(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174592
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】作業車両の管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20241210BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01B69/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092493
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸明
(72)【発明者】
【氏名】今井 征典
(72)【発明者】
【氏名】小山 浩二
【テーマコード(参考)】
2B043
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2B043AA10
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB12
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA11
2B043EA18
2B043EA32
2B043EB05
2B043EC02
2B043EC14
2B043EC15
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】複数の作業車両の作業進捗状況を容易に管理できる作業車両の管理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】複数の作業車両Vxと通信する管理端末201を備え、作業計画と実行中作業状況を比較し、作業車両ごとの進捗状況を取得する作業進捗度判定手段Zを設け、進捗状況の遅れ時間Dxが大きい順に管理端末201に各作業車両Vxの情報を表示する作業車両の管理システムである。さらに作業車両Vxと管理端末201にはそれぞれ測位装置203,205を備え、管理端末201に表示する作業車両Vxの順序を選択する選択スイッチSを表示し、選択スイッチSのうち距離順を選ぶと管理端末201から遠い順に作業車両Vxの情報をリスト表示する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業車両(Vx)と通信する管理端末(201)を備え、作業計画と実行中作業状況を比較し、作業車両ごとの進捗状況を取得する作業進捗度判定手段(Z)を設け、進捗状況の遅れ時間(Dx)が大きい順に管理端末(201)に各作業車両(Vx)の情報を表示する作業車両の管理システム。
【請求項2】
作業車両(Vx)と管理端末(201)にはそれぞれ測位装置(203,205)を備え、管理端末(201)に表示する作業車両(Vx)の順序を選択する選択スイッチ(S)を表示し、選択スイッチ(S)のうち距離順を選ぶと管理端末(201)から遠い順に作業車両(Vx)の情報をリスト表示する構成とした請求項1に記載の作業車両の管理システム。
【請求項3】
作業車両(Vx)はそれぞれ測位装置(203,205)を備え、管理端末(201)に表示する作業車両(Vx)の順序を選択する選択スイッチ(S)を表示し、補給距離順を選ぶと資材の補給地点から遠い順に作業車両(Vx)の情報をリスト表示する構成とした請求項1に記載の作業車両の管理システム。
【請求項4】
作業車両(Vx)は収穫物を収容する収容容器(T)の収容率を検知する収容率センサ(Ts)を備え、管理端末(201)は作業車両(Vx)ごとの収容率を取得し収容率が高い順にリスト表示する構成とする請求項1又は請求項2に記載の作業車両の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用トラクタのような作業車両の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タブレット端末などの管理端末がインターネットを介して作業走行している複数の作業車両と通信し、管理端末のディスプレイに作業車両のリストと作業車両ごとの燃料残量を表示する作業車両管理システムが公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、管理ユーザは、管理サーバにアクセスし、燃料残量データベースを参照することにより、作業車両の燃料残量を確認することができる。
