(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174526
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】土砂評価システム及び土砂評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3554 20140101AFI20241210BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20241210BHJP
G01N 33/24 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G01N21/3554
G01N21/27 A
G01N33/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092393
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】510241915
【氏名又は名称】エバ・ジャパン 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 啓三
(72)【発明者】
【氏名】青山 裕作
(72)【発明者】
【氏名】海野 大希
(72)【発明者】
【氏名】野呂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高良 洋平
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059BB09
2G059CC09
2G059DD12
2G059EE02
2G059EE12
2G059FF01
2G059FF08
2G059HH01
2G059HH06
2G059HH08
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM02
2G059MM09
2G059MM10
2G059MM12
2G059MM16
2G059PP06
(57)【要約】
【課題】ベルトコンベア上を搬送される土砂の水分情報を評価することが可能な土砂評価システム及び土砂評価方法を提供する。
【解決手段】土砂評価システムは、ベルトコンベア上を搬送される土砂を含む画像を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された画像に基づくスペクトル画像を取得するスペクトル取得手段と、前記スペクトル取得手段により取得されたスペクトル画像に基づき、前記土砂に含まれる水分に関する水分情報を評価する評価手段とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂を含む画像を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された画像に基づくスペクトル画像を取得するスペクトル取得手段と、
前記スペクトル取得手段により取得されたスペクトル画像に基づき、前記土砂に含まれる水分に関する水分情報を評価する評価手段とを備えること
を特徴とする土砂評価システム。
【請求項2】
前記評価手段は、前記スペクトル取得手段により取得されたスペクトル画像に基づき、所定の波長範囲に含まれる特定波長を正規化波長とし、所定の波長範囲に含まれる特定波長を評価波長として選択し、前記正規化波長と前記評価波長との間において、前記正規化波長と前記評価波長との分光強度の差に基づいて前記水分情報を評価すること
を特徴とする請求項1に記載の土砂評価システム。
【請求項3】
前記評価手段は、450nm~1700nmの波長帯に含まれる特定波長を第1正規化波長とし、900nm~1650nmの波長帯に含まれる特定波長を第1評価波長として選択すること
を特徴とする請求項2に記載の土砂評価システム。
【請求項4】
前記評価手段は、予め取得された参照用スペクトル画像と水分情報とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を前記参照用スペクトル画像とし、出力を前記水分情報として、機械学習により生成された評価モデルを用いて、前記スペクトル取得手段により取得されたスペクトル画像に基づき、前記水分情報を評価すること
を特徴とする請求項1に記載の土砂評価システム。
【請求項5】
前記スペクトル取得手段は、取得した前記スペクトル画像から、予め取得された土砂を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長を抽出し、抽出した前記波長を示す前記スペクトル画像を取得すること
を特徴とする請求項1に記載の土砂評価システム。
【請求項6】
前記スペクトル取得手段は、予め取得された参照用スペクトル画像と土砂を示すスペクトル画像とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を参照用スペクトル画像とし、出力を前記土砂を示すスペクトル画像として、機械学習により生成された抽出モデルを用いて、取得した前記スペクトル画像に基づいて、前記土砂を示すスペクトル画像を取得すること
を特徴とする請求項1に記載の土砂評価システム。
【請求項7】
前記取得手段は、白板を含む光源画像をさらに取得し、
前記スペクトル取得手段は、前記取得手段により取得された前記光源画像に対する前記画像の相対反射率に基づくスペクトル画像を取得すること
を特徴とする請求項1に記載の土砂評価システム。
【請求項8】
前記取得手段は、前記光源画像を撮像したときの撮像条件を示す撮像条件情報を取得し、取得した撮像条件情報に応じて、前記画像を補正すること
を特徴とする請求項7に記載の土砂評価システム。
【請求項9】
前記スペクトル取得手段は、取得した前記スペクトル画像から、予め取得された、前記土砂を運搬する運搬部を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長を示すスペクトルを除去すること
を特徴とする請求項1に記載の土砂評価システム。
【請求項10】
前記取得手段は前記土砂の量を示す土砂情報を取得し、
前記スペクトル取得手段は、前記取得手段により取得された画像と土砂情報とに基づき、前記スペクトル画像を取得すること
を特徴とする請求項1に記載の土砂評価システム。
【請求項11】
前記取得手段は、直線上の画素が撮像可能な撮像装置を用いて、前記画像を取得すること
を特徴とする請求項1に記載の土砂評価システム。
【請求項12】
土砂を含む画像を取得する取得ステップと
前記取得ステップにより取得された画像に基づく、スペクトル画像を取得するスペクトル取得ステップと、
前記スペクトル取得ステップにより取得されたスペクトル画像に基づき、前記土砂に含まれる水分に関する水分情報を評価する評価ステップとをコンピュータに実行させること
