(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174519
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】モータ駆動装置、モータシステム、および車両
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20241210BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241210BHJP
【FI】
H02P27/06
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092380
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秋央
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB03
5H505BB06
5H505CC01
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE08
5H505HA01
5H505HA05
5H505HA06
5H505HA09
5H505LL55
5H770BA01
5H770DA44
5H770JA17W
5H770JA17Z
(57)【要約】
【課題】電源リレーおよびモータリレーのオンオフ制御を効率的な構成により行うことができるモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】モータ駆動装置(1)は、モータリレー(71,72,73)のゲートにゲート信号(Gr1,Gr2,Gr3)を出力するように構成される制御部(90)を備え、電源リレー(6)のゲートに出力電圧(Vcph)を印加させるか否かを切り替えるように構成される電源リレー制御部(9)に前記ゲート信号を入力させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧の印加端とグランド電位の印加端との間で直列に接続されるハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタを有し、前記ハイサイドトランジスタと前記ローサイドトランジスタが接続されるノードにモータを接続可能に構成される少なくとも1つのハーフブリッジと、
前記電源電圧の印加端と前記ハイサイドトランジスタとの間に接続され、1つ以上のNチャネルMOSFETを有する電源リレーと、
前記ノードと前記モータとの間に接続され、1つ以上のNチャネルMOSFETを有するモータリレーと、
前記電源電圧を昇圧して出力電圧を生成するように構成される昇圧回路と、
を備えるモータシステムにおいて用いられるモータ駆動装置であって、
前記モータリレーのゲートにゲート信号を出力するように構成される制御部を備え、
前記電源リレーのゲートに前記出力電圧を印加させるか否かを切り替えるように構成される電源リレー制御部に前記ゲート信号を入力させる、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記電源リレー制御部は、前記出力電圧の印加端と前記電源リレーのゲートとの間に接続される1つ以上のゲート遮断リレーを有し、
前記ゲート遮断リレーのゲートには、前記ゲート信号が印加可能である、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記電源リレー制御部は、並列接続される2つ以上の前記ゲート遮断リレーを有する、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記出力電圧を出力するように構成される外部端子としての出力端子を備え、
前記出力端子と前記電源電圧の印加端との間にキャパシタが接続され、
前記ゲート遮断リレーは、前記出力端子に外部接続される、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記昇圧回路は、チャージポンプである、請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
外部端子としての出力端子を備え、
前記電源リレー制御部は、当該モータ駆動装置に内蔵され、
前記ゲート遮断リレーは、前記昇圧回路の出力端と前記出力端子との間に接続される、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記出力電圧を出力するように構成される外部端子としての出力端子を備え、
前記昇圧回路は、チャージポンプであり、
前記昇圧回路は、前記出力端子と前記電源電圧の印加端との間に接続される第1トランジスタおよび第2トランジスタと、前記第1トランジスタまたは前記第2トランジスタの逆並列ダイオードと逆方向に接続されるダイオードを含む第3トランジスタと、を有し、
前記電源リレー制御部は、前記出力端子をグランド電位にプルダウンするためのプルダウンスイッチを有し、
前記電源リレー制御部は、前記ゲート信号に応じて第1モードと第2モードとを切り替えられるように構成され、
前記第1モードは、前記プルダウンスイッチをオフ状態とし、かつ、制御信号の切り替えに応じて前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、および前記第3トランジスタのオンオフを切り替えるモードであり、
前記第2モードは、前記プルダウンスイッチをオン状態とし、かつ、前記制御信号に依らずに前記前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、および前記第3トランジスタをオフ状態とするモードである、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記第1トランジスタは、PチャネルMOSFETにより構成され、
前記第2トランジスタは、NチャネルMOSFETにより構成され、
前記第3トランジスタは、NチャネルMOSFETにより構成され、
前記第2トランジスタと前記第3トランジスタのソースまたはドレインが同一ノードにおいて接続される、請求項7に記載のモータ駆動装置。
【請求項9】
前記第1トランジスタは、PチャネルMOSFETにより構成され、
前記第2トランジスタは、NチャネルMOSFETにより構成され、
前記第3トランジスタは、PチャネルMOSFETにより構成され、
