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特開2024-174567青果の注文配送システム及び注文配送方法並びに青果栽培施設
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174567
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】青果の注文配送システム及び注文配送方法並びに青果栽培施設
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20241210BHJP
   G06Q 10/083 20240101ALI20241210BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092458
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】309020622
【氏名又は名称】有限会社 グリーン・グリーン
(74)【代理人】
【識別番号】230110397
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 雅敏
(74)【代理人】
【識別番号】230128875
【弁護士】
【氏名又は名称】原 慎一郎
(74)【代理人】
【識別番号】230131945
【弁護士】
【氏名又は名称】山腰 健一
(72)【発明者】
【氏名】上杉 仁
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA16
5L049AA16
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】需要者へ高付加価値の青果を収穫して配送する青果の注文配送方法及びシステムを提供する。
【解決手段】青果栽培施設内で生育した青果を需要者からの注文に応じて収穫した後に中間組織等を経由することなく直接配送する方法であって、青果が収穫に適した成熟状態に達したときに当該青果について需要者からの注文を待ち受ける待機状態を開始する注文待機ステップと、待機状態において需要者から注文が入ったときに当該注文に含まれる配送先情報を参照して配送先が青果栽培施設から所定の距離内にあることを確認する配送先確認ステップと、配送先確認ステップにおいて配送先が所定の距離内にあることが確認されたことを条件として注文に対応する青果を収穫する収穫ステップと、収穫ステップで収穫された青果を包装する包装ステップと、包装ステップで作成された青果包装体を需要者へ直接配送する配送ステップを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果栽培施設内で生育した青果を需要者からの注文に応じて収穫した後に中間組織等を経由することなく直接配送する方法であって、
前記青果が収穫に適した成熟状態に達したときに当該青果について需要者からの注文を待ち受ける待機状態となる注文待機ステップと、
前記待機状態において需要者から注文が入ったときに、当該注文に含まれる配送先情報を参照して当該配送先が前記青果栽培施設から所定の距離内にあることを確認する配送先確認ステップと、
前記注文に対応するのに必要な成熟青果の株数が存在することを確認する株数確認ステップと、
前記配送先確認ステップにおいて配送先が所定の距離内にあること、及び、前記株数確認ステップにおいて必要な成熟青果の株数が存在することが確認されたことを条件として前記注文に対応する青果を収穫する収穫ステップと、
当該収穫ステップで収穫された青果を包装する包装ステップと、
当該包装ステップで作成された青果包装体を前記需要者へ直接配送する配送ステップを有することを特徴とする青果の注文配送方法。
【請求項2】
前記青果栽培施設は、水耕栽培装置を備えてなる請求項1に記載の青果の注文配送方法。
【請求項3】
前記青果栽培施設は、高い気密性を備えた構造及び/又は換気システムの設置によって、ほぼ無菌状態に管理されている請求項1又は2に記載の青果の注文配送方法。
【請求項4】
前記青果栽培施設は、同時に施設内に立ち入れるヒトの数が最大1名に管理されている請求項1又は2に記載の青果の注文配送方法。
【請求項5】
青果栽培施設内で生育した青果を需要者からの注文に応じて収穫した後に中間組織等を経由することなく直接配送する方法であって、
前記青果栽培施設に備わる撮像装置によって撮影された成長過程にある青果の画像をインターネット経由で配信する配信ステップと、
前記画像を閲覧した需要者から前記青果について購入予約の申込みが入ったときに、当該購入予約に含まれる配送先情報を参照して配送先が前記青果栽培施設から所定の距離内にあることを確認する配送先確認ステップと、
当該配送先確認ステップにおいて配送先が所定の距離内にあることが確認されたことを条件として前記予約を受け付ける予約受付ステップと、
前記需要者が購入を予約した青果について所望のタイミングで収穫・配送の時期を指定する収穫配送時期指定ステップと、
前記収穫時期の指定に応じて青果を収穫する収穫ステップと、
当該収穫ステップで収穫された青果を包装する包装ステップと、
当該包装ステップで作成された青果包装体を前記配送時期の指定に応じて前記需要者へ直接配送する配送ステップを有することを特徴とする青果の注文配送方法。
【請求項6】
青果栽培施設内で生育した青果を需要者からの注文に応じて収穫した後に中間組織等を経由することなく直接配送するシステムであって、
前記青果が収穫に適した成熟状態に達したときに当該青果について需要者からの注文を待ち受ける待機状態を開始する注文待機手段と、
前記待機状態において需要者から注文が入ったときに、当該注文に含まれる配送先情報を参照して当該配送先が前記青果栽培施設から所定の距離内にあることを確認する配送先確認手段と、
前記注文に対応するのに必要な成熟青果の株数が存在することを確認する株数確認手段と、
前記配送先確認手段において配送先が所定の距離内にあること、及び、前記株数確認手段において必要な成熟青果の株数が存在することが確認されたことを条件として前記注文に対応する青果を収穫する収穫手段と、
当該収穫手段で収穫された青果を包装する包装手段と、
当該包装手段で作成された青果包装体を前記需要者へ直接配送する配送手段を有することを特徴とする青果の注文配送システム。
【請求項7】
