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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174560
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】負荷駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092451
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】高橋 すみか
(72)【発明者】
【氏名】丸林 洋輝
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036BA36
2G036CA06
(57)【要約】
【課題】電源電圧が変動しても、誘導性負荷のインダクタンスが増大したことを確実に検出できる負荷駆動装置を提供する。
【解決手段】負荷駆動装置1において、積分回路8は、直流電源2の電圧VBと、抵抗素子6及びダイオード7を介したFET4のドレイン電圧との差電圧を、FET4がターンオフしてから所定の時定数で積分する。マイコン9は、その積分の結果が所定の範囲を超えるとL負荷3の異常を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(2)とグランドとの間に、誘導性負荷(3)と共に直列に接続されるローサイドスイッチ(4)と、
前記電源の電圧と、前記ローサイドスイッチの負荷側電圧との差分を、当該ローサイドスイッチがターンオフしてから所定の時定数で積分する積分実行部(8)と、
前記積分の結果が所定の範囲を超えると、前記誘導性負荷の異常を検出する異常検出部(9,25)と、を備える負荷駆動装置。
【請求項2】
前記積分実行部は、コンデンサ(5)及び抵抗素子(6)からなる積分回路を備え、
前記積分回路及び遅れ電流通電部(7,22,33)の直列回路を、前記誘導性負荷に並列に接続する請求項1記載の負荷駆動装置。
【請求項3】
前記遅れ電流通電部は、ダイオード(7)である請求項2記載の負荷駆動装置。
【請求項4】
前記ダイオードは、定電流ダイオード(22)である請求項3記載の負荷駆動装置。
【請求項5】
前記遅れ電流通電部は、電圧バッファ回路(33)である請求項2記載の負荷駆動装置。
【請求項6】
前記コンデンサに充電された電荷を放電させる放電部(23)を備える請求項2から5の何れか一項に記載の負荷駆動装置。
【請求項7】
前記所定の範囲は、前記積分実行部により予め実行された積分結果に基いて決定されている請求項1記載の負荷駆動装置。
【請求項8】
前記所定の範囲は、前記積分実行部により前回に実行された積分結果に基いて決定される請求項1記載の負荷駆動装置。
【請求項9】
前記所定の範囲は、前記積分実行部により現時点までに実行された複数回の積分結果の平均値に基いて決定されている請求項1記載の負荷駆動装置。
【請求項10】
前記電源は、二次電池で構成され、
前記所定の範囲は、前記電源に最初に充電が行われた以降に、前記積分実行部により実行される連続した2回の積分結果の差について設定されている請求項1記載の負荷駆動装置。
【請求項11】
前記異常が検出された際に、前記ローサイドスイッチによる前記誘導性負荷の駆動を停止させる駆動停止部(9、25)を備える請求項1記載の負荷駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導性負荷をローサイド駆動する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、誘導性負荷としてリレー等のコイルを駆動する装置においては、リレーの接点がオフして固着した状態を検出することが要求されている。リレーの接点がオフして固着すると、誘導性負荷のインダクタンスが増大する。そのインダクタンスが増大した状態を検出するには、例えば、ローサイドスイッチがターンオフした際に発生するフライバック電圧の波形を観測して、フライバック時間の長さを判定することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-10563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フライバック時間の長さは電源電圧に依存するため、電源電圧が変動すると誤検出が発生するおそれがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源電圧が変動しても、誘導性負荷のインダクタンスが増大したことを確実に検出できる負荷駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の負荷駆動装置によれば、積分実行部(8)は、電源(2)の電圧と誘導性負荷(3)をローサイド駆動するスイッチ(4)の負荷側電圧との差分を、当該ローサイドスイッチがターンオフしてから所定の時定数で積分する。異常検出部(9,25)は、その積分の結果が所定の範囲を超えると誘導性負荷の異常を検出する。上記の積分の結果は、ローサイドスイッチがターンオフした際に発生するフライバック電圧のエネルギー;フライバックエネルギーを反映したものとなる。このように、フライバックエネルギーの大きさを評価することで、電源電圧が変動してもその影響を受けることなく、誘導性負荷のインダクタンスが増大したことを検出できる。