を特徴とする土砂評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベア上を搬送される土砂の土砂評価システム及び土砂評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トンネルの施工方法の一つであるシールド施工の自動化が求められている。このため、シールド施工の自動化のために、例えば特許文献1に記載されているような排土された土砂の土質を評価することが可能な技術が必要とされている。
【0003】
特許文献1では、土壌に振動を加えると共に、その振動の前後における土壌の画像を撮影し、振動前後の画像からそれぞれ粒子及び土塊の径の分布を測定し、振動前後における粒子及び土塊の径の分布の変化から土壌の土質を評価するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、トンネルのシールド施工において、土砂に含まれる含水比等の水分情報に対応した施工を行うことが求められている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている土砂の土質を評価するシステムでは、水分情報を評価することを想定していない。このため、特許文献1に開示されている土砂の土質を評価するシステムでは、水分情報を評価できないことが問題とされていた。
【0007】
また、従来では、この水分情報の計測は、炉乾燥による方法や電子レンジを用いた方法が一般的に行われている。
【0008】
しかしながら、これらの方法では、水分情報の計測に一日、又は30分程度の時間を要していた。このため、水分情報の計測は、一日に数回程度しか行うことができず、排土された土砂の水分情報をリアルタイムで連続的に計測することができなかった。また、水分情報の計測のために土砂を運搬するベルトコンベアを停止させる必要があった。
【0009】
また、非接触での水分情報の計測の方法として、RI(ラジオアイソトープ)やマイクロ波を用いた測定方法があるが、これらの方法では、土砂を運搬するベルトコンベア上を流れる土砂の高さによる影響を受けるため、高さが均一でない場合の計測ができないという問題点があった。
【0010】
そこで本発明は、上述した問題点を解決するために導出されたものであり、その目的とするところは、例えばシールドトンネルの施工において、ベルトコンベア上を搬送される、高さが均一でない土砂の水分情報を連続的に評価することが可能な土砂評価システム及び土砂評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る土砂評価システムは、土砂を含む画像を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された画像に基づくスペクトル画像を取得するスペクトル取得手段と、前記スペクトル取得手段により取得されたスペクトル画像に基づき、前記土砂に含まれる水分に関する水分情報を評価する評価手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る土砂評価システムは、第1発明において、前記評価手段は、前記スペクトル取得手段により取得されたスペクトル画像に基づき、所定の波長範囲に含まれる特定波長を正規化波長とし、所定の波長範囲に含まれる特定波長を評価波長として選択し、前記正規化波長と前記評価波長との間において、前記正規化波長と前記評価波長との分光強度の差に基づいて前記水分情報を評価することを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る土砂評価システムは、第2発明において、前記評価手段は、450nm~1700nmの波長帯に含まれる特定波長を第1正規化波長とし、900nm~1650nmの波長帯に含まれる特定波長を第1評価波長として選択することを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る土砂評価システムは、第1発明において、前記評価手段は、予め取得された参照用スペクトル画像と水分情報の評価とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を前記参照用スペクトル画像とし、出力を前記水分情報の評価として、機械学習により生成された評価モデルを用いて、前記スペクトル取得手段により取得されたスペクトル画像に基づき、前記水分情報を評価することを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る土砂評価システムは、第1発明において、前記スペクトル取得手段は、取得した前記スペクトル画像から、予め取得された土砂を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長を抽出し、抽出した前記波長を示す前記スペクトル画像を取得することを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る土砂評価システムは、第1発明において、前記スペクトル取得手段は、予め取得された参照用スペクトル画像と土砂を示すスペクトル画像とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を参照用スペクトル画像とし、出力を前記土砂を示すスペクトル画像として、機械学習により生成された抽出モデルを用いて、取得した前記スペクトル画像に基づいて、前記土砂を示すスペクトル画像を取得することを特徴とする。
【0017】
第7発明に係る土砂評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、白板含む光源画像をさらに取得し、前記スペクトル取得手段は、前記取得手段により取得された前記光源画像に対する前記画像の相対反射率に基づくスペクトル画像を取得することを特徴とする。
【0018】
第8発明に係る土砂評価システムは、第7発明において、前記取得手段は、前記光源画像を撮像したときの撮像条件を示す撮像条件情報を取得し、取得した撮像条件情報に応じて、前記画像を補正することを特徴とする。
【0019】
第9発明に係る土砂評価システムは、第1発明において、前記スペクトル取得手段は、取得した前記スペクトル画像から、予め取得された、前記土砂を運搬する運搬部を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長に基づいて、前記スペクトル画像を取得することを特徴とする。
【0020】
第10発明に係る土砂評価システムは、第1発明において、前記取得手段は前記土砂の量を示す土砂情報を取得し、前記スペクトル取得手段は、前記取得手段により取得された画像と土砂情報とに基づき、前記スペクトル画像を取得することを特徴とする。
【0021】
第11発明に係る土砂評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、直線状の画素が撮像可能な撮像装置を用いて、前記画像を取得することを特徴とする。
【0022】
第12発明に係る土砂評価方法は、ベルトコンベア上を搬送される土砂を含む画像を取得する取得ステップと前記取得ステップにより取得された画像に基づく、スペクトル画像を取得するスペクトル取得ステップと、前記スペクトル取得ステップにより取得されたスペクトル画像に基づき、前記土砂に含まれる水分に関する水分情報を評価する評価ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
