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  • 特開-固体撮像素子用パターン膜付き基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174546
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】固体撮像素子用パターン膜付き基板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20241210BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20241210BHJP
   C08G 59/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G03F7/027
C08F20/18
C08G59/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092418
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 悠太
【テーマコード(参考)】
2H225
4J036
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AC31
2H225AC38
2H225AC60
2H225AD12
2H225AE06P
2H225AF23P
2H225AF78P
2H225AN11P
2H225AN39P
2H225AN82P
2H225CA11
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC12
2H225CC13
4J036AK17
4J036EA04
4J036JA09
4J036KA01
4J100AL04P
4J100AL05P
4J100AL08P
4J100AL62P
4J100AL63P
4J100AL66P
4J100AL67P
4J100BA02P
4J100BA04P
4J100BA05P
4J100BA06P
4J100BA08P
4J100BC43P
4J100BC53P
4J100BC73P
4J100DA61
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】固体撮像素子用の基板積層体の歩留向上のために、基板を剥離(リワーク)が可能な固体撮像素子用パターン膜付き基板を提供することを目的とする。
【解決手段】第1基板上にパターン化した塗膜を有するパターン膜付き基板であって、
前記パターン膜付き基板は、パターン化した塗膜を介して第2基板と積層して固体撮像素子用の基板積層体を得るためのものであり、
パターン膜付き基板とパターン化した塗膜を介して第2基板と積層後に50℃以上150℃未満の温度に加熱することでパターン化した塗膜と第2基板の間で剥離可能であり、
パターン膜付き基板と第2基板との積層体を150℃以上に加熱することでパターン化した塗膜を本硬化させて接着性を向上可能である固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板上にパターン化した塗膜を有するパターン膜付き基板であって、
前記パターン膜付き基板は、パターン化した塗膜を介して第2基板と積層して固体撮像素子用の基板積層体を得るためのものであり、
パターン膜付き基板とパターン化した塗膜を介して第2基板と積層後に50℃以上150℃未満の温度に加熱することでパターン化した塗膜と第2基板の間で剥離可能であり、
パターン膜付き基板と第2基板との積層体を150℃以上に加熱することでパターン化した塗膜を本硬化させて接着性を向上可能である固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【請求項2】
前記パターン化した塗膜が感光性組成物から成り、前記感光性組成物が、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物と、光重合開始剤とを含み、前記光重合開始剤は、光ラジカル開始剤であり、
前記ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有し、
前記ラジカル重合性化合物の量が、前記カチオン重合性100質量部に対して、5質量部以上である、請求項1に記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【請求項3】
前記ラジカル重合性化合物の量が、前記カチオン重合性化合物100質量部に対して、200質量部以下である、請求項2に記載の固体撮像素子用の基板積層体の製造方法。
【請求項4】
前記カチオン重合性化合物は、ポリシロキサン構造を有する、請求項2に記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【請求項5】
前記カチオン重合性化合物は、カチオン重合性基として、脂環式エポキシ基、グリシジル基及びオキセタニル基の少なくとも1種以上を含む、請求項2に記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【請求項6】
前記ラジカル重合性化合物は、1分子中にイソシアヌル環と前記(メタ)アクリロイル基とを有する、請求項2に記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【請求項7】
前記カチオン重合性化合物は、アルカリ可溶性基として、下記化学式(X1)で表される1価の有機基、下記化学式(X2)で表される2価の有機基、及びフェノール性水酸基からなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【化1】
【請求項8】
前記第1基板は、ガラス基板であり、前記第2基板は、半導体素子基板であることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子用パターン膜付き基板に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSセンサやCCDセンサ等のイメージセンサは、デジタルカメラやスマートフォン等に使用されており、近年では、自動車や工場の監視カメラの普及に伴い使用量が増大するとともに、小型化・高精細化がますます要求されてきている。
【0003】
イメージセンサを構成する基板積層体は、例えば、受光素子を有する半導体素子基板とガラス基板とが接着剤で貼り合わされた中空構造を有する。中空構造を有する基板積層体は、例えば、半導体素子基板上の周縁にエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の液状接着剤を塗布し、封止基板となるガラスを設置した後に加熱して液状接着剤を硬化させて得られる。また、パターン精度の向上を目的として液状接着剤の代わりに感光性組成物を用いる方法も検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、第1基板(例えばガラス基板)上に感光性組成物を塗布することにより塗膜を形成する工程と、得られた塗膜をパターン化する工程と、パターン化された塗膜(以下、「パターン膜」と記載することがある)を介して第1基板と第2基板(例えば半導体素子基板)とを積層することにより積層物を形成する工程と、得られた積層物を加熱して第1基板と第2基板とを接着する工程とを備える基板積層体の製造方法が記載されている。また、特許文献1には、感光性組成物がカチオン重合性化合物と光酸発生剤(光カチオン重合開始剤)とを含むこと、及び上記塗膜をパターン化する工程において、フォトマスクを通して塗膜に光を照射することで、塗膜の露光部を半硬化状態とした後、現像し、加熱硬化することにより、パターン膜を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-62048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イメージセンサ等に使用される基板積層体を生産する際、基板同士の積層不良などエラーが発生する場合がある。前記の観点からイメージセンサ等を検査によって「合格」と「不合格」を判定し、「不合格」品は通常廃棄されるが、半導体素子の高性能化などによって部材コストが高くなっており、歩留がコストに与える影響は大きい。そのため、検査で「不合格」となった場合、基板を剥離(リワーク)した後、半導体基板を洗浄することで再利用し、歩留を向上するニーズは大きい。
【0007】
特許文献1に記載の技術は、積層工程時の加熱によって反応が進行し、接着性が高くなるため、リワークが困難であった。
【0008】
上記に鑑みて、本発明は、固体撮像素子用の基板積層体の歩留向上のために、基板を剥離(リワーク)が可能な固体撮像素子用パターン膜付き基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、下記工程により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0010】
1).第1基板上にパターン化した塗膜を有するパターン膜付き基板であって、
前記パターン膜付き基板は、パターン化した塗膜を介して第2基板と積層して固体撮像素子用の基板積層体を得るためのものであり、
パターン膜付き基板とパターン化した塗膜を介して第2基板と積層後に50℃以上150℃未満の温度に加熱することでパターン化した塗膜と第2基板の間で剥離可能であり、
パターン膜付き基板と第2基板との積層体を150℃以上に加熱することでパターン化した塗膜を本硬化させて接着性を向上可能である固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【0011】
2).前記感光性組成物が、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物と、光重合開始剤とを含み、前記光重合開始剤は、光ラジカル開始剤であり、
前記ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有し、
