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特開2024-174522ベルト駆動装置及びそれを備える画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174522
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ベルト駆動装置及びそれを備える画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241210BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00 318
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092384
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志部谷 哲平
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
【Fターム(参考)】
2H134GA06
2H134GB02
2H134HD01
2H134HD06
2H134HD07
2H134KH10
2H134KH15
2H200FA02
2H200FA09
2H200FA16
2H200FA18
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA45
2H200GB22
2H200GB25
2H200JA02
2H200JB10
2H200JC04
2H200JC12
2H200JC17
2H200LB13
2H200LB33
2H200LB36
2H200LB37
2H200MB05
2H200MB10
2H200MC02
2H200MC06
(57)【要約】
【課題】製造コストを抑えながら中間転写ベルトの劣化を低減できるベルト駆動装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】ベルト駆動装置は、無端状のベルトと、ベルトを回転可能に張架する複数の張架ローラーと、ベルトクリーニング装置と、を備える。ベルトクリーニング装置は、クリーニングブレードと、対向ローラーと、を有する。クリーニングブレードは、ベルトの外周面に接触してベルトに付着した異物を除去する。対向ローラーは、ベルトを挟んでクリーニングブレードに対向し、ベルトの内周面に接触するように配置される。対向ローラーは、外周面に配置されるカバー層を有し、100Vの電圧を印可したときのカバー層の表面抵抗値は、10の10乗(Ω)以上であるとともに、カバー層のアスカーA硬度は、60°以上90°以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルトと、
前記ベルトを回転可能に張架する複数の張架ローラーと、
前記ベルトの外周面に接触して前記ベルトに付着した異物を除去するクリーニングブレードと、前記ベルトを挟んで前記クリーニングブレードに対向して前記ベルトの内周面に接触するように配置される対向ローラーと、を有するベルトクリーニング装置と、
を備えたベルト駆動装置において、
前記対向ローラーは、外周面に配置されるカバー層を有し、100Vの電圧を印可したときの前記カバー層の表面抵抗値は、10の10乗(Ω)以上であるとともに、前記カバー層のアスカーA硬度は、60°以上90°以下であることを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
前記カバー層は、前記対向ローラーの軸方向において、前記ベルトと対向する領域全体に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記カバー層は、チューブ状の高抵抗ゴムを前記対向ローラーの外周面に被覆して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
前記カバー層は、前記対向ローラーの外周面に高抵抗の樹脂を被覆して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルト駆動装置。
【請求項5】
前記カバー層は、前記ベルトの内周面の摩擦帯電系列と同系列であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルト駆動装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のベルト駆動装置を備えた画像形成装置。
【請求項7】