第1発明~第12発明によれば、土砂評価システム及び土砂評価方法は、スペクトル画像に基づき、土砂の水分情報を評価する。これにより、例えばシールドトンネルの施工において、ベルトコンベア上を搬送される、高さが均一でない土砂の水分情報を連続的に評価することが可能となる。また、1点の水分情報ではなく、土砂の表面の水分情報を評価することが可能となるため、計測個所による値の差が小さくなるため、より高精度に評価することができる。
【0024】
特に、第2発明によれば、正規化波長と評価波長との分光強度の差に基づいて土砂の水分情報を評価する。これにより、撮像されたスペクトル画像の特徴を分離することができる。このため、より高精度に土砂の水分情報を評価することができる。
【0025】
特に、第3発明によれば、450nm~1700nmの波長帯に含まれる特定波長を第1正規化波長とし、900nm~1650nmの波長帯に含まれる特定波長を第1評価波長として選択する。これにより、第1正規化波長と第1評価波長とをそれぞれ適した波長帯の波長を利用できるため、より正確に評価することが可能となる。
【0026】
特に、第4発明によれば、評価モデルを用いて、スペクトル画像に基づき、土砂の水分情報を評価する。これにより、機械学習により高精度に土砂の水分情報を評価することが可能となる。
【0027】
特に、第5発明によれば、画像から、予め取得された土砂の波長を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長を抽出し、抽出した波長を示すスペクトル画像を取得する。これにより、スペクトル画像に含まれる土砂のみを抽出し、その他のノイズを排除することが可能となるため、より高精度に土砂の水分情報の評価が可能となる。
【0028】
特に、第6発明によれば、抽出モデルを用いて、スペクトル画像に基づいて、土砂を示すスペクトル画像を取得する。これにより、スペクトル画像に含まれる土砂のみを抽出し、その他のノイズを排除することが可能となるため、より高精度に土砂の水分情報の評価が可能となる。
【0029】
特に、第7発明によれば、光源画像に対する画像の相対反射率に基づくスペクトル画像を取得する。これにより、光源画像を基準としてスペクトル画像を取得するため、ノイズを排除した画像を用いることが可能となる。このため、土砂に光を照射する照明器具が故障及び劣化した場合においても、高精度に水分情報を評価することが可能となる。
【0030】
特に、第8発明によれば、撮像条件情報を取得し、取得した撮像条件情報に応じて、画像を補正する。これにより、撮影時の光量等の条件を補正することが可能となり、ノイズを排除した画像を用いることが可能となる。
【0031】
特に、第9発明によれば、運搬部を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長に基づいて、スペクトル画像を取得する。これにより、土砂を運搬するベルトコンベア等の運搬部を示すスペクトルをスペクトル画像から除去することにより、土砂を示すスペクトル画像を抽出することが可能となるため、より高精度に水分情報を評価することができる。
【0032】
特に、第10発明によれば、画像と土砂情報とに基づき、スペクトル画像を取得する。これにより、例えば土砂情報が示す土砂の高さが基準値以下の場合、該当箇所に土砂がないと判断し、該当箇所を除去することが可能となるため、より高精度に土砂を示すスペクトル画像を抽出することが可能となる。
【0033】
特に、第11発明によれば、取得手段は、直線上の画素が撮像可能な撮像装置を用いて、画像を取得することを特徴とする。これにより、例えば土砂を運搬する運搬部の運搬方向と垂直な方向の直線上をラインスキャン可能なカメラ又はセンサで撮像することにより、画像を容易に取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本実施形態における土砂評価システムの構成の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)は、本実施形態における土砂評価装置の構成の一例を示す模式図であり、
図2(b)は、本実施形態における土砂評価装置の機能の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における土砂評価システムの動作のフローチャートの一例を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、本実施形態における土砂の画像の一例を示す図である。
図4(b)は、本実施形態における土砂のスペクトル画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における経過時間に対する平均土砂高さを示すグラフの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態における抽出モデルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態における経過時間に対する計測含水比を示すグラフの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、波長毎のスペクトル強度の一例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、本実施形態におけるNDSIに対する含水比を示すグラフの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態における評価モデルの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本実施形態における実測含水比に対する計測含水比を示すグラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を適用した実施形態における土砂評価システムの一例について、図面を用いて説明する。
【0036】
図1は、土砂評価システム100の構成の一例を示す模式図である。土砂評価システム100は、例えば
図1に示すように、土砂評価装置1と、サーバ3と、撮像装置5と照明器具6とを有するユーザ端末2とが公共通信網4を介して接続される。また、土砂評価システム100は、公共通信網4を介することなく接続された、土砂評価装置1と撮像装置5とのみを備えていてもよい。
【0037】
サーバ3は、土砂評価装置1及びユーザ端末2から送信された画像等の各種データを記憶する記憶媒体である。また、サーバ3は、必要に応じて記憶した各種データを土砂評価装置1及びユーザ端末2に送信する。サーバ3は、例えば土砂評価装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよく、例えば土砂評価装置1の代わりに少なくとも一部の処理を行ってもよい。
【0038】
