(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174581
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】最適化演算方法
(51)【国際特許分類】
G05B 13/02 20060101AFI20241210BHJP
G05B 11/36 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
G05B13/02 K
G05B11/36 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092477
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永澤 広偉
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GB12
5H004KA41
5H004KA69
(57)【要約】
【課題】演算負荷が高い場合であっても制御精度を向上させることができる最適化演算方法を提供すること。
【解決手段】本発明の最適化演算方法は、演算負荷が所定値よりも低い場合には、リアルタイムで非線形演算を用いてプラントの制御量を決定し、演算負荷が所定値よりも高い場合には、過去に非線形演算した演算結果を利用してプラントの制御量を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算負荷が所定値よりも低い場合には、リアルタイムで非線形演算を用いてプラントの制御量を決定し、
演算負荷が前記所定値よりも高い場合には、過去に非線形演算した演算結果を利用して前記プラントの制御量を決定する、
ことを特徴とする最適化演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、特定のパラメータに閾値を設け、パラメータが前記閾値に対して一定の方向にあるときに非線形最適化制御を実行し、演算負荷を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、演算負荷を下げるために、パラメータが一定値を超えていないときにマップ引きなどの演算が軽い計算をして制御することになるため、そのときにあった最適な解を探索できないため、解の精度が落ちてしまう。そのため、非線形最適化制御が実行されていない間は、制御精度が落ちてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、演算負荷が高い場合であっても制御精度を向上させることができる最適化演算方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る最適化演算方法は、演算負荷が所定値よりも低い場合には、リアルタイムで非線形演算を用いてプラントの制御量を決定し、演算負荷が前記所定値よりも高い場合には、過去に非線形演算した演算結果を利用して前記プラントの制御量を決定する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る最適化演算方法は、演算負荷が高い場合であっても非線形演算結果を用いてプラントを制御することが可能であるため、制御精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る最適化演算方法を、演算装置を1つのみ有している場合に適用したときの一例を示した図である。
【
図2】
図2は、演算装置を複数有する場合に最適化の対象範囲を分割した図である。
【
図3】
図3は、非線形最適化演算を複数の演算装置で並列計算させる演算制御の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る最適化演算方法の実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
実施形態に係る最適化演算方法は、繰り返し計算と配列計算とが伴う最適化計算の演算負荷低減を目的として、車両に設けられた1つ以上の演算装置やクラウドなどの外部演算装置を活用して演算負荷を低減する。実施形態に係る最適化演算方法では、最適化制御の解の精度を落とさずに、演算負荷の低減を行う。特に、非線形最適化問題を用いている制御で有効である。実施形態に係る最適化演算方法は、演算装置を複数有している場合と、演算装置を1つのみ有している場合とで実施形態が異なるが、処理が重い演算を分散させる観点では共通している。
【0011】
演算装置を1つのみ有する場合は、演算負荷が所定値よりも低く処理能力に余裕があるときは、非線形最適化演算を行う(
図1中のA1)。また、非線形最適化演算の演算結果は、マップなどの記憶機能に記憶させておく(
図1中のA2)。そして、前記処理能力に余裕があるときは、非線形最適化演算のリアルタイム演算可能時として、非線形最適化演算の演算結果を採用し(
