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特開2024-174575系統安定化システム、電力系統システム、および系統安定化方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174575
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】系統安定化システム、電力系統システム、および系統安定化方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/24 20060101AFI20241210BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241210BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02J3/24
H02J3/00 130
H02J3/00 180
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092469
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉原 徹
(72)【発明者】
【氏名】板井 準
(72)【発明者】
【氏名】大原 伸也
(72)【発明者】
【氏名】黒田 英佑
(72)【発明者】
【氏名】中山 靖章
(72)【発明者】
【氏名】川本 直輝
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB06
5G064CB10
5G064DA03
5G066AA02
5G066AA03
5G066AE03
5G066AE09
5G066HA06
5G066HB02
5G066HB06
(57)【要約】
【課題】再生エネルギー電源を含む場合でも、公平性を確保しつつ、アグリゲータのような統合制御システムを介して、電力系統に必要な電源制限量を確保する。
【解決手段】電源負荷群を含む電力系統の構成データと、電源負荷群を構成する電源負荷の需要予測データと、電力系統において想定される事故データとに基づいて、想定される事故が生じた場合に、解列すべき電源負荷の解列量を算出し、電源負荷の需要と、電源負荷群の解列実績と、電源負荷群を解列したときの解列量に応じた解列コストとに基づいて算出された、電源負荷群を制御する電源負荷の解列可能量・解列コストを、電源負荷群を管理する電源負荷群制御装置から受け取り、電源負荷の解列量と、過去の解列実績と、受け取った解列可能量・解列コストとに基づいて、電源負荷群に対して所定の解列指標により安定運用するための解列量を算出し、算出した安定運用するための解列量と、電源負荷群の電源負荷の需要とに基づいて、各電源負荷を解列するための整定値を算出する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサとメモリとを有したコンピュータにより、電力系統における電源負荷の解列量の確保を支援する系統安定化システムであって、
前記プロセッサは、
電源負荷群を含む電力系統の構成データと、前記電源負荷群を構成する電源負荷の需要予測データと、前記電力系統において想定される事故データとに基づいて、前記想定される事故が生じた場合に、解列すべき前記電源負荷の解列量を算出し、
前記電源負荷の需要と、前記電源負荷群の解列実績と、前記電源負荷群を解列したときの解列量に応じた解列コストとに基づいて算出された、前記電源負荷群を制御する電源負荷の解列可能量・解列コストを、前記電源負荷群を管理する電源負荷群制御装置から受け取り、
前記電源負荷の解列量と、過去の解列実績と、前記受け取った解列可能量・解列コストとに基づいて、前記電源負荷群に対して所定の解列指標により安定運用するための解列量を算出し、
算出した前記安定運用するための解列量と、前記電源負荷群の電源負荷の需要とに基づいて、各電源負荷を解列するための整定値を算出する、
ことを特徴とする系統安定化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の系統安定化システムであって、
前記解列コストは、前記電源負荷群において計算され、前記電源負荷群の解列に伴う損失コストを含むことを特徴とする系統安定化システム。
【請求項3】
請求項1に記載の系統安定化システムであって、
前記解列指標とは、前記電源負荷群にて計測される、系統電圧や系統周波数を含む情報である、
ことを特徴とする系統安定化システム。
【請求項4】
プロセッサとメモリとを有したコンピュータにより、電力系統における電源負荷の解列量の確保を支援する電力系統システムであって、
前記電力系統システムは、前記コンピュータを有して構成される、電力系統に接続された電源負荷と、当該電源負荷を管理する電源負荷群制御装置とを有した電源負荷群と、電源負荷群の解列量を算出する系統安定化システムと、を有し、
前記系統安定化システムは、
電源負荷群を含む電力系統の構成データと、前記電源負荷群を構成する電源負荷の需要予測データと、前記電力系統において想定される事故データとに基づいて、前記想定される事故が生じた場合に、解列すべき前記電源負荷の解列量を算出し、
前記電源負荷群を管理する電源負荷群制御装置は、
前記電源負荷の需要と、前記電源負荷群の解列実績と、前記電源負荷群を解列したときの解列量に応じた解列コストとに基づいて、前記電源負荷群を制御する電源負荷の解列可能量・解列コストを算出し、
前記系統安定化システムは、
前記電源負荷の解列量と、過去の解列実績と、前記受け取った解列可能量・解列コストとに基づいて、前記電源負荷群に対して所定の解列指標により安定運用するための解列量を算出し、
前記電源負荷群制御装置は、
算出した前記安定運用するための解列量と、前記電源負荷群の電源負荷の需要とに基づいて、各電源負荷を解列するための整定値を算出する、
