(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174569
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】仮撚加工機及び糸掛け方法
(51)【国際特許分類】
D02G 1/08 20060101AFI20241210BHJP
D02J 1/22 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
D02G1/08 Z
D02J1/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092462
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】咲花 諒亮
(72)【発明者】
【氏名】出水 良光
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA37
4L036PA05
4L036PA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】仮撚加工機の大型化を抑制しつつ、ディスク型の加撚装置に糸掛けを容易に行えるようにすることである。
【解決手段】仮撚加工機1は、加撚装置15を含む錘が複数配置されており、複数の錘の加撚装置15に対して個別に設けられた複数の加撚装置駆動モータ56と、制御手段60と、複数の錘の加撚装置15に対して個別に設けられた複数の切替ボタン95と、を含む。加撚装置15は、複数のディスクと複数のディスクを回転させる回転軸53とを含むディスクユニットを複数有する。各加撚装置駆動モータ56は、対応する加撚装置15の各ディスクユニットの回転軸53を回転駆動する。各切替ボタン95は、手動操作によって、各回転軸53の回転速度を、少なくとも、糸の生産時の回転速度である第1回転速度と、第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度とで、切り替える切替信号を生成し、切替信号を制御手段に送る。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加撚装置と、
糸が走行する糸走行方向において前記加撚装置の上流側に配置されている第1糸送りローラと、
前記糸走行方向において前記加撚装置の下流側に配置されている第2糸送りローラと、
を含む錘が、複数配置されており、
前記複数の錘の前記加撚装置に対して個別に設けられた複数の加撚装置駆動機構と、
前記複数の錘の前記第1糸送りローラに対して共通して設けられ、複数の前記第1糸送りローラを回転駆動する第1糸送りローラ駆動機構と、
前記複数の錘の前記第2糸送りローラに対して共通して設けられ、複数の前記第2糸送りローラを回転駆動する第2糸送りローラ駆動機構と、
制御手段と、
前記複数の錘の前記加撚装置に対して個別に設けられた複数の切替手段と、
を備え、
前記加撚装置は、
複数のディスクと前記複数のディスクを回転させる回転軸とを含むディスクユニットを複数有し、
前記各ディスクユニットの回転軸が回転することによって前記複数のディスクユニット間を走行している糸に撚りを付与可能であり、
前記各加撚装置駆動機構は、対応する前記加撚装置の前記各ディスクユニットの回転軸を回転駆動し、
前記制御手段は、前記各加撚装置駆動機構と、前記第1糸送りローラ駆動機構と、前記第2糸送りローラ駆動機構と、を制御し、
前記各切替手段は、
手動操作によって、対応する前記加撚装置駆動機構によって駆動される前記各回転軸の回転速度を、少なくとも、糸の生産時の回転速度である第1回転速度と、前記第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度とで、切り替える切替信号を生成し、
前記切替信号を前記制御手段に送る、仮撚加工機。
【請求項2】
前記複数の錘の前記加撚装置に対して個別に設けられた複数の報知部を備え、
前記各報知部は、対応する前記加撚装置駆動機構によって駆動される前記各回転軸の回転速度が前記第2回転速度に到達したことを報知する、請求項1に記載の仮撚加工機。
【請求項3】
前記報知部は、ランプの点灯又は点滅のパターンによって前記各回転軸の回転速度が前記第2回転速度に到達したことを報知する、請求項2に記載の仮撚加工機。
【請求項4】
前記切替信号には、対応する前記加撚装置駆動機構によって駆動される前記各回転軸を、回転が停止する停止状態に切り替える信号が含まれる、請求項1~3の何れか1項に記載の仮撚加工機。
【請求項5】
複数のディスクと前記複数のディスクを回転させる回転軸とを含むディスクユニットを複数有する加撚装置であって、前記各ディスクユニットの回転軸が回転することによって前記複数のディスクユニット間を走行している糸に撚りを付与可能である加撚装置を含む錘が複数配置されており、前記複数の錘の前記加撚装置の前記各ディスクユニットの回転軸の回転速度を、少なくとも、糸の生産時の回転速度である第1回転速度と、前記第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度とで切り替え可能に構成された仮撚加工機、に糸を掛ける糸掛け方法であって、
前記複数の錘の加撚装置のうちの糸掛け対象の加撚装置について、前記各回転軸の回転速度を前記第2回転速度に切り替える切替工程と、
前記各回転軸が、前記第2回転速度で回転しているとき、前記第1回転速度から前記第2回転速度に減少しているとき、又は、前記第2回転速度に向かって増大しているときに、前記複数のディスクユニット間に糸を通すことで前記糸掛け対象の加撚装置に糸を掛ける加撚装置糸掛け工程と、
を含む糸掛け方法。
【請求項6】
前記加撚装置糸掛け工程は、前記各回転軸の回転速度が前記第2回転速度に到達してから行われる請求項5に記載の糸掛け方法。
【請求項7】
前記仮撚加工機に配置された各錘は、糸が走行する糸走行方向において前記加撚装置の下流側に配置された第2糸送りローラを含み、
前記糸掛け対象の加撚装置の下流側に配置された回転する前記第2糸送りローラに糸を掛けるローラ糸掛け工程をさらに含み、
前記加撚装置糸掛け工程は、前記ローラ糸掛け工程の後に行われる請求項5又は6に記載の糸掛け方法。
【請求項8】
前記切替工程が行われて前記各回転軸の回転速度が前記第2回転速度に到達するまでの間に、前記ローラ糸掛け工程が開始される請求項7に記載の糸掛け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のディスクが配置されたディスク型の加撚装置を有する仮撚加工機及び当該仮撚加工機への糸掛け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸を仮撚加工して、巻取部で巻き取る構成の仮撚加工機が知られている。このような仮撚加工機は、走行中の糸に撚りを付与する複数の加撚装置が所定方向に並べられた構成を有する。
【0003】
加撚装置として、例えば特許文献1に記載された固定式のディスク型の加撚装置(特許文献1の三軸フリクション仮撚装置)が多く用いられている。ディスク型の加撚装置とは、螺旋状に配置された複数のディスク(特許文献1のフリクションディスク)を有し、回転する各ディスクの周面に接触しながら走行する糸に撚りを付与するように構成された加撚装置である。
【0004】
上記のようなディスク型の加撚装置への糸掛けは、通常、ディスクが回転している状態で行われる。具体的に説明すると、例えば、糸を保持させた保持部材をオペレータが操作して、回転する複数のディスクの間に糸を通すことで、ディスク型の加撚装置への糸掛けが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ディスク型の加撚装置に糸掛けをする際、糸と回転するディスクの周面とが接触することで糸の張力が変動し、この張力の変動によってオペレータが操作する保持部材が引っ張られる。そうすると、オペレータが保持部材を操作しづらくなり、保持部材がディスクと接触してディスクを破損させてしまう等の問題が生じやすくなる。このような問題は、オペレータが糸掛け作業に慣れていない場合、特に顕著である。
【0007】
糸掛け作業を容易にするために、糸掛けの際に複数のディスクの間を開放させて、複数のディスクの間に糸を通しやすくした開閉式の加撚装置を採用することも考えられる。しかしながら、このような開閉式の加撚装置の場合、ディスクを移動させるスペースを確保する必要があり、仮撚加工機の大型化につながり、敷地に対する生産効率が低くなる。