【0005】
しかしながら、複数の作業車両を管理する場合、それぞれの作業車両は時々刻々と状況が変化するため、監視すべき作業車両を見極めることは容易ではない。
【0006】
本発明は、複数の作業車両を容易に管理できる作業車両の管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の作業車両Vxと通信する管理端末201を備え、作業計画と実行中作業状況を比較し、作業車両ごとの進捗状況を取得する作業進捗度判定手段Zを設け、進捗状況の遅れ時間Dxが大きい順に管理端末201に各作業車両Vxの情報を表示する作業車両の管理システムである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、作業車両Vxと管理端末201にはそれぞれ測位装置203,205を備え、管理端末201に表示する作業車両Vxの順序を選択する選択スイッチSを表示し、選択スイッチSのうち距離順を選ぶと管理端末201から遠い順に作業車両Vxの情報をリスト表示する構成とした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、作業車両Vxはそれぞれ測位装置203,205を備え、管理端末201に表示する作業車両Vxの順序を選択する選択スイッチSを表示し、補給距離順を選ぶと資材の補給地点から遠い順に作業車両Vxの情報をリスト表示する構成とした。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、作業車両Vxは収穫物を収容する収容容器Tの収容率を検知する収容率センサTsを備え、管理端末201は作業車両Vxごとの収容率を取得し収容率が高い順にリスト表示する構成とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、作業の進捗が遅い順から表示することで作業速度の指示を変更するなどの対応をとることで全作業の終了を早められるなど、管理を容易にすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、対応が必要になったときに遠い作業車両は時間がかかるので注意を促すことで円滑な作業管理ができる
請求項3に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、燃料や農薬などの資材が少なくなると補給等の対応が必要になるが、補給地点から遠い作業車両は補給に時間がかかるので注意を促すことで円滑な作業管理ができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によると、請求項1又は請求項2に記載の効果に加え、収容率が高い順に作業車両のリストを表示することで、収容率が100%になった車両の対応をしやすくなり複数の作業車両を容易に管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態にかかる農用トラクタの側面図である。
【
図2】同上農用トラクタの管理システムのブロック図である。
【
図3】同上管理端末と複数の圃場との位置関係を示す模式図である。
【
図4】同上圃場の外周経路を記録する模式図である。
【
図5】同上圃場の枕地走行経路及び往復走行経路の一例を示す図である。
【
図6】同上農用トラクタにおける開始点自動移動モードのフローチャートである。
【
図7】同上実施例における作業車両と管理端末表示一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面に基づき説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施態様に係る作業車両管理システムの作業車両100の構成を示す略側面図である。作業車両100は、往復隣接作業走行範囲13を走行可能な農作業用の車両であり、車体前部には、ボンネット107に覆われたエンジン105が配設され、このエンジン105の回転動力を複数の変速装置を介して前輪103及び後輪104に伝達することで走行できるように構成されている。また、エンジン105の後方には、操縦部106が設けられており、操縦部106後方の車体後部には往復隣接作業走行範囲13を耕耘可能な作業機140が取り付けられている。
【0017】
操縦部106には、作業者が操作するステアリングハンドルと操縦席とを備えているキャビンが設けられている。また、キャビンの天井であるキャビンルーフ108にはGNSS受信機102が設けられており、人工衛星170から所定の時間間隔で電波を受信して作業車両100の位置を測定することができるように構成されている。