前記第1トランジスタと前記第3トランジスタのソースまたはドレインが同一ノードにおいて接続される、請求項7に記載のモータ駆動装置。
【請求項10】
前記モータリレーは、2つ以上設けられ、
少なくともいずれかの前記ゲート信号がハイレベルの場合、前記電源リレー制御部は、前記第1モードとなり、すべての前記ゲート信号がローレベルの場合、前記電源リレー制御部は、前記第2モードとなる、請求項7に記載のモータ駆動装置。
【請求項11】
選択信号が所定レベルの場合、前記電源リレー制御部は、前記ゲート信号に依らずに前記第1モードとなる、請求項10に記載のモータ駆動装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のモータ駆動装置と、
前記ハーフブリッジと、
前記モータと、を備えるモータシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のモータシステムを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種モータを駆動するためのモータ駆動装置が知られている。例えば、ブラシレスDCモータ等を駆動するモータ駆動装置は、ハーフブリッジと呼ばれる回路を用いてモータを駆動する。ハーフブリッジは、電源電圧の印加端とグランド電位の印加端との間で直列に接続されるハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなモータ駆動装置を用いたシステムにおいては、例えば機能安全が重要となる車載分野などにおいて、ハーフブリッジへの電源供給のオンオフを切り替える電源リレーと、ハーフブリッジの出力端とモータとの間に接続されるモータリレーと、を設ける場合がある。
【0004】
本開示は、電源リレーおよびモータリレーのオンオフ制御を効率的な構成により行うことができるモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るモータ駆動装置は、
電源電圧の印加端とグランド電位の印加端との間で直列に接続されるハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタを有し、前記ハイサイドトランジスタと前記ローサイドトランジスタが接続されるノードにモータを接続可能に構成される少なくとも1つのハーフブリッジと、
前記電源電圧の印加端と前記ハイサイドトランジスタとの間に接続され、1つ以上のNチャネルMOSFETを有する電源リレーと、
前記ノードと前記モータとの間に接続され、1つ以上のNチャネルMOSFETを有するモータリレーと、
前記電源電圧を昇圧して出力電圧を生成するように構成される昇圧回路と、
を備えるモータシステムにおいて用いられるモータ駆動装置であって、
前記モータリレーのゲートにゲート信号を出力するように構成される制御部を備え、
前記電源リレーのゲートに前記出力電圧を印加させるか否かを切り替えるように構成される電源リレー制御部に前記ゲート信号を入力させる構成としている。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係るモータ駆動装置によれば、電源リレーおよびモータリレーのオンオフ制御を効率的な構成により行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、比較例に係るモータシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、比較例に係るチャージポンプの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るモータシステムにおける一部構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係るモータシステムにおける一部構成を示す図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係るモータシステムにおける一部構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係るモータシステムにおける一部構成を示す図である。
【
図7】
図7は、第5実施形態に係るモータシステムにおける一部構成を示す図である。
【
図8】
図8は、モータシステムを搭載した車両の一構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本開示の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
<1.比較例>
まず、本開示の実施形態について説明する前に、対比のための比較例について説明する。比較例を説明することで、課題がより明らかとなる。
【0010】
<<モータシステム>>
図1は、比較例に係るモータシステム10の構成を示す図である。モータシステム10は、モータ駆動装置1と、ハーフブリッジHB1,HB2,HB3と、電源リレー6と、モータリレー71,72,73と、モータ8と、を備える。モータ駆動装置1は、ハーフブリッジHB1,HB2,HB3を用いてモータ8を駆動する。モータ8は、ブラシレスDCモータの3相モータである。なお、駆動対象のモータは、ブラシレスDCモータに限らず、ステッピングモータまたはブラシ付きDCモータなど、ハーフブリッジを用いて駆動できるモータであればよい。
【0011】
図1の構成においては、3相のモータ8に対応して、ハーフブリッジHB1,HB2,HB3の3つのハーフブリッジが設けられる。第1ハーフブリッジHB1は、後述する電源リレー6がオン状態の場合に電源電圧VBを印加可能な印加端NAと、グランド電位の印加端との間で直列に接続される第1ハイサイドトランジスタM1および第1ローサイドトランジスタM2を有する。具体的には、NチャネルMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)により構成される第1ハイサイドトランジスタM1のドレインは、印加端NAに接続される。第1ハイサイドトランジスタM1のソースは、NチャネルMOSFETにより構成される第1ローサイドトランジスタM2のドレインに第1ノードN1において接続される。第1ローサイドトランジスタM2のソースは、グランド電位の印加端に接続される。なお、第1ローサイドトランジスタM2のソースとグランド電位の印加端との間に電流検出抵抗を設けてもよく、ローサイドトランジスタM4,M6についても同様である。
【0012】
