(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174593
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】プレキャスト床版の接合構造
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20241210BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092494
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】原 紘一朗
(72)【発明者】
【氏名】吉武 謙二
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059BB39
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】薄肉化および施工性の向上を図りつつ、鉄筋周辺のコンクリートの破壊を防止できるプレキャスト床版の接合構造を提供する。
【解決手段】接合部は、互いに接合されるプレキャスト床版それぞれの橋軸方向鉄筋52の鉄筋突出部54が配置され、鉄筋突出部54を埋設する接合部コンクリートを有し、鉄筋突出部54は、接合端面側の基部57と、基部57よりも突出方向の先端側に位置し、基部57よりも外径が大きい第1拡径部55と、第1拡径部55よりも先端側に位置し、第1拡径部55よりも外径が大きい第2拡径部56と、を有し、第1拡径部55は、鉄筋突出部54の突出方向全体にわたって同じ外径であり、第2拡径部56は、鉄筋突出部54の突出方向全体にわたって同じ外径であり、基部57と第1拡径部55との接続部には、第1段部58が形成され、第1拡径部55と第2拡径部56との接続部には、第2段部59が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャスト床版が接合部を介して接合され、
前記プレキャスト床版は、
コンクリート部と、
前記コンクリート部に埋設されるとともに前記コンクリート部における他方の前記プレキャスト床版側の接合端面から突出する鉄筋と、を有し、
前記接合部は、
互いに接合される前記プレキャスト床版それぞれの接合端面の間に位置し、
互いに接合される前記プレキャスト床版それぞれの前記鉄筋における前記接合端面から突出する鉄筋突出部が配置され、
前記鉄筋突出部を埋設する接合部コンクリートを有し、
前記鉄筋突出部は、前記接合端面側の基部と、
前記基部よりも突出方向の先端側に位置し、前記基部よりも外径が大きい第1拡径部と、
前記第1拡径部よりも先端側に位置し、前記第1拡径部よりも外径が大きい第2拡径部と、を有し、
前記第1拡径部は、前記鉄筋突出部の突出方向全体にわたって同じ外径であり、
前記第2拡径部は、前記鉄筋突出部の突出方向全体にわたって同じ外径であり、
前記基部と前記第1拡径部との接続部には、第1段部が形成され、
前記第1拡径部と前記第2拡径部との接続部には、第2段部が形成されているプレキャスト床版の接合構造。
【請求項2】
前記第1拡径部の外径は、前記基部の外径の1.1倍より大きく2.4倍より小さく、
前記第2拡径部の外径は、前記基部の外径の1.5倍より大きく2.5倍より小さい請求項1に記載のプレキャスト床版の接合構造。
【請求項3】
前記第1拡径部における前記基部側の端面および前記第2拡径部における第1拡径部側の端面は、前記鉄筋突出部の軸方向に直交する平坦面である請求項1または2に記載のプレキャスト床版の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト床版の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャスト床版どうし接合するプレキャスト床版の接合構造として、プレキャスト床版の端部にコンクリート部分から突出するループ状のループ継手を設け、プレキャスト床版どうしの接合部に、接合されるプレキャスト床版それぞれのループ継手を交互に配列するとともに、これらのループ継手の内部に補強鉄筋を挿入し、コンクリートを充填する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ループ継手をプレキャスト床版の接合部に設けた場合、ループ継手の半円形フックの曲げ内半径の制約によって床版厚が決まり、プレキャスト床版の薄肉化が困難な場合がある。また,ループ継手の内部に補強鉄筋を挿入する際には、配列されたループ継手の配列方向の端部からループ継手の内部補強鉄筋を挿入するため、施工スペースを確保する必要があり、施工性が良くないという問題がある。