少なくとも水耕栽培装置、換気システム、収穫エリア、包装エリア及び青果包装体の搬出エリアを有するとともに高い気密性を備えた構造によって構成された青果栽培施設であって、適宜の手段によって、同時に施設内に立ち入れるヒトの数が最大1名に管理されていることを特徴とする青果栽培施設。
【請求項8】
外部から施設内部を見ることができる展示用ウィンドウを備えるとともに、前記水耕栽培装置は複数の栽培ユニットを着脱可能に設置するユニット設置部を有する請求項7に記載の青果栽培施設。
【請求項9】
前記栽培ユニットは養液槽とこれに載置する定植パネルからなり、当該定植パネルは所定個数の定植孔を具備し、当該定植孔の上端部をアール状に形成してなる請求項8に記載の青果栽培施設。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果の注文配送システム及び注文配送方法並びに青果栽培施設に関し、具体的には、発注から極めて短時間のうちに需要者のもとへ配送することができる青果の注文配送方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
青果(野菜及び果実を含む。以下同じ。)については、近年、鮮度、味、安全性などの観点から高付加価値化が求められている。
【0003】
鮮度に関しては、卸売業者等を介して小売業者から青果を購入する従来型の方法にあっては、栽培、収穫、梱包、配送、保管、加工、保管、陳列、小売、配送といった複雑な工程を経る必要があり、一般的には収穫から食卓へ届くまで10日以上かかっているのが現状である。また、これに加え中間団体を通す分だけ中間マージンとしてのコストが増えるのみならず、さらに、梱包、輸送、加工、陳列などの際に生じる打撃、雑菌による汚染、冷蔵保管による急激な温度変化から、青果の鮮度は著しく失われてしまい、小売店に陳列される頃にはすでに「見切り品」「訳あり品」と変わらない劣化した品質になっている場合がほとんどである。
【0004】
そして、このような品質の劣化を避けるために農薬が使用されるが、いまだにわが国では世界的に使用禁止とされている農薬が当然のように大量消費されており、加工時には消毒のために大量の次亜塩素酸ナトリウムに浸されることとなることから、これらが最終消費者である国民の健康に深刻なダメージを与えることは多言を要しないところである。
【0005】
この点、新鮮な青果を入手する方法としては、たとえば郊外の契約農家で朝採りされた青果をその日のうちに発送させて翌日に受け取ることができるサービスも知られているが、注文してから需要者の調理場へ届くまではやはり一定の時間を要しており、必ずしも需要者にとって満足度が高いとはいえない。
【0006】
味に関しては、特に近年の肥料の品質・性能の向上により、いわゆる植物工場で生育された青果が注目されているが、プラントの建設費やランニングコストの点から露地野菜・ハウス野菜と比べると不採算となる場合が多く、さらなる高付加価値化が求められている。
【0007】
安全性の観点からは、トレーサビリティシステムによって、各事業者が青果などの食品を取り扱った際の記録を作成・保存しておくことで、その食品がどこから来てどこへ行ったかを把握できる方法が提案されているが、記録の整理・保存に手間がかかることや、そもそも取組の必要性がわからないなどといった理由から、特に中小零細企業において導入は進んでいないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-39767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、従来にはなかった高い付加価値を有する青果の注文配送システム及び注文配送方法並びに青果栽培施設を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、発明者は、従来の青果の物流システムについて基本的なところから見直し、以下のような構成を有する発明を行うに到った。
【0011】
本発明青果の注文配送方法は、青果栽培施設内で生育した青果を需要者からの注文に応じて収穫した後に中間組織等を経由することなく直接配送する方法であって、前記青果が収穫に適した成熟状態に達したときに当該青果について需要者からの注文を待ち受ける待機状態となる注文待機ステップと、前記待機状態において需要者から注文が入ったときに、当該注文に含まれる配送先情報を参照して当該配送先が前記青果栽培施設から所定の距離内にあることを確認する配送先確認ステップと、前記注文に対応するのに必要な成熟青果の株数が存在することを確認する株数確認ステップと、前記配送先確認ステップにおいて配送先が所定の距離内にあること、及び、前記株数確認ステップにおいて必要な成熟青果の株数が存在することが確認されることを条件として前記注文に対応する青果を収穫する収穫ステップと、当該収穫ステップで収穫された青果を包装する包装ステップと、当該包装ステップで作成された青果包装体を前記需要者へ直接配送する配送ステップを有することを特徴とするものである。
【0012】
これによって、収穫可能な状態に成熟した青果を注文からごく短時間のうちに需要者へ配送することが可能となり、従来の青果に比して鮮度の点で極めて高い付加価値を有する青果を食卓へ届けることが可能となる。
【0013】
また、本発明青果の注文配送方法における前記青果栽培施設は、水耕栽培装置を備えてなるものとして構成することが可能である。
【0014】
これにより、従来の青果は郊外の畑などで露地栽培・ハウス栽培を行ったうえで収穫し配送する必要があったところ、水耕栽培によるときは水耕栽培用のキットを組めるだけのスペースさえあれば十分であるため、青果栽培施設そのものを都心に設けることができ、都心の需要者に向けてさらに迅速な配達が可能となるとともに、輸送時間の短縮から青果の打撃などによる品質の劣化を回避することができ、さらなる高付加価値化に資することとなる。
【0015】
さらに、前記青果栽培施設は、高い気密性を備えた構造及び/又は換気システムの設置によってほぼ無菌状態に管理し、加えて同時に施設内に立ち入れるヒトの数を最大1名として管理するように構成することも任意である。
【0016】
かかる構成によれば、青果栽培施設内をほぼ無菌状態に維持しつつ、しかもヒトとの接触を原因とする雑菌等による汚染についても防止することができることから、味、日持ちといった点でも高付加価値化することが可能となる。
