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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174583
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】噴霧ノズルとその用途
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/14 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B05B1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092480
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000142023
【氏名又は名称】株式会社共立合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】杉本 達紀
(72)【発明者】
【氏名】青木 遥平
(72)【発明者】
【氏名】荻野 大二朗
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033AA01
4F033AA04
4F033AA05
4F033AA09
4F033AA13
4F033BA03
4F033DA02
4F033DA04
4F033EA01
4F033MA00
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】小型及び低圧であっても、スプレー流量を確保でき、長時間に亘り目詰まりを抑制しつつホロコーン状に噴霧できる噴霧ノズルとその噴霧方法を提供する。
【解決手段】噴霧ノズル1は、ノズル本体2の下流方向にいくにつれて流路径が狭まり、下流端が閉止したテーパー状流路7と、このテーパー状流路の壁部に、軸方向の位置を異にして、周方向に延び、かつ下流方向にいくにつれて半径外方向に向いて開口する噴霧孔10,11とを備えており、上流の噴霧孔10及び下流の噴霧孔11は、軸方向からみたとき交差する方向に向いている。前記ノズル本体2の半径方向において、前記軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔10,11の両側部(周方向の両側部)が重複している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体の軸方向に延び、かつ下流端が閉止した流路と、この流路の壁部の軸方向の異なる位置で、それぞれ、周方向に延びて開口する少なくとも1つの噴霧孔とを備えており、下流の噴霧孔と上流の噴霧孔とが、軸方向からみたとき交差する方向に向いている、噴霧ノズル。
【請求項2】
前記流路の下流側の流路断面積が前記流路の上流側の流路断面積よりも小さい請求項1に記載の噴霧ノズル。
【請求項3】
前記ノズル本体の軸方向に延びる流路が、下流方向にいくにつれて流路径が狭まって、閉止した下流端に至るテーパー状流路を備えている請求項2記載の噴霧ノズル。
【請求項4】
前記テーパー状流路のテーパー角θ1が5~160°である請求項3記載の噴霧ノズル。
【請求項5】
前記流路の中心軸線に対して、前記噴霧孔の噴霧軸の角度θ2が10~80°であり、下流の噴霧孔の噴霧軸の角度と上流の噴霧孔の噴霧軸の角度との角度差が30°以内である請求項1~3のいずれかに記載の噴霧ノズル。
【請求項6】
前記ノズル本体の軸方向に延びる流路が、前記ノズル本体の上流部から下流方向に延びる円筒状流路と、この円筒状流路に連通し、下流方向にいくにつれて流路径が漸減して、閉止した下流端に至るテーパー状流路とを備えており、このテーパー状流路の壁部に、軸方向の位置を異にして、それぞれ、周方向に延びて開口する少なくとも1つの噴霧孔が形成され、前記軸方向に隣接する前記複数の噴霧孔が、軸方向からみたとき交差する方向に向いている請求項1~3のいずれかに記載の噴霧ノズル。
【請求項7】
前記軸方向及び周方向に隣接する複数の前記噴霧孔の中心角θ3の合計角度が240~800°である請求項1~3のいずれかに記載の噴霧ノズル。
【請求項8】
前記ノズル本体の半径方向において、軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔の両側部が重複している請求項1~3のいずれかに記載の噴霧ノズル。
【請求項9】
前記軸方向の位置を異にして、周方向に互い違いに周方向に延びる複数の噴霧孔が形成され、前記ノズル本体の半径方向において、前記軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔の両側部が重複し、前記軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔が、軸方向からみたとき、前記複数の噴霧孔からの噴霧域が周方向に重複する又は連なる方向に向いている請求項1~3のいずれかに記載の噴霧ノズル。
【請求項10】
前記軸方向の異なる2つの位置に、それぞれ、2つの噴霧孔が周方向に延びて形成されている請求項1~3のいずれかに記載の噴霧ノズル。
【請求項11】
前記テーパー状流路の上流側の流路に、流路径を絞るための絞り流路が形成されている請求項1~3のいずれかに記載の噴霧ノズル。
【請求項12】
前記絞り流路が、流路内壁と一体化した中子、若しくは機械加工により形成されている請求項11記載の噴霧ノズル。
【請求項13】
被処理体に対して、流体をホロコーン状に噴霧又は噴射するための請求項1~3のいずれかに記載の噴霧ノズル。
【請求項14】
流体をホロコーン状に噴霧又は噴射する方法であって、請求項1~3のいずれかに記載の噴霧ノズルの複数の噴霧孔から流体を噴霧又は噴射する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置、加湿装置、冷却装置などでの流体をホロコーン(中空円錐)状に噴霧又は噴射するのに有用な噴霧ノズル(多孔ノズル又はホロコーンノズル)とその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス脱硫装置などでは排ガスと処理液との接触効率を高め、ガス抜けを防止するため、ホロコーンノズルが利用されている。ホロコーンノズルとして、ノズルの流路の中心軸上にコア(旋回子、中子など)などを配置して水流に旋回を付与し、ホロコーン状に噴射するノズルが知られている。しかし、流路内にコアを配設するため、目詰まりが生じ易い。特に、旋回子を備えたホロコーンノズルなどでは、ノズルの最小流路径が小さいため、目詰まりが生じ易い。そのため、ノズルの流路内にコアを配設することなく、ノズル内部で水流を旋回させるホロコーンノズル(コアレスホロコーンノズル又は渦巻ノズル)が知られている。
【0003】
渦巻ノズルに関し、特開2014-117685号公報(特許文献1)には、気液接触によりガス吸収させて排ガスを処理する装置において、液体を噴霧するスプレー装置のスプレーノズルが、側部の流入口から液体を流入させ、この流入方向に対して略直交して連通する旋流室で液体を旋回させて旋回流を形成し、前記旋流室の軸線まわりに空気芯を生じさせ、前記旋回流を噴口から空円錐状に噴射する空円錐ノズルが記載され、このような空円錐ノズルは空気芯があるため異物通過径が大きく、異物に起因するノズルのつまりを防止できることが記載されている。
【0004】
一方、旋回力を付与することなく、ホロコーン型のスプレーパターンを実現するノズルとして、スパイラルノズルが知られている。特開2021-74691号公報(特許文献2)には、排ガス処理装置が、処理気体を処理液中に噴出する複数のスパイラルノズルを備え、各スパイラルノズルが、気体放出面に取り付けるためのねじ部と、このねじ部から延びる基部と、前記ねじ部から基部に中空状に延びて形成され、前記基部の先端部分で孔径が小さくなる孔部と、前記基部の先端部に設けられ、前記基部の中心軸に向かって収束する螺旋状のスパイラル部とを備えていることが記載されている。この文献には、螺旋状のスパイラル部から噴出させる処理気体がスパイラル状に噴出させられて気泡が微細化されるため、処理液との気液接触効率を改善できることが記載されている。
【0005】