【0005】
これに対し、ループ継手に代わって、プレキャスト床版の端部にコンクリート部分から直線状に突出する鉄筋を設け、鉄筋の先端部に外周面がテーパー状の拡径部を設けたプレキャスト床版の接合構造が提案されている。このようにすることにより、突出鉄筋の曲げ半径による床版厚の制約が無いとともに、接合部の補強鉄筋を、鉄筋を設置する前に予め配筋することが可能となり、施工性を向上できる。
【0006】
しかしながら、このようなプレキャスト床版の接合構造では鉄筋の拡径部のテーパー状の外周面から、鉄筋の軸線方向と交差する方向の支圧抵抗力が発生し、鉄筋周辺のコンクリートを破壊する虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、薄肉化および施工性の向上を図りつつ、鉄筋周辺のコンクリートの破壊を防止できるプレキャスト床版の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレキャスト床版の接合構造は、プレキャスト床版が接合部を介して接合され、前記プレキャスト床版は、コンクリート部と、前記コンクリート部に埋設されるとともに前記コンクリート部における他方の前記プレキャスト床版側の接合端面から突出する鉄筋と、を有し、前記接合部は、互いに接合される前記プレキャスト床版それぞれの接合端面の間に位置し、互いに接合される前記プレキャスト床版それぞれの前記鉄筋における前記接合端面から突出する鉄筋突出部が配置され、前記鉄筋突出部を埋設する接合部コンクリートを有し、前記鉄筋突出部は、前記接合端面側の基部と、前記基部よりも突出方向の先端側に位置し、前記基部よりも外径が大きい第1拡径部と、前記第1拡径部よりも先端側に位置し、前記第1拡径部よりも外径が大きい第2拡径部と、を有し、前記第1拡径部は、前記鉄筋突出部の突出方向全体にわたって同じ外径であり、前記第2拡径部は、前記鉄筋突出部の突出方向全体にわたって同じ外径であり、前記基部と前記第1拡径部との接続部には、第1段部が形成され、前記第1拡径部と前記第2拡径部との接続部には、第2段部が形成されている。
【0009】
本発明では、第1拡径部は、鉄筋突出部の突出方向全体にわたって同じ外径であり、第2拡径部は、鉄筋突出部の突出方向全体にわたって同じ外径である。すなわち、第1拡径部および第2拡径部の外周面には、鉄筋突出部の軸方向に対して傾斜するテーパー面が形成されていない。このため、コンクリート床版の曲げ変形時に、第1拡径部および第2拡径部から接合部のコンクリートに生じる支圧抵抗力は、鉄筋突出部の軸方向に作用し、鉄筋突出部の周囲のコンクリートには、ほとんど作用しない。これにより、第1拡径部および第2拡径部から接合部のコンクリートに生じる支圧抵抗力を鉄筋突出部が負担し、鉄筋突出部の周囲のコンクリートの破壊を防止できる。
また、鉄筋突出部は、従来のループ継手と比べて曲げ半径による床版厚の制約が無いとともに、接合部の補強鉄筋を、鉄筋を設置する前に予め配筋することが可能となり、施工性を向上できる。
【0010】
また、本発明に係るプレキャスト床版の接合構造では、前記第1拡径部の外径は、前記基部の外径の1.1倍より大きく2.4倍より小さく、前記第2拡径部の外径は、前記基部の外径の1.5倍より大きく2.5倍より小さくてもよい。
【0011】
このような構成とすることにより、第1拡径部および第2拡径部から接合部のコンクリートに生じる支圧抵抗力を鉄筋突出部に効率よく伝達できる。
【0012】
また、本発明に係るプレキャスト床版の接合構造では、前記第1拡径部における前記基部側の端面および前記第2拡径部における第1拡径部側の端面は、前記鉄筋突出部の軸方向に直交する平坦面であってもよい。
【0013】