【0017】
また、本発明青果の注文配送方法の他の形態としては、青果栽培施設内で生育した青果を需要者からの注文に応じて収穫した後に中間組織等を経由することなく直接配送する方法であって、前記青果栽培施設に備わる撮像装置によって撮影された成長過程にある青果の画像をインターネット経由で配信する配信ステップと、前記画像を閲覧した需要者から前記青果について購入予約の申込みが入ったときに、当該購入予約に含まれる配送先情報を参照して配送先が前記青果栽培施設から所定の距離内にあることを確認する配送先確認ステップと、当該配送先確認ステップにおいて配送先が所定の距離内にあることが確認されたことを条件として前記予約を受け付ける予約受付ステップと、前記需要者が購入を予約した青果について所望のタイミングで収穫配送の時期を指定する収穫配送時期指定ステップと、収穫配送の時期指定に応じて青果を収穫する収穫ステップと、当該収穫ステップで収穫された青果を包装する包装ステップと、当該包装ステップで作成された青果包装体を前記需要者へ直接配送する配送ステップを有することを特徴とするものが考えられる。
【0018】
かかる構成によれば、需要者は生育過程の青果の様子を動画配信サイト等を通じて随時確認することができ、たとえば他の苗に比して育ちがよいと感じた青果の購入を早い段階で予約することができるとともに、さらにその収穫・配送を所望のタイミングで行うよう注文することができるようになる。
【0019】
本発明青果栽培装置は、少なくとも水耕栽培装置、換気システム、収穫エリア、包装エリア及び青果包装体の搬出エリアを具備するとともに高い気密性を有する構造によって構成された青果栽培施設であって、適宜の手段によって、同時に施設内に立ち入れるヒトの数が最大1名に管理されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明青果栽培装置は、外部から施設内部を見ることができる展示用ウィンドウを備えるとともに、前記水耕栽培装置は複数の栽培ユニットを着脱可能に設置するユニット設置部を有する構成とすることも任意であり、さらに、前記栽培ユニットは養液槽とこれに載置する定植パネルからなり、当該定植パネルは所定個数の定植孔を具備しており、当該定植孔の上端部をアール状に形成してなるように構成することもできる。
【0021】
上記の構成とすることによって、従来の物流とは異なり、青果の栽培・収穫・輸送・販売までのすべての工程を1か所(青果栽培施設内)で完結することができるようになり、衛生面等から青果の品質が劣化することを低減できるとともに、定植パネルに配設された定植孔の上端部がアール状に形成されていることから、藻の発生の抑制と青果挿脱時の損傷の防止にも資することができる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明によれば、高付加価値の青果を需要者に向けて収穫し配送する注文配送システム及び注文配送方法並びに青果栽培施設を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る注文配送システムの実施形態を示す説明図である。
図2】本発明に係る注文配送システムで用いられる受注伝票が出力された状態の端末を示す説明図である。
図3】本発明に係る注文配送システムで用いられる水耕栽培装置を示す説明図である。
図4】本発明に係る注文配送システムの運用の流れを示すフローチャート図である。
図5】本発明に係る青果栽培施設の実施形態を示す正面図である。
図6】本発明に係る青果栽培施設に備わる水耕栽培装置の実施形態を示す斜視図である。
図7】本発明に係る青果栽培施設に備わる水耕栽培装置の栽培ユニットの実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10 タブレット端末、20 水耕栽培装置、21 ラック、21a~21c ラックの棚、22 栽培ユニット、23 定植パネル、23a 定植孔、30 作業台、40 搬出エリア(出荷口)、B 青果包装体、D 注文情報、E 施設外エリア、H1 作業員、H2 配送員、H3 注文者、P1~P10 ラックの各棚における栽培ユニットの位置、R 受注伝票、S 屋内空間、V 野菜、W 作業エリア
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る青果の注文配送方法及び注文配送システム並びに青果栽培施設の実施形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。ここでは葉物野菜を生育対象とする。
【0026】
図1に示すとおり、本実施形態の注文配送システムは、野菜Vの受注等の処理に用いられるタブレット端末10と、野菜Vの水耕栽培装置20と、収穫された野菜Vの包装等を行うための作業台30と、野菜Vの包装体Bを施設外へ搬出する出荷口40を備えている。
【0027】
タブレット端末10、水耕栽培装置20、作業台30は、青果栽培施設の同一屋内空間Sに配設されている。
【0028】
出荷口40は、屋内空間Sと施設外エリアEとの境界位置に配設される。
【0029】
屋内空間Sには作業エリアWが確保され、これはタブレット端末10、水耕栽培装置20、作業台30および出荷口40といった要素を有し、あるいは少なくともこれらに隣接する。
【0030】
タブレット端末10は、サーバーコンピューター(図示せず)とともに、本発明システムに実装される受注処理システムの一部をなす。なお、タブレット端末10とサーバーコンピューターは一体と別体とを問わず、ハードウェアとしてのタブレット端末10がすべての機能を併有してよい。
【0031】
受注処理システムは、インターネット回線に接続されたサーバーコンピューターを備え、スマホなどの注文者端末(図示せず)から入力された情報に基づく注文を受けることができるようになっている。かかる入力情報から注文情報Dを含む受注伝票Rを作成し、または受注伝票Rをタブレット端末10に出力するなどして、注文処理は実行される。
【0032】
本実施形態で用いられるタブレット端末10は、受注伝票R等の情報を表示可能なディスプレイを備える。タブレット端末10としては、可搬性に優れる携帯型端末が好適ではあるが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0033】