前記ラジカル重合性化合物の量が、前記カチオン重合性100質量部に対して、5質量部以上である、1)に記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【0012】
3).前記ラジカル重合性化合物の量が、前記カチオン重合性化合物100質量部に対して、200質量部以下である、2)に記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【0013】
4).前記カチオン重合性化合物は、ポリシロキサン構造を有する、2)または3)に記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【0014】
5).前記カチオン重合性化合物は、カチオン重合性基として、脂環式エポキシ基、グリシジル基及びオキセタニル基の少なくとも1種以上を含む、2)~4)のいずれかに記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【0015】
6).前記ラジカル重合性化合物は、1分子中にイソシアヌル環と前記(メタ)アクリロイル基とを有する、2)~5)のいずれかに記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【0016】
7).前記カチオン重合性化合物は、アルカリ可溶性基として、下記化学式(X1)で表される1価の有機基、下記化学式(X2)で表される2価の有機基、及びフェノール性水酸基からなる群から選択される1種以上である、2)~6)のいずれかに記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【0017】
【化1】

8).前記第1基板は、ガラス基板であり、前記第2基板は、半導体素子基板であることを特徴とする1)~8)のいずれかに記載の固体撮像素子用パターン膜付き基板。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板を剥離(リワーク)が可能なパターン膜付き基板を提供することで、固体撮像素子用の基板積層体の歩留向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る(A)~(D)工程を示す工程別断面図である。
図2】本発明に係る(E)工程を示す工程別断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【0021】
まず、本明細書中で使用される用語について説明する。「光ラジカル重合開始剤」とは、光照射により活性種としてラジカルのみを生じる化合物をさす。なお、「活性種」には、ラジカル、カチオン、及びアニオンが含まれる。「カチオン重合性基」とは、カチオンの存在下で連鎖的に重合する官能基をさす。「アルカリ可溶性基」とは、アルカリと相互作用、又はアルカリと反応することにより、アルカリ性溶液に対する溶解性を増加させる官能基をさす。「ポリシロキサン構造」とは、シロキサン単位(Si-O-Si)が連結した構造をさす。「半硬化状態」とは、その後の工程(例えば、加熱工程)によって硬化度を更に高めることが可能な状態をいう。半硬化状態のパターン膜を形成することを「Bステージ化」と記載することがある。また、半硬化状態のパターン膜を介して第1基板と第2基板とが積層された積層物を加熱することにより、パターン膜を更に硬化させて、第1基板と第2基板とを接着することを、「Cステージ化」と記載することがある。「固形分」とは組成物中の不揮発成分であり、「固形分全量」とは、組成物の構成成分から溶媒を除外した全量を意味する。
【0022】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。アクリレート及びメタクリレートを包括的に「(メタ)アクリレート」と総称する場合がある。アクリロイル基及びメタクリロイル基を包括的に「(メタ)アクリロイル基」と総称する場合がある。
【0023】
本明細書に例示の成分や官能基等は、特記しない限り、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
以下の説明において参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数、形状等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。また、説明の都合上、後に説明する図面において、先に説明した図面と同一構成部分については、同一符号を付して、その説明を省略する場合がある。
【0025】
<パターン膜付き基板>
本発明の実施形態に係る固体撮像素子用パターン膜付き基板は、第1基板上にパターン化した塗膜を有するパターン膜付き基板であって、
前記パターン膜付き基板は、パターン化した塗膜を介して第2基板と積層して固体撮像素子用の基板積層体を得るためのものであり、
パターン膜付き基板とパターン化した塗膜を介して第2基板と積層後に50℃以上150℃未満の温度に加熱することでパターン化した塗膜と第2基板の間で剥離可能であり、
パターン膜付き基板と第2基板との積層体を150℃以上に加熱することでパターン化した塗膜を本硬化させて接着性を向上可能であることを特徴とする。(固体撮像素子用パターン膜付き基板を、以下パターン膜付き基板と記載することもある。)
本発明の実施形態に係るパターン膜付き基板は、基板の積層工程やリワーク工程への適用性の観点から、下記に記載の範囲の物性を有することが望ましい。
【0026】
パターン膜付き基板において、パターン膜表面の接着性(他の基板との接着性)を確保するためには、100℃で測定したパターン膜の表面弾性率が、70MPa以下であることが好ましく、50MPa以下であることがより好ましく、20MPa以下であることが更に好ましく、15MPa以下であることが更により好ましく、10MPa以下であることが特に好ましい。
【0027】
リワーク性の観点から、Bステージ状態のパターン膜の反応開始温度は、高い方が好ましい。具体的には、50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。一方で、反応開始温度が高すぎると、Cステージ化が困難になるため、反応開始温度は300℃以下にするのが好ましい。前記反応開始温度は示差走査熱量計(DSC)などの分析方法によって求めることができる。
【0028】
リワーク時に加熱することでパターン膜が柔軟化し、基板から剥離できるようにするために、Bステージ状態のパターン膜のTgは反応開始温度より低いことが必要である。具体的には120℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。Tgが低すぎると室温でパターン膜表面にタック性が発現し、異物の付着リスクが高くなるため、-30℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましい。TgはDSCや動的粘弾性装置等を用いて求めることができる。
【0029】
上記に記載の物性を有するパターン膜付き基板は、下記に記載の感光性組成物を用いたフォトリソグラフィーによって得ることができる。
【0030】
<感光性組成物>
本発明の実施形態に係る感光性組成物は、カチオン重合性化合物(以下、「成分(A)」と記載することがある)と、ラジカル重合性化合物(以下、「成分(B)」と記載することがある)と、光重合開始剤(以下、「成分(C)」と記載することがある)とを含み、成分(C)は、光ラジカル重合開始剤である。成分(A)は、1分子中にカチオン重合性基とアルカリ可溶性基とを有する。成分(B)は、(メタ)アクリロイル基を有する。成分(B)の量は、成分(A)100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましい。
【0031】
上記「感光性組成物が光重合開始剤(成分(C))を含み、成分(C)が光ラジカル重合開始剤である」とは、感光性組成物が光ラジカル重合開始剤を含み、かつ光ラジカル重合開始剤以外の光重合開始剤(例えば、光カチオン重合開始剤等)の含有量が、感光性組成物中の成分(A)100質量部に対して0.001質量部未満(好ましくは、0.0001質量部未満)であることを意味する。
【0032】
実施形態に係る感光性組成物は、感光性組成物からなるパターン膜を介した基板の積層及びリワークが可能である。その理由は、以下のように推測される。
【0033】
実施形態に係る感光性組成物は、1分子中にカチオン重合性基とアルカリ可溶性基とを有する成分(A)と、(メタ)アクリロイル基を有する成分(B)と、成分(C)とを含み、成分(C)は、光ラジカル重合開始剤である。これにより、第1実施形態に係る感光性組成物を用いてBステージ化(露光)する際は、光照射により活性種としてラジカルのみが発生し、露光部中の成分(B)がラジカル重合することにより、カチオンを発生させることなく半硬化状態のパターン膜を形成できる。このため、第1実施形態に係る感光性組成物によれば、Bステージ化まで完了した基板をCステージ化するまで長時間保管しても、残留したカチオンに起因するパターン膜の更なる硬化を抑制できる。よって、実施形態に係る感光性組成物は、パターン膜の半硬化状態を維持できる。そのため、積層工程で第1基板と第2基板とを積層させても反応が進行しないため、感光性組成物からなるパターン膜のTg以上に加熱して柔軟化させることで、リワークが可能である。なお、Cステージ化する際は、半硬化状態が維持されたパターン膜を介して第1基板と第2基板とを積層した後、積層された積層物を加熱することにより、パターン膜中の成分(A)をカチオン重合させて、第1基板と第2基板とを接着することができる。
【0034】
また、実施形態に係る感光性組成物は、Bステージ化する際の硬化成分である成分(B)の量が、成分(A)100質量部に対して5質量部以上であるため、ラジカル重合反応の反応点が比較的多くなる。これにより、半硬化させた露光部のアルカリ耐性を高めることができる。よって、実施形態に係る感光性組成物は、現像時の膜減りを抑制できる。
【0035】