なお、特開2020-171903号公報(特許文献3)には、ノズル本体の先端部が閉じられ;ノズル本体の周壁に形成され、流体を噴射するための複数の噴射口と;前記ノズル本体に形成され、これらの噴射口に流体を供給するための流路とを備えた多孔ノズルであって、前記流路が、前記複数の噴射口に、それぞれ、流体を供給するための複数の供給路で形成された多孔ノズルが記載されている。具体的には、中実の棒体に、周方向に間隔をおいて棒体の軸方向に延びる複数の供給路が形成され、前記棒体の周壁に、前記供給路に連通して、周方向に延びるスリット状噴射口が形成された多孔ノズルが記載されている。このような多孔ノズルは、流体を周方向に均一に噴霧又は噴射し、断面中空部材などの内壁などを流体で処理するのに有用であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-117685号公報
【特許文献2】特開2021-74691号公報
【特許文献3】特開2020-171903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の螺旋流を生成するノズルを含め、ノズル内の中子で旋回流を生成させるホロコーンノズルでは、水流に旋回力を付与するため、圧力損失が生じ、高圧で加圧しないと、脱硫に必要な流量が確保できない。また、必要流量を噴出させるには、ノズルサイズ(流路径)を大きくせざるを得ないという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2に記載のスパイラルノズルでは、噴出圧は低圧であるものの、スプレー(噴霧)パターンに乱れが生じてきれいなホロコーン状の噴霧パターンを形成できず、スプレーの水量分布に偏りが発生する。さらに、先端部が細いため、耐久性が低く、連続運転して噴霧すると、噴霧振動により折損してしまい、ホロコーン状の噴霧パターンを長期間に亘り維持できなくなる。
【0009】
さらに、特許文献3に記載の多孔ノズルでは、ノズル本体の周方向に流体を噴霧又は噴射させて断面中空部材の中空内壁を流体で処理できるものの、流体を斜め前方方向にホロコーン状に噴霧又は噴射することができない。特に、軸方向に延びる複数の供給路に対応させて複数のスリット状噴射口をそれぞれ形成する必要があるため、単一の流路を利用して流体をホロコーン状に噴霧又は噴射することは想定されていない。
【0010】
従って、本発明の目的は、小型及び低圧であっても、スプレー流量を確保できる噴霧ノズル(ホロコーンノズル)とその噴霧方法(噴霧パターン形成方法)を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、単一の流路を利用して、均一なホロコーン状の噴霧パターンを長期間に亘り維持できる噴霧ノズル(ホロコーンノズル)とその噴霧方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、長時間に亘り噴霧又は噴射しても目詰まりを抑制でき、しかも耐久性にも優れた噴霧ノズル(ホロコーンノズル)とその噴霧方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ノズル本体の軸方向の位置を異にして、下流端が閉止したテーパー状流路の壁部に、1又は複数の噴霧孔(又は周方向に延びるオリフィス)を、ノズル本体の半径方向において、軸方向に隣接する前記噴霧孔(又は周方向に延びるオリフィス)の周方向の両側部が重複した形態で形成すると、小型及び低圧であっても、流体を均一な流量分布でホロコーン状(空円錐状)に噴霧又は噴射できることを見いだした。このような知見に基づいて、さらに検討した結果、下流の噴霧孔と上流の噴霧孔とを、軸方向からみたとき交差する方向(又は前記噴霧孔から斜め外方向の噴霧下流域で交差する方向)に向けて形成すると、小型で低圧であっても、均一な流量分布でホロコーン状(空円錐状)に流体を有効に噴霧又は噴射できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、[1]本発明の噴霧ノズル(又は多孔ノズル)は、ノズル本体の軸方向に延び、かつ下流端が閉止した流路と、この流路の壁部の軸方向の異なる位置で、それぞれ、周方向に延びて開口する少なくとも1つの噴霧孔とを備えており、下流の噴霧孔と上流の噴霧孔(軸方向に隣接する噴霧孔)とが、軸方向からみて交差する方向に向いている。換言すると、ノズル本体の軸方向の位置を異にして、下流端が閉止した流路(テーパー状流路など)の壁部に、噴霧流(スプレー)を噴霧又は噴射可能な少なくとも1つの噴霧孔が形成された噴霧ノズルにおいて、前記軸方向の異なる位置で噴霧又は噴射される噴霧流(スプレー)の周方向の両側部が、軸方向からみたとき交差する形態(又は前記噴霧孔から斜め外方向の噴霧下流域で交差する形態)で、前記噴霧孔が形成されている。
【0015】
[2]前記態様[1]において、前記流路の下流側の流路断面積は前記流路の上流側の流路断面積よりも小さくてもよい。[3]前記態様[1]又は[2]において、前記ノズル本体の軸方向に延びる流路は、下流方向にいくにつれて流路径(内径)が狭まって、閉止した下流端に至るテーパー状流路を備えていてもよい。[4]前記態様[1]~[3]において、前記テーパー状流路のテーパー角(内壁面の拡がり角度)θ1は5~160°であってもよい。
【0016】
[5]前記態様[1]~[4]のいずれかにおいて、前記流路の中心軸線に対して、前記噴霧孔の噴霧軸の角度θ2は10~80°であってもよく;下流の噴霧孔の噴霧軸の角度と上流の噴霧孔の噴霧軸の角度との角度差は30°以内であってもよい。[6]前記態様[1]~[5]のいずれかにおいて、前記ノズル本体の軸方向に延びる流路が、前記ノズル本体の上流部から下流方向に延びる円筒状流路と、この円筒状流路に連通し、下流方向にいくにつれて流路径が漸減して、閉止した下流端に至るテーパー状流路(円錐状、円錐台状、又は下流端が湾曲した円錐状の形態のテーパー状流路)とを備えていてもよく;このテーパー状流路の壁部に、軸方向の位置を異にして、それぞれ、周方向に延びて開口する少なくとも1つの噴霧孔(又はオリフィス)を形成してもよく;前記軸方向に隣接する前記複数の噴霧孔は、軸方向からみたとき交差する方向(又は前記噴霧下流域で交差する方向)に向いていてもよい。[7]前記態様[1]~[6]のいずれかにおいて、前記軸方向及び周方向に隣接する複数の前記噴霧孔の中心角θ3の合計角度は240~800°であってもよい。
【0017】
[8]前記態様[1]~[7]のいずれかにおいて、軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔の両側部は、前記ノズル本体の半径方向において重複していてもよい。[9]前記態様[1]~[8]のいずれかにおいて、複数の噴霧孔(又はオリフィス)は、前記軸方向の位置を異にして、周方向に互い違いに周方向に延びて形成してもよく;前記ノズル本体の半径方向において、前記軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔の両側部は重複していてもよく;前記軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔は、軸方向からみたとき、前記複数の噴霧孔からの噴霧域が周方向に重複する又は連なる方向に向いていてもよい。[10]前記態様[1]~[9]のいずれかにおいて、前記軸方向の異なる2つの位置に、それぞれ、2つの噴霧孔を周方向に延びて形成してもよい。
【0018】
[11]前記態様[1]~[10]のいずれかにおいて、前記テーパー状流路の上流側の流路に、流路径を絞るための絞り流路を形成してもよい。[12]前記態様[1]~[11]のいずれかにおいて、前記絞り流路は、流路内壁と一体化した中子、若しくは機械加工により形成してもよい。[13]前記態様[1]~[12]のいずれかにおいて、噴霧ノズルは、被処理体に対して、流体をホロコーン状に噴霧又は噴射するための噴霧ノズル(又はホロコーンノズル)であってもよい。
【0019】
[14]本発明は、流体をホロコーン状に噴霧又は噴射する方法も包含し、この方法では、前記態様[1]~[13]のいずれかの噴霧ノズル(又は多孔ノズル)の複数の噴霧孔から流体を噴霧又は噴射する。