【0006】
請求項2記載の負荷駆動装置によれば、コンデンサ(5)及び抵抗素子(6)からなる積分回路、並びに遅れ電流通電部(7,22,33)の直列回路を誘導性負荷に並列に接続する。このように構成すれば、誘導性負荷のフライバックエネルギーを、コンデンサに充電された電圧で評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態であり、負荷駆動装置の構成を示す図
図2】ローサイドスイッチがターンオフした際に、L負荷のインダクタンスが正常である場合の積分電圧波形を示す図
図3】ローサイドスイッチがターンオフした際に、L負荷のインダクタンスが異常である場合の積分電圧波形を示す図
図4】第2実施形態であり、負荷駆動装置の構成を示す図
図5】マイコンによる制御内容を示すフローチャート
図6】第3実施形態であり、負荷駆動装置の構成を示す図
図7】第4実施形態であり、正常、異常を判定するための範囲の設定処理を示す図
図8】第5実施形態であり、正常、異常を判定するための範囲の設定処理を示す図
図9】第6実施形態であり、正常、異常を判定するための範囲の設定処理を示す図
図10】第7実施形態であり、正常、異常を判定するための範囲の設定処理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の負荷駆動装置1は、一端が直流電源2の正側端子に接続された誘導性負荷3を、ローサイドスイッチであるNチャネルMOSFET4により駆動する。以下、誘導性負荷3をL負荷3と称する。直流電源2は、例えば車両のバッテリ等であり、車両の走行中は電圧が頻繁に変動する。L負荷3は、例えばリレーコイル等である。L負荷3には、コンデンサ5、抵抗素子6、及び逆方向のダイオード7の直列回路が並列に接続されている。遅れ電流通電部であるダイオード7のアノードは、FET4のドレインに接続されている。コンデンサ5及び抵抗素子6は、積分回路8を構成している。
【0009】
マイクロコンピュータ;マイコン9は、抵抗素子10を介してFET4のゲートを駆動する。FET4のソースはグランドに接続されており、L負荷3は、FET4によりローサイド駆動される。FET4をターンオフした際に、L負荷3が発生させる遅れ電流は、ダイオード7を介して積分回路8側に流れる。積分回路8は、積分実行部に相当する。
【0010】
コンデンサ5の両端は、それぞれ抵抗素子11,12を介してオペアンプ13の反転入力端子、非反転入力端子に接続されている。オペアンプ13の出力端子は、マイコン9に内蔵されているA/Dコンバータの入力端子に接続されている。オペアンプ13の反転入力端子と出力端子との間には、抵抗素子14が接続されている。オペアンプ13の非反転入力端子とグランドとの間には、抵抗素子15が接続されている。これにより、差動増幅器16が構成されている。
【0011】
差動増幅器16を介して、異常検出部に相当するマイコン9に入力されるコンデンサ5の端子電圧は、直流電源2の電圧VBと、抵抗素子6及びダイオード7を介したFET4のドレイン電圧との差電圧を、積分回路8の時定数により積分した電圧となっている。
【0012】
次に、本実施形態の作用について説明する。ここで、図2図3に示す各パラメータは以下になる。
・ブレイク電圧BV:フライバック電圧
・VBa_max:電圧VBの最大値
・VBa_min:電圧VBの最小値
・Ta_max:電圧VB=VBa_maxで、L負荷3のインダクタンスが正常な場合のフライバック電圧の発生時間
・Ta_min:電圧VB=VBa_minで、L負荷3のインダクタンスが正常な場合のフライバック電圧の発生時間
・Tb_max:電圧VB=VBa_maxで、L負荷3のインダクタンスが異常な場合のフライバック電圧の発生時間
・Tb_min:電圧VB=VBa_minで、L負荷3のインダクタンスが異常な場合のフライバック電圧の発生時間
【0013】
図2図3に示すように、直流電源2の電圧VBがVBa_max~VBa_minの範囲で変動するとしても、フライバックエネルギーに相当する所定の時定数で積分された電圧は、一定の値に収束する。L負荷3のインダクタンスが正常な場合の積分電圧V1に対して、同異常な場合の積分電圧V2はより高くなる。これにより、正常、異常の判定を行う。