【0018】
作業車両100の車体後部には、上側にあるトップリンク145aと下側にある左右のロアリンク145bとからなる3点リンク機構145が設けられており、これに作業機140が連結されている。作業機140は耕耘作業機とされ、圃場の土を耕す耕耘爪146と、耕耘爪146の上方を覆うロータリカバー147と、ロータリカバー147の後部で上下動自在に支持されるリヤカバー148とが設けられる。
【0019】
3点リンク機構145のロアリンク145bには、リフトアーム142を介して作業機昇降シリンダ141が接続されており、作業機昇降シリンダ141を伸縮させることによりロアリンク145bを上下させることができるように構成されている。
【0020】
以下、作業車両100が作業機140を下ろした状態で、往復隣接作業走行範囲13の土を耕しながら走行することを作業走行と呼ぶ。
【0021】
図2は、本発明の好ましい実施態様に係る作業車両管理システム1の構成を示すブロック図である。作業車両100は、
図1のGNSS受信装置102が受信した電波から自機の位置情報を取得する位置情報取得手段である位置情報取得部301と、車両の自律走行を制御する自動運転ECU302と、車両の走行及び作業機の操作を制御する車両ECU303とを備えており、車両ECU303は、通信網をなすクラウドCと相互に通信を行う通信部304と、位置情報や地形情報から走行経路を算定する経路算定部306とを備えている。
【0022】
したがって、作業車両100は、位置情報取得部301により取得した自機の位置情報を、所定時間毎に、通信部304を介してクラウドCに送信して格納することができ、また、クラウドCに格納された情報を取得することができるように構成されている。
【0023】
遠隔管理装置200は、携帯可能な電子演算機器であり、管理ユーザにより操作可能な管理端末201によって構成されている。管理端末201は、クラウドCと相互に通信可能な通信機202と、管理端末201を制御する端末制御部204とを備えている。したがって、管理ユーザは、管理端末201を所持することにより、通信機202を介してクラウドCと情報のやり取りをすることができる。併せて管理端末201自身の自己位置を測定する測位装置205を備えて、自己位置情報を取得することができ、また通信機202を介して送信できる。
【0024】
このように、作業車両100と遠隔管理装置200とがクラウドCを媒介して通信可能に構成されているので、管理ユーザは、遠隔管理装置200により、作業車両100の状態を監視したり、指令を送ったりすることができ、遠隔的に作業車両100を管理することが可能になる。
【0025】
クラウドCには管理サーバ320が設けられており、この管理サーバ320には圃場やその周辺の地形情報を格納する地形情報データベース322と、作業車両100の位置情報を格納する位置情報データベース323とが記録されている。したがって、管理ユーザは、管理サーバ320にアクセスし、地形情報データベース322および位置情報データベース323を参照することにより、作業車両100と圃場との位置関係を把握することができる。
【0026】
図3は、管理区域10における、管理端末201と、複数の往復隣接作業走行範囲13との位置関係を示す模式図であり、管理区域10には複数の往復隣接作業走行範囲13(A1~An)が設けられており、それぞれの往復隣接作業走行範囲13で走行車両100(V1~Vn)が作業走行するように構成されている。各往復隣接作業走行範囲13は管理通路12に接しており、出入口11から作業車両100が出入りできるように構成されている。
【0027】
管理端末201は、どの往復隣接作業走行範囲13にどの作業車両100が作業しているかを特定する圃場特定手段を備えており、
図2に示したクラウドCを介して管理サーバ320にアクセスし、地形情報データベース322に格納されている各往復隣接作業走行範囲13(A1~An)の位置情報と、位置情報データベース323に格納されている作業車両100(V1~Vn)の位置情報とを比較参照することで、往復隣接作業走行範囲13が位置する範囲に存在する作業車両100を特定し、作業車両Vx(x=1,2,・・・,n)と、その作業車両Vxが作業している圃場Ax(x=1,2,・・・,n)とを対応付けることができるように構成されている。
【0028】
ここで、管理端末201において、端末制御部204は、測位装置203により、クラウドCを介して
