(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174591
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】回転埋設杭
(51)【国際特許分類】
E02D 5/72 20060101AFI20241210BHJP
E02D 5/56 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
E02D5/72
E02D5/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092490
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】今 広人
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041BA11
2D041BA33
2D041BA35
2D041CA05
2D041CB01
2D041FA14
(57)【要約】
【課題】十分な先端支持力を得ることができる回転埋設杭を提供すること。
【解決手段】回転埋設杭100は、杭本体10と、杭本体10の回転方向に傾斜して杭本体10の軸方向の先端に固定した羽根20、30と、羽根20、30に固定した突出部材40と、を有する。突出部材40は、羽根20、30の表面から軸方向に突出した突出部分42を有する。突出部分42は、杭本体10の先端に対向する領域内に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭本体と、
前記杭本体の回転方向に傾斜して前記杭本体の軸方向の先端に固定した羽根と、
前記羽根に固定した突出部材と、を有し、
前記突出部材は、前記羽根の表面から前記軸方向に突出した突出部分を有し、
前記突出部分は、前記杭本体の前記先端に対向する領域内に配置されている、
回転埋設杭。
【請求項2】
前記杭本体の前記軸方向に沿って、前記突出部分の先端は、前記羽根の前記先端より突出高さが低く、又は前記羽根の前記先端と略同じ高さに突出している、
請求項1に記載の回転埋設杭。
【請求項3】
前記突出部分は、前記羽根の前記表面と同じ方向に傾斜した傾斜面を有する、
請求項1に記載の回転埋設杭。
【請求項4】
前記杭本体は、円筒状であり、
前記突出部材は、前記杭本体の中に挿通可能な幅を有する、
請求項1に記載の回転埋設杭。
【請求項5】
前記突出部材は、板状であり、その幅方向の両端を前記杭本体の内面に固定する、
請求項4に記載の回転埋設杭。
【請求項6】
前記羽根は、前記突出部材とともに前記杭本体の先端を塞ぐように前記杭本体と前記突出部材に固定する、
請求項4又は請求項5に記載の回転埋設杭。
【請求項7】
周方向の一部が軸方向と直交する面に対して傾斜した第1の傾斜端面、及び前記周方向の他の一部が前記直交する面に対して傾斜した第2の傾斜端面を含む先端部を有する杭本体と、
前記杭本体の前記先端部の前記第1の傾斜端面に接触して固定した板状の第1の羽根と、
前記杭本体の前記先端部の前記第2の傾斜端面に接触して固定した板状の第2の羽根と、
前記杭本体の前記先端部に対向する領域内に配置した突出部材と、を有し、
前記突出部材は、前記第1及び第2の羽根の少なくとも一方の表面から突出した突出部分を有する、
回転埋設杭。
【請求項8】
前記軸方向に沿って、前記突出部分の先端は、前記第1の羽根の先端及び前記第2の羽根の先端の少なくとも一方より突出高さが低く、又は前記第1の羽根の先端及び前記第2の羽根の先端の少なくとも一方と略同じ高さに突出している、
請求項7に記載の回転埋設杭。
【請求項9】
前記突出部分は、前記第1の羽根の表面と同じ方向に傾斜した第1の傾斜面と、前記第2の羽根の表面と同じ方向に傾斜した第2の傾斜面と、を有する、
請求項7に記載の回転埋設杭。
【請求項10】
前記杭本体は、円筒状であり、
前記突出部材は、前記杭本体の中に挿通可能な幅を有する板状である、
請求項7に記載の回転埋設杭。
【請求項11】
前記突出部材は、その幅方向の両端を前記杭本体の内面に固定する、
請求項10に記載の回転埋設杭。
【請求項12】
前記第1及び第2の羽根は、前記突出部材とともに前記杭本体の先端を塞ぐように前記杭本体と前記突出部材に固定する、