前記カバー層は、前記対向ローラーの軸方向において、前記ベルトの画像形成可能領域と対向する領域にのみ配置されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記カバー層は、前記対向ローラーの軸方向において、前記ベルトに形成されるキャリブレーション用の画像調整パターンが形成される領域と対向する領域にのみ配置されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動装置及びそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベルト駆動装置は、感光体ドラム(像担持体)上に形成されたトナー像が転写される中間転写ベルトに付着した残留トナーを除去するベルトクリーニング装置を備えている。ベルトクリーニング装置は、ベルト(中間転写ベルト)に付着した残留トナーを除去するクリーニングブレードと、ベルトを挟んでクリーニングブレードに対向し、ベルトの内周面に接触するように配置される対向ローラーと、電極部材と、を有する。クリーニングブレードの圧接力を対向ローラーで受ける。電極部材は、所定の周波数を有する電圧が印可される。
【0003】
電極部材に電圧を印可することにより、対向ローラー及びベルトが振動してベルトに付着した残留トナーは、クリーニングブレードにより除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-107916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に開示されたベルト駆動装置は、電極部材の電圧によりベルトが劣化する可能性があった。また、電極部材などの振動機構を設けることにより、製造コストが上昇する可能性があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、製造コストを抑えながらベルトの劣化を低減できるベルト駆動装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的なベルト駆動装置は、無端状のベルトと、ベルトを回転可能に張架する複数の張架ローラーと、ベルトクリーニング装置と、を備える。ベルトクリーニング装置は、クリーニングブレードと、対向ローラーと、を有する。クリーニングブレードは、ベルトの外周面に接触してベルトに付着した異物を除去する。対向ローラーは、ベルトを挟んでクリーニングブレードに対向し、ベルトの内周面に接触するように配置される。対向ローラーは、外周面に配置されるカバー層を有し、100Vの電圧を印可したときのカバー層の表面抵抗値は、10の10乗(Ω)以上であるとともに、カバー層のアスカーA硬度は、60°以上90°以下である。
【発明の効果】
【0008】
例示的な本発明によれば、製造コストを抑えながらベルトの劣化を低減できるベルト駆動装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る中間転写ユニット25を備えた画像形成装置100の構造を概略的に示す断面図
図2】本発明の一実施形態に係る中間転写ユニット25周辺の構造を示す側面断面図
図3】本発明の一実施形態に係る中間転写ユニット25を構成するベルトクリーニング装置30周辺の構造を示す側面断面図
図4】本発明の一実施形態に係る中間転写ベルト8に転写した画像調整パターンの累積印字回数と中間転写ベルト8に転写された画像調整パターンの濃度ムラとの関係を示すグラフ
図5】本発明の一実施形態に係る中間転写ベルト8の長手方向における表面粗さの変化を示すグラフ
図6】本発明の一実施形態に係る中間転写ベルト8の劣化に関する評価方法を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の内部構造を示す断面図である。画像形成装置100(ここではカラープリンター)本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では左側)から順に配設されている。画像形成部Pa~Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0011】
画像形成部Pa~Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム(像担持体)1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらにベルト駆動モーター(図示せず)により図1において反時計回り方向に回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa~Pdに隣接して設けられている。
【0012】
感光体ドラム1a~1d上に形成されたトナー像は、、各感光体ドラム1a~1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳される。その後、中間転写ベルト8上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー9によって記録媒体の一例としての用紙P上に二次転写される。トナー像が二次転写された用紙Pは、定着部13においてトナー像が定着された後、画像形成装置100本体より排出される。このとき、各感光体ドラム1a~1dは、図1において時計回り方向に回転し、各感光体ドラム1a~1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0013】
トナー像が二次転写される用紙Pは、画像形成装置100の本体下部に配置された用紙カセット16内に収容されている。用紙Pは、給紙ローラー12a及びレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9と中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。
