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特開2024-174598発泡性クリーミングパウダー及びインスタント飲料用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174598
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】発泡性クリーミングパウダー及びインスタント飲料用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23C 11/00 20060101AFI20241210BHJP
   A23L 2/39 20060101ALI20241210BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20241210BHJP
   A23F 5/40 20060101ALI20241210BHJP
   A23F 3/30 20060101ALI20241210BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20241210BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241210BHJP
   A23C 11/08 20060101ALI20241210BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20241210BHJP
   A23C 13/14 20060101ALI20241210BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20241210BHJP
【FI】
A23C11/00
A23L2/00 Q
A23L2/00 S
A23L2/40
A23F5/40
A23F3/30
A23L2/00 Z
A23L2/66
A23L2/52
A23C11/08
A23L2/60
A23C13/14
A23L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092500
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】領家 真理絵
(72)【発明者】
【氏名】大井 玲央奈
(72)【発明者】
【氏名】浅野 一朗
(72)【発明者】
【氏名】坂本 陽介
(72)【発明者】
【氏名】熊王 俊男
【テーマコード(参考)】
4B001
4B025
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC05
4B001AC06
4B001AC07
4B001AC15
4B001AC20
4B001AC40
4B001AC46
4B001AC99
4B001BC01
4B001BC03
4B001BC04
4B001BC07
4B001BC08
4B001BC99
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4B001EC09
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4B025LB23
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4B117LP20
(57)【要約】
【課題】水を注ぐだけで、豊かでかつ良質の泡を有する乳風味の飲料が調製できる、発泡性クリーミングパウダー、及び当該発泡性クリーミングパウダーを含有する粉末状のインスタント飲料用組成物の提供。
【解決手段】窒素ガスを含有する粉末と、クリーミングパウダーと、を含有し、前記窒素ガスを含有する粉末が、炭水化物とホエイタンパク質とを含有しており、前記クリーミングパウダーが、食用油脂と、pH調整剤と、乳化剤とを含有しており、前記クリーミングパウダーの全量に対して、前記pH調整剤の含有量が3.5質量%以下であり、前記乳化剤の含有量が1.0質量%以下であることを特徴とする、発泡性クリーミングパウダー、及び、可食性液体と混合して液面に泡が形成された飲料を調製するための粉末状のインスタント飲料用組成物であって、前記記載の発泡性クリーミングパウダーを含有する、インスタント飲料用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素ガスを含有する粉末と、クリーミングパウダーと、を含有し、
前記窒素ガスを含有する粉末が、炭水化物とタンパク質とを含有しており、
前記クリーミングパウダーが、食用油脂と、pH調整剤と、乳化剤とを含有しており、
前記クリーミングパウダーの全量に対して、前記pH調整剤の含有量が3.5質量%以下であり、前記乳化剤の含有量が1.0質量%以下であることを特徴とする、発泡性クリーミングパウダー。
【請求項2】
前記クリーミングパウダーの全量に対して、前記乳化剤の含有量が0.6質量%以下である、請求項1に記載の発泡性クリーミングパウダー。
【請求項3】
前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の発泡性クリーミングパウダー。
【請求項4】
さらに、カゼインを含有する、請求項1に記載の発泡性クリーミングパウダー。
【請求項5】
さらに、賦形剤を含有する、請求項1に記載の発泡性クリーミングパウダー。
【請求項6】
可食性液体と混合して液面に泡が形成された飲料を調製するための粉末状のインスタント飲料用組成物であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の発泡性クリーミングパウダーを含有することを特徴とする、インスタント飲料用組成物。