第2ハーフブリッジHB2は、印加端NAとグランド電位の印加端との間で直列に接続される第2ハイサイドトランジスタM3および第2ローサイドトランジスタM4を有する。具体的には、NチャネルMOSFETにより構成される第2ハイサイドトランジスタM3のドレインは、印加端NAに接続される。第2ハイサイドトランジスタM3のソースは、NチャネルMOSFETにより構成される第2ローサイドトランジスタM4のドレインに第2ノードN2において接続される。第2ローサイドトランジスタM4のソースは、グランド電位の印加端に接続される。
【0013】
第3ハーフブリッジHB3は、印加端NAとグランド電位の印加端との間で直列に接続される第3ハイサイドトランジスタM5および第3ローサイドトランジスタM6を有する。具体的には、NチャネルMOSFETにより構成される第3ハイサイドトランジスタM5のドレインは、印加端NAに接続される。第3ハイサイドトランジスタM5のソースは、NチャネルMOSFETにより構成される第3ローサイドトランジスタM6のドレインに第3ノードN3において接続される。第3ローサイドトランジスタM6のソースは、グランド電位の印加端に接続される。
【0014】
第1ノードN1とモータ8のU相入力端の間に第1モータリレー71が接続される。第2ノードN2とモータ8のV相入力端の間に第2モータリレー72が接続される。第3ノードN3とモータ8のW相入力端の間に第3モータリレー73が接続される。モータリレー71,72,73は、いずれもNチャネルMOSFETにより構成される。
【0015】
なお、モータリレーは、2つのNチャネルMOSFETにより構成してもよい。この場合、2つのNチャネルMOSFETのドレインまたはソースを同一ノードにおいて接続することで、2つのNチャネルMOSFETの各ボディダイオードが互いに逆方向に接続され、電流の逆流を阻止できる。
【0016】
電源リレー6は、電源電圧VBの印加端と印加端NAとの間に接続される。電源リレー6は、第1NチャネルMOSFET61と、第2NチャネルMOSFET62と、を有する。第1NチャネルMOSFET61のドレインは、電源電圧VBの印加端に接続される。第1NチャネルMOSFET61のソースは、第2NチャネルMOSFET62のソースに接続される。第2NチャネルMOSFET62のドレインは、印加端NAに接続される。すなわち、NチャネルMOSFET61,62のソース同士を同一ノードにおいて接続している。このような電源リレー6の構成により、NチャネルMOSFET61,62の各ボディダイオードは互いに逆方向に接続され、電流の逆流を阻止する構成としている。なお、電源リレー6の構成としては、これに限らず、NチャネルMOSFET61,62のドレイン同士を同一ノードにおいて接続してもよい。また、電源リレー6は、1つのNチャネルMOSFETにより構成されてもよい。
【0017】
NチャネルMOSFET61,62のゲート・ソース間には、プルダウン抵抗Rpが接続される。
【0018】
モータ駆動装置1は、
図1に示す内部構成を集積化して有する半導体装置である。モータ駆動装置1は、外部との電気的接続を確立するための外部端子として、DRN端子(ドレイン端子)、GH1端子(第1ハイサイドゲート端子)、SH1端子(第1ハイサイドソース端子)、GL1端子(第1ローサイドゲート端子)、GH2端子(第2ハイサイドゲート端子)、SH2端子(第2ハイサイドソース端子)、GL2端子(第2ローサイドゲート端子)、GH3端子(第3ハイサイドゲート端子)、SH3端子(第3ハイサイドソース端子)、およびGL3端子(第3ローサイドゲート端子)を有する。
【0019】
DRN端子は、印加端NA、すなわちハイサイドトランジスタM1,M3,M5の各ドレインに接続される。モータ駆動装置1は、抵抗R1,R2,R3と、スイッチSW1と、コンパレータ31と、を有する。抵抗R1,R2,R3、スイッチSW1およびコンパレータ31は、電源リレー6における第1NチャネルMOSFET61のショート異常を検知するための構成である。このようなショート異常の検知は、モータ8を動作させる前にスタティックに行われる。
【0020】
より具体的には、DRN端子とグランド電位の印加端との間には、抵抗R1およびスイッチSW1が接続される。また、DRN端子とグランド電位の印加端との間には、抵抗R2,R3が直列に接続される。抵抗R2,R3が接続されるノードは、コンパレータ31の第1入力端に接続される。コンパレータ31の第2入力端は、基準電圧Vref1の印加端に接続される。
【0021】
GH1端子は、第1ハイサイドトランジスタM1のゲートに接続される。モータ駆動装置1は、プリドライバ41と、抵抗R4,R5,R6と、スイッチSW2と、コンパレータ51と、を有する。プリドライバ41から出力されるゲート信号Gh1は、GH1端子を介してハイサイドトランジスタM1のゲートに印加される。これにより、第1ハイサイドトランジスタM1がオンオフ駆動される。プリドライバ41は、ハイレベルのゲート信号Gh1を後述するチャージポンプ2の出力電圧Vcphとすることで、第1ハイサイドトランジスタM1をオン状態とする。出力電圧Vcphは、後述するようにチャージポンプ2により昇圧されて電源電圧VBよりも高い電圧であるため、NチャネルMOSFETである第1ハイサイドトランジスタM1をオン状態とすることができる。一方、プリドライバ41は、ローレベルのゲート信号Gh1をSH1端子の電圧とすることで、第1ハイサイドトランジスタM1をオフ状態とする。SH1端子は、第1ハイサイドトランジスタM1のソースに接続される。
【0022】
GL1端子は、第1ローサイドトランジスタM2のゲートに接続される。GL1端子から出力されるゲート信号が第1ローサイドトランジスタM2のゲートに印加されることで、第1ローサイドトランジスタM2がオンオフ駆動される。
【0023】
SH1端子とグランド電位の印加端との間には、抵抗R4およびスイッチSW2が接続される。また、SH1端子とグランド電位の印加端との間には、抵抗R5,R6が直列に接続される。抵抗R5,R6が接続されるノードは、コンパレータ51の第1入力端に接続される。コンパレータ51の第2入力端は、基準電圧Vref2の印加端に接続される。
【0024】
GH2端子は、第2ハイサイドトランジスタM3のゲートに接続される。モータ駆動装置1は、プリドライバ42と、抵抗R7,R8,R9と、スイッチSW3と、コンパレータ52と、を有する。第2ハイサイドトランジスタM3は、プリドライバ42によりGH2端子を介して出力されるゲート信号Gh2によってオンオフ駆動される。ゲート信号Gh2は、ハイレベルとして出力電圧Vcph、ローレベルとしてSH2端子の電圧とされる。SH2端子は、第2ハイサイドトランジスタM3のソースに接続される。
