(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174555
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】移動体、遠隔制御システムおよび遠隔制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G08G1/09 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092440
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 健人
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF27
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】移動体の遠隔制御機能を手間なく有効化可能な技術を提供する。
【解決手段】遠隔制御により動作可能な移動体は、移動体を遠隔制御する制御装置が稼働中である場合に送信される信号を検出する検出部と、制御装置から送信された移動体を遠隔制御するための制御信号を受け付ける有効状態と制御信号を受け付けない無効状態とのいずれかに切り替わる制御信号受付部であって、検出部により信号が検出された場合に、有効状態に切り替わる制御信号受付部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔制御により動作可能な移動体であって、
前記移動体を遠隔制御する制御装置が稼働中である場合に送信される信号を検出する検出部と、
前記制御装置から送信された前記移動体を遠隔制御するための制御信号を受け付ける有効状態と前記制御信号を受け付けない無効状態とのいずれかに切り替わる制御信号受付部であって、前記検出部により前記信号が検出された場合に、前記有効状態に切り替わる制御信号受付部と、
を備える、移動体。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体であって、
前記検出部は、前記制御装置から送信された前記移動体とは異なる他の移動体を遠隔制御するための制御信号を前記信号として検出する、移動体。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体であって、
前記制御信号受付部が前記有効状態に切り替わったことを前記制御装置に報知する報知信号を送信する報知部をさらに備える、移動体。
【請求項4】
遠隔制御システムであって、
請求項3に記載の移動体と、
前記移動体を遠隔制御する制御装置であって、前記報知信号を受信した場合に、前記移動体の遠隔制御を準備または開始する制御装置と、
を備える、遠隔制御システム。
【請求項5】
遠隔制御により動作可能な移動体であって、
前記移動体を遠隔制御する制御装置が稼働中である場合に送信される信号を検出する検出部と、
前記検出部により前記信号が検出された場合に、前記移動体の存在を前記制御装置に報知する報知信号を送信する報知部と、
前記制御装置から送信された前記移動体を遠隔制御するための制御信号を受け付ける有効状態と前記制御信号を受け付けない無効状態とのいずれかに切り替わる制御信号受付部であって、前記報知信号に応じて前記制御装置から送信される有効化信号を受信した場合に、前記有効状態に切り替わる制御信号受付部と、
を備える、移動体。
【請求項6】
遠隔制御システムであって、
請求項5に記載の移動体と、
前記移動体を遠隔制御する制御装置であって、前記報知信号を受信した場合に、前記移動体に前記有効化信号を送信する制御装置と、
を備える、遠隔制御システム。
【請求項7】
遠隔制御方法であって、
遠隔制御により動作可能な移動体を遠隔制御する制御装置が稼働中である場合に送信される信号を検出する検出工程と、
前記制御装置から送信された前記移動体を遠隔制御するための制御信号を前記移動体が受け付ける有効状態から前記制御信号を前記移動体が受け付けない無効状態に切り替える切替工程であって、前記信号が検出された場合に、前記有効状態に切り替える切替工程と、
を備える、遠隔制御方法。
【請求項8】
遠隔制御方法であって、
遠隔制御により動作可能な移動体を遠隔制御する制御装置が稼働中である場合に送信される信号を検出する検出工程と、
前記信号が検出された場合に、前記移動体の存在を前記制御装置に報知する報知信号を送信する報知工程と、
前記制御装置から送信された前記移動体を遠隔制御するための制御信号を前記移動体が受け付ける有効状態から前記制御信号を前記移動体が受け付けない無効状態に切り替える切替工程であって、前記報知信号に応じて前記制御装置から送信される有効化信号を受信した場合に、前記有効状態に切り替える切替工程と、