請求項10又は請求項11に記載の回転埋設杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転埋設杭に関する。
【背景技術】
【0002】
回転により地盤に埋設する回転埋設杭は、一般に、杭本体である鋼管より大径の羽根と鋼管の先端に設けた掘削刃を備える。掘削刃は、羽根より先行して杭穴の底を掘削するためのものである。羽根は、掘削刃により掘削した土を上に押し上げるためのものであり、施工後に支持力を得るためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
掘削刃を備える回転埋設杭は、掘削刃により杭穴の底を掘削するため、杭穴の底の土が崩れて柔らかくなり、杭本体の先端が地中を推進する際、杭本体にかかる抵抗力を弱めることができるが、杭穴の底の土が柔らかくなるため、施工後の十分な先端支持力を得ることが難しい。
【0005】
この発明は、十分な先端支持力を得ることができる回転埋設杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る回転埋設杭は、杭本体と、杭本体の回転方向に傾斜して杭本体の軸方向の先端に固定した羽根と、羽根に固定した突出部材と、を有する。突出部材は、羽根の表面から軸方向に突出した突出部分を有する。突出部分は、杭本体の先端に対向する領域内に配置されている。
【0007】
この態様の回転埋設杭によれば、杭本体の先端に対向する杭穴の底にある土を突出部材の突出部分によって崩し、崩した土を羽根により上方へ押し上げることができる。このため、杭穴の底にある土を必要以上に崩すことがなく、施工後に十分な先端支持力を得ることができる。
【0008】
また、この態様の回転埋設杭によれば、杭本体の軸方向に沿って、突出部分の先端は、羽根の先端より突出高さが低く、又は羽根の先端と略同じ高さに突出している。これにより、主に羽根により杭穴を掘削し、突出部分が杭穴の底の中央部の土を柔らかくするように機能するため、杭穴の底の土を必要以上に崩してしまうことがない。
【0009】
また、この態様の回転埋設杭によれば、突出部分は、羽根の表面と同じ方向に傾斜した傾斜面を有する。これにより、羽根の表面と同じ方向に傾斜した傾斜面を有する突出部分によって杭本体の先端に対向する杭穴の底の中央部の土を崩すことができ、羽根による掘削を補助することができる。
【0010】
また、この態様の回転埋設杭によると、杭本体は、円筒状であり、突出部材は、杭本体の中に挿通可能な幅を有する。また、突出部材は、板状であり、その幅方向の両端を杭本体の内面に固定する。これにより、突出部材の機械強度を高めることができる。
【0011】
また、この態様の回転埋設杭によると、突出部材とともに杭本体の先端を塞ぐように羽根を杭本体と突出部材に固定する。これにより、施工後の先端支持力を高めることができる。
【0012】
また、一態様に係る回転埋設杭は、周方向の一部が軸方向と直交する面に対して傾斜した第1の傾斜端面、及び周方向の他の一部が直交する面に対して傾斜した第2の傾斜端面を含む先端部を有する杭本体と、杭本体の先端部の第1の傾斜端面に接触して固定した板状の第1の羽根と、杭本体の先端部の第2の傾斜端面に接触して固定した板状の第2の羽根と、杭本体の先端部に対向する領域内に配置した突出部材と、を有する。突出部材は、第1及び第2の羽根の少なくとも一方の表面から突出した突出部分を有する。
【0013】
この態様の回転埋設杭によれば、杭本体の先端部に対向する杭穴の底の中央部にある土を突出部材の突出部分によって崩し、崩した土を第1及び第2の羽根により上方へ押し上げることができる。このため、杭穴の底にある土を必要以上に崩すことがなく、施工後に十分な先端支持力を得ることができる。
【0014】
また、この態様の回転埋設杭によると、軸方向に沿って、突出部分の先端は、第1の羽根の先端及び第2の羽根の先端の少なくとも一方より突出高さが低く、又は第1の羽根の先端及び第2の羽根の先端の少なくとも一方と略同じ高さに突出している。これにより、主に第1及び第2の羽根により杭穴を掘削し、突出部材の突出部分が杭穴の底の中央部の土を柔らかくするように機能するため、杭穴の底の土を必要以上に崩してしまうことがない。