【0025】
GL2端子は、第2ローサイドトランジスタM4のゲートに接続される。GL2端子から出力されるゲート信号が第2ローサイドトランジスタM4のゲートに印加されることで、第2ローサイドトランジスタM4がオンオフ駆動される。
【0026】
SH2端子とグランド電位の印加端との間には、抵抗R7およびスイッチSW3が接続される。また、SH2端子とグランド電位の印加端との間には、抵抗R8,R9が直列に接続される。抵抗R8,R9が接続されるノードは、コンパレータ52の第1入力端に接続される。コンパレータ52の第2入力端は、基準電圧Vref3の印加端に接続される。
【0027】
GH3端子は、第3ハイサイドトランジスタM5のゲートに接続される。モータ駆動装置1は、プリドライバ43と、抵抗R10,R11,R12と、スイッチSW4と、コンパレータ53と、を有する。第3ハイサイドトランジスタM5は、プリドライバ43によりGH3端子を介して出力されるゲート信号Gh3によってオンオフ駆動される。ゲート信号Gh3は、ハイレベルとして出力電圧Vcph、ローレベルとしてSH3端子の電圧とされる。SH3端子は、第3ハイサイドトランジスタM5のソースに接続される。
【0028】
GL3端子は、第3ローサイドトランジスタM6のゲートに接続される。GL3端子から出力されるゲート信号が第3ローサイドトランジスタM6のゲートに印加されることで、第3ローサイドトランジスタM6がオンオフ駆動される。
【0029】
SH3端子とグランド電位の印加端との間には、抵抗R10およびスイッチSW4が接続される。また、SH3端子とグランド電位の印加端との間には、抵抗R11,R12が直列に接続される。抵抗R11,R12が接続されるノードは、コンパレータ53の第1入力端に接続される。コンパレータ53の第2入力端は、基準電圧Vref4の印加端に接続される。
【0030】
また、モータ駆動装置1は、外部端子としてGR1端子(第1リレーゲート端子)、GR2端子(第2リレーゲート端子)、およびGR3端子(第3リレーゲート端子)を有する。GR1端子は、モータリレー71のゲートに接続される。GR2端子は、モータリレー72のゲートに接続される。GR3端子は、モータリレー73のゲートに接続される。GR1端子、GR2端子、およびGR3端子それぞれから出力されるゲート信号によりモータリレー71,72,73はそれぞれオンオフ駆動される。
【0031】
モータシステム10は、例えば機能安全が要求される車載分野に好適であり、電源リレー6およびモータリレー71~73が設けられる。電源リレー6は、電源電圧VBをハーフブリッジHB1~HB3に供給するか否かを切り替える。例えば、電源リレー6により電源電圧VBをハーフブリッジHB1~HB3に供給した状態で異常が検知された場合、モータリレー71~73のうちいずれか1つをオフ状態とし、モータ8を3相駆動から2相駆動へ移行させることができる。また、例えば、異常が検知された場合に、電源リレー6をオフ状態とすることで電源電圧VBのハーフブリッジHB1~HB3への供給が遮断され、モータ8を停止させることもできる。
【0032】
また、モータシステム10は、各トランジスタM1~M6のショート/オープン異常、モータリレー71~73のショート/オープン異常をモータ8を動作させる前にスタティックに検知する機能を有する。このようなショート/オープン異常の検知は、スイッチSW2~SW4のオンオフ、トランジスタM1~M6のオンオフ、およびモータリレー71~73のオンオフの組み合わせにより設定されるパターンにおけるコンパレータ51~53の出力レベルに基づいて行うことができる。このようなパターンを切り替えることでシーケンスが実行される。
【0033】
<<チャージポンプ>>
モータ駆動装置1は、チャージポンプ2を有する。チャージポンプ2に対応して、モータ駆動装置1は、外部端子としてVCPH端子(出力端子)、CPL端子(キャパシタローサイド端子)、CPH端子(キャパシタハイサイド端子)、およびVBT端子(電源端子)を有する。チャージポンプ2は、電源電圧VBを昇圧して出力電圧Vcphを生成して出力する。出力電圧Vcphは、VCPH端子から出力されて電源リレー6におけるNチャネルMOSFET61,62の各ゲートに印加される。また、先述したように、出力電圧Vcphは、プリドライバ41~43にも供給される。CPH端子とCPL端子の間にはキャパシタC1が外部接続される。VBT端子とVCPH端子の間にはキャパシタC2が外部接続される。
【0034】
チャージポンプの構成について
図2を用いて説明する。
図2に示すチャージポンプ2は、トランジスタ21~24と、制御回路25,26と、を有する。
【0035】
トランジスタ21は、PチャネルMOSFETにより構成される。トランジスタ21のソースは、VCPH端子に接続される。トランジスタ22は、NチャネルMOSFETにより構成される。トランジスタ22のドレインは、ノードN21においてトランジスタ21のドレインに接続される。トランジスタ22のソースは、電源電圧VBの印加端に接続される。ノードN21は、CPH端子に接続される。
【0036】
トランジスタ23は、PチャネルMOSFETにより構成される。トランジスタ23のソースは、電源電圧V1の印加端に接続される。トランジスタ24は、NチャネルMOSFETにより構成される。トランジスタ24のドレインは、ノードN22においてトランジスタ23のドレインに接続される。トランジスタ24のソースは、グランド電位の印加端に接続される。ノードN22は、CPL端子に接続される。
【0037】
制御回路25は、トランジスタ21のゲートに駆動信号G1、トランジスタ22のゲートに駆動信号G2を印加することで、トランジスタ21,22を駆動する。制御回路25は、VCPH端子の出力電圧Vcphを基準として駆動信号G1を生成し、電源電圧VBを基準として駆動信号G2を生成する。
【0038】
制御回路26は、トランジスタ23のゲートに駆動信号G3、第4トランジスタ24のゲートに駆動信号G4を印加することで、第3トランジスタ23および第4トランジスタ24を駆動する。制御回路26は、電源電圧V1を基準として駆動信号G3を生成し、グランド電位を基準として駆動信号G4を生成する。
【0039】