【0008】
本発明の目的は、仮撚加工機の大型化を抑制しつつ、ディスク型の加撚装置に糸掛けを容易に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の仮撚加工機は、加撚装置と、糸が走行する糸走行方向において前記加撚装置の上流側に配置されている第1糸送りローラと、前記糸走行方向において前記加撚装置の下流側に配置されている第2糸送りローラと、を含む錘が、複数配置されており、前記複数の錘の前記加撚装置に対して個別に設けられた複数の加撚装置駆動機構と、前記複数の錘の前記第1糸送りローラに対して共通して設けられ、複数の前記第1糸送りローラを回転駆動する第1糸送りローラ駆動機構と、前記複数の錘の前記第2糸送りローラに対して共通して設けられ、複数の前記第2糸送りローラを回転駆動する第2糸送りローラ駆動機構と、制御手段と、前記複数の錘の前記加撚装置に対して個別に設けられた複数の切替手段と、を備え、前記加撚装置は、複数のディスクと前記複数のディスクを回転させる回転軸とを含むディスクユニットを複数有し、前記各ディスクユニットの回転軸が回転することによって前記複数のディスクユニット間を走行している糸に撚りを付与可能であり、前記各加撚装置駆動機構は、対応する前記加撚装置の前記各ディスクユニットの回転軸を回転駆動し、前記制御手段は、前記各加撚装置駆動機構と、前記第1糸送りローラ駆動機構と、前記第2糸送りローラ駆動機構と、を制御し、前記各切替手段は、手動操作によって、対応する前記加撚装置駆動機構によって駆動される前記各回転軸の回転速度を、少なくとも、糸の生産時の回転速度である第1回転速度と、前記第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度とで、切り替える切替信号を生成し、前記切替信号を前記制御手段に送る。
【0010】
本発明によれば、オペレータが切替手段を手動操作することによって、複数の錘の加撚装置のうちの糸掛け対象の加撚装置の各ディスクユニットの回転軸の回転速度を糸の生産時の回転速度である第1回転速度から第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度に切り替えてから糸掛けを行うことで次のような利点がある。すなわち、回転軸が糸の生産時の第1回転速度のときに糸掛けする場合と比べて、回転軸の回転速度が遅いことから、回転軸の回転に伴い回転するディスクと糸とが接触することで糸の張力が強く変動することを抑制できる。同様に、回転軸の回転速度が第1回転速度から第2回転速度に向かって減速している途中、又は、回転軸の回転速度が第2回転速度に向かって加速している途中で糸掛けをする場合でも、回転軸が第1回転速度のときに糸掛けする場合と比べて、糸の張力が強く変動することを抑制できる。そうすると、加撚装置への糸掛けの際に、糸を保持させた保持部材をオペレータが操作するとき、糸張力による保持部材の引っ張りが抑えられる。これにより、保持部材とディスクとの接触を回避しつつ、複数のディスクユニットの間に糸を通して糸掛けを行うことが容易となる。さらに、本発明によれば、糸掛け対象以外の加撚装置の回転軸の回転速度を第1回転速度に維持することができるので、仮撚加工機全体としての糸の生産効率の低下を抑制できる。また、本発明では、複数のディスクの間を開放させることなく複数のディスクの間に糸を通すことができるため、開閉式の加撚装置のようにディスクを移動させるスペースを確保する必要がない。このため、開閉式の加撚装置を用いる場合と比べて、仮撚加工機の小型化が可能となり、敷地に対する生産効率が高くなる。一般的に、開閉式の加撚装置と比べると、ディスクの間を開放させずに加撚装置に糸掛けを行うことは困難である。しかしながら、本発明では、回転軸を低速の第2回転速度で回転させた状態、又は、第2回転速度に向かって減速若しくは加速している状態で糸掛けを行うことで糸掛けを容易に行えるので、ディスクの間を開放させない方式の加撚装置を利用するメリットを存分に活かすことができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、各加撚装置駆動機構と、第1糸送りローラ駆動機構と、第2糸送りローラ駆動機構とは、互いに独立して制御される。このため、糸掛け対象の加撚装置の各回転軸の回転速度を第2回転速度に切り替えたとしても、複数の第1糸送りローラ及び複数の第2糸送りローラの回転速度が減少することはない。よって、糸掛けの際に仮撚加工機全体の生産効率が落ちることを抑制できる。
【0012】
本発明の仮撚加工機において、前記複数の錘の前記加撚装置に対して個別に設けられた複数の報知部を備え、前記各報知部は、対応する前記加撚装置駆動機構によって駆動される前記各回転軸の回転速度が前記第2回転速度に到達したことを報知することが好ましい。
【0013】
本発明によれば、オペレータが加撚装置ごとに回転軸の回転速度が第2回転速度に到達しているか否かを把握できる。このため、オペレータが、糸掛け対象の加撚装置の回転軸が第1回転速度のときに誤って糸掛けをしてしまうことを回避できる。
【0014】
本発明の仮撚加工機において、前記報知部は、ランプの点灯又は点滅のパターンによって前記各回転軸の回転速度が前記第2回転速度に到達したことを報知することが好ましい。
【0015】
本発明によれば、オペレータは、加撚装置ごとの回転軸の回転速度を視覚的に素早く判断することができる。
【0016】
本発明の仮撚加工機において、前記切替信号には、対応する前記加撚装置駆動機構によって駆動される前記各回転軸を、回転が停止する停止状態に切り替える信号が含まれることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、ディスクに糸が絡まった場合に、加撚装置ごとに個別に回転軸の回転を停止させることができる。このため、ディスクに糸が絡まっていない加撚装置については、回転軸の回転速度を第1回転速度に維持することができるので、仮撚加工機全体としての糸の生産効率の低下を抑制できる。
【0018】
本発明の糸掛け方法は、複数のディスクと前記複数のディスクを回転させる回転軸とを含むディスクユニットを複数有する加撚装置であって、前記各ディスクユニットの回転軸が回転することによって前記複数のディスクユニット間を走行している糸に撚りを付与可能である加撚装置を含む錘が複数配置されており、前記複数の錘の前記加撚装置の前記各ディスクユニットの回転軸の回転速度を、少なくとも、糸の生産時の回転速度である第1回転速度と、前記第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度とで切り替え可能に構成された仮撚加工機、に糸を掛ける糸掛け方法であって、前記複数の錘の加撚装置のうちの糸掛け対象の加撚装置について、前記各回転軸の回転速度を前記第2回転速度に切り替える切替工程と、前記各回転軸が、前記第2回転速度で回転しているとき、前記第1回転速度から前記第2回転速度に減少しているとき、又は、前記第2回転速度に向かって増大しているときに、前記複数のディスクユニット間に糸を通すことで前記糸掛け対象の加撚装置に糸を掛ける加撚装置糸掛け工程と、を含む。
【0019】
本発明によれば、複数の錘の加撚装置のうちの糸掛け対象の加撚装置の各ディスクユニットの回転軸の回転速度を糸の生産時の回転速度である第1回転速度から第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度に切り替えてから糸掛けを行うことで次のような利点がある。すなわち、回転軸が糸の生産時の第1回転速度のときに糸掛けする場合と比べて、回転軸の回転速度が遅いことから、回転軸の回転に伴い回転するディスクと糸とが接触することで糸の張力が強く変動することを抑制できる。同様に、回転軸の回転速度が第1回転速度から第2回転速度に向かって減速している途中、又は、回転軸の回転速度が第2回転速度に向かって加速している途中で糸掛けをする場合でも、回転軸が第1回転速度のときに糸掛けする場合と比べて、糸の張力が強く変動することを抑制できる。そうすると、加撚装置への糸掛けの際に、糸を保持させた保持部材をオペレータが操作するとき、糸張力による保持部材の引っ張りが抑えられる。これにより、保持部材とディスクとの接触を回避しつつ、複数のディスクユニットの間に糸を通して糸掛けを行うことが容易となる。さらに、本発明によれば、糸掛け対象以外の加撚装置の回転軸の回転速度を第1回転速度に維持することができるので、仮撚加工機全体としての糸の生産効率の低下を抑制できる。また、本発明では、複数のディスクの間を開放させることなく複数のディスクの間に糸を通すことができるため、開閉式の加撚装置のようにディスクを移動させるスペースを確保する必要がない。このため、開閉式の加撚装置を用いる場合と比べて、仮撚加工機の小型化が可能となり、敷地に対する生産効率が高くなる。一般的に、開閉式の加撚装置と比べると、ディスクの間を開放させずに加撚装置に糸掛けを行うことは困難である。しかしながら、本発明では、回転軸を低速の第2回転速度で回転させた状態、又は、第2回転速度に向かって減速若しくは加速している状態で糸掛けを行うことで糸掛けを容易に行えるので、ディスクの間を開放させない方式の加撚装置を利用するメリットを存分に活かすことができる。