【0020】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「テーパー状流路」とは、流路径が直線状に漸減又は狭まるか否かに拘わらず、下流方向にいくにつれて流路径が漸減又は狭まる流路を意味する。そのため、「テーパー状流路」は「先細状流路」ということもできる。また、「流路径」とは、流路内壁の内接円換算の直径と外接円換算の直径との平均値を意味し、流路が円筒状流路であるとき、流路径と内接円及び外接円の直径とは一致する。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、小型、低圧であっても、所定のスプレー流量を確保できる。また、単一の流路を利用して、均一なホロコーン状の噴霧パターンを長期間に亘り維持できる。また、長時間に亘り噴霧又は噴射しても目詰まりを抑制でき、しかも耐久性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の噴霧ノズルの一例を示す概略図である。
図2図2は、図1に示す噴霧ノズルの概略断面図である。
図3図3は、図1に示す噴霧ノズルの噴霧角度を説明するための概略断面図である。
図4図4は、図1に示す噴霧ノズルの噴霧孔の中心角の関係を示す概略平面図である。
図5図5は、本発明の噴霧ノズルの他の例を示す図であり、図5(A)は概略図であり、図5(B)は概略断面図である。
図6図6は、比較例1で使用した渦巻きノズルを示す概略断面図である。
図7図7は、比較例2で使用したスパイラルノズルを示す図であり、図7(A)は端面概略図であり、図7(B)はスパイラル状噴霧孔側から見た概略図である。
図8図8は、実施例での流量分布(水量分布)の測定方法を説明するための模式図であり、図8(A)は概略平面図であり、図8(B)は概略側面図である。
図9図9は、実施例1での流量分布(水量分布)の測定結果を示すグラフであり、図9(A)はX軸方向(図8(A)のX(+)-X(-)方向)での流量分布の測定結果を示し、図9(B)はY軸方向(図8(A)のY(+)-Y(-)方向)での流量分布の測定結果を示し、図9(C)は右斜め下方向(図8(A)のY(+)X(+)-Y(-)X(-)方向)での流量分布の測定結果を示し、図9(D)は右斜め上方向(図8(A)のY(+)X(-)-Y(-)X(+)方向)での流量分布の測定結果を示す。
図10図10は、比較例1での流量分布(水量分布)の測定結果を示すグラフであり、図10(A)はX軸方向(図8(A)のX(+)-X(-)方向)での流量分布の測定結果を示し、図10(B)はY軸方向(図8(A)のY(+)-Y(-)方向)での流量分布の測定結果を示す。
図11図11は、比較例2での流量分布(水量分布)の測定結果を示すグラフであり、図11(A)はX軸方向(図8(A)のX(+)-X(-)方向)での流量分布の測定結果を示し、図11(B)はY軸方向(図8(A)のY(+)-Y(-)方向)での流量分布の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
【0024】
図1及び図2は本発明の噴霧ノズルの一例を示す図であり、この噴霧ノズル1は、液体源の管体(図示せず)に対して接続するためのアダプター部3と、このアダプター部から円錐台状に延びるノズル本体部6とを備えたノズル本体2を有しており、前記アダプター部3の外周にはネジ部3aが形成され、前記アダプター部3と前記ノズル本体部6との間には、前記管体に対して前記ネジ部3aを螺合させて締結するための締結頭部8が介在しており、前記ノズル本体2(すなわち、アダプター部3、締結頭部8及び前記ノズル本体部6)は一体に形成されている。
【0025】
前記噴霧ノズル1の中心軸線に沿って単一の流路が延びており、この流路は、上流方向から下流方向に向かって、順次に、前記アダプター部3の軸方向に延び、流路径(内径)が大きく所定の流路長を有する第1の円筒状流路5aと、この第1の円筒状流路に隣接し、前記アダプター部3の内壁から内方に突出した絞り壁4aで形成された円筒状の絞り流路4と、この絞り流路に隣接して軸方向に延び、前記第1の円筒状流路5aよりも流路径(内径)が小さく、前記第1の円筒状流路5aと流路長が同等若しくは前記第1の円筒状流路5aよりも流路長の長い第2の円筒状流路5bと、この第2の円筒状流路5bから前記ノズル本体部6の軸方向に延び、かつ下流方向にいくにつれて内径が円錐状に漸減する概略テーパー状流路7とを備えており、このテーパー状流路の下流端(前記円錐台状ノズル本体部6の下流端部)は湾曲した形態で閉止している。この例では、前記第1の円筒状流路5aは、流路長25~35mm、及び内径(流路径)35~47mm程度に形成され、前記第2の円筒状流路5bは、流路長27~38mm、及び内径20~30mm程度に形成され、前記絞り流路4は、前記第2の円筒状流路5bの流路長及び内径よりも小さく、流路長3~10mm、及び内径20~30mm程度に形成されている。なお、前記絞り流路4は、機械加工により形成されている。
【0026】
前記テーパー状流路7は、下流方向にいくにつれて内径(内壁)が直線的に狭まる形態ではなく、下流方向にいくにつれて内壁が若干半径外方向に湾曲した形態を有している。この概略テーパー状流路7において、前記第2の円筒状流路5bの下流端(テーパー状流路7の上流端)の対向部(対向端)と、前記下流の湾曲閉止部の上流端(特に、内壁に沿った仮想内壁と、下流の噴霧孔(オリフィス)11の中心軸との交点)とを結ぶ直線の交差角度を、テーパー角θ1とすると、テーパー角θ1は、22~30°程度に形成されている。
【0027】
前記テーパー状流路7の壁部(円錐台状のノズル本体部6の外周壁)では、軸方向の位置を異にして、それぞれ、2つの噴霧孔(横長オリフィス)10,11が周方向に延びて開口している。この例では、軸方向に所定の間隔をおいて隣接する2つの前記壁部の位置(隣接位置)に、それぞれ、周方向に所定の間隔をおいて隣接して(周方向に等間隔に)、2つの上流の噴霧孔(オリフィス)10と2つの下流の噴霧孔(オリフィス)11とが互い違いに(又は軸方向に交互に位置する千鳥状の形態で)開口して形成されており、二段状に2つ(合計4つ)の噴霧孔(オリフィス)10,11が形成された形態を有している。すなわち、前記テーパー状流路7の中心軸線を基準として、上流の2つの噴霧孔10は周方向に等間隔に形成され、これらの2つの噴霧孔10の中心は、前記テーパー状流路7の壁部(内壁)で対向して位置している。下流の2つの噴霧孔11も周方向に等間隔に形成され、2つの噴霧孔11の中心は、前記テーパー状流路7の中心軸線を基準として、前記上流の2つの噴霧孔10の中心に対して角度90°で周方向にシフトした位置関係(前記2つの上流の噴霧孔の中心を結ぶ仮想面と、2つの下流の噴霧孔11の中心を結ぶ各想面とが直交する位置関係)で前記テーパー状流路7の壁部(内壁)で対向して位置している。
【0028】
なお、下流の2つの噴霧孔(オリフィス)11は、テーパー状流路7が閉止する下流閉止部(湾曲閉止部)よりも所定の距離をおいて上流側に形成され、上流の2つの噴霧孔(オリフィス)10もテーパー状流路7の上流端よりも所定の距離をおいて下流側に形成されている。各噴霧孔(横長オリフィス)10,11は、前記単一の流路(絞り流路4,円筒状流路5a,5b及びテーパー状流路7)の中心軸線から内壁面までの長さが等しい円周に沿って開口した形態で、単一の流路の中心軸線を基準として同じ周方向の長さ(又は同じ中心角)で形成されている。また、各噴霧孔(オリフィス)10,11の周方向の両側壁は周方向に拡がって傾斜した形態を有している。
【0029】
前記ノズル本体2の軸方向に隣接する合計4つの前記噴霧孔(オリフィス)10,11は、前記流路4,5(5a,5b),7の下流方向にいくにつれて、角度(前記ノズル本体2の中心軸線と前記噴霧孔(オリフィス)10,11の中心軸との角度)θ2(θ2a,θ2b)で、斜め外方向に向いており;上流の前記噴霧孔(オリフィス)10の向きと下流の前記噴霧孔(オリフィス)11の向きとは軸方向からみたとき交差可能である。図3に示されるように、前記ノズル本体2の中心軸線に対する下流の前記噴霧孔11の中心軸(噴霧軸)又は向き(スプレー軸又は噴霧角度)θ2bよりも上流の前記噴霧孔10の中心軸(噴霧軸)又は向き(スプレー軸又は噴霧角度)θ2aが小さく形成され、前記噴霧孔10,11の中心軸(噴霧軸)又はスプレー軸θ2a,θ2bが軸方向からみたとき交差している。すなわち、前記上流の噴霧孔10のスプレー軸(噴霧軸)θ2aと前記下流の噴霧孔11のスプレー軸(噴霧軸)θ2bとは、斜め外方向の下流域(噴霧下流域)で互いに交差する方向に向いている。この例では、前記ノズル本体2の中心軸線(流路軸)に対する前記下流の噴霧孔11のスプレー軸(又は噴霧角度)θ2bは、45~55°程度に形成され、前記上流の噴霧孔10のスプレー軸(又は噴霧角度)θ2aは、前記下流の噴霧孔11のスプレー軸θ2bよりも3~8°程度小さな40~50°程度に形成されている。
