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特開2024-174550デザイン支援装置、およびデザイン支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174550
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】デザイン支援装置、およびデザイン支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20241210BHJP
   G06T 19/20 20110101ALI20241210BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20241210BHJP
   G06F 3/0484 20220101ALI20241210BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20241210BHJP
   G06F 111/16 20200101ALN20241210BHJP
【FI】
G06F30/10
G06T19/20
G06F30/20
G06F3/0484
G06F111:04
G06F111:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092431
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小塚 祐也
【テーマコード(参考)】
5B050
5B146
5E555
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050BA13
5B050CA07
5B050EA09
5B050EA27
5B050FA02
5B050FA05
5B050FA08
5B146AA11
5B146BA04
5B146DJ01
5B146DJ07
5B146DL08
5E555AA44
5E555BA02
5E555BA70
5E555BB02
5E555BC18
5E555DB53
5E555DC43
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザが着用する物において必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあった物のデザインを支援することができるデザイン支援装置、およびデザイン支援方法を提供する。
【解決手段】デザイン支援装置1は、ユーザが着用する物のデザインを支援するデザイン支援装置である。デザイン支援装置1は、入力部と、演算部と、出力部と、を備える。演算部は、第1情報とデザインデータとの見た目の差異を評価して第1評価値を算出し、第2情報から必要とされる物の機能について、デザインデータから予測される第2評価値を算出し、第1評価値および第2評価値のうち少なくとも一方が目標値より低い場合、第1評価値および第2評価値に基づきデザインデータを修正し、第1評価値および第2評価値が目標値以上の場合、デザインデータを出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが着用する物のデザインを支援するデザイン支援装置であって、
前記ユーザが選択または入力した前記物の見た目に関する第1情報と、前記ユーザによる前記物の使用に関する第2情報とを少なくとも受け付ける入力部と、
前記入力部で受け付けた前記第1情報及び前記第2情報に基づいて前記物のデザインデータを修正する演算部と、
前記演算部で修正した前記デザインデータを出力する出力部と、を備え、
前記演算部は、
前記第1情報と前記デザインデータとの見た目の差異を評価して第1評価値を算出し、
前記第2情報から必要とされる前記物の機能について、前記デザインデータから予測される第2評価値を算出し、
前記第1評価値および前記第2評価値のうち少なくとも一方が目標値より低い場合、前記第1評価値および前記第2評価値に基づき前記デザインデータを修正し、
前記第1評価値および前記第2評価値が目標値以上の場合、前記デザインデータを出力する、デザイン支援装置。
【請求項2】
前記入力部は、前記第1情報、前記物の構造、および前記物の使用材料に基づき予め設計されている初期の前記デザインデータを受け付ける、請求項1に記載のデザイン支援装置。
【請求項3】
前記入力部は、前記物の構造、および前記物の使用材料の情報を受け付け、
前記演算部は、前記第1情報、前記物の構造、および前記物の使用材料に基づき、初期の前記デザインデータを設計する、請求項1に記載のデザイン支援装置。
【請求項4】
前記第2情報に基づいて、前記物の機能に関する複数の項目および各項目に設定された目標値を含む機能評価モデルを読み出すことができる機能評価データベースをさらに備える、請求項1に記載のデザイン支援装置。
【請求項5】
前記機能評価データベースは、前記ユーザの性別、身体情報、運動能力、および走り方のうち少なくとも1つを含む属性情報に基づいて異なる前記機能評価モデルを読み出すことができる、請求項4に記載のデザイン支援装置。
【請求項6】
前記入力部は、前記出力部から出力された前記デザインデータで製造された前記物に対するユーザの使用結果の受け付けが可能で、
前記機能評価データベースは、前記入力部で受け付けた前記ユーザの使用結果に基づき前記機能評価モデルを更新する、請求項4に記載のデザイン支援装置。
【請求項7】
前記物は、ユーザが着用する履物であり、
前記機能評価モデルは、前記履物の機能としてクッション性、安定性、俊敏性、曲げ剛性、グリップ性、フィット性、耐久性、通気性、反発性、および切り返し特性のうち少なくとも1つを含む、請求項4に記載のデザイン支援装置。
【請求項8】
前記入力部は、前記出力部から出力された前記デザインデータに対する前記ユーザの評価結果の受け付けが可能で、
前記演算部は、前記入力部で受け付けた前記ユーザの評価結果に基づき前記デザインデータを修正する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のデザイン支援装置。
【請求項9】
前記物は、ユーザが着用する履物である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のデザイン支援装置。