【0014】
画像形成部Pdには、二次転写ローラー9の下流側において中間転写ベルト8の表面に残存するトナー等を除去するためのベルトクリーニング装置30が配置されている。
【0015】
次に、画像形成部Pa~Pdについて説明する。回転可能に配設された感光体ドラム1a~1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a~1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a~1dに画像情報を露光する露光装置5と、感光体ドラム1a~1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a~1d上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング装置7a、7b、7c及び7dが設けられている。
【0016】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a~2dによって感光体ドラム1a~1dの表面を一様に帯電させる。次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a~1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a~3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。
【0017】
なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a~3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a~4dから各現像装置3a~3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a~3dにより感光体ドラム1a~1d上に供給され、静電的に付着する。これにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0018】
そして、一次転写ローラー6a~6dにより一次転写ローラー6a~6dと感光体ドラム1a~1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a~1d上のシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム1a~1dの表面に残留したトナー等がクリーニング装置7a~7dにより除去される。
【0019】
中間転写ベルト8は、上流側の従動ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とに掛け渡されている。ベルト駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回り方向に回転を開始すると、用紙Pがレジストローラー対12bから所定のタイミングで駆動ローラー11とこれに隣接して設けられた二次転写ローラー9とのニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送される。用紙Pが二次転写ニップ部を通過する際に中間転写ベルト8上のフルカラー画像が用紙P上に二次転写される。トナー像が二次転写された用紙Pは定着部13へと搬送される。
【0020】
定着部13に搬送された用紙Pは、定着ローラー対13aにより加熱及び加圧されてトナー像が用紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙Pは、搬送ローラー対15を経て用紙搬送路18の分岐部に配置された分岐部材21によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路22に送られて両面印字された後に)、排出ローラー対19によって排出トレイ20に排出される。
【0021】
次に、中間転写ユニット25及びその周辺の構造について説明する。図2は、中間転写ユニット25の構造を示す側面断面図である。図3は、中間転写ユニット25を構成するベルトクリーニング装置30周辺の構造を示す側面断面図である。
【0022】
中間転写ユニット25は、一次転写ローラー6a~6dと、中間転写ベルト(ベルト)8と、従動ローラー10及び駆動ローラー11と、ベルトクリーニング装置30と、を備える。中間転写ベルト8は、複数の張架ローラーに回転可能に張架されている。張架ローラーは、感光体ドラム1a~1dの配列方向(図2の左右方向)の一方端(右端)に配置され、中間転写ベルト8を回転駆動させる駆動ローラー11と、配列方向の他方端(左端)に配置される従動ローラー10と、一次転写ローラー6a~6dと、を含む。
【0023】
ベルトクリーニング装置30は、駆動ローラー11よりも中間転写ベルト8の回転方向下流側で、かつ、従動ローラー10よりも中間転写ベルト8の回転方向上流側に配置されている。ベルトクリーニング装置30は、ハウジング31と、クリーニングブレード32と、回収スクリュー33と、ブレード保持部材34と、シール部材35と、対向ローラー40と、を有する(図3参照)。