ことを特徴とする電力系統システム。
【請求項5】
プロセッサとメモリとを有したコンピュータにより、電力系統における電源負荷の解列量の確保を支援する系統安定化方法であって、
電源負荷群を含む電力系統の構成データと、前記電源負荷群を構成する電源負荷の需要予測データと、前記電力系統において想定される事故データとに基づいて、前記想定される事故が生じた場合に、解列すべき前記電源負荷の解列量を算出し、
前記電源負荷の需要と、前記電源負荷群の解列実績と、前記電源負荷群を解列したときの解列量に応じた解列コストとに基づいて算出された、前記電源負荷群を制御する電源負荷の解列可能量・解列コストを、前記電源負荷群を管理する電源負荷群制御装置から受け取り、
前記電源負荷の解列量と、過去の解列実績と、前記受け取った解列可能量・解列コストとに基づいて、前記電源負荷群に対して所定の解列指標により安定運用するための解列量を算出し、
算出した前記安定運用するための解列量と、前記電源負荷群の電源負荷の需要とに基づいて、各電源負荷を解列するための整定値を算出する、
ことを特徴とする系統安定化方法。
【請求項6】
請求項5に記載の系統安定化方法であって、
前記解列コストは、前記電源負荷群の解列に伴う損失コストを含み、前記電源負荷群において計算される、
ことを特徴とする系統安定化方法。
【請求項7】
請求項5に記載の系統安定化方法であって、
前記解列指標は、系統電圧や系統周波数を含む情報であり、前記電源負荷群にて計測される、
ことを特徴とする系統安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の安定性を維持するための、系統安定化システム、電力系統システム、および系統安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統で落雷などに起因する故障が発生すると、一部の同期発電機(Synchronous Generator:SG)の出力が不安定となる場合がある。この不安定現象に対して有効な対策を講じなければ、不安定な同期発電機が時間とともに増加し、最終的には大停電に至る恐れがある。
【0003】
上述の問題に対し、従来の電力系統安定化装置では、故障時に不安定な同期発電機を電力系統から遮断、すなわち電源制限することで、電力系統の過渡安定度を維持してきた。例えば、従来の電力系統安定化装置では、電力系統における想定故障時の過渡安定度を維持するために電源制限する同期発電機を予め数値シミュレーションにより演算し、想定故障が実際に生じた際に当該同期発電機を電源制限する安定化制御を行っている。この電力系統安定化装置では、故障時の同期発電機の内部相差角が大きな同期発電機から電源制限することで、過渡安定度の維持を図っている。
【0004】
他方近年、CO2排出量削減のために、火力発電などの同期発電機の代替として、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー電源の導入が盛んに進められており、電力系統に占める同期発電機の割合は減少傾向にある。然るに、同期発電機の割合が減ると、それらが従来担っていた電力系統の慣性や電圧維持能力が低下することで、系統安定度が低下する恐れがある。
【0005】
また、同期発電機の減少は、従来の電力系統安定化装置における安定化手段の減少を意味する。そのため、従来の電力系統安定化装置による過渡安定度維持が困難となる可能性や、系統安定度維持に必要な電源制限量が確保できない可能性がある。上述の問題に対し、今後導入増加が見込まれる再生エネルギー電源を電源制限候補に加えることで、過渡安定度を維持できる可能性が高まる。
【0006】
この点に関して、再生可能エネルギー電源を電源制限候補に含めた電力系統安定化装置に関する発明として、特許文献1が知られている。特許文献1は、出力量を減少または停止させる再生可能エネルギー発電装置を選択し、効率よく電力系統の安定性を確保することができる電力系統安定化装置を提供することを目的とし、「想定される対象故障ケースに関する安定度を算出する安定度計算部11と、1つ以上の加速傾向の同期発電機4を抽出する加速傾向同期発電機抽出部12と、再生可能エネルギー発電装置6の出力量を第1の削減量P1で減少させた場合の加速傾向の同期発電機6の減速感度を算出する感度計算部13と、抽出された再生可能エネルギー発電装置6の、安定度が安定と判断される出力量の削減総量P3を決定する再生エネルギー減少量追加部14と、出力量を減少させる再生可能エネルギー発電装置6を決定する減少対象決定部15と、を備える電力系統安定化装置。」としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-96472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、再生エネルギー電源が多数接続された、同期発電機の運転台数が少ない電力系統において、故障発生時などに同期発電機を電源制限した場合、電力系統が不安定となる可能性があるという背景に基づく。当該背景から、再生エネルギー電源の電源制限による安定化効果を感度で表し、その感度に基づいて再生エネルギー電源の電源制限対象を同期発電機よりも優先して選択し、再生可能エネルギー電源の電源制限だけでは足りない場合に同期発電機の電源制限対象を選択する。
【0009】
しかし、故障が発生する地域によっては、電力系統に占める再生可能エネルギー電源の割合が少ないことや、電源制限による安定化効果が高い再生可能エネルギー電源が少ないことが考えられる。その場合は、同期発電機よりも優先して再生可能エネルギー電源の電源制限対象を選択する特許文献1の方法では、安定化に必要な総電源制限量の増加(電源制限からの復帰に要するコスト増加)、過度な電源制限による系統への悪影響、電源制限する再生可能エネルギー電源の選択に要する演算量の増加、などの問題が生じる可能性がある。
【0010】