【請求項10】
ユーザが着用する物のデザインを支援するデザイン支援方法であって、
ユーザが選択または入力した前記物の見た目に関する第1情報と、前記ユーザによる前記物の使用に関する第2情報とを少なくとも受け付けるステップと、
受け付けた前記第1情報とデザインデータとの見た目の差異を評価して第1評価値を算出するステップと、
受け付けた前記第2情報から必要とされる前記物の機能について、前記デザインデータから予測される第2評価値を算出するステップと、
前記第1評価値および前記第2評価値のうち少なくとも一方が目標値より低い場合、前記第1評価値および前記第2評価値に基づき前記デザインデータを修正するステップと、
前記第1評価値および前記第2評価値が目標値以上の場合、前記デザインデータを出力するステップと、を含む、デザイン支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デザイン支援装置、およびデザイン支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顧客(ユーザ)の嗜好が多様化するとともに、それに合わせて少量多品種生産が可能な製造プロセスが開発されている。たとえば、特開2022-083981号公報(特許文献1)には、直感的なカスタマイズシステムとして、サーバ、ディスプレイデバイス、およびインターフェースユニットと、製品(たとえば、靴)を製造するための工場または作業場とをインターネットで繋ぎ、顧客の嗜好にあったデザインの製品を生産し、購入できるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-083981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2022-083981号公報(特許文献1)に開示されたシステムでは、顧客の嗜好にあわせて製品を生産するため、製品のパーツごとに形状を指定したり、カラーを指定したり、材料を指定したりして製品を生産し、購入することができる。しかし、指定したパーツの形状や材料によっては生産される製品の機能に影響を与える可能性があるため、嗜好にあった製品であっても必要とする機能が得られない製品を生産し、購入してしまう虞があった。
【0005】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ユーザが着用する物において必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあった物のデザインを支援することができるデザイン支援装置、およびデザイン支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うデザイン支援装置は、ユーザが着用する物のデザインを支援するデザイン支援装置である。デザイン支援装置は、ユーザが選択または入力した物の見た目に関する第1情報と、ユーザによる物の使用に関する第2情報とを少なくとも受け付ける入力部と、入力部で受け付けた第1情報及び第2情報に基づいて物のデザインデータを修正する演算部と、演算部で修正したデザインデータを出力する出力部と、を備える。演算部は、第1情報とデザインデータとの見た目の差異を評価して第1評価値を算出し、第2情報から必要とされる物の機能について、デザインデータから予測される第2評価値を算出し、第1評価値および第2評価値のうち少なくとも一方が目標値より低い場合、第1評価値および第2評価値に基づきデザインデータを修正し、第1評価値および第2評価値が目標値以上の場合、デザインデータを出力する。
【0007】
本開示のある局面に従うデザイン支援方法は、ユーザが着用する物のデザインを支援するデザイン支援方法である。デザイン支援方法は、ユーザが選択または入力した物の見た目に関する第1情報と、ユーザによる物の使用に関する第2情報とを少なくとも受け付けるステップと、受け付けた第1情報とデザインデータとの見た目の差異を評価して第1評価値を算出するステップと、受け付けた第2情報から必要とされる物の機能について、デザインデータから予測される第2評価値を算出するステップと、第1評価値および第2評価値のうち少なくとも一方が目標値より低い場合、第1評価値および第2評価値に基づきデザインデータを修正するステップと、第1評価値および第2評価値が目標値以上の場合、デザインデータを出力するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ユーザが着用する物に必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあった物のデザインを支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るデザイン支援装置の処理を説明するための概略図である。
図2】実施の形態1に係るデザイン支援装置の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係るデザインを説明するための模式図である。
図4】デザインと機能との関係を説明するための模式図である。
図5】実施の形態1に係るデザイン支援装置の処理を説明するための模式図である。
図6】実施の形態1に係る機能評価モデルの一例を説明するための図である。
図7】実施の形態2に係るデザイン支援装置の処理を説明するための模式図である。
図8】実施の形態3に係るデザイン支援装置の処理を説明するための模式図である。
図9】実施の形態3の変形例に係るデザイン支援装置の処理を説明するための模式図である。
図10】実施の形態4に係るデザイン支援装置の処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、デザイン支援装置、およびデザイン支援方法の実施の形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一の構成には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下の説明では、デザイン支援装置、およびデザイン支援方法において、ユーザが着用する靴のデザインを支援する一例について説明するが、靴のデザイン支援に限定されず、履物やウェアなどユーザが着用する物のデザイン支援についても同様に適用することができる。
