回路定数を追加させる。
【0009】
本開示の他の局面に係る方法は、電力変換器から発生する高調波を抑制するフィルタを設計するための方法である。当該方法は、フィルタの品質に関する指標値に対する最適化によってフィルタの回路定数を決定するステップと、電力変換器と第1回路定数を有するフィルタとを含む回路の第1高調波歪みを算出するステップと、予め定められた基準において定められた制限値よりも第1高調波歪みが小さいことを示す第1条件が成立する場合の第1回路定数に対して、第1回路定数が含まれる基準範囲内の少なくとも1つの第2回路定数にそれぞれ対応する少なくとも1つの第2高調波歪みの中に制限値より大きい第2高調波歪みがあるか否かを判定する特定処理を行うステップと、少なくとも1つの第2高調波歪みの中に制限値より大きい第2高調波歪みがないことを示す第2条件が成立する場合、最適化の処理結果に第1回路定数を追加するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る装置、プログラム、および方法によれば、予め定められた基準において定められた制限値よりも第1高調波歪みが小さいことを示す第1条件が成立する場合の第1回路定数に対して、第1回路定数が含まれる基準範囲内の少なくとも1つの第2回路定数にそれぞれ対応する少なくとも1つの第2高調波歪みの中に制限値より大きい第2高調波歪みがあるか否かを判定することにより、高調波を抑制するフィルタの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】高調波抑制フィルタとしてのフィルタ装置が配置された構成の一例を示す図である。
図2図1の連系点における電圧歪みおよび電流歪みをシミュレートするための図1の構成の等価回路のブロック図である。
図3図1のフィルタ装置の回路構成の一例を示す図である。
図4図1のフィルタ装置の回路構成の他の例を示す図である。
図5図1のフィルタ装置の回路構成の他の例を示す図である。
図6図1のフィルタ装置140を設計するための、実施の形態1に係る情報処理装置1の構成を示すブロック図である。
図7図6の情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。
図8図7のフィルタ設計プログラムPgを実行する処理回路11によって行われる最適化計算処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図8の尤度評価処理S12の具体的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10図1のフィルタ装置140を設計するための、実施の形態2に係る情報処理装置2の構成を示すブロック図である。
図11図10の情報処理装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。
図12図11のフィルタ設計プログラムPg1を実行する処理回路11によって行われる最適化計算処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13図11の尤度評価プログラムPg2を実行する処理回路11によって行われる尤度評価処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0013】
図1は、高調波抑制フィルタとしてのフィルタ装置140が配置された構成の一例を示す図である。図1に示されるように、当該構成には、上位系統110と、電力変換器120と、変圧器130と、フィルタ装置140と、負荷900とが含まれる。上位系統110は、交流電力系統であり、連系点Picに接続されている。変圧器130は、連系点Picと電力変換器120との間に接続されている。負荷900は、連系点Picに接続されている。フィルタ装置140は、高調波抑制フィルタを含み、電力変換器120と変圧器130とを接続する接続線150に接続されている。電力変換器120は、たとえば、交流/直流(AC/DC)変換器である。
【0014】
連系点Picにおける電圧歪み(総合電圧歪率)および電流歪み(総合電流歪率)が、高調波に関して予め定められた基準(たとえば「高圧または特別高圧で受電する需要家の高調波抑制ガイドライン」)において規定されたガイドライン値(制限値)の範囲に収まるように、フィルタ装置140は、電力変換器120からの高調波の電圧歪みおよび電流歪みを軽減する。制限値の範囲としては、たとえば、電圧歪みが5%以内という範囲、および電流歪みが5%以内という範囲が用いられる。
【0015】