【0030】
さらには、中心軸線を基準として同じ周方向の長さ(弧長)で形成された上流及び下流の噴霧孔10,11を備えた噴霧ノズル1において、前記ノズル本体2の軸方向に隣接する噴霧孔10,11からの流体を、斜め下流の噴霧域(噴霧下流域)で、周方向に重複させてホロコーン状に噴霧又は噴射するため、前記ノズル本体2の半径方向において、軸方向に隣接する噴霧孔(上流の2つの噴霧孔10及び下流の2つの噴霧孔11)の周方向の両側部(弧の両側部)は重複している。すなわち、図4に示されるように、前記上流の噴霧孔(中心角θ3aのオリフィス弧)10と前記下流の噴霧孔(中心角θ3bのオリフィス弧)11とは、ノズル本体2の半径方向において、互いに周方向の両側部(弧の両側部)が重複(オーバーラップ)している。具体的には、前記上流の第1の噴霧孔10aの周方向の両側部(弧状の両側部)は、前記下流の第1の噴霧孔(オリフィス弧)11aの周方向の両側部(弧状の両側部)のうち一方の側部(例えば、半時計回り方向の先頭部)と、前記下流の第1の噴霧孔11aに隣接する第2の噴霧孔(オリフィス弧)11bの周方向の両側部(弧状の両側部)のうち他方の側部(例えば、時計回り方向の先頭部)と重複(オーバーラップ)し;前記上流の第1の噴霧孔10aに隣接する第2の噴霧孔10bの周方向の両側部(オリフィス弧の両側部)は、前記下流の第1の噴霧孔(オリフィス弧)11aの周方向の両側部(オリフィス弧の両側部)のうち他方の側部(例えば、時計回り方向の先頭部)と、前記下流の第2の噴霧孔(オリフィス弧)11bの周方向の両側部(弧状の両側部)のうち一方の側部(例えば、半時計回り方向の先頭部)と重複(オーバーラップ)している。この例では、各噴霧孔(オリフィス)の中心角θ3a,θ3bは、それぞれ、θ3a=105~115°、θ3b=120~135°程度に形成され、上流の2つの噴霧孔10の中心角θ3a及び下流の2つの噴霧孔11の中心角θ3bの合計角度[(中心角θ3a×2)+(中心角θ3b×2)]は、440~500°程度に形成されている。また、ノズル本体2の半径方向において、軸方向に隣接する噴霧孔が周方向の両側部(弧の両側部)で互いに重複(オーバーラップ)する重複部(オーバーラップする弧状部)の中心角は、25~35°程度に形成されている。
【0031】
このような噴霧ノズル1では、単一の流路(絞り流路4、円筒状流路5a,5b及びテーパー状流路7)を通じて流体を供給し、前記軸方向に隣接する上流の2つの噴霧孔10及び下流の2つの噴霧孔11から流体を噴霧又は噴射すると、軸方向からみたとき、前記噴霧孔10,11からの噴霧域が周方向に重複する又は連なり、流体をホロコーン状に均一な流量分布で噴霧又は噴射できる。さらに、流路径が大きな第1の円筒状流路5aからの流体を前記絞り流路4で絞り、かつ第2の円筒状流路5bで開放でき、流体の流動を均質化できるため、ホロコーン状に噴霧又は噴射される噴霧流体の流量分布をさらに均一化できる。しかも、構造が簡単で小型で低圧であっても必要なスプレー流量を確保できる。さらに、単一の流路4,5(5a,5b),7から流体を供給すればよく、流路(特に、噴霧孔10,11の流路)の最小流路径を大きくできるため、長時間に亘り噴霧又は噴射しても目詰まりを防止できるとともに、耐久性を向上できる。さらに、構造を複雑化させることなく、噴霧ノズル1の生産性も向上できる。
【0032】
なお、以下の例では、前記図1図4の噴霧ノズルと同じ要素又は部材には同じ符号を付して説明する。
【0033】
本発明の噴霧ノズルにおいて、流路の下流端は閉止した形態を有しており、ノズル本体の軸方向に延びる流路は複数の流路で形成してもよいが、単一の流路で形成するのが好ましく、上流方向から下流方向に延びる流路の半径方向(縦方向)の断面形状は、特に制限されず、四角形状、六角形状、八角形状などの多角形状、楕円形状などであってもよいが、通常、円形状である場合が多い。
【0034】
本発明の噴霧ノズルの流路は、軸方向(横方向)の断面において、下流側の流路断面積と上流側の流路断面積とが同一又は異なっていてもよく、前記流路の下流側の流路断面積は、前記流路の上流側の流路断面積よりも大きくてもよいが、小さいのが好ましい。すなわち、前記流路は、上流方向から下流方向に同じ流路径で延びる円筒状流路であってもよく、上流方向から下流方向に向かって、階段状、若しくは直線的又は湾曲して流路内壁が平滑な形態で流路径が拡がっていてもよいが、狭まっていてもよい。好ましい形態では、前記ノズル本体の軸方向に延びる流路において、上流方向から下流方向にいくにつれて流路径が漸次減少し(又は狭まり)、下流端が閉止したテーパー状流路を備えていてもよい。テーパー状流路から上流方向に延びる流路は、必ずしも必要ではなく、また、円筒状流路である必要はないが、好ましい態様では、ノズル本体の軸方向に延びる流路は、少なくともテーパー状流路を有しており、前記ノズル本体の上流部から下流方向に延びる円筒状流路(円筒状内壁)と、この円筒状流路に連通し、下流方向にいくにつれて流路径が狭まる(漸減する)テーパー状流路(テーパー状内壁)とを備えていてもよい。
【0035】
なお、円筒状流路は、同じ流路径(内径)の単一の円筒状流路で形成してもよく、前記のように、流路径(内径)及び/又は流路長の異なる複数の円筒状流路(例えば、第1の円筒状流路及び第2の円筒状流路)で形成してもよい。複数の円筒状流路において、円筒状流路の数は、2~5程度の範囲から選択してもよく、2又は3程度であってもよい。複数の円筒状流路の流路径(内径)は、上流方向から下流方向に向かって、順次に、不規則的に又は規則的に大きく形成してもよいが、好ましくは小さく形成してもよく;複数の円筒状流路の流路長は、上流方向から下流方向に向かって、順次に、不規則的に又は規則的に小さく形成してもよいが、好ましくは同等若しくは大きく形成してもよい。好ましい形態では、流体の乱流を抑制するため、複数の円筒状流路は、2つの円筒状流路で形成してもよく、上流方向から下流方向に向かって、流路径を小さく形成でき;テーパー状流路に至る下流の円筒状流路の流路長は、上流の円筒状流路の流路長と同等又は長く形成できる。
【0036】
テーパー状流路は、上流方向から下流方向にいくにつれて流路径が直線状に狭まって(漸減して)いてもよく、1又は複数のテーパー状流路部で形成してもよい。すなわち、最下流のテーパー状流路部から上流方向に延びる流路は、円筒状流路に限らず、複数のテーパー状流路部で形成してもよい。例えば、テーパー状流路は、閉止した下流端から上流方向にいくにつれて、テーパー角が小さなテーパー状流路部とテーパー角が大きなテーパー状流路部とが隣接した形態;テーパー角が大きなテーパー状流路部とテーパー角が小さなテーパー状流路部とが隣接した形態;テーパー角が小さなテーパー状流路部の間にテーパー角が大きなテーパー状流路部が介在した形態;テーパー角が大きなテーパー状流路部の間にテーパー角が小さなテーパー状流路部が介在した形態;順次にテーパー角が小さな又は大きな複数のテーパー状流路部が隣接した形態などであってもよく、テーパー状流路(内壁)のテーパー角は、噴霧ノズルのサイズ、噴霧流量などに応じて選択できる。
【0037】
テーパー状流路は、前記のように、上流方向から下流方向にいくにつれて流路径が直線状に狭まって(漸減して)もよく、上流方向から下流方向にいくにつれて流路径が湾曲して半径内方向に狭まって又は半径外方向に膨らんでいてもよい。例えば、テーパー状流路の内壁(側部内壁)は、所定の曲率半径R(mm)の1つのアール壁で形成してもよく、上流方向から下流方向に向かって曲率半径R(mm)の異なる複数のアール壁、例えば、2~5、好ましくは2~4程度の複数のアール壁を組み合わせて形成してもよい。このようなテーパー状流路の複数のアール壁は、上流方向から下流方向にいくにつれて、曲率半径R(mm)が順次に大きな複数のアール壁;曲率半径R(mm)が順次に小さな複数のアール壁;曲率半径R(mm)が大きなアール壁と曲率半径R(mm)が小さなアール壁;曲率半径R(mm)が小さなアール壁と曲率半径R(mm)が大きなアール壁;曲率半径R(mm)が大きなアール壁の間に曲率半径R(mm)が小さなアール壁が介在したアール壁;曲率半径R(mm)が小さなアール壁の間に曲率半径R(mm)が大きなアール壁が介在したアール壁などで形成してもよく、アール壁の曲率半径R(mm)は、噴霧ノズルのサイズなどに応じて選択できる。