図2に示した地形情報データベース322から管理区域10の管理通路12と、往復隣接作業走行範囲13(A1~An)とのそれぞれの地形情報を取得することができる。さらに、管理端末201の現在位置から管理通路12を通って往復隣接作業走行範囲13の出入り口11の位置に達する経路(L1~Ln)を算出して、これらの経路(L1~Ln)の距離から、所定の速度における往復隣接作業走行範囲13(A1~An)への移動時間T(T1~Tn)を算出可能に構成されている。
【0029】
図4は、圃場Hの枕地走行を記録する作業車両100の様子を示す模式図であり、
図5は、圃場H内を作業走行する作業車両100の様子を示す略平面図である。
【0030】
図4に示されるよう、畦15に囲まれ、この畦15による外形Pe形状で区画される圃場Hは、往復隣接作業走行範囲13と、枕地走行範囲14とからなり、管理通路12に対し、出入口11によって走行車両100が出入り可能に構成されている。枕地走行範囲14は、走行車両100が走行可能であり、往復隣接作業走行範囲13の外を周回するための枕地走行経路22に基づいて作業走行することによりこの枕地走行範囲14を耕耘処理できる。
【0031】
作業車両100は、圃場の形状を示す地形情報を取得する圃場形状取得手段を備えている。その前提として、作業車両100は、あらかじめ、
図2の位置情報取得部301で現在位置を測定しながら枕地走行経路22を走行し、
図2の経路算定部306が走行した経路の位置情報をつなげることにより、外周の枕地走行経路22としての経路情報を作成し、かつ、枕地走行経路22の経路情報において走行した経路が囲む範囲を計算して圃場Hの地形情報(圃場の位置座標、面積および縦横の長さ)を作成し、これらの情報を、クラウドCを介して、地形情報データベース322に記録する地形情報記録モードを備えている。そして、作業車両100は、地形情報記録モードの実行で圃場形状取得手段によって、地形情報データベース322に記録された外周Pe形状情報による枕地走行経路22の経路情報及び地形情報データベース322に記録された往復隣接作業走行範囲13の地形情報を取得することができるように構成されている。
【0032】
地形情報記録モードにより作業車両100が作成した枕地走行経路22の経路情報と往復隣接作業走行範囲13の地形情報とは、クラウドCを介して管理サーバ320に送信され、枕地走行経路22の経路情報と往復隣接作業走行範囲13の地形情報とを受け取った管理サーバ320は、その情報を地形情報データベース322に記録する。これにより、作業車両100は、クラウドCを介して管理サーバ320にアクセスすることで、任意のタイミングで枕地走行経路22の経路情報と往復隣接作業走行範囲13の地形情報とを取得することができる。作業車両100は、例えば、エンジン105を起動した際に、圃場形状取得手段によって、枕地走行経路22の経路情報及び往復隣接作業走行範囲13の地形情報を取得する。
【0033】
このように、作業車両100が地形情報記録モードを備えていることにより、あらかじめ往復隣接作業走行範囲13を測量して地形情報を取得しておく必要がなく、任意の往復隣接作業走行範囲13での作業車両100に作業走行をさせるために必要な手間を軽減することができる。
【0034】
図5に示されるように、作業車両100は、往復隣接作業走行範囲13内を作業走行するにあたり、
図2に示した経路算定部306により往復隣接作業走行範囲13の地形情報と作業車両100の作業幅wとに基づいて往復隣接作業走行範囲13を作業走行するための経路である往復走行経路20を算定する。往復隣接作業走行範囲13を万遍なく耕耘するように作業走行するには、往復隣接作業走行範囲13の幅を作業幅wで割った数の分だけ往復隣接作業走行範囲13を直進すればよいので(
図5では7回)、往復走行経路20は、往復隣接作業走行範囲13上を直進する直進経路と、往復隣接作業走行範囲13を出て枕地14で旋回し往復隣接作業走行範囲13に戻る旋回経路とにより、往復隣接作業走行範囲13を往復するように算定される。以下、往復走行経路20が往復隣接作業走行範囲13の端と交差する点を圃場端点21a(P1~P7)、21b(Q1~Q7)と呼ぶ。
【0035】
往復走行経路20が算定されると、作業車両100は、自律走行により、往復走行経路20に沿って、往復隣接作業走行範囲13の一端から他の一端まで往復しながら、圃場全体を作業走行で通過するように構成されている。
【0036】