公共通信網4は、例えば土砂評価装置1が通信回路を介して接続されるインターネット網等である。公共通信網4は、いわゆる光ファイバー通信網で構成されてもよい。また、公共通信網4は、有線通信網のほか、無線通信網等の公知の通信技術で実現してもよい。ユーザ端末2は、例えば土砂評価システム100を用いたサービスのユーザ等が保有し、公共通信網4を介して土砂評価装置1と接続される。ユーザ端末2は、例えばデータベースを生成する電子機器を示してもよい。ユーザ端末2は、例えばパーソナルコンピュータや、タブレット端末等の電子機器が用いられる。ユーザ端末2は、例えば土砂評価装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよい。ユーザ端末2は、ユーザに土砂7の水分情報の評価結果を提示できる図示しないディスプレイ、又はスピーカを備えていてもよい。
【0039】
照明器具6は、撮像装置5によるユーザの土砂7を含む画像を撮像する際に、土砂7を照らす任意の照明器具である。照明器具6は、任意の波長の光を照射してもよい。照明器具6は、ハロゲンライト、又はファイバー光源であってもよい。また、照明器具6は、ハロゲンライト及びファイバー光源の二つの光源を用いてもよい。
【0040】
撮像装置5は、ユーザの土砂7を撮像して画像及びスペクトル画像を生成する公知のカメラである。撮像装置5として、例えばRGBカメラ、マルチスペクトルカメラ、ターゲットスペクトルカメラ、ハイパースペクトルカメラ等が用いられてもよい。また、撮像装置5は、特定波長の光の強度を示すモノクロが画像を撮像するカメラであってもよい。撮像装置5は、例えば特定波長の光の強度を測定する受光センサであってもよい。撮像装置5は、例えば動画を撮影するビデオカメラであってもよく、土砂評価装置1に内蔵されてもよい。撮像装置5がスペクトルビデオカメラの場合は、例えば撮像された動画の一部からスペクトル画像が抽出されてもよい。撮像装置5は、撮像した画像をユーザ端末2に出力する。また、撮像装置5は、ユーザ端末2を介することなく、公共通信網4を介して、土砂評価装置1に撮像した画像を出力してもよい。また、撮像装置5は、土砂を運搬する運搬部の運搬方向と垂直な方向の直線上をラインスキャン可能なカメラ又はセンサであってもよい。また、撮像装置5は、トンネル施工の進捗状況に応じて、運搬部8上を移動するための図示しない移動部を備えてもよい。これにより、掘削した直後の土砂7を撮像することが可能となる。
【0041】
土砂7は、例えばトンネルのシールド施工により排土された土、砂利、石等である。また、土砂7は、例えば運搬部8に堆積され、運搬される。
【0042】
運搬部8は、土砂を運搬する任意の設備である。運搬部8は、例えば運搬方向xに土砂7を運搬するベルトコンベア等である。
【0043】
土砂評価装置1は、ユーザ端末2から出力された画像及びスペクトル画像に基づいて、それぞれ処理を行う。土砂評価装置1は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の電子機器が用いられるほか、例えばスマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末、IoT(Internet of Things)デバイス等の電子機器、Raspberry Pi(登録商標)等のシングルボードコンピュータが用いられてもよく、例えば撮像装置5が内蔵されてもよい。
【0044】
土砂評価装置1は、例えば撮像装置5から出力された土砂7を含む画像を取得し、取得した画像に基づく、スペクトル画像を取得し、取得したスペクトル画像に基づき、土砂7の水分情報を評価する。
【0045】
次に、
図2を参照して、本実施形態における土砂評価装置1の一例を説明する。
図2(a)は、本実施形態における土砂評価装置1の構成の一例を示す模式図であり、
図2(b)は、本実施形態における土砂評価装置1の機能の一例を示す模式図である。
【0046】
土砂評価装置1は、例えば
図2(a)に示すように、筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~107とを備える。CPU101と、ROM102と、RAM103と、保存部104と、I/F105~107とは、内部バス110により接続される。
【0047】
CPU101は、土砂評価装置1全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、画像やスペクトル画像、抽出モデル及び評価モデル等の各種情報が保存される。保存部104は、例えばHDD(Hard Disk Drive)の他、SSD(Solid State Drive)やSDカード、miniSDカード等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば土砂評価装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。
【0048】
I/F105は、公共通信網4を介して各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。I/F106は、入力部108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部108として、例えばキーボードが用いられ、土砂評価装置1を利用するユーザ等は、入力部108を介して、各種情報又は土砂評価装置1の制御コマンド等を入力する。I/F107は、表示部109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。表示部109は、保存部104に保存された評価結果等の各種情報、または土砂評価装置1の処理状況等を出力する。表示部109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。
【0049】
保存部104は、例えば撮像装置5から取得した画像及びスペクトル画像が記憶されるほか、スペクトル画像等に関連する情報、水分情報の評価に用いられるアルゴリズム、抽出モデル及び評価モデル等が記憶される。
【0050】
表示部109は、各種情報を表示する。表示部109は、例えば評価結果、画像等を表示する。
【0051】
図2(b)は、土砂評価装置1の機能の一例を示す模式図である。土砂評価装置1は、取得部11と、画像処理部12と、評価部13と、記憶部14と、出力部15と、変換部16と、抽出部17と、制御部18とを備える。なお、
図2(b)に示した取得部11と、画像処理部12と、評価部13と、記憶部14と、出力部15と、変換部16と、抽出部17と、制御部18は、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に保存されたプログラムを実行することにより実現され、例えば人工知能により制御されてもよい。
【0052】
取得部11は、画像及びスペクトル画像を取得する。取得部11は、撮像装置5が撮像した画像を、ユーザ端末2を介して取得する他、例えば土砂評価装置1に内蔵された撮像装置5から、画像及びスペクトル画像を取得するようにしてもよい。また、サーバ3等から公共通信網4を介して画像及びスペクトル画像を取得してもよい。なお、取得部11が各種情報を取得する頻度、及び周期は、任意である。また、取得部11は、土砂7の体積を示す土砂情報を取得してもよい。