【0038】
テーパー状流路の下流端の閉止形態は特に制限されず、例えば、円錐状流路の形態で鋭角に交差して(又はテーパー状の形態で)閉止又は収束していてもよく、下流端が湾曲した円錐状流路の形態(下流方向に膨出して湾曲した形態で)閉止又は収束していてもよく、半径方向に延びる形態(円錐台状流路の形態)で閉止又は収束していてもよい。
【0039】
前記テーパー状流路(内壁)のテーパー角θ1は、5~160°に形成されていればよく、7~120°(例えば、10~100°)、好ましくは10~70°(例えば、12~50°)、さらに好ましくは15~35°(例えば、20~30°)程度であってもよい。なお、このテーパー角θ1は、直線状に流路径が漸減又は狭まる単一のテーパー状流路では、そのままテーパー角θ1とすることができ、複数のテーパー状流路部や1又は複数の湾曲流路部を有する流路では、前記テーパー状流路の上流端(上流端の対向部)と前記下流の閉止部の上流端(特に、テーパー状流路の内壁に沿った仮想内壁と、最下流の噴霧孔の中心軸との交点)とを結ぶ直線の交差角度とすることができる。
【0040】
さらに、絞り流路は必ずしも必要ではないが、必要であれば、流量若しくはホロコーン状の噴霧パターンでの流量分布を調整するため、流路には、流路径を絞るための絞り流路を形成してもよい。この絞り流路は、テーパー状流路に形成してもよいが、好ましくはテーパー状流路の上流側の流路(例えば、円筒状流路)に形成してもよい。前記絞り流路の流路径は、絞り流路の上流側の流路径よりも小さければよく、上流側の流路径(絞り流路に隣接する上流部の流路径)を「100」としたとき、例えば、20~98、好ましくは30~95、さらに好ましくは40~80、より好ましくは50~70、特に、55~65程度であってもよい。また、下流側の流路径(絞り流路に隣接する下流部の流路径)を「100」としたとき、絞り流路の流路径は、例えば、50~98、好ましくは60~95、さらに好ましくは70~90、特に、75~85程度であってもよい。
【0041】
前記絞り流路の流路長(流路の内方への突出起点の軸方向の長さ又は距離)は、特に制限されず、絞り流路に隣接する上流部又は下流部の流路長を「100」としたとき、1~40、好ましくは3~30、さらに好ましくは5~25、特に、10~20程度であってもよい。
【0042】
前記絞り流路の流路径は、流路内に装着可能な中子(流路内壁と一体化可能な中子)で形成してもよく、機械加工により流路内壁と一体に形成してもよい。前記絞り流路は、ノズル本体の流路から内方向に延びる壁部、例えば、ノズル本体の流路の軸方向に対して直交する内方向に延びる壁部(四角状に突出する壁部など)、上流方向及び/又は下流方向にいくにつれて直線状又は湾曲して内方向に傾斜して延びる壁部などで形成してもよい。前記中子は、圧入、溶接などの一体化手段により、流路の内壁にリング状突起部を形成可能な部材、例えば、半径方向の断面形状が、円形状又はドーナツ状、四角形状、六角形状、八角形状などの多角形状などのリング状部材(又は円環状部材)で形成してもよく;前記リング状突起部を形成可能な部材の軸方向の断面形状は、例えば、薄板状、厚板状、上流方向及び/又は下流方向に向かって直線的又は湾曲して厚みが小さくなる中空形態(例えば、中空三角形状、中空台形状などの形態)であってもよい。前記中子は、流路の適所(例えば、第1の円筒状流路5aの下流端)に形成された装着凹部に装着可能な円環状中子で形成してもよい。前記機械加工では、流路の加工に際して、流路内壁にリング状突起部を一体的に形成してもよい。流路内壁と一体に加工(機械加工)して絞り流路を形成すると、耐久性、耐食性を向上させるのに有効である。
【0043】
さらに、絞り流路に隣接する上流部に、内径を大きくした段差部(例えば、円環状窪み部又は凹溝部)を形成してもよく、この段差部の上流端は、半径方向に延びる環状側壁で形成してもよく、上流方向に向かって直線状又は湾曲して傾斜していてもよい。また、段差部の下流端も、半径方向に延びる環状側壁で形成してもよく、リング状突起部に対して下流方向に向かって直線状又は湾曲して傾斜していてもよい。
【0044】
なお、ノズル本体部に隣接して締結頭部及びアダプター部を形成する必要はなく、ノズル本体は、少なくともノズル本体部で形成してもよく、ノズル本体部とアダプター部とで形成してもよく、ノズル本体部と、このノズル本体部に対して装着可能にアダプター部とで形成してもよい。アダプター部には前記ネジ部に限らず、流体源に接続又は連結可能な連結部(又は管体)を形成すればよく、この連結部(ネジ部を含む)又は前記アダプター部は前記流体源の管体に対して溶接してもよい。
【0045】
ノズル本体部(又はノズル本体)は円錐台状の形態に限らず、円錐状、円筒状、多角柱状などの形態であってもよい。ノズル本体部(又はノズル本体)は、先細状の形態、例えば、円錐台状、円錐状、先端部が湾曲した弾頭状などの形態である場合が多い。
【0046】
ノズル本体の壁部には、軸方向の位置を異にして(又は軸方向の異なる位置で)、周方向に延びて開口する少なくとも1つの噴霧孔又はオリフィス(合計で少なくとも2つの噴霧孔)を形成すればよい。軸方向の位置を異にして形成された前記少なくとも1つの噴霧孔(合計で少なくとも2つの噴霧孔)は、円筒状流路の壁部に形成してもよく、円筒状流路の壁部とテーパー状流路の壁部とにそれぞれ形成してもよく、好ましい態様では、テーパー状流路の壁部に形成される。すなわち、流路(特に、テーパー状流路)の壁部には、軸方向及び周方向の位置を異にして、開口する複数の噴霧孔を形成してもよい。このような形態では、必ずしも周方向に隣接して複数の噴霧孔を形成する必要はなく、軸方向の異なる位置で、それぞれ1つの噴霧孔を形成してもよく、軸方向の位置を異にして、周方向の異なる位置に噴霧孔を互い違いに形成してもよい。
【0047】
例えば、図5に示されるように、ノズル本体2の軸方向の異なる2つの位置で、周方向の長さ(弧又は中心角)が大きな単一の上流の噴霧孔(前記壁部が半径方向に深く切り欠かれて開口した噴霧孔又はオリフィス)30と、周方向の長さ(中心角)が小さな単一の下流の噴霧孔(前記壁部が半径方向に浅く切り欠かれて開口した噴霧孔又はオリフィス)31とが、ノズル本体2の半径方向において、上流の噴霧孔30と下流の噴霧孔31との周方向の両側部が互いに重複した形態で形成してもよい。この例でも、ノズル本体2の中心軸線に対して、上流の噴霧孔30のスプレー軸(噴霧軸)は、下流の噴霧孔31のスプレー軸(噴霧軸)よりも小さな角度で形成されている。そのため、このような噴霧ノズル21で流体を噴霧又は噴射させても、上流の噴霧孔30と下流の噴霧孔31からのスプレー軸を、軸方向からみて交差させ(下流噴霧域で交差させ)てホロコーン状(中空円錐状)に噴霧又は噴射できる。なお、前記噴霧ノズル21は、流量分布の均一性及び噴霧ノズルの生産性の点では有利であり、流量分布と耐久性とのバランスの点では図1図4に示す噴霧ノズル1が有利である。
【0048】
なお、最下流の噴霧孔は、前記流路(前記テーパー状流路など)の閉止壁(閉止部)に沿って開口して形成してもよく、この閉止壁の上流部に形成してもよく;前記流路(前記テーパー状流路など)のうち、最下流の噴霧孔と閉止壁との間の流路を乱流流路域として形成してもよい。
【0049】
噴霧孔(オリフィス)の形態(開口形態)は、ノズル本体の周方向に延びて、ホロコーン状に噴霧又は噴射可能であれば、特に制限されず、ノズル本体の周方向に延びて開口する横長状の形態(スリット状の形態)であってもよく、長方形状、楕円形状などであってもよく、通常、横長楕円形状又は細幅楕円形状である場合が多い。ノズル本体の周方向に延びて開口する噴霧孔は、前記ノズル本体の軸方向に対して傾斜して延びていてもよいが、ノズル本体の軸方向に対して直交する方向に延びて形成するのが好ましい。ノズル本体の周方向に延びる噴霧孔(オリフィス)の両側壁は、ノズル本体の半径方向に対して平行に延びていてもよく、好ましい態様では、噴霧孔(オリフィス)からの噴霧流体を軸方向からみたとき効率よく重複又はオーバーラップさせるため、ノズル本体の半径方向に延びていてもよく、特に、周方向に拡がって(ノズル本体の半径方向よりもさらに周方向に拡がって)傾斜(直線状に又は湾曲して傾斜)してもよい。例えば、噴霧孔(オリフィス)の周方向の両側壁は、ノズル本体の半径方向に対して直交する方向に延びていてもよい。このような形態では、噴霧孔(オリフィス)からの噴霧流体を噴霧孔の下流域(噴霧下流域)で効率よく重複又はオーバーラップさせ、ホロコーン状の形態で噴霧流体を噴霧できる。