具体的には、作業車両100は、往復隣接作業走行範囲13の隅にある圃場端点21a(P1(以下、開始点P1))から往復隣接作業走行範囲13に進入すると、対向する位置にある圃場端点21b(Q1)まで直進して、一旦、往復隣接作業走行範囲13を出てから枕地14で左旋回し、隣接する圃場端点21b(Q2)から再度、往復隣接作業走行範囲13に進入する。その後、対向する位置にある圃場端点21a(P2)まで直進し、往復隣接作業走行範囲13を出てから枕地14で右旋回し、隣接する圃場端点21a(P3)から再度、往復隣接作業走行範囲13に進入する。作業車両100は、このような走行を圃場端点21a(Q7)に着くまで繰り返すことで、圃場全体を万遍なく耕耘することができる。
【0037】
次いで、
図5に基づき枕地走行範囲14の枕地走行経路22について具体的に説明する。畦15と往復隣接走行範囲13との間における枕地走行範囲14は、複数回の周回作業で耕耘できる範囲に設定されている。畦15に近い枕地は作業者の手動操作による枕地走行運転で耕耘するものとし、枕地最内周は上記往復隣接作業自律走行に継続して自律走行する構成としている。したがって、作業者は作業車両100が管理通路12から出入口11に達すると、圃場Hの枕地走行範囲14を管理端末201に表示される枕地走行経路22に従って枕地耕耘を行い、往復隣接作業走行範囲13の圃場端点21aのうち往復隣接作業走行経路20の開始点P1へ向けて移動する。なお、出入口11を通過した後、以降は枕地走行範囲14を自律走行する構成でもよい。
【0038】
次いで、
図6に基づいて、開始点自動移動モードMについて説明する。作業車両100が圃場H内に入り、手動操作の周回作業または外周Pe形状情報に基づき作成された枕地走行経路22による自律走行を実行した後、管理端末201の所定操作、すなわちモードスイッチ操作によって、開始点自動移動モードMに移行する。開始点自動移動モードMは、車両の自律走行を制御する前記自動運転ECU302に設定された開始点自動移動制御部308の実行に基づいて、圃場H内枕地走行経路22に移動した作業車両100を往復隣接走行範囲13の圃場端点21aのうち、往復隣接作業の開始点P1へ至る開始点自動移動経路24を演算し指定するものである。
図6により説明すると、作業車両100の電源投入とともに方位検出手段310によって作業車両の方位が認識され、自律走行経路から大きく逸脱しているか否かが判定される(S101,S102)。方位が確定している時のみ自動移動を許可することで、自動移動開始時の安全性を確保できる。なお、方位判定にあたっては自律走行軌跡と枕地走行経路22との比較によって方位の異常の有無を判定できる構成としてもよい。次いで作業車両100の前端部Fが圃場H領域から逸脱していないか判定される(S103)。次に車両前端部Fと作業機140の後端中央部Rが圃場H外周(畦15内周)Peに対して所定距離D1以上離れているか否か判定される(S104)。ここで所定距離D1は、例えば作業機140幅Wの1/2に安全距離α(例えば30cm)を加えた値とし、圃場外周Peから車両中央Fまでの距離Dfとし、同様に圃場外周Peから作業機後端中央までの距離Drとしたとき、D1≒(W/2)+αであり、Df<D1かつDr<D1となる。次に、最内周の枕地走行経路22から圃場H内側に向けた距離が所定距離D2以内であるか否か判定される(S105)。ここで、所定距離D2は例えば1mである。したがって、車両中央F及び作業機後端中央Fが
図6に示す許可範囲Dにあるときに許可される。以下、順に車両は枕地走行経路22に沿う方向であるか判定される(S105)。枕地走行経路22に向かってあまり操舵角を変更することなく移動でき安全である。
【0039】
S102~S106の条件が整うと、開始点自動移動モードMの実行が許可状態となり(S107)、管理端末201の画面に「開始」スイッチ部が表示され(S108)、これをタッチ操作することで(S109)、自動運転ECU302は、開始点自動移動経路24が演算され(S110)、車両は開始点自動移動経路24に沿い開始点P1に向けて自律走行する。なお、開始点自動移動経路24の演算にあたっては、予め設定された枕地走行経路22に重複させるようになっており、無闇に往復隣接走行範囲13に進入しないようになっている。
【0040】
前記のように、作業車両100と遠隔管理装置200とがクラウドCを媒介して通信可能に構成されているので、管理ユーザは、遠隔管理装置200により、作業車両100の状態を監視したり、指令を送ることができ、遠隔的に作業車両100を管理するものである。そして、管理端末201は、通信機202を介してクラウドCにおける作業車両の位置および作業状況を取得して作業状況を表示し、必要な操作をもって走行車両を制御することができる。なお前記作業車両100はGNSS受信装置102が受信した電波から自機の位置情報を取得する位置情報取得手段を構成している。