【0015】
また、この態様の回転埋設杭によれば、突出部分は、第1の羽根の表面と同じ方向に傾斜した第1の傾斜面と、第2の羽根の表面と同じ方向に傾斜した第2の傾斜面と、を有する。これにより、第1及び第2の羽根の表面と同じ方向に傾斜した第1及び第2の傾斜面を有する突出部材の突出部分によって杭穴の底の土を崩すことができ、第1及び第2の羽根による掘削を補助することができる。
【0016】
また、この態様の回転埋設杭によると、杭本体は、円筒状であり、突出部材は、杭本体の中に挿通可能な幅を有する板状である。また、突出部材は、その幅方向の両端を杭本体の内面に固定する。これにより、突出部材の機械強度を高めることができる。
【0017】
さらに、この態様の回転埋設杭によると、第1及び第2の羽根は、突出部材とともに杭本体の先端を塞ぐように杭本体と突出部材に固定する。これにより、施工後の先端支持力を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、十分な先端支持力を得ることができる回転埋設杭を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る回転埋設杭を先端側から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の回転埋設杭の組立体を矢印F2方向から見た図である。
【
図3】
図3は、
図2の組立体を矢印F3方向(先端側)から見た図である。
【
図4】
図4は、
図2の組立体を矢印F4方向から見た図である。
【
図5】
図5(a)は、
図2の組立体の羽根受け部材の図であり、
図5(b)は、羽根受け部材を
図5(a)の矢印F5b方向(先端側)から見た図であり、
図5(c)は、羽根受け部材を
図5(a)の矢印F5c方向から見た図である。
【
図6】
図6(a)は、
図2の組立体の一方の羽根を組立体の先端側から見た図であり、
図6(b)は、一方の羽根を凹所側から見た図である。
【
図7】
図7(a)は、
図2の組立体の突出部材の図であり、
図7(b)は、突出部材を
図7(a)の矢印F7b方向(先端側)から見た図であり、
図7(c)は、突出部材を
図7(a)の矢印F7c方向から見た図である。
【
図8】
図8は、第1の変形例に係る突出部材を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の変形例に係る回転埋設杭の組立体を示す図である。
【
図11】
図11は、第3の変形例に係る回転埋設杭の組立体を示す図である。
【
図14】
図14は、第4の変形例に係る回転埋設杭を先端側から見た図である。
【
図15】
図15は、第5の変形例に係る回転埋設杭を先端側から見た図である。
【
図16】
図16は、第6の変形例に係る回転埋設杭を先端側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る回転埋設杭100を先端側から見た斜視図である。
【0021】
回転埋設杭100は、略円筒状の杭本体10と、略半円板状の2枚の羽根20、30と、略矩形板状の突出部材40を有する。2枚の羽根20、30は、杭本体10の中心を通る架空の中心線と交差する向きで、杭本体10の先端側を塞ぐように杭本体10に固定する。突出部材40は、後端側の一部を杭本体10の中に挿入して杭本体10の中心線に沿って2枚の羽根20、30の間に配置して、幅方向の両端を杭本体10の内面に固定する。
【0022】
杭本体10は、略円筒状の羽根受け部材12と少なくとも1本の略円筒状の連結部材11を有する。羽根受け部材12は、羽根20、30と突出部材40を取り付ける部材である。連結部材11は、羽根受け部材12の後端に1本又は複数本連結することで杭本体10を所望する長さにする部材である。なお、羽根受け部材12と連結部材11は、一体の部材であってもよい。また、連結部材11は、鋼管杭、コンクリート杭又はSC杭であってもよい。
【0023】
羽根受け部材12と連結部材11は、溶接又はボルトもしくは機械的方法により固定する。羽根受け部材12、羽根20、30、及び突出部材40は、溶接もしくは嵌め込みにより固定する。羽根受け部材12に羽根20、30、及び突出部材40を固定した構造物が組立体1である。