【0011】
(実施の形態1)
[デザイン支援装置の構成]
図1は、実施の形態に係るデザイン支援装置1の処理を説明するための概略図である。図2は、実施の形態に係るデザイン支援装置1の構成を示すブロック図である。靴屋などの店舗、イベント会場などにおいては、個人の足の形状に合わせたオーダーメイドの靴を作製することがある。その際、ユーザの嗜好にあった模様(たとえば、花柄)を取り入れて靴のデザインされる。図1に示すデザイン支援装置1では、ユーザの嗜好にあった見た目の情報(第1情報)、およびユーザが靴を使用する使用用途の情報(第2情報)を含む入力情報100に基づいて、ユーザが必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあわせてデザインされたデザインデータ200を修正する。
【0012】
図2に示すように、デザイン支援装置1は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、インターフェース14と、メディア読取装置15と、通信インターフェース16とを備える。これらの各構成は、プロセッサバス17を介して接続されている。
【0013】
プロセッサ11は、「演算部」の一例である。プロセッサ11は、ストレージ13に記憶されたプログラム(たとえば、OS(Operating System)130、設計プログラム131、機能評価プログラム132、およびデザイン評価プログラム133)を読み出し、読み出したプログラムをメモリ12に展開して実行するコンピュータである。プロセッサ11は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはMPU(Multi Processing Unit)などで構成される。なお、プロセッサ11は、演算回路(Processing Circuitry)で構成されていてもよい。
【0014】
メモリ12は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリ、あるいは、ROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどで構成される。
【0015】
ストレージ13は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性記憶装置などで構成される。ストレージ13には、OS130、設計プログラム131、機能評価プログラム132、およびデザイン評価プログラム133などのプログラム以外に、デザインデータ200などのデータが記憶される。さらに、ストレージ13は、後述する機能評価モデルを複数記憶した機能評価データベース134としても機能する。
【0016】
設計プログラム131は、ユーザの嗜好にあわせて、靴の構造、見た目などのデザインをし、デザインデータ200を出力する処理、またはデザインデータ200を修正する処理を実行するためのプログラムである。機能評価プログラム132は、靴の使用用途情報に基づいて、デザインデータ200によって作製される靴の機能を評価するためのプログラムである。デザイン評価プログラム133は、ユーザが嗜好する見た目の情報に基づいて、デザインデータ200によって作製される靴の見た目を評価するためのプログラムである。靴は、特許請求の範囲における「物」の一例である。
【0017】
インターフェース14は、「入力部」または「出力部」の一例である。インターフェース14は、たとえば、「入力部」としてキーボード、マウス、およびタッチデバイスなどからデザイン支援装置1への入力を受け付け、「出力部」としてディスプレイなどに修正したデザインデータ200を出力するように構成される。
【0018】
メディア読取装置15は、リムーバブルディスク18などの記憶媒体を受け入れ、リムーバブルディスク18などに格納されているプログラムやデータを取得する。
【0019】
通信インターフェース16は、「入力部」または「出力部」の一例である。通信インターフェース16は、有線通信または無線通信を行うことによって、他の装置との間でデータを送受信する。通信インターフェース16は、たとえば、「入力部」として別の設計装置からデザインデータ200の入力を受け付け、「出力部」として三次元プリンタ装置にデザインデータ200を出力する。
【0020】
なお、以下に説明するデザイン支援装置1では、設計プログラム131を実行することで、ユーザの嗜好にあわせて、靴の構造、見た目などのデザインをし、初期のデザインデータ200を設計する。しかし、初期のデザインデータ200の設計は、デザイン支援装置1で設計する場合に限定されず、通信インターフェース16によって別の設計装置から初期のデザインデータ200の入力を受け付けてもよい。また、デザイン支援装置1は、メディア読取装置15によってリムーバブルディスク18に記憶された初期のデザインデータ200を読み取ってもよい。
【0021】
図3は、実施の形態1に係るデザインを説明するための模式図である。図3に示す靴のデザインでは、たとえば、単一の部材にて構成され、三次元格子構造を有するアッパーまたは靴全体のデザインをする場合を一例に説明する。もちろん、靴のデザインは、三次元格子構造を有するアッパーまたは靴全体のデザインに限定されず、ソールのデザインであっても、複数の部材を貼り合わせたり、縫い合わせたりして作製する靴のデザインであってもよい。
【0022】
まず、設計プログラム131は、図3に示すように、ユーザの嗜好にあわせた初期のデザインデータ200を設計する。なお、設計プログラム131は、デザイン支援装置1で実行されるプログラムである。デザイン支援装置1は、まず見た目の情報111、初期構造情報112、および使用材料情報113を含む入力情報100がデザイン支援装置1に入力される。見た目の情報111は、たとえば、ユーザの好みの模様の情報であり、たとえば花柄の情報を含む。初期構造情報112は、アッパーまたは靴全体の構造に関する情報であり、たとえば、三次元格子構造を採用する場合、相互連結された単位格子構造体をアッパーまたは靴の外形形状に合わせて歪めることで得られた三次元メッシュ構造の情報である。なお、単位格子構造体としては、直方体格子、ダイヤモンド格子、八面体格子、ダブルピラミッド格子、菱形十二面体格子、あるいは、これら格子に各種のサポートが付加されたもの等、各種の構造体の適用が可能である。