このようなチャージポンプ2の定常動作時には、まずトランジスタ22,24がオン状態、トランジスタ21,23がオフ状態とされ、キャパシタC1に電源電圧VBが印加されて充電される。その後、トランジスタ22,24がオフ状態、トランジスタ21,23がオン状態とされることで、CPH端子の電圧がVB+V1となり、VCPH端子から出力電圧Vcphとして出力される。このとき、キャパシタC2が充電される。このような動作の繰り返しにより、電源電圧VBの昇圧動作が行われる。電源電圧VBが昇圧された出力電圧VcphがNチャネルMOSFET61,62の各ゲートに印加されることで、NチャネルMOSFET61,62をオン状態とすることができる。この場合、電源リレー6がオン状態となり、電源電圧VBがハーフブリッジHB1~HB3に供給される。例えばVB=48V、V1=12Vの場合は、Vcph=48+12=60Vとなる。
【0040】
一方、チャージポンプ2の停止時には、トランジスタ21~24をオフ状態とする。このとき、電源電圧VBの印加端からトランジスタ22のボディダイオード、トランジスタ21のボディダイオード、VCPH端子、プルダウン抵抗Rp、および第2NチャネルMOSFET62のボディダイオードを介した電流経路が形成され、NチャネルMOSFET61がオフしきれない課題がある。
【0041】
特に
図1で示した構成において、第1NチャネルMOSFET61のショート異常検知を行う場合、スイッチSW1をオン状態として、コンパレータ31の出力レベルを確認する。第1NチャネルMOSFET61にショート異常がない場合は、DRN端子の電圧=VB-2Vf-Vth-1Vf=VB-3Vf-Vthとなる。ただし、Vfは、トランジスタ21,22のボディダイオードおよび第2NチャネルMOSFET62のボディダイオードの各順電圧であり、Vthは、第1NチャネルMOSFET61の閾値電圧である。一方、第1NチャネルMOSFET61にショート異常がある場合は、DRN端子の電圧=VB-Vfとなる。コンパレータ31では、VB-3Vf-VthとVB-Vfの微小な差である2Vf-Vthを検知する必要がある。しかしながら、実際にはNチャネルMOSFET61がオフしきれないため(すなわち弱いオン状態)、ショート異常の有無によるDRN端子の電圧の差を確認し難くなる。例えば、VB=48V、Vf=0.7V、Vth=1.2Vである。
【0042】
<2.第1実施形態>
以下、上記課題に鑑み、本開示の実施形態について説明する。ここでは、
図1に示す比較例の構成との相違点について主に述べる。
図3は、第1実施形態に係るモータシステム10における一部構成を示す図である。本実施形態では、モータ駆動装置1の外部に電源リレー制御部9が設けられる。
【0043】
電源リレー制御部9は、ゲート遮断リレー91,92,93を有する。ゲート遮断リレーは、モータ8の3相に対応して3つ設けられる。ゲート遮断リレー91~93は、いずれもNチャネルMOSFETにより構成される。ゲート遮断リレー91~93は、VCPH端子と電源リレー6におけるNチャネルMOSFET61,62のゲートとの間に接続される。具体的には、ゲート遮断リレー91~93の各ドレインは、VCPH端子に共通接続される。ゲート遮断リレー91~93の各ソースは、NチャネルMOSFET61,62のゲートに共通接続される。すなわち、ゲート遮断リレー91~93は、並列に接続される。
【0044】
ゲート遮断リレー91~93の各ゲートは、それぞれGR1端子、GR2端子、GR3端子に接続される。モータ駆動装置1は制御部90を有している。制御部90は、各ゲート信号Gr1,Gr2,Gr3をそれぞれGR1端子、GR2端子、GR3端子から出力する。
図1に示すようにGR1端子、GR2端子、GR3端子は、それぞれモータリレー71~73のそれぞれのゲートに接続される。これにより、ゲート信号Gr1~Gr3のそれぞれにより、モータリレー71~73のそれぞれのオンオフとゲート遮断リレー91~93のそれぞれのオンオフが制御される。このように、モータリレー71~73のゲート制御線を、電源リレー6のオンオフ制御のために設けられる電源リレー制御部9の制御に共用しているため、電源リレー制御部9を効率的な構成とし、外付けの部品点数の増加を抑えることができる。
【0045】
ここで、電源リレー制御部9の動作について説明する。ゲート信号Gr1~Gr3の少なくともいずれかがハイレベルであるとする。当該ハイレベルは、チャージポンプ2から出力される出力電圧Vcphである。この場合、ハイレベルとされたゲート信号に応じてモータリレー71~73の少なくともいずれかがオン状態となり、かつ、ゲート遮断リレー91~93の各ソースの電圧がVcph-Vtとなる。ただし、Vtは、ゲート遮断リレー91~93の閾値電圧である。これにより、ハイレベルとされたゲート信号に応じてゲート遮断リレー91~93の少なくともいずれかがオン状態とされる。これにより、電源リレー制御部9はオン状態となり、出力電圧Vcphが電源リレー制御部9を介してNチャネルMOSFET61,62のゲートに供給される。従って、電源リレー6はオン状態とされる。
【0046】
一方、ゲート信号Gr1~Gr3のすべてがローレベルであるとする。当該ローレベルは、ほぼグランド電位である。この場合、モータリレー71~73のすべてがオフ状態とされる。このとき、ゲート遮断リレー91~93の各ソースの電圧がグランド電位となり、ゲート遮断リレー91~93のすべてはオフ状態となる。これにより、NチャネルMOSFET61,62のゲートにグランド電位が印加される。このとき、プルダウン抵抗Rpを介した電流経路が形成されず、第1NチャネルMOSFET61はより確実にオフ状態となる。第1NチャネルMOSFET61にショート異常がない場合、DRN端子の電圧がグランド電位となる。従って、第1NチャネルMOSFET61にショート異常がある場合のDRN端子の電圧=VB-Vthとグランド電位の差は大きく、コンパレータ31によるショート異常検知は行いやすい。
【0047】
このように本実施形態では、電源リレー制御部9は、ゲート信号Gr1~Gr3の少なくともいずれかがハイレベルの場合にオン状態となり、ゲート信号Gr1~Gr3のすべてがローレベルの場合にオフ状態となり、ORリレーとして機能する。モータリレー71~73のすべてがオフ状態の場合にはモータ8を動作させる必要性がほぼないので、電源リレー制御部9をオフ状態とすることで電源リレー6をオフ状態とし、電源電圧VBの供給を遮断するようにしている。
【0048】
なお、ハーフブリッジを1つだけ設けるような場合にモータリレーも1つだけ設けられる場合、電源リレー制御部においてゲート遮断リレーは1つだけ設けてもよい。すなわち、電源リレー制御部はORリレーであることには限らない。