また、近年、再生エネルギー電源の数は大きく増加し、個別に直接、電源制限指令を与えるには、通信網の整備が不可欠である。また、複数の電源や負荷を統合制御するアグリゲータも現れ、アグリゲータを介して、運転指令や発電電力を決定するシステムもある。電源制限量の確保についても、アグリゲータを介して実現できることが望ましい。
【0011】
また、電源制限された電源は、発電機会を失い損失を被る。特定の電源ばかり電源制限の対象とすると、公平性が確保されない。
【0012】
このように、従来技術では、公平性を確保しつつ、アグリゲータのような統合制御システムを介して、電力系統に必要な電源制限量を確保する、という点について開示されていない。
【0013】
以上のことから、本発明が解決しようとする課題は、再生エネルギー電源を含む場合でも、公平性を確保しつつ、アグリゲータのような統合制御システムを介して、電力系統に必要な電源制限量を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる系統安定化システムは、プロセッサとメモリとを有したコンピュータにより、電力系統における電源負荷の解列量の確保を支援する系統安定化システムであって、前記プロセッサは、電源負荷群を含む電力系統の構成データと、前記電源負荷群を構成する電源負荷の需要予測データと、前記電力系統において想定される事故データとに基づいて、前記想定される事故が生じた場合に、解列すべき前記電源負荷の解列量を算出し、前記電源負荷の需要と、前記電源負荷群の解列実績と、前記電源負荷群を解列したときの解列量に応じた解列コストとに基づいて算出された、前記電源負荷群を制御する電源負荷の解列可能量・解列コストを、前記電源負荷群を管理する電源負荷群制御装置から受け取り、前記電源負荷の解列量と、過去の解列実績と、前記受け取った解列可能量・解列コストとに基づいて、前記電源負荷群に対して所定の解列指標により安定運用するための解列量を算出し、算出した前記安定運用するための解列量と、前記電源負荷群の電源負荷の需要とに基づいて、各電源負荷を解列するための整定値を算出する、ことを特徴とする系統安定化システムとして構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、再生エネルギー電源を含む場合でも、公平性を確保しつつ、アグリゲータのような統合制御システムを介して、電力系統に必要な電源制限量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】第一の実施例における電力系統と電源負荷群と系統安定化システムの構成の概念図。
図1B】第一の実施例における電力系統と電源負荷群と系統安定化システムの他の構成の概念図。
図1C】コンピュータ概略図。
図2】本実施例における系統安定化システムの機能と構成の説明図。
図3】発電・需要予測DB(DataBase)の説明図。
図4】系統DBの説明図。
図5】想定事故DBの説明図。
図6】解列実績DBの説明図。
図7A】解列可能量・解列コストのデータの説明図。
図7B】解列可能量・解列コストのデータの説明図(全体構成)。
図8A】解列指標・解列量のデータの説明図。
図8B】解列指標・解列量のデータの説明図(全体構成)。
図9】電源負荷群制御の制御構成を示した図。
図10】第二の実施形態の概念図。
図11】総解列量計算部の計算フローの説明図。
図12】解列指標解列量計算部の計算フローの説明図。
図13】各機器の解列整定値計算部の計算フローの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0018】
各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0019】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0020】
実施例において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0021】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0022】
最初に、図1Aを用いて、本実施例における電力系統システムの概念図を説明する。なお、図1Aは、本発明を説明するために必要な機器、制御を図示したものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の機器、制御が含まれていてもよい。また、説明の簡便化のため、電源負荷群が2つの場合を例示しているが、3つ以上であっても、本発明を適用可能である。
【0023】
図1Aは、電力系統101、系統安定化システム102、電源負荷群103A、電源負荷群103Bを有する電力系統システム1000の一例を示す図である。電力系統システム1000は、電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を含むシステムである。
【0024】
電源負荷群103Aは、電源負荷群制御装置104A、電源105A、負荷106Aを有する。電源負荷群103Bは、電源負荷群制御装置104B、電源105B、負荷106Bを有する。電源負荷群103Aおよび電源負荷群103Bを、単に電源負荷群103と呼ぶこともある。また、電源負荷群制御装置104Aおよび電源負荷群制御装置104B、電源105Aおよび電源105B、負荷106Aおよび負荷106Bを、それぞれ、単に電源負荷群制御装置104、電源105、負荷106と呼ぶこともある。
【0025】
電源負荷群103とは、電源負荷群制御装置104によって、電源・負荷が統合制御されて管理される集合である。例えば、電源負荷群制御装置104としては、その役割を担うアグリゲータが考えられ、電源負荷群103としては、アグリゲータによって管理される再生エネルギー電源・負荷や、地方給電所による電源・負荷が考えられる。
【0026】