【請求項7】
さらに、可溶性飲料固形分又は飲料原料の微粉末を含有する、請求項6に記載のインスタント飲料用組成物。
【請求項8】
前記可溶性飲料固形分が、可溶性コーヒー固形分、可溶性紅茶固形分、可溶性緑茶固形分、可溶性ほうじ茶固形分、可溶性ウーロン茶固形分、可溶性ハーブティー固形分、及びココアパウダーからなる群より選択される1種以上であり、
前記飲料原料の微粉末が、抹茶パウダー、緑茶パウダー、及びウーロン茶パウダーからなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載のインスタント飲料用組成物。
【請求項9】
請求項6に記載のインスタント飲料用組成物を可食性液体に溶解させることにより、液面に泡が形成されている飲料を製造することを特徴とする、飲料の製造方法。
【請求項10】
可食性液体と混合して液面に泡が形成された飲料を調製するための粉末状のインスタント飲料用組成物であって、
窒素ガスを含有する粉末と、クリーミングパウダーと、を含有し、
前記窒素ガスを含有する粉末が、炭水化物とホエイタンパク質とを含有しており、
前記クリーミングパウダーが、食用油脂と、pH調整剤と、乳化剤とを含有しており、
前記pH調整剤の含有量が、前記インスタント飲料用組成物を可食性液体と混合して得られた飲料における前記pH調整剤の含有量が、0.14g/100mL以下となる量であり、
前記乳化剤の含有量が、前記インスタント飲料用組成物を可食性液体と混合して得られた飲料における前記乳化剤の含有量が、0.04g/100mL以下となる量であることを特徴とする、インスタント飲料用組成物。
【請求項11】
さらに、可溶性飲料固形分又は飲料原料の微粉末を含有する、請求項10に記載のインスタント飲料用組成物。
【請求項12】
前記可溶性飲料固形分が、可溶性コーヒー固形分、可溶性紅茶固形分、可溶性緑茶固形分、可溶性ほうじ茶固形分、可溶性ウーロン茶固形分、可溶性ハーブティー固形分、及びココアパウダーからなる群より選択される1種以上であり、
前記飲料原料の微粉末が、抹茶パウダー、緑茶パウダー、及びウーロン茶パウダーからなる群より選択される1種以上である、請求項11に記載のインスタント飲料用組成物。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載のインスタント飲料用組成物を可食性液体に溶解させることにより、液面に泡が形成されている飲料を製造することを特徴とする、飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液体に溶解させるだけで、液面に泡を有する乳風味の飲料を調製することができる発泡性クリーミングパウダー、及び当該発泡性クリーミングパウダーを含有するインスタント飲料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インスタントコーヒーをはじめとする飲料の可溶性固形分を主要原料とするインスタント飲料用組成物は、一般的に粉末であって、水等の液体に溶解させることによりインスタント飲料を手軽に楽しめる。特に、クリーミングパウダーや乳原料を配合したインスタント飲料用組成物は、水に溶解させることによって、カフェオレの様な乳風味の飲料を簡便に提供しうる。この手軽さとおいしさによって、インスタント飲料用組成物の市場は、目覚ましい勢いで成長している。
【0003】
一方で、カプチーノ等の飲料の液中や液表面に泡を有する飲料も広く好まれている。カプチーノの泡は、事前に温めたミルク等を強制的に撹拌して空気を抱き込ませて泡立てて形成されたものもあれば、水蒸気を吹き込んで乳成分を加熱変性させるものがある。カプチーノのような液中や液表面に泡を有する飲料を、湯や水を加えるだけで喫食可能なインスタント性のある即席飲料にする方法としては、例えば、クリーミングパウダーに、酸剤とアルカリ剤を配合した発泡性クリーミングパウダーを用いる方法がある(特許文献1)。当該発泡性クリーミングパウダーでは、酸剤としてはミョウバンや有機酸が、アルカリ剤としては炭酸塩を用いる。当該発泡性クリーミングパウダーをお湯に溶かすと、酸剤とアルカリ剤が反応して炭酸ガスが発生し、この炭酸ガスがクリーミングパウダー中のカゼインタンパク質等と共に泡を形成する。また、カゼインタンパク質等のタンパク質を含むクリーミングパウダーに代えて、酸剤とアルカリ剤と起泡性粉末油脂とを混合した発泡剤も知られている(特許文献2)。
【0004】
水に溶解することで炭酸ガスを発生させる酸剤とアルカリ剤を使用しない方法としては、例えば、炭水化物粒子又は炭水化物とタンパク質を含む粒子の内部空隙に、加圧ガスを封入した発泡性粉末を使用する方法が知られている(特許文献3及び4)。加圧ガスとしては、主に窒素ガスが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-38048号公報
【特許文献2】特開2014-180257号公報
【特許文献3】国際公開第2001/008504号
【特許文献4】国際公開第2006/023564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水を注ぐだけで、肌理が細かく泡保持性の良好な泡を有する乳風味の飲料を調製可能な発泡性クリーミングパウダー、当該発泡性クリーミングパウダーを含有する粉末状のインスタント飲料用組成物、及び当該インスタント飲料用組成物から、液面に泡が形成されている飲料を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、クリーミングパウダーに窒素ガスを含有する粉末を混合させた発泡性クリーミングパウダーにおいて、pH調整剤と乳化剤の含有量を調整することにより、肌理が細かく泡保持性の良好な泡を有するインスタント飲料が得られることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下の通りである。