【0041】
次いで、作業進捗状況確認手段Y及び進捗度判定手段Zについて説明する。前記のように、管理区域10において複数の往復隣接作業走行範囲13(A1~An)でそれぞれに走行車両100(V1~Vn)が作業走行するものであるが、各往復隣接作業走行範囲13(A1~An)ごとに算定される往復走行経路20によって作業計画が立案でき、つまり予め設定された作業走行速度や旋回時間によって、作業車両Vx(x=1,2,・・・,n(以下同じ))が作業している圃場Axにおける作業行程距離Lxを算出でき、更には設定所要時間Txを算出できる。そして作業開始時刻を記憶し、現在時刻と作業車両Vxの現在位置情報を得ることによって作業進捗状況を演算できる。例えば、現在位置から作業済距離Lsxが算出でき、総作業行程距離Lxに対する比率をもって作業進捗度を算出できる(作業進捗状況確認手段Y)。したがって各作業車両Vxにおける作業終了時刻の算出につながって、作業終了時刻を認識することができる。併せて、予め作業車両Vxの単位時間あたり作業量、すなわち作業計画を勘案することで実行中の作業は順調であるか、遅れ気味であるか判定できる(作業進捗度判定手段Z)。
【0042】
前記管理端末201には各走行車両Vxの作業進捗状況又は作業進捗度を表示できるよう構成している。作業進捗状況によって作業計画に対する遅れ時間Dを算出でき、管理端末201には、前記作業終了時刻や複数の作業車両Vxの遅れ時間Dxを表示できる。この表示は例えばバーグラフで最小を表示できる構成とし、遅れ時間Dxの大きい順に表示したり、逆に進捗が順調で遅れ時間Dxの小さい順に表示させることができる。このように、遅れ時間Dxを順次表示することによって、作業の進捗が遅い順から表示することで作業速度の指示を変更するなどの対応をとることで全作業の終了を早められるなど、管理を容易にすることができる。なお、図例では遅れ時間Dxをバーグラフ表示とともにデジタル表示している。
【0043】
図7は、管理端末201の表示の一例を示す。各作業車両VxごとにバーグラフBxの長さを異ならせて表示でき、バーグラフ長さは上記遅れ時間Dxである。そしてこのバーグラフ長さの長い順に表示するよう設定すると、一目で作業遅延状況の把握ができるものである。管理端末201の選択画面には、タッチ操作による選択スイッチ手段Sを備え、上記の遅れ時間設定スイッチS1のほかに、距離スイッチS2を備えていて、この距離スイッチをタッチ操作すると、管理端末201と各作業車両Vxとの距離の大きい順から小さい順又はその逆に表示される。そしてその距離をバーグラフBx表示できるように構成する。このように構成すると、対応が必要になったときに遠い作業車両は時間がかかるので注意を促すことで円滑な作業管理ができる。
【0044】
前記選択スイッチ手段Sのさらに応用例としては、燃料補給箇所選択スイッチS3や各種資材の保管場所選択スイッチS4を設ける。例えば選択スイッチS4を操作すると農薬散布機における補給農薬保管場所までの距離を作業車両Vxごとにバーグラフ表示する構成がある。このように構成すると、燃料や農薬などの資材が少なくなると補給等の対応が必要になるが、補給地点から遠い作業車両は補給に時間がかかるので注意を促すことで円滑な作業管理ができる。
【0045】
作業車両Vxはコンバインのような収穫作業機であって、収穫物を収容する収容容器Tの収容率を検知する収容率センサTsを備え、管理端末201は作業車両Vxごとの収容率を取得し収容率が高い順にリスト表示する構成とする。収容率が100%になると、作業を中止してトラック等に載せ換えて搬送する必要があるが、このように構成すると、収容率が高い順に作業車両Vxのリストを表示することで、収容率が100%になった車両の対応をしやすくなり複数の作業車両を容易に管理できる。
【0046】
上記のほかに、作業車両Vxの燃費状況として燃費の良い順又は悪い順、エンジンオイル温度の高い順又は低い順、冷却水温の高い順又は低い順、定期メンテナンス時期の早・遅順等がある。これら必要項目を選択できる選択スイッチSを設定するとよい。さらには、作業車両Vxの種類に鑑みて、電動機駆動による作業車両とする場合には、電池残量の多い順又は少ない順がある。
【符号の説明】
【0047】
201 管理端末
203 測位装置
205 測位装置
Dx 遅れ時間
S 選択スイッチ
T 収容容器
Ts 収容率センサ
Vx 作業車両
Z 作業進捗度判定手段