【0020】
本発明の糸掛け方法において、前記加撚装置糸掛け工程は、前記各回転軸の回転速度が前記第2回転速度に到達してから行われることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、加撚装置糸掛け工程は、各回転軸の回転速度が第2回転速度で一定となった状態で行われる。このため、糸とディスクの周面とが接触することによって発生する糸張力が安定するため、糸張力が大きく変動することによって保持部材が操作しづらくなることを回避でき、糸掛けがし易くなる。
【0022】
本発明の糸掛け方法において、前記仮撚加工機に配置された各錘は、糸が走行する糸走行方向において前記加撚装置の下流側に配置された第2糸送りローラを含み、前記糸掛け対象の加撚装置の下流側に配置された回転する前記第2糸送りローラに糸を掛けるローラ糸掛け工程をさらに含み、前記加撚装置糸掛け工程は、前記ローラ糸掛け工程の後に行われることが好ましい。
【0023】
本発明によれば、回転する第2糸送りローラに先に糸を掛けることで、糸が第2糸送りローラに引っ張られ、糸が糸走行方向に張った状態となる。張った状態の糸は弛んだ状態の糸と比べて糸揺れしにくい。このため、加撚装置への糸掛けがさらに容易となる。
【0024】
本発明の糸掛け方法において、前記切替工程が行われて前記各回転軸の回転速度が前記第2回転速度に到達するまでの間に、前記ローラ糸掛け工程が開始されることが好ましい。
【0025】
本発明によれば、各回転軸の回転速度が第2回転速度に到達するまでの間にローラ糸掛け工程を開始させることで、作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係る仮撚加工機の概略側面図である。
【
図2】糸の経路に沿って仮撚加工機を展開した模式図である。
【
図5】加撚装置を機台長手方向及び軸方向の両方と直交する方向から見た図である。
【
図7】仮撚加工機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図8】仮撚加工機への糸掛けの手順を示すフローチャートである。
【
図9】糸掛けの進行に伴う回転軸の回転速度の変動の様子、及び、糸張力の推移を示すグラフであって、(a)は、仮撚加工機の稼働を開始するときに糸掛けをする際のグラフであり、(b)は、巻取部による糸の巻き取りの途中で糸掛けをする際のグラフである。
【
図10】糸掛けに用いられる保持部材の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、
図1の紙面垂直方向を機台長手方向とし、紙面左右方向を機台幅方向とする。機台長手方向及び機台幅方向の両方と直交する方向を、重力の作用する上下方向(鉛直方向)とする。以下、これらの方向を適宜用いて説明する。
【0028】
(仮撚加工機の全体構成)
まず、仮撚加工機の全体構成について、
図1~
図3を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る仮撚加工機1の側面図である。
図2は、糸Yの経路(糸道)に沿って仮撚加工機1を展開した模式図である。
図3は、
図1のIII矢視図である。
【0029】
仮撚加工機1は、例えばナイロン(ポリアミド系繊維)等の合成繊維からなる糸Yを仮撚加工可能に構成されている。仮撚加工機1は、糸Yを供給するための給糸部2と、給糸部2から供給された糸Yを仮撚加工する加工部3と、加工部3によって加工された糸Yを巻取ボビンBwに巻き取る巻取部4とを備える。給糸部2、加工部3及び巻取部4が有する各構成要素(それぞれ後述)は、給糸部2から加工部3を通って巻取部4に至る糸道が配置される糸の走行面(
図1の紙面)と直交する機台長手方向において、複数配列されている(
図2参照)。
【0030】
給糸部2は、複数の給糸パッケージPsを保持するクリールスタンド7を有し、加工部3に複数の糸Yを供給する。加工部3は、糸Yが走行する糸走行方向の上流側から順に、第1フィードローラ11(本発明の第1糸送りローラ)、撚止ガイド12、第1加熱装置13、冷却装置14、加撚装置15、第2フィードローラ16(本発明の第2糸送りローラ)、交絡装置17、第3フィードローラ18、第2加熱装置19、第4フィードローラ20が配置された構成となっている。巻取部4は、加工部3で仮撚加工された糸Yを巻取装置21で巻取ボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成する。
【0031】
仮撚加工機1は、スパンと呼ばれる単位ユニットを有する。1つのスパンでは、機台長手方向に並んだ状態で走行する複数の糸Yに対して、同時に仮撚加工を施すことができるように各装置が配置されている。
【0032】
仮撚加工機1には、錘25が複数(例えば12錘)並列に配置されている。各錘25は、1つの給糸パッケージPsと、1つの第1フィードローラ11と、1つの撚止ガイド12と、1つの第1加熱装置13と、1つの冷却装置14と、1つの加撚装置15と、1つの第2フィードローラ16と、1つの交絡装置17と、1つの第3フィードローラ18と、1つの第2加熱装置19と、1つの第4フィードローラ20と、1つの巻取装置21と、を含む(
図2参照)。本実施形態では、1つの第1加熱装置13が2つの錘25に跨って配置されており、1つの第2加熱装置19が複数の錘25(例えば4つの錘25)に跨って配置されている。但しこれに限られない。1つの錘25において、給糸パッケージPsから送られた糸Yが、巻取装置21によって巻き取られて巻取パッケージPwとなる。
【0033】
(加工部の構成)
次に、加工部3の構成について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。
【0034】
第1フィードローラ11は、給糸部2に装着された給糸パッケージPsから糸Yを解舒して第1加熱装置13へ送るように構成されている。複数の第1フィードローラ11の回転は、仮撚加工機1に配置される全ての錘25の第1フィードローラ11に対して共通して設けられた1つの第1ローラ駆動モータ91(本発明の第1糸送りローラ駆動機構、
図7参照)によって駆動される。
【0035】
撚止ガイド12は、後述する加撚装置15で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側に伝播しないようにするためのものである。
【0036】
第1加熱装置13は、第1フィードローラ11から送られてきた糸Yを所定の加工温度に加熱するためのものである(
図1参照)。
【0037】
冷却装置14は、第1加熱装置13で加熱された糸Yを冷却するためのものである。
【0038】
加撚装置15は、いわゆるディスクフリクション方式の加撚装置の一種であり、糸Yに撚りを付与可能に構成されている。加撚装置15のより詳細については後述する。
【0039】
第2フィードローラ16は、加撚装置15で撚りが付与された糸Yを交絡装置17に向けて送るローラである。複数の第2フィードローラ16の回転は、仮撚加工機1に配置される全ての錘25の第2フィードローラ16に対して共通して設けられた1つの第2ローラ駆動モータ92(本発明の第2糸送りローラ駆動機構、
図7参照)によって駆動される。
【0040】
交絡装置17は、糸Yに対して空気を噴射することによって交絡を付与する装置である。
【0041】
第3フィードローラ18は、交絡装置17によって交絡が付与された糸Yを、第2加熱装置19に向けて送るローラである。第3フィードローラ18は、不図示のモータによって駆動される。
【0042】