【0050】
噴霧孔の中心の開口幅(スリット幅、軸方向の長さ、又は開口した噴霧孔の中心での上流端と下流端との距離)は、噴霧ノズルの噴霧流量などに応じて、例えば、1~20mm(例えば、2~18mm)、好ましくは3~17mm(例えば、4~15mm)、さらに好ましくは5~12mm(例えば、6~10mm)程度であってもよい。なお、本発明の噴霧ノズルにおいて、最小流路径は、前記噴霧孔の中心の開口幅(スリット幅)、すなわち、前記噴霧孔の周方向に対して直交する方向の開口幅で規定することができる。
【0051】
本発明では、流路径が大きな特許文献1のノズルに比べて最小流路径は小さいものの、目詰まりを防止可能な最小流路径としても、特許文献1のノズルと異なり、圧力損失を抑制しつつ、所定の流量を確保でき、しかも流体をホロコーン状に均一な流量分布で噴霧又は噴射できる。また、本発明では、特許文献2のスパイラルノズルに比べて最小流路径を大きくでき、目詰まりを防止できるとともに、耐久性を向上でき、しかも均一な流量分布でホロコーン状に噴霧又は噴射できる。
【0052】
噴霧孔の周方向の長さ(開口部の円周長さ)は、噴霧ノズルの用途、噴霧流量、周方向の噴霧孔の数などに応じて選択でき、例えば、5~100mm(例えば、10~80mm)、好ましくは15~75mm(例えば、20~50mm)程度であってもよく、10~50mm(例えば、15~35mm)程度であってもよい。ノズル本体の軸方向の異なる位置に形成された噴霧孔において、下流の噴霧孔の周方向の長さ(開口部の円周長さ;円弧長)は、上流の噴霧孔の円弧長と同じ又は異なっていてもよく、上流の噴霧孔の円弧長よりも大きくてもよいが、好ましい形態では、上流の噴霧孔の円弧長よりも小さくてもよい。
【0053】
好ましい態様では、前記流路(テーパー状流路など)の壁部で、ノズル本体の軸方向の位置を異にして(軸方向に間隔をおいて多段に)、ノズル本体の軸方向の各位置(各段)で、周方向に間隔をおいて(又は隣接させて)複数の噴霧孔(噴射口)を周方向に延びて開口させて形成してもよい。すなわち、ノズル本体の軸方向の異なる複数の位置(箇所)で、それぞれ、周方向に隣接して(又は等間隔に)複数の噴霧孔(噴射口)を形成してもよい。
【0054】
ノズル本体の軸方向の異なる位置(異なる段、例えば、軸方向に隣接する位置)では、中心角の異なる(又は異なる円弧長の)噴霧孔を軸方向に隣接させてもよく;中心角が同じ噴霧孔(又は同じ円弧長の噴霧孔)を軸方向に隣接させてもよい。なお、ノズル本体が、円錐状、円錐台状などのテーパー壁(傾斜壁)を有しているとき、このテーパー壁(傾斜壁)で、ノズル本体の軸方向の異なる複数の位置で噴霧孔を開口させると、同じ中心角であっても噴霧孔の円弧長が異なるケースがあり、異なる中心角であっても噴霧孔の円弧長が同じであるケースがある。
【0055】
なお、周方向に隣接する複数の噴霧孔は、ノズル本体の軸方向の同一位置(同一段内)において、中心角の異なる噴霧孔(又は異なる円弧長の噴霧孔)、例えば、円弧長の長い噴霧孔と円弧長の短い噴霧孔とを含んでいてもよく;好ましい態様では、中心角が同じ(又は同じ円弧長の)噴霧孔を周方向に(所定間隔をおいて)隣接させてもよい。
【0056】
さらに、周方向の同一又は異なる位置に、中心角の異なる(又は異なる円弧長の)噴霧孔がノズル本体の軸方向に隣接していてもよく、中心角が同じ(又は同じ円弧長の)噴霧孔がノズル本体の軸方向に隣接していてもよい。複数の噴霧孔は、ノズル本体の中心軸線を基準にして周方向に非対称の位置関係で形成してもよいが、好ましい態様では、ノズル本体の耐久性を高めるため、周方向に隣接する複数の噴霧孔は、対称の位置関係、すなわち、周方向に等間隔(噴霧孔中心を等間隔、又は同じ中心角で等間隔)に形成してもよい。
【0057】
各噴霧孔の中心角θ3は、複数の噴霧孔の配置形態などに応じて、30~280°程度の範囲から選択でき、50~240°(例えば、60~200°)、好ましくは70~180°(例えば、80~170°)、さらに好ましくは100~150°(例えば、110~130°)程度であってもよい。
【0058】
また、前記のように、上流の噴霧孔の中心角と下流の噴霧孔の中心角とは同一または異なっていてもよく、上流の噴霧孔の中心角に対して下流の噴霧孔の中心角が大きくても小さくてもよい。上流の噴霧孔の中心角と、下流の噴霧孔の中心角との差は、3~30°、好ましくは5~25°、さらに好ましくは10~20°程度であってもよい。上流の噴霧孔の中心角及び下流の噴霧孔の中心角のうち、一方の噴霧孔の中心角は、例えば、30~200°、好ましくは50~170°、さらに好ましくは70~150°、特に90~130°程度であってもよく、他方の噴霧孔の中心角は、例えば、40~220°、好ましくは70~200°、さらに好ましくは90~170°、特に110~150°程度であってもよい。好ましい態様では、上流の噴霧孔の中心角よりも、下流の噴霧孔の中心角の方が大きくてもよい。
【0059】
複数の噴霧孔(噴射口)は、前記ノズル本体の軸方向の異なる位置で(軸方向に間隔をおいて)、周方向に位置ずれして、周方向に等間隔に形成してもよく;複数の噴霧孔は、ノズル本体の耐久性を高めるため、軸方向の異なる位置で、周方向に互い違いに(特に、軸方向に間隔をおいて、複数の噴霧孔が周方向に隣接して噴霧孔列(オリフィス列)を形成した形態を有し、隣接する一方の噴霧孔列(オリフィス列)の噴霧孔が、隣接する他方の噴霧孔列(オリフィス列)の噴霧孔間に位置する関係、すなわち、互い違いな位置関係で)形成してもよい。
【0060】
前記のように、本発明では、前記ノズル本体の軸方向の異なる位置で、それぞれ少なくとも1つの噴霧孔(例えば、前記ノズル本体の周方向に開口したスリット状噴霧孔)を形成すればよく;前記噴霧孔は、ノズル本体の軸方向において、多段状又は複数段状に形成することができ、例えば、2~6(例えば、2~5)、好ましくは2~4、さらに好ましくは2又は3、特に2程度の異なる位置(箇所)で形成してもよい。前記ノズル本体の軸方向に異なる偶数位置で噴霧孔を形成する場合が多い。ノズル本体の軸方向に間隔をおいて形成した噴霧孔の数が多すぎると、流量分布が低下する場合がある。
【0061】
前記ノズル本体の軸方向の異なる位置で、それぞれ少なくとも1つの噴霧孔が形成されている限り、ノズル本体の周方向には1つの噴霧孔を形成してもよく、周方向に間隔をおいて(又は隣接させて)複数の噴霧孔を形成してもよい。ノズル本体の周方向に隣接する複数の噴霧孔(周方向に隣接する噴霧孔列の噴霧孔)の数は、噴霧均一性の点から、2~5、好ましくは2~4、さらに好ましくは2又は3、特に2程度であってもよい。
【0062】
ノズル本体の耐久性を高めるため、好ましいノズル本体は、軸方向に異なる2つの位置で、それぞれ、周方向に隣接する2つの噴霧孔が周方向に延びて形成されている。すなわち、周方向に隣接する同じ円周長さの2つの噴霧孔(周方向に等間隔に形成された同じ円弧長の2つの噴霧孔)、特に、同じ中心角の2つの噴霧孔が、それぞれ、軸方向に2段の形態で形成されている。
【0063】
前記軸方向及び周方向に隣接する複数の前記噴霧孔の中心角θ3の合計角度(各噴霧孔の中心角θ3の合計、例えば、前記二段噴霧孔の例では、4つの噴霧孔の中心角θ3a,θ3bの合計)は、流体をホロコーン状(中空円錐状)に噴霧可能であればよく、例えば、240~800°(例えば、280~750°)、好ましくは320~700°(例えば、360~600°)、さらに好ましくは380~560°(例えば、400~520°)、特に、400~500°(例えば、420~480°)程度であってもよい。複数の噴霧孔の中心角θ3の合計角度が小さすぎると、ホロコーン状の噴霧パターンに乱れが生じて均一な流量分布で噴霧できなくなるおそれがあり、大きすぎると、噴霧ノズルの耐久性及び生産性が低下するおそれがある。
【0064】
本発明の噴霧ノズルにおいて、ホロコーン状に噴霧又は噴射可能であれば、ノズル本体の半径方向において、ノズル本体の軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔(又はオリフィス)の両側部(例えば、軸方向に間隔をおいて複数段に形成された円弧状噴霧孔の両側部)は重複している必要はなく、ノズル本体の軸方向の位置を異にして、下流端が閉止した流路(テーパー状流路など)の壁部に、周方向に延びて開口し、かつ噴霧流(スプレー)を噴霧又は噴射可能な少なくとも1つの噴霧孔が開口して形成された噴霧ノズルにおいて、前記軸方向の異なる位置で噴霧又は噴射される噴霧流(スプレー)の周方向の両側部が、軸方向からみたとき交差する形態で、前記噴霧孔を形成すればよい。