【0008】
[1] 窒素ガスを含有する粉末と、クリーミングパウダーと、を含有し、
前記窒素ガスを含有する粉末が、炭水化物とタンパク質とを含有しており、
前記クリーミングパウダーが、食用油脂と、pH調整剤と、乳化剤とを含有しており、
前記クリーミングパウダーの全量に対して、前記pH調整剤の含有量が3.5質量%以下であり、前記乳化剤の含有量が1.0質量%以下であることを特徴とする、発泡性クリーミングパウダー。
[2] 前記乳化剤の含有量が0.6質量%以下である、前記[1]の発泡性クリーミングパウダー。
[3] 前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上である、前記[1]又は[2]の発泡性クリーミングパウダー。
[4] さらに、カゼインを含有する、前記[1]~[3]のいずれかの発泡性クリーミングパウダー。
[5] さらに、賦形剤を含有する、前記[1]~[4]のいずれかの発泡性クリーミングパウダー。
[6] 可食性液体と混合して液面に泡が形成された飲料を調製するための粉末状のインスタント飲料用組成物であって、
前記[1]~[5]のいずれかの発泡性クリーミングパウダーを含有することを特徴とする、インスタント飲料用組成物。
[7] さらに、可溶性飲料固形分又は飲料原料の微粉末を含有する、前記[6]のインスタント飲料用組成物。
[8] 前記可溶性飲料固形分が、可溶性コーヒー固形分、可溶性紅茶固形分、可溶性緑茶固形分、可溶性ほうじ茶固形分、可溶性ウーロン茶固形分、可溶性ハーブティー固形分、及びココアパウダーからなる群より選択される1種以上であり、
前記飲料原料の微粉末が、抹茶パウダー、緑茶パウダー、及びウーロン茶パウダーからなる群より選択される1種以上である、前記[7]のインスタント飲料用組成物。
[9] 前記[6]のインスタント飲料用組成物を可食性液体に溶解させることにより、液面に泡が形成されている飲料を製造することを特徴とする、飲料の製造方法。
[10] 可食性液体と混合して液面に泡が形成された飲料を調製するための粉末状のインスタント飲料用組成物であって、
窒素ガスを含有する粉末と、クリーミングパウダーと、を含有し、
前記窒素ガスを含有する粉末が、炭水化物とタンパク質とを含有しており、
前記クリーミングパウダーが、食用油脂と、pH調整剤と、乳化剤とを含有しており、
前記pH調整剤の含有量が、前記インスタント飲料用組成物を可食性液体と混合して得られた飲料における前記pH調整剤の含有量が、0.14g/100mL以下となる量であり、
前記乳化剤の含有量が、前記インスタント飲料用組成物を可食性液体と混合して得られた飲料における前記乳化剤の含有量が、0.04g/100mL以下となる量であることを特徴とする、インスタント飲料用組成物。
[11] さらに、可溶性飲料固形分又は飲料原料の微粉末を含有する、前記[10]のインスタント飲料用組成物。
[12] 前記可溶性飲料固形分が、可溶性コーヒー固形分、可溶性紅茶固形分、可溶性緑茶固形分、可溶性ほうじ茶固形分、可溶性ウーロン茶固形分、可溶性ハーブティー固形分、及びココアパウダーからなる群より選択される1種以上であり、
前記飲料原料の微粉末が、抹茶パウダー、緑茶パウダー、及びウーロン茶パウダーからなる群より選択される1種以上である、前記[11]のインスタント飲料用組成物。
[13] 前記[10]~[12]のいずれかのインスタント飲料用組成物を可食性液体に溶解させることにより、液面に泡が形成されている飲料を製造することを特徴とする、飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーは、水等の可食性液体に溶解させるだけで、液面に、肌理が細かく泡保持性の良好な泡が形成された飲料を製造することができる。このため、当該発泡性クリーミングパウダーを含有させたインスタント飲料用組成物は、肌理の細かい泡を従来よりも長時間楽しむことができるインスタント飲料を簡便に調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明及び本願明細書において、「クリーミングパウダー」とは、クリームの代用として、コーヒー等の嗜好性飲料に添加される粉末組成物を意味する。また、「発泡性クリーミングパウダー」とは、水等の可食性液体に溶解させることにより、液表面に泡を形成することが可能なクリーミングパウダーを意味する。
【0011】
本発明及び本願明細書において、「インスタント飲料用組成物」とは、水や牛乳等の可食性液体に溶解又は希釈させることによって飲料を調製し得る組成物を意味する。本発明に係るインスタント飲料用組成物は、粉末組成物である。
【0012】
本発明及び本願明細書において、「粉末」とは粉粒体(異なる大きさの分布をもつ多くの固体粒子からなり、個々の粒子間に何らかの相互作用が働いているもの)を意味する。また、「顆粒」は粉末から造粒された粒子(顆粒状造粒物)の集合体である。本発明及び本願明細書において、粉末には、顆粒も含まれる。
【0013】
<発泡性クリーミングパウダー>