第2加熱装置19は、第3フィードローラ18から送られてきた糸Yを加熱するための装置である。
【0043】
第4フィードローラ20は、第2加熱装置19によって加熱された糸Yを巻取装置21へ送るためのものである。第4フィードローラ20は、不図示のモータによって駆動される。
【0044】
以上のように構成された加工部3では、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸された糸Yに、加撚装置15によって撚りが付与される。加撚装置15によって形成される撚りは、撚止ガイド12までは伝播するが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第1加熱装置13で加熱されて熱固定された後、冷却装置14で冷却される。加撚装置15から下流では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって各フィラメントが波状に仮撚りされた状態が維持される。加撚装置15によって仮撚りが施された糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩されながら、交絡装置17によって交絡が付与され、糸走行方向における下流側へ案内される。さらに、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩されながら、第2加熱装置19で熱固定される。最後に、第4フィードローラ20から送られた糸Yは、巻取装置21によって巻き取られ、巻取パッケージPwが形成される。
【0045】
(巻取部の構成)
次に、巻取部4の構成について、
図2を参照しつつ説明する。巻取部4は、糸Yを巻取ボビンBwに巻き取る複数の巻取装置21を有する。以上のように構成された巻取部4では、上述した第4フィードローラ20から送られた糸Yが各巻取装置21によって巻取ボビンBwに巻き取られ、巻取パッケージPwが形成される。
【0046】
(加撚装置の構成)
次に、加撚装置15の構成について、
図4~
図6を参照しつつ説明する。
図4は、加撚装置15の斜視図である。
図5は、加撚装置15を機台長手方向及び後述する回転軸53の軸方向(以下、単に軸方向)の両方と直交する方向から見た図である。
図6は、加撚装置15を軸方向から見た図である。
【0047】
加撚装置15は、糸Yに撚りを付与することが可能に構成されている。加撚装置15は、機台長手方向において複数配列されている(
図2参照)。
図4~
図6に示すように、各加撚装置15は、複数のディスクユニット51(本実施形態では3つ)と、支持台54と、加撚装置駆動モータ56(本発明の加撚装置駆動機構)とを有する。各ディスクユニット51は、複数のディスク55(本実施形態では3つ)と、複数のディスク55を回転させる回転軸53と、を有する。
【0048】
各ディスクユニット51の回転軸53は、機台長手方向と略直交する軸方向に延びた軸部材である。なお、軸方向は、必ずしも機台長手方向と略直交していなくても良い。
図6に示すように、3つの回転軸53は、軸方向から見たときに、軸中心が仮想的な正三角形Tの頂点を形成するように配置されている。
【0049】
ディスクユニット51の複数のディスク55は、周面が糸Yに接触することで糸Yに撚りを付与するための部材である。
図4~
図6に示すように、複数のディスク55は、各回転軸53に装着されている。本実施形態では、各回転軸53に3つのディスク55が装着されている(
図4等参照)が、各回転軸53に装着されるディスク55の数はこれに限られない。本実施形態では、各回転軸53及び回転軸53に装着された複数のディスク55は、
図4の位置から移動しないように固定配置されている。加撚装置15は各ディスクユニット51の回転軸53が回転することによって、複数のディスクユニット51の間を走行している糸Yに撚りを付与可能である。
【0050】
各回転軸53に装着された複数のディスク55は、軸方向に延びる螺旋を描くように配置されている。本実施形態では、軸方向における先端側から見たときに、各回転軸53に装着されたディスク55は、時計回りに螺旋を描くように配置されている。このため、複数のディスク55は、糸YにS撚りを施すことが可能である。なお、軸方向における先端側から見たときに、各回転軸53に装着されたディスク55は、反時計回りに螺旋を描くように配置されていてもよい。この場合、複数のディスク55は、糸YにZ撚りを施すことが可能である。
【0051】
複数のディスク55の糸Yとの接触する部分は、例えばポリウレタンで形成されている。但し、複数のディスク55の糸Yとの接触する部分は、例えばセラミックで形成されていてもよい。また、一部のディスク55の糸Yとの接触する部分がポリウレタンで形成されており、他のディスク55の糸Yとの接触する部分がセラミックで形成されていてもよい。
【0052】
支持台54は、不図示のベアリングを介して回転軸53を回転可能に支持する台である。支持台54は、3つの回転軸53を片持ち支持している。
図4及び
図5における紙面上側が軸方向における先端側であり、紙面下側が軸方向における基端側である。糸Yは、回転軸53の軸方向における先端側から基端側へ走行する。すなわち、軸方向における先端側が、糸走行方向における上流側である。軸方向における基端側が、糸走行方向における下流側である。支持台54は、各回転軸53の軸方向における基端側を支持している。各回転軸53は、
図4の位置から移動しないように支持台54に取り付けられている。
【0053】
加撚装置駆動モータ56は、対応する加撚装置15の各ディスクユニット51の回転軸53を回転させるためのものである。言い換えれば、加撚装置駆動モータ56は、3つの回転軸53を同じ向きに回転駆動する機構である。加撚装置駆動モータ56の動力は、不図示のベルトを介して、各回転軸53に伝達される。加撚装置駆動モータ56は、軸方向における先端側から見たときに、各回転軸53を時計回りに回転駆動する(
図6の矢印参照)。
【0054】
また、
図4及び
図5に示すように、複数の切替ボタン95(本発明の切替手段)が、複数の錘25の加撚装置15に対して個別に設けられている。言い換えれば、1つの加撚装置15につき1つの切替ボタン95が設けられている(
図7参照)。切替ボタン95は、手動操作によって、対応する加撚装置駆動モータ56によって駆動される各回転軸53の回転速度を、糸Yの生産時の回転速度である第1回転速度と、第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度と、回転が停止した停止状態とで切り替える切替信号を生成する。そして、切替ボタン95は、生成した切替信号を制御手段60(後述)に送る。糸Yの生産時とは、巻取部4の巻取装置21で糸Yを巻取ボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成するときのことである。具体的には、オペレータが切替ボタン95を手動操作することで、加撚装置駆動モータ56によって回転駆動される回転軸53の回転速度を切り替えるための切替信号が生成される。詳しくは後述するが、制御手段60は、切替ボタン95から送られる切替信号を受信することによって、各回転軸53の回転速度が第1回転速度、第2回転速度又は停止状態のいずれかとなるように加撚装置駆動モータ56を制御する。例えば、オペレータが切替ボタン95を1度押すと各回転軸53の回転速度を第1回転速度に切り替えるための切替信号が生成され、もう1度押すと各回転軸53の回転速度を第2回転速度に切り替えるための切替信号が生成され、所定の時間以上長押しすることで各回転軸53を停止状態に切り替えるための切替信号が生成される。
【0055】
本実施形態において、切替ボタン95は、単色ランプを内蔵している。切替ボタン95は、ランプの点灯のパターンによって、対応する加撚装置15の各回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達したことをオペレータに報知することが可能である。すなわち、切替ボタン95は、本発明の切替手段に加えて、本発明の報知部にも相当する。切替ボタン95は、点灯、点滅及び消灯の何れかを示す。例えば、回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達したときに、切替ボタン95は点滅する。また、回転軸53の回転速度が第1回転速度に到達したときに、切替ボタン95は連続的に点灯する。また、回転軸53が停止状態のとき、切替ボタン95は消灯する。さらに、回転軸53が回転しており、且つ、その回転速度が第1回転速度及び第2回転速度の何れでもないとき、切替ボタン95は、回転軸53の直前の状態に対応して点灯、点滅又は消灯する。例えば、第1回転速度及び第2回転速度以外の回転速度で回転する回転軸53の直前の状態が第2回転速度であった場合、切替ボタン95は第2回転速度に対応して点滅する。