電源負荷には、同期発電機等の非再生エネルギー電源の電源負荷、太陽光発電機等の再生エネルギー電源の電源負荷を含む。また、電源制限には、電力系統の故障時に、不安定な電源を電力系統から遮断する方法だけでなく、電源の出力を抑制または停止する方法を含む。また、負荷制限には、電力系統の故障時に、不安定な電源から電力供給を受ける設備や機器を電力系統から遮断する方法だけでなく、設備や機器への入力を抑制または停止する方法を含む。つまり、電源負荷の安定化制御には、上述した電源制限、例えば、故障時に不安定な同期発電機、太陽光発電機を電力系統から遮断する制限だけでなく、これらの出力を抑制または停止する方法もある。そのため、以下では、これらを電力系統から遮断することに加え、出力抑制および停止も含めて電源制限と呼び、このような電源制限および負荷制限を含めて解列と呼ぶこととする。また、解列による電源負荷の安定化制御を行う場合には、上述した非再生エネルギー電源の電源負荷および再生エネルギー電源の電源負荷に対する制御を含む。解列に関する説明については後述する。以下では、非再生エネルギー電源として同期発電機を例に説明し、再生エネルギー電源の例として太陽光発電機を例に説明することがある。また、設備、機器は一例である。
【0027】
なお、説明の簡便化のため、図1では、電源負荷群については電源1か所、負荷1か所を図示しているが、電源や負荷が2か所以上あってもよいし、電源のみ、負荷のみであっても本技術を適用可能である。
【0028】
図1Aでは、電力系統101が1つの場合を例示したが、例えば、図1Bに示すように、複数(この例では2つ)の電源系統101(電力系統101a、101b)を有した電力系統システム1000Aでは、ある電力系統のアグリゲータ(電源負荷群制御装置104)が機器の故障などによって解列処理ができない不調の場合(例えば、電力融通が必要となる場合)、一方のアグリゲータから他方の電力系統のアグリゲータに対して解列処理を依頼してもよい。これにより、ある電力系統のアグリゲータが不調の場合であっても、他の電力系統のアグリゲータが代理して解列処理を行うことができる。この場合、解列処理に必要な情報と共に、上記不調のアグリゲータを識別するための情報が、上記他の電力系統のアグリゲータに送信される。
【0029】
また、系統安定化システム102、電源負荷群制御装置104は、例えば、図1C(コンピュータ概略図)に示すような、CPU2002と、メモリ2003と、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置2004と、CD(Compact Disk)やUSBメモリ等の可搬性を有する記憶媒体に対して情報を読み書きする外部媒体出力装置2007と、キーボードやマウス等の入力装置2006と、ディスプレイ等の出力装置2005と、通信ネットワークに接続するためのNIC(Network Interface Card)等のネットワーク通信装置2008と、を備えた一般的なサーバやコンピュータ2001により実現できる。
【0030】
また、本システムに記憶され、あるいは処理に用いられる様々なデータは、CPU2002がメモリ2003または外部記憶装置2004から読み出して利用することにより実現可能である。また、アグリゲータシステム1000が有する各機能部(例えば、後述する総解列量計算部205、解列指標解列量計算部206、解列整定値計算部901、解列可能量・解列コスト計算部902)は、CPU2002が外部記憶装置2004に記憶されている所定のプログラムをメモリ2003にロードして実行することにより実現可能である。
【0031】
上述した所定のプログラムは、外部媒体出力装置2007を介して記憶媒体から、あるいは、ネットワーク通信装置2008を介してネットワークから、外部記憶装置2004に記憶(ダウンロード)され、それから、メモリ2003上にロードされて、CPU2002により実行されるようにしてもよい。また、外部媒体出力装置2007を介して、記憶媒体から、あるいはネットワーク通信装置2008を介してネットワークから、メモリ2003上に直接ロードされ、CPU2002により実行されるようにしてもよい。
【0032】
次に、本明細書における解列、解列量、解列可能量、解列コスト、解列指標について説明する。
【0033】
まず解列について説明する。本明細書における解列とは、電力系統内で事故が起こった場合、需要と供給の急激なアンバランスが生じた際などに、電力系統の安定運用を維持するために、電力系統から電気的に切り離すことを指す。上述のとおり、以下に示す解列には、電源制限、負荷制限の双方を含むものとする。
【0034】
次に、解列量とは、解列すべき電力の大きさである。例えば、再生エネルギーの急激な発電増加に伴い、系統周波数が増加した場合には、切り離すべき再生エネルギーや発電設備の発電電力を指す。
【0035】
次に、解列可能量とは、系統安定化システム102からの指令ないし解列指標に基づいて、電源負荷群の中で切り離してもよい電力の大きさである。
【0036】
解列可能量は、電源負荷群ごとに、電源負荷群制御装置104で計算される。
【0037】
次に、解列コストとは、解列に伴う費用であり、電源負荷群ごとに、電源負荷群制御装置104で計算されるものである解列コストは、例えば解列に伴う発電機会や電力売電機会の損失コストや、再度電力系統に接続するための再連系コストなどが考えられる。後述するように、解列コストは、電源負荷群103において計算され、電源負荷群103の解列に伴う損失コストを含む。
【0038】
次に、解列指標とは、電源負荷群ないし電源や負荷で計測され、電源や負荷を解列すべきか判断する指標である。具体的には、電源や負荷の接続点で計測された周波数や電圧、その複合的な情報を含むものである。換言すれば、解列指標は、電源負荷群103にて計測される、系統電圧や系統周波数を含む情報である。
【0039】
次に、本実施例における系統安定化システムの機能と構成について、図2から図8Bを用いて説明する。
