(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174566
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】補助工具及びこれを用いたシート状床仕上げ材の切断方法
(51)【国際特許分類】
E04F 21/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
E04F21/00 A
E04F21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092457
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 勝信
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小林 基夫
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シート状床仕上げ材を隣接する床仕上げ材の端部に合致した形状に切断加工できる補助工具と切断方法を提供する。
【解決手段】補助工具は第1面及び第1面に対向する第2面を有する平板部2と、平板部2の第1面と第2面を貫通する直線状の貫通孔3と、第2面から垂直方向に突出する第1の突出部4を有する。第2面のスペーサ部材貼り付け面5に、隣接する床仕上げ材10と同じ厚さで、同じ材質であるスペーサ部材11を貼り付け、第1の突出部4が隣接する床仕上げ材10の側面に突き当たるように補助工具を配置し、補助工具を隣接する床仕上げ材10の端部に沿って移動させながら切断作業を行うことにより、シート状床仕上げ材9を隣接する床仕上げ材10の端部に合致した形状に切断加工できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状床仕上げ材の切断に用いる補助工具であって、
第1面及び前記第1面に対向する第2面を有する平板部と、
前記平板部の前記第1面と第2面を貫通する直線状の貫通孔と、
前記第2面から垂直方向に突出する第1の突出部とを有し、
前記第1の突出部は、前記貫通孔の一方の直線状の端部に沿って設けられ、
前記第2面の前記貫通孔の他方の直線状の端部側は、スペーサ部材貼り付け面であることを特徴とする補助工具。
【請求項2】
前記第2面から垂直方向に突出する第2の突出部を有し、
前記第2の突出部は前記貫通孔の他方の直線状の端部に沿って、前記第1の突出部に対向するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の補助工具。
【請求項3】
前記第1面から垂直方向に突出する第3の突出部を有し、
前記第3の突出部は前記貫通孔の一方又は他方の直線状の端部に沿って設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の補助工具。
【請求項4】
請求項1に記載された補助工具を用いて、シート状床仕上げ材を隣接する床仕上げ材の端部の形状に合わせて切断する方法であって、
前記隣接する床仕上げ材と同じ厚さで、同じ材質であるスペーサ部材を準備する工程と、
前記スペーサ部材貼り付け面に、前記スペーサ部材を貼り付ける工程と、
前記シート状床仕上げ材の端部の上に、前記隣接する床仕上げ材の端部を重ねる工程と、
前記スペーサ部材が前記シート状床仕上げ材に対向するとともに、前記第1の突出部が隣接する床仕上げ材の側面に突き当たるように前記補助工具を配置する工程と、
前記補助工具を前記隣接する床仕上げ材の端部に沿って移動させる工程とを有することを特徴とするシート状床仕上げ材の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート状床仕上げ材の切断に用いる補助工具と、補助工具を用いたシート状床仕上げ材の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床の仕上げ工事では、下地である床面の上に床仕上げ材を敷設する。複数のシート状の床仕上げ材を下地の上に並べて敷設する場合、床仕上げ材と床仕上げ材の継ぎ目である目地を均一な間隙にするため、一方の床仕上げ材の端部を、他方の床仕上げ材の端部を基準にして合致した形状に切断加工することが行われる(本発明において以下、端部が切断加工される一方の床仕上げ材を「シート状床仕上げ材」と称し、切断加工の基準となる他方の床仕上げ材を「隣接する床仕上げ材」と称する。)。