を備える、遠隔制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体、遠隔制御システムおよび遠隔制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の製造工程において、遠隔制御により車両を走行させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔制御が無効化された状態で車両が出荷された場合に、車両を遠隔制御したいユーザの利便性を高めるためには、手間をかけずに車両の遠隔制御を有効化できることが好ましい。したがって、手間をかけずに遠隔制御を有効化できる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態によれば、遠隔制御により動作可能な移動体が提供される。この移動体は、前記移動体を遠隔制御する制御装置が稼働中である場合に送信される信号を検出する検出部と、前記制御装置から送信された前記移動体を遠隔制御するための制御信号を受け付ける有効状態と前記制御信号を受け付けない無効状態とのいずれかに切り替わる制御信号受付部であって、前記検出部により前記信号が検出された場合に、前記有効状態に切り替わる制御信号受付部と、を備える。
この形態の移動体によれば、制御装置が稼働中である場合に送信される信号が検出部により検出された場合に、制御信号受付部が自動的に有効状態に切り替わるため、手間をかけずに移動体を遠隔制御により動作可能にすることができる。
(2)上記形態の移動体において、前記検出部は、前記制御装置から送信された前記移動体とは異なる他の移動体を遠隔制御するための制御信号を前記信号として検出してもよい。
この形態の移動体によれば、制御装置から送信された他の移動体を遠隔制御するための制御信号が検出部により検出された場合に、制御信号受付部が自動的に有効状態に切り替わるため、手間をかけずに移動体を遠隔制御により動作可能にすることができる。
(3)上記形態の移動体は、前記制御信号受付部が前記有効状態に切り替わったことを前記制御装置に報知する報知信号を送信する報知部をさらに備えてもよい。
この形態の移動体によれば、移動体が遠隔制御により動作可能になったことを制御装置に報知することができる。
(4)本開示の第2の形態によれば、遠隔制御システムが提供される。この遠隔制御システムは、上記形態の移動体と、前記移動体を遠隔制御する制御装置であって、前記報知信号を受信した場合に、前記移動体の遠隔制御を準備または開始する制御装置と、を備える。
この形態の遠隔制御システムによれば、移動体が遠隔制御により動作可能になった場合に、制御装置により移動体の遠隔制御を準備または開始することができる。
(5)本開示の第3の形態によれば、遠隔制御により動作可能な移動体が提供される。この移動体は、前記移動体を遠隔制御する制御装置が稼働中である場合に送信される信号を検出する検出部と、前記検出部により前記信号が検出された場合に、前記移動体の存在を前記制御装置に報知する報知信号を送信する報知部と、前記制御装置から送信された前記移動体を遠隔制御するための制御信号を受け付ける有効状態と前記制御信号を受け付けない無効状態とのいずれかに切り替わる制御信号受付部であって、前記報知信号に応じて前記制御装置から送信される有効化信号を受信した場合に、前記有効状態に切り替わる制御信号受付部と、を備える。
この形態の移動体によれば、制御装置から送信される有効化信号に応じて制御信号受付部が自動的に有効状態に切り替わるため、手間をかけずに移動体を遠隔制御により動作可能にすることができる。
(6)本開示の第4の形態によれば、遠隔制御システムが提供される。この遠隔制御システムは、上記形態の移動体と、前記移動体を遠隔制御する制御装置であって、前記報知信号を受信した場合に、前記移動体に前記有効化信号を送信する制御装置と、を備える。
この形態の遠隔制御システムによれば、制御装置から移動体に有効化信号を送信することができる。
(7)本開示の第5の形態によれば、遠隔制御方法が提供される。この遠隔制御方法は、遠隔制御により動作可能な移動体を遠隔制御する制御装置が稼働中である場合に送信される信号を検出する検出工程と、前記制御装置から送信された前記移動体を遠隔制御するための制御信号を前記移動体が受け付ける有効状態から前記制御信号を前記移動体が受け付けない無効状態に切り替える切替工程であって、前記信号が検出された場合に、前記有効状態に切り替える切替工程と、を備える。
この形態の遠隔制御方法によれば、手間をかけずに、簡易な手法で移動体を遠隔制御により動作可能にすることができる。
(8)本開示の第6の形態によれば、遠隔制御方法が提供される。この遠隔制御方法は、遠隔制御により動作可能な移動体を遠隔制御する制御装置が稼働中である場合に送信される信号を検出する検出工程と、前記信号が検出された場合に、前記移動体の存在を前記制御装置に報知する報知信号を送信する報知工程と、前記制御装置から送信された前記移動体を遠隔制御するための制御信号を前記移動体が受け付ける有効状態から前記制御信号を前記移動体が受け付けない無効状態に切り替える切替工程であって、前記報知信号に応じて前記制御装置から送信される有効化信号を受信した場合に、前記有効状態に切り替える切替工程と、を備える。