【0040】
図2は、系統安定化システム102の構成の一例を示す図である。図2に示すように、系統安定化システム102は、発電・需要予測DB(DataBase)201、系統DB202、想定事故DB203、解列実績DB204、総解列量計算部205、解列指標解列量計算部206を有する。系統安定化システム102は、電源負荷群制御装置104から、解列可能量・解列コスト207を受け取り、解列指標・解列量208を電源負荷群制御装置104に送信する。
【0041】
発電・需要予測DB201は、電力系統101内に接続された同期発電機や太陽光発電機の発電電力や電力需要を予測したDBであり、気象情報や過去の実績などに基づいて計算可能である。
【0042】
図3は、発電・需要予測DB201の構成の一例である。図3は、説明をわかりやすくするため、簡易的に記載したものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、そのDBを任意に構築可能である。図3では、例えば、時刻「6:00」における、同期発電機Aの発電電力の予測値が「100MW」、同期発電機Bの発電電力の予測値が「50MW」、電力系統101内の負荷の一つである需要家の需要Aの予測値は「90MW」、電力系統101内の別の需要家の需要Bの予測値は「40MW」であることを示している。これらの内容は、従来から知られている様々な技術を用いて予測可能である。発電・需要予測DB201は、電源負荷群103ごと、あるいは電力系統101ごとなど、本システムが適用される環境に応じた単位で記憶されてよい。
【0043】
系統DB202は、電力系統101の構成に関するDBであり、母線や発電所、変電所など、電力系統101配下の電源負荷を含む電力系統の構成、および、潮流状態や接続状態など運用状態に関する情報を含むDBである。
【0044】
図4は、系統DB202の構成の一例である。図4は、説明をわかりやすくするため、簡易的に記載したものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、そのDBを任意に構築可能である。図4では、例えば、送電線(ブランチ)、同期発電機、負荷、再生エネルギー電源(例えば、太陽光発電機)をはじめ、電力系統101を構成する要素の構成が記憶されている。系統DB202は、電源負荷群103ごと、あるいは電力系統101ごとなど、本システムが適用される環境に応じた単位で記憶されてよい。
【0045】
想定事故DB203は、電力系統101の中で想定される事故のDBであり、送電線の地絡や発電所の故障といった想定される事故、および、それに伴う電力系統101の影響を記憶したDBである。
【0046】
図5は、想定事故DB203の構成の一例である。図5は、説明をわかりやすくするため、簡易的に記載したものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、そのDBを任意に構築可能である。図5では、例えば、内部相差角「100」(deg.)、周波数変動の最大値が「-30%」である場合、電源系統101について想定される故障として「故障A」に該当することを示している。想定事故DB203は、電源負荷群103ごと、あるいは電力系統101ごとなど、本システムが適用される環境に応じた単位で記憶されてよい。
【0047】
解列実績DB204は、過去の発電設備・需要負荷を解列した実績に関するDBである。 図6は、解列実績DB204の構成の一例である。図6は、説明をわかりやすくするため、簡易的に記載したものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、そのDBを任意に構築可能である。図6では、例えば、「YY/MM/DD1 19:00」に、発電機A(例えば、電源105A)、負荷A(例えば、負荷106A)を解列したことを示している。解列実績DB204は、電源負荷群103ごと、あるいは電力系統101ごとなど、本システムが適用される環境に応じた単位で記憶されてよい。
【0048】
次に、解列可能量・解列コスト207、解列指標・解列量208について説明する。
【0049】
図7A、7Bは、本実施例における解列可能量・解列コスト207を示すデータの一例である。解列可能量・解列コスト207は、電源負荷群103において計算され、系統安定化システム102に送信される。図7Aに示すように、解列可能量・解列コスト207は、解列可能量と解列コストを含むデータである。図7Aでは、例えば、解列可能な発電量「+100MW」を解列したときにかかるコストは「XXX円」であることを示している。このように、発電量や負荷量に応じたコストを電源負荷群103側で定めている。解列可能量・解列コスト207は、電源負荷群103ごと、あるいは電力系統101ごとなど、本システムが適用される環境に応じた単位で記憶されてよい。
【0050】
解列可能量・解列コスト207は、実際には、図7Bに示すように、電源負荷ごと(この例では電源ごと)に解列可能量・解列コスト207が記憶され、それらの合計が電源負荷群103の解列可能量・解列コスト207として記憶される。図7Bでは、例えば、電源105A_1、電源105_A2のコストの合計が、電源負荷群103Aのコストとして記憶されている。負荷106についても同様に記憶される。
【0051】
図8A、8Bは、本実施例における解列指標・解列量208を示すデータの一例である。図8Aに示すように、解列指標・解列量208は、系統安定化システム102において計算され、各電源負荷群103に送信され、解列指標・解列量を含むデータである。図8Aは、解列指標(評価指標)として電力系統の周波数を例に示しており、例えば50.1[Hz]を超えた場合には、各電源負荷群103をXXX[MW]解列するよう、各電源負荷群103に対し、指令を行う。解列指標・解列量208は、電源負荷群103ごと、あるいは電力系統101ごとなど、本システムが適用される環境に応じた単位で記憶されてよい。