【0023】
使用材料情報113は、アッパーまたは靴に使用する材料の情報である、相応の柔軟性、伸び性、耐久性、弾性力等を有することとなるように、樹脂材料またはゴム材料であることが好ましい。より具体的には、アッパーまたは靴を樹脂製とする場合には、たとえばポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)を使用材料情報113とすることができる。一方、アッパーまたは靴をゴム製とする場合には、たとえばブタジエンゴム(BR)を使用材料情報113とすることができる。
【0024】
デザイン支援装置1は、見た目の情報111に含まれるユーザの好みの模様の画像を、アッパーまたは靴全体の構造にマッピングできるようにスタイルを変化させた画像を生成する。図3では、入力情報100に含まれる花柄の模様のスタイルを変化させて、デザインデータ200に示すアッパーまたは靴全体の構造に花柄の模様をマッピングさせている。画像のスタイルを変化させる方法には、機械学習やニューラルネットワークを用いた方法、テクスチャ合成を用いた方法などがあり、具体的に”Style Transfer”と呼ばれるアルゴリズムなどを使用してもよい。
【0025】
デザイン支援装置1は、見た目の情報111、初期構造情報112、および使用材料情報113に基づいて、アッパーまたは靴全体の構造にユーザの好みの模様をマッピングさせた初期のデザインデータ200を設計する。しかし、ユーザの好みの模様を単純にマッピングさせた場合、模様がアッパーまたは靴全体の機能に影響を与え、ユーザが必要とする機能が得られない可能性がある。図4は、デザインと機能との関係を説明するための模式図である。図4では、アッパーまたは靴全体の構造にユーザの好みの模様をマッピングさせた場合の、見た目の情報111と初期のデザインデータ200とにおける見た目の類似度と機能との関係を示している。
【0026】
たとえば、ユーザの好みの模様をそのままアッパーまたは靴全体の構造にマッピングした場合、ユーザの好みの模様を容易に視認することができ、見た目の類似度は高い。しかし、ユーザの好みの模様がアッパーまたは靴全体の構造の一部となるため、靴の機能(たとえば、安定性)は低くなる。一方、ユーザの好みの模様を変化させて、トポロジー最適化(位相最適化)の手法を用いてアッパーまたは靴全体の構造にマッピングした場合、ユーザの好みの模様は視認し難くなり、見た目の類似度は低下する。しかし、設定した条件に基づき最適な材料の密度分布となるようにユーザの好みの模様を変形するので、靴の機能(たとえば、安定性)は高くなる。
【0027】
つまり、見た目の類似度と靴の機能との間にはトレードオフの関係があり、単純にユーザの嗜好にあったデザインをしたのでは、ユーザが必要とする機能を確保することが難しく、逆に、ユーザが必要とする機能を優先するとユーザの嗜好にあわないデザインとなる。そこで、本開示に係るデザイン支援装置1では、見た目の情報111とデザインデータ200との見た目の差異を評価するデザイン評価と、使用用途の情報から必要とされる靴の機能について、デザインデータ200から予測される機能を評価する機能評価とを行い、ユーザが着用する靴に必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあった靴のデザインを支援する。デザイン支援装置1は、図4の右側に示すグラフのように、必要な機能の範囲の中からユーザの嗜好にあった靴のデザインができるように支援している。具体的に、デザイン支援装置1は、たとえば、見た目の好みを優先するのであればデザインデータ201を選択し、機能を優先するのであればデザインデータ202を選択するように、デザインを支援する。
【0028】
[デザイン支援装置の処理]
次に、デザイン支援装置1での処理について説明する。図5は、実施の形態1に係るデザイン支援装置1の処理を説明するための模式図である。デザイン支援装置1は、ユーザの嗜好にあった見た目の情報111(第1情報)の入力を受け付ける。受け付ける見た目の情報111は、好みの画像だけでなく、テキスト情報や音声情報であってもよい。たとえば、見た目の情報111は、花柄の画像でなく、”花柄”のテキスト情報や音声情報であってもよい。さらに、見た目の情報111は、CAD(Computer Aided Design)データやCG(Computer Graphics)データであってもよい。
【0029】
受け付けた見た目の情報111は、初期構造情報112および使用材料情報113とともに初期のデザインデータ200の設計に用いられる。一方、デザイン支援装置1は、デザイン評価150のために、受け付けた見た目の情報111に対して画像処理140を行う。画像処理140では、デザインデータ200に含まれる模様と見た目の情報111に含まれる模様とが比較し易くなるように、見た目の情報111を模様の画像データにする処理を行う。具体的に、画像処理140では、好みの画像を線図化する、テキスト情報や音声情報から好みの画像を画像データベース(図示せず)から呼び出す、2次元もしくは3次元のCADデータやCGデータから好みの模様を取り出す処理を行う。
【0030】
デザイン評価150では、画像処理140で処理した見た目の情報111(ユーザの好みの模様)と、デザインデータ200の見た目(靴の模様)との差異または類似度を評価する。デザイン評価150では、画像の差異または類似度を評価する公知のアルゴリズムを使用してもよく、ニューラルネットワークを用いた方法なども利用することができる。また、デザイン評価150は、見た目の差異または類似度をたとえば100段階で評価し、差異が小さいまたは類似度が高ければ100点、差異が大きいまたは類似度が低ければ0点などと評価し、デザイン評価値(第1評価値)を算出する。なお、画像処理140およびデザイン評価150は、デザイン支援装置1でデザイン評価プログラム133を実行することで実現できる。
【0031】
次に、デザイン支援装置1は、靴の使用用途の情報120(第2情報)の入力を受け付ける。受け付けた使用用途の情報120には、ユーザがランニングをする際に着用するのか、日常生活で歩行する際に着用するのかの情報、競技種目の情報、靴に求める機能の情報などが含まれている。競技種目の情報には、たとえば、マラソン、短距離種目、バスケットボール、野球などの情報を含む。靴に求める機能には、たとえば、クッション性、安定性、俊敏性、曲げ剛性、グリップ性、フィット性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性などのうち少なくとも1つの機能を含んでいればよい。なお、本開示で示した靴に求める機能は、一例であって、これらの機能に限定されない。また、靴以外の履物やウェアの場合には、それぞれの物に求める機能を設定する。