【0053】
画像処理部12は、取得部11により取得された画像に補正等の処理を行う。
【0054】
変換部16は、画像処理部12により処理された画像に基づいて、スペクトル画像を取得する。かかる場合、例えば変換部16は、画像を、画像に含まれるスペクトルを示すスペクトル画像に変換する。
【0055】
抽出部17は、変換部16により取得されたスペクトル画像から、土砂7を示すスペクトル画像を抽出する。
【0056】
評価部13は、抽出部17により抽出されたスペクトル画像に基づき、水分情報を評価する。
【0057】
制御部18は、評価部13により評価された水分情報に基づき、各種設備を制御する。
【0058】
記憶部14は、保存部104に保存された各種情報を必要に応じて取り出す。記憶部14は、取得部11と、画像処理部12と、評価部13と、変換部16と、抽出部17と、制御部18とにより取得又は出力された各種情報を、保存部104に保存する。
【0059】
出力部15は、各種情報を出力する。出力部15は、I/F107を介して表示部109に評価結果を送信する。
【0060】
次に、本実施形態における土砂評価システム100の動作の一例について説明する。
図3は、本実施形態における土砂評価システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0061】
まず、ステップS110において、取得部11は、土砂7を含む画像を取得する。かかる場合、例えば撮像装置5により撮像された画像を公共通信網4を介して取得してもよい。また、撮像装置5により、画像を撮像するとき、照明器具6を用いて土砂7に光を照射してもよいがこの限りではなく、照明器具6を用いることなく画像を撮像してもよい。また、例えばサーバ3に記憶されている土砂7を含む画像を、公共通信網4を介して取得してもよい。取得部11は、撮像装置5により撮像された画像を、I/F105を介して取得してもよい。取得部11は、例えば記憶部14を介して、画像を保存部104に保存する。土砂7を含む画像は、例えば
図4(a)に示すような、土砂7を含む画像である。また、ステップS110において、撮像装置5は、運搬部8によって運搬されている土砂7を撮像してもよい。また、ステップS110において、撮像装置5は、運搬部8によって運搬されている土砂7の動画を撮像してもよい。ここで土砂7の動画は時間的に連続した土砂7の複数の画像であってもよい。
【0062】
また、ステップS110において、取得部11は、土砂情報を取得してもよい。土砂情報は、土砂の体積を示す情報である。土砂情報は、例えば土砂の高さや横幅を示す情報であってもよい。土砂情報は、例えば
図5に示すような、経過時間に対する平均土砂高さを示すグラフであってもよい。ステップS110において、取得部11は、例えばレーザ距離センサ等の任意のセンサを用いて、土砂情報を取得してもよい。
【0063】
また、ステップS110において、取得部11は、白板を含む光源画像を取得してもよい。光源画像は、白板を含む画像であり、例えば土砂7に照射されている光と同等な光が照射された白板を含む画像であってもよい。白板は、一定の反射率を要する基準板である。白板は、例えば運搬部8に設けられてもよい。また、取得部11は、任意の周期で光源画像を取得してもよい。また、取得部11は、土砂と白板とを含む画像を取得してもよい。
【0064】
次に、ステップS120において、画像処理部12は、ステップS110において、取得部11により取得された画像に補正等の処理を行う。画像処理部12は、例えば画像を平滑化する。かかる場合、まず画像処理部12は、例えばミディアンフィルタ、ガウシアンフィルタ、移動平均、Savitzky-Golay法等を用いて、画像を平滑化する。また、画像処理部12は、例えば画像を平滑化し、平滑化された画像と平滑化される前の画像に基づいて、ラプラシアンフィルタ(2階微分)、アンシャープ方式等を用いて、画像を先鋭化してもよい。かかる場合、画像処理部12は、例えば平滑化された画像と平滑化される前の画像との差分を算出し、差分を大きくするように画像を先鋭化する。平滑化は、画像をぼかすことであり、例えば画像の画素値の変化を小さくする処理である。先鋭化は、例えば画像の画素値の変化を大きくする処理である。
【0065】
次に、ステップS130において、変換部16は、画像処理部12より処理された画像に基づく、スペクトル画像を取得する。ステップS130において、変換部16は、例えば
図4(b)に示すようなスペクトル画像を取得する。変換部16は、例えば土砂7に照射される光が照射される白板を含む光源画像に対する画像の相対反射率に基づくスペクトル画像を取得する。これにより照明光源の変動によらず、水分情報およびその他構成物の相対反射率を算出し、比較することができる。
【0066】
また、変換部16は、ステップS110において、取得部11が取得した画像に白板が含まれている場合、白板との相対反射率に基づくスペクトル画像を取得してもよい。かかる場合、変換部16は、ステップS110において、取得部11が取得した画像に予め設定された白板の波長を示すスペクトルが含まれている場合、白板との相対反射率に基づく補正を行ってもよい。
【0067】
また、ステップS130において、変換部16は、ステップS110において取得部11が取得したそれぞれの画像をそれぞれスペクトル画像に変換してもよい。例えば、ステップS110により取得した
図4(a)に示す土砂7を含む画像を
図4(b)に示すようなスペクトル画像に変換してもよい。
【0068】
また、ステップS130において、変換部16は、スペクトル画像が示す分光強度を補正してもよい。かかる場合、変換部16は、例えば(1)式で示す式を用いて、分光強度I(λ)を暗電流ノイズ補正してもよい。暗電流ノイズは、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサといった固体撮像素子において、予測不能な熱雑音により発生した、暗電流に起因するノイズである。また、λは波長、I(λ)は分光強度、Ic(λ)は暗電流補正後の分光強度、D(λ)は暗電流ノイズ、E(λ)は光源強度(分光分布)、S(λ)は、センサ感度(分光感度)、R(λ)は反射率(分光反射強度)をそれぞれ示す。
【数1】
【0069】
また、ステップS130において、変換部16は、光源画像を撮像するときの条件である撮像条件と、土砂7を撮像するときの撮像条件とに基づいて、画像を補正してもよい。撮像条件は、例えば撮像するときのゲイン、露光時間、明るさ等である。例えば、変換部16は、光源画像を撮像するときの照明器具6の光強度と、ステップS110において取得した画像を撮像するときの照明器具6の光強度の差に基づいて、画像のゲイン及び露光時間を補正する。変換部16は、例えば(2)式を用いて、基準板補正を行ってもよい。また、Istd(λ)は標準基準板データ、Icstd(λ)は暗電流補正後標準基準板データ、基準板の相対反射率を示す。
【数2】
【0070】