【0024】
図2は、組立体1を
図1の矢印F2方向から見た図であり、
図1とは天地を逆転して図示している。
図3は、組立体1を
図2の矢印F3方向(先端側)から見た図である。
図4は、組立体1を
図2の矢印F4方向から見た図である。
図1~
図4において、杭本体10の中心を通る架空の中心線と平行な方向をZ軸で示し、Z軸と直交し且つ突出部材40と平行な方向をX軸で示し、X軸及びZ軸と直交する方向をY軸で示す。
【0025】
図5(a)は、羽根受け部材12を
図2と同じ方向から見た図であり、
図5(b)は、羽根受け部材12を
図5(a)の矢印F5b方向(先端側)から見た図であり、
図5(c)は、羽根受け部材12を
図5(a)の矢印F5c方向から見た図である。
図2~
図5に示すように、羽根受け部材12の先端部には、羽根受け部材12をその中心線と直交するXY平面で切断した円環形状の1つの面ではなく、X軸方向に同じ角度で異なる方向に傾斜した2つの傾斜端面14、16がある。
【0026】
2つの傾斜端面14、16の周方向の両端には軸方向の段差15がある。一方の傾斜端面14は、羽根受け部材12の先端面をY軸方向に2分割した一方の半円環状の面をXY平面に対してX軸方向に所定角度で傾斜させた面である。もう一方の傾斜端面16は、羽根受け部材12の先端面をY軸方向に2分割したもう一方の半円環状の面をXY平面に対してX軸方向の逆方向に同じ角度で傾斜させた面である。傾斜端面14、16のXY平面に対するX軸方向の傾斜角度は、例えば、5~15度、望ましくは10度である。
【0027】
本実施形態では、羽根受け部材12の先端部に2つの傾斜端面14、16を設けた場合について説明するが、例えば3つ以上の傾斜端面を羽根受け部材12の先端部に設けてもよい。3つ以上の傾斜端面を羽根受け部材12の先端部に設ける場合、傾斜端面の数に合わせて羽根の枚数を増やすとともに突出部材の形状を変更すればよい。
【0028】
図6(a)は、一方の羽根20を羽根20の表面である組立体1の先端側から見た図であり、
図6(b)は、羽根20を凹所22側(
図6aの矢印F6b方向)から見た図である。羽根20、30は、略半円形の平らな鋼板により形成されており、点対称な形状を有する。よって、ここでは、一方の羽根20の構造について説明し、他方の羽根30についての詳細な説明を省略する。
【0029】
羽根20は、略半円の中心を通る直径に沿って、突出部材40の厚みの半分を受け入れる大きさ及び形状の矩形の凹所22を有する。凹所22の長手方向の中心は略半円の中心にある。羽根20は、凹所22の傾斜方向の下端側の一端22aから円弧に向けて羽根20の一部を真っ直ぐに切り欠いた形状の切り欠き部24を有する。切り欠き部24が円弧と交差する角部が、羽根20の先端20aである。羽根20は、傾斜方向の上端側にも切り欠き部を設けてもよい。もう一方の羽根30は、同じ形の凹所32と切り欠き部34と先端30aを有する。凹所22の傾斜方向の両端は、羽根20の厚み方向と平行で且つ羽根20の直径と直交する平らな面である。凹所22には突出部材40を傾斜した状態で受け入れるため、凹所22と突出部材40の間にはガタがある。このガタは、溶接により凹所22に突出部材40を固定する際に埋める。なお、凹所22の両端は、羽根20の傾斜に合わせて傾斜した面であってもよい。
【0030】
図7(a)は、突出部材40を
図2と同じ方向から見た図であり、
図7(b)は、突出部材40を
図7(a)の矢印F7b方向(先端側)から見た図であり、
図7(c)は、突出部材40を
図7(a)の矢印F7c方向から見た図である。突出部材40は、
図2及び
図3に示すように、羽根受け部材12の内径よりわずかに短いX軸方向の幅を有し、Z軸方向の一端部(突出部分42)が他端に向けてV字形に凹んだ略矩形の平らな鋼板により形成されている。突出部材40の凹V字形の突出部分42は、羽根受け部材12の傾斜端面14と平行な傾斜面44と羽根受け部材12の傾斜端面16と平行な傾斜面46を有する。突出部材40のZ軸方向の長さは、羽根受け部材12のZ軸方向の長さより短く、羽根受け部材12との間の十分な固定強度を得ることができる長さであればよい。
【0031】