【0032】
靴に求める機能について、詳しく説明する。まず、靴に求める機能のうちクッション性は、靴を履いて着地した際、衝撃を吸収する靴の機能である。クッション性は、たとえば、ユーザが靴を履いて着地した際に感じる衝撃の大きさをデザインデータ200からシミュレーションで予測して100段階で評価したり、基準値からの差異を評価したりする。
【0033】
靴に求める機能のうち安定性は、靴を履いて着地した際の接地面に対する水平方向へのずれや、前額面における傾きなどの靴の機能である。安定性は、たとえば、ユーザが靴を履いて着地した際に感じる水平方向へのずれや、前額面における傾きなどの大きさをデザインデータ200からシミュレーションで予測して100段階で評価したり、基準値からの差異を評価したりする。
【0034】
靴に求める機能のうち俊敏性は、靴を履いて運動する際にユーザの動きに追従する靴の機能である。俊敏性は、たとえば、ユーザが靴を履いて運動した際に感じる靴の追従性をデザインデータ200からシミュレーションで予測して100段階で評価したり、基準値からの差異を評価したりする。
【0035】
靴に求める機能のうち曲げ剛性は、靴を履いて走行した際の靴の曲げやすさを示す靴の機能である。屈曲性は、たとえば、ユーザが靴を履いて走行した際に感じる靴の曲げやすさをデザインデータ200からシミュレーションで予測して100段階で評価したり、基準値からの差異を評価したりする。
【0036】
靴に求める機能のうちグリップ性は、靴を履いて走行した際の接地面と靴、または靴内部とユーザの足部との摩擦の大きさを示す靴の機能である。グリップ性は、たとえば、ユーザが靴を履いて走行した際に感じる接地面と靴との摩擦の大きさをデザインデータ200からシミュレーションで予測して100段階で評価したり、基準値からの差異を評価したりする。
【0037】
靴に求める機能のうち通気性は、靴を通過する空気の量を示す靴の機能である。通気性は、たとえば、靴を通過する空気の量や温度および湿度をデザインデータ200からシミュレーションで予測して100段階で評価したり、基準値からの差異を評価したりする。
【0038】
靴に求める機能のうち軽量性は、靴の重さに関する靴の機能である。軽量性は、たとえば、使用材料およびデザインデータ200からシミュレーションで靴の重さを予測して100段階で評価したり、基準値からの差異を評価したりする。
【0039】
靴に求める機能のうち反発性は、靴を履いて着地した際、押し戻す力の大きさを示す靴の機能である。反発性は、たとえば、靴を圧縮したときの荷重変位応答などの値をデザインデータ200からシミュレーションで予測して100段階で評価したり、基準値からの差異を評価したりする。
【0040】
靴に求める機能のうち切り返し特性は、靴を履いて左右方向に移動する際の安定感を示す靴の機能である。切り返し特性は、たとえば、ユーザが靴を履いて左右方向に移動する際に靴の変形量をデザインデータ200からシミュレーションで予測して100段階で評価したり、基準値からの差異を評価したりする。
【0041】
前述のような靴に求める機能は、ユーザがランニングをする際に着用するのか、日常生活で歩行する際に着用するのか、競技種目などにより、求める機能のレベルが異なる。たとえば、ユーザがランニングをする際に着用する靴には、高いレベルのクッション性および安定性が求められるが、日常生活で歩行する際に着用する靴には、ランニングをする際に着用する靴のような高いレベルのクッション性および安定性は求められない。
【0042】
そのため、靴の機能を評価する場合、使用する用途に応じた機能評価モデルを用意する必要がある。具体的に、使用する用途と靴に求める機能とに基づく靴の機能評価モデルについて説明する。図6は、実施の形態1に係る機能評価モデルの一例を説明するための図である。図6(a)では、使用する用途として”歩行”、”ランニング”、”短距離”、”バスケットボール”および”野球”が図示され、それぞれの用途に対して”クッション性”、”安定性”、”俊敏性”および”曲げ剛性”の機能に必要な設計目標値が設定してある。図6(a)で示したような使用する用途ごとの機能評価モデルが、ストレージ13に機能評価データベース134として格納されている。
【0043】
図6(a)に示す”ランニング”の機能評価モデルでは、”クッション性”および”安定性”の設計目標値が高く、100段階評価で70点および80点と高い。一方、”短距離”の機能評価モデルでは、”曲げ剛性”の設計目標値が高く、100段階評価で80点と高い。また、”バスケットボール”の機能評価モデルでは、”安定性”および”俊敏性”の設計目標値が高く、100段階評価で70点および80点と高い。
【0044】
なお、機能評価データベース134は、使用する用途ごとに設定された機能評価モデルを格納するだけでなく、ユーザの属性情報(たとえば、性別、身体情報、運動能力など)に応じて複数の機能評価モデルを格納してもよい。たとえば、図6(b)では、グループP1に含まれる機能評価モデルは”男性用”、グループP2に含まれる機能評価モデルは”女性用”、グループPnに含まれる機能評価モデルは”プロ選手用”などに分けて、複数の機能評価モデルを機能評価データベース134に格納している。図6(b)に示す機能評価モデルのグループは一例であり、身体情報として小柄な体形の機能評価モデルのグループ、大柄な体形の機能評価モデルのグループ、運動能力として普段の活動量に応じた機能評価モデルのグループを作成してもよい。
【0045】
図5に戻って、デザイン支援装置1は、靴の使用用途の情報120に応じて、図6(a)に示す複数の機能評価モデルの中から1つの機能評価モデルを選択する。デザイン支援装置1は、たとえば、ランニングをする際に着用するとの情報(靴の使用用途の情報120)を受け付けた場合、”ランニング”の機能評価モデルを選択し、当該機能評価モデルで評価が必要な靴の機能(”クッション性”、”安定性”など)を機能評価160で評価する項目として設定する。なお、デザイン支援装置1は、機能評価モデルに基づいて設定された評価項目以外に、靴の使用用途の情報120にユーザが靴に求める機能を追加した場合、追加した機能も機能評価160で評価する項目として追加して設定することが好ましい。