【0056】
(仮撚加工機の電気的構成)
続いて、仮撚加工機1の電気的構成について、
図7に示す。仮撚加工機1は、制御手段60を有する。制御手段60は、複数の加撚装置駆動モータ56と、第1ローラ駆動モータ91と、第2ローラ駆動モータ92とを制御する。制御手段60は、複数の加撚装置駆動モータ56、第1ローラ駆動モータ91、第2ローラ駆動モータ92、切替ボタン95、に電気的に接続されている。第1ローラ駆動モータ91は、複数の錘25の第1フィードローラ11に対して共通して1つ設けられている。単一の第1ローラ駆動モータ91は、複数の第1フィードローラ11に接続されている。第2ローラ駆動モータ92は、複数の錘25の第2フィードローラ16に対して共通して1つ設けられている。単一の第2ローラ駆動モータ92は、複数の第2フィードローラ16に接続されている。第1ローラ駆動モータ91、第2ローラ駆動モータ92は、例えば、機台長手方向における仮撚加工機1の端部に配置されている。なお、
図7には、複数の第1フィードローラ11のうちの一部のみを記載しており、他の記載は省略している。第2フィードローラ16についても同様である。
【0057】
加撚装置駆動モータ56は、回転軸53に接続されている。制御手段60は、回転軸53の回転速度を切り替える切替信号が切替ボタン95から送られると、当該切替ボタン95に対応する加撚装置駆動モータ56を制御して、回転軸53の回転を駆動する。
図7には、複数の加撚装置15のうちの一部のみを記載し、他の記載は省略している。なお、本実施形態では、加撚装置駆動モータ56は加撚装置15に内蔵されているが、加撚装置駆動モータ56は加撚装置15の外部に設けられていてもよい。また、制御手段60は複数の加撚装置15に対して共通する1つ設けられているが、制御手段60は複数の加撚装置15に対して個別に複数設けられていてもよい。
【0058】
本実施形態において、各加撚装置駆動モータ56と、第1糸送りローラ駆動モータ91と、第2糸送りローラ駆動モータ92とは、互いに独立して制御手段60に制御される。言い換えれば、加撚装置駆動モータ56による複数の回転軸53の回転駆動と、第1ローラ駆動モータ91による複数の第1フィードローラ11の駆動と、第2ローラ駆動モータ92による複数の第2フィードローラ16の駆動と、はそれぞれ独立して行われる。
【0059】
(仮撚加工機への糸掛け)
次に、仮撚加工機1に糸Yを掛ける手順について、
図8及び
図9を参照しつつ以下に説明する。
図8は、仮撚加工機1への糸掛けの手順を示すフローチャートである。
図9(a)は、仮撚加工機1の稼働を開始するときに糸掛けをする際の、糸掛けの進行に伴う回転軸53の回転速度の変動の様子、及び、糸張力の推移を示すグラフである。
図9(b)は、巻取部4による糸Yの巻き取りの途中で糸掛けをする際の、糸掛けの進行に伴う回転軸53の回転速度の変動、及び、糸張力の推移を示すグラフである。糸張力は、加撚装置15と第2フィードローラ16の間を走行する糸Yの張力の測定値である。
図9における回転軸53の回転速度とは、糸掛け対象の加撚装置15の3つのディスクユニット51の回転軸53の回転速度のことである。1つの加撚装置15に設けられた3つの回転軸53の回転速度は同じである。
図9(a)及び
図9(b)において、回転軸53の回転速度は実線で示し、糸張力は二点鎖線で示す。
図9は、糸掛けの各ステップ(後述、
図8参照)における回転軸53の回転速度及び糸張力を相対的に示したものであり、回転軸53の回転速度及び糸張力の具体的な数値の記載は省略している。以下、複数の加撚装置15のうちの糸掛け対象の加撚装置15と、当該加撚装置15の糸走行方向の上流側及び下流側に配置されている加工部3及び巻取部4の構成要素と、に糸Yを掛ける際の手順について説明する。なお、糸掛けの際、第1フィードローラ11、第2フィードローラ16、第3フィードローラ18及び第4フィードローラ20は回転しているものとする。
【0060】
まず、オペレータは、糸Yを吸引保持するサクションガン(不図示)によって、給糸部2から供給される糸Yを吸引保持させる(ステップS1)。なお、ステップS1は、回転軸53が停止状態のとき、又は、回転軸53が第1回転速度で回転しているときに行われる(
図9(a)及び
図9(b)を参照)。次に、オペレータは切替ボタン95を操作して、糸掛け対象の加撚装置15の複数の回転軸53の回転速度を第2回転速度に切り替える(ステップS2)。ステップS2が、本発明の切替工程に相当する。なお、仮撚加工機1の稼働を開始するときに糸掛けをする場合は、複数の回転軸53を停止状態から第2回転速度に切り替える。この場合、オペレータは、切替ボタン95を2度押す。これにより、複数の回転軸53は停止状態から第2回転速度へと加速を始める(
図9(a)のS2aを参照)。また、巻取部4による糸Yの巻き取り中であって複数の回転軸53が第1回転速度で回転しているときに、例えば糸切れなどが生じて複数のディスク55に再度糸を掛ける必要が生じた場合は、複数の回転軸53の回転速度を第1回転速度から第2回転速度に切り替える。この場合、オペレータは、切替ボタン95を1度押す。これにより、複数の回転軸53は第1回転速度から第2回転速度へと減速を始める(
図9(b)のS2bを参照)。
【0061】
次に、オペレータはサクションガンを操作して、糸Yを第2フィードローラ16に掛ける(ステップS3)。ステップS3が、本発明のローラ糸掛け工程に相当する。ステップS3は、ステップS2が行われてから複数の回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達するまでの間に開始される。すなわち、ステップS3は、複数の回転軸53が停止状態から第2回転速度に加速している間、又は、複数の回転軸53が第1回転速度から第2回転速度に減速している間に行われる(
図9(a)及び
図9(b)を参照)。
【0062】
続いて、サクションガンを所定の位置に載置し、棒状の保持部材101(
図10参照)を用いて加撚装置15に糸掛けを行う(ステップS4)。以下、具体的に説明する。保持部材101は、その先端部に糸Yが掛けられるように構成されている。オペレータは、まず、糸Yのサクションガンよりも上流側の部分を保持部材101に保持させる。そして、オペレータは、糸を保持させた保持部材101を操作して、各ディスクユニット51の、回転する複数のディスク55の間に糸Yを通すことで、加撚装置15に糸掛けを行う。ステップS4が、本発明の加撚装置糸掛け工程に相当する。ステップS4は、複数の回転軸53の回転速度が第2回転速度に向かって加速しているとき、又は、複数の回転軸53の回転速度が第1回転速度から第2回転速度に向かって減速しているときに行われてもよい。但し、ステップS4は、複数の回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達した後に行われることが好ましい。
【0063】
次に、オペレータは切替ボタン95を操作して、糸掛け対象の加撚装置15の複数の回転軸53の回転速度を第1回転速度に切り替える(ステップS5)。具体的には、オペレータは、切替ボタン95を1度押す。これにより、複数の回転軸53の回転速度は第2回転速度から第1回転速度へと加速を始める。
【0064】
続いて、オペレータは、糸Yを保持させた保持部材101を操作して、糸Yを撚止ガイド12に掛ける(ステップS6)。なお、加撚装置15に糸Yを掛けてから、撚止ガイド12に糸Yを掛けるまでの間に、第1加熱装置13及び冷却装置14に糸が掛けられるが、本実施形態では説明を省略する。ステップS6の後、オペレータは、糸Yを保持させた保持部材101を操作して、糸Yを第1フィードローラ11に掛ける(ステップS7)。ステップS6及びステップS7は、複数の回転軸53の回転速度が第1回転速度に到達してから行われてもよく、第1回転速度に到達する前に行われてもよい。
【0065】