図2は、図1の連系点Picにおける電圧歪みおよび電流歪みをシミュレートするための図1の構成の等価回路200のブロック図である。図2において、ωは、周波数νを有する高調波に対応するn次の角速度を表す(ω=2πν)。周波数νは、基本波周波数ν(たとえば50Hzまたは60Hz)のn倍(nは自然数)の周波数である。
【0016】
図1および図2を併せて参照しながら、等価回路200は、系統特性回路210と、変換器特性回路220と、変圧器特性回路230と、フィルタ特性回路240と、電圧特性回路250とを備える。系統特性回路210、変換器特性回路220、変圧器特性回路230、およびフィルタ特性回路240は、図1の上位系統110、電力変換器120、変圧器130、およびフィルタ装置140にそれぞれ対応する。
【0017】
系統特性回路210および電圧特性回路250は、接地点に接続されている。変圧器特性回路230および変換器特性回路220は、系統特性回路210および電圧特性回路250の間でこの順に直列に接続されている。フィルタ特性回路240は、変圧器特性回路230および変換器特性回路220を接続する接続線に接続されている。系統特性回路210と変圧器特性回路230との接続ノードNicは、図1の連系点Picに対応する。
【0018】
電力変換器120が高調波の発生源となるので、電力変換器120の出力電圧特性をシミュレートするが等価回路200の電圧源とされる。すなわち、等価回路200においては、電圧特性回路250は、電力変換器120の電圧特性Vc(ω)を出力する。電圧特性Vc(ω)は、角速度ωに応じて、異なる大きさの電圧を出力する。
【0019】
系統特性回路210、変換器特性回路220、変圧器特性回路230、およびフィルタ特性回路240は、角速度ωに対応するインピーダンスf(ω),f(ω),f(ω),f(ω)をそれぞれ有する。
【0020】
系統特性回路210と接続されている変圧器特性回路230の側(高圧側)と、変換器特性回路220と接続されている変圧器特性回路230の側(低圧側)とで電圧が異なるので、一般にインピーダンスは単位法で表記される。フィルタ特性回路240のインピーダンスf(ω)には、フィルタ装置140に含まれる複数の回路要素のインピーダンスの合成値が用いられる。系統特性回路210のインピーダンスf(ω)には、背後インピーダンスおよび送電インピーダンス等が合成された値が用いられる。接地点に接続されている系統特性回路210の側(電源側)は、たとえば、図1の上位系統110に電力を供給する電力会社の電源に対応する。接続ノードNicにおける電圧歪みTHD(Total Harmonic Distortion)_Vおよび電流歪みTHD_Iは、以下の式(1),(2)を用いてそれぞれ求められる。
【0021】
【数1】
【0022】
式(1)において、Vは、接続ノードNicにおける基本波電圧の実効値(電圧実行値)である。Vは、接続ノードNicにおける第n次高調波電圧の実効値である。式(2)において、Iは、接続ノードNicにおける基本波電流の実効値(電流実行値)である。Iは、接続ノードNicにおける第n次高調波電流の実効値である。
【0023】
図3図4図5の各々は、図1のフィルタ装置140の回路構成の一例を示す図である。図3に示されるように、フィルタ装置140Aは、抵抗Rと、インダクタLと、キャパシタC1とを含む。抵抗RおよびインダクタLは、キャパシタC1の一方の電極と接地点との間で並列に接続されている。キャパシタC1の他方の電極は、接続線150に接続される。フィルタ装置140Aの回路定数は、抵抗Rの抵抗値、インダクタLのインダクタンス、およびキャパシタC1の静電容量を含む。当該回路定数によって、フィルタ装置140Aのフィルタ特性(インピーダンスf(ω))が決定される。
【0024】
図4に示されるフィルタ装置140Bは、図3のフィルタ装置140AにキャパシタC2が追加された構成である。キャパシタC2は、インダクタLと接地点との間に接続されている。フィルタ装置140Bの回路定数は、抵抗Rの抵抗値、インダクタLのインダクタンス、およびキャパシタC1,C2の静電容量を含む。当該回路定数によって、フィルタ装置140Bのフィルタ特性(インピーダンスf(ω))が決定される。
【0025】
図5に示されるフィルタ装置140Cは、図3のフィルタ装置140AにキャパシタC3が追加された構成である。キャパシタC3は、キャパシタC1と抵抗Rとの間に接続されている。フィルタ装置140Cの回路定数は、抵抗Rの抵抗値、インダクタLのインダクタンス、およびキャパシタC1,C3の静電容量を含む。当該回路定数によって、フィルタ装置140Cのフィルタ特性(インピーダンスf(ω))が決定される。
【0026】