上記構造を有する羽根受け部材12と、2枚の羽根20、30と、突出部材40を固定して回転埋設杭100の組立体1を組み立てる手順は、例えば、次の2通りの手順が考えられる。すなわち、羽根受け部材12に突出部材40を固定して、その後2枚の羽根20、30を羽根受け部材12と突出部材40に固定する第1の手順と、2枚の羽根20、30を突出部材40に固定して構造体を形成し、その後この構造体を羽根受け部材12に固定する第2の手順が考えられる。このような組み立て手順は、回転埋設杭100のサイズや杭本体10の羽根受け部材12のZ軸方向の長さなどに応じて適宜選択すればよい。
【0032】
第1の手順で組立体1を組み立てる場合、まず、突出部材40の凹V字形の突出部分42とは反対の他端を羽根受け部材12の先端側から羽根受け部材12の中に差し込む。このとき、突出部材40の厚み方向の中心を通る厚み方向と直交する架空の中心面が、羽根受け部材12の中心を通る架空の中心線と重なり、且つ羽根受け部材12の2つの傾斜端面14、16の間の2つの段差15と重なるように、突出部材40の他端側の一部を羽根受け部材12の先端側から差し込む。突出部材40の突出部分42が羽根20、30の先端より突出しない長さであれば、突出部材40の羽根受け部材12に対する挿し込み長さは自由に決めてよい。この状態で、突出部材40の幅方向の両端を羽根受け部材12の内面に溶接により固定する。この際、溶接作業は、羽根受け部材12の先端側からアクセスして行うことができるとともに、羽根受け部材12の後端側からアクセスして行うこともできる。
【0033】
突出部材40を羽根受け部材12に固定した後、一方の羽根20を羽根受け部材12と突出部材40に固定する。このとき、羽根受け部材12に固定した突出部材40の中心面を境とした厚み方向の傾斜端面14側の半分が羽根20の凹所22に嵌るように、羽根20の裏面を羽根受け部材12の傾斜端面14に当接させる。この状態で、羽根20の直径が突出部材40の架空の中心面と重なり、羽根20が傾斜端面14と同じ方向に傾斜した状態となる。そして、羽根20をこの状態に保持したまま、羽根20の表面側の凹所22の縁と突出部材40の面を溶接により固定し、羽根受け部材12の外面側の傾斜端面14の縁と羽根20の裏面を溶接により固定する。また、羽根受け部材12の後端側から羽根受け部材12の内部にアクセスして、羽根20の裏面側の凹所22の縁と突出部材40の面を溶接し、羽根受け部材12の内面側の傾斜端面14の縁と羽根20の裏面を溶接する。
【0034】
この後、同様に、もう一方の羽根30の裏面を羽根受け部材12の傾斜端面16に接触させて凹所32内に突出部材40の厚み方向のもう半分を嵌合させ、羽根受け部材12と突出部材40と羽根30を溶接により固定する。このように、突出部材40と羽根20、30を羽根受け部材12に固定すると、羽根受け部材12の先端が完全に塞がれる。しかし、羽根受け部材12の先端は完全に塞がなくてもよく、掘削した土を羽根受け部材12の内部へ導く構造であってもよい。
【0035】
以上のように、第1の手順により組立体1を組み立てると、突出部材40の突出部分42にある一方の傾斜面44が一方の羽根20の表面と平行になり、突出部材40の突出部分42にあるもう一方の傾斜面46がもう一方の羽根30の表面と平行になる。言い換えると、突出部材40の傾斜面44は羽根20の表面から所定高さで突出した突起の先端面となり、突出部材40の傾斜面46は羽根30の表面から所定高さで突出した突起の先端面となる。
【0036】
第2の手順で組立体1を組み立てる場合、まず、突出部材40の一方の面に一方の羽根20を固定し、突出部材40のもう一方の面にもう一方の羽根30を固定した構造体を形成する。突出部材40に対する羽根20、30の位置合わせ、及び溶接による固定箇所は、上述した第1の手順で説明したものと同じである。そして、この後、突出部材40に2枚の羽根20、30を固定した構造体を羽根受け部材12の先端に取り付けて、所定箇所を溶接により固定する。構造体の羽根受け部材12に対する取り付け状態、及び溶接による固定箇所は、上述した第1の手順で説明したものと同じである。
【0037】
回転埋設杭100のサイズが比較的大きく、突出部材40に2枚の羽根20、30を固定した構造体の取り扱いが困難となる場合などには、第1の手順で組立体1を組み立てることが望ましい。逆に、回転埋設杭100のサイズが比較的小さく、突出部材40に2枚の羽根20、30を固定した構造体の取り扱いが容易である場合には、第2の手順により回転埋設杭100を組み立ててもよい。