実施形態において、現像時の膜減りをより抑制するためには、成分(B)の量が、成分(A)100質量部に対して、8質量以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることが更に好ましく、30質量部以上であることが更により好ましい。
【0036】
実施形態において、Cステージ化する際のパターン膜の接着性を高めるためには、成分(B)の量が、成分(A)100質量部に対して、200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることが更に好ましく、90質量部以下であることが更により好ましく、80質量部以下であることが特に好ましく、70質量部以下であってもよい。
【0037】
以下、実施形態に係る感光性組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0038】
[成分(A)]
成分(A)としては、1分子中にカチオン重合性基とアルカリ可溶性基とを有する限り、特に限定されない。成分(A)が1分子中にカチオン重合性基とアルカリ可溶性基とを有することにより、パターニング性及び硬化性の双方に優れる感光性組成物が得られる。成分(A)は、1分子中に複数個のカチオン重合性基を有することが好ましい。成分(A)が1分子中に複数個のカチオン重合性基を有する場合、架橋密度の高い硬化物層が得られ、その結果、硬化物層の耐熱性が向上する傾向がある。複数個のカチオン重合性基は、同種でもよく、2種以上の異なる官能基でもよい。また、成分(A)は、1分子中に複数個のアルカリ可溶性基を有することが好ましい。成分(A)が1分子中に複数個のアルカリ可溶性基を有する場合、現像時に非露光部の除去性が高くなるため、パターニング性が向上する傾向がある。複数個のアルカリ可溶性基は、同種でもよく、2種以上の異なる官能基でもよい。
【0039】
成分(A)が有するカチオン重合性基としては、例えば、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基、アルコキシシリル基等が挙げられる。感光性組成物の保存安定性の観点から、カチオン重合性基としては、脂環式エポキシ基、グリシジル基及びオキセタニル基の少なくとも1種以上を含むことが好ましく、これらの中でもエポキシ基がより好ましく、脂環式エポキシ基及びグリシジル基からなる群より選択される1種以上が更に好ましい。中でも脂環式エポキシ基は、硬化時の反応性が比較的高い上、硬化物層の硬化収縮を抑制できるため、特に好ましい。
【0040】
成分(A)が有するアルカリ可溶性基としては、例えば、下記化学式(X1)で表される1価の有機基(以下、「X1基」と記載することがある)、下記化学式(X2)で表される2価の有機基(以下、「X2基」と記載することがある)、フェノール性水酸基、カルボキシ基等が挙げられ、下記化学式(X1)で表される1価の有機基、下記化学式(X2)で表される2価の有機基、及びフェノール性水酸基からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。なお、X1基は、N-モノ置換イソシアヌル酸由来の1価の有機基である。また、X2基は、N,N’-ジ置換イソシアヌル酸由来の2価の有機基である。
【0041】
【化2】

パターン膜の半硬化状態をより安定して維持するためには、成分(A)が有するアルカリ可溶性基としては、X1基、X2基及びフェノール性水酸基からなる群より選択される1種以上が好ましい。パターン膜の半硬化状態を更に安定して維持するためには、成分(A)が有するアルカリ可溶性基としては、X1基及びX2基からなる群より選択される1種以上が好ましく、X2基がより好ましい。X1基及びX2基は、比較的酸性度が低いため、Bステージ化まで完了した基板を長時間保管しても、パターン膜中におけるカチオン重合の進行を抑制できる。
【0042】
硬化物層の耐熱性を高めるためには、成分(A)は、ポリマー骨格構造を含むことが好ましい。ポリマー骨格構造としては、例えば、ポリアクリル、ポリフェノール、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル等のポリマーの主鎖構造が挙げられる。
【0043】
硬化物層の耐熱性をより高めるためには、成分(A)は、ポリシロキサン構造を有することが好ましく、主鎖にポリシロキサン構造を有するポリマーであることがより好ましく、主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリマーであることが更に好ましい。「環状ポリシロキサン構造」とは、環の構成要素としてシロキサン単位(Si-O-Si)を有する環状分子構造骨格を意味する。
【0044】
環状ポリシロキサン構造は、単環構造でもよく、多環構造でもよい。多環構造は多面体構造でもよい。環を構成するシロキサン単位のうち、T単位(XSiO3/2)又はQ単位(SiO4/2)の含有率が高いほど、得られる硬化物層は、硬度が高くなり、耐熱性に優れる傾向がある。一方、M単位(XSiO1/2)又はD単位(XSiO2/2)の含有率が高いほど、得られる硬化物層は、より柔軟であり、かつ残留応力を低減できる傾向がある。
【0045】
成分(A)が主鎖にポリシロキサン構造を有するポリマーである場合、当該ポリマーの重量平均分子量は、10000以上50000以下であることが好ましく、20000以上40000以下であることがより好ましく、25000以上35000以下であることが更に好ましい。重量平均分子量が10000以上である場合、耐熱性に優れる硬化物層が得られる傾向がある。一方、重量平均分子量が50000以下である場合、現像時に非露光部の除去性が高くなるため、パターニング性が向上する傾向がある。
【0046】
ポリシロキサン構造を有する成分(A)(詳しくは、1分子中にカチオン重合性基とアルカリ可溶性基とポリシロキサン構造とを有するカチオン重合性化合物)は、例えば、下記の化合物(α)、化合物(β)及び化合物(γ)を出発物質とするヒドロシリル化反応により得られる。
・化合物(α):1分子中に少なくとも2個のSiH基(ヒドロシリル基)を有するポリシロキサン化合物
・化合物(β):1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、カチオン重合性基とを有する化合物
・化合物(γ):1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、アルカリ可溶性基とを有する化合物
【0047】
(化合物(α))
化合物(α)は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリシロキサン化合物であり、例えば、国際公開第96/15194号に記載の化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。化合物(α)の具体例としては、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサン、ヒドロシリル基を有する環状ポリシロキサン(以下、単に「環状ポリシロキサン」と記載することがある)等が挙げられる。環状ポリシロキサンは、多環構造を有していてもよく、多環構造は多面体構造であってもよい。耐熱性及び機械強度の高い硬化物層を形成するためには、化合物(α)として、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリシロキサンを用いることが好ましい。化合物(α)は、好ましくは1分子中に3個以上のSiH基を有する環状ポリシロキサンである。耐熱性及び耐光性の観点から、Si原子上に存在する基は、水素原子及びメチル基のいずれかであることが好ましい。
【0048】
直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、並びにジメチルハイドロジェンシリル基によって末端が封鎖されたポリシロキサン等が例示される。
【0049】
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンとしては、ジメチルハイドロジェンシリル基によって末端が封鎖されたポリシロキサン、並びにジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CHSiO1/2単位)と、SiO単位、SiO3/2単位及びSiO単位からなる群より選択される1種以上のシロキサン単位とからなるポリシロキサン等が例示される。
【0050】
環状ポリシロキサンは、例えば下記一般式(1)で表される。
【0051】
【化3】

一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上20以下の1価の有機基を表し、mは2以上10以上の整数を表し、nは0以上10以下の整数を表す。ヒドロシリル化反応を容易に行うためには、mが3以上であることが好ましい。ヒドロシリル化反応を容易に行うためには、m+nが3以上12以下であることが好ましい。ヒドロシリル化反応をより容易に行うためには、nが0であることが好ましい。
【0052】
、R及びRとしては、C、H及びOからなる群より選択される元素により構成される有機基が好ましい。R、R及びRの例としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、オキシアルキル基、アリール基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状アルキル基、又はフェニル基が好ましい。環状ポリシロキサンの入手容易性の観点から、R、R及びRとしては、炭素原子数1以上6以下の鎖状アルキル基、又はフェニル基が好ましい。ヒドロシリル化反応を容易に行うためには、R、R及びRとしては、炭素原子数1以上6以下の鎖状アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0053】