【0046】
機能評価160では、靴の使用用途の情報120から必要とされる靴の機能について、デザインデータ200から予測される機能評価値(第2評価値)を算出する。具体的に、靴の使用用途の情報120が”ランニング”の場合、機能評価160では、デザインデータ200から”クッション性”、”安定性”、”俊敏性”、”曲げ剛性”などについて機能評価値を算出する。機能評価160では、数値解析手法に用いられる公知のアルゴリズムを使用してもよく、たとえば、有限要素法(FEM:Finite Element Method)や応答曲面法などに代表される代理モデルに基づいてデザインデータ200から”クッション性”、”安定性”、”俊敏性”、”曲げ剛性”などの機能評価値を算出する。なお、機能評価160は、デザイン支援装置1で機能評価プログラム132を実行することで実現できる。
【0047】
デザイン支援装置1は、機能評価160で評価する項目を設定すると共に、設定した項目の各々に対して設計目標値を設定する設計目標の設定134aを行う。設計目標の設定134aでは、使用用途が”ランニング”の場合、”クッション性”=70点、”安定性”=80点、”俊敏性”=30点、”曲げ剛性”=50点と設計目標値を設定する(図6(a)参照)。
【0048】
さらに、デザイン支援装置1では、収束判定170において、デザイン評価値(第1評価値)および機能評価値(第2評価値)が設計目標値以上か否かを判定する。なお、デザイン評価値に対する設計目標値は、たとえば、あらかじめ70点と設定されているものとする。具体的に、使用用途が”ランニング”の場合、デザイン評価値が70点以上、機能評価値の”クッション性”が70点以上、”安定性”が80点以上、”俊敏性”が30点以上、”曲げ剛性”が50点以上であれば、収束判定170において設計目標値をクリアしている(YES)として、デザイン支援装置1は、最終デザインとしてデザインデータ200を出力する。
【0049】
一方、使用用途が”ランニング”の場合、デザイン評価値が70点未満、機能評価値の”クッション性”が70点未満、”安定性”が80点未満、”俊敏性”が30点未満、”曲げ剛性”が50点未満のうち少なくとも1つの評価結果があれば、収束判定170において設計目標値をクリアしていない(NO)として、デザイン支援装置1は、デザインデータ200に対して、評価結果が設計目標値をクリアしていない項目について改善するようにデザイン修正250を行う。デザイン支援装置1は、デザイン修正250を行ったデザインデータ200に対して、収束判定170で設計目標値をクリアするまで、再度、デザイン評価150および機能評価160を行うことになる。これにより、デザイン支援装置1は、ユーザが着用する靴に必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあった靴のデザインを支援することができる。
【0050】
デザイン支援装置1は、たとえば、最終デザインであるデザインデータ200を三次元プリンタ装置に出力する。三次元プリンタ装置は、デザインデータ200に基づき靴を作製する。なお、三次元プリンタ装置は、たとえば、光造形方式の三次元積層造形法にて造形物の作製を行なう。ここで、光造形方式の三次元積層造形法は、特定の波長の光によって硬化する光硬化性の液状樹脂または液状ゴムを主原料として、これに当該特定の波長の光を照射することで硬化部分を順次積層することにより、所望の形状の造形物を作製する造形法である。特定の波長の光としては、たとえば紫外線が利用され、その場合、主原料としては、紫外線硬化樹脂またはゴムが用いられることになる。なお、主原料としての上述した液状樹脂または液状ゴムは、一液性のものに限られず二液性のもの等であってもよい。また、三次元プリンタ装置は、熱可塑性材料を積層造形する熱溶解方式(FDM:fused deposition modeling)の三次元積層造形法によって、デザインデータ200に基づき靴を作製してもよい。
【0051】
本開示に係るデザイン支援方法では、図5に示すように、ユーザが選択または入力した靴の見た目に関する見た目の情報111と、ユーザによる靴の使用に関する使用用途の情報120とを少なくとも受け付け、受け付けた見た目の情報111とデザインデータとの見た目の差異を評価してデザイン評価値を算出し、受け付けた使用用途の情報120から必要とされる靴の機能について、デザインデータ200から予測される機能評価値を算出し、デザイン評価値および機能評価値のうち少なくとも一方が設計目標値より低い場合、デザイン評価値および機能評価値に基づきデザインデータ200を修正し、デザイン評価値および機能評価値が目標値以上の場合、デザインデータを出力する。これにより、本開示に係るデザイン支援方法は、ユーザが着用する物に必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあった物のデザインを支援することができる。
【0052】
(実施の形態2)
図6(b)では、ユーザの属性情報に応じて機能評価モデルのグループを用意することを説明した。そこで、実施の形態2に係るデザイン支援装置では、ユーザの属性情報に応じて機能評価モデルを選択する構成を説明する。図7は、実施の形態2に係るデザイン支援装置1の処理を説明するための模式図である。実施の形態2に係るデザイン支援装置1において、実施の形態1に係るデザイン支援装置1の構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0053】
図7に示す機能評価データベース134は、図6(b)で示すようにユーザの属性情報(たとえば、性別、身体情報、運動能力など)に応じて複数の機能評価モデルを格納している。そのため、デザイン支援装置1は、ユーザの属性情報を受け付けた場合、受け付けた属性情報に応じた機能評価モデルを選択する。具体的に、ユーザの属性情報として”男性”の属性情報を受け付けた場合、図6(b)に示すグループP1に含まれる機能評価モデルを選択する。デザイン支援装置1に入力するユーザの属性情報には、性別以外に、身体情報(体形、足形など)、運動能力(プロ選手、アマチュア選手、普段の活動量など)、走り方(オーバープロネーション、ニュートラルプロネーションなど)などがある。