このような構成とすることにより、第1拡径部および第2拡径部から接合部のコンクリートに生じる支圧抵抗力を鉄筋突出部に効率よく伝達できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、薄肉化および施工性の向上を図りつつ、鉄筋突出部周辺のコンクリートの破壊を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態によるプレキャスト床版の接合構造を示す鉛直断面図である。
【
図2】本発明の実施形態によるプレキャスト床版の接合構造を示す水平断面図である。
【
図4】従来の鉄筋突出部の先端部の形状を示す図である。
【
図7】荷重とスパン中央(接合部)の変位との関係を示すグラフである。
【
図8】従来のプレキャスト床版の接合構造の試験体の終局状態を示すグラフである。
【
図9】従来のプレキャスト床版の接合構造の試験体に生じた付着割裂破壊を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施形態によるプレキャスト床版の接合構造の試験体の終局状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態によるプレキャスト床版の接合構造について、
図1-
図10に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、本実施形態によるプレキャスト床版の接合構造1は、橋梁に設けられ、橋軸方向に隣り合うプレキャスト床版2,3の接合構造である。橋軸方向に隣り合うプレキャスト床版2,3は、その間に設けられる接合部4を介して接合される。
以下では、橋軸方向の一方側に配置されるプレキャスト床版2を第1プレキャスト床版2と表記し、橋軸方向の他方側に配置されるプレキャスト床版3を第2プレキャスト床版3と表記することがある。
【0017】
プレキャスト床版2,3は、コンクリート部51と、橋軸方向に延びる橋軸方向鉄筋52と、橋軸直交方向に延びる橋軸直交方向鉄筋53と、を有する。
コンクリート部51は、板状に形成されている。第1プレキャスト床版2のコンクリート部51と第2プレキャスト床版3のコンクリート部51とは、橋軸方向に間隔をあけて配置される。第1プレキャスト床版2のコンクリート部51と第2プレキャスト床版3のコンクリート部51との間に接合部4が設けられている。
コンクリート部51の橋軸方向の端面511は、下側から上側に向かって漸次、接合部4に向かう傾斜面に形成されている。コンクリート部51の橋軸方向の端面511を接合端面511と表記する。
【0018】
橋軸方向鉄筋52は、コンクリート部51の上部側および下部側のそれぞれにおいて、橋軸直交方向に間隔をあけて複数設けられている。橋軸方向鉄筋52は、コンクリート部51の橋軸方向の長さ寸法よりも長い、橋軸方向鉄筋52は、コンクリート部51の接合端面511から橋軸方向に突出している。橋軸方向鉄筋52におけるコンクリート部51から突出する部分を鉄筋突出部54と表記する。橋軸方向鉄筋52は、特許請求の範囲の鉄筋に相当する。
【0019】
橋軸直交方向鉄筋53は、コンクリート部51の上部側および下部側のそれぞれにおいて、橋軸方向に間隔をあけて複数設けられている。コンクリート部51の上部側に設けられる橋軸直交方向鉄筋53は、コンクリート部51の上部側に設けられる橋軸方向鉄筋52の下側に設けられている。コンクリート部51の下部側に設けられる橋軸直交方向鉄筋53は、コンクリート部51の下部側に設けられる橋軸方向鉄筋52の上側に設けられている。橋軸直交方向鉄筋53は、補強鉄筋である。
【0020】
図3に示すように、鉄筋突出部54の先端部には、基端側よりも外径が大きい第1拡径部55および第2拡径部56が形成されている。鉄筋突出部54における基端側、すなわちコンクリート部51側の部分を基部57と表記する。基部57は、橋軸方向鉄筋52におけるコンクリート部51に埋設されている部分と同じ外径である。
鉄筋突出部54は、基端側から先端側に向かって、基部57、第1拡径部55、第2拡径部56の順に配置されている。第1拡径部55の外径D
1は、基部57の外径Dよりも大きい。第2拡径部56の外径D
2は、第1拡径部55の外径D