【0052】
解列指標・解列量208は、実際には、図8Bに示すように、電源負荷ごとに解列指標・解列量208が記憶され、それらの合計が電源負荷群103の解列指標・解列量208として記憶され、さらに、複数の電源負荷群103の解列指標・解列量208の合計が、電力系統101全体の解列指標・解列量208として記憶される。図8Bでは、電源105A、負荷106Aの解列量の合計が、電源負荷群103Aの解列量として記憶され、さらに電源負荷群103A、電源負荷群103B、これらの電源負荷群以外の電力系統101配下の他の機器の解列量の合計が、電源負荷群101全体の解列量として記憶されている。
【0053】
次に、本実施例における系統安定化システム102の機能について説明する。
【0054】
まず、総解列量計算部205では、発電・需要予測DB(DataBase)201(図3)、系統DB202(図4)、想定事故DB203(図5)を基に、想定される事故による系統安定性への影響、および解列すべき電源・負荷の総量を計算する。
【0055】
総解列量計算部205の計算フローを図9に示す。本計算フローは大きく、系統安定性計算A11、各想定事故の解列量計算A12、最終的な総解列量の計算A13の各ステップから構成される。
【0056】
系統安定性計算A11では、電力系統の過渡安定性計算を実施し、電力系統101内で各想定事故が発生した際に、安定運用が可能か否かを計算する。
【0057】
例えば、総解列量計算部205は、図4の系統DB202を参照し、電力系統101が有する各要素の種類や構成を読み取る。例えば、総解列量計算部205は、電力系統101に含まれる全ての同期発電機(発電機A、B、…)の定格容量、定格出力などの情報、ブランチのノードNo、抵抗などの情報を読み取る。そして、総解列量計算部205は、図3の発電・需要予測DB201に記憶されている各時刻ごとの発電電力の予測値と需要の予測値との差分から、図5に示した想定事故DB203の事故として、内部相差角閾値が「100(deg.)」に満たない、かつ周波数変動最大値が「-30(%)」という故障Aが生じたときにも電力供給が可能であるか否かを判定する。この例では、地点間の送電を実現するために内部相差角の閾値が「100(deg.)」であるため、この値を満たさない2地点が存在する場合、当該事故が発生したことにより、電力系統101は安定運用が可能でない、つまり解列が必要であると判定される。ここでは、同期発電機(発電機A、B、…)について説明したが、太陽光発電機についても同様に考えてよい。
【0058】
各想定事故の解列量計算A12では、総解列量計算部205は、系統安定性計算A11で安定運用ができない結果について、電力系統の過渡安定性計算を実施し、どのタイミングでどの程度解列すれば安定運用可能かを計算する。
【0059】
例えば、総解列量計算部205は、図3は時系列に予測されているため、さらに図8に示した解列指標・解列量208を参照し、各時刻ごとに、安定運用可能か否かを判定する。つまり、総解列量計算部205は、解列が必要であると判定された図3の各時刻ごとに、図8の各評価指標を満たすか否かを判定する。例えば、総解列量計算部205は、評価指標「50.1」(Hz)を満たさない場合には、当該時刻で安定運用するために「XXX」だけ解列量が必要であると判定する。また、「50.1」(Hz)は満たすが「50.2」(Hz)を満たさない場合は、「YYY」だけ解列量が必要であると判定する。
【0060】
解列指標・解列量の計算A13では、総解列量計算部205は、各想定事故の解列量計算A12で得られた解列量を基に、電力系統101の安定運用に必要な解列指標・解列量を計算する。例えば、総解列量計算部205は、ある想定事故について必要な解列量「XXX」と、別の想定事故について必要な解列量「YYY」の総和を計算する。
【0061】
電力系統101の安定運用に必要な解列指標・解列量の計算方法については、例えば、想定される事故の中で最も系統安定性に悪影響を与えるケースを抽出し、そのケースにおいて解列すべき電源・負荷の量を計算する方法が考える。また、想定される事故の発生確率を用いて、系統安定性の悪影響の期待値を計算し、解列すべき電源・負荷の量を計算する方法も考えられる。
【0062】
次に、解列指標解列量計算部206において、総解列量計算部205で計算された、電力系統101の安定運用に必要な解列指標・解列量と、解列実績DB204(図6)と、解列可能量・解列コスト207(図7)から、各電源負荷群の解列指標・解列量208を計算し、計算した解列指標・解列量208を電力系統101の安定運用に必要な解列指標・解列量として、各電源負荷群に送信する。
【0063】
図10は、解列指標解列量計算部の計算フローであり、各電源負荷群に指令する解列指標・解列量の計算A21から構成される。解列指標解列量計算部206は、解列指標・解列量の計算A21では、総解列量計算部205で計算された電力系統101の安定運用に必要な解列指標・解列量と、解列実績DB204(図6)と、解列可能量・解列コスト207(図7)を基に、例えば電力系統101の解列コストを最小化するように、電力系統101の機器および電源負荷群に割り振る解列指標・解列量を計算する。例えば、解列指標解列量計算部206は、解列実績DB204を参照し、総解列量計算部205で計算された電力系統101の安定運用に必要な解列指標・解列量を満たす解列機器の組み合わせを特定する。さらに、解列指標解列量計算部206は、解列可能量・解列コスト207を参照し、特定した上記解列機器や解列機器の組み合わせによる解列可能量(発電量または需要量)に対応する解列コストを算出する。解列指標解列量計算部206は、算出した解列コストのなかで最も低コストとなる解列コストを実現する解列機器の組み合わせを、上記特定した解列機器の組み合わせのなかから求める。解列指標解列量計算部206は、求めた上記最も低コストとなる解列コストを実現する解列機器を有する電源負荷群103のそれぞれに、当該解列機器についての解列指標・解列量を送信する。