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーは、窒素ガスを含有する粉末(含窒素ガス粉末)と、クリーミングパウダーと、を含有しており、可食性液体に溶解させることによって、液面に泡が形成された発泡性溶液を調製することができる粉末組成物である。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーは、食用油脂と、pH調整剤と、乳化剤とを含有しており、クリーミングパウダーの全量に対して、前記pH調整剤の含有量が3.5質量%以下であり、前記乳化剤の含有量が1.0質量%以下であることを特徴とする。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーにおいては、クリーミングパウダー全量におけるpH調整剤及び乳化剤の含有量を調整することによって、可食性液体に溶解させた際に、形成される泡の肌理が細かく、かつ泡保持性が良好な泡が液面に形成された飲料を製造できる。
【0014】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、pH調整剤と乳化剤の含有量が所望の範囲内である以外は、従来のクリーミングパウダーと同様にして製造されたクリーミングパウダーを用いることができる。クリーミングパウダーは、一般的に、食用油脂と賦形剤とを含有し、さらに必要に応じて乳風味付与成分、pH調整剤、乳化剤等のその他の原料等を、望まれる品質特性に応じて選択して含有させた水分散液を調製し、当該水分散液を均質化し、乾燥することによって製造される。
【0015】
食用油脂としては、特に限定されるものではなく、植物油脂が好ましいが、動物油脂であってもよい。植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、水添パーム油、水添パーム核油、大豆油、コーン油、綿実油、ナタネ油等が挙げられる。動物油脂としては、例えば、乳脂、牛脂、豚脂等が挙げられる。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、1種類の食用油脂を含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0016】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーにおける食用油脂の含有量は、特に限定されるものではない。クリーミングパウダーとして充分な量の食用油脂を含有させることができる上にその他の成分も十分に含有させることができるため、本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、例えば、クリーミングパウダー全量に対する当該クリーミングパウダーに含有されている全ての食用油脂の合計含有量を、30~65質量%とすることができ、35~60質量%とすることが好ましい。
【0017】
賦形剤としては、飲食品に添加可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、澱粉、澱粉分解物、糖類、食物繊維等の炭水化物や、タンパク質等が挙げられる。澱粉としては、タピオカ澱粉、モチゴメ澱粉、コメ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、サトイモ澱粉、サゴ澱粉等の可食性の澱粉が挙げられ、これらの澱粉をヒドロキシプロピル化、アセチル化、リン酸モノエステル化等の加工処理や架橋処理を施したものであってもよい。澱粉分解物としては、水あめ(デンプ各種澱粉を、酸や糖化酵素で糖化して得られた粘液状組成物)、粉あめ(水あめを脱水乾燥した粉末組成物)、デキストリン等が挙げられる。糖類としては、グルコース(ブドウ糖)、乳糖(ラクトース)、麦芽糖、ショ糖(砂糖)、トレハロース、オリゴ糖等が挙げられる。食物繊維としては、難消化性デキストリン、セルロース、キサンタンガム等が挙げられる。タンパク質としては、動物性タンパク質であってもよいが、植物性タンパク質が好ましい。植物性タンパク質としては、大豆粉、きな粉、おからパウダー、米粉、小麦パウダー等が挙げられる。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、1種類の賦形剤を含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0018】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーにおける賦形剤の含有量は、特に限定されるものではない。クリーミングパウダーとして充分な量の賦形剤を含有させることができる上にその他の成分も十分に含有させることができるため、本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、例えば、クリーミングパウダー全量に対する当該クリーミングパウダーに含有されている全ての賦形剤の合計含有量を、30~65質量%とすることができ、40~60質量%とすることが好ましい。
【0019】
乳風味付与成分としては、乳原料や植物性ミルク等が挙げられる。乳原料としては、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、乳タンパク質等が挙げられる。乳タンパク質としては、カゼイン(カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、酸カゼイン、カゼイネート、レンネットカゼイン)、ホエイタンパク質等が挙げられる。植物性ミルクとしては、豆類のミルク、ナッツのミルク、穀類のミルクが挙げられる。豆類のミルクとしては、豆乳、ピーナッツミルク等が挙げられる。ナッツのミルクとしては、アーモンドミルク、クルミ(ウォールナッツ)ミルク、ピスタチオミルク、ヘーゼルナッツミルク、カシューナッツミルク、ピーカンナッツミルク等が挙げられる。穀類のミルクとしては、ライスミルク、オーツミルク等が挙げられる。これらの乳原料や植物性ミルクは、スプレードライ等により水分を除去して乾燥し粉末化したものが好ましい。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、1種類の乳風味付与成分を含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0020】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーにおける乳風味付与成分の含有量は、特に限定されるものではない。十分な乳風味を有するクリーミングパウダーとすることができる上にその他の成分も十分に含有させることができるため、本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、例えば、クリーミングパウダー全量に対する当該クリーミングパウダーに含有されている全ての乳風味付与成分の合計含有量を、1.0~15質量%とすることができ、2.0~15質量%とすることが好ましい。