図1中のA3でYes)、評価関数の値で、より最適な解を選択し(
図1中のA4)、プラント100に制御指示値を出力する。なお、プラント100は、例えば、車両において、回転電機(モータジェネレータ)やギヤ機構などによって構成されたトランスアクスル(動力伝達装置)及びエンジンなどを含んで構成されるパワープラントである。
【0012】
一方、演算負荷が所定値よりも高く演算装置の処理能力に余裕がないときは、非線形最適化演算は行わず、比較的軽い処理で済む計算として線形最適化演算を行う(
図1中のA5)。また、前記処理能力に余裕がないときは、非線形最適化演算のリアルタイム演算不可能時として、マップなどの記憶機能に記憶した値を採用し(
図1中のA3でNo)、線形最適化演算で算出した解(値)と、記憶機能に記憶させておいた解(値)とを比較して、評価関数の値で、より最適な解を選択し(
図1中のA4)、プラント100に制御指示値を出力する。
【0013】
演算装置を複数有する場合は、最適化の対象範囲(最適化を行う領域)を演算装置ごとに分割する。例えば、
図2に示すように、ECU(Electronic Control Unit)1~ECU4の4つの演算装置を有する場合には、ECU1~ECU4ごとに最適化を行う領域をZONE1~ZONE4に分ける。このようにして、各々の演算装置(ECU1~ECU4)の演算負荷を所定値よりも低くし、非線形最適化演算を各々の演算装置(ECU1~ECU4)に並列で計算させる。そして、各々の演算装置(ECU1~ECU4)に並列で計算させた非線形最適化演算の演算結果を比較し、評価関数が最小となる演算結果を最適な解として選択し、プラント100に制御指示値を出力する。
【0014】
図3は、非線形最適化演算を複数の演算装置(ECU1~ECU4)で並列計算させる演算制御の一例を示したフローチャートである。
図3に示すフローチャートでは、複数の演算装置としてECU1~ECU4の4つの演算装置を用い、最適化を行う対象領域(最適化を行う領域)を4つに分割する。
【0015】
まず、ステップS1の処理では、ECU1~ECU4ごとに最適化を行う対象範囲(最適化を行う領域)を4つに分割する。これにより、ステップS1の処理は完了し、ステップS11の処理、ステップS21の処理、ステップS31の処理、及び、ステップS41の処理に、同時に移行して非線形最適化演算をECU1~ECU4に並列で計算させる。
【0016】
ECU1について、ステップS11の処理では、ECU1が非線形最適化演算を行って最適操作量u1を出力する。そして、ステップS11の処理を完了し、ステップS12の処理に移行する。ステップS12の処理では、ECU1が最適操作量u1における評価関数の値を計算する。そして、ステップS12の処理を完了し、ステップS2の処理に移行する。
【0017】
ECU2について、ステップS21の処理では、ECU2が非線形最適化演算を行って最適操作量u2を出力する。そして、ステップS21の処理を完了し、ステップS22の処理に移行する。ステップS22の処理では、ECU2が最適操作量u2における評価関数の値を計算する。そして、ステップS22の処理を完了し、ステップS2の処理に移行する。
【0018】
ECU3について、ステップS31の処理では、ECU3が非線形最適化演算を行って最適操作量u3を出力する。そして、ステップS31の処理を完了し、ステップS32の処理に移行する。ステップS32の処理では、ECU3が最適操作量u3における評価関数の値を計算する。そして、ステップS32の処理を完了し、ステップS2の処理に移行する。
【0019】
ECU4について、ステップS41の処理では、ECU4が非線形最適化演算を行って最適操作量u4を出力する。そして、ステップS41の処理を完了し、ステップS42の処理に移行する。ステップS42の処理では、ECU4が最適操作量u4における評価関数の値を計算する。そして、ステップS42の処理を完了し、ステップS2の処理に移行する。
【0020】
ステップS2の処理では、ECU1~ECU4が計算した各々の評価関数の値を比較して、最小値となる操作量を最終結果としてプラント100に出力する。そして、ステップS2の処理を完了し、一例の演算制御を終了する。
【0021】
以上のように、実施形態に係る最適化演算方法は、演算負荷が所定値よりも低い場合には、リアルタイムで非線形演算を用いてプラント100の制御量を決定し、演算負荷が所定値よりも高い場合には、過去に非線形演算した演算結果を利用してプラント100の制御量を決定する。これにより、実施形態に係る最適化演算方法においては、演算負荷が高い場合であっても非線形演算結果を用いてプラント100を制御することが可能であるため、制御精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0022】
100 プラント