フィルタ装置140の品質に関する指標値(品質指標値)が所望の値となるようにフィルタ装置140の回路定数を選択することによって、高調波抑制フィルタを最適化することができる。しかし、フィルタ装置140の最適化に基づいてフィルタ装置140が製造されても、様々な要因(たとえば製造誤差(製造ばらつき)あるいは経年劣化)によって、実際のフィルタ装置140においては最適な回路定数が実現されない可能性がある。このような場合、実際に製造されたフィルタ装置140は、最適な回路定数から想定される品質を有さず、高調波に関して予め定められた基準を満たさない可能性がある。
【0027】
たとえば、品質指標値の改善が優先される場合、フィルタ装置140の電圧歪みおよび電流歪みの少なくとも1つ(高調波歪み)が、高調波に関して予め定められた基準の制限値(基準制限値)より小さいものの、ほぼ基準制限値に等しくなるように回路定数が選択されることがある。このような場合、製造誤差の影響によって実際のフィルタ装置140の高調波歪みは基準制限値を超えてしまう可能性がある。一方、高調波に関して予め定められた基準の充足が優先される場合、実際のフィルタ装置140の高調波歪みが製造誤差によって基準制限値を超えないように、基準制限値からある程度のマージン(たとえば5%)だけ小さい値(基準制限値の95%の値)がフィルタ装置140の設計においての制限値(設計制限値)として使用されることがある。このような場合、基準制限値を下回る高調歪みと品質指標値の改善とを実現する回路定数であっても、当該回路定数の下では高調波歪み(たとえば基準制限値の98%)が設計制限値を超える場合には、当該回路定数は選択されない。
【0028】
そこで、本開示においては、フィルタ装置140の品質に関する指標値が所望の値となるように選択された回路定数を、実際に製造されたフィルタ装置140において想定される基準範囲において変動させて、高調波に関して予め定められた基準を逸脱しないか否かの判定(尤度評価)を行う。本開示によれば、回路定数の変動が想定される実際に製造されたフィルタ装置140が予め定められた基準を逸脱しないことを、フィルタ装置140の品質に関する指標値を所望の値とする回路定数の下で担保することができるという点で、フィルタ装置140の品質を向上させることができる。
【0029】
以下では、実施の形態1において、フィルタ装置140の品質に関する指標値を所望の値とするための最適化によって回路定数が選択される度に当該回路定数に対する尤度評価(特定処理)を行う構成について説明する。実施の形態2においては、当該最適化によって回路定数が選択される度に、当該回路定数を記憶部に保存し、記憶部に保存された少なくとも1つの回路定数の各々に対して尤度評価を行う構成について説明する。
【0030】
実施の形態1.
図6は、図1のフィルタ装置140を設計するための、実施の形態1に係る情報処理装置1の構成を示すブロック図である。図6に示されるように、情報処理装置1は、処理部100と、記憶部50とを備える。処理部100は、条件抽出部20と、最適化計算部30と、尤度評価部40とを備える。
【0031】
記憶部50には、入力データファイル51と、評価結果データファイル52(第1処理結果)とが保存されている。入力データファイル51は、フィルタ装置140の最適化の前提条件および初期設定に関する複数のデータセットを含む。当該複数のデータセットの各々には、たとえば、等価回路200の構成を決定するインピーダンスf~fと電圧特性Vcとの組合せ(系統ケース)、フィルタ装置140の初期回路定数、最適化計算に必要なフィルタ装置140の回路定数の探索範囲と閾値、ならびに最適化計算における回路定数について反復回数および系統ケースについての反復回数等が含まれる。評価結果データファイル52は、最適化計算部30の計算結果を含む。
【0032】
条件抽出部20は、最適化計算部30によって行われる処理に必要なデータを入力データファイル51から抽出する。
【0033】
最適化計算部30は、回路定数選択部31と、回路計算部32と、目的関数抽出部33とを含む。以下では、目的関数とは、フィルタ装置140の回路定数と、フィルタ装置140の品質に関する指標値との間の対応関係を規定する関数あるいはデータであるとする。当該指標値には、たとえば、電圧歪み、電流歪み、フィルタ装置140の製造コスト、フィルタ装置140の抵抗、フィルタ装置140の静電容量、フィルタ装置140のインダクタンス、およびフィルタ装置140の電力損失(電力費用)が含まれる。フィルタ装置140の電力損失とは第1次~第n次高調波に対する、等価回路200の電力損失の総和の値である。また、目的関数の値とは、回路定数を引数とした場合に目的関数から出力される指標値を表す。