この形態の遠隔制御方法によれば、手間をかけずに、簡易な手法で移動体を遠隔制御により動作可能にすることができる。
本開示は、移動体、遠隔制御システムおよび遠隔制御方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、車両、コンピュータプログラム、および、コンピュータプログラムが記録された記録媒体などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】工場において車両が遠隔制御により移動する様子を示す説明図。
【
図4】第1実施形態の有効化処理の内容を示すフローチャート。
【
図5】第1実施形態の対象追加処理の内容を示すフローチャート。
【
図6】車両の遠隔制御機能が有効化される様子を示す説明図。
【
図7】第2実施形態の有効化処理の内容を示すフローチャート。
【
図8】第2実施形態の対象追加処理の内容を示すフローチャート。
【
図9】車両の遠隔制御機能が有効化される様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における遠隔制御システム10の構成を示す説明図である。
図2は、第1実施形態における車両100の構成を示す説明図である。遠隔制御システム10は、遠隔制御により移動体を動作させるために用いられる。本実施形態では、移動体は、車両100である。より具体的には、移動体は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。なお、移動体は、電気自動車に限られず、例えば、ガソリン自動車や、ハイブリッド自動車や、燃料電池自動車でもよい。移動体は、車両100に限られず、例えば、電動垂直離着陸機(いわゆる空飛ぶ自動車)でもよい。
【0009】
図1に示すように、本実施形態では、遠隔制御システム10は、遠隔制御により動作可能な車両100と、車両100を遠隔制御するための遠隔制御装置200と、車両100の外部に位置している外部センサ群300とを備えている。なお、遠隔制御装置200のことを単に制御装置と呼ぶことがある。
【0010】
図2に示すように、車両100は、車両100の各部を制御するための車両制御装置110と、車両制御装置110の制御下で駆動するアクチュエータ群120と、無線通信により遠隔制御装置200と通信するための通信装置130とを備えている。本実施形態では、アクチュエータ群120には、車両100を加速させるための駆動装置のアクチュエータ、車両100の進行方向を変更するための操舵装置のアクチュエータ、および、車両100を減速させるための制動装置のアクチュエータが含まれている。駆動装置には、バッテリ、バッテリの電力により駆動する走行用モータ、および、走行用モータにより回転する駆動輪が含まれている。駆動装置のアクチュエータには、走行用モータが含まれている。
【0011】
車両制御装置110は、プロセッサ111と、メモリ112と、入出力インタフェース113と、内部バス114とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ111、メモリ112、および、入出力インタフェース113は、内部バス114を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェース113には、アクチュエータ群120、および、通信装置130が接続されている。メモリ112には、コンピュータプログラムPG1、および、車両100を識別するための車両識別情報SJが記憶されている。車両識別情報SJには、例えば、17桁の数字で表された車両識別番号(ISO 3833:1977)を用いることができる。車両識別情報SJには、車両100の製造メーカが定めた整理番号が用いられてもよい。
【0012】
プロセッサ111は、コンピュータプログラムPG1を実行することにより、車両制御部115、検出部116、制御信号受付部117、および、報知部118として機能する。車両制御部115は、アクチュエータ群120を制御する。本実施形態では、車両制御部115は、車両100に運転者が搭乗している場合には、運転者の操作に応じてアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させることができる。車両制御部115は、車両100に運転者が搭乗しているか否かにかかわらず、制御信号受付部117により受け付けられた制御信号に応じてアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させることができる。以下の説明では、車両100から視て、車両100自身のことを自車両と呼び、車両100自身とは異なる他の車両100のことを他車両と呼ぶことがある。