【0024】
ハウジング31は、中間転写ベルト8に対向する開口部31aと、中間転写ベルト8の表面から掻き取られた廃トナーを収容する廃トナー収容部31bと、を有する。
【0025】
クリーニングブレード32は、中間転写ベルト8の外周面に当接し、中間転写ベルト8に付着した残留トナーを除去する。クリーニングブレード32としては、例えばポリウレタンゴム製のブレードが用いられる。ブレード保持部材34は、金属製であって、ハウジング31の開口部31aに対し、中間転写ベルト8の移動方向(矢印A方向)の下流側(図3の左側)に付設される。
【0026】
クリーニングブレード32は、基端部32a側がブレード保持部材34に固定され、先端部32aを中間転写ベルト8の移動方向の上流側に向けて(カウンター方向に)所定の角度で取り付けられている。クリーニングブレード32の材質及び硬度、寸法、中間転写ベルト8への食い込み量及び圧接力、取り付け角度等は、中間転写ベルト8の仕様に応じて適宜設定される。
【0027】
中間転写ベルト8を挟んでクリーニングブレード32の対向位置には、クリーニングブレード32の圧接力を受ける対向ローラー40が配置されている。対向ローラー40は、芯金40aと、芯金40aの外周面に配置される弾性層40bと、弾性層40bの外周面に配置されるカバー層40cと、で構成される。すなわち、対向ローラー40は、外周面に配置されるカバー層40cを有する。弾性層40bは、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等が用いられる。
【0028】
カバー層40cは、例えば、チューブ状の高抵抗ゴムを対向ローラー40(弾性層40b)の外周面に被覆して形成されている。これにより、カバー層40cを既存の対向ローラー40に容易に取り付けることができ、対向ローラー40の製造コストの上昇を抑制できる。なお、カバー層40cは、対向ローラー40の外周面に高抵抗の樹脂を塗布することにより被覆して形成してもよい。これにより、カバー層40cを対向ローラー40の軸方向の所定領域に容易に配置できる。
【0029】
また、カバー層40cは、対向ローラー40の軸方向において、中間転写ベルト8と対向する領域全体に配置されている。
【0030】
対向ローラー40は、駆動ローラー11と同じ駆動源(ベルト駆動モーター)からの駆動力によって中間転写ベルト8と同じ線速で図3の反時計回り方向に回転される。なお、対向ローラー40の頂点(最上部)は、駆動ローラー11の頂点及び従動ローラー10の頂点よりも僅かに上方に配置されている。
【0031】
クリーニングブレード32によって中間転写ベルト8の表面から除去された残留トナーは、回収スクリュー33の回転に伴ってベルトクリーニング装置30の外部に排出され、トナー回収容器(図示せず)に搬送されて貯留される。
【0032】
シール部材35は、ハウジング31の開口部31aの中間転写ベルト8の回転方向上流側(図3の右側)に取り付けられるシート状の部材である。シール部材35の一端部(図3の右端)はハウジング31に接着固定され、他端部(図3の左端)は自由端を形成している。シール部材35の自由端は、中間転写ベルト8の回転方向下流側に向けて中間転写ベルト8の外周面に接触している。シール部材35は、ハウジング31と中間転写ベルト8との隙間からハウジング31内の廃トナーが漏出するのを抑制する。シール部材35としては、例えば、厚さ100μmのウレタンシートが用いられるが、ウレタンシート以外の薄板状のシートでもよい。
【0033】
本実施形態では、対向ローラー40の外周面に弾性層40bを設けている。この構成により、クリーニングブレード32の接触部における圧力が分散され、紙粉等の異物による中間転写ベルト8への応力集中を緩和することができる。
【0034】
しかし、例えば、トナー濃度の補正(キャリブレーション)が行われる際に、中間転写ベルト8に画像調整パターンを転写したときに、高帯電量のトナーがクリーニングブレード32に一度に大量に溜まる可能性がある。また、ジャム(紙詰まり)が発生した場合に、トナーが用紙Pではなくクリーニングブレード32に転写されて付着する可能性がある。このとき、高帯電量のトナーの影響により、クリーニングブレード32から対向ローラー40へ放電することがある。放電回数が増えることにより、中間転写ベルト8にリーク痕が形成されて中間転写ベルト8の抵抗値が減少し易くなる。これにより、画像不良が発生する可能性があった。
【0035】
特に高速印刷又は高品質印刷を行う画像形成装置1では、生産性を落とさずに印刷の品質確保をするために、中間転写ベルト8の非画像形成領域へキャリブレーションを頻繁に行う。このとき、中間転写ベルト8の抵抗値が減少し、画像不良が発生する可能性が特に高くなる。
【0036】
本実施形態では、100Vの電圧を印可したときのカバー層40cの表面抵抗値は、10の10乗(Ω)以上であるとともに、カバー層40cのアスカーA硬度は、60°以上90°以下である。なお、本実施形態では、カバー層40cのアスカーA硬度は、JIS K 6301に準拠する方法により、ゴム硬度計(高分子計器株式会社製「アスカーゴム硬度計JA型」)を用いて測定した。
【0037】