1よりも大きい。基部57、第1拡径部55および第2拡径部56は、それぞれ突出方向、すなわち橋軸方向全体にわたって同じ外径である。すなわち、基部57、第1拡径部55および第2拡径部56の外周面には、突出方向の一方側から他方側に向かって外径が大きくなるテーパー面が形成されていない。
【0021】
基部57と第1拡径部55との境界部には、基部57の外周面571と、第1拡径部55の基部57側の端面552と、第1拡径部55の外周面551と、によって形成された第1段部58が形成されている。第1拡径部55の基部57側の端面552は、鉄筋突出部54の突出方向に直交する平坦面である。
第1拡径部55と第2拡径部56との境界部には、第1拡径部55の外周面551と、第2拡径部56の第1拡径部55側の端面562と、第2拡径部56の外周面561と、によって形成された第2段部59が形成されている。第2拡径部56の第1拡径部55側の端面562は、鉄筋突出部54の突出方向に直交する平坦面である。
【0022】
上述しているように、基部57の外径をDとし、第1拡径部55の外径をD1とし、第2拡径部56の外径をD2とすると、本実施形態ではD1、D2およびDの関係は以下のように設定する。基部57の外径をDは、橋軸方向鉄筋52の鉄筋径に相当する。
D1<D2
1.1D<D1<2.4D
1.5D<D2<2.5D
【0023】
接合部4では、第1プレキャスト床版2の鉄筋突出部54と第2プレキャスト床版3の鉄筋突出部54とが橋軸直交方向に間隔をあけて交互に配列される。第1プレキャスト床版2の鉄筋突出部54と第2プレキャスト床版3の鉄筋突出部54とは、橋軸直交方向から見て重なって配置されている。すなわち、第1プレキャスト床版2の鉄筋突出部54の第1拡径部55および第2拡径部56は、第2プレキャスト床版3の鉄筋突出部54の基部57と間隔をあけて橋軸直交方向に隣接している。第2プレキャスト床版3の鉄筋突出部54の第1拡径部55および第2拡径部56は、接合構造1の鉄筋突出部54の基部57と間隔をあけて橋軸直交方向に隣接している。
【0024】
接合部4には、橋軸直交方向に延びる接合部橋軸直交方向鉄筋41と、接合部橋軸直交方向鉄筋41および第1プレキャスト床版2および第2プレキャスト床版3の鉄筋突出部54を埋設する接合部コンクリート42と、が設けられている。
接合部橋軸直交方向鉄筋41は、接合部4の上部側および下部側のそれぞれにおいて、橋軸方向に間隔をあけて複数設けられている。接合部4の上部側に設けられる橋軸直交方向鉄筋53は、上部側に設けられる鉄筋突出部54の下側に設けられている。接合部4の下部側に設けられる橋軸直交方向鉄筋53は、鉄筋突出部54の上側に設けられている。橋軸直交方向鉄筋53は、補強鉄筋である。
接合部コンクリート42は、第1プレキャスト床版2のコンクリート部51と第2プレキャスト床版3のコンクリート部51との間隔全体に充填されている。接合部コンクリート42は、現場打コンクリートである。
【0025】
本実施形態によるプレキャスト床版の接合構造、および鉄筋突出部154の先端部にテーパー状の拡径部155(
図4参照)が設けられた従来のプレキャスト床版の接合構造についてそれぞれ試験体を用いて載荷試験を行った。拡径部155の外径は、鉄筋突出部154の基部157の外径よりもが大きい。
図5および
図6にRC床版試験体の形状を示す。
図5の鉄筋突出部54には、本実施形態の第1拡径部55および第2拡径部56が示されている。従来のプレキャスト床版の接合構造の試験体は、
図5および
図6に示すRC床版試験体における鉄筋突出部54が、
図4に示すような鉄筋突出部154になった試験体である。従来のプレキャスト床版の接合構造の試験体を試験体1と表記し、本実施形態によるプレキャスト床版の接合構造の試験体を試験体2と表記する。
【0026】
図7に荷重とスパン中央(接合部)の変位との関係を示す。
図7には、継手(接合部)のない一体打ちのRC床版の荷重とスパン中央(接合部)の変位との関係も示す。
従来のプレキャスト床版の接合構造の試験体1では、
図8および
図9に示すように、降伏後に鉄筋突出部154のテーパー状の拡径部155の付着割裂破壊により脆性的な終局を迎えた。本実施形態によるプレキャスト床版の接合構造の試験体2では、継手のない一体打ちのRC床版と同等の構造性能を示すことが確認できた。また、本実施形態によるプレキャスト床版の接合構造の試験体2では、