一般式(1)で表される環状ポリシロキサンとしては、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-プロピル-3,5,7-トリハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジハイドロジェン-3,7-ジヘキシル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリハイドロジェン-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタハイドロジェン-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、及び1,3,5,7,9,11-ヘキサハイドロジェン-1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン等が例示される。中でも、入手容易性及びSiH基の反応性の観点から、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(一般式(1)において、m=4、n=0であり、Rがメチル基である化合物)が好ましい。
【0054】
化合物(α)は、公知の合成方法により得られる。例えば、一般式(1)で表される環状ポリシロキサンは、国際公開第96/15194号等に記載の方法により合成できる。多面体骨格を有する環状ポリシロキサンは、例えば、特開2004-359933号公報、特開2004-143449号公報、特開2006-269402号公報等に記載の方法により合成できる。また、化合物(α)として、市販のポリシロキサン化合物を用いてもよい。
【0055】
(化合物(β))
化合物(β)は、1分子中に、SiH基(ヒドロシリル基)との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、カチオン重合性基とを有する化合物である。化合物(β)におけるカチオン重合性基は、前述の成分(A)が有するカチオン重合性基と同じであり、好ましい態様も同じである。すなわち、化合物(β)は、カチオン重合性基として、エポキシ基を有することが好ましく、脂環式エポキシ基及びグリシジル基からなる群より選択される1種以上を有することがより好ましく、脂環式エポキシ基を有することが更に好ましい。
【0056】
SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む基(以下、単に「アルケニル基」と記載することがある)としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-アリルフェニル基、3-アリルフェニル基、4-アリルフェニル基、2-(アリルオキシ)フェニル基、3-(アリルオキシ)フェニル基、4-(アリルオキシ)フェニル基、2-(アリルオキシ)エチル基、2,2-ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3-アリルオキシ-2,2-ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。SiH基との反応性の観点から、化合物(β)は、アルケニル基として、ビニル基及びアリル基からなる群より選択される1種以上を有することが好ましい。
【0057】
化合物(β)の具体例としては、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。カチオン重合における反応性の観点から、化合物(β)としては、脂環式エポキシ基を有する化合物が好ましく、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサンが特に好ましい。
【0058】
(化合物(γ))
化合物(γ)は、1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、アルカリ可溶性基とを有する化合物である。化合物(γ)におけるアルカリ可溶性基は、前述の成分(A)が有するアルカリ可溶性基と同じであり、好ましい態様も同じである。すなわち、化合物(γ)は、アルカリ可溶性基として、X1基、X2基及びフェノール性水酸基からなる群より選択される1種以上を有することが好ましく、X1基及びX2基からなる群より選択される1種以上を有することがより好ましく、X2基を有することが更に好ましい。
【0059】
化合物(γ)は、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む基(アルケニル基)を有する。化合物(γ)が有するアルケニル基の例としては、前述の化合物(β)が有するアルケニル基として例示したものと同じアルケニル基が挙げられ、好ましい態様も同じである。すなわち、化合物(γ)は、アルケニル基として、ビニル基及びアリル基からなる群より選択される1種以上を有することが好ましい。
【0060】
化合物(γ)の具体例としては、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、2,2’-ジアリルビスフェノールA、ビニルフェノール、アリルフェノール等が挙げられる。パターン膜の半硬化状態をより安定して維持するためには、化合物(γ)としては、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート及び2,2’-ジアリルビスフェノールAからなる群より選択される1種以上が好ましく、ジアリルイソシアヌレート及びモノアリルイソシアヌレートからなる群より選択される1種以上がより好ましく、ジアリルイソシアヌレートが更に好ましい。
【0061】
(他の出発物質)
ヒドロシリル化反応において、上記の化合物(α)、化合物(β)及び化合物(γ)に加えて、他の出発物質を用いてもよい。例えば、他の出発物質として、上記の化合物(β)及び化合物(γ)とは異なるアルケニル基含有化合物(以下、「他のアルケニル基含有化合物」と記載することがある)を用いてもよい。
【0062】
耐熱性に優れる硬化物層を得るためには、他のアルケニル基含有化合物として、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物(以下、「化合物(δ)」と記載することがある)を用いることが好ましい。化合物(δ)を用いれば、ヒドロシリル化反応の際、架橋点が増えるため、Cステージ化により得られる硬化物層の耐熱性が向上する傾向がある。
【0063】
化合物(δ)の具体例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、1,1,2,2-テトラアリロキシエタン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3-ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5-ヘキサジエン、1,9-デカジエン、ジアリルエーテル、及びこれらのオリゴマーが挙げられる。
【0064】
得られる硬化物層の耐熱性をより向上させるためには、化合物(δ)としては、ジアリルモノメチルイソシアヌレートが好ましい。
【0065】
現像時の膜減りをより抑制するためには、他のアルケニル基含有化合物として、1分子中にアルケニル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(以下、「化合物(ε)」と記載することがある)を用いることが好ましい。化合物(ε)を用いれば、成分(A)に(メタ)アクリロイル基が導入されるため、ラジカル重合反応の反応点が比較的多くなる。これにより、半硬化させた露光部のアルカリ耐性を高めることができる。
【0066】
化合物(ε)の具体例としては、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、2-ブテニルアクリレート、2-ブテニルメタクリレート等が挙げられる。現像時の膜減りを更に抑制するためには、化合物(ε)としては、ビニルアクリレート及びアリルアクリレートからなる群より選択される1種以上が好ましく、アリルアクリレートがより好ましい。
【0067】
(ヒドロシリル化反応)
成分(A)を得るためのヒドロシリル化反応の順序及び方法は特に限定されない。例えば、上述した化合物(α)、化合物(β)、化合物(γ)、及び必要に応じて任意成分である他の出発物質を用いて、国際公開第2009/075233号に記載の方法に準じたヒドロシリル化反応により、ポリシロキサン構造を有する成分(A)が得られる。上述した化合物(α)、化合物(β)、化合物(γ)、及び必要に応じて任意成分である他の出発物質を用いて得られる成分(A)は、例えば、1分子中に複数個のカチオン重合性基と複数個のアルカリ可溶性基とを有し、かつ主鎖にポリシロキサン構造を有するポリマーである。
【0068】
ヒドロシリル化反応における各化合物の割合は特に限定されないが、出発物質のアルケニル基の総物質量AとSiH基の総物質量Bとが、1≦B/A≦30を満たすことが好ましく、1≦B/A≦10を満たすことがより好ましい。
【0069】
パターン膜の半硬化状態を安定して維持しつつ、Cステージ化により得られる硬化物層の耐熱性を高めるためには、ヒドロシリル化反応における化合物(α)に対する化合物(β)の仕込み比(化合物(β)の質量/化合物(α)の質量)は、0.1以上1.0以下であることが好ましく、0.2以上0.9以下であることがより好ましい。
【0070】
パターニング性に優れる感光性組成物を得るためには、ヒドロシリル化反応における化合物(α)に対する化合物(γ)の仕込み比(化合物(γ)の質量/化合物(α)の質量)は、0.1以上0.9以下であることが好ましく、0.2以上0.8以下であることがより好ましい。
【0071】
出発物質として化合物(δ)を使用する場合、Cステージ化により得られる硬化物層の耐熱性を高めつつ、パターニング性に優れる感光性組成物を得るためには、ヒドロシリル化反応における化合物(α)に対する化合物(δ)の仕込み比(化合物(δ)の質量/化合物(α)の質量)は、0.01以上0.5以下であることが好ましく、0.05以上0.4以下であることがより好ましい。
【0072】
出発物質として化合物(ε)を使用する場合、Cステージ化する際のパターン膜の接着性を確保しつつ、現像時の膜減りをより抑制するためには、ヒドロシリル化反応における化合物(α)に対する化合物(ε)の仕込み比(化合物(ε)の質量/化合物(α)の質量)は、0.1以上0.5以下であることが好ましく、0.2以上0.4以下であることがより好ましい。