【0034】
回路定数選択部31は、最適化手法(最適化計算、最適化処理、あるいは最適化アルゴリズム)を用いて、目的関数を評価して、最適化計算部30による処理の反復によって当該目的関数が最小化するように、フィルタ装置140の回路定数を予め定められた探索範囲から選択する。初回の回路定数の選択においては、条件抽出部20によって与えられた初期値が選択される。最適化手法には、たとえば、1つの目的関数を評価する単目的最適化、および複数の目的関数を評価する多目的最適化が含まれる。単目的最適化には、たとえば単目的遺伝的アルゴリズムが含まれる。多目的最適化には、たとえば進化型多目的最適化アルゴリズムが含まれる。なお、複数の目的関数に対して、単目的最適化を行う場合、複数の重み係数(たとえば、経験則から決定された値)がそれぞれ乗じられた複数の目的関数の総和が1つの目的関数と等価に扱われる。
【0035】
回路計算部32は、複数の系統ケースの各々について、回路定数選択部31によって選択された回路定数および当該系統ケースの下での等価回路200の接続ノードNicにおける電圧実効値V~Vおよび電流実効値I~Iを計算する。回路計算部32は、式(1),(2)に基づいて、電圧歪みTHD_Vおよび電流歪みTHD_Iを算出する。電圧歪みTHD_Vまたは電流歪みTHD_Iが、制限値よりも小さい予め設定された閾値を超える場合、回路計算部32は、回路定数を尤度評価部40へ送信する。電圧歪みTHD_Vまたは電流歪みTHD_Iが当該閾値以下である場合、回路計算部32は、回路定数を目的関数抽出部33へ送信する。なお、各系統ケースにおける各次電流歪率の最大値を指標値とする目的関数が追加されてもよい。当該閾値を用いることによって、尤度評価部40による尤度評価の対象を、実際のフィルタ装置140の高調波歪みが基準制限値を下回るものの基準制限値を超える可能性が比較的高い場合の回路定数に限定することができる。その結果、処理部100によるフィルタ装置140の最適化処理を高速化することができる。
【0036】
尤度評価部40は、回路計算部32から受けた回路定数に含まれる抵抗値、インダクタンス、および静電容量値を当該値が含まれる基準範囲(たとえば初期値±5%の範囲)で変動させて、変動させた回路定数(変動回路定数)の下での電圧歪みまたは電流歪みが制限値を超えるか否かを判定する。具体的には、尤度評価部40は、電圧歪みおよび電流歪みの各々を新たに目的関数に設定し、変動回路定数に対する目的関数が制限値を超えるか否かを判定する。目的関数が制限値を超える場合、尤度評価部40は最適化計算の制御を回路定数選択部31に戻す。回路定数選択部31は、今回の回路定数とは異なる回路定数を選択し、最適化計算を再実行する。目的関数が制限値以下である場合、尤度評価部40は、最適化計算の制御を目的関数抽出部33に渡す。なお、最適化計算の制御が回路定数選択部31に戻される場合、今回の回路定数が最適化計算の解とならないように目的関数が補正されてもよい。
【0037】
目的関数抽出部33は、複数の系統ケースにおいて、目的関数の最大値を抽出する。複数の目的関数が用いられる場合、複数の目的関数の各々について複数の系統ケースにおける最大値が抽出される。目的関数抽出部33は、回路定数選択部31によって選択された回路定数と、当該最大値とを関連付けて評価結果データファイル52に記録する。ユーザは、優先度の高い指標値に関する目的関数に対応する回路定数を用いて、フィルタ装置140を設計することができる。
【0038】
最適化計算部30による処理の終了後に、評価結果データファイル52に記録された複数の回路定数の中からフィルタ装置140を設計するための回路定数が選択される。たとえば、複数の目的関数に対する多目的最適化の解である複数のパレート解から回路定数が選択されてもよい。
【0039】
図7は、図6の情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。図7に示されるように、情報処理装置1は、処理回路11(処理部)と、メモリ12(記憶部)と、入力部13と、出力部14と、バス15とを含む。処理回路11、メモリ12、入力部13、および出力部14は、バス15によって互いに通信可能に接続されている。情報処理装置1は、たとえば、PC(Personal Computer)、あるいはワークステーションを含む。
【0040】