たとえば、タブレット端末10は作業エリアW内に配置され、作業員H1はタブレット端末10に表示された受注伝票Rの情報を確認するなどの作業を作業エリアW内で行うことができる。
【0034】
水耕栽培装置20は、青果栽培用の栽培ユニット22と、当該栽培ユニット22を設置するラック21を備えてなる。
【0035】
図3に示すとおり、本実施形態で用いられている各栽培ユニット22は、液体肥料を含有する水を貯留して循環させる養液槽とその上面に載置する定植パネル23を備え、当該定植パネル23には、野菜Vの種苗を植え付けるための定植孔23aがパネル1枚当たり10個形成されている。
【0036】
ラック21は、複数段の棚21a~21cを備えており、各棚にはたとえば10個の栽培ユニット22を並列できるようになっている。
【0037】
栽培ユニット22は、作業エリアWに隣接する一端側の第1位置(最前列位置)P1から作業エリアWに最も遠い他端側の第10位置(最後列位置)P10に並列配置される。
【0038】
これにより、作業員H1は、最前列位置P1にある栽培ユニット22で成育中の野菜Vの収穫作業を作業エリアW内に居ながらにして行うこともできる。
【0039】
このように、本実施形態における本発明システムは、受注ステップ及び収穫ステップの両方を作業エリアW内で行うことができることから、注文情報Dと収穫対象の野菜Vとの紐付けに便宜である。
【0040】
各栽培ユニット22は、移動可能な状態でラック21に設置されており、野菜Vの生育状況に応じて、収穫に適した野菜Vを生育中の栽培ユニット22を最前列位置P1に移動させて、展示用ウィンドウから需要者の閲覧に供することなどを目的として、随時、ユニット同士の入替えや移動を行うことができる。
【0041】
作業台30は、作業エリアW内にあり、包装作業が行われる際にも、作業員H1は作業エリアW内で青果包装体Bを作ることができる。
【0042】
包装作業では、配送先や配送方法などを考慮し、より気密性や保護性に優れたたとえば真空パックを用いた梱包方法により青果包装体Bを作ることも任意である。
【0043】
出荷作業の一部又は全部は作業台30で行われる。
【0044】
出荷口40は作業エリアWに隣接し、作業員H1は、作業台30において、青果包装体Bの出荷作業を行う。
【0045】
出荷作業としては、たとえば、注文者名や注文者住所など、出荷する野菜Vに紐付いた注文情報Dを出荷対象の青果包装体Bの外装に表示する作業や、配送先が表示された青果包装体Bを作業エリアWから施設外エリアEに搬出する作業などがある。
【0046】
出荷・配送の形態としては、出荷口40から施設外エリアEで待ち受ける配送員H2や注文者H3に青果包装体Bを手渡す方法を挙げることができる。また、青果包装体Bを配送先情報を入力した小型無人飛行機に収容して出荷口40から直接需要者宅のベランダまで輸送する、いわゆるドローン配達によって届けることも任意である。
【0047】
上述のとおり、本実施形態の注文配送システムでは、受注作業、収穫作業、包装作業および出荷作業のすべてを同一の屋内空間Sにおいて行うことができるため、従来の畑での栽培、収穫、作業所での梱包、車両等による配送、保管場所での保管、次亜塩素酸ナトリウムなどを使用する加工処理、保管・陳列、店舗での小売といった複雑で時間を要する工程をすべて排除できる。
【0048】
さらに、これに伴って、中間団体のマージンが不要となるだけでなく、梱包、輸送、加工、陳列などの際に生じる打撃、雑菌による汚染、冷蔵保管による急激な温度変化から鮮度が著しく失われてしまうといった事象もすべて解決されることとなる。
【0049】
次に、本実施形態に係る注文配送システムの各工程について説明する。なお、本実施形態では、インターネット等の通信手段を介して行われる、いわゆるオンライン注文を例に説明する。
【0050】
本システムでは、まず注文者が、サーバーコンピューターに対して、注文処理を要請する。注文手段としては、オンライン注文に限らず、電話、ファクシミリ、口頭伝達などの手段を挙げることができる。
【0051】
本実施例においては、注文待機状態のときに、注文希望者からの注文を受け付ける。注文待機状態は、栽培ユニット22で生育中の成熟野菜Vが存在することが条件とされる。
【0052】
注文待機状態において、需要者から注文が入ったとき、当該注文情報Dに含まれる配送先情報を参照して、配送先が青果栽培施設から所定の距離内にあることが確認される。これにより、一定の時間内に配送可能なエリアからのみ、注文が受け付けられることとなる。
【0053】
なお、他の実施形態としては、栽培ユニット22において十分に成熟した野菜Vが存在しない場合であっても、その生育の様子を撮像装置(図示せず)によって撮影し、当該撮像画像をインターネット配信しつつ、その画像を閲覧した需要者から購入予約の申込みを受け付ける構成とすることも可能である。
【0054】
この場合、購入予約者は、収穫と配送を所望のタイミングで指定することができるようになり、需要者は、育ちのよい株に目をつけて、成熟前からその株の購入を予約することもできるようになる。
【0055】
ここで、栽培ユニット22に成熟野菜Vが存在するか否かについては、たとえば、各栽培ユニット22における生育状態に関する情報を随時入力することで注文待機状態にあるかを判断できるし、栽培ユニット22の状況を撮影可能な撮像装置を配設して、各定植孔23aごとの画像から株の生育状況をたとえばサーバーコンピューターに備わる画像処理部・比較演算部において判断させることも任意である。
【0056】
青果の生育状況に関する情報としては、成熟野菜Vの有無や株数に関する情報を挙げることができる。成熟野菜Vの株数に関する情報が「0」より大きい値か否かに基づき、「0」より大きい場合には注文待機状態にあると判断できる。
【0057】
本実施例においては、栽培ユニット22に成熟野菜Vがないときは注文待機状態にはならず、注文は受け付けられない。また、注文量が成熟野菜Vの株数より大きい場合は、その旨を注文希望者に通知し、注文量が当該株数以下に修正された場合に限り、注文が受け付けられる。
【0058】
本発明では、注文待機状態のときに受注する構成にすれば、いうまでもなく受注後に収穫・包装・出荷が行われることとなる。
【0059】
また、注文直後の収穫が保証されることから、注文者に対し、注文した野菜Vの収穫前の生育中の状態から配達されるまでの履歴を提供することもでき、トレーサビリティの観点から優れている。
【0060】