【0013】
検出部116は、遠隔制御装置200が稼働中である場合に送信される信号を検出する。遠隔制御装置200が稼働中である場合に送信される信号には、遠隔制御装置200から送信される車両100を遠隔制御するための制御信号が含まれる。制御信号には、例えば、車両100の速度や操舵角の目標値が含まれている。本実施形態では、制御信号には、車両識別情報SJがさらに含まれている。本実施形態では、検出部116は、遠隔制御装置200が他車両を遠隔制御するために送信する制御信号を、遠隔制御装置200が稼働中である場合に送信される信号として検出する。
【0014】
制御信号受付部117は、遠隔制御装置200から自車両に送信された制御信号を受け付ける。制御信号受付部117は、制御信号に含まれる車両識別情報SJにより、自車両に送信された制御信号であるか、他車両に送信された制御信号であるかを判別できる。制御信号受付部117は、制御信号を受け付ける有効状態と、制御信号を受け付けない無効状態とのいずれかに動作状態が切り替わる。本実施形態では、制御信号受付部117は、遠隔制御装置200が他車両を遠隔制御するために送信した制御信号が検出部116により検出された場合に、無効状態から有効状態に切り替わる。制御信号受付部117が有効状態である場合には、制御信号受付部117は、自車両に送信された制御信号を受け付ける。制御信号受付部117が無効状態である場合には、制御信号受付部117は、自車両に送信された制御信号であるか他車両に送信された制御信号であるかにかかわらず、制御信号を受け付けない。以下の説明では、制御信号受付部117が有効状態であることを、車両100の遠隔制御機能が有効状態であると呼び、制御信号受付部117が無効状態であることを、車両100の遠隔制御機能が無効状態であると呼ぶ。車両100の遠隔制御機能を無効状態に切り替えることを、車両100の遠隔制御機能を無効化すると呼び、車両100の遠隔制御機能を有効状態に切り替えることを、車両100の遠隔制御機能を有効化すると呼ぶ。
【0015】
報知部118は、自車両の遠隔制御機能が有効化された場合に、自車両の遠隔制御機能が有効状態であることを遠隔制御装置200に報知するための報知信号を送信する。本実施形態では、報知信号には、自車両の遠隔制御機能が有効状態であることを表す情報、および、自車両の車両識別情報SJが含まれている。
【0016】
図1に示すように、遠隔制御装置200は、プロセッサ201と、メモリ202と、入出力インタフェース203と、内部バス204とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ201、メモリ202、および、入出力インタフェース203は、内部バス204を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェース203には、無線通信により車両100と通信するための通信装置205が接続されている。本実施形態では、通信装置205は、有線通信あるいは無線通信により外部センサ群300と通信することができる。メモリ202には、コンピュータプログラムPG2、および、対象リストLSが記憶されている。対象リストLSには、遠隔制御対象の車両100の車両識別情報SJが記録されている。
【0017】
プロセッサ201は、コンピュータプログラムPG2を実行することにより、遠隔制御部210として機能する。遠隔制御部210は、対象リストLSに記録されている車両100を遠隔制御する。遠隔制御部210は、外部センサ群300を用いて車両100の位置および向きを取得し、車両100を遠隔制御するための制御信号を生成し、車両100に制御信号を送信する。
【0018】
外部センサ群300は、少なくとも1つの外部センサにより構成されている。外部センサとは、車両100の外部に設置されているセンサのことである。本実施形態では、外部センサ群300は、複数のカメラにより構成されている。各カメラは、図示されていない通信装置を備えており、有線通信あるいは無線通信により遠隔制御装置200と通信することができる。
【0019】
図3は、工場KJにおいて車両100が遠隔制御により移動する様子を示す説明図である。