【0065】
すなわち、本発明では、均一な流量分布で噴霧するため、前記ノズル本体の軸方向に間隔をおいて(又は位置を異にして)形成された噴霧孔のうち、下流の噴霧孔(例えば、軸方向の隣接位置で周方向に延びる噴霧孔のうち下流の噴霧孔;最下流の噴霧孔)と上流の噴霧孔(例えば、前記隣接位置で周方向に延びる噴霧孔のうち上流の噴霧孔;最上流の噴霧孔)とが、軸方向からみたとき交差する方向に向いていればよい。換言すれば、上流側の噴霧孔の噴霧軸(向き)と下流側の噴霧孔の噴霧軸(向き)とは、軸方向からみたとき交差してもよい(噴霧流が噴霧下流域で交わってもよい)。なお、前記ノズル本体の軸方向に隣接するか否かを問わず、ノズル本体の軸方向の異なる位置に形成された噴霧孔からの噴霧域が軸方向からみたとき交差(又は合流)していてもよく、好ましくは、前記ノズル本体の軸方向に隣接する前記複数の噴霧孔は、噴霧域が軸方向からみたとき交差(又は合流)する方向に向いていてもよく、噴霧流体を、軸方向からみたとき交差させて噴射又は噴霧可能であってもよい。すなわち、軸方向に互いに隣接する上流の噴霧孔からの噴霧域と下流の噴霧孔からの噴霧域とが軸方向からみたとき交差(又は合流)していてもよい。
【0066】
軸方向からみたとき上流及び下流の噴霧孔からの噴霧域を交差又は合流させるため、前記ノズル本体の中心軸線に対して、前記ノズル本体の軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔の向き(噴霧角度)は、互いに異なっていてもよく、下流の前記噴霧孔の向きよりも上流の前記噴霧孔の向きを大きく形成してもよいが、下流の前記噴霧孔の向きよりも上流の前記噴霧孔の向きを小さく形成するのが有利である。この態様では、下流の前記噴霧孔からの噴霧域に対して、上流の前記噴霧孔からの噴霧域が覆う形態(重複又はオーバーラップする形態)で、各噴霧域を合流又は交差させることができ、均一な流量でホロコーン状に噴霧又は噴射できる。
【0067】
下流の噴霧孔の噴霧軸(向き又は噴霧角度)θ2bと上流の噴霧孔の噴霧軸(向き又は噴霧角度)θ2aとの角度差(噴霧角度差又は交差角)(△θ2)は、噴霧流が前記噴霧孔の下流域(噴霧下流域)で交差又は合流可能であればよく、ホロコーン状の噴霧パターンに応じて、例えば、30°以内(1~30°)、好ましくは2~25°(例えば、3~20°)、さらに好ましくは3~15°(例えば、4~10°)程度であってもよい。なお、上記角度差は、ノズル本体の軸方向の異なる複数の位置に、周方向に延びる噴霧孔を形成した噴霧ノズルにおいて、最下流の噴霧孔と最上流の噴霧孔との角度差であってもよく、ノズル本体の軸方向に互いに隣接する噴霧孔のうち一方の噴霧孔(例えば、下流の噴霧孔)と他方の噴霧孔(例えば、上流の噴霧孔)との角度差であってもよい。
【0068】
均一なホロコーン状の噴霧パターンで噴霧又は噴射するためには、ノズル本体の半径方向において、ノズル本体の軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔の両側部が重複又はオーバーラップしているのが有利である。
【0069】
なお、ノズル本体の軸方向に間隔をおいて複数段(又は複数段状)に形成された複数の前記噴霧孔(軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔)の両側部は、ノズル本体の半径方向において、全体として、重複していればよく、ノズル本体の軸方向に隣接する一対の前記噴霧孔の両側部に限らず、軸方向に少なくとも1つの噴霧孔を跨いだ形態(飛び越した形態)で、軸方向に所定間隔をおいて形成された噴霧孔の両側部が重複していてもよい。例えば、ノズル本体の軸方向に間隔をおいて、上流から下流に向かって、周方向に開口する第1~第3の噴霧孔が三段状の形態で形成され、前記噴霧孔の周方向の両側部のうち時計回り方向の側部を一方の側部とし、半時計回り方向の側部を他方の側部とするとき、第2の噴霧孔の周方向の両側部のうち一方の側部が第1の噴霧孔の周方向の他方の側部と半径方向で重複し、前記第2の噴霧孔の他方の側部が第3の噴霧孔の周方向の一方の側部と半径方向で重複していてもよい。すなわち、ノズル本体の軸方向に隣接する噴霧孔(上流及び下流の一対の噴霧孔)において、ノズル本体の半径方向において、上流及び下流の噴霧孔のうち一方の噴霧孔の周方向の両側部が、他方の噴霧孔の周方向の少なくとも一方の側部と重複する形態であってもよい。
【0070】
特に、周方向に間隔をおいて複数の噴霧孔で噴霧孔列が形成されたノズル本体において、ノズル本体の半径方向において、複数段(好ましくは二段)に形成された噴霧孔列(隣接する下流及び上流の噴霧孔列)のうち一方の噴霧孔列の噴霧孔の周方向の両側部が、他方の噴霧孔列のうち周方向に隣接する噴霧孔の周方向の一方及び他方の側部と重複する形態(周方向にシフトした形態)で重複していてもよい。すなわち、ノズル本体の軸方向の異なる位置に複数段の形態で複数の横長噴霧孔が形成され、ノズル本体の半径方向において、各段の噴霧孔(並びに噴霧孔からの噴霧域)が円周上で互いに重なる形態を有していてもよく、このような噴霧ノズルでは、ホロコーンパターンで流体を均一に噴霧できる。
【0071】
なお、下流方向に向かって外径が大きくなるノズル本体や同じ外径で延びるノズル本体(円筒状のノズル本体など)の軸方向に間隔をおいて噴霧孔を形成すると、ノズル本体の半径方向だけでなく、ノズル本体の軸方向からみたときにも、ノズル本体の軸方向の位置を異にする噴霧孔の周方向の両側部は重複又はオーバーラップする。
【0072】
ノズル本体の半径方向において、ノズル本体の軸方向に隣接する前記噴霧孔の両側部(換言すれば、中心角)が重複する中心角(重複部の中心角)は、ホロコーン状の噴霧パターンを形成できる限り特に制限されず、例えば、2~60°、好ましくは10~50°(例えば、15~45°)、さらに好ましくは20~40°(例えば、25~35°)程度であってもよい。
【0073】
さらに、噴霧孔(噴射口)の中心軸線(噴霧軸線又はスプレー軸線)は、ホロコーン状に噴霧又は噴射可能である限り、流路(テーパー状流路など)の中心軸線に対して、直交又は斜め方向に交差していてもよく;好ましくは、下流方向にいくにつれて斜め外方向に向いていてもよい(前記斜め外方向に噴霧又は噴射可能であってもよい)。例えば、ホロコーン状噴霧パターンの形態に応じて、流路の中心軸線に対する前記噴霧孔の噴霧軸の角度θ2は、10~80°(例えば、20~75°)、好ましくは25~70°(例えば、30~60°)程度であってもよい。
【0074】
特に、ノズル本体の半径方向において、軸方向に隣接する複数の前記噴霧孔の両側部(円弧状噴霧孔の両側部)が重複し、かつノズル本体の軸方向において互いに隣接する上流の前記噴霧孔と下流の前記噴霧孔とが軸方向からみたとき交差又は合流する方向を向いている(噴霧軸又は噴霧角度が軸方向からみたとき交差又は合流する)と、前記ノズル本体の軸方向に隣接する前記複数の噴霧孔からの噴霧域が周方向に重複する又は連なり、流体を均一な流量分布でホロコーン状に噴霧又は噴射可能である。そのため、好ましい態様において、前記ノズル本体の軸方向で互いに隣接する複数の前記噴霧孔は、軸方向からみたとき、前記複数の噴霧孔からの噴霧域が周方向に重複する又は連なる方向に向いている。このような形態では、上流の前記噴霧孔からの噴霧流体と下流の前記噴霧孔からの噴霧流体とを、ノズル本体の斜め外方向の下流域(噴霧下流域)で周方向に連なって合流させることができ、噴霧流体をホロコーン状に噴霧できる。
【0075】
なお、上流側の噴霧孔(噴射口)と下流側の噴霧孔(噴射口)との噴霧軸が、斜め外方向の下流域で交差し、しかも、噴霧孔(噴射口)の周方向の両側壁が、周方向に拡がって傾斜した噴霧孔の開口形態を有していると、噴霧孔からの噴霧流をノズル本体の半径方向よりもさらに周方向の外方向に噴霧又は噴射でき、軸方向からみたとき、噴霧流を効率よく重複又はオーバーラップさせ、均一なホロコーン状噴霧パターンを形成できる。
【0076】