栽培ユニット22が注文待機状態にあるときに注文希望者からの注文が入ると注文処理が開始される。
【0061】
受注にあたっては、タブレット端末10のディスプレイに注文情報Dを含む受注伝票Rを表示し、必要に応じてこれを紙で出力するなどしてもよい。
【0062】
受注伝票Rによって表示される注文情報Dとしては、注文する野菜Vの種類に関する情報、注文量に関する注文量情報、注文者の氏名、注文者の住所、配送先住所、作業員名などが挙げられる。
【0063】
なお、受注の段階で、収穫作業、包装作業、出荷作業の担当作業員H1が決まっている場合は、各作業の作業員情報を注文情報Dに含めることも任意である。
【0064】
受注伝票Rが出力されると、注文情報Dと収穫対象の成熟野菜Vとが紐付けられ、当該野菜Vは収穫されることとなる。
【0065】
本実施形態では、成熟野菜Vが存在するときにのみ注文を受け付ける点で、早期に注文を受けたい従来の契約農家のビジネスモデルとは相容れないまったく新規な構成といえる。
【0066】
収穫対象の成熟野菜Vに紐付けられる注文情報Dは、少なくとも上述の注文情報の一部又は全部である。
【0067】
注文情報Dと紐付いた野菜Vは、たとえば、受注伝票Rが表示された状態において当該情報に基づいて特定される。
【0068】
野菜Vが特定される状況としては、たとえば、注文情報Dを特定の栽培ユニット22の特定の定植孔23aで生育中の成熟野菜Vに紐付けることが考えられる。
【0069】
具体的には、ラック21の第1段の最前列位置P1の栽培ユニット22のA列の第1行の栽培スポットで栽培中の成熟野菜Vといったように特定する。
【0070】
また、本実施形態の注文配送システムにおいては、野菜Vを把持した状態の収穫直前及び/又は収穫作業中の作業員H1が、作業エリアW(特に作業台30や作業台上の包装材資材)を視認することができる。
【0071】
これにより、先に収穫されたものの未だ包装されていない成熟野菜Vが作業エリアWに存在するか否か、あるいは先に収穫されて包装されたが未だ搬出されていない青果包装体Bが存在するか否かなどを収穫直前に確認でき、そのような野菜Vないし青果包装体Bが存在しない状態を確認したうえで収穫作業を実行できるようになり、異なる注文情報Dが紐付いた成熟野菜Vが混在して、トレーサビリティが失われることを未然に防止できる構成になっている。
【0072】
したがって、本実施形態のように、収穫位置から注文情報D、作業台30および出荷口40のすべてを視認できる屋内空間S(作業エリアW)として構成することが好ましいといえる。
【0073】
なお、情報の紐付けは、受注段階の直後や収穫作業の直前または収穫時のみならず随時行うことができ、収穫時点で発生する収穫日時情報や収穫者情報を紐付けてもよい。
【0074】
同様に、包装段階で発生する包装日時情報や包装者情報を包装直後に紐付けてもよいし、出荷作業で発生する出荷日時情報や出荷者情報を出荷する青果包装体Bに紐付けてもよい。
【0075】
注文情報Dと野菜Vとの紐付け関係は、収穫時のみならず、注文者に配送されるまで維持され、注文者は、収穫から注文者に届けられるまでの期間、いつでも収穫日時や到着予定日時などの紐付け情報を取得できる。
【0076】
このような注文情報Dを注文者の要望に応じて開示できるシステムは、いうまでもなくトレーサビリティに優れ、食品としての安心・安全に資するものである。
【0077】
収穫段階では、水耕栽培装置20で生育中の野菜Vであって、注文情報Dの紐付いた野菜Vが収穫されるため、収穫は注文の後に実行されることになる。
【0078】
また、本システムでは、収穫に適した成熟野菜Vを生育中の栽培ユニット22が水耕栽培装置20の最前列位置P1に配置されるよう、必要に応じて栽培ユニット22を移動させることもできる。
【0079】
そして、最前列位置P1にある栽培ユニット22で生育中の野菜Vの収穫は、作業員H1が作業エリアW内に居ながらにして実行できる。
【0080】
包装作業では、紐付けされた野菜Vを包装して、青果包装体Bを作成する。
【0081】
本発明システムでは、収穫作業と同様に、タブレット端末10に出力された注文情報Dを視認しつつ、包装作業を実行でき、注文情報Dと包装材とを同一視野内に認めつつ包装作業を実行できるなど、注文情報Dを出力した状態を維持しつつ包装作業を実行でき、情報の紐付けにおいて優れている。
【0082】
出荷段階では、青果包装体Bを施設外エリアEに搬出する。
【0083】
本発明システムでは、作業エリアW(作業台30)に隣接して出荷口40が配設されており、青果包装体Bを作成後、すぐにこれを出荷できる。
【0084】
また、本システムでは、収穫作業と同様に、タブレット端末10に出力された注文情報Dを視認しつつ青果包装体Bを搬出することができ、注文情報Dと出荷する青果包装体Bとを同一視野内で同時視認しつつ搬出作業を実行できることから、トレーサビリティの観点から優れていることは上記と同様である。
【0085】
次に、本発明注文配送システムの動作の流れを説明する。
【0086】
本実施例においては、水耕栽培装置20で収穫に適した成熟野菜Vが栽培されていることを条件に受注処理されることから、栽培施設中に成熟野菜Vが存在しない状態と判断された場合には注文は受け付けられない。
【0087】
水耕栽培装置20において栽培中の成熟野菜Vがあるか否かは、水耕栽培装置20に備わる撮像装置から得られた画像に基づいて判断したり、作業員H1が随時確認して情報を入力したりするなど、任意の方法で行うことができる。
【0088】
次に、最前列位置P1の栽培ユニット22において栽培中の成熟野菜Vがあるか否かを判断する。
【0089】
最前列位置P1に成熟野菜Vがない場合は、成熟野菜Vを生育中の栽培ユニット22を他列から最前列位置P1に移動させる。
【0090】
もちろん最前列位置P1以外の位置において栽培ユニット22の成熟野菜Vを収穫することも可能であるが、最前列位置P1の栽培ユニットの成熟野菜Vは、作業エリアW内に居ながらにして収穫可能である点で優れていることは前述のとおりである。
【0091】
このように、本実施例におけるシステムは、最前列位置P1の栽培ユニット22で生育中の成熟野菜Vが存在する状態で注文を待機し、注文希望者からの注文が入ればその注文を受け付けることとなる。
【0092】
次に、本発明システムは、未処理の受注案件の件数を確認することとなる。ここで、未処理案件数が1件であれば、その受注案件を続けて処理すべき案件として決定する。