図10に示すように、載荷点近傍における上縁コンクリートの圧壊により終局する結果を得た。
【0027】
従来の拡径部155がテーパー状であるプレキャスト床版の接合構造では、拡径部155の外周面からの支圧抵抗力が鉄筋突出部154の周囲の被りコンクリート方向に生じるのに対し、本実施形態によるプレキャスト床版の接合構造では、第1拡径部55および第2拡径部56からの支圧抵抗力が鉄筋突出部54、すなわち橋軸方向鉄筋52に誘導されるため、鉄筋突出部54の周囲のコンクリートの破壊を防止できる変形性能に優れた付着抵抗機構が形成されたためと考えられる。
【0028】
次に、本実施形態によるプレキャスト床版の接合構造1の作用・効果について説明する。
本実施形態によるプレキャスト床版の接合構造1では、第1拡径部55は、鉄筋突出部54の突出方向全体にわたって同じ外径であり、第2拡径部56は、鉄筋突出部54の突出方向全体にわたって同じ外径である。すなわち、第1拡径部55の外周面551および第2拡径部56の外周面561には、鉄筋突出部54の軸方向に対して傾斜するテーパー面が形成されていない。このため、コンクリート床版2,3の曲げ変形時に、第1拡径部55および第2拡径部56から接合部コンクリート42に生じる支圧抵抗力は、鉄筋突出部54の軸方向に作用し、鉄筋突出部54の周囲の接合部コンクリート42には、ほとんど作用しない。これにより、第1拡径部55および第2拡径部56から接合部コンクリート42に生じる支圧抵抗力を鉄筋突出部54が負担し、鉄筋突出部54の周囲の接合部コンクリート42の破壊を防止できる。
また、鉄筋突出部54は、従来のループ継手と比べて曲げ半径による床版厚の制約が無いとともに、接合部の補強鉄筋を、鉄筋突出部54を設置する前、すなわちプレキャスト床版2,3を設置する前に予め配筋することが可能となり、施工性を向上できる。
【0029】
また、本実施形態によるプレキャスト床版の接合構造1では、第1拡径部55の外径は、基部57の外径の1.1倍より大きく2.4倍より小さく、第2拡径部56の外径は、基部57の外径の1.5倍より大きく2.5倍より小さく設定されている。
このような構成とすることにより、第1拡径部55および第2拡径部56から接合部コンクリート42に生じる支圧抵抗力を鉄筋突出部54に効率よく伝達できる。
【0030】
また、本実施形態によるプレキャスト床版の接合構造1では、第1拡径部55における基部57側の端面552および第2拡径部56における第1拡径部55側の端面562は、鉄筋突出部54の軸方向に直交する平坦面である。
このような構成とすることにより、第1拡径部55および第2拡径部56から接合部コンクリート42に生じる支圧抵抗力を鉄筋突出部54に効率よく伝達できる。
【0031】
以上、本発明によるプレキャスト床版の接合構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、プレキャスト床版2,3は、橋梁に設けられているが、橋梁以外に設けられていてもよい。
上記の実施形態では、第1拡径部の外径は、基部の外径の1.1倍より大きく2.4倍より小さく、第2拡径部の外径は、基部の外径の1.5倍より大きく2.5倍より小さく設定されている。これに対して、第1拡径部の外径が基部の外径のより大きく、第2拡径部の外径が第1拡径部155の外径よりも大きければ、第1拡径部の外径部および第2拡径部の外径部の基部の外径部に対する倍率は適宜設定されてよい。
【0032】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。
本実施形態に係るプレキャスト床版の接合構造は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「9.産業と技術革新の基板をつくろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0033】
1 接合構造
2,3 プレキャスト床版
4 接合部
42 接合部コンクリート
51 コンクリート部
52 橋軸方向鉄筋(鉄筋)
54 鉄筋突出部
55 第1拡径部
56 第2拡径部
57 基部
58 第1段部
59 第2段部
511 接合端面
551 外周面