【0038】
以上のように、本実施形態の回転埋設杭100は、杭本体10の羽根受け部材12に突出部材40と2枚の羽根20、30を固定するだけで組み立てることができ、部品点数が少なく、作業工程数も少なく、部材同士の位置決めが容易で、短時間で簡単に組み立てることができる。なお、突出部材40と羽根20、30は、それぞれ、平らな鋼板を形状加工するだけで形成することができ、鋼板の曲げ加工なども不要であり、厚みを調整すれば機械強度も容易に高くすることができる。また、第1の手順によると、2枚の羽根20、30の位置合わせが容易であり、羽根20、30の位置合わせのための治具などが不要であり、組み立てが容易である。
【0039】
以下、上述した構造の回転埋設杭100を地盤に施工する方法について説明する。回転埋設杭100を地盤に施工する場合、まず、杭打機などに回転埋設杭100を取り付けて、回転埋設杭100の先端を地盤の地表面に対向させて回転埋設杭100を地盤の地表面と垂直に配置する。この状態で、回転埋設杭100を地盤に向けて時計回り方向に回転させながら地盤に当接させる。
【0040】
回転埋設杭100を回転させながら地盤に当接させると、2枚の羽根20、30の先端20a、30aが地盤を掘削して、掘削した土が羽根20、30の表面から切り欠き部24を通して羽根20、30の裏面側へ移動して、羽根20、30の傾斜により掘削した土が上方へ押し上げられる。これにより、回転埋設杭100が地盤を掘り進めるための推進力を得る。
【0041】
このとき、突出部材40は、羽根受け部材12の先端(杭本体10の下端)に対向する杭穴の底の円形領域内の地盤を、その突出部分42によって崩して柔らかくするように機能する。仮に、突出部材40を設けない場合、本実施形態の回転埋設杭100のように杭本体10の先端を羽根20、30により閉塞したタイプの杭だと、杭本体10の先端が対向する杭穴の底の円形領域の地盤が固いままであり、杭本体10の外周面より径方向の外側の地盤と比べて掘削抵抗が大きくなり、地盤の掘削が困難になることが想定される。このため、本実施形態では、羽根20、30の表面と平行に配置した凹V字状の傾斜面44、46を有する突出部材40の突出部分42により、羽根受け部材12の先端に対向する杭穴の底の円形領域の地盤を崩して柔らかくして、円形領域の地盤を崩した土を羽根20、30の表面に沿って羽根20、30の外周に向けて流し易くしている。
【0042】
つまり、突出部材40の突出部分42は、杭本体10の先端に対向する円形領域内の地盤を崩すため、羽根20、30の回転中心に近い表面から突設した突起物であり、掘削性能を高めることのみを目的として鋼管杭の鋼管の先端に固定した従来の掘削刃とは異なり、羽根の表面に地盤を崩す能力を付与するために羽根20、30の表面の一部を所定の突出高さで突出させたものである。突出部材40の突出部分42は、羽根20の表面と平行な傾斜面44と羽根30の表面と平行な傾斜面46を有している。突出部材40は、このような凹V字状の突出部分42により、羽根20、30で掘削する地盤の一部(杭穴の底の中央部の最も掘削し難い円形領域内の地盤部分)を予め崩して柔らかくして、羽根20、30による地盤の掘削を補助している。
【0043】
なお、羽根20、30の表面から突出した突起物となる突出部材40の突出部分42は、羽根20、30の表面から所定の突出高さまで突出させればよく、その形状はいかなる形状であってもよい。例えば、上述した実施形態のように突出部材40の突出部分42を羽根20、30の表面から突出させた径方向に連続したブレード状にする代わりに、
図8に示す第1の変形例のように同じ突出高さの複数の先鋭な突起48を径方向に並べた形状にしてもよい。この場合、複数の突起48の先端48aが突出部分の先端となり、複数ある先端48aを結んだ仮想線が突出部分の傾斜面となり、羽根20、30の表面と平行な面に複数の突起48の先端48aが配置される。
【0044】
以上のように、本実施形態では、羽根20、30の回転中心に近い表面から所定高さの突起物を設けるため、1枚の鋼板の先端を形状加工した突出部材40を設けたが、突出部材40を設ける代わりに、例えば、