【0021】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、良好な乳風味を付与することができ、かつ含窒素ガス粉末から放出された窒素ガスにより形成される泡の肌理や泡保持性をより良好にできることから、乳風味付与成分として少なくともカゼインを含有していることが好ましい。カゼインを含有するクリーミングパウダーとしては、カゼインを原料として製造されたものであってもよく、全脂粉乳や脱脂粉乳等のカゼインを含有する乳原料を原料として製造されたものであってもよい。
【0022】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーにおけるカゼインの含有量は、特に限定されるものではない。十分な乳風味を有するクリーミングパウダーとすることができる上にその他の成分も十分に含有させることができるため、本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、例えば、クリーミングパウダー全量に対するカゼインの含有量を、1.0~7.0質量%とすることができ、2.0~5.0質量%とすることが好ましい。
【0023】
pH調整剤としては、飲食品に添加可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、リン酸塩、有機酸塩等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム等が挙げられる。有機酸塩としては、クエン酸三ナトリウム等のクエン酸塩;DL-リンゴ酸ナトリウム等のリンゴ酸塩;グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム等のグルコン酸塩;乳酸カリウム、乳酸ナトリウム等の乳酸塩等が挙げられる。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、1種類のpH調整剤を含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有していてもよい。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するpH調整剤としては、リン酸塩及びクエン酸塩からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、リン酸水素二カリウム及びクエン酸三ナトリウムからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0024】
なお、クリーミングパウダーやインスタント飲料用組成物中のリン酸塩やクエン酸塩の含有量は、飲食品中のリン酸塩やクエン酸塩の分析に使用される各種の方法で測定することができる。リン酸塩の含有量は、例えば、モリブデン青法(比色法)により分析して求めることができる。また、クエン酸塩の含有量は、例えば、クエン酸リアーゼを利用した酵素法により分析して求めることができる。
【0025】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーにおいては、クリーミングパウダー全量に対する当該クリーミングパウダーに含有されている全てのpH調整剤の含有量は、3.5質量%以下であり、3.0質量%以下がより好ましく、2.8質量%以下がさらに好ましく、2.5質量%以下がよりさらに好ましい。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーにおいては、pH調整剤の含有量を前記範囲内に調整することにより、可食性液体に溶解させた際に含窒素ガス粉末から放出された窒素ガスによって、肌理が細かく、かつ泡保持性が良好な泡が液面に形成された飲料を製造できる。また、本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダー全量に対する当該クリーミングパウダーに含有されている全てのpH調整剤の含有量の下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、1.5質量%以上がよりさらに好ましい。
【0026】