【0003】
従来、シート状床仕上げ材を隣接する床仕上げ材の端部の形状に合致するように切断する場合には、落とし込み又は重ね落としと呼ばれる方法が用いられる。この方法では
図5に示すように、隣接する床仕上げ材10の端部の上に、シート状床仕上げ材9の端部を重ね合わせた状態で配置し、隣接する床仕上げ材10の端部の形状に合わせて、シート状床仕上げ材9にケガキ針を用いて傷を付ける。そして、ケガキ針による傷12を目印にして、カッター刃やハサミ等の切断工具でシート状床仕上げ材9を切断する。また、特許文献1には隣接する床仕上げ材の側面にガイド部を沿わせながら、シート状床仕上げ材を切断加工する切断工具と切断方法が提案されている。
【0004】
しかし、従来の切断方法では、不慣れな作業者が切断作業を行うと、隣接する床仕上げ材を誤って傷つけたり、切断してしまう等のおそれや、作業者の熟練度により切断加工の精度が左右されるという問題がある。また、特許文献1のような切断工具を用いる場合にも、刃やケガキ針の位置を適切に調整する必要がある。このため、施工現場等でシート状床仕上げ材を切断するのには、作業者の熟練を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、作業者の熟練を要すことなく、シート状床仕上げ材を隣接する床仕上げ材の端部に合致した形状に切断加工できる補助工具と、この補助工具を用いたシート状床仕上げ材の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の補助工具は、シート状床仕上げ材の切断に用いる補助工具であって、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有する平板部と、前記平板部の前記第1面と第2面を貫通する直線状の貫通孔と、前記第2面から垂直方向に突出する第1の突出部とを有し、 前記第1の突出部は、前記貫通孔の一方の直線状の端部に沿って設けられ、前記第2面の前記貫通孔の他方の直線状の端部側は、スペーサ部材貼り付け面であることを特徴とする。
【0008】
(2)(1)の補助工具において、前記第2面から垂直方向に突出する第2の突出部を有し、前記第2の突出部は前記貫通孔の他方の直線状の端部に沿って、前記第1の突出部に対向するように設けられていることを特徴とする。
【0009】
(3)(1)又は(2)において、前記第1面から垂直方向に突出する第3の突出部を有し、前記第3の突出部は前記貫通孔の一方又は他方の直線状の端部に沿って設けられていることを特徴とする。
【0010】
(4)本発明のシート状床仕上げ材の切断方法は、(1)に記載された補助工具を用いて、シート状床仕上げ材を隣接する床仕上げ材の端部の形状に合わせて切断する方法であって、 前記隣接する床仕上げ材と同じ厚さで、同じ材質であるスペーサ部材を準備する工程と、 前記スペーサ部材貼り付け面に、前記スペーサ部材を貼り付ける工程と、前記シート状床仕上げ材の端部の上に、前記隣接する床仕上げ材の端部を重ねる工程と、前記スペーサ部材が前記シート状床仕上げ材に対向するとともに、前記第1の突出部が隣接する床仕上げ材の側面に突き当たるように前記補助工具を配置する工程と、前記補助工具を前記隣接する床仕上げ材の端部に沿って移動させる工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業者の熟練を要すことなく、シート状床仕上げ材を隣接する床仕上げ材の端部に合致した形状に切断加工できる補助工具と、この補助工具を用いたシート状床仕上げ材の切断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】第2の実施形態と第3の実施形態の断面図である。
【
図4】補助工具を用いた切断作業の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたものでこれらにより本発明を限定するものではない。
【0014】
本発明の補助工具の第1の実施形態を
図1、2に示す。
図1(a)は補助工具1の斜視図であり、
図1(b)は補助工具1のA-A断面図である。また、
図2(a)は補助工具1を第1面から見た図であり、
図2(b)は補助工具1を第2面から見た図である。