図9及び
図10に示す第2の変形例のように、同じ高さの略円錐形の複数本の突起50を羽根20、30の回転中心に近い表面から突設してもよい。この場合、例えば、複数本の同じ形状の突起50を製作し、溶接により羽根20、30の表面に固定すればよい。なお、突起50の形状は、略円錐形に限定されず、略三角錐、略立方体などでもよい。
【0045】
なお、本実施形態の回転埋設杭100の突出部材40は、掘削機能だけに着目すれば、羽根20、30の表面から突出した部分だけを設ければよいが、杭本体10の羽根受け部材12の中に挿入配置した突出部材40の後端側の部分は、突出部材40の固定強度を高めることに寄与しており、結果的には羽根20、30の表面に設けた突起物の機械強度を高めることができている。
【0046】
以上のように、上述した実施形態及びその変形例によると、回転埋設杭100の杭本体10の先端に対向する杭穴の底の円形領域にある土を突出部材40の突出部分42によって崩して柔らかくすることができ、羽根20、30による地盤の掘削を効果的に補助することができる。また、突出部材40の突出部分42は、羽根20、30の表面から所定の高さで突出した突起物であるため、回転埋設杭100の施工後に、十分な先端支持力を得ることができる。つまり、突出部材40の突出部分42が羽根20、30の先端より突出しない程度の突出高さであるため、杭本体10の先端が対向する杭穴の底の円形領域の地盤を柔らかくする土の量を最小限に抑えることができ、施工後に羽根20、30の表面と杭穴の底の間に存在する柔らかくなった土の量をできるだけ少なくすることができ、十分な先端支持力を得ることができる。
【0047】
また、上述した第1の変形例のように、突出部材の突出部分を複数の突起48を並べた形状にすると、上述した実施形態のように突出部分42を凹V字形のブレード状にした場合と比較して、掘削抵抗を小さくすることができ、突出部材40に地盤から作用する応力を抑えることができる。このため、第1の変形例によると、突出部材40の肉厚を薄くしたり、羽根受け部材12に対する固定部分の長さを短くしたりすることができる。
【0048】
また、上述した第2の変形例のように、複数本の突起50を羽根20、30の表面に分散させて固定すると、羽根20、30の直径に沿ってブレード状の突出部材40を設けた場合と比較して、羽根20、30に作用する応力を分散させることができる。このため、羽根20、30の羽根受け部材12に対する固定箇所や羽根20、30の突出部材40に対する固定箇所など、杭本体10の先端に作用する応力を低減することができる。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施形態及びその変形例には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、本実施形態及びその変形例に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0050】
例えば、上述した実施形態及びその変形例では、羽根20、30に切り欠き部24、34を設けた場合について説明したが、
図11~
図13に示す第3の変形例のように、切り欠き部を持たない略半円板状の羽根120、130を用いてもよく、このような回転埋設杭に対しても本発明を適用することができる。第3の変形例は、切り欠き部を設けない分だけ支持力が大きい。
【0051】
また、羽根20、30の周方向の両側に切り欠きを設けてもよく、羽根20、30の傾斜方向の下端側ではなく、上端側にのみ切り欠きを設けてもよい。また、羽根20、30の形状は、平らな板状に限らず、例えば、椀状などであってもよい。また、羽根20、30の枚数は、2枚に限らず、3枚以上あってもよい。
【0052】
図14は、第4の変形例に係る回転埋設杭を先端側から見た図であり、
図15は、第5の変形例に係る回転埋設杭を先端側から見た図であり、
図16は、第6の変形例に係る回転埋設杭を先端側から見た図である。第4~第6の変形例に係る回転埋設杭は、羽根20、30の形状が異なる以外、上述した実施形態と略同じ構造を有するため、上述した実施形態と同様に機能する構成に関する説明を省略する。
【0053】