ステップS7が完了した後、且つ、複数の回転軸53の回転速度が第1回転速度に到達した後、オペレータは、所定の位置に載置していたサクションガンを操作して、第2フィードローラ20の下流側に配置されている加工部3の各構成要素及び巻取部4に糸Yを掛ける(ステップS8)。すなわち、ステップS8において、交絡装置17、第3フィードローラ18、第2加熱装置19、第4フィードローラ20、巻取装置21の順に糸Yが掛けられる。
【0066】
以上によって、仮撚加工機1への糸掛けが完了する。
【0067】
(効果)
以上のように、本実施形態の仮撚加工機1は、加撚装置15と、糸走行方向において加撚装置15の上流側に配置されている第1フィードローラ11と、糸走行方向において加撚装置15の下流側に配置されている第2フィードローラ16と、を含む錘25が、複数配置されている。仮撚加工機1は、複数の錘25の加撚装置15に対して個別に設けられた複数の加撚装置駆動モータ56と、複数の錘25の第1フィードローラ11に対して共通して設けられ、複数の第1フィードローラ11を回転駆動する第1ローラ駆動モータ91と、複数の錘25の第2フィードローラ16に対して共通して設けられ、複数の第2フィードローラ16を回転駆動する第2ローラ駆動モータ92と、制御手段60と、複数の錘25の加撚装置15に対して個別に設けられた複数の切替ボタン95と、を含む。加撚装置15は、複数のディスク55と複数のディスク55を回転させる回転軸53とを含むディスクユニット51を複数有し、各ディスクユニット51の回転軸53が回転することによって複数のディスクユニット51間を走行している糸Yに撚りを付与可能である。各加撚装置駆動モータ56は、対応する加撚装置15の各ディスクユニット51の回転軸53を回転駆動する。制御手段60は、各加撚装置駆動モータ56と、第1ローラ駆動モータ91と、第2ローラ駆動モータ92と、を制御する。各切替ボタン95は、手動操作によって、対応する加撚装置駆動モータ56によって駆動される各回転軸53の回転速度を、少なくとも、糸Yの生産時の回転速度である第1回転速度と、第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度とで、切り替える切替信号を生成し、切替信号を制御手段60に送る。本実施形態によれば、オペレータが切替ボタン95を手動操作することによって、複数の錘25の加撚装置15のうちの糸掛け対象の加撚装置15のディスクユニット51の回転軸53の回転速度を糸Yの生産時の回転速度である第1回転速度から第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度に切り替えてから糸掛けを行うことで次のような利点がある。すなわち、回転軸53が糸Yの生産時の第1回転速度のときに糸掛けする場合と比べて、回転軸53の回転速度が遅いことから、糸Yが回転するディスク55と接触することで糸Yの張力が強く変動することを抑制できる(
図9(a)及び(b)を参照)。同様に、回転軸53の回転速度が第1回転速度から第2回転速度に向かって減速している途中、又は、回転軸53の回転速度が第2回転速度に向かって加速している途中で糸掛けをする場合でも、回転軸53が第1回転速度のときに糸掛けする場合と比べて、糸Yの張力が強く変動することを抑制できる。そうすると、加撚装置15への糸掛けの際に、糸Yを保持させた保持部材101をオペレータが操作するとき、糸張力による保持部材101の引っ張りが抑えられる。これにより、保持部材101とディスク55との接触を回避しつつ、複数のディスクユニット51の間に糸Yを通して糸掛けを行うことが容易となる。さらに、本実施形態によれば、糸掛け対象以外の加撚装置15の回転軸53の回転速度を第1回転速度に維持することができるので、仮撚加工機1全体としての糸Yの生産効率の低下を抑制できる。
【0068】
また、本実施形態では、複数のディスク55の間を開放させることなく複数のディスク55の間に糸Yを通すことができるため、開閉式の加撚装置のようにディスク55を移動させるスペースを確保する必要がない。このため、開閉式の加撚装置を用いる場合と比べて、仮撚加工機1の小型化が可能となり、敷地に対する生産効率が高くなる。一般的に、開閉式の加撚装置と比べると、ディスク55の間を開放させずに加撚装置15に糸掛けを行うことは困難である。しかしながら、本実施形態では、回転軸53を低速の第2回転速度で回転させた状態、又は、第2回転速度に向かって減速若しくは加速している状態で糸掛けを行うことで糸掛けを容易に行えるので、ディスク55の間を開放させない方式の加撚装置15を利用するメリットを存分に活かすことができる。
【0069】
さらに、本実施形態では、各加撚装置駆動モータ56と、第1ローラ駆動モータ91と、第2ローラ駆動モータ92とは、互いに独立して制御される。言い換えれば加撚装置駆動モータ56は、第1ローラ駆動モータ91による複数の第1フィードローラ11の駆動及び第2ローラ駆動モータ92による第2フィードローラ16の駆動から独立して、複数の回転軸53の回転を駆動する。このため、糸掛け対象の加撚装置15の回転軸53の回転速度を第2回転速度に切り替えたとしても、複数の第1フィードローラ11及び複数の第2フィードローラ16の回転速度が減少することはない。よって、糸掛けの際に仮撚加工機1全体の生産効率が落ちることを抑制できる。
【0070】
また、本実施形態の仮撚加工機1は、複数の錘25の加撚装置15に対して個別に設けられた複数の報知部としての切替ボタン95を含む。各切替ボタン95は、加撚装置15の複数の回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達したことを報知する。本実施形態によれば、オペレータが加撚装置15ごとにディスク55の回転速度が第2回転速度に到達しているか否かを把握できる。このため、オペレータが、糸掛け対象の加撚装置15のディスク55が第1回転速度のときに誤って糸掛けをしてしまうことを回避できる。
【0071】
また、本実施形態の仮撚加工機1では、報知部としての切替ボタン95は、ランプの点灯又は点滅のパターンによって各回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達したことを報知する。本実施形態によれば、オペレータは、加撚装置15ごとの回転軸53の回転速度を視覚的に素早く判断することができる。
【0072】
さらに、本実施形態の仮撚加工機1では、切替ボタン95は、複数の錘25の加撚装置15に対して個別に設けられている。各切替ボタン95は、対応する加撚装置駆動モータ56による各ディスク55の回転速度を切り替える切替信号を制御手段60に送る。本実施形態では、任意の加撚装置駆動モータ56によって回転駆動されるディスク55の回転速度を切り換える切替信号を制御手段60に送ろうとする場合、当該加撚装置駆動モータ56に対応して設けられた切替ボタン95をオペレータが操作すればよい。このため、誤って糸掛け対象ではない他の加撚装置15の回転軸53の回転速度を変更してしまうミスを抑えることができる。
【0073】
また、本実施形態の仮撚加工機1では、切替信号には、対応する加撚装置駆動モータ56によって駆動される各回転軸53を、回転が停止する停止状態に切り替える信号が含まれる。本実施形態によれば、ディスク55に糸Yが絡まった場合に、加撚装置15ごとに個別に回転軸53の回転を停止させることができる。このため、ディスク55に糸Yが絡まっていない加撚装置15については、回転軸53の回転速度を第1回転速度に維持することができるので、仮撚加工機1全体としての糸Yの生産効率の低下を抑制できる。
【0074】
本実施形態の糸掛け方法は、複数の錘25の加撚装置15の各ディスクユニット51の回転軸53の回転速度を、少なくとも、糸Yの生産時の回転速度である第1回転速度と、第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度とで切り替え可能に構成された仮撚加工機1、に糸Yを掛ける糸掛け方法である。各錘25は、複数のディスク55と複数のディスク55を回転させる回転軸53とを含むディスクユニット51を複数有する加撚装置15であって、各ディスクユニット51の回転軸53が回転することによって複数のディスクユニット51間を走行している糸Yに撚りを付与可能である加撚装置15を含む。糸掛け方法は、切替工程と、加撚装置糸掛け工程と、を含む。切替工程は、複数の錘25の加撚装置15のうちの糸掛け対象の加撚装置15について、各回転軸53の回転速度を第2回転速度に切り替える工程である。加撚装置糸掛け工程は、各回転軸53が、第2回転速度で回転しているとき、第1回転速度から第2回転速度に減少しているとき、又は、第2回転速度に向かって増大しているときに、複数のディスクユニット51間に糸Yを通すことで糸掛け対象の加撚装置15に糸Yを掛ける工程である。本実施形態によれば、複数の錘25の加撚装置15のうちの糸掛け対象の加撚装置15の各ディスクユニット51の回転軸53の回転速度を糸Yの生産時の回転速度である第1回転速度から第1回転速度よりも遅い回転速度である第2回転速度に切り替えてから糸掛けを行うことで次のような利点がある。すなわち、回転軸53が糸Yの生産時の第1回転速度のときに糸掛けする場合と比べて、回転軸53の回転速度が遅いことから、糸Yが回転するディスク55と接触することで糸Yの張力が強く変動することを抑制できる(