【0015】
補助工具1は第1面及び第1面に対向する第2面を有する平板部2と、平板部2の第1面と第2面を貫通する直線状の貫通孔3と、第2面から垂直方向に突出する第1の突出部4を有する。第1の突出部4は
図1(b)及び
図2(b)に示すように、貫通孔3の一方の直線状の端部に沿って設けられている。第1の突出部4が設けられていない、第2面の貫通孔3の他方の直線状の端部側の領域は、スペーサ部材貼り付け面5となっている。
【0016】
補助工具1の平板部2と第1の突出部4は、カッター刃等の切断工具の刃では容易に切断できない、金属や硬質プラスチックで形成されている。平板部2の厚さは0.5 mm以上、10 mm以下が好ましく、平板部2の縦横の長さは、それぞれ50mm以上であることが好ましい。直線状の貫通孔3は、切断工具の刃やケガキ針等を挿入して作業するための孔である。貫通孔3の幅はカッター刃やケガキ針等を挿入できる幅を有する。貫通孔3の長さは特に限定されない。
【0017】
第1の突出部4は隣接する床仕上げ材10の側面に突き当て、補助工具1を隣接する床仕上げ材10の端部の形状に沿ってガイドするためのものである。第1の突出部4を隣接する床仕上げ材10の側面に突き当てることにより、常に貫通孔3の位置を隣接する床仕上げ材10の端部から第1の突出部4の幅だけ離れた位置に定めることができる。第1の突出部4の突出する高さは、隣接する床仕上げ材10の厚さより小さければ特に限定されないが、作業性をよくするために0.5mm以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の補助工具1は補助工具1を安定させるために、スペーサ部材貼り付け面5にスペーサ部材11を貼り付けて使用する。スペーサ部材11は隣接する床仕上げ材10と同じ厚さで、同じ材質であることが好ましい。このようなスペーサ部材11としては、例えば隣接する床仕上げ材10の破材を用いることができる。
【0019】
図3(a)は第2の実施形態の補助工具1の断面図を示す図である。第2の実施形態では、平板部2の第2面から垂直方向に突出する第2の突出部6を備える点が、第1の実施形態とは異なる。第2の突出部6は、貫通孔3の他方の直線状の端部に沿って、第1の突出部4に対向するように設けられており、貫通孔3が第1の突出部4と第2の突出部6に挟まれた配置になっている。
【0020】
第2の突出部6はスペーサ部材貼り付け面5にスペーサ部材11を貼り付ける際の目印となるもので、第2の突出部6にスペーサ部材11を突き当てるようにして貼り付ければ、スペーサ部材11が貫通孔3を塞いでしまうようなことは起こらない。第2の突出部6の突出する高さは、隣接する床仕上げ材10の厚さより小さければ特に限定されないが、第1の突出部4と同程度の高さで、0.5mm以上であることが好ましい。
【0021】
補助工具1の第3の実施形態を
図3(b)に示す。第3の実施形態は平板部2の第1面に、垂直方向に突出する第3の突出部7が設けられている点が、第2の実施形態とは異なる。第3の突出部7は貫通孔3にカッター刃やケガキ針を挿入する際のガイドとなるものである。なお、
図3(b)では第3の突出部7を貫通孔3の他方の直線状の端部に沿って、第2の突出部6に重なる様に設けているが、第3の突出部7を貫通孔3の一方の直線状の端部に沿って、第1の突出部4に重なるように設けてもよい。また、2つの第3の突出部7を貫通孔3の両側に対向するように設けてもよく、この場合は対向する第3の突出部7の突出高さには、1mm以上の差を設けるのが好ましい。また、
図3(b)では平板部2の第2面に第1の突出部4と第2の突出部6を設けているが、第2の突出部6を設けずに第3の突出部7を設けることもできる。この場合、補助工具1は第1の実施形態に第3の突出部7を設けた構造となる。
【0022】
次に、本発明の補助工具1を用いて、シート状床仕上げ材9を切断する方法について説明する。
【0023】
まず、隣接する床仕上げ材10と同じ厚さ、同じ材質のスペーサ部材11を準備する。スペーサ部材11としては、例えば隣接する床仕上げ材10の破材を、適当な大きさに切断したものを準備すればよい。次に準備したスペーサ部材11を、第2面のスペーサ部材貼り付け面5に貼り付ける。スペーサ部材11の貼り付けには、両面粘着テープや粘着材を用いることができるが、シート状床仕上げ材9の切断作業が終了した後に、スペーサ部材11を容易に剥がせるものが好ましい。