処理回路11は、メモリ12に格納されるプログラムを実行する少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)を含む。処理回路11は、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。情報処理装置1の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアあるいはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ12に格納される。処理回路11は、メモリ12に記憶されたプログラムを読み出して実行する。なお、CPUは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいはDSP(Digital Signal Processor)とも呼ばれる。
【0041】
メモリ12には、不揮発性または揮発性の半導体メモリ(たとえばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、あるいはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory))、および磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、あるいはDVD(Digital Versatile Disc)が含まれる。メモリ12には、フィルタ設計プログラムPg、入力データファイル51と、評価結果データファイル52とが保存されている。フィルタ設計プログラムPgを実行する処理回路11は、図6の処理部100に対応する。図1に示されてはいないが、メモリ12には、OS(Operating System)が保存されていてもよい。
【0042】
入力部13は、ユーザからの操作を受ける。入力部13は、マウス、キーボード、マイク、およびタッチパネルを含む。出力部14は、処理回路11の処理結果をユーザに出力する。出力部14は、たとえば、タッチパネル、ディスプレイ、およびスピーカを含む。
【0043】
図8は、図7のフィルタ設計プログラムPgを実行する処理回路11によって行われる最適化計算処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8に示されるフローチャートは、情報処理装置1を統合的に制御する不図示のメインルーチンによって呼び出される。以下では、ステップを単にSと記載する。また、電圧歪みおよび電流歪みの少なくとも1つを含む用語として、高調波歪みが使用される。
【0044】
図8に示されるように、処理回路11は、S101において、フィルタ装置140の回路定数の探索範囲から、目的関数が最小化されるように未検証の回路定数(今回の回路定数)を決定し、処理をS102に進める。処理回路11は、S102において、複数の系統ケースの中から、未検証の系統ケース(今回の系統ケース)を決定し、処理をS103に進める。処理回路11は、S103において、今回の回路定数および今回の系統ケースの下での等価回路200における高調波歪みを計算し、処理をS104に進める。
【0045】
処理回路11は、S104において、高調波歪みが制限値(たとえば5%)を超えるか否かを判定する。高調波歪みが制限値を超える場合(S104においてYES)、処理回路11は、今回までの最適化計算で検証された全系統ケースの各々を未検証にリセットして、処理をS101に戻す。高調波歪みが制限値以下である場合(S104においてNO)、処理回路11は、処理をS105に進める。
【0046】
処理回路11は、S105において、高調波歪みが閾値を超えるか否かを判定する。高調波歪みが閾値以下である場合(S105においてNO)、処理回路11は、処理をS106に進める。高調波歪みが閾値を超える場合(S105においてYES)、処理回路11は、処理をS12に進める。なお、当該閾値は、制限値よりも小さく、たとえば、制限値の95%に設定される。
【0047】
処理回路11は、S12において、今回の回路定数に対する尤度評価を行って処理をS111に進める。処理回路11は、S111において、尤度評価の結果が合格か否かを判定する。尤度評価が不合格である場合(S111においてNO)、処理回路11は、今回の回路定数を検証済みとするとともに検証済みの全系統ケースを未検証とし、処理をS101に戻す。尤度評価が合格である場合(S111においてYES)、処理回路11は、処理をS106に進める。
【0048】