【0093】
未処理案件数が2件以上ある場合には、それらのうちの1件を続けて処理すべき案件として決定する。たとえば注文日時が最先の注文を処理案件に決定する。
【0094】
なお、未処理受注案件数の確認段階と処理案件の決定段階は、同じ工程に含まれるものとして把握してもよい。
【0095】
複数の受注案件で収穫から出荷までのステップを同時並行して実行しないシステムとして構成したときは、作業エリアWに複数の注文情報Dが併存することはなく、注文に対応して収穫された複数の成熟野菜Vが存在することもないことから、注文情報Dに対応する野菜Vの取違えが生じることを防止できることはいうまでもない。
【0096】
処理する受注案件が決定されると、当該受注案件の注文情報Dがタブレット端末10に出力表示される。
【0097】
その後、注文情報Dに基づいて、収穫作業、包装作業および出荷作業が実行され、青果包装体Bは出荷口40から適宜の配送手段によって注文者に届けられる。
【0098】
ところで、本実施例では、作業エリアW内あるいは作業エリアWに隣接して、タブレット端末10、水耕栽培装置20、作業台30および出荷口40が配設されており、各受注案件の収穫から出荷までの工程を単独で実行することで、注文情報Dと野菜Vとの紐付けが確実に行われるように構成したシステムであり、収穫、包装、出荷などの各工程が作業員H1によって実行される場合、少数(特に単独)での業務遂行性に優れている。
【0099】
さらに、受注から出荷までを作業員H1が単独で実行する場合の作業員H1の動きに着目し、作業員H1が受注を確認した時点を起点に動きを説明する。なお、移動可能なタブレット端末10を用いる本実施形態のシステムでは、作業エリアW内のどの位置においても受注確認可能であるが、ここでは便宜的に、図1に示すタブレット端末10の位置(受注確認位置m1)で受注を確認することとして説明する。
【0100】
本システムにおいて、図1の受注確認位置m1で受注を確認した作業員H1は、受注確認位置m1から収穫位置m2まで、第1動線(第1動線距離)M1に沿って移動して、紐付け成熟野菜Vを収穫する。
【0101】
次に、収穫位置m2から包装位置m3まで、第2動線(第2動線距離)M2に沿って移動して、収穫された紐付け成熟野菜Vを包装する。
【0102】
次に、包装位置m3から出荷位置m4まで、包装により形成された青果包装体Bと共に第3動線(第3動線距離)M3に沿って移動して出荷を行い、一連の作業を終了する。
【0103】
その後、たとえば、出荷位置m4から受注位置m1まで、第4動線(第4動線距離)M4に沿って移動する。
【0104】
また、上記の一連の作業が完了した時点で未処理の受注案件があり、出荷位置m4で受注を確認した場合、作業員H1はその注文を確認した受注位置(m4)から収穫位置m2に移動し、その後、収穫から出荷までを実行する。
【0105】
動線M1~M4は、いずれも直線であり、作業エリアW内に収まった動線であり、非常に短い。
【0106】
本実施形態のシステムでは、受注から次の受注までの動線総距離(第1動線総距離)Ma(M1+M2+M3+M4)や、収穫から次の受注までの動線総距離(第2動線総距離)Mb(M2+M3+M4)、さらに収穫から出荷までの動線総距離(第3動線総距離)Mc(M2+M3)は、ユニット移動動線距離M9より短い。
【0107】
ユニット移動動線距離M9は、水耕栽培装置20において栽培ユニット22の移動や入れ替えを行う際の最長の動線であり、水耕栽培装置20の長手方向の距離20Yに相当する距離である。
【0108】
つまり、本実施形態のシステムでは、受注から次の受注までの動作M1~M4は、ユニット移動動線距離M9のようなシステム運営の際に生じる動線のうちで最長の動線と比較して短い。
【0109】
本実施形態では、受注から出荷までの途中で栽培ユニット22の移動が行われることがなく、収穫から出荷までの動作は、すべて作業エリアW内で完結する。
【0110】
なお、ユニット移動動線距離M9は相対的に短く図示され、作業エリアW内の各動線M1~M4は相対的に長く図示されており、図1における長さの単純比較では判断できない状態である点には注意されたい。
【0111】
また、実際のシステム運営では、さらに長距離の動線の動きもあるなど、多様な動きが生じる。上述した動線距離Ma、Mb、Mcは、ユニット移動動線距離M9だけでなく、水耕栽培装置20の全長20Yや、水耕栽培装置20の最長距離などよりも短い。なお、本実施形態における水耕栽培装置20の最長距離は、図1に示される水耕栽培装置20の右上の角位置20aと左下の角位置20bとを結んだ対角線距離である。
【0112】
さらに、水耕栽培装置20の最長距離としては、水耕栽培装置20で栽培される野菜同士の離間距離のうちの最長である最長栽培離間距離を挙げることができる。
【0113】
最長栽培離間距離は、図1に示される最前列位置P1の栽培ユニット22の右下の定植孔23aの位置と最後列位置P10の栽培ユニット22の左上のスポット23aの位置とを結んだ対角線に相当する直線距離である。
【0114】
なお、栽培ユニット22を移動しない場合、作業エリアWから最も遠い位置で栽培中の野菜を収穫して出荷することを考えると、収穫位置m2a(本実施形態では図1の最後列位置P10の栽培ユニットの左上のスポット23aで栽培中の野菜の収穫位置m2a)から包装位置m3までの移動動線M2aは長くなる。
【0115】
また、栽培ユニット22を移動しない場合、受注から出荷の一連の工程を繰り返し行うことになれば、先に行われた一連のステップの最後である出荷位置m4で次の一連のステップの最初の受注を行ったとしても、作業エリアWから最も遠い位置の野菜を収穫して出荷するのであれば、その受注位置から収穫位置までの動線距離はやはり長くなり、これらの移動動線は通常、直線にはならない。
【0116】
動線M1~M4がその範囲内に収まっている作業エリアWは、当該作業エリアWに隣接する水耕栽培装置20の隣接縁(境界縁)20fと、当該作業エリアWに隣接する作業台30の隣接縁(境界縁)30fと、当該作業エリアWに隣接する出荷口40(出荷口40の隣接縁(境界縁)40f)に囲まれたエリアである。
【0117】
すなわち、作業エリアWは、水耕栽培装置20と作業台30と出荷口40に囲まれた領域に形成されたエリアであるといえる。
【0118】