【0024】
図1、2に示す第1の実施形態の補助工具1を用いた切断作業の様子を、
図4(a)、(b)に示す。まず、
図4(a)に示すように、シート状床仕上げ材9の端部の上に、隣接する床仕上げ材10の端部を重ねる。そして、スペーサ部材11を貼り付けた補助工具1を、スペーサ部材11が切断するシート状床仕上げ材9に対向するとともに、第1の突出部4が隣接する床仕上げ材10の側面に突き当たるように補助工具1を配置する。
【0025】
このように補助工具1を配置した状態の断面を、
図4(b)に示す。
図4(b)に示すように、シート状床仕上げ材9と隣接する床仕上げ材10の重なりにより段差ができるが、スペーサ部材11が貼り付けられていることにより、補助工具1の平板部2はシート状床仕上げ材9と平行に配置される。平板部2が隣接する床仕上げ材10とスペーサ部材11により支持されるので、補助工具1が安定し切断作業を正確に効率よく行うことができる。
【0026】
次に、貫通孔3からカッター刃8を挿入して、シート状床仕上げ材9を切断する。切断しながら、第1の突出部4が隣接する床仕上げ材10の側面に突き当たるように補助工具1を移動させることで、補助工具1は隣接する床仕上げ材10の端部に沿って移動する。このように作業することで、隣接する床仕上げ材10の端部に合致した形状に、シート状床仕上げ材9を切断加工することができる。
【0027】
隣接する床仕上げ材10の表面と側面は、それぞれ平板部2と第1の突出部4で覆われ保護されているので、カッター刃8の操作を誤り傷つけたり切断したりするおそれはない。また、補助工具1はシート状床仕上げ材9に、ケガキ針で目印となる傷を付ける作業に用いることもできる。この場合は、カッター刃8の代わりに貫通孔3からケガキ針を挿入し、シート状床仕上げ材9に傷を付け、補助工具1を外した後にハサミやカッター刃等でシート状床仕上げ材9を切断すればよい。
【0028】
実施例として第1の実施形態の補助工具1を亜鉛鋼板で作製し、シート状床仕上げ材9の切断加工を行った。実施例1として、100mm×80mm×1mmの平板部2の長辺と平行に、端から30mmの位置に幅0.55mm、長さ80mmの貫通孔3を設け、貫通孔3に沿って平行に突出高さ1.4mm、幅0.3mmの第1の突出部4を設けた補助工具1を作製した。また、実施例2として実施例1と同じ平板部2の貫通孔3に沿って平行に突出高さ1.4mm、幅0.4mmの突出部4を有する補助工具1を作製した。
【0029】
作製した補助工具1を用いてシート状床仕上げ材9を切断加工した。そして、下地である床面の上にシート状床仕上げ材9と隣接する床仕上げ材10を並べて敷設し、目地の出来栄えを調べた。シート状床仕上げ材9と隣接する床仕上げ材10には、厚み2.0mmの高分子系の床仕上げ材(田島ルーフィング株式会社製メディウェル)を準備した。
【0030】
まず、100mm×50mmの高分子系の床仕上げ材をスペーサ部材11として切取り、実施例1の補助工具1のスペーサ部材貼り付け面5に貼り付けた。次に、幅1.8m、長さ3mの、シート状床仕上げ材9と隣接する床仕上げ材10を、幅2cm、長さ3mの領域で重ね合わさる様に並べて配置し、隣接する床仕上げ材10の端部に沿って、補助工具1を移動させながらカッター刃8でシート状床仕上げ材9を切断した。そして、下地である床面の上に、切断したシート状床仕上げ材9と隣接する床仕上げ材10を並べて敷設し目地を形成した。また、実施例2の補助工具1を用いて、実施例1と同様の手順でシート状床仕上げ材9を切断加工し目地を形成した。
【0031】
目地の出来栄えとして、目地の間隙のばらつきを調べた結果、実施例1、2のどちらの補助工具1を用いた場合でも、間隙のばらつきは0.1mm以内であり、均一な間隙の目地を形成することができた。
【0032】
以上のように、本発明の補助工具を用いれば、熟練の作業者でなくてもシート状床仕上げ材の切断を容易かつ正確に行うことが可能となり、均一な間隙の目地を仕上げることができる。なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 補助工具
2 平板部
3 貫通孔
4 第1の突出部
5 スペーサ部材貼り付け面
6 第2の突出部
7 第3の突出部
8 カッター刃
9 シート状床仕上げ材
10 隣接する床仕上げ材
11 スペーサ部材
12 ケガキ針による傷