次に、ステップS140において、抽出部17は、ステップS130において取得したスペクトル画像から土砂7を抽出する。例えば抽出部17は、スペクトル画像から、予め取得された土砂7の波長を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長を抽出し、抽出した波長を示すスペクトル画像を取得する。例えば抽出部17は、SAM(Spectral Angle Mapper)法等を用いて、予め取得された土砂7の波長を示す基準波長と近似するスペクトルを抽出する。基準波長は、例えば450nm~1650nmの波長範囲内から選択した任意の波長である。また、基準波長は、例えば白板等の基準となる対象の波長、又はスペクトルに対して相対的に設定された波長、又はスペクトルであってもよい。これにより、画像に含まれる土砂7のみを抽出し、ノイズを排除することが可能となる。また、抽出部17は、ステップS130において取得したスペクトル画像から、後述するNDSI(normalized difference spectral index、正規化分光反射指数)の数値に基づいて、スペクトル画像からノイズを除去してもよい。かかる場合、例えば波長λ1が1250nmの場合の相対反射率をI1250、波長λ2が1450nmの場合の相対反射率をI1450とした場合のNDSI×100の値が5から60から外れる箇所をノイズとして除去してもよい。また、抽出部17は、ステップS130において取得したスペクトル画像の1直線状のピクセルに含まれる土砂7を示すピクセルの割合に基づいて、土砂7を示すスペクトルを抽出してもよい。かかる場合、抽出部17は、1直線状のピクセルに含まれる土砂7を示すピクセルの割合が50%以下の場合、当該直線状に土砂7がない、又は含水比が0%であるとみなしてもよい。ノイズは、例えば評価対象となる土砂7以外のもの、又は影部分、ハレーション等を含む。また、ノイズは、運搬部8及びその他の背景を含む。
【0071】
また、ステップS140において、抽出部17は、ステップS130において取得したスペクトル画像とステップS110により取得した土砂情報とに基づいて、土砂7を抽出してもよい。かかる場合、抽出部17は、例えば土砂情報が示す土砂7の高さが基準値以下の場合、該当箇所に土砂7がないと判断し、スペクトル画像上の該当箇所を除去してもよい。
【0072】
また、ステップS140において、抽出部17は、ステップS130において取得したスペクトル画像から、予め取得された運搬部8を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長に基づいて、新たにスペクトル画像を取得してもよい。ステップS140において、抽出部17は、例えばステップS130において取得したスペクトル画像から運搬部8を示すスペクトルを除外したスペクトル画像を新たに取得してもよい。かかる場合、例えば運搬部8を示す基準波長と近似するスペクトルを除外してもよい。また、抽出部17は、ステップS130において取得したスペクトル画像から、後述するNDSI又はBDSI(bilateral differential spectral index)の数値に基づいて、スペクトル画像から運搬部8を除去してもよい。かかる場合、例えば波長λ1が1050nmの場合の相対反射率をI1050、波長λ2が1350nmの場合の相対反射率をI1350とした場合のNDSI×100の値が0より小さくなる箇所を運搬部8として除去してもよい。また、抽出部17は、例えば波長λ1が1050nmの場合の相対反射率をI1050、波長λ2が1350nmの場合の相対反射率をI1350、波長λ3の場合の相対反射率をI1600とした場合のBDSI×100の値が-7以上の箇所を運搬部8として除去してもよい。
【0073】
また、ステップS140において、抽出部17は、予め取得された参照用スペクトル画像と土砂7のスペクトルを示す土砂スペクトル画像とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を参照用スペクトル画像とし、出力を土砂7示すスペクトル画像として、機械学習により生成された抽出モデルを用いて、ステップS130により取得されたスペクトル画像に基づいて、土砂スペクトル画像を抽出してもよい。
【0074】
抽出モデルの生成方法として、例えばニューラルネットワークをモデルとした機械学習を用いて、抽出モデルを生成してもよい。抽出モデルは、例えばCNN(Convolution Neural Network) 等のニューラルネットワークをモデルとした機械学習を用いて生成されるほか、任意のモデルが用いられてもよい。また、抽出モデルの生成方法として、例えば線形判別、サポートベクターマシン、k-近傍法、ランダムフォレスト、ディープラーニング等を用いて、抽出モデルを生成してもよい。
【0075】
かかる場合、抽出モデルには、例えば
図6のように、入力データである参照用スペクトル画像と出力データである土砂7のスペクトルを示す土砂スペクトル画像との間における連関度を有する連関性が記憶される。連関度は、入力データと出力データとの繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど各データの繋がりが強いと判断することができる。連関度は、例えば百分率等の3値以上又は3段階以上で示されるほか、2値又は2段階で示されてもよい。また、参照用スペクトル画像は、予め取得した学習データに用いるための土砂7を含むスペクトル画像である。また、土砂スペクトル画像は、ステップS140と同様の方法で取得したスペクトル画像であってもよい。土砂スペクトル画像は、例えば土砂7を含むスペクトル画像から、SAM法等を用いて、予め取得された土砂7の波長を示す基準波長と近似する土砂7のスペクトルを抽出したスペクトル画像であってもよい。
【0076】
例えば連関性は、複数の入力データ、対、複数の出力データの間における繋がりの度合いにより構築される。連関性は、機械学習の過程で適宜更新され、例えば複数の入力データ、及び複数の出力データに基づいて最適化された関数を用いた分類器を示す。なお、連関性は、例えば各データの間における繋がりの度合いを示す複数の連関度を有してもよい。連関度は、例えばデータベースがニューラルネットワークで構築される場合、重み変数に対応させることができる。連関性は、例えば
図6に示すように、複数の入力データと、複数の出力データとの間における繋がりの度合いを示してもよい。この場合、連関性を用いることで、
図6の「参照用スペクトル画像A」~「参照用スペクトル画像C」のそれぞれの入力データに対し、「土砂スペクトル画像A」~「土砂スペクトル画像C」の複数の出力データとの関係の度合いを紐づけて記憶させることができる。このため、例えば連関性を介して、1つの出力データに対して、複数の入力データを紐づけることができる。これにより、入力データに対して多角的な出力データの選択を実現することができる。
【0077】