図9(a)及び(b)を参照)。同様に、回転軸53の回転速度が第1回転速度から第2回転速度に向かって減速している途中、又は、回転軸53の回転速度が第2回転速度に向かって加速している途中で糸掛けをする場合でも、回転軸53が第1回転速度のときに糸掛けする場合と比べて、糸Yの張力が強く変動することを抑制できる。そうすると、加撚装置15への糸掛けの際に、糸Yを保持させた保持部材101をオペレータが操作するとき、糸張力による保持部材101の引っ張りが抑えられる。これにより、保持部材101とディスク55との接触を回避しつつ、複数のディスクユニット51の間に糸Yを通して糸掛けを行うことが容易となる。さらに、本実施形態によれば、糸掛け対象以外の加撚装置15の回転軸53の回転速度を第1回転速度に維持することができるので、仮撚加工機1全体としての糸Yの生産効率の低下を抑制できる。
【0075】
また、本実施形態では、複数のディスク55の間を開放させることなく複数のディスク55の間に糸Yを通すことができるため、開閉式の加撚装置のようにディスク55を移動させるスペースを確保する必要がない。このため、開閉式の加撚装置を用いる場合と比べて、仮撚加工機1の小型化が可能となり、敷地に対する生産効率が高くなる。一般的に、開閉式の加撚装置と比べると、ディスク55の間を開放させずに加撚装置15に糸掛けを行うことは困難である。しかしながら、本実施形態では、回転軸53を低速の第2回転速度で回転させた状態、又は、第2回転速度に向かって減速若しくは加速している状態で糸掛けを行うことで糸掛けを容易に行えるので、ディスク55の間を開放させない方式の加撚装置15を利用するメリットを存分に活かすことができる。
【0076】
加えて、本実施形態では、ディスク55が回転しているときに加撚装置15への糸掛けを行っている。ディスク55が回転しているときに糸掛けを行うことで、ディスク55の周面のうちの糸Yと接触する部分を変化させることができる。このため、ディスク55の周面の局所的な摩耗を抑えることができる。その結果、糸Yとディスク55の周面との接触状態の変動を抑えることができ、糸品質の低下を抑制できる。
【0077】
また、本実施形態の糸掛け方法では、加撚装置糸掛け工程は、各回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達してから行われることが好ましい。これによれば、加撚装置糸掛け工程は、複数の回転軸53の回転速度が第2回転速度で一定となった状態で行われる。このため、糸Yとディスク55の周面とが接触することによって発生する糸張力が安定するため、糸張力が大きく変動することによって保持部材101が操作しづらくなることを回避でき、糸掛けがし易くなる。
【0078】
また、本実施形態の糸掛け方法では、仮撚加工機1に配置された各錘25は糸走行方向において加撚装置15の下流側に配置された第2フィードローラ16を含み、糸掛け対象の加撚装置15の下流側に配置された回転する第2フィードローラ16に糸Yを掛けるローラ糸掛け工程をさらに含む。そして、加撚装置糸掛け工程は、ローラ糸掛け工程の後に行われる。本実施形態によれば、回転する第2フィードローラ16に先に糸Yを掛けることで、糸Yが第2フィードローラ16に引っ張られ、糸Yが糸走行方向に張った状態となる。張った状態の糸Yは弛んだ状態の糸と比べて糸揺れしにくい。このため、加撚装置15への糸掛けがさらに容易となる。
【0079】
さらに、本実施形態の糸掛け方法では、切替工程が行われて各回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達するまでの間に、ローラ糸掛け工程が開始される。本実施形態によれば、各回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達するまでの間にローラ糸掛け工程を開始させることで、作業時間を短縮することができる。
【0080】
(変形例)
以下に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0081】
上記実施形態では、本発明の切替手段としての切替ボタン95が、複数の錘25の加撚装置駆動モータ56に対して個別に設けられている。そして、各切替ボタン95は、生成した所定の切替信号を制御手段60に送るように構成されている。しかしながら、本発明の切替手段は、上記実施形態の構成に限られない。例えば、切替手段は、複数の加撚装置駆動モータ56と接続された単一の中央操作パネルに含まれるものでもよい。中央操作パネルは、複数の錘25の加撚装置駆動モータ56に個別に対応する複数の切替手段を有する。具体例を挙げると、切替手段は、例えば、中央操作パネル上に表示されるアイコンなどの信号入力部であって、複数の錘25の加撚装置駆動モータ56に個別に対応する複数の信号入力部である。この場合、オペレータによって、中央操作パネル上に表示された複数の信号入力部が個別に操作されることで、対応する加撚装置駆動モータ56によって駆動される回転軸53の回転速度を第1回転速度と第2回転速度と停止状態とで切り替える切替信号が生成される。
【0082】
上記実施形態では、切替信号は、対応する加撚装置駆動モータ56によって駆動される各回転軸53の回転を停止する停止状態に切り替える信号が含まれる。しかしながら、切替信号には、対応する加撚装置駆動モータ56によって駆動される各回転軸53の回転を停止する停止状態に切り替える信号が含まれなくてもよい。この場合、例えば、各加撚装置15に設けられた各回転軸53の停止状態への切り替えは、すべての加撚装置15について一括で行われる。
【0083】
上記実施形態では、切替ボタン95は、点灯、点滅及び消灯の何れかを示す単色ランプを内蔵している。しかしながら、切替ボタン95は、複数種類の色を示すランプであってもよい。この場合、例えば、切替ボタン95は、点灯するランプの色によって回転軸53の回転速度を示す。
【0084】
また、切替ボタン95にランプが内蔵されていなくてもよく、例えば、切替ボタン95とは別に、本発明の報知部としてのランプが加撚装置15ごとに設けられていてもよい。この場合、例えば、ランプは、回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達したときに点灯する。さらに、加撚装置15ごとに複数のランプ(例えば、3つ)が設けられていてもよい。この場合、複数のランプは、回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達したときに点灯する第1ランプと、回転軸53の回転速度が第1回転速度に到達したときに点灯する第2ランプと、を含む。
【0085】
上記実施形態では、第2フィードローラ16に糸Yを掛けた(ステップS3)後に、加撚装置15に糸Yを掛けている(ステップS4)。しかしながら、先に加撚装置15に糸Yを掛けてから第2フィードローラ16に糸Yを掛けてもよい。この場合、加撚装置15に糸Yを掛けるよりも前に、オペレータは切替ボタン95を操作して、糸掛け対象の加撚装置15の複数の回転軸53の回転速度を第2回転速度に切り替える。
【0086】
上記実施形態では、糸掛け対象の加撚装置15の複数の回転軸53の回転速度を第1回転速度に切り替えた(ステップS5)後に、糸Yを撚止ガイド12に掛けている(ステップS6)。しかしながら、糸Yを撚止ガイド12に掛けた後に、糸掛け対象の加撚装置15の複数の回転軸53の回転速度を第1回転速度に切り替えてもよい。また、上記実施形態では、糸掛け対象の加撚装置15の複数の回転軸53の回転速度を第1回転速度に切り替えた(ステップS5)後に、糸Yを第1フィードローラ11に掛けている(ステップS7)。しかしながら、糸Yを第1フィードローラ11に掛けた後に、糸掛け対象の加撚装置15の複数の回転軸53の回転速度を第1回転速度に切り替えてもよい。但し、糸Yは、撚止ガイド12に掛けた後に第1フィードローラ11に掛ける必要がある。