【0064】
次に各電源負荷群制御装置104において、電源負荷群内の電源・負荷の解列整定値の計算のための構成と、解列可能量・コストの計算について図9を用いて説明する。
【0065】
図9は電源負荷群制御装置の制御構成を示した図であり、各機器の解列整定値計算部901、解列可能量・解列コスト計算部902、発電・需要DB903、解列実績DB904、解列コストDB905および各再生エネルギー・負荷への解列整定値906、解列指標・解列量208、解列可能量・コスト207を有する。
【0066】
発電・需要DB903は、電源負荷群内の発電設備と需要についてのDBであり、図3と同様のDBである。以下では説明を省略するが、図3に示した発電・需要予測DB201には予測値が格納されている一方、発電・需要DB903には、実際に使用された電力の実績値や需要の実績値が記憶されている。
【0067】
解列実績DB904は、電源負荷群内の発電設備と需要の解列実績を示すDBであり、図6と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
解列コストDB905は、電源負荷群内の各発電設備・需要を解列する際にかかるコストであり、図7と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0069】
各機器の解列整定値計算部901では、発電・需要DB903、解列指標・解列量208を基に、電源負荷群内の各発電設備・需要の解列整定値を設定する。
【0070】
各機器の解列整定値計算部901の計算フロー図を図12に示す。図12は、主に、各機器の解列可能量計算部A31と、各電源・負荷への解列整定値計算部A32とを有する。各機器の解列可能量計算部A31では、発電・需要DB903を参照し、各機器の現在の発電電力や電力需要の大きさを読み取る。各機器の解列整定値計算部901は、読み取った各機器の現在の発電電力や電力需要の大きさと、最低限残すべき発電電力や電力需要の大きさとの差分を算出し、算出した当該差分を、各機器の解列可能量として計算する。各電源・負荷への解列整定値計算部A32では、各機器の解列可能量および解列指標に基づいて、最終的に各機器に与える解列指標と解列量を決定する。
【0071】
解列量の決定については、例えば、解列指標が系統周波数の場合で50.1[Hz]を超えた場合に、各電源負荷群をXXX[MW]解列するような解列指標・解列量208が送信された場合は、上述したように、電源負荷群内の各発電設備・需要の解列量の合計値がXXX[MW]となるよう、電源負荷群内の各発電設備・需要の解列整定値を決定する。ここでは、系統周波数について例示したが、系統電圧についても同様に、所定の電圧を超えた場合に、各電源負荷群の解列量を決定することができる。本明細書における解列整定値とは、周波数リレーの周波数リレー整定値や電圧リレーの電圧整定値のように、ある整定値を超えたら、機器が解列するよう動作させるための整定値を指す。
【0072】
解列可能量・解列コスト計算部902では、発電・需要DB903、解列実績DB904、解列コストDB905から、電源負荷群としての解列可能量および解列コストを計算し、系統安定化システムに送信する。
【0073】
解列コストの計算方法については、解列に参加した場合に、発電機会の損失や、需要の場合は停電による損失コストを解列コストとして計算する方法が考えられる。解列可能量は、例えば、上述したように、各機器の現在の発電電力や電力需要の大きさから、最低限残すべき発電出力や需要負荷の大きさの差分を、各機器の解列可能量として計算する方法が考えられる。なお、本実施例では、解列整定値に基づいて、各電源・負荷を解列する例について説明したが、例えば電線路単位で電源・負荷を一括して解列する場合についても有効である。以上が本発明の第一の実施例の説明である。
【0074】
次に本発明の第二の実施例について図13を用いて説明する。図13は、本発明の第二の実施形態の概念図である。第一の実施例では、電源負荷群が解列可能量・解列コストを宣言し、系統安定化システムにて解列指標・解列量を算出する形態であったが、第二の実施例では、両者の中間に取引市場が挟まる形で、解列量を取引する形態である。例えば、電源負荷群103Aが、電源負荷群103Aや103Bを管理する電源負荷群制御装置104を有したアグリゲータを介して、解列指標・解列量208により定められた解列可能量と、解列可能量・解列コスト207により定められた解列コストとを取引市場1301に提供する。そして、その見返りとして、上記アグリゲータは、解列に関する解列インセンティブを受け取る。一方、系統安定化システム102を管理する電力系統101の運用者は、取引市場1301に対して対価を支払って、必要な解列量を買い取ることで、運用者の配下にある電力系統101の安定運用を維持することができるようになる。
【0075】
図13では、1つの系統運用者と、2つの再生エネルギー負荷群の場合を図示しいているが、本発明の趣旨に反しない範囲で、より多くの系統運用者や再生エネルギー負荷群があっても構わない。
【0076】
本発明の第二の実施例は、本発明における「電源負荷群にて解列可能量・解列コストを計算し、系統安定化システムにて確保すべき解列量を計算し、各電源負荷群に解列指標・解列量を送信する」ことによって実現可能である。
【0077】
以上が第二の実施例の説明である。なお、第二の実施例では、取引市場を介した例を説明したが、取引形態として、上述したアグリゲータと電力系統101の運用者とが直接取引する相対取引についても適用可能である。
【0078】