連関性は、例えば各入力データと、各出力データとをそれぞれ紐づける複数の連関度を有する。連関度は、例えば百分率、10段階、又は5段階等の3段階以上で示され、例えば線の特徴(例えば太さ等)で示される。例えば、入力データに含まれる「参照用スペクトル画像A」は、出力データに含まれる「土砂スペクトル画像A」との間の連関度AA「73%」を示し、出力データに含まれる「土砂スペクトル画像B」との間の連関度AB「12%」を示す。すなわち、「連関度」は、各データ間における繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど、各データの繋がりが強いことを示す。
【0078】
このような
図6に示す3段階以上の連関度を予め取得しておく。つまり実際の解の判別を行う上で、入力データと、出力データとの何れが採用、評価されたか、過去のデータセットを蓄積しておき、これらを分析、解析することで
図6に示す連関度を作り上げておく。
【0079】
例えば、過去において「参照用スペクトル画像B」という入力データに対して、「土砂スペクトル画像B」が最も適合性が高いと判断され、評価されたものとする。このようなデータセットを集めて分析することにより、入力データと出力データとの連関度が強くなる。
【0080】
この分析、解析は人工知能により行うようにしてもよい。かかる場合には、例えば「参照用スペクトル画像B」という入力データに対して、「土砂スペクトル画像B」が推定される事例が多い場合には、この「参照用スペクトル画像B」と「土砂スペクトル画像B」とにつながる連関度をより高く設定する。
【0081】
また、この連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されるものであってもよい。即ち、このニューラルネットワークのノードが出力に対する重み付け係数が、上述した連関度に対応することとなる。またニューラルネットワークに限らず、人工知能を構成するあらゆる意思決定因子で構成されるものであってもよい。
【0082】
また、抽出モデルは、入力データと出力データとの間に少なくとも1以上の隠れ層が設けられ、機械学習させるようにしてもよい。入力データ又は隠れ層データの何れか一方又は両方において上述した連関度が設定され、これが各データの重み付けとなり、これに基づいて出力の選択が行われる。そして、この連関度がある閾値を超えた場合に、その出力を選択するようにしてもよい。
【0083】
このような連関度が、人工知能でいうところの学習済みデータとなる。このような学習済みデータを作った後に、実際にこれから新たにスペクトル画像から土砂スペクトル画像の推定を行うこととなる。かかる場合には、ステップS130により取得されたスペクトル画像に対する土砂スペクトル画像を新たに取得する。推定の際には、例えば予め取得した
図6に示す連関度を参照する。例えば、新たに取得したスペクトル画像が「参照用スペクトル画像A」と同一かこれに類似するものである場合には、連関度を介して「土砂スペクトル画像A」との間の連関度AA「73%」、「土砂スペクトル画像B」との間の連関度AB「12%」で関連付けられている。この場合には、連関度の最も高い「土砂スペクトル画像A」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「土砂スペクトル画像B」を最適解として選択するようにしてもよい。また、これ以外に矢印が繋がっていない出力解を選択してもよいことは勿論であり、連関度に基づくものであれば、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0084】
このような連関度を参照することにより、スペクトル画像が、入力データと同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、入力データに適した出力データを定量的に選択することができる。
【0085】
また、ステップS140において、抽出部17は、ステップS130において取得したスペクトル画像から予め設定された座標の範囲71を抽出することで土砂7を示す土砂スペクトルを抽出してもよい。範囲71は、例えば
図4(b)に示すような、横幅a、縦幅bとなる範囲であってもよい。横幅a、縦幅bは、任意の値であってよい。範囲71は、例えば運搬部8の幅に基づいて決定されてもよい。
【0086】
次に、ステップS150において、評価部13は、ステップS140により抽出された土砂スペクトル画像に基づいて、土砂7の水分情報を評価する。水分情報は、土砂7に含まれる水分に関する情報であり、例えば土砂7の含水比を示す情報である。また、水分情報は、土砂7に含まれる水分の質量又は体積等の割合を示す情報であってもよい。また、水分情報は、例えば
図7に示すような、経過時間に対する含水比を示すグラフであってもよい。また、含水比は、土砂7の一定質量当たりに含まれる水分の質量の割合である。
【0087】
ステップS150において、例えば評価部13は、土砂スペクトル画像に基づき、所定の波長範囲に含まれる特定波長を正規化波長とし、所定の波長範囲に含まれる特定波長を評価波長として選択し、正規化波長と評価波長との間において、正規化波長と評価波長との分光強度の差に基づいて土砂7の水分情報を評価する。正規化波長は、例えば光のムラや影等、条件が異なっていた場合においても、それらの影響を軽減して、水分情報を評価するために正規化される対象となる波長である。評価波長は、正規化波長を正規化するための評価用の波長である。
【0088】
図8は、スペクトル画像が示す複数のスペクトルグラフである。
図8は、縦軸を光の強度、横軸を波長[nm]とするグラフである。複数のスペクトルグラフの実線、破線は、それぞれ異なる状態における土砂7の画像のスペクトルに対応する。評価部13は、例えば450nm~1700nmの波長帯に含まれる特定波長を第1正規化波長とし、900~1650nmの波長帯に含まれる特定波長を第1評価波長として選択する。評価部13は、例えば1250nmを第1正規化波長とし、1450nmを第1評価波長としてもよい。
【0089】
評価部13は、このようなスペクトルグラフに含まれる波長を特定波長とし、正規化波長、及び評価波長として選択する。評価部13は、各スペクトルグラフ間のスペクトル強度の差分値が最も大きくなる波長を特定波長としてもよい。また、評価部13は、各スペクトルグラフ上で凸のピークが形成されている特異点を特定波長として特定するようにしてもよい。また、評価部13は、回帰分析、総当たり解析、機械学習等を用いた学習済みモデルを用いた解析により、特定波長を選択してもよい。
【0090】
ここで、例えば正規化波長及び評価波長は、1点で特定してもよいし、複数を特定してもよい。また、これらの正規化波長及び評価波長を中心とした波長範囲を設定するようにしてもよい。波長範囲は、例えば正規化波長及び評価波長の差が±10nmとなる波長幅等のように、予め設定した所定の波長範囲で構成されてもよい。このため、仮に正規化波長が780nmであり、波長範囲が±10nmであれば、実際にスペクトルデータを評価する範囲は、770~790nmとなる。かかる場合、正規化波長及び評価波長の決め方としては、例えば各波長の範囲の中心の波長を特定波長としてもよい。
【0091】
次に、評価部13は、選択された正規化波長と評価波長との間において、正規化波長と評価波長との分光強度の差により水分情報を評価してもよい。