第4の変形例に係る回転埋設杭の2枚の羽根141、142は、回転埋設杭の中心軸に対して点対称となる形状を有する。よって、ここでは、一方の羽根141について説明し、もう一方の羽根142の説明を省略する。羽根141は、略半円形の平らな鋼板により形成されている。羽根141は、その外周に、円弧状の第1面141a、平らな第2面141b、平らな第3面141c、及び平らな第4面141dを有する。第2面141bは、もう一方の羽根142の外周にある端面142dと突出部材40の一方の面401に当接する。第3面141cは、突出部材40の幅方向の端面402に当接する。第4面141dは、羽根142の外周にある端面142bに当接する。
【0054】
羽根141は、上述した実施形態の羽根20と同様に、その表面1410と反対の面を羽根受け部材12の傾斜端面14に当接させた状態で、羽根受け部材12、突出部材40、及びもう一方の羽根142に固定する。もう一方の羽根142を同様に傾斜端面16に当接させた状態で、羽根受け部材12、突出部材40、及び羽根141に固定することにより、羽根受け部材12の先端側が閉塞される。なお、2枚の羽根141、142の傾斜方向は逆でもよい。
【0055】
第5の変形例に係る回転埋設杭の2枚の羽根151、152は、回転埋設杭の中心軸に対して点対称となる形状を有する。よって、ここでは、一方の羽根151について説明し、もう一方の羽根152の説明を省略する。羽根151は、略半円形の平らな鋼板により形成されている。羽根151は、その外周に、円弧状の第1面151a、及び平らな第2面151bを有する。第2面151bは、突出部材40の一方の面401に当接する。
【0056】
羽根151は、上述した実施形態の羽根20と同様に、その表面1510と反対の面を羽根受け部材12の傾斜端面14に当接させた状態で、羽根受け部材12、及び突出部材40に固定する。もう一方の羽根152を同様に傾斜端面16に当接させた状態で、羽根受け部材12、及び突出部材40に固定することにより、羽根受け部材12の先端側が閉塞される。
【0057】
第6の変形例に係る回転埋設杭の2枚の羽根161、162は、異なる形状を有する。一方の羽根161は、略半円形の平らな鋼板により形成されている。羽根161は、その外周に、円弧状の第1面161a、及び平らな第2面161bを有する。第2面161bは、もう一方の羽根162の外周にある第2面162b、第6面162f、及び突出部材40の一方の面401に当接する。
【0058】
羽根161は、上述した実施形態の羽根20と同様に、その表面1610と反対の面を羽根受け部材12の傾斜端面14に当接させた状態で、羽根受け部材12、突出部材40、及びもう一方の羽根162に固定する。
【0059】
もう一方の羽根162は、略半円形の平らな鋼板により形成されている。羽根162は、その外周に、円弧状の第1面162a、平らな第2面162b、平らな第3面162c、平らな第4面162d、平らな第5面162e、及び平らな第6面162fを有する。第2面162bは、一方の羽根161の第2面161bに当接する。第3面162cは、突出部材40の幅方向の端面404に当接する。第4面162dは、突出部材40のもう一方の面403に当接する。第5面162eは、突出部材40の幅方向の端面402に当接する。第6面162fは、一方の羽根161の第2面161bに当接する。
【0060】
羽根162は、上述した実施形態の羽根30と同様に、その表面1620と反対の面を羽根受け部材12の傾斜端面16に当接させた状態で、羽根受け部材12、突出部材40、及び一方の羽根161に固定する。2枚の羽根161、162を羽根受け部材12、及び突出部材40に固定することにより、羽根受け部材12の先端側が閉塞される。なお、2枚の羽根161、162の傾斜方向は逆でもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…組立体、10…杭本体、11…連結部材、12…羽根受け部材、14、16…傾斜端面、15…段差、20、30…羽根、20a、30a…羽根の先端、22、32…凹所、22a…凹所の傾斜方向の下端側の一端、24、34…切り欠き部、40…突出部材、42…突出部分、44、46…傾斜面、48、50…突起、40a、48a…突起の先端、100…回転埋設杭、120、130…羽根。