【0073】
ヒドロシリル化反応には、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体等のヒドロシリル化触媒を用いてもよい。ヒドロシリル化触媒と助触媒とを併用してもよい。ヒドロシリル化触媒の添加量(物質量)は特に限定されないが、出発物質に含まれるアルケニル基の総物質量に対して、好ましくは10-8倍以上10-1倍以下、より好ましくは10-6倍以上10-2倍以下である。
【0074】
ヒドロシリル化の反応温度は適宜に設定すればよく、好ましくは30℃以上200℃以下、より好ましくは50℃以上150℃以下である。ヒドロシリル化反応における気相部の酸素濃度は3体積%以下が好ましい。ヒドロシリル化反応促進の観点からは、気相部には0.1体積%以上3体積%以下の酸素が含まれていてもよい。
【0075】
ヒドロシリル化反応には、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、1種単独溶媒、又は2種以上を混合した混合溶媒が使用できる。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。反応後の留去が容易であることから、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、又はクロロホルムが好ましい。ヒドロシリル化反応においては、必要に応じて、ゲル化抑制剤を用いてもよい。
【0076】
[成分(B)]
成分(B)としては、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物である限り特に限定されない。(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物としては、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも1つを、1分子中に1個以上有する化合物が挙げられる。
【0077】
ラジカル重合反応の反応性を高めることで半硬化させた露光部のアルカリ耐性を高めて、現像時の膜減りをより抑制するためには、成分(B)としては、アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0078】
また、ラジカル重合反応の反応性を高めることで半硬化させた露光部のアルカリ耐性を高めて、現像時の膜減りをより抑制するためには、成分(B)としては、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基を1分子中に3個以上有する化合物がより好ましく、(メタ)アクリロイル基を1分子中に4個以上有する化合物が更に好ましい。現像時の膜減りを特に抑制するためには、成分(B)としては、アクリロイル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく、アクリロイル基を1分子中に3個以上有する化合物がより好ましく、アクリロイル基を1分子中に4個以上有する化合物が更に好ましい。
【0079】
Cステージ化する際のパターン膜の接着性を確保するためには、成分(B)が1分子中に有する(メタ)アクリロイル基の個数が、6個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましく、4個以下であることが更に好ましい。
【0080】
(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する成分(B)としては、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0081】
(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個有する成分(B)としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(より具体的には、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート等)、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
(メタ)アクリロイル基を1分子中に3個有する成分(B)としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0083】
(メタ)アクリロイル基を1分子中に4個有する成分(B)としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
成分(B)は、カチオン重合性基を有してもよい。また、成分(B)は、アルカリ可溶性基を有してもよい。ただし、パターニング性を向上させつつ、パターン膜の半硬化状態をより安定して維持するためには、実施形態に係る感光性組成物は、成分(B)として、1分子中にカチオン重合性基及びアルカリ可溶性基を有する化合物を含まないことが好ましい。つまり、第1実施形態に係る感光性組成物では、成分(B)が、1分子中にカチオン重合性基及びアルカリ可溶性基を有する化合物ではないことが好ましい。
【0085】
成分(B)は、1分子中にイソシアヌル環と(メタ)アクリロイル基とを有することが好ましい。
その場合、パターン膜の凝集力が向上し、リワーク時にパターン膜の凝集破壊が抑制しやすくなる。パターン膜の凝集破壊を抑制することで、第2基板上に残渣が残らず、再利用しやすくなる。
【0086】
[成分(C)]
成分(C)は、光ラジカル重合開始剤である。パターン膜の半硬化状態をより安定して維持するためには、成分(C)として使用する光ラジカル重合開始剤は、Bステージ化までの製造工程で加熱処理した際に、カチオンを生じない化合物であることが好ましく、200℃以下の温度かつ60分以内の加熱時間で加熱処理してもカチオンを生じない化合物であることがより好ましい。
【0087】
成分(C)の具体例としては、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、ビイミダゾール系化合物、多核キノン系化合物、トリアジン系化合物、オキシムエステル系化合物、チタノセン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ケタール系化合物、アゾ系化合物、過酸化物、2,3-ジアルキルジオン系化合物、ジスルフィド系化合物、フルオロアミン系化合物等が挙げられる。現像時の膜減りをより抑制するためには、成分(C)としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、及びオキシムエステル系化合物からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0088】
アセトフェノン系化合物としては、例えば、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4’-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2’-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2,2-ジメトキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4’-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4’-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0089】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0090】
オキシムエステル系化合物としては、例えば、1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0091】
ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0092】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケトン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0093】
α-ジケトン系化合物としては、例えば、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
【0094】
ビイミダゾール系化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等が挙げられる。
【0095】
多核キノン系化合物としては、例えば、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン等が挙げられる。
【0096】
キサントン系化合物としては、例えば、キサントン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン等が挙げられる。
【0097】
トリアジン系化合物としては、例えば、1,3,5-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4’-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-メトキシフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4’-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(2’-フリルエチリデン)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’-ブロモ-4’-メチルフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’-チオフェニルエチリデン)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等が挙げられる。