図3には、5台の車両100A~100Eが図示されている。以下の説明では、5台の車両100A~100Eを特に区別せずに説明する場合には、単に車両100と呼ぶ。本実施形態では、車両100を製造する工場KJには、遠隔制御装置200が設置されている。車両100は、遠隔制御装置200に遠隔制御されることにより、工場KJ内を走行する。工場KJは、車両100の組み立てを実施するための第1場所PL1と、車両100の検査を実施するための第2場所PL2と、検査に合格した車両100を保管するための第3場所PL3とを備えている。第1場所PL1、第2場所PL2、および、第3場所PL3は、車両100が走行可能な走行路SRによって接続されている。第1場所PL1において組み立てられた車両100には、車両制御装置110とアクチュエータ群120と通信装置130とが装着されている。第1場所PL1において組み立てられた車両100は、遠隔制御装置200に遠隔制御されることにより第1場所PL1から第2場所PL2まで走行する。第2場所PL2における検査に合格した車両100は、遠隔制御装置200に遠隔制御されることにより第2場所PL2から第3場所PL3まで走行する。
【0020】
遠隔制御装置200が遠隔制御により車両100を移動させる方法について説明する。遠隔制御装置200が備える遠隔制御部210は、車両100が走行路SRを通って目的地まで走行するための目標ルートを決定する。工場KJには、走行路SRを撮影する複数のカメラCMが設置されており、遠隔制御部210は、各カメラCMにより撮影された映像を解析することにより、リアルタイムで、目標ルートに対する車両100の相対的な位置および向きを取得することができる。各カメラCMは、上述した外部センサ群300に含まれている。遠隔制御部210は、車両100を目標ルートに沿って走行させるための制御信号を生成し、制御信号を車両100に送信する。車両100が備える車両制御装置110は、受信した制御信号に従ってアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させる。したがって、クレーンやコンベアなどの搬送装置を用いずに、車両100を移動させることができる。
【0021】
本実施形態では、遠隔制御部210は、複数の車両100A~100Eを1台ずつ遠隔制御により走行させる。例えば、遠隔制御部210は、車両100Bを遠隔制御により第2場所PL2から第3場所PL3に移動させた後、遠隔制御対象を車両100Bから車両100Aに切り替えて、車両100Aを遠隔制御により第1場所PL1から第2場所PL2に移動させる。本実施形態では、遠隔制御部210は、複数の車両100A~100Eを同時並列的に遠隔制御により走行させることもできる。例えば、遠隔制御部210は、車両100Bを遠隔制御により第2場所PL2から第3場所PL3に移動させつつ、車両100Aを遠隔制御により第1場所PL1から第2場所PL2に移動させることもできる。
【0022】
第3場所PL3に移動した各車両100A~100Eは、その後、工場KJから出荷される。各車両100A~100Eは、遠隔制御機能が可逆的あるいは不可逆的に無効化された状態で出荷される。可逆的に無効化されるとは、再び有効化できるように無効化されることを意味し、不可逆的に無効化されるとは、再び有効化できないように無効化されることを意味する。遠隔制御機能が可逆的に無効化された状態で出荷された車両100は、工場KJ外の遠隔制御装置200および外部センサ群300が設置されている場所において、遠隔制御機能が再び有効化され、遠隔制御により走行することができる。工場KJ外の遠隔制御装置200および外部センサ群300が設置されている場所は、例えば、公園、商業施設、大学などである。
【0023】
図4は、遠隔制御機能が可逆的に無効化された車両100において実行される有効化処理の内容を示すフローチャートである。
図5は、遠隔制御装置200において実行される対象追加処理の内容を示すフローチャートである。
図6は、車両100の遠隔制御機能が有効化される様子を示す説明図である。
図4から
図6を用いて、車両100の遠隔制御方法について説明する。
【0024】
図4に示す有効化処理は、車両100に搭載されている車両制御装置110により繰り返し実行される。有効化処理が開始されると、ステップS110にて、検出部116は、遠隔制御装置200が他車両を遠隔制御するために送信した制御信号を検出したか否かを判定する。ステップS110において遠隔制御装置200が他車両を遠隔制御するために送信した制御信号を検出したと判定されなかった場合には、車両制御装置110は、ステップS110後の処理をスキップして、有効化処理を終了する。ステップS110において遠隔制御装置200が他車両を遠隔制御するために送信した制御信号を検出したと判定された場合には、制御信号受付部117は、ステップS120にて、無効状態から有効状態に切り替わる。換言すれば、ステップS120にて、自車両の遠隔制御機能が有効状態に切り替わる。ステップS130にて、報知部118は、自車両の遠隔制御機能が有効状態であることを報知する報知信号を送信する。本実施形態では、報知信号には、自車両の車両識別情報SJと、自車両の遠隔制御機能が有効状態であることを示す情報と、遠隔制御装置200の対象リストLSに自車両を追加することを要求する対象追加要求とが含まれている。その後、車両制御装置110は、有効化処理を終了する。なお、ステップS110のことを検出工程と呼び、ステップS120のことを切替工程と呼び、ステップS130のことを報知工程と呼ぶことがある。