【0092】
評価部13は、例えば正規化波長と評価波長との分光強度の差によるスペクトル変化により水分情報を算出する。かかる場合、正規化波長と評価波長との分光強度の和で正規化することにより、例えば光のムラや影等、条件が異なっていた場合においても、それらの影響を軽減して、水分量を比較可能にすることができる。これらの水分情報の算出は、例えば公知のスペクトル計測手法、スペクトル解析技法(例えばNDSI)等により(3)式により求める。「Iλ」は、例えば「λ
nm」の分光強度となり、正規化波長は「λ2」、評価波長は「λ1」として求められる。
【数3】
【0093】
また、評価部13は、BDSIを用いて、(4)式により、反射指数を求めてもよい。かかる場合、λ1、λ2、λ3は、例えばそれぞれ1250nm、1450nm、1600nmを用いてもよい。
【数4】
【0094】
評価部13は、NDSI又はBDSIに基づいて、水分情報を評価する。かかる場合、例えば
図9に示すようなNDSIに対する含水比を示すグラフを参照し、NDSIに基づいて、水分情報を評価してもよい。
図9に示すようなNDSIに対する含水比を示すグラフは、例えば予め測定された実際の測定値とNDSIとの相関により、予め作成されてもよい。
【0095】
評価部13は、例えばスペクトル画像の正規化分光反射指数に基づいて、部位ごとのピクセルの分布から水分情報を付与してもよい。かかる場合、評価部13は、ステップS110により取得した土砂情報と、ステップS140により抽出したスペクトル画像とに基づいて、水分情報を評価してもよい。例えば評価部13は、範囲71毎の水分量を示す水分情報を評価してもよい。また、評価部13は、ステップS110により取得した土砂7の高さを示す土砂情報と範囲71の面積とから、範囲71に含まれる土砂の量を算出し、算出した土砂の量と水分量とから、含水比を示す百分率等の水分情報を評価してもよい。
【0096】
評価部13は、例えば保存部104に保存された出力用フォーマット等の形式データを用いて、評価結果を生成する。評価部13は、例えば記憶部14を介して、評価結果を保存部104に保存する。
【0097】
また、ステップS150において、評価部13は、予め取得された参照用スペクトル画像と水分情報とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を参照用スペクトル画像とし、出力を水分情報として、機械学習により生成された評価モデルを用いて、スペクトル画像に基づき、土砂7に含まれる水分情報を評価してもよい。参照用スペクトル画像は、評価モデルの学習データとして用いるスペクトル画像であり、例えば予め取得された土砂7を示すスペクトル画像であるが、これに限らず、土砂7を示すスペクトルを含む任意の画像を用いてもよい。また、水分情報は、ステップS150と同様の方法で取得した水分情報であってもよい。つまり水分情報は、スペクトル画像に基づき、所定の波長範囲に含まれる特定波長を正規化波長とし、所定の波長範囲に含まれる特定波長を評価波長として選択し、正規化波長と評価波長との間において、正規化波長と評価波長との分光強度の差により取得された水分情報であってもよい。
【0098】
評価モデルの生成方法として、例えばニューラルネットワークをモデルとした機械学習を用いて、評価モデルを生成してもよい。評価モデルは、例えばCNN(Convolution Neural Network) 等のニューラルネットワークをモデルとした機械学習を用いて生成されるほか、任意のモデルが用いられてもよい。
【0099】
かかる場合、評価モデルには、例えば
図10のように、入力データである参照用スペクトル画像と出力データである水分情報の評価との間における連関度を有する連関性が記憶される。
【0100】
また、評価モデルは、入力データと出力データとの間に少なくとも1以上の隠れ層が設けられ、機械学習させるようにしてもよい。入力データ又は隠れ層データの何れか一方又は両方において上述した連関度が設定され、これが各データの重み付けとなり、これに基づいて出力の選択が行われる。そして、この連関度がある閾値を超えた場合に、その出力を選択するようにしてもよい。
【0101】
このような学習済みデータを作った後に、実際にこれから新たにスペクトル画像から水分情報の評価の推定を行うこととなる。かかる場合には、ステップS140において抽出したスペクトル画像に対する水分情報の評価を新たに取得する。
【0102】
このような連関度を参照することにより、スペクトル画像が、入力データと同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、入力データに適した出力データを定量的に選択することができる。
【0103】
次に、ステップS160において、制御部18は、ステップS150により評価された水分情報に基づき、各種設備を制御する。
【0104】
次に、出力部15により評価結果及び制御結果が出力される。出力部15は、評価結果及び制御結果を表示部109等に出力する。また、出力部15は、公共通信網4を介して、評価結果及び制御結果をユーザ端末2に出力してもよい。
【0105】
これにより、本実施形態における土砂評価装置1の動作が終了する。これにより、例えばシールドトンネルの施工において、ベルトコンベア等の運搬部8上を搬送される、高さが均一でない土砂7の水分情報を連続的に評価することが可能となる。また、自動的に水分情報を評価することが可能となるため、人件費を抑えることが可能となる。また、ベルトコンベア等の運搬部8を停止させることなく、水分情報を評価することが可能となるため、作業効率が向上する。また、土砂7の高さに影響することなく、水分情報を評価することが可能となるため、土砂の高さを一定に揃えるための整形板等が必要なくなるため、整形板のメンテンナンス等のコストを抑えることが可能となる。また、土砂評価システムは、トンネルのシールド施工において排土された土砂7に限らず、任意の土砂7の水分情報を評価してもよい。
【0106】
次に、本発明に係る土砂評価システム100を用いた実験結果について、
図11を用いて説明する。
図11は、本実施形態における実測含水比に対する計測含水比を示すグラフである。
図11に示すように、実測含水比と計測含水比との差がほとんど確認できない。このため、本発明に係る土砂評価システム100により、排土された土砂7の水分情報を高精度に評価できていることが示されている。
【0107】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1 :土砂評価装置
2 :ユーザ端末
3 :サーバ
4 :公共通信網
5 :撮像装置
6 :照明器具
7 :土砂
8 :運搬部
10 :筐体
11 :取得部
12 :画像処理部
13 :評価部
14 :記憶部
15 :出力部
16 :変換部
17 :抽出部
18 :制御部
71 :範囲
100 :土砂評価システム
101 :CPU
102 :ROM
103 :RAM
104 :保存部
105 :I/F
106 :I/F
107 :I/F
108 :入力部
109 :表示部
110 :内部バス