【0098】
現像時の膜減りをより抑制するためには、成分(C)の量は、成分(B)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましい。また、Cステージ化する際のパターン膜の接着性を確保するためには、成分(C)の量は、成分(B)100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0099】
[溶媒]
第1実施形態に係る感光性組成物は、溶媒を含有してもよい。例えば、上述の成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び必要に応じて後述する他の成分を、溶媒中に溶解又は分散させることにより、第1実施形態に係る感光性組成物が得られる。
【0100】
溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。感光性組成物の塗布性(製膜安定性)の観点から、溶媒としては、グリコール系溶媒が好ましく、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートがより好ましい。
【0101】
感光性組成物の塗布性(製膜安定性)の観点から、溶媒の量は、成分(A)100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0102】
[他の成分]
実施形態に係る感光性組成物は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、上述の成分(A)、成分(B)及び成分(C)以外の成分(他の成分)を含有してもよい。ただし、現像時の膜減りをより抑制しつつ、パターン膜の半硬化状態をより安定して維持するためには、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量が、感光性組成物の固形分全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが更により好ましく、90質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。他の成分としては、熱カチオン重合開始剤、ラジカル捕捉剤、着色剤、増感剤、充填材、接着性改良剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、劣化防止剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、滑剤、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤等が挙げられる。
【0103】
(熱カチオン重合開始剤)
実施形態に係る感光性組成物が他の成分として熱カチオン重合開始剤(加熱により活性種としてカチオンのみを生じる化合物)を含むと、Cステージ化の際の加熱温度を低減できるため、例えば、加熱による基板の劣化を抑制できる。熱カチオン重合開始剤としては、熱分解温度がBステージ化する際のベーク温度(例えば、120℃)やリワーク工程の加熱温度よりも高い化合物であることが好ましく、熱分解温度がBステージ化する際のベーク温度もしくはリワーク工程の加熱温度+5℃以上の化合物であることがより好ましい。ただし、パターン膜の半硬化状態をより安定して維持するためには、実施形態に係る感光性組成物は、熱カチオン重合開始剤を含まないことが好ましい。実施形態に係る感光性組成物が熱カチオン重合開始剤を含んでいなくても、Cステージ化の際の加熱により、例えば成分(A)が有するアルカリ可溶性基等からカチオンが発生するため、パターン膜の熱硬化は可能である。なお、「熱分解温度」とは、示差熱熱重量同時測定装置を用いて熱カチオン重合開始剤の熱重量測定を行った際に、当該熱カチオン重合開始剤の熱分解による重量減少が始まる温度を意味する。
【0104】
(ラジカル捕捉剤)
実施形態に係る感光性組成物が他の成分としてラジカル捕捉剤を含むと、Bステージ化の際、光照射により発生した活性ラジカルの非露光部への拡散が抑制される。その結果、非露光部の硬化が抑制されるため、現像後の残渣(例えば、現像により除去されずに残存した非露光部)の発生を抑制できる。
【0105】
ラジカル捕捉剤としては、例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ベンゾキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、ビス-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)-セバケート等が挙げられる。現像後の残渣の発生をより抑制するためには、ラジカル捕捉剤としては、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルが好ましい。
【0106】
現像時の膜減りを抑制しつつ、現像後の残渣の発生をより抑制するためには、ラジカル捕捉剤の量は、成分(B)100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.03質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
【0107】
(着色剤)
実施形態に係る感光性組成物が他の成分として着色剤を含むと、感光性組成物を用いて得られる硬化物層を、例えば、フレアやゴーストを抑制するための遮光性の隔壁として用いることができる。
【0108】
着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。耐熱性及び着色性の観点からは、着色剤として顔料を用いることが好ましい。遮光性を有する隔壁等の黒色の着色パターンを形成する場合は、着色剤として黒色顔料を用いることが好ましい。また、黒色パターン以外の着色パターンとして、赤色パターン、黄色パターン、青色パターン等が挙げられる。
【0109】
顔料としては、可視光領域の波長を広く吸収するものが好ましい。可視光領域の波長を広く吸収する顔料のうち、黒色有機顔料としては、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、ラクタム系黒色顔料等が挙げられる。この中でも遮光性に優れることから、ペリレン系黒色顔料、ラクタム系黒色顔料が好ましい。黒色無機顔料としては、カーボンブラック、黒色低次酸窒化チタン等が挙げられる。その他の無機顔料の例としては、複合金属酸化物顔料、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸鉛、黄色鉛、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、アンチモン白、硫化亜鉛、亜鉛、マンガン紫、コバルト紫、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。染料としては、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、ペリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、カルボニウム系化合物、インジゴイド系化合物等が挙げられる。
【0110】
黒色以外の着色パターンを得るために用いられる顔料としては、赤、橙、黄、緑、青、紫、シアニン、マゼンダ等の有彩色の顔料を用いることができる。
【0111】
フレアやゴーストをより抑制するためには、着色剤としては、黒色無機顔料が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
【0112】
現像後の残渣の発生、フレア及びゴーストを抑制しつつ、Bステージ化する際の光重合性に優れる感光性組成物を得るためには、着色剤の量は、成分(A)100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上7質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることが更に好ましい。
【0113】
現像時の膜減りをより抑制しつつ、パターン膜の半硬化状態をより安定して維持できる上、Cステージ化する際のパターン膜の接着性を高めるためには、実施形態に係る感光性組成物は、下記条件1を満たすことが好ましく、下記条件2を満たすことがより好ましく、下記条件3を満たすことが更に好ましく、下記条件4を満たすことが更により好ましい。
条件1:成分(A)がポリシロキサン構造を有し、かつ成分(B)の量が、成分(A)100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下である。
条件2:上記条件1を満たし、かつ成分(A)が、カチオン重合性基として脂環式エポキシ基を有する。
条件3:上記条件2を満たし、かつ成分(A)が、アルカリ可溶性基としてX2基を有する。
条件4:上記条件3を満たし、かつ成分(B)が、アクリロイル基を1分子中に2個以上有する化合物である。
【0114】
<固体撮像素子用の製造方法>
本発明の実施形態に係る固体撮像素子用の基板積層体の製造方法は、下記(A)~(F)の工程からなる。
(A)第1基板上に感光性組成物を塗布することにより塗膜を形成する塗布工程、
(B)前記塗膜にフォトマスクを通して光を照射することによって、前記塗膜において、半硬化状態の前記感光性組成物から構成される露光部と、非露光部とを形成する露光工程、
(C)アルカリ性現像液で前記非露光部を前記第1基板上から除去することによって、前記第1基板上にパターン化された前記塗膜を形成する現像工程、
(D)前記第1基板と第2基板とを、第1基板上にパターン化された半硬化状態の塗膜を介して積層することによって積層物を形成する積層工程、
(E)検査で、不合格の場合、第1積層体のパターン化した塗膜と第2基板の間で剥離する剥離工程(リワーク工程)、
(F)検査を合格した積層体を加熱し、パターン化された半硬化状態の塗膜を本硬化し、接着性を向上させる本硬化工程。
【0115】