【0049】
<3.第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係るモータシステム10における一部構成を示す図である。本実施形態の第1実施形態との相違点は、電源リレー制御部9をモータ駆動装置1に内蔵していることである。
【0050】
図4に示す本実施形態では、電源リレー制御部9におけるゲート遮断リレー91~93の各ドレインは、チャージポンプ2におけるトランジスタ21のソースに共通接続される。ゲート遮断リレー91~93の各ソースは、VCPH端子に共通接続される。すなわち、ゲート遮断リレー91~93は、トランジスタ21のソース(チャージポンプ2の出力端)とVCPH端子との間に接続される。
【0051】
このような本実施形態によっても、第1実施形態と同様に電源リレー制御部9がORリレーとして機能し、電源リレー6のオンオフを制御できる。特に本実施形態では、外付け部品の増加をより抑制することができる。ただし、本実施形態では、トランジスタ21がオン状態の場合に、電流が電源リレー制御部9およびVCPH端子を介してキャパシタC2に充電され、電源リレー制御部9のオン抵抗による電流能力への影響を考慮し、電流能力の設計に留意する必要がある。
【0052】
<4.第3実施形態>
図5は、第3実施形態に係るモータシステム10における一部構成を示す図である。本実施形態では、チャージポンプ2において、NチャネルMOSFETであるトランジスタ22に対してNチャネルMOSFETであるトランジスタ27を追加している。また、電源リレー制御部9の構成が第1、第2実施形態と異なっている。本実施形態では、電源リレー制御部9は、モータ駆動装置1に内蔵される。
【0053】
a
図5に示す構成では、トランジスタ27のソースは、トランジスタ22のソースと同一ノードにおいて接続される。トランジスタ27のドレインは、電源電圧VBの印加端に接続される。これにより、トランジスタ22のボディダイオード22Aとトランジスタ27のボディダイオード27Aとが互いに逆方向に接続される。これにより、トランジスタ27,22,21がオフ状態の場合、ボディダイオード27Aにより電源電圧VBの印加端からの電流の逆流が阻止され、VCPH端子にVB-2Vfの電圧が印加されることを回避できる。
【0054】
図5の構成においては、電源リレー制御部9は、AND回路9Aと、AND回路9Bと、OR回路9Cと、プルダウンスイッチSpと、プルダウン抵抗Rppと、を有する。AND回路9Aには、ゲート信号Gr1~Gr3が反転されて入力されるとともに、選択信号SELが入力される。AND回路9Aは、入力の論理積を出力する。AND回路9Bには、AND回路9Aの出力を反転させた信号と制御信号Sctrとが入力される。AND回路9Bの出力は、トランジスタ22,27のゲートに印加される。OR回路9Cには、AND回路9Aの出力と制御信号Sctrが入力される。OR回路9Cの出力は、トランジスタ21のゲートに印加される。また、AND回路9Aの出力は、NチャネルMOSFETにより構成されるプルダウンスイッチSpのゲートに印加される。プルダウンスイッチSpのソースは、グランド電位の印加端に接続される。プルダウンスイッチSpのドレインは、プルダウン抵抗Rppを介してVCPH端子に接続される。なお、プルダウン抵抗Rppは必須ではない。
【0055】
ここで、選択信号SELがハイレベルであるとする。ゲート信号Gr1~Gr3の少なくともいずれかがハイレベルの場合、AND回路9Aの出力がローレベルとなり、プルダウンスイッチSpはオフ状態とされる。このとき、AND回路9Bの出力は、制御信号Sctrのレベルに応じたものとなる。このようなモードは、電源リレー制御部9の第1モードとなる。
【0056】
AND回路9Bは、制御信号Sctrのレベルをレベルシフトする機能を有する。例えば、電源電圧VB=48Vとして、制御信号Sctr=0V(ローレベル)の場合、0Vから48Vだけレベルシフトして、ローレベルとしての48Vの出力信号を出力する。一方、例えば、制御信号Sctr=5V(ハイレベル)の場合、5Vから48Vだけレベルシフトして、ハイレベルとしての48V+5Vの出力信号を出力する。
【0057】
制御信号Sctrがローレベルの場合、AND回路9Bの出力(=ゲート信号G2)がローレベルとなる。例えば、VB=48Vの場合、AND回路9Bの出力=48Vとなり、トランジスタ22,27はいずれもオフ状態とされる。この場合、OR回路9Cの出力、すなわちトランジスタ21のゲート信号G1はローレベルとされ、トランジスタ21はオン状態とされ、CPH端子の電圧(=V1+VB)がVCPH端子から出力電圧Vcphとして出力される。例えば、CPH端子の電圧=V1+VB=12V+48V=60Vであり、G1=60V-5Vである。
【0058】
一方、制御信号Sctrがハイレベルの場合、AND回路9Bの出力(=ゲート信号G2)がハイレベルとなる。例えば、VB=48Vの場合、AND回路9Bの出力=48V+5Vとなり、トランジスタ22,27はいずれもオン状態とされる。この場合、トランジスタ21のゲート信号G1はハイレベル(=VCPH端子の電圧)とされ、トランジスタ21はオフ状態とされ、CPH端子の電圧=VBとなる。このとき、例えば、VCPH端子の電圧=60Vであり、G1=60Vである。
【0059】
このように、選択信号SELがハイレベルであり、かつゲート信号Gr1~Gr3の少なくともいずれかがハイレベルの場合、制御信号Sctrの切り替えによってチャージポンプ2の昇圧動作が行われる。
【0060】
一方、選択信号SELがハイレベルであり、かつゲート信号Gr1~Gr3のすべてがローレベルの場合、AND回路9Aの出力がハイレベルとなり、プルダウンスイッチSpはオン状態とされる。このとき、AND回路9Bの出力(=ゲート信号G2)が制御信号Sctrに依らずローレベルとなり、トランジスタ22,27はいずれもオフ状態とされる。このようなモードは、電源リレー制御部9の第2モードとなる。プルダウンスイッチSpによりVCPH端子の電圧=0Vとなる。このとき、ゲート信号G1がハイレベル(=VCPH端子の電圧)とされ、トランジスタ21はオフ状態とされる。これにより、第1NチャネルMOSFET61のゲートに0Vが印加され、第1NチャネルMOSFET61をより確実にオフ状態とすることができる。
【0061】