100Vの電圧を印可したときのカバー層40cの表面抵抗値が、10の10乗(Ω)以上とすることにより、クリーニングブレード32から対向ローラー40への放電を低減できる。また、カバー層40cのアスカーA硬度を、60°以上90°以下とすることにより、カバー層40cの表面に異物が付着した際に、中間転写ベルト8の内周面を傷つけることを防止できる。これにより、中間転写ベルト8にリーク痕が形成されることを低減して中間転写ベルト8の劣化を抑制できる。これにより、中間転写ベルト8の抵抗値の減少を抑制できる。したがって、新たな機構を設けることなく製造コストを抑えながら中間転写ベルト8の劣化を低減できるとともに、画像不良の発生を防止できる。
【0038】
カバー層40cは、対向ローラー40の軸方向において、中間転写ベルト8と対向する領域全体に配置されているため、中間転写ベルト8と対向する領域全体にわたってクリーニングブレード32から対向ローラー40への放電を低減できる。
【0039】
なお、本実施形態では、カバー層40cは、対向ローラー40の軸方向において、中間転写ベルト8と対向する領域全体に配置されているが、カバー層40cは、対向ローラー40の軸方向において、中間転写ベルト8の画像形成可能領域と対向する領域にのみ配置されてもよい。さらに、カバー層40cは、対向ローラー40の軸方向において、中間転写ベルト8に形成されるキャリブレーション用の画像調整パターンが形成される領域と対向する領域にのみ配置されてもよい。これにより、中間転写ベルト8の抵抗値の減少を抑制しながら、カバー層40cの形成領域を減らして対向ローラー40の製造コストの上昇をより抑制できる。
【0040】
カバー層40cは、表面抵抗値を調整するため中間転写ベルト8の材質により変更することが好ましい。本実施形態では、カバー層40cは、中間転写ベルト8の内周面の摩擦帯電系列と同系列である。これにより、カバー層40cは、中間転写ベルト8の内周面と摺動したときに、摩擦帯電し難く、電荷が溜まり難い。従って、クリーニングブレード32から対向ローラー40への放電をより低減できる。
【0041】
例えば。中間転写ベルト8がポリイミドから成る場合に、カバー層40cは、ポリイミドの摩擦帯電系列の近い材料が好ましい。また、中間転写ベルト8がポリアミドから成る場合に、カバー層40cは、ポリアミドの摩擦帯電系列の近い材料が好ましい。
【0042】
次に本発明の効果について、実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。以下の実験では、キャリブレーションの実行回数と画像不良発生との関係について評価を行った。
【0043】
具体的には、中間転写ベルト8に転写した画像調整パターン(ハーフ濃度のトナー像)の累積印字回数と中間転写ベルト8に転写された画像調整パターンの濃度ムラ(ΔID)との関係を測定し、その結果を図4に示す。濃度ムラ(ΔID)は、中間転写ベルト8に転写された画像調整パターンの濃度を画像濃度センサー(不図示)で測定し、ハーフ画像の軸方向の両端部における濃度差から算出される。
【0044】
また、累積印字枚数が50k枚に達したときの、比較例1に係る中間転写ベルト8の外周面(クリーニングブレード32が接触する面)と内周面(対向ローラー40が接触する面)における表面粗さ(μm)を長手方向(軸方向)にわたって測定し、その結果を図5に示す。
【0045】
実施例1に係る対向ローラー40は、カバー層40cが形成され、カバー層40cは、ポリイミドから成り、カバー層40cは、チューブ状の高抵抗ゴムを対向ローラー40の外周面に被覆して形成されている。カバー層40cの表面抵抗値は、10の10乗(Ω)以上10の15乗(Ω)以下でるとともに、カバー層4cbのアスカーA硬度は、80°である。実施例1及び比較例1に係る中間転写ベルト8は、ポリイミドから成る。比較例1に係る対向ローラーは、カバー層40cが形成されていない。
【0046】
図4に示すとおり、画像調整パターンの累積印字回数が1000回を超えた場合でも、実施例1の中間転写ベルト8に転写された画像調整パターンの濃度ムラ(ΔID)は、比較例1の中間転写ベルト8に転写された画像調整パターンは濃度ムラ(ΔID)と比較して抑制されている。表面抵抗値が、10の10乗(Ω)以上であるとともに、アスカーA硬度が、60°以上90°以下のカバー層40cを設けることにより、中間転写ベルト8の劣化を低減できるとともに、画像不良の発生を防止できることがわかった。
【0047】
図5に示すとおり、比較例1の中間転写ベルト8の内周面の表面粗さ(μm)は、比較例1の中間転写ベルト8の外周面の表面粗さ(μm)よりも粗い。これにより、中間転写ベルト8の内周面側にカバー層40cを配置して中間転写ベルト8の劣化を低減する必要があることがわかった。
【0048】
次に、表面抵抗値が、10の10乗(Ω)以上のカバー層40cを設けた場合に、中間転写ベルト8の劣化を低減できるか否かについて評価を行った。具体的には、図6に示すように、中間転写ベルト8を構成するベルト800と、導電板500と、の間にカバー層40cを構成する高抵抗シート400を配置した。また、ベルト800の上面に配置した金属部材500と導電板500との間に電圧を10V、100V、250Vに変更しながら印可し、ベルト800の表面抵抗値を測定した。