第1基板及び第2基板としては、例えば、シリコンウェハー、ガラス基板、樹脂基板(透明樹脂基板等)、セラミック基板、半導体素子基板等が挙げられる。半導体素子基板としては、例えばセンサ基板(より具体的には、イメージセンサ基板等)等が挙げられる。
【0116】
特に、前記第1基板は、ガラス基板であり、前記第2基板は、半導体素子基板であることが好ましい。
【0117】
第1基板の厚みは、例えば50μm以上2000μm以下である。第2基板の厚みは、例えば50μm以上800μm以下である。硬化物層13の厚みは、例えば0.01μm以上200μm以下であり、好ましくは0.1μm以上150μm以下であり、より好ましくは5μm以上150μm以下である。
【0118】
基板積層体は、第1基板と第2基板との間に中空部を有する中空構造体であってもよい。この場合、中空構造体の内部空間は密閉された空間であってもよい。基板積層体が、密閉された内部空間を有する場合、基板積層体は、イメージセンサを構成する半導体装置に好適である。
【0119】
[工程(A)]
図1に示す工程(A)は、第1基板上に感光性組成物を塗布することによって塗膜を形成する塗膜形成工程である。感光性組成物を第1基板上に塗布する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、印刷法、バーコート法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塗膜の厚みは、例えば、0.01μm以上200μm以下であり、好ましくは0.1μm以上150μm以下であり、より好ましくは5μm以上150μm以下である。
【0120】
塗膜を形成した後、塗膜を乾燥させるために、塗膜を加熱(プリベーク)してもよい。加熱温度は、適宜設定され得るが、好ましくは60℃以上200℃以下であり、より好ましくは80℃以上150℃以下である。
【0121】
[工程(B)]
図1に示す工程(B)は、塗膜にフォトマスクを通して光を照射することによって、塗膜において、半硬化状態の露光部と、非露光部を形成する露光工程である。露光工程では、露光部において光照射によって活性種としてラジカルのみが発生し、露光部中のラジカル重合性化合物がラジカル重合することによって、カチオンを発生させることなく半硬化状態の露光部を形成できる。露光工程で照射する光の波長は、例えば200nm以上450nm以下の範囲である。露光工程で使用可能な光源しては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオードなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。露光工程で光が照射される露光部の積算露光量は、好ましくは1mJ/cm以上50000mJ/cm以下であり、より好ましくは1mJ/cm以上20000mJ/cm以下である。
【0122】
[工程(C)]
図1に示す工程(C)は、アルカリ性現像液で非露光部を第1基板上から除去することによって、第1基板上にパターン化された塗膜であるパターン膜を形成する現像工程である。現像工程で用いるアルカリ性現像液としては、アルカリ成分を含む水溶液が挙げられる。アルカリ性現像液に含まれるアルカリ成分としては、アルカリ有機成分、アルカリ無機成分等が挙げられる。アルカリ有機成分としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、「TMAH」と記載することがある)、コリン等が挙げられる。アルカリ無機成分としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等が挙げられる。露光部と非露光部とのコントラストを高める観点から、アルカリ性現像液におけるアルカリ成分の濃度は、25質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。アルカリ性現像液の温度は、塗膜の現像性に合わせて調整することができる。アルカリ性現象液を非露光部に接触させる方法としては、浸漬法、パドル法、スプレー法等が挙げられる。
【0123】
現像工程でアルカリ性現像液を非露光部に接触させた後、第1基板と露光部(パターン膜)とを有する積層物を水洗し、乾燥させてもよい。上記積層物を乾燥させる場合、例えば、水洗後の上記積層物の表面の水分を、圧縮空気や自然乾燥等により除去することができる。
【0124】
また、現像工程後、かつ後述する積層工程の前に、パターン膜の接着性が低下しない程度に、パターン膜を加熱してもよい。この際の加熱温度は、適宜設定され得るが、好ましくは40℃以上200℃以下である。
【0125】
[工程(D)]
図1に示す工程(D)は、第1基板と第2基板とを、パターン膜を介して積層することで積層物を形成す第1積層工程である。積層工程では、例えば、0.1kg以上5kg以下の範囲で荷重をかけながら積層してもよい。さらに、パターン膜が反応しない範囲で加熱しながら積層してもよい。例えば、60℃以上150℃以下の範囲で加熱することで、パターン膜の反応が進行せず、下記リワーク工程で剥離することが可能である。
【0126】
[工程(E)]
図2に示す工程(E)は、工程(D)で発生した積層不良等が発生した積層物の第1積層体のパターン化した塗膜と第2基板の間で剥離する剥離工程(リワーク工程)である。リワークの方法としては、半硬化状態のパターン膜のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することで軟化させる手法がある。温度を高くしすぎると、パターン膜の反応が進行し、第2基板との接着性が高くなり、リワークできなくなるため、上記の温度は150℃未満であり、140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。リワークされた積層物の第2基板は洗浄などを実施し、再度積層工程(D)に回され、積層不良がなくなるまで、工程(D)と工程(E)を繰り返す。この際、パターン膜付きガラスはリワークしたものを再利用してもよく、新しいものを使用してもよい。リワークでの加熱時間に制限はないが、10秒から5分程度が生産性の観点で好ましい。
【0127】
[工程(F)]
工程(F)は、積層体を加熱し、パターン化された半硬化状態の塗膜を本硬化し、接着性を向上させる本硬化工程である。(図示はなし)本硬化工程における加熱温度は、例えば150℃以上300℃以下であり、好ましくは160℃以上250℃以下であり、さらに好ましくは160℃以上220℃以下である。
以上の工程を経て、固体撮像素子用の積層物が得られる。
【実施例0128】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
<カチオン重合性化合物の合成>
以下、カチオン重合性化合物A1~A4の合成方法について説明する。なお、カチオン重合性化合物A1~A3の重量平均分子量は、東ソー社製「HLC-8420GPC」(カラム:Shodex GPC KD-G 4A(1本)、Shodex GPC KD-806M(1本))を用い、N,N-ジメチルホルムアミドを溶媒として、流速1.0mL/分で測定したクロマトグラムから、標準ポリスチレン換算により算出した。
【0130】
[カチオン重合性化合物A1の合成]
ジアリルイソシアヌレート40gとジアリルモノメチルイソシアヌレート29gと1,4-ジオキサン264gとの混合物に、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製「Pt-VTSC-3X」、白金を3質量%含有する溶液)143μLを加えて溶液S1を得た。また、別途、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン88gをトルエン176gに溶解させて溶液S2を得た。
【0131】
そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S2を温度105℃に加熱した状態で、溶液S2に溶液S1を3時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S3を得た。なお、得られた溶液S3に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。
【0132】
また、別途、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン62gをトルエン62gに溶解させて溶液S4を得た。
【0133】
そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S3を温度105℃に加熱した状態で、溶液S3に、溶液S4を1時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S5を得た。なお、得られた溶液S5に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。
【0134】
次いで、溶液S5から溶媒(トルエン、キシレン及び1,4-ジオキサン)を減圧留去して固形分を得た後、得られた固形分にプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(以下、「PGMEA」と記載する)を加えて、カチオン重合性化合物A1を含む溶液SA1(カチオン重合性化合物A1の濃度:70質量%)を得た。カチオン重合性化合物A1は、1分子中に複数個のカチオン重合性基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリマー(重量平均分子量:30000)であった。また、カチオン重合性化合物A1は、アルカリ可溶性であり、かつ有機溶剤可溶性であった。
【0135】
[カチオン重合性化合物A2の合成]