【0025】
図5に示す対象追加処理は、遠隔制御装置200により繰り返し実行される。対象追加処理が開始されると、ステップS210にて、遠隔制御部210は、報知信号を受信したか否かを判定する。ステップS210において報知信号を受信しなかったと判定された場合には、遠隔制御部210は、ステップS210後の処理をスキップして、対象追加処理を終了する。ステップS210において報知信号を受信したと判定した場合には、遠隔制御部210は、ステップS220にて、報知信号を送信した車両100を対象リストLSに追加する。本実施形態では、遠隔制御部210は、報知信号に含まれている車両100の車両識別情報SJを対象リストLSに追加する。その後、遠隔制御装置200は、対象追加処理を終了する。
【0026】
図6に示すように、遠隔制御機能が可逆的に無効化された状態で工場KJから出荷された車両100Aが、工場KJ外の遠隔制御装置200が設置されている場所ARに移動し、遠隔制御装置200が他車両100Fを遠隔制御するための制御信号SSを車両100Aが受信した場合、有効化処理により、車両100Aの遠隔制御機能が自動的に有効化される。遠隔制御機能が有効化された車両100Aは、対象追加要求を含む報知信号HSを送信する。報知信号HSを受信した遠隔制御装置200は、対象追加処理により、対象リストLSに車両100Aを追加する。遠隔制御装置200は、対象リストLSに追加された車両100Aの目標ルートを決定することにより、車両100Aの遠隔制御による移動を準備する。その後、遠隔制御装置200は、車両100Aを遠隔制御するための制御信号を生成し、制御信号を車両100Aに送信する。遠隔制御装置200が制御信号を車両100Aに送信することにより、車両100Aの遠隔制御による移動が開始される。
【0027】
以上で説明した本実施形態における遠隔制御システム10によれば、遠隔制御機能が可逆的に無効化されている車両100が、遠隔制御装置200から送信された他車両を遠隔制御するための制御信号SSを検出した場合に、車両100の遠隔制御機能が自動的に有効化される。したがって、ユーザの手間をかけずに車両100を遠隔制御により動作可能にすることができる。
【0028】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態の遠隔制御システム10bにおいて実行される有効化処理の内容を示すフローチャートである。
図8は、第2実施形態の遠隔制御システム10bにおいて実行される対象追加処理の内容を示すフローチャートである。
図9は、第2実施形態の遠隔制御システム10bにおいて車両100の遠隔制御機能が有効化される様子を示す説明図である。第2実施形態の遠隔制御システム10bでは、車両100が遠隔制御装置200から有効化信号を受信した場合に、車両100の遠隔制御機能が有効化されることが第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0029】
図7に示す有効化処理が開始されると、ステップS310にて、検出部116は、遠隔制御装置200が他車両を遠隔制御するために送信した制御信号を検出したか否かを判定する。ステップS310において遠隔制御装置200が他車両を遠隔制御するために送信した制御信号を検出したと判定されなかった場合には、車両制御装置110は、ステップS310後の処理をスキップして、有効化処理を終了する。ステップS310において遠隔制御装置200が他車両を遠隔制御するために送信した制御信号を検出したと判定された場合には、報知部118は、ステップS320にて、自車両の存在を遠隔制御装置200に報知するための報知信号を送信する。本実施形態では、報知信号には、自車両の車両識別情報SJが含まれている。ステップS330にて、制御信号受付部117は、報知信号に応じて遠隔制御装置200から送信される有効化信号を取得する。ステップS340にて、制御信号受付部117は、有効化信号に応じて無効状態から有効状態に切り替わる。その後、車両制御装置110は、有効化処理を終了する。なお、ステップS310のことを検出工程と呼び、ステップS320のことを報知工程と呼び、ステップS330からステップS340までのことを切替工程と呼ぶことがある。
【0030】
図8に示す対象追加処理が開始されると、ステップS410にて、遠隔制御部210は、報知信号を受信したか否かを判定する。ステップS410において報知信号を受信しなかったと判定された場合には、遠隔制御部210は、ステップS410後の処理をスキップして、対象追加処理を終了する。ステップS410において報知信号を受信したと判定された場合には、遠隔制御部210は、ステップS420にて、報知信号を送信した車両100を対象リストLSに追加する。ステップS430にて、遠隔制御部210は、報知信号を送信した車両100の遠隔制御機能を有効化するための有効化信号を送信する。その後、遠隔制御装置200は、対象追加処理を終了する。