【0054】
機能評価データベース134は、複数の属性情報の組み合わせに応じて機能評価モデルのグループを用意してもよい。たとえば、機能評価データベース134は、”男性”×”大柄な体形”、”女性”×”オーバープロネーション”などに応じて機能評価モデルのグループを用意してもよい。さらに、機能評価データベース134は、ユーザが重視する機能に応じてカスタマイズした機能評価モデルを用意してもよい。これにより、ユーザごとにカスタマイズされた機能評価モデルを用意することができ、よりパーソナライズしたデザインが可能となる。
【0055】
(実施の形態3)
実施の形態2に係るデザイン支援装置では、ユーザの評価結果、ユーザの使用結果をフィードバックすることができる構成について説明する。図8は、実施の形態3に係るデザイン支援装置1の処理を説明するための模式図である。実施の形態3に係るデザイン支援装置1において、実施の形態1に係るデザイン支援装置1の構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0056】
実施の形態3に係るデザイン支援装置1では、図8に示すように、収束判定170において設計目標値をクリアしたデザインデータ200に対して、ユーザによる評価結果の受付180を行う。評価結果の受付180で受け付けた評価結果がデザインデータ200を採用する(YES)との評価結果であれば、デザイン支援装置1は、最終デザインとしてデザインデータ200を三次元プリンタ装置に出力する。
【0057】
一方、評価結果の受付180で受け付けた評価結果がデザインデータ200を採用しない(NO)との評価結果であれば、デザイン支援装置1は、ユーザによるデザイン修正の受付260を行う。デザイン修正の受付260では、たとえば、デザインデータ200の模様の位置、大きさ、形状などの修正指示を受け付ける。デザイン支援装置1は、デザインデータ200に対して、デザイン修正の受付260で受け付けた修正指示に基づいてデザイン修正270を行う。デザイン支援装置1は、デザイン修正270を行ったデザインデータ200に対して、収束判定170で設計目標値をクリアし、かつ評価結果の受付180で受け付けた評価結果がデザインデータ200を採用する評価結果となるまで、再度、デザイン評価150および機能評価160を行うことになる。これにより、デザイン支援装置1は、ユーザが着用する靴に必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあった靴のデザインを支援することができる。
【0058】
(変形例)
図8で示したデザイン支援装置1の処理では、デザインデータ200の段階でユーザの評価結果を受け付けフィードバックする構成について説明した。しかし、デザインデータ200の段階でユーザが評価できるのは見た目の評価が中心であるため、作製した靴を使用した結果をフィードバックできない。そこで、変形例では、デザインデータ200に基づいて作製した靴をユーザが使用した結果をフィードバックする構成について説明する。図9は、実施の形態3の変形例に係るデザイン支援装置1の処理を説明するための模式図である。実施の形態3の変形例に係るデザイン支援装置1において、実施の形態1に係るデザイン支援装置1の構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0059】
最終デザインであるデザインデータ200に基づいて三次元プリンタ装置で靴の作製300を行う。靴の作製300で作製された靴をユーザが使用した後、デザイン支援装置1は、ユーザが使用した靴の使用結果の受付310を行う。使用結果の受付310では、靴の見た目の評価以外に、クッション性や安定性など靴の機能評価についても受け付ける。
【0060】
そのため、デザイン支援装置1は、使用結果の受付310で受け付けたユーザの使用結果に基づいて、機能評価データベース134に格納されている機能評価モデルの更新、または、ユーザの好みの模様の画像を、アッパーまたは靴全体の構造にマッピングするためのアルゴリズムを更新する更新処理320を行う。これにより、デザイン支援装置1は、更新処理320を行うことで、次回に設計するデザインデータ200に対して、ユーザが着用する靴に必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあった靴のデザインとなるようにデザインを支援することができる。
【0061】
(実施の形態4)
実施の形態1に係るデザイン支援装置では、ユーザの嗜好にあった靴をデザインする際に、何ら制限を受けることなく靴のデザインを支援する処理について説明した。しかし、実際に販売される靴では、作製した企業のロゴを付与するなどユーザが自由にデザインを変更できない領域が存在し、靴のデザインが制限される場合がある。実施の形態4では、靴のデザインが制限される場合の一例について説明する。図10は、実施の形態4に係るデザイン支援装置1の処理を説明するための模式図である。実施の形態4に係るデザイン支援装置1において、実施の形態1に係るデザイン支援装置1の構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0062】
デザイン支援装置1は、初期のデザインデータ200を設計する場合、ロゴの領域を除いてデザインデータ200を設計する。靴に作製した企業のロゴを所定の位置に付与することが決まっている場合、デザイン支援装置1は、ロゴの領域以外の領域に対してデザインデータ200の設計を行うことになる。具体的に、デザイン支援装置1は、図10に示すように、見た目の情報111、初期構造情報112、および使用材料情報113以外に、ロゴの領域情報116が入力される。ロゴの領域情報116は、靴に作製した企業のロゴを付与する位置の情報であり、たとえば、靴の側面の領域情報が含まれている。
【0063】
デザイン支援装置1は、見た目の情報111、初期構造情報112、使用材料情報113、およびロゴの領域情報116に基づいて、アッパーまたは靴全体の構造にユーザの好みの模様をマッピングさせた初期のデザインデータ200を設計する。これにより、デザイン支援装置1は、企業のロゴを付与する領域を確保した上で、ユーザが着用する靴に必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあった靴のデザインを支援することができる。なお、デザインの制限としてロゴの領域情報116を一例に説明したが、法令で決められたマークや記載を付与する領域、製造管理で必要なマークや記載を付与する領域など他のデザインの制限についても同様にデザイン支援装置1に適用してもよい。