乳化剤としては、飲食品に添加可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、酵素分解レシチン、有機酸モノグリセリド等が挙げられる。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーとしては、1種類の乳化剤を含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有していてもよい。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有する乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0027】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーにおいては、クリーミングパウダー全量に対する当該クリーミングパウダーに含有されている全ての乳化剤の含有量は、1.0質量%以下であり、0.8質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下がさらに好ましい。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーにおいては、乳化剤の含有量を前記範囲内に調整することにより、可食性液体に溶解させた際に含窒素ガス粉末から放出された窒素ガスによって、肌理が細かく、かつ泡保持性が良好な泡が液面に形成された飲料を製造できる。また、本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダー全量に対する当該クリーミングパウダーに含有されている全ての乳化剤の含有量の下限値は、特に限定されるものではないが、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.3質量%以上がよりさらに好ましい。
【0028】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーにおける各種成分(食用油脂、pH調整剤、乳化剤、カゼイン、賦形剤等)の含有量は、原料の固形分総量に対する、原料として配合した量の比([各成分の配合量(g)]/[原料の固形分総量(g)]×100%)から算出することができる。
【0029】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーが含有するクリーミングパウダーは、例えば、食用油脂をはじめとする原料を水中で混合し、次いで乳化機等で水中油型乳化液(O/Wエマルション)とした後、水分を除去することによって製造することができる。水分を除去する方法としては、噴霧乾燥、噴霧凍結、凍結乾燥、凍結粉砕、押し出し造粒法等、任意の方法を選択して行うことができる。得られたクリーミングパウダーは、必要に応じて、分級、造粒及び粉砕等を行ってもよい。
【0030】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーに含有させる含窒素ガス粉末は、内部に空隙を有する粒子であって、当該空隙内に窒素ガスが封入されており、水に溶解させることによって充填されていた窒素ガスが放出される粉末である。本発明において用いられる含窒素ガス粉末としては、窒素ガスが粉末1gあたり少なくとも1mL(大気圧下)以上含有していることが好ましい。
【0031】
本発明において用いられる含窒素ガス粉末は、炭水化物とタンパク質から構成される内部に空隙を有する粒子に窒素ガスが封入されている。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーにおいては、pH調整剤と乳化剤の含有量を所定の範囲内に調整したクリーミングパウダーと、粉末化基材として炭水化物とタンパク質の両方を含有する含窒素ガス粉末とを組み合わせることにより、可食性液体に溶解させた際に液面に形成される泡を、スチームドミルクのように肌理が細かく、かつ泡保持性が良好な泡とすることができる。
【0032】
粉末化基材として用いられる炭水化物としては、乳糖、デキストロース、果糖(フラクトース)、ショ糖(シュクロース)、デキストリン、コーンシラップ、澱粉、加工澱粉、易消化性加工セルロース、シクロデキストリン、グリセロール、プロピレングリコール、ポリグリセロール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール等が挙げられる。粉末化基材として用いられるタンパク質としては、例えば、カゼイン(カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、酸カゼイン、カゼイネート、レンネットカゼイン)、ホエイタンパク質、ゼラチン、大豆タンパク質(大豆粉、きな粉、おからパウダー)、小麦タンパク質、コメタンパク質等が挙げられる。
【0033】
本発明において用いられる含窒素ガス粉末としては、クリーミングパウダーと混合した場合により良好な乳風味を付与できることから、粉末化基材中のタンパク質が、カゼイン及びホエイタンパク質からなる群より選択される1種以上を少なくとも含有していることが好ましく、カゼイン及びホエイタンパク質からなる群より選択される1種以上からなることがより好ましく、ホエイタンパク質からなることがさらに好ましい。
【0034】
本発明において用いられる含窒素ガス粉末の粉末化基材としては、粉末化基材全量に占めるタンパク質量の割合が、1~10質量%であることが好ましく、2.5~7.5質量%であることがより好ましい。
【0035】
本発明において用いられる含窒素ガス粉末としては、内部の空隙に十分量の窒素ガスが封入可能であることから、粉末化基材から形成された粒子の平均粒子径が60~200μmであることが好ましく、80~150μmであることがより好ましい。また、粉末化基材から形成された粒子の閉細孔量は、30~70%であることが好ましく、40~60%であることがより好ましい。
【0036】
なお、本発明及び本願明細書において、含窒素ガス粉末等をはじめとする粉末状固形分の粒子径は、ふるい分け法により求めることができる。ふるい分け法により求められた粒子径分布(累積分布)から、当該粉末基材のメジアン平均粒子径(μm)を求めることができる。ふるい分け法による測定は、ロータップ式ふるい分け装置等の汎用されている装置を用いて常法により測定することができる。