【0031】
図9に示すように、遠隔制御機能が可逆的に無効化された状態で工場KJから出荷された車両100Aが、工場KJ外の遠隔制御装置200が設置されている場所ARに移動し、遠隔制御装置200が他車両100Fを遠隔制御するための制御信号SSを車両100Aが受信した場合、有効化処理により、車両100Aは、自身の存在を遠隔制御装置200に報知するための報知信号HSを送信する。報知信号HSを受信した遠隔制御装置200は、対象追加処理により、対象リストLSに車両100Aを追加し、車両100Aの遠隔制御機能を有効化するための有効化信号YSを送信する。車両100Aが有効化信号YSを受信した場合に、車両100Aの遠隔制御機能が自動的に有効化される。遠隔制御装置200は、対象リストLSに追加された車両100Aの遠隔制御による移動を準備または開始する。
【0032】
以上で説明した本実施形態における遠隔制御システム10bによれば、遠隔制御機能が可逆的に無効化されている車両100が、遠隔制御装置200から送信された有効化信号YSを検出した場合に、車両100の遠隔制御機能が自動的に有効化される。したがって、ユーザの手間をかけずに車両100を遠隔制御により動作可能にすることができる。
【0033】
C.他の実施形態:
(C1)上述した各実施形態の遠隔制御システム10~10bでは、遠隔制御装置200が他車両を遠隔制御するために送信した制御信号を検出部116が検出した場合に、車両の遠隔制御機能が有効化される。これに対して、遠隔制御装置200が自車両を遠隔制御するために送信した制御信号を検出部116が検出した場合に、車両100の遠隔制御機能が有効化されてもよい。制御信号ではなく、単に遠隔制御装置200が稼働中であることを示す信号を検出部116が検出した場合に、車両の遠隔制御機能が有効化されてもよい。遠隔制御装置200が稼働中であることを示す信号は、遠隔制御装置200以外の装置から送信されてもよい。
【0034】
(C2)上述した第1実施形態の遠隔制御システム10において、車両制御装置110は、報知部118を備えていなくてもよい。この場合、例えば、遠隔制御装置200に接続された入力装置をユーザが操作することにより、車両100の車両識別情報SJが対象リストLSに追加されてもよい。
【0035】
(C3)上述した各実施形態の遠隔制御システム10~10bでは、第1場所PL1での組立作業が終了した時点で、車両100は、遠隔制御により移動可能な状態となっている。車両100が遠隔制御により移動可能な状態とは、車両100が車両制御装置110とアクチュエータ群120と通信装置130とを備えており、遠隔制御により「走る」、「曲がる」、「止まる」の3つの機能を発揮可能な状態のことを意味する。したがって、遠隔制御による移動中の車両100には、運転席やダッシュボードなどの内装部品の少なくとも一部が取り付けられていなくてもよいし、バンパーやフェンダーなどの外装部品の少なくとも一部が取り付けられていなくてもよいし、ボディシェルが取り付けられていなくてもよい。この場合、車両100が工場KJから出荷されるまでの間にボディシェル等の残りの部品が車両100に取り付けられてもよいし、工場KJから出荷された後にボディシェル等の残りの部品が車両100に取り付けられてもよい。
【0036】
(C4)上述した各実施形態の遠隔制御システム10~10bでは、遠隔制御部210は、車両100に送信する制御信号を自動で生成している。これに対して、遠隔制御部210は、車両100の外部に位置しているオペレータの操作に従って、車両100に送信する制御信号を生成してもよい。例えば、車両100の位置および向きを表示するディスプレイ、車両100を操作するためのステアリング、アクセルペダル、および、ブレーキペダルを備える運転装置をオペレータが操作し、遠隔制御部210は、運転装置に加えられた操作に応じて制御信号を生成してもよい。
【0037】
(C5)上述した各実施形態の遠隔制御システム10~10bにおいて、外部センサ群300には、カメラに代えてLiDAR(Light Detection and Ranging)が含まれてもよいし、カメラとLiDARとが含まれてもよい。
【0038】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10~10b…遠隔制御システム、100…車両、110…車両制御装置、111…プロセッサ、112…メモリ、113…入出力インタフェース、114…内部バス、115…車両制御部、116…検出部、117…制御信号受付部、118…報知部、120…アクチュエータ群、130…通信装置、200…遠隔制御装置、201…プロセッサ、202…メモリ、203…入出力インタフェース、204…内部バス、205…通信装置、210…遠隔制御部、300…外部センサ群