作業エリアWは、各動線M1~M4を、直線の動線として実現できるようになっているエリアであり、動線M1~M4の妨げになる構成をエリアW内に有しない状態である。
【0119】
さらに、作業エリアW内の受注位置m1、収穫位置m2、包装位置m3及び出荷位置m4の各位置同士を結んで得られる直線の連結線のうち、動線M1~M4ではない連結線を視認線N1、N2と称することとすると、作業エリアWは、これらの視認線N1、N2の一端側位置から他端側位置の視認の妨げになる構成を備えていない状態になっている。
【0120】
視認線としては、受注位置m1と包装位置m3とを結ぶ連結線N1や、収穫位置m2と出荷位置m4を結ぶ連結線N2を挙げることができる。
【0121】
視認線N1、N2上に視認を妨げる構成がなければ、受注位置m1から包装位置m3を視認でき、収穫位置m2から出荷位置m4を視認できる。
【0122】
このような視認が可能であれば、収穫作業の際、次の包装作業のみならず、その次の出荷作業まで想定することができ、新鮮で美味しい野菜の収穫・出荷を実現しやすい。
【0123】
なお、本実施形態では、直線移動が実現される動線M1~M4上に、直線移動を妨げる構成が存在しない状態になっているので、例えば、収穫位置m2から包装位置m3を視認可能であり、視認容易性に基づく作業容易性の観点で同様に優れた構成である。
【0124】
また、各連結線(視認線)N1、N2は、作業エリアW内の直線である。
【0125】
本発明に係る注文配送システムは、上記の実施例で説明した形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0126】
上述の実施形態では、栽培対象が葉物野菜であるが、対象は葉物野菜に限られず、野菜を含む青果全般を含むことはいうまでもない。
【0127】
(1)契約農家では、たとえば、廃棄野菜の最小化や利益確定などの観点では、できるだけ早期に注文が入ることが好ましい。野菜生育の段階で注文枠が埋まって完売(受注停止)になることもある。そして、早期に完売することは、上述の観点などを含め契約農家にとって好ましいということができる。
(2)また、契約農家は、できるだけ美味しい野菜などの青果を届けるために、通常、野菜の生育状態を見計らい、出荷する状態として最良の状態の野菜を収穫し、出荷しようとする。ところが、露地栽培やハウス栽培においては、影響の強弱はあるにしろ、生育状況と天候等とが一体不可分の関係であるところ、美味しさ優先(すなわち生育状態優先)で出荷時期を定めると、必ずしも、出荷時期(あるいは到着時期)と注文者の欲しい時期とが一致しない場合が生じることになる。この場合、注文者は、注文野菜の到着時期(出荷時期)に注意を払いつつ料理メニューを決めるような対応を迫られるが、野菜到着直後の料理メニューとして、その野菜を使用するメニューを設定できなければ、到着野菜は、結局、収穫から日数が経過した状態で食べられることになる。つまり、契約農家が最適時期の野菜を直送で出荷したにもかかわらず、その野菜が実際に食べられるのは、収穫から日数が経過して品質が劣化した時期になり、いわゆる美味しい時期を逃すことになる。
(3)このような具体的課題がさらに見出されたので、野菜の栽培期間(あるいは生育状態)と注文時期との関係を含め、より優れた野菜出荷方法について、さらに鋭意検討した結果、注文者が注文する時点(受注の時点)の重要性を見出し、注文の時点を重視した収穫・出荷のシステムを構築できれば、上述のような課題の解決につながることを見出した。
(4)栽培設備で栽培された青果を注文に応じて出荷する方法であり、注文を受け付ける受注ステップと、前記受注ステップで受注した青果を収穫する収穫ステップと、前記収穫ステップで収穫された青果を包装する包装ステップと、前記包装ステップで収穫された青果を包装した包装体を出荷するステップとを含んでおり、前記受注ステップは、前記栽培設備で栽培中の青果に関する注文を受け付けるステップであり、前記受注ステップは、前記栽培設備で栽培中の青果のうちの少なくとも一部が消費に適する成育状態の成熟青果であるとき、前記注文を受領するステップであり、前記収穫ステップは、前記受注ステップで前記注文を受領した後に実行され、前記包装ステップは、前記受注ステップ後の前記収穫ステップで収穫された、前記成熟青果を包装するステップであり、前記出荷ステップは、前記受注ステップ後の前記収穫ステップで収穫されて包装された成熟青果の包装体を出荷するステップである、青果の収穫出荷方法である。
(5)本発明では、受注ステップで、成熟青果(成熟野菜が含まれる)の注文を受領すると、その直後に収穫が行われ、包装されて出荷される。つまり、本発明によれば、収穫から出荷の迅速化のみならず、受注から出荷をも迅速に行うことができる。
(6)受注から出荷を迅速に行うことができれば、出荷に適した野菜というよりも、消費に適した(食べるのに適した)状態で栽培中の成熟野菜を収穫して出荷でき、新鮮で美味しい青果(野菜が含まれる)を提供するのに優れている。できるだけ早期に受注を取り付けて完売しておきたい契約農家では考えられない出荷システムである。
(7)ところで、受注から出荷の迅速化を実現できる理由であるが、まず、本発明に係る受注ステップは、栽培設備で栽培中の成熟野菜に対する注文を受け付けるからである。別言すれば、栽培設備で栽培中の青果として成熟青果が存在しない場合、受注しない(注文を受け付けない)。
(8)このように、本発明では、出荷可能な成熟青果が存在する場合のみ受注するので、受注直後に収穫可能であり、その後の迅速な出荷を実現することができる。
(9)また、別観点で説明すると、本発明では、消費者の注文を受けて成熟青果を出荷する際、その注文者へ出荷する成熟青果は、必ずその注文者からの注文後に収穫されるようになっており、注文前に収穫されることがない。つまり、収穫ステップで収穫される成熟青果は、必ず、紐付け関係を有する注文情報が存在する状態、より具体的には、受注ステップで入手した注文情報との間に紐付け関係が存在する状態で収穫されるということができる。
(10)また、注文時点の注文者は、注文対象の青果(野菜が含まれる)が欲しいという欲求が最大級に高まっている状態である、ということができる。つまり、本発明によれば、注文者の「その青果が欲しい」という欲求が最大限に高まっているとき(高まった直後)に、その青果を収穫し、包装して出荷することができる。