処理回路11は、S106において、今回の回路定数および今回の系統ケースの下での目的関数の値を算出し、処理をS107に進める。処理回路11は、S107において、今回の系統ケースを検証済みとするとともに、今回までに検証された系統ケースの数(系統ケースの検証数)が系統ケースについての反復回数に達したか否か(系統ケースについての反復処理の終了条件)の判定を行う。系統ケースの検証数が当該反復回数未満である場合(S107においてNO)、処理回路11は、処理をS102に戻す。系統ケースの検証数が当該反復回数に達している場合(S107においてYES)、処理回路11は、今回の回路定数の下での系統ケースについての反復処理を終了し、処理をS108に進める。
【0049】
処理回路11は、S108において、全系統ケースの下で算出された目的関数の値のうちの最大値を、今回の回路定数に対応する目的関数の値に設定し、処理をS109に進める。処理回路11は、S109において、目的関数を評価結果データファイル52に保存して処理をS110に進める。処理回路11は、S110において、今回の回路定数を検証済みとし、検証済みの全系統ケースを未検証とし、今回までに検証された回路定数の数(回路定数の検証数)が回路定数についての反復回数に達したか否か(回路定数についての反復処理の終了条件)の判定を行う。回路定数の検証数が当該反復回数未満である場合(S110においてNO)、処理回路11は、処理をS101に戻す。回路定数の検証数が当該反復回数に達している場合(S110においてYES)、処理回路11は、回路定数についての反復処理を終了し、処理をメインルーチンに返す。
【0050】
図9は、図8の尤度評価処理S12の具体的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。図9のS122,S123,S124,S126,S127,S128,S130は、図8のS102,S103,S104,S106,S107,S108,S110にそれぞれ対応している。図9に示されるフローチャートにおいては、電圧歪みおよび電流歪みの各々が目的関数とされる。以下では主に図9を参照し、必要に応じて図8を参照する。
【0051】
図9に示されるように、処理回路11は、S120において図8の最適化計算処理から今回の回路定数を取得して処理をS121に進める。処理回路11は、S121において、今回の回路定数を基準範囲において変動させた回路定数のうち、目的関数が最大化されるように未検証の回路定数(今回の変動回路定数)を決定し、処理をS122に進める。S21においては、たとえば、複数の目的関数に対応することが可能な進化型多目的最適化アルゴリズムが用いられる。
【0052】
処理回路11は、S122において、図8のS102と同様に今回の系統ケースを決定し、処理をS123に進める。処理回路11は、S123において、今回の変動回路定数および今回の系統ケースの下での等価回路200における高調波歪みを計算し、処理をS124に進める。
【0053】
処理回路11は、S124において、高調波歪みが制限値を超えるか否かを判定する。高調波歪みが制限値を超える場合(S124においてYES)、処理回路11は、不合格判定をメインルーチンに返す。高調波歪みが制限値以下である場合(S124においてNO)、処理回路11は、処理をS126に進める。
【0054】
処理回路11は、S126において、今回の変動回路定数および今回の系統ケースの下での目的関数(電流歪みおよび電圧歪み)の値を算出し、処理をS127に進める。処理回路11は、S127において、図8のS107と同様に系統ケースについての反復処理の終了条件を判定する。系統ケースの検証数が当該反復回数未満である場合(S127においてNO)、処理回路11は、処理をS122に戻す。系統ケースの検証数が当該反復回数に達している場合(S127においてYES)、処理回路11は、今回の変動回路定数の下での系統ケースについての反復処理を終了し、処理をS128に進める。
【0055】
処理回路11は、S128において、全系統ケースの下で算出された目的関数の値のうちの最大値を、今回の変動回路定数に対応する目的関数の値に設定し、処理をS130に進める。処理回路11は、S130において、今回の変動回路定数を検証済みとし、検証済みの全系統ケースを未検証とし、今回までに検証された変動回路定数の数(変動回路定数の検証数)が変動回路定数についての反復回数に達したか否かを判定する。変動回路定数の検証数が当該反復回数未満である場合(S130においてNO)、処理回路11は、処理をS121に戻す。変動回路定数の検証数が当該反復回数に達している場合(S130においてYES)、処理回路11は、変動回路定数についての反復処理を終了し、合格判定をメインルーチンに返す。
【0056】
以上、実施の形態1に係る装置、プログラム、および方法によれば、高調波を抑制するフィルタの品質を向上させることができる。
【0057】
実施の形態2.