【0014】
以上のように本実施形態によれば、負荷駆動装置1において、積分回路8は、直流電源2の電圧VBと、抵抗素子6及びダイオード7を介したFET4のドレイン電圧との差電圧を、FET4がターンオフしてから所定の時定数で積分する。マイコン9は、その積分の結果が所定の範囲を超えるとL負荷3の異常を検出する。このように、フライバックエネルギーの大きさを積分結果として評価することで、電圧VBが変動してもその影響を受けることなく、L負荷3のインダクタンスが増大したことを検出できる。
【0015】
より具体的には、コンデンサ5及び抵抗素子6からなる積分回路8、並びに逆方向のダイオード7の直列回路をL負荷3に並列に接続する。このように構成すれば、L負荷3のフライバックエネルギーを、コンデンサ5に充電された電圧で
評価することができる。
【0016】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図4に示すように、第2実施形態の負荷駆動装置21では、ダイオード7を定電流ダイオード22に置き換えている。また、コンデンサ5及び抵抗素子6の共通接続点とグランドとの間に、NチャネルMOSFET23が接続されている。放電部に相当するFET23のゲートは、抵抗素子24を介して、マイコン9に替わるマイコン25により駆動される。
【0017】
次に、第2実施形態の作用について説明する。以下で、括弧内の名称は、図5に示すフローチャートで示されているものに対応する。図2に示すように、マイコン25は、FET4(SW)をオンした後オフさせると(S1,S2)、コンデンサ5(C1)の端子電圧をA/D変換して計測する(S3)。そして、計測した電圧が、所定の範囲内にあるか印加によって異常判定を行う(S4)。
【0018】
「異常なし」であれば、マイコン25は、測定した積分電圧の値をメモリに記憶する(S6)。それから、FET23をオンにしてコンデンサ5の電荷を放電させると(S7)、ステップS4の判定結果が「異常なし」であれば(S8)、ステップS1に戻る。一方、ステップS4の判定結果が「異常あり」であれば、その判定結果を、例えば上位の制御装置等に通知してから(S5)ステップS6に移行する。尚、第1実施形態の場合は、上記の処理からステップS7を除いたものとなる。マイコン9及び25は、駆動停止部に相当する。
【0019】
以上のように第2実施形態によれば、L負荷3の異常判定を行うと、FET23をオンにしてコンデンサ5の電荷を放電させるので、次の積分動作を速やかに実行できる。また、フライバックエネルギーは電流にも依存するので、定電流ダイオード22を用いることで、測定精度をより向上させることができる。
【0020】
(第3実施形態)
図6に示す第3実施形態の負荷駆動装置31は、第2実施形態の構成における定電流ダイオード22を、オペアンプ32で構成される電圧バッファ回路33に置き換えたものである。このように構成すれば、ダイオード7や定電流ダイオード22を用いた場合のように、順方向電圧による電圧降下の影響がないので、測定精度を更に向上させることができる。
【0021】
(第4実施形態)
以下に示す第4~第7実施形態は、ステップS4における異常判定のバリエーションを示す。図7に示す第4実施形態は、例えば負荷駆動装置1について、工場より出荷する前の段階で予め積分電圧を測定し、その測定結果を基準として正常と判定する範囲を設定する。
【0022】
(第5実施形態)
図8に示す第5実施形態は、前回測定した積分電圧を基準として、次回に正常と判定する範囲を設定する。
【0023】
(第6実施形態)
図9に示す第6実施形態は、工場出荷時から測定した積分電圧について測定を行なう毎に平均値を求め、その平均値を基準として次回に正常と判定する範囲を設定する。
【0024】
(第7実施形態)
図10に示す第7実施形態は、直流電源2を最初に充電した以降に、前回測定した積分電圧と今回積分した積分結果との傾きを求め、その傾きについて次回に正常と判定する範囲を設定する。
【0025】
(その他の実施形態)
ローサイドスイッチは、NチャネルMOSFETに限らない。
異常が検出された際に、ローサイドスイッチによる誘導性負荷の駆動を停止させる処理は、必要に応じて行えば良い。
第4~第7実施形態を、第2~第3実施形態に適用しても良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0026】
図面中、1は負荷駆動装置、2は直流電源、3は誘導性負荷、4はNチャネルMOSFET、5はコンデンサ、6は抵抗素子、7はダイオード、8は積分回路、9はマイクロコンピュータ、16は差動増幅器を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10