【0064】
[変形例]
本開示は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本開示に適用可能な変形例について説明する。
【0065】
実施の形態に係るデザイン支援装置1は、ユーザの好みの模様の画像を、靴の構造にマッピングしてデザインデータ200を設計するが、靴の外側にユーザの好みの模様がマッピングされる場合に限られず、靴の内側にユーザの好みの模様をマッピングしてもよい。つまり、ユーザが靴を着用した際に見えなくなる位置であっても、ユーザの好みの模様をマッピングしてもよい。さらに、ユーザの好みの模様をマッピングするのは、靴の表面に限られず、靴の構造の内部であってもよい。特に、三次元メッシュ構造の靴であれば、靴の構造の内部であってもユーザの好みの模様を視認することができる。
【0066】
図5図7図10では、それぞれ個別にデザイン支援装置1の処理を説明したが、図5図7図10に示すデザイン支援装置1の処理を適宜組み合わせることが可能である。たとえば、図5に示すデザイン支援装置1の処理に、図8および図9に示すデザイン支援装置1の処理を組み合わせてもよい。
【0067】
第1情報を選択または入力するユーザは、使用結果を提供するユーザとは別であってもよい。すなわち、入力部は、物(例えば、靴)の設計者が選択または入力した第1情報を受け付け、物(例えば、靴)の購入者の使用結果が受け付けてもよい。
【0068】
[態様]
(1)本開示に係るデザイン支援装置は、ユーザが着用する物のデザインを支援するデザイン支援装置であって、
ユーザが選択または入力した物の見た目に関する第1情報と、ユーザによる物の使用に関する第2情報とを少なくとも受け付ける入力部と、
入力部で受け付けた第1情報及び第2情報に基づいて物のデザインデータを修正する演算部と、
演算部で修正したデザインデータを出力する出力部と、を備え、
演算部は、
第1情報とデザインデータとの見た目の差異を評価して第1評価値を算出し、
第2情報から必要とされる物の機能について、デザインデータから予測される第2評価値を算出し、
第1評価値および第2評価値のうち少なくとも一方が目標値より低い場合、第1評価値および第2評価値に基づきデザインデータを修正し、
第1評価値および第2評価値が目標値以上の場合、デザインデータを出力する。
【0069】
これにより、デザイン支援装置は、ユーザが着用する物に必要な機能を確保しつつ、ユーザの嗜好にあった物のデザインを支援することができる。
【0070】
(2)(1)に記載のデザイン支援装置は、入力部は、第1情報、物の構造、および物の使用材料に基づき予め設計されている初期のデザインデータを受け付ける。
【0071】
(3)(1)に記載のデザイン支援装置は、入力部は、物の構造、および物の使用材料の情報を受け付け、
演算部は、第1情報、物の構造、および物の使用材料に基づき、初期のデザインデータを設計する。
【0072】
(4)(1)~(3)のいずれか1項に記載のデザイン支援装置は、第2情報に基づいて、物の機能に関する複数の項目および各項目に設定された目標値を含む機能評価モデルを読み出すことができる機能評価データベースをさらに備える。
【0073】
(5)(4)に記載のデザイン支援装置は、機能評価データベースは、ユーザの性別、身体情報、運動能力、および走り方のうち少なくとも1つを含む属性情報に基づいて異なる機能評価モデルを読み出すことができる。
【0074】
(6)(4)または(5)に記載のデザイン支援装置は、入力部は、出力部から出力されたデザインデータで製造された物に対するユーザの使用結果の受け付けが可能で、
機能評価データベースは、入力部で受け付けたユーザの使用結果に基づき機能評価モデルを更新する。
【0075】
(7)(4)~(6)のいずれか1項に記載のデザイン支援装置は、物は、ユーザが着用する履物であり、機能評価モデルは、履物の機能としてクッション性、安定性、俊敏性、曲げ剛性、グリップ性、フィット性、耐久性、通気性、反発性、および切り返し特性のうち少なくとも1つを含む。
【0076】
(8)(1)~(7)のいずれか1項に記載のデザイン支援装置は、入力部は、出力部から出力されたデザインデータに対するユーザの評価結果の受け付けが可能で、
演算部は、入力部で受け付けたユーザの評価結果に基づきデザインデータを修正する。
【0077】
(9)(1)~(6)のいずれか1項に記載のデザイン支援装置は、物は、ユーザが着用する履物である。
【0078】
(10)本開示に係るデザイン支援方法は、ユーザが着用する物のデザインを支援するデザイン支援方法であって、
ユーザが選択または入力した物の見た目に関する第1情報と、ユーザによる物の使用に関する第2情報とを少なくとも受け付けるステップと、
受け付けた第1情報とデザインデータとの見た目の差異を評価して第1評価値を算出するステップと、
受け付けた第2情報から必要とされる物の機能について、デザインデータから予測される第2評価値を算出するステップと、
第1評価値および第2評価値のうち少なくとも一方が目標値より低い場合、第1評価値および第2評価値に基づきデザインデータを修正するステップと、
第1評価値および第2評価値が目標値以上の場合、デザインデータを出力するステップと、を含む。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1 デザイン支援装置、11 プロセッサ、12 メモリ、13 ストレージ、14 インターフェース、15 メディア読取装置、16 通信インターフェース、17 プロセッサバス、18 リムーバブルディスク、100,110 入力情報、111 見た目の情報、112 初期構造情報、113 使用材料情報、116 ロゴの領域情報、120 使用用途の情報、131 設計プログラム、132 機能評価プログラム、133 デザイン評価プログラム、134 機能評価データベース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10