図10は、図1のフィルタ装置140を設計するための、実施の形態2に係る情報処理装置2の構成を示すブロック図である。情報処理装置2の構成は、図6図6の条件抽出部20、回路計算部32、尤度評価部40、および入力データファイル51が条件抽出部20A、回路計算部32A、尤度評価部40A、および入力データファイル51Aにそれぞれ置き換えられているとともに、記憶部50に閾値越えデータファイル53(第2処理結果)が追加された構成である。これら以外の情報処理装置2の構成は情報処理装置1の構成と同様であるため、同様の構成についての説明を繰り返さない。以下では主に図10を参照しながら、必要に応じて図6を参照する。
【0058】
入力データファイル51Aにおいては、図6の入力データファイル51に含まれる複数のデータセットの各々に、最適化計算あるいは尤度評価を示すフラグが付されている。条件抽出部20Aは、図6の条件抽出部20の機能に加えて、入力データファイル51Aに含まれる複数のデータセットに付されたフラグを取得する機能を有する。条件抽出部20Aは、データセットに付されたフラグが最適化計算を示す場合、当該データセットを最適化計算部30に出力し、当該フラグが尤度評価を示す場合、当該データセットを尤度評価部40Aに出力する。
【0059】
回路計算部32Aは、今回の回路定数の下での高調波歪みが閾値を超える場合に、今回の回路定数を尤度評価部40Aに出力せずに閾値越えデータファイル53に記録する。尤度評価部40Aは、閾値越えデータファイル53に記録された複数の回路定数を順番に読み込んで、当該回路定数に対して図6の尤度評価部40と同様の尤度評価を行う。尤度評価部40Aの処理は、最適化計算部30の処理と並行して行われてもよいし、最適化計算部30の処理の後に行われてもよい。閾値越えデータファイル53を介して最適化計算部30の処理結果が尤度評価部40Aに伝達されることにより、最適化計算部30の処理および尤度評価部40Aの処理の各々を必要に応じて適時に実行およびメンテナンスすることができる。
【0060】
図11は、図10の情報処理装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理装置2のハードウェア構成は、図7の情報処理装置2のメモリ12のフィルタ設計プログラムPgがPg1に置き換えられているとともに、尤度評価プログラムPg2および閾値越えデータファイル53が追加された構成である。これら以外の情報処理装置2の構成は、情報処理装置1と同様であるため、同様の構成についての説明を繰り返さない。
【0061】
図12は、図11のフィルタ設計プログラムPg1を実行する処理回路11によって行われる最適化計算処理の流れの一例を示すフローチャートである。図12に示されるフローチャートは、図8のS12およびS111がS211に置き換えられたフローチャートである。これら以外の図12の処理は図8の処理と同様であるため、同様の処理についての説明を繰り返さない。
【0062】
図12に示されるように、処理回路11は、実施の形態1と同様にS101~S105を行う。S105においてYESの場合、処理回路11は、S211において、今回の回路定数を検証済みとし、検証済みの全系統ケースを未検証とし、今回の回路定数を閾値越えデータファイル53に記録して、処理をS101に戻す。S105においてNOの場合、処理回路11は、実施の形態1と同様にS106~S110を実行し、処理をメインルーチンに返す。
【0063】
図13は、図11の尤度評価プログラムPg2を実行する処理回路11によって行われる尤度評価処理の流れの一例を示すフローチャートである。図13に示されるフローチャートは、図9のS120がS220に置き換えられているとともに、S229,S231が追加されたフローチャートである。これら以外の図13の処理は図9の処理と同様であるため、同様の処理についての説明を繰り返さない。
【0064】
図13に示されるように、処理回路11は、S220において、閾値越えデータファイル53から今回の回路定数を取得し、処理をS121に進める。処理回路11は、実施の形態1と同様にS121~S124,S126~S128を実行した後、S229において、目的関数を評価結果データファイル52に保存して処理をS130に進める。処理回路11は、実施の形態1と同様にS130を実行した後、処理をS231に進める。処理回路11は、S231において、今回の回路定数を検証済みとして、閾値越えデータファイル53に記録された全回路定数を検証したか否かを判定する。閾値越えデータファイル53に記録された全回路定数を検証していない場合(S231においてNO)、処理回路11は、処理をS220に戻す。閾値越えデータファイル53に記録された全回路定数を検証している場合(S231においてYES)、処理回路11は、閾値越えデータファイル53に記録された回路定数についての反復処理を終了し、処理をメインルーチンに返す。
【0065】
以上、実施の形態2に係る装置、プログラム、および方法によれば、高調波を抑制するフィルタの品質を向上させることができる。
【0066】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて実施することも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1,2 情報処理装置、11 処理回路、12 メモリ、13 入力部、14 出力部、15 バス、20,20A 条件抽出部、30 最適化計算部、31 回路定数選択部、32,32A 回路計算部、33 目的関数抽出部、40,40A 尤度評価部、50 記憶部、51,51A 入力データファイル、52 評価結果データファイル、53 閾値越えデータファイル、100 処理部、110 上位系統、120 電力変換器、130 変圧器、140,140A~140C フィルタ装置、150 接続線、200 等価回路、210 系統特性回路、220 変換器特性回路、230 変圧器特性回路、240 フィルタ特性回路、250 電圧特性回路、900 負荷、C1~C3 キャパシタ、I~I 電流実効値、L インダクタ、Nic 接続ノード、Pg,Pg1 フィルタ設計プログラム、Pg2 尤度評価プログラム、Pic 連系点、R 抵抗、V~V 電圧実効値、Vc 電圧特性。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13