【0087】
上記実施形態では、ステップS6において、糸Yを撚止ガイド12に掛ける。しかしながら、撚止ガイド12が、加撚装置15に糸Yを掛けるときの退避位置と巻取部4による糸Yの巻き取り時の稼働位置との間で移動可能な構成の場合、以下のような動作が行われる。すなわち、ステップS6において、糸Yを撚止ガイド12に掛けた後、さらに、撚止ガイド12を稼働位置に移動させる。
【0088】
上記実施形態では、加撚装置15に糸Yを掛けてから、撚止ガイド12に糸Yを掛けるまでの間に、第1加熱装置13及び冷却装置14に糸が掛けられる。しかしながら、加撚装置15に糸Yを掛けた後、さらに撚止ガイド12に糸Yを掛けてから、第1加熱装置13及び冷却装置14に糸が掛けられてもよい。撚止ガイド12、第1加熱装置13、冷却装置14の糸掛けの順序は、糸の種類や装置構成によって様々である。
【0089】
上記実施形態では、加撚装置15は、3つの回転軸を有する3軸の加撚装置15である。しかしながら、加撚装置は、5つの回転軸を有する5軸の加撚装置でもよい。
【0090】
上記実施形態の加撚装置1では、各回転軸53及び回転軸53に装着された複数のディスク55は、
図4の位置から移動しないように固定配置されている。しかしながら、加撚装置15は、このような構成に限定されない。例えば、加撚装置は、回転軸53及びディスク55は、
図4の位置から移動可能に構成されていてもよい。この場合において、本願発明の構成を適用することにより、複数のディスク55の間を開放させることなく複数のディスク55の間に糸Yを通すことができる。これにより、ディスク55を移動させるスペースを確保することが不要となり、ディスク55を移動させて加撚装置を開閉させる場合と比べて、仮撚加工機1の小型化が可能となり、敷地に対する生産効率が高くなる。
【0091】
上記実施形態では、第1ローラ駆動モータ91は、仮撚加工機1に配置される全ての錘25の第1フィードローラ11に対して共通して1つ設けられている。しかしながら、第1ローラ駆動モータ91は、仮撚加工機1に配置される全ての錘25のうち、少なくとも2つの錘25の第1フィードローラ11に対して共通して1つ設けられていてもよい。例えば、錘25が12錘配置されている場合において、第1ローラ駆動モータ91は、4錘の錘25ごとに共通して1つ設けられてもよい。この場合、第1ローラ駆動モータ91は、12錘の錘25の第1フィードローラ11に対して3つ設けられることとなる。第2ローラ駆動モータ92についても同様である。すなわち、第2ローラ駆動モータ92は、仮撚加工機1に配置される全ての錘25のうち、少なくとも2つの錘25の第2フィードローラ16に対して共通して1つ設けられていてもよい。
【0092】
上記実施形態の加撚装置15では、複数のディスク55は、螺旋を描くように配置されている。しかしながら、加撚装置15は、複数のディスク55が螺旋を描くように配置されているものに限られない。
【符号の説明】
【0093】
1 仮撚加工機
4 巻取部
11 第1フィードローラ(第1糸送りローラ)
15 加撚装置
16 第2フィードローラ(第2糸送りローラ)
25 錘
51 ディスクユニット
53 回転軸
55 ディスク
56 加撚装置駆動モータ(加撚装置駆動機構)
60 制御手段
91 第1ローラ駆動モータ(第1糸送りローラ駆動機構)
92 第2ローラ駆動モータ(第2糸送りローラ駆動機構)
95 切替ボタン(切替手段及び報知部)
101 保持部材
Y 糸
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
本実施形態において、各加撚装置駆動モータ56と、第1ローラ駆動モータ91と、第2ローラ駆動モータ92とは、互いに独立して制御手段60に制御される。言い換えれば、加撚装置駆動モータ56による複数の回転軸53の回転駆動と、第1ローラ駆動モータ91による複数の第1フィードローラ11の駆動と、第2ローラ駆動モータ92による複数の第2フィードローラ16の駆動と、はそれぞれ独立して行われる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
ステップS7が完了した後、且つ、複数の回転軸53の回転速度が第1回転速度に到達した後、オペレータは、所定の位置に載置していたサクションガンを操作して、第2フィードローラ16の下流側に配置されている加工部3の各構成要素及び巻取部4に糸Yを掛ける(ステップS8)。すなわち、ステップS8において、交絡装置17、第3フィードローラ18、第2加熱装置19、第4フィードローラ20、巻取装置21の順に糸Yが掛けられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
さらに、本実施形態では、各加撚装置駆動モータ56と、第1ローラ駆動モータ91と、第2ローラ駆動モータ92とは、互いに独立して制御される。言い換えれば加撚装置駆動モータ56は、第1ローラ駆動モータ91による複数の第1フィードローラ11の駆動及び第2ローラ駆動モータ92による複数の第2フィードローラ16の駆動から独立して、複数の回転軸53の回転を駆動する。このため、糸掛け対象の加撚装置15の回転軸53の回転速度を第2回転速度に切り替えたとしても、複数の第1フィードローラ11及び複数の第2フィードローラ16の回転速度が減少することはない。よって、糸掛けの際に仮撚加工機1全体の生産効率が落ちることを抑制できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
また、本実施形態の仮撚加工機1は、複数の錘25の加撚装置15に対して個別に設けられた複数の報知部としての切替ボタン95を含む。各切替ボタン95は、加撚装置15の複数の回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達したことを報知する。本実施形態によれば、オペレータが加撚装置15ごとに回転軸53の回転速度が第2回転速度に到達しているか否かを把握できる。このため、オペレータが、糸掛け対象の加撚装置15の回転軸53が第1回転速度のときに誤って糸掛けをしてしまうことを回避できる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
さらに、本実施形態の仮撚加工機1では、切替ボタン95は、複数の錘25の加撚装置15に対して個別に設けられている。各切替ボタン95は、対応する加撚装置駆動モータ56による各回転軸53の回転速度を切り替える切替信号を制御手段60に送る。本実施形態では、任意の加撚装置駆動モータ56によって回転駆動される回転軸53の回転速度を切り換える切替信号を制御手段60に送ろうとする場合、当該加撚装置駆動モータ56に対応して設けられた切替ボタン95をオペレータが操作すればよい。このため、誤って糸掛け対象ではない他の加撚装置15の回転軸53の回転速度を変更してしまうミスを抑えることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
上記実施形態では、切替信号は、対応する加撚装置駆動モータ56によって駆動される各回転軸53を、回転が停止する停止状態に切り替える信号が含まれる。しかしながら、切替信号には、対応する加撚装置駆動モータ56によって駆動される各回転軸53を、回転が停止する停止状態に切り替える信号が含まれなくてもよい。この場合、例えば、各加撚装置15に設けられた各回転軸53の停止状態への切り替えは、すべての加撚装置15について一括で行われる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
上記実施形態の
加撚装置15では、各回転軸53及び回転軸53に装着された複数のディスク55は、
図4の位置から移動しないように固定配置されている。しかしながら、加撚装置15は、このような構成に限定されない。例えば、加撚装置は、回転軸53及びディスク55は、
図4の位置から移動可能に構成されていてもよい。この場合において、本願発明の構成を適用することにより、複数のディスク55の間を開放させることなく複数のディスク55の間に糸Yを通すことができる。これにより、ディスク55を移動させるスペースを確保することが不要となり、ディスク55を移動させて加撚装置を開閉させる場合と比べて、仮撚加工機1の小型化が可能となり、敷地に対する生産効率が高くなる。