【0037】
炭水化物及びタンパク質を粉末化基材として構成された、内部の空隙に加圧された窒素ガスが封入されている粒子は、例えば、特許文献3、特許文献4、特開平3-65136号公報、特開2006-055167号公報、特開2009-261395号公報、特開2019-54757号公報等に記載されている製造方法や、これらの製造方法を改良した方法にて製造することができる。
【0038】
本発明に係る飲料用組成物における含窒素ガス粉末の含有量は、水に溶解させた際に放出される窒素ガス量が所望の量となるように、封入されている窒素ガス量等を考慮して適宜調整することができる。本発明に係る発泡性クリーミングパウダーにおける含窒素ガス粉末の含有量としては、例えば、一杯分の量を160mLの水に溶解させた際に産生する窒素ガス量(大気圧下)が、理論量で16.5mL以上、好ましくは16.5~132mL、より好ましくは16.5~66mL、さらに好ましくは16.5~49.5mL、よりさらに好ましくは24.75~49.5mLとなる量であることが好ましい。
【0039】
本発明に係る発泡性クリーミングパウダーは、前記のpH調整剤と乳化剤の含有量を所定の範囲内に調整したクリーミングパウダーと、前記の含窒素ガス粉末とを混合することにより製造できる。また、本発明に係る発泡性クリーミングパウダーは、本発明の効果を損なわない限度において、他の粉末成分を含有していてもよい。当該他の粉末成分としては、例えば、乳原料、植物性ミルク、植物性タンパク質、甘味料、酸味料、香料、ミネラル、賦形剤、結合剤、流動性改良剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0040】
乳原料、植物性ミルク、賦形剤は、前記のクリーミングパウダーの原料として挙げられたものを用いることができる。結合剤としては、前記賦形剤と同様のものを用いることができる。植物性タンパク質としては、前記賦形剤として列挙されたものと同様のものを用いることができる。
【0041】
甘味料としては、砂糖、オリゴ糖、ブドウ糖果糖液糖等の糖類、エリスリトール、トレハロース、ソルビトール等の糖アルコール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等の高甘味度甘味料、ステビア等が挙げられる。砂糖としては、グラニュー糖、上白糖であってもよく粉糖であってもよい。本発明において用いられる甘味料は、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
酸味料としては、有機酸又はリン酸が挙げられる。当該有機酸としては、例えば、クエン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、アジピン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。また、リン酸としては、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸であってもよい。本発明において用いられる酸味料は、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
流動性改良剤としては、微粒酸化ケイ素、第三リン酸カルシウム等が用いられてもよい。
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン等が挙げられる。
【0044】
<インスタント飲料用組成物>
本発明に係るインスタント飲料用組成物は、可食性液体と混合して液面に泡が形成された飲料を調製するための粉末状のインスタント飲料用組成物であって、前記含窒素ガス粉末と、クリーミングパウダーと、を含有し、インスタント飲料用組成物が含有しているpH調整剤と乳化剤の含有量が所定の範囲内に調整されているものである。pH調整剤と乳化剤の含有量が低く抑えられており、かつ発泡性粉末として前記含窒素ガス粉末を用いることにより、水等の可食性液体に溶解させるだけで、液面に、肌理が細かく泡保持性の良好な泡が形成された飲料を製造することが可能なインスタント飲料用組成物とすることができる。
【0045】
本発明に係るインスタント飲料用組成物のpH調整剤の含有量としては、当該インスタント飲料用組成物を可食性液体と混合して得られた飲料における前記pH調整剤の含有量が、0.14g/100mL以下となる量が好ましく、0.12g/100mL以下となる量がより好ましく、0.11g/100mL以下となる量がさらに好ましく、0.10g/100mL以下となる量がよりさらに好ましい。また、本発明に係るインスタント飲料用組成物のpH調整剤の含有量の下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、当該インスタント飲料用組成物を可食性液体と混合して得られた飲料における前記pH調整剤の含有量が、0.004質量%以上となる量とすることができ、0.02質量%以上となる量が好ましく、0.028質量%以上となる量がより好ましく、0.04質量%以上となる量がさらに好ましく、0.06質量%以上となる量がよりさらに好ましい。
【0046】
本発明に係るインスタント飲料用組成物の乳化剤の含有量としては、当該インスタント飲料用組成物を可食性液体と混合して得られた飲料における前記乳化剤の含有量が、0.04g/100mL以下となる量が好ましく、0.032質量%以下となる量がより好ましく、0.02質量%以下となる量がさらに好ましい。また、本発明に係るインスタント飲料用組成物の乳化剤の含有量の下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、当該インスタント飲料用組成物を可食性液体と混合して得られた飲料における前記乳化剤の含有量が、0.002質量%以上となる量が好ましく、0.004質量%以上となる量がより好ましく、0.008質量%以上となる量がさらに好ましく、0.012質量%以上となる量がよりさらに好ましい。