【0049】
また、ベルト800と、導電板500と、の間に高抵抗シート400を配置せずに金属部材500と導電板500との間に電圧を10V、100V、250Vに変更しながら印可し、ベルト800の表面抵抗値を測定して表1にまとめた。
【0050】
【表1】
【0051】
表面抵抗値が、10の10乗(Ω)以上であるとともに、アスカーA硬度が、60°以上90°以下の高抵抗シート400を設けた場合に、ベルト800にリーク痕は観察されなかった。これにより、表面抵抗値が、10の10乗(Ω)以上であるとともに、アスカーA硬度が、60°以上90°以下のカバー層40cを設けることにより、中間転写ベルト8の劣化を低減できるとともに、画像不良の発生を防止できることがわかった。
【0052】
次に、アスカーA硬度が、70°のカバー層40cを設けた場合に、異物による中間転写ベルト8への応力集中を緩和できるか否かについて評価を行った。具体的には、中間転写ベルト8の外周面とクリーニングブレード32の接触部に外径が30μmの異物を配置し、接触部における中間転写ベルト8の対向ローラー40側(径方向内側)への変形量を測定し、その結果を表2に示す。ここで、異物には回転駆動しているユニット内で凝集したトナーを用いた。
【0053】
実施例2に係る対向ローラー40は、カバー層40cが形成され、カバー層40cは、ポリイミドから成り、カバー層40cは、チューブ状の高抵抗ゴムを対向ローラー40の外周面に被覆して形成されている。カバー層40cの表面抵抗値は、10の10乗(Ω)以上10の11乗(Ω)以下であるとともに、カバー層4cbのアスカーA硬度は、80°である。実施例2及び比較例2に係る中間転写ベルト8は、ポリイミドから成る。比較例2に係る対向ローラーは、カバー層40c及び弾性層40bが設けられておらず、アルミニウムから成る芯金40aから成る。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示すように、実施例2に係る中間転写ベルト8の変形量は、比較例2に係る中間転写ベルト8の変形量と比較して小さい。これにより、アスカーA硬度が、70°のカバー層40cを設けることにより、クリーニングブレード32の接触部における圧力が分散され、紙粉等の異物による中間転写ベルト8への応力集中を緩和することができることがわかった。また、比較例2に係る対向ローラーと対向して配置された中間転写ベルト8の内周面は微小な孔が複数形成され、傷ついていることが確認された。
【0056】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。上記各実施形態では中間転写方式の画像形成装置100に用いられる中間転写ベルト8をクリーニングするベルトクリーニング装置30について説明したが、中間転写ベルト8に代えて、用紙Pを各画像形成部Pa~Pbに順次搬送する転写搬送ベルトを備えた直接転写方式の画像形成装置において、転写搬送ベルトをクリーニングするベルトクリーニング装置としても使用可能である。
【0057】
また、本発明は図1に示したようなカラープリンターに限らず、デジタル複合機、カラー複写機、ファクシミリ等、ベルトクリーニング装置を備えた種々の画像形成装置に適用可能である。
【0058】
また、本実施形態では、対向ローラー40を芯金40a、弾性層40b及びカバー層40cで構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、カバー層40cを弾性層40bと同質の材料で構成し、カバー層40cと弾性層40bとを一体化してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、無端状のベルトに付着した残留トナーを除去するクリーニングブレードと、クリーニングブレードに対向配置される対向ローラーと、を有するベルトクリーニング装置を備えたベルト駆動装置及びそれを備えた画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 画像形成装置
1a~1d 感光体ドラム
2a~2d 帯電装置
3a~3d 現像装置
4a~4d トナーコンテナ
4cb カバー層
5 露光装置
6a~6d 一次転写ローラー
7a~7d クリーニング装置
8 中間転写ベルト(ベルト)
9 二次転写ローラー
10 従動ローラー
11 駆動ローラー
12a 給紙ローラー
12b レジストローラー対
13 定着部
13a 定着ローラー対
15 搬送ローラー対
16 用紙カセット
18 用紙搬送路
19 排出ローラー対
20 排出トレイ
21 分岐部材
22 面搬送路
25 中間転写ユニット
30 ベルトクリーニング装置
31 ハウジング
31a 開口部
31b 廃トナー収容部
32 クリーニングブレード
32a 先端部
32a 基端部
33 回収スクリュー
34 ブレード保持部材
35 シール部材
40 カバー層
40 対向ローラー
40a 芯金
40b 弾性層
40c カバー層
100 画像形成装置
400 高抵抗シート
500 金属部材
500 導電板
800 ベルト
A 矢印
P 用紙
Pa~Pd 画像形成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6