このような本実施形態によっても、モータリレー71~73の各ゲート制御線を共用して電源リレー制御部9を制御するため、電源リレー制御部9を効率的な構成とすることができる。また、ゲート信号Gr1~Gr3の少なくともいずれかがハイレベルの場合、すなわちモータリレー71~73の少なくともいずれかがオン状態の場合にチャージポンプ2の昇圧動作により電源リレー6をオン状態とし、ゲート信号Gr1~Gr3のすべてがローレベルの場合、すなわちモータリレー71~73のすべてがオフ状態の場合に電源リレー6をオフ状態とすることができる。
【0062】
また、選択信号SELがローレベルの場合、AND回路9Aの出力がローレベルとなり、プルダウンスイッチSpはオフ状態とされる。このとき、AND回路9Bの出力およびOR回路9Cの出力が制御信号Sctrに応じたレベルとなり、チャージポンプ2の昇圧動作が可能となり、電源リレー6はオン状態となる。この場合、ゲート信号Gr1~Gr3のレベルに依らずに電源リレー6をオン状態とすることができるので、ゲート信号Gr1~Gr3がすべてローレベル、すなわちモータリレー71~73がすべてオフ状態の場合に電源リレー6をオン状態とすることが可能である。
【0063】
これにより、スタティックにショート/オープン異常を検知するための各種パターンを実現できる。例えば
図1においてスイッチSW2=オン状態、スイッチSW3,SW4=オフ状態、トランジスタM1~M6をすべてオフ状態、モータリレー71~73をすべてオフ状態、電源リレー6はオン状態としたパターンとして、トランジスタM1,M4,M6のショート異常検知を行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態において、NチャネルMOSFETであるトランジスタ27を追加する場合に、トランジスタ22,27のドレインを同一ノードにおいて接続してもよい。また、AND回路9Aについては、論理が等価であればNAND回路あるいはOR回路などのMIL論理記号により表現してもよい。
【0065】
<5.第4実施形態>
図6は、第4実施形態に係るモータシステム10における一部構成を示す図である。本実施形態では、第3実施形態との相違点として、PチャネルMOSFETであるトランジスタ28をトランジスタ21に対して追加している。トランジスタ21,28のソースは、同一ノードにおいて接続される。これにより、トランジスタ21,28の各ボディダイオードが互いに逆方向に接続され、トランジスタ21,22,28がオフ状態の場合に電源電圧VBの印加端からの電流の逆流を阻止できる。なお、トランジスタ21,28のドレインが同一ノードにおいて接続されるようにしてもよい。ただし、トランジスタ21,28のソースを同一ノードにおいて接続したほうが、ゲート・ソース間の保護素子(不図示)が一つで済む。
【0066】
<6.第5実施形態>
図7は、第5実施形態に係るモータシステム10における一部構成を示す図である。本実施形態の第1実施形態(
図3)との相違点は、昇圧回路としてチャージポンプの代わりに昇圧DC/DCコンバータ20を用いることである。
【0067】
昇圧DC/DCコンバータ20は、電源電圧VBを昇圧して出力電圧Voutを生成する。昇圧DC/DCコンバータ20は、インダクタL1と、ダイオードD1と、スイッチング素子Q1と、を有する。インダクタL1およびダイオードD1は、モータ駆動装置1の外部に設けられる。インダクタL1の第1端は、電源電圧VBの印加端に接続される。インダクタL1の第2端は、ダイオードD1のアノードに接続される。モータ駆動装置1は、外部端子としてSW端子(スイッチ端子)を有する。SW端子は、インダクタL1の第2端に接続される。スイッチング素子Q1は、モータ駆動装置1に内蔵され、NチャネルMOSFETにより構成される。スイッチング素子Q1のドレインは、SW端子に接続される。スイッチング素子Q1のソースは、グランド電位の印加端に接続される。
【0068】
スイッチング素子Q1がオンオフ駆動されることでダイオードD1のカソードに出力電圧Voutが生成される。電源リレー制御部9は、出力電圧Voutの印加端と電源リレー6との間に接続される。
【0069】
ゲート信号Gr1~Gr3の少なくともいずれかがハイレベル(=Vout)の場合、電源リレー制御部9におけるゲート遮断リレー91~93の少なくともいずれかがオン状態となり、電源リレー6(NチャネルMOSFET61,62)はオン状態とされる。
【0070】
<7.ハーフブリッジの個数>
先述した実施形態では3相モータを用いたことからハーフブリッジの個数は3個であったが、これに限らない。例えば、ハーフブリッジを2個としてHブリッジを構成してブラシ付きDCモータを駆動するようなモータシステムとしてもよい。または、例えば、ハーフブリッジを1個として、ブラシ付きDCモータを駆動するようなモータシステムとしてもよい。また、複数のハーフブリッジを設け、ハーフブリッジごとにモータを設けてもよい。
【0071】
<8.車両への適用>
図8は、先述したモータシステム10を搭載した車両の一構成例を示す外観図である。
図8においては、モータ8の適用例として、車両Xに搭載される各種モータX11~X17を示している。モータシステム10は、特に機能安全が要求される車載用の用途に適する。
【0072】
X11は、電動パワーステアリング用モータである。X12は、電動オイルポンプ用モータである。X13は、ヘッドライト駆動用モータである。X14は、電動パーキングブレーキ用モータである。X15は、シート冷却ファン用モータである。X16は、ドア開閉用モータである。X17は、ドアロック用モータである。
【0073】
<9.その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0074】
<9.付記>
上記のように例えば、本開示の一態様に係るモータ駆動装置(1)は、
電源電圧(VB)の印加端とグランド電位の印加端との間で直列に接続されるハイサイドトランジスタ(M1,M3,M5)とローサイドトランジスタ(M2,M4,M6)を有し、前記ハイサイドトランジスタと前記ローサイドトランジスタが接続されるノード(N1,N2,N3)にモータ(8)を接続可能に構成される少なくとも1つのハーフブリッジ(HB1,HB2,HB3)と、
前記電源電圧の印加端と前記ハイサイドトランジスタとの間に接続され、1つ以上のNチャネルMOSFET(61,62)を有する電源リレー(6)と、
前記ノードと前記モータとの間に接続され、1つ以上のNチャネルMOSFETを有するモータリレー(71,72,73)と、
前記電源電圧を昇圧して出力電圧(Vcph)を生成するように構成される昇圧回路(2)と、