(11)その青果が欲しいという欲求が最大限に高まっている状態として、例えば、注文した成熟野菜を使用する当日の夕食(あるいは翌日の食事)の料理メニューを決めた状態(頭の中で明確にイメージした状態)を挙げることができる。
(12)当日又は翌日の料理メニューについては、例えば2,3か月後(例:契約農家に早期注文した野菜の配送予想時期)の料理メニューと比較して、その料理を食べたいという欲求をイメージしやすく、実現に向けたモチベーションが維持されやすい。そして、近年の流通の発達により、出荷の時点で到着予定日時を通知することが可能になっており、しかも出荷から到着までの所要時間は、速ければ数時間程度(少なくとも24時間以内)が実現可能な状況である。
(13)つまり、本発明によれば、その野菜が欲しいという欲求が高まっている状態での注文(受注)の後にその野菜が収穫され、しかも、注文時に決めた当日又は翌日の料理メニューの調理開始前にその野菜が到着し、その野菜が使われて調理され、その料理を食べる、ということを実現可能である。
(14)このように、本発明によれば、料理メニューを決めた後に収穫された野菜を使って、その料理メニューを調理して食事するという、これまでにない順序(これまでにない発想)の食の収穫・出荷サイクルを実現することができる。
(15)ところで、注文者が当日又は翌日に食べたい料理メニューをイメージしたということを時間経過の観点で分析すると、イメージした時点(起点、始期)で、当日又は翌日のイメージ料理の調理開始日時(期日、終期)が決まったということである。
(16)そして、本発明によれば、上述のイメージ日時から調理開始日時までの時間経過期間内(期間の起点から終期までの期間内)に、注文野菜の収穫、包装および出荷の一連のステップが全て行われる。
(17)つまり、本発明によれば、注文時点(受注時点)に注文者がイメージしたスケジュール(想定スケジュール)を妨げることなく注文野菜が注文者に届くので、注文者は注文時点であらかじめイメージした通りに料理スケジュールを実現しやすく、この点で、本発明は極めて優れた出荷方法ということができる。当初のイメージ通りに料理スケジュールを実行できれば、到着した野菜を直ぐに料理に使って食べることになり、新鮮野菜の提供が現実に達成されるからである。
(18)収穫から到着までの期間をいくら短縮できたとしても、野菜到着時期と注文者のスケジュールとが噛み合っていなければ、到着した野菜を直ぐに食べる(料理に使う)ことにならず、収穫から食べるまでの期間が長期間になり、結局、新鮮な野菜の提供につながらない(新鮮な野菜を食べてもらえなかった)ということになるおそれがある。
(19)この点、注文時点を重視する本発明によれば、注文者はイメージ(想定スケジュール)通りに料理スケジュールを実行しやすく、届いた野菜をすぐに食べることについて、実効性の向上に極めて効果的な出荷方法である。
(20)注文者のイメージを妨げないという点に着目すれば、本発明は、消費者(注文者)が主導権を握っている(あるいは、消費者に主導権を渡すことを実現した)収穫出荷システムということができる。
(21)このように、本発明では、収穫時期は、注文(受注)の時点すなわち料理メニューをイメージした時点よりも必ず後になるが、これは紐付け情報の存在を前提としているからということもでき、注文情報が紐付けされた野菜が収穫されることを意味している。
(22)なお、ここでいう注文は、例えば「その野菜が欲しい」などといった欲求を前提としているところ、注文情報は別言すれば欲求情報であり、そうすると、本発明は、「その野菜が欲しい」という欲求情報(注文情報)が紐付けされた状態の野菜を収穫して出荷する方法である。
(23)これまでは、収穫から到着の期間を短期間にすれば新鮮野菜を提供できるとの考えが一般的かもしれないが、本発明では、注文時点の重要性に着目し、収穫から到着ではなく、注文から消費(実際に食べる)までの期間を短縮してこそ、新鮮野菜の提供につながると考え、注文と収穫、延いては注文と消費との紐付けを実現し、これにより、注文から消費の期間短縮が実現され、真の新鮮野菜の提供が実現されるようになっている。
(24)また、本発明では、注文可能時期は、成熟野菜が栽培中の期間内に限定されており、本発明は、美味しい野菜の提供の観点で優れている。さらに、注文(受注)後に収穫を行う本発明は、美味しさの観点のみならず、新鮮さの観点でも優れている。
(25)本発明によれば、上述の説明から明らかなように、出荷に適した野菜を収穫して出荷するのではなく、消費に適した野菜を収穫して出荷することができる。
(26)本発明は、注文情報が紐付けされた野菜を、受注後に収穫するものであり、本発明では、注文情報の野菜への紐付けが、その野菜が栽培中の状態のときに行われるということができる。
(27)したがって、本発明によれば、本発明に係るシステムの提供者は、例えば、注文者に対し、近々注文者自らが食べる野菜について、収穫前の生育中の状態に関する情報をリアルタイムで提供でき、画像データ通信が可能な状態であれば、収穫作業そのものの映像をリアルタイムで提供でき、注文日時と収穫日時を提供することで、注文後に収穫されたことを示すことができる。このように、本発明によれば、注文情報が紐付けされた野菜について、収穫時点からその後のすべての情報を提供できる。
(28)つまり、本発明は、トレーサビリティの観点で極めて優れており、野菜の新鮮さや美味しさのみならず、食の安心・安全の確保およびその提供の観点でも、極めて優れている。
(29)前記収穫ステップは、前記成熟収穫青果の収穫者情報及び収穫日時情報のうちの少なくとも1つの情報を、当該成熟収穫青果に紐付けする工程を含む。
(30)また、前記包装ステップは、前記成熟収穫青果の包装者情報及び包装日時情報のうちの少なくとも1つの情報を、当該成熟収穫青果に紐付けする工程を含み、前記出荷ステップは、前記包装体の出荷者情報及び出荷日時情報のうちの少なくとも1つの情報を、当該成熟収穫青果に紐付けする工程を含む。
(31)本発明は、情報の紐付け性に優れたシステムであるところ、収穫ステップに関する情報など、受注後に生じる情報についても容易、迅速かつ正確な紐付けが可能であり、注文者への情報提供の観点で優れており、トレーサビリティの観点で優れている。

図1
図2
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図4
図5
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図7