1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン31g及びアリルアクリレート28gを、トルエン59gに溶解させて溶液S4を得たこと以外は、[カチオン重合性化合物A1の合成]と同じ方法で、カチオン重合性化合物A2を含む溶液SA2(カチオン重合性化合物A2の濃度:70質量%)を得た。カチオン重合性化合物A2は、1分子中に複数個のカチオン重合性基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)と複数個のラジカル重合性基(具体的にはアクリロイル基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリマー(重量平均分子量:30000)であった。また、カチオン重合性化合物A2は、アルカリ可溶性であり、かつ有機溶剤可溶性であった。
【0136】
[カチオン重合性化合物A3の合成]
40gの2,2’-ジアリルビスフェノールAと19gのジアリルモノメチルイソシアヌレートと240gの1,4-ジオキサンとを混合した混合物に、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製「Pt-VTSC-3X」、白金を3質量%含有する溶液)97μLを加えて溶液S1を得たこと以外は、[カチオン重合性化合物A1の合成]と同じ方法で、カチオン重合性化合物A3を含む溶液SA3(カチオン重合性化合物A3の濃度:70質量%)を得た。カチオン重合性化合物A3は、1分子中に複数個のカチオン重合性基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはフェノール性水酸基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリマー(重量平均分子量:30000)であった。また、カチオン重合性化合物A3は、アルカリ可溶性であり、かつ有機溶剤可溶性であった。
【0137】
[アルカリ可溶性化合物A4の合成]
S4を使用しなかったこと以外は、[カチオン重合性化合物A1の合成]と同じ方法で、アルカリ可溶性化合物A4を含むSA4(アルカリ可溶性化合物A4の濃度:70質量%)を得た。アルカリ可溶性化合物A4は、1分子中にカチオン性重合性基を有さず、1分子中に複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX1基)を有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリマー(重量平均分子量:30000)であった。また、アルカリ可溶性化合物A4は、アルカリ可溶性であり、かつ有機溶剤可溶性であった。(正確には、A4は、カチオン性重合性基を有さないため、成分(A)に該当しない。)
【0138】
<他の材料の準備>
感光性組成物の材料として、上記溶液SA1~SA4以外に、以下の材料を準備した。なお、以下に記載の光ラジカル重合開始剤は、いずれも後述する<パターン膜の形成>において加熱処理した際に、カチオンを生じない化合物であった。
・ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(新中村化学工業社製「AD-TMP」、1分子中に4個のアクリロイル基を有するラジカル重合性化合物、以下、「AD-TMP」と記載する)
・トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業社製「A9300」、1分子中に3個のアクリロイル基を有するラジカル重合性化合物、以下、「A9300」と記載する)
・3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製「セロキサイド(登録商標)2021P」、1分子中に2個の脂環式エポキシ基を有するエポキシモノマー、以下、「2021P」と記載する)
・光ラジカル重合開始剤としてのベンゾフェノン系化合物(BASF社製「Omnirad(登録商標)651」、以下、「651」と記載する)
・光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩系化合物(サンアプロ社製「CPI-210S」、以下、「CPI-210S」と記載する)
・ラジカル捕捉剤としての4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(エボニック社製、以下、「H-TEMPO」と記載する)
【0139】
<感光性組成物の調製>
カチオン重合性化合物A1を含む溶液SA1、カチオン重合性化合物A2を含む溶液SA2、カチオン重合性化合物A3を含む溶液SA3、又はアルカリ可溶性化合物A4を含む溶液SA4と、他の材料とを、表1~2に記載の配合量で配合し、実施例1~4及び比較例1~3で使用する感光性組成物をそれぞれ得た。
【0140】
<パターン膜の形成>
[実施例1~4、及び比較例1~3]
ガラス基板としてのガラス板上に、プリベーク後の塗膜の厚みが50μmとなるように、表1~6に記載の各感光性組成物をスピンコーターにより塗布し、ホットプレートにて、温度85℃で10分間加熱した後、温度120℃で10分間加熱することによりプリベークし、試料1を得た。
【0141】
次いで、手動露光機(大日本科研社製「MA-1300」、ランプ:高圧水銀ランプ)を用いて、格子状にラインパターンが形成されたフォトマスク(縦方向:ライン/スペース=50μm/50μm、横方向:ライン/スペース=100μm/100μm)を通して、積算露光量3000mJ/cmの条件で試料1の塗膜に光を照射することにより、塗膜を露光(詳しくは、ソフトコンタクト露光)した。
【0142】
そして、露光後の試料1を、温度25℃の雰囲気下で1分間放置した後、アルカリ性現像液としてのTMAH水溶液(TMAHの濃度:2.38質量%)に60秒間浸漬した。次いで、アルカリ性現像液に浸漬した試料1を、30秒間水洗した後、表面の水分を圧縮空気で除去し、塗膜が格子状にパターン化された、半硬化状態のパターン膜を有する試料2を得た。
【0143】
<評価>
[リワーク性]
試料2をアルミナセラミック基板上にパターン膜を介して接触させ、80℃のホットプレート上で2kgの重しを30秒間置き、接着させた。その後、積層体を100℃のホットプレートに30秒静置し、ガラス基板をピンセットでつまみ上げ、リワーク性を評価した。リワーク試験を実施した後の状態を基に下記の基準でリワーク性について判定した。判定がA、又はBの場合、「リワーク性に優れている」と評価した。一方、判定がCの場合、「リワーク性に優れていない」と評価した。
【0144】
(リワーク性の判定基準)
A:剥離可能で、かつパターン膜がアルミナセラミック基板上に残らない
B:剥離可能だが、パターン膜の一部がアルミナセラミック基板上に残る
C:剥離ができない、もしくは剥離可能だが、パターン膜大部分がアルミナセラミック基板上に残る
【0145】
[本硬化後の接着性]
試料2をアルミナセラミック基板上にパターン膜を介して接触させ、80℃のホットプレート上で2kgの重しを30秒間置き、接着させた。その後、200℃のオーブンで2時間加熱し本硬化させた。得られた積層体を用いてガラス基板をダイシェア試験機で弾き、ダイシェア強度を測定することで接着性を評価した。詳細な測定条件は下記の通りである。
測定装置:ボンドテスター(DAGE社製「4000Plus」)
測定温度:23℃
シェア速度:0.1μm/秒
【0146】
(本硬化後の接着性の判定基準)
測定して得られたダイシェア強度にもとに下記の基準で本硬化後の接着性について判定した。判定がA、又はBの場合、「本硬化後の接着性に優れている」と評価した。一方、判定がCの場合、「本硬化後の接着性に優れていない」と評価した。
A:ダイシェア強度が10kgf以上
B:ダイシェア強度が5kgf以上10kgf未満
C:ダイシェア強度が5kgf未満
【0147】
<結果>
実施例1~4及び比較例1~3について、使用した感光性組成物の組成、表面弾性率、Tg、反応開始温度、リワーク性及び本硬化後の接着性の判定結果を、表1~2にそれぞれ示す。なお、表1~2において、配合量は、カチオン重合性化合物100質量部に対する配合量(単位:質量部)である。表1~2において、PGMEAの配合量は、溶液SA1、溶液SA2、溶液SA3又は溶液SA4中のPGMEAの量も含まれる。表1~2において、「感光性組成物の組成」の欄の「-」は、当該成分を配合しなかったことを意味する。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】
実施例1~4で使用した感光性組成物は、カチオン重合性化合物と、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤とを含んでいた。実施例1~4で使用した感光性組成物では、光重合開始剤が光ラジカル重合開始剤であった。実施例1~4で使用した感光性組成物では、カチオン重合性化合物が、1分子中にカチオン重合性基とアルカリ可溶性基とを有していた。実施例1~4で使用した感光性組成物では、ラジカル重合性化合物の量が、カチオン重合性化合物100質量部に対して、5質量部以上であった。
【0151】
実施例1~4では、リワーク性の判定結果がA又はBであった。よって、実施例1~4は、リワークが可能であった。実施例1~4では、本硬化後の接着性の判定結果がA又はBであった。よって、実施例1~4は、本硬化後に高い接着性を有していた。
【0152】
比較例1で使用した感光性組成物は、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物及び光ラジカル重合開始剤を含んでいなかった。比較例2及び3で使用した感光性組成物は、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を含んでいた。比較例2及び3で使用した感光性組成物は、カチオン硬化性化合物を含んでいなかった。
【0153】
比較例1では、リワーク性の判定結果がCであった。よって、比較例1は、リワークできていなかった。比較例2~3では、本硬化後の接着性の判定結果がCであった。よって、比較例2~3は、本硬化後の接着性が不十分であった。
【0154】
以上の結果から、本発明に係る感光性組成物を用いることで、リワーク可能な基板積層体の積層工程を提供できることが示された。
【符号の説明】
【0155】
10 基板積層体
11 第1基板
12 第2基板
13 硬化物層
14 塗膜
14a 露光部
14b 非露光部
15 パターン膜(パターン化された塗膜)
16 積層物
図1
図2