を備えるモータシステム(10)において用いられるモータ駆動装置(1)であって、
前記モータリレーのゲートにゲート信号(Gr1,Gr2,Gr3)を出力するように構成される制御部(90)を備え、
前記電源リレーのゲートに前記出力電圧を印加させるか否かを切り替えるように構成される電源リレー制御部(9)に前記ゲート信号を入力させる構成としている(第1の構成)。
【0075】
また、上記第1の構成において、前記電源リレー制御部(9)は、前記出力電圧(Vcph)の印加端と前記電源リレー(6)のゲートとの間に接続される1つ以上のゲート遮断リレー(91,92,93)を有し、
前記ゲート遮断リレーのゲートには、前記ゲート信号が印加可能である構成としてもよい(第2の構成)。
【0076】
また、上記第2の構成において、前記電源リレー制御部(9)は、並列接続される2つ以上の前記ゲート遮断リレー(91,92,93)を有する構成としてもよい(第3の構成)。
【0077】
また、上記第2または第3の構成において、前記出力電圧(Vcph)を出力するように構成される外部端子としての出力端子(VCPH端子)を備え、
前記出力端子と前記電源電圧(VB)の印加端との間にキャパシタ(C2)が接続され、
前記ゲート遮断リレー(91,92,93)は、前記出力端子に外部接続される構成としてもよい(第4の構成)。
【0078】
また、上記第4の構成において、前記昇圧回路は、チャージポンプ(2)である構成としてもよい(第5の構成)。
【0079】
また、上記第2の構成において、外部端子としての出力端子(VCPH端子)を備え、
前記電源リレー制御部(9)は、当該モータ駆動装置(1)に内蔵され、
前記ゲート遮断リレー(91,92,93)は、前記昇圧回路(2)の出力端と前記出力端子との間に接続される構成としてもよい(第6の構成)。
【0080】
また、上記第1の構成において、前記出力電圧(Vcph)を出力するように構成される外部端子としての出力端子(VCPH端子)を備え、
前記昇圧回路は、チャージポンプ(2)であり、
前記昇圧回路は、前記出力端子と前記電源電圧(VB)の印加端との間に接続される第1トランジスタ(21)および第2トランジスタ(22)と、前記第1トランジスタまたは前記第2トランジスタの逆並列ダイオード(22A)と逆方向に接続されるダイオード(27A)を含む第3トランジスタ(27)と、を有し、
前記電源リレー制御部(9)は、前記出力端子をグランド電位にプルダウンするためのプルダウンスイッチ(Sp)を有し、
前記電源リレー制御部は、前記ゲート信号(Gr1,Gr2,Gr3)に応じて第1モードと第2モードとを切り替えられるように構成され、
前記第1モードは、前記プルダウンスイッチをオフ状態とし、かつ、制御信号(Sctr)の切り替えに応じて前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、および前記第3トランジスタのオンオフを切り替えるモードであり、
前記第2モードは、前記プルダウンスイッチをオン状態とし、かつ、前記制御信号に依らずに前記前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、および前記第3トランジスタをオフ状態とするモードである構成としてもよい(第7の構成)。
【0081】
また、上記第7の構成において、前記第1トランジスタ(21)は、PチャネルMOSFETにより構成され、
前記第2トランジスタ(22)は、NチャネルMOSFETにより構成され、
前記第3トランジスタ(27)は、NチャネルMOSFETにより構成され、
前記第2トランジスタと前記第3トランジスタのソースまたはドレインが同一ノードにおいて接続される構成としてもよい(第8の構成、
図5)。
【0082】
また、上記第7の構成において、前記第1トランジスタ(21)は、PチャネルMOSFETにより構成され、
前記第2トランジスタ(22)は、NチャネルMOSFETにより構成され、
前記第3トランジスタ(28)は、PチャネルMOSFETにより構成され、
前記第1トランジスタと前記第3トランジスタのソースまたはドレインが同一ノードにおいて接続される構成としてもよい(第9の構成、
図6)。
【0083】
また、上記第7から第9のいずれかの構成において、前記モータリレー(71,72,73)は、2つ以上設けられ、
少なくともいずれかの前記ゲート信号(Gr1,Gr2,Gr3)がハイレベルの場合、前記電源リレー制御部は、前記第1モードとなり、すべての前記ゲート信号がローレベルの場合、前記電源リレー制御部は、前記第2モードとなる構成としてもよい(第10の構成)。
【0084】
また、上記第10の構成において、選択信号(SEL)が所定レベルの場合、前記電源リレー制御部は、前記ゲート信号に依らずに前記第1モードとなる構成としてもよい(第11の構成)。
【0085】
また、本開示の一態様に係るモータシステム(10)は、上記第1から第11のいずれかの構成のモータ駆動装置(1)と、前記ハーフブリッジ(HB1,HB2,HB3)と、前記モータ(8)と、を備える(第12の構成)。
【0086】
また、本開示の一態様に係る車両(X)は、上記第12の構成のモータシステム(10)を備える(第13の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示は、例えば、車載用のモータシステムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 モータ駆動装置
2 チャージポンプ
6 電源リレー
8 モータ
9 電源リレー制御部
10 モータシステム
20 昇圧DC/DCコンバータ
21~24 トランジスタ
22A ボディダイオード
25,26 制御回路
27 トランジスタ
27A ボディダイオード
28 トランジスタ
31 コンパレータ
41~43 プリドライバ
51~53 コンパレータ
71~73 モータリレー
90 制御部
91~93 ゲート遮断リレー
9A,9B AND回路
9C OR回路
C1,C2 キャパシタ
D1 ダイオード
HB1 第1ハーフブリッジ
HB2 第2ハーフブリッジ
HB3 第3ハーフブリッジ
L1 インダクタ
M1 第1ハイサイドトランジスタ
M2 第1ローサイドトランジスタ
M3 第2ハイサイドトランジスタ
M4 第2ローサイドトランジスタ
M5 第3ハイサイドトランジスタ
M6 第3ローサイドトランジスタ
Q1 スイッチング素子
R1~R12 抵抗
Rp,Rpp プルダウン抵抗
SW1~SW4 スイッチ
Sp プルダウンスイッチ
X 車両