このように、上記実施例では、図1A、2、9等を用いて説明したように、プロセッサとメモリとを有したコンピュータにより、電力系統における電源負荷の解列量の確保を支援する系統安定化システム102において、上記プロセッサは、電源負荷群を含む電力系統の構成データ(例えば、系統DB202、図4)と、上記電源負荷群を構成する電源負荷の需要予測データ(例えば、発電需要予測DB201、図3)と、上記電力系統において想定される事故データ(例えば、想定事故DB203、図5)とに基づいて、上記想定される事故が生じた場合に、解列すべき上記電源負荷の解列量を算出し、上記電源負荷の需要(例えば、図3同様の構成を有した発電需要DB903)と、上記電源負荷群の解列実績(例えば、図6同様の構成を有した解列実績DB904)と、上記電源負荷群を解列したときの解列量に応じた解列コスト(図7同様の構成を有した解列コストDB905)とに基づいて算出された、上記電源負荷群を制御する電源負荷の解列可能量・解列コスト(例えば、解列可能量・解列コスト207、図7)を、上記電源負荷群を管理する電源負荷群制御装置(例えば、電源負荷群制御装置104、アグリゲータ)から受け取り、上記電源負荷の解列量と、過去の解列実績(例えば、解列実績DB204、図6)と、上記受け取った解列可能量・解列コストとに基づいて、上記電源負荷群に対して所定の解列指標(評価指標)により安定運用するための解列量(例えば、解列指標・解列量208、図8)を算出し、算出した上記安定運用するための解列量と、上記電源負荷群の電源負荷の需要(例えば、発電需要DB903)とに基づいて、各電源負荷を解列するための整定値を算出する。これにより、再生エネルギー電源を含む場合でも、公平性を確保しつつ、アグリゲータのような統合制御システムを介して、電力系統に必要な電源制限量を確保することができる。その結果、電力系統で事故が起きた場合に、電力系統の安定運用のために解列すべき電源と負荷の量を、事前に確保することができるようになる。
【0079】
また、解列コストに基づいて系統安定化システムで解列量を計算することで、解列コストを低く設定した電源負荷群は解列に協力することで系統安定化システムからインセンティブを受け取り、解列コストを高く設定した電源負荷群は解列を拒否できる、といった、解列への協力可否を電源負荷群側で宣言できるため、一義的に系統安定化システムから解列指令を出すより、公平性が担保されやすい。
【0080】
また、プロセッサとメモリとを有したコンピュータにより、電力系統における電源負荷の解列量の確保を支援する電力系統システム1000において、上記電力系統システム1000は、上記コンピュータを有して構成される、電力系統に接続された電源負荷105、106と、当該電源負荷を管理する電源負荷群制御装置104とを有した電源負荷群103と、電源負荷群103の解列量を算出する系統安定化システム102と、を有し、上記系統安定化システムは、電源負荷群を含む電力系統の構成データ(例えば、系統DB202、図4)と、上記電源負荷群を構成する電源負荷の需要予測データ(例えば、発電需要予測DB201、図3)と、上記電力系統において想定される事故データ(例えば、想定事故DB203、図5)とに基づいて、上記想定される事故が生じた場合に、解列すべき上記電源負荷の解列量を算出し、上記電源負荷群を管理する電源負荷群制御装置(例えば、電源負荷群制御装置104、アグリゲータ)は、上記電源負荷の需要(例えば、発電需要DB903)と、上記電源負荷群の解列実績(例えば、解列実績DB904)と、上記電源負荷群を解列したときの解列量に応じた解列コスト(例えば、解列コストDB905)とに基づいて、上記電源負荷群を制御する電源負荷の解列可能量・解列コスト(例えば、解列可能量・解列コスト207、図7)を算出し、上記系統安定化システムは、上記電源負荷の解列量と、過去の解列実績(例えば、解列実績DB、図6)と、上記受け取った解列可能量・解列コストとに基づいて、上記電源負荷群に対して所定の解列指標(評価指標)により安定運用するための解列量(解列指標・解列量208、図8)を算出し、上記電源負荷群制御装置は、算出した上記安定運用するための解列量と、上記電源負荷群の電源負荷の需要(例えば、発電需要DB903)とに基づいて、各電源負荷を解列するための整定値を算出する。これにより、系統安定化システム102は各電源負荷群に対し、解列量を送信し、電源負荷群側でどの機器を解列するかを選択できるようにする。したがって、上述した効果に加え、系統安定化システムから機器個別に解列指令を出すよりも、通信の負担が軽減できる。
【0081】
このように、アグリゲータ内の各電源負荷の保護リレー整定値の決定をアグリゲータ側に任せることで、膨大な電源負荷を含めて電源負荷の制御が可能となり、電源負荷に対し、事故後において高速に上記制御のための指令を送る必要がなくなり、通信負荷を低減させることができる。また、将来的に電源制限量を市場調達のような形で確保することが可能となる。アグリゲータは、管轄内の電源負荷を監視し、系統安定化システムに電源負荷の制御可能量や電源負荷を制御するためのコストテーブルを送信し、これらの制御に関するコストをアグリゲータ側で計算してもらうことで、公平性を担保することができる。例えば、発電機会の逸失を嫌うのであれば高コストとして、このような制御対象としないように管理できる。
【符号の説明】
【0082】
101:電力系統
102:系統安定化システム
103A:電源負荷群A
103B:電源負荷群B
104A:電源負荷群制御装置A
104B:電源負荷群制御装置B
105A:電源A
105B:電源B
106A:負荷A
106B:負荷B
201:発電・需要予測DB
202:系統DB
203:想定事故DB
204:解列実績DB
205:総解列量計算部
206:解列指標解列量計算部
207:解列可能量・解列コスト
208:解列指標・解列量
901:解列整定値計算部
902:解列可能量・解列コスト計算部
903:発電・需要DB
904:解列実績DB
905:解列コストDB
906:各電源・負荷への解列整定値
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13