本発明の噴霧ノズルは、均一な流量分布で流体をホロコーン状に噴霧又は噴射できるため、種々の流体に適用できる。そのため、本発明は、流体をホロコーン状に噴霧又は噴射する方法も包含する。この方法では、噴霧ノズルに流体を供給し、前記複数の噴霧孔から流体をホロコーン状に噴霧又は噴射する。流体の種類は、用途に応じて選択でき、空気、不活性ガス又は希ガス、排ガスなどの気体であってもよく、水、海水、有機溶媒、薬液、排ガス処理液(ガス吸収液)などの液体であってもよく、液体は、必要であれば粘性を有する粘稠液であってもよい。好ましい流体は、液体であり、水、海水、排ガス処理液などであってもよい。
【0077】
また、流体の圧力は、用途などに応じて、例えば、0.01~10MPa(例えば、0.02~5MPa)程度の範囲から選択してもよく、0.03~1MPa(例えば、0.05~0.5MPa)、好ましくは0.07~0.4MPa(例えば、0.1~0.3MPa)程度であってもよい。
【0078】
流量は、流体の圧力や用途などに応じて調整でき、例えば、10~1000L/分(例えば、50~750L/分)程度であってもよく、好ましくは100~700L/分(例えば、150~650L/分)、さらに好ましくは200~600L/分(例えば、250~500L/分)程度であってもよい。
【0079】
また、ホロコーン状噴霧パターンの噴射角度(ホロコーン状噴霧パターン(中空円錐状噴霧パターン)におけるテーパー角度(頂角))は、用途などに応じて選択でき、例えば、20~160°(例えば、30~150°)、好ましくは50~140°(例えば、60~120°)程度であってもよい。
【実施例0080】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0081】
実施例1:図1図4に対応する噴霧ノズル
図1図4に示す噴霧ノズルを用いた。この噴霧ノズルは、アダプター部3から下流方向に円錐台状に延びるノズル本体部6を備えたノズル本体2に、内径42mm×軸方向の長さ30mmの第1の円筒状流路5aと、内径24mm×軸方向の長さ5mmの円筒状の絞り流路4、内径25mm×軸方向の長さ(テーパー状流路7の上流端までの軸方向の長さ)32mmの第2の円筒状流路5bと、この第2の円筒状流路から下流方向にいくにつれて漸次内径が減少し、下流端が閉止した概略テーパー状流路7(最下流の噴霧孔の中心軸までの軸方向の長さ22mm)とを備えており、前記テーパー状流路7のうち軸方向の異なる2つの位置(先端部から9.6mm及び24mm離れた箇所)に、それぞれ、周方向に等間隔に隣接させて中心角θ3a=111°の上流の噴霧孔10と中心角θ3b=127°の下流の噴霧孔11との2つの横長噴霧孔(噴霧孔中心での噴霧孔幅が8mmの円弧状噴霧孔)を形成した。この噴霧ノズルの最小流路径は、噴霧孔中心において、噴霧孔10,11の周方向に対して直交する方向の開口幅8mmである。
【0082】
なお、前記テーパー状流路7の上流端と、内壁に沿った仮想内壁と下流の噴霧孔11の中心軸との交点とを結ぶ直線の交差角度を、テーパー角θ1としたとき、概略テーパー状流路7のテーパー角θ1は26°であった。上流の噴霧孔10と下流の噴霧孔11とは、互いに周方向に角度90°シフトさせて形成し、ノズル本体2の半径方向において、上流の2つの噴霧孔10(10a,10b)の周方向の両側部は、それぞれ、下流の2つの噴霧孔11(11a,11b)の周方向の両側部と重複している(上流の噴霧孔10の両側部と下流の噴霧孔11の両側部とが中心角29°の角度範囲で重複している)。なお、各横長噴霧孔の中心角θ3の合計は476°であった。また、円筒状流路5a,5bの中心軸線に対して、上流の噴霧孔10の向き(噴霧軸)の角度θ2aは45°であり、下流の噴霧孔11の向き(噴霧軸)の角度θ2bは50°である。
【0083】
比較例1:渦巻きノズル
図6に示す渦巻きノズル41を使用した。この渦巻きノズルは特許文献1に記載のノズルに対応する。前記渦巻きノズル41のノズル本体42は、側部から半径方向に延びる円筒状の流入流路43(内径27mmφ)を備えた円筒状外装部42aと;この外装部の中空部に装着可能な内装部42bとを備えており、この内装部は、前記流入流路43と連通可能であり、かつ前記流入流路43からの液体の流入方向に対して直交する方向(ノズル本体の軸方向)に延びる旋流室44(内径79mmφ)と、この螺旋室から下流方向に延びる円筒状の流出流路45(内径31mmφ)とを備えている。前記螺旋室44の上部壁は円錐状の形態で上流方向にいくにつれてノズルの中心軸方向に傾斜して形成され、前記螺旋室44の下部壁は円錐状の形態で下流方向にいくにつれてノズルの中心軸方向に傾斜して前記流出流路45の上端部に至っている。このノズルの最小流路径は、流入流路43の内径27mmである。
【0084】
このような渦巻きノズル41では、前記流入流路43からの液体の流入に伴って、前記旋流室44の軸線に沿って空気芯45aを生じさせた状態で、前記螺旋室のうち前記空気芯の周辺部では、液体の旋回流45bを形成し、この旋回流を流出流路45の流出口からホロコーン状に噴射可能である。
【0085】
比較例2:スパイラルノズル
図7に示すスパイラルノズル51を使用した。すなわち、スパイラルノズル51のノズル本体52は、アダプター部54と、このアダプター部からから下流方向に円錐台状に延びるノズル本体部56とを備えており、ノズル本体52の流路は、前記アダプター部54からノズル本体部56の上流部にまで中心軸線に沿って延びる内径25mmφの円筒状流路55と、この円筒状流路から下流方向に延び、下流端が閉止した概略テーパー状流路57(テーパー角θ1=40~42°)とを備えている。前記円錐台状のノズル本体部56の先端部から30.2mmの位置を噴霧孔中心の起点として、スパイラル状(螺旋状)に旋回して先端部から10.6mmの位置に噴霧孔中心の終点が至るスパイラル状噴霧孔58(軸方向の距離19.6mmの間を6mmの幅でスパイラル状に約1.5周に亘り延びるスパイラル状噴霧孔)が形成されたノズルを使用した。なお、このスパイラルノズルの最小流路径は、スパイラル状噴霧孔の幅6mmである。
【0086】
[ノズルの評価]
これらのノズルを用い、所定圧力にて、下向きに噴射し、水圧、水量、水量分布の均等性などを評価した。水量分布は、図8に示されるように、ノズル61の先端からの距離500mmの位置に、ノズル先端を中心として、中心角45°で8つの半径方向に、ピッチ40mmで採取容量(メスシリンダー)62を並べて設置し、一定時間に溜まった水量を測定した。また、最大水量に対する最小水量の割合%を水量分布の均等性として評価した。
【0087】
結果を表1に示す。また、図9図10及び図11に、それぞれ、実施例1、比較例1及び比較例2での流量分布の測定結果を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
前記表1及び図9図11から明らかなように、実施例1では、比較例1に比較して、小型であるにも拘わらず、同じ水圧であっても水量を向上できた。また、実施例1は、比較例1に比較して、水量分布の均等性を46%から73%に向上できた。
【0090】
さらに、実施例1では、比較例2に比較して、最少流路径を大きくでき、目詰まりを防止でき、水量分布の均等性を33%から73%に向上できた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の噴霧ノズル(又はホロコーンノズル)は、幅広い用途に使用でき、例えば、発電用などのボイラー、ガスタービン、エンジンなどの燃料を噴霧するための燃焼用ノズル、加湿又は冷却用ノズル(ガスの加湿冷却用ノズルなど)、防塵用ノズル、消泡用ノズル、霜取用ノズル、洗浄用ノズル、消毒殺菌用又は薬剤散布用ノズル、塗油などの塗工用ノズル、ガス吸収用ノズル(排煙脱硫装置などの排ガス処理装置におけるガス吸収液噴霧ノズルなど)、スプレードライヤなどの噴霧乾燥用ノズルなどにも利用できる。本発明の噴霧ノズルは、被処理体を均一に処理するためのノズルとして適しており、被処理体は、排ガスなどの気体、粉粒体、プレート、成形体などの被処理部材又はユニットなどであってもよい。例えば、排煙脱硫装置等の排ガス処理装置において、硫黄酸化物、窒素酸化物などを含む排ガス(被処理体)に対して、液体(ガス吸収液)をホロコーン状に噴霧又は噴射し、排ガス(被処理体)から有害成分を除去するために有用である。
【符号の説明】
【0092】
1,21…噴霧ノズル
2…ノズル本体
4…絞り流路
5a,5b…円筒状流路
7…テーパー状流路
10,30…上流の噴霧孔
11,31…下流の噴霧孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11