【0047】
本発明に係るインスタント飲料用組成物は、本発明に係る発泡性クリーミングパウダーに、その他の成分を混合させることで調製することができる。また、本発明に係る発泡性クリーミングパウダーの原料となる含窒素ガス粉末と、pH調整剤と乳化剤の含有量が所定の範囲内に調整されたクリーミングパウダーを、それぞれ別個の原料として、その他の成分と共に混合させることで調製することもできる。当該その他の成分としては、例えば、可溶性飲料固形分、飲料原料の微粉末、乳原料、植物性ミルク、植物性タンパク質、甘味料、酸味料、香料、ミネラル、賦形剤、結合剤、流動性改良剤、酸化防止剤等が挙げられる。乳原料、植物性ミルク、植物性タンパク質、甘味料、酸味料、香料、ミネラル、賦形剤、結合剤、流動性改良剤、酸化防止剤としては、前記列挙されたものと同様のものを用いることができる。
【0048】
可溶性飲料固形分とは、各種飲料の原料から抽出された可溶性固形分であり、水に溶解させることで飲料が調製される。飲料原料の微粉末とは、各種飲料の原料を粉砕して得られた粉末であり、当該微粉末を水等の液体に分散させることにより飲料が調製される。飲料の原料としては、焙煎されたコーヒー豆、紅茶、緑茶、抹茶、ほうじ茶、ウーロン茶等の茶飲料の茶葉、大麦、カカオ豆、ハーブ、果実、野菜等が挙げられる。ハーブとしては、ハイビスカス、ローズヒップ、ペパーミント、カモミール、レモングラス、レモンバーム、ラベンダー、ルイボス等の一般的にハーブティーとして飲用されているハーブが好ましい。
【0049】
飲料原料の可溶性固形分は、常法により製造することができ、また、市販されているものを用いてもよい。例えば、可溶性コーヒー固形分の粉末(インスタントコーヒー粉末)は、焙煎したコーヒー豆から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。また、茶飲料の粉末状の可溶性固形分は、紅茶葉、緑茶葉(生茶葉)、ほうじ茶葉、ウーロン茶葉等の茶葉から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。可溶性ハーブティー固形分の粉末(インスタントハーブティー粉末)は、ハーブの原料から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。ココアパウダーは、カカオ豆を発酵・焙煎させた後、種皮と胚芽を取り除いてすり潰してカカオマスを調製し、得られたカカオマスからココアバターを除いた残りのココアケーキを粉砕して得られる。コーヒー豆や茶葉、ハーブ、カカオ豆等の飲料原料としては、一般的に飲料の原料として使用されているものを用いることができる。得られた抽出物の乾燥方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥等が挙げられる。また、茶葉やコーヒー豆からの抽出物は、乾燥前に、必要に応じて濃縮してもよい。当該濃縮方法としては、熱濃縮方法、冷凍濃縮方法、逆浸透膜や限外濾過膜等を用いた膜濃縮方法等の汎用されている濃縮方法により行うことができる。
【0050】
飲料原料の微粉末は、常法により製造することができ、また、市販されているものを用いてもよい。例えば、抹茶パウダーは、茶葉(生葉)を殺菌処理した後、石臼や汎用されている粉砕機を用いて粉砕することにより得られる。緑茶パウダーやウーロン茶パウダーも、緑茶やウーロン茶の茶葉を原料として同様にして得られる。
【0051】
本発明に係るインスタント飲料用組成物に含まれる可溶性飲料固形分又は飲料原料の微粉末は、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。本発明における可溶性飲料固形分としては、可溶性コーヒー固形分、可溶性紅茶固形分、可溶性緑茶固形分、可溶性ウーロン茶固形分、可溶性ハーブティー固形分、ココアパウダー、抹茶パウダー、緑茶パウダー、及びウーロン茶パウダーからなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0052】
本発明に係るインスタント飲料用組成物は、組成物中のpH調整剤と乳化剤の含有量が前記所定の範囲内となればよく、pH調整剤と乳化剤を、クリーミングパウダーとは別個の原料として含有させることもできる。本発明に係るインスタント飲料用組成物に原料として配合するpH調整剤及び乳化剤としては、前記で列挙されたものを用いることができる。
【0053】
本発明に係るインスタント飲料用組成物は、本発明に係る発泡性クリーミングパウダー(含窒素ガス粉末とクリーミングパウダー)と、その他の成分とを混合することによって製造される。混合の順番は特に限定されるものではなく、全ての原料を同時に混合してもよく、順次混合させてもよい。全ての原料が粉末の場合には、全ての原料をそのまま混合することによって、粉末のインスタント飲料用組成物が製造される。
【0054】
本発明に係る飲料用組成物を水等の可食性液体に混合することによって、液面に泡が形成される起泡性のインスタント飲料が製造される。本発明に係る飲料用組成物を混合させる可食性液体は、水;牛乳、低脂肪乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳等の液性乳原料;豆乳等の液性の植物ミルク等が挙げられる。本発明に係るインスタント飲料用組成物は、タンパク質等の起泡性成分を含まない水に溶解させた場合でも、肌理が細かく、泡保持性の良好な泡を液面に有する飲料を調製できる。本発明に係るインスタント飲料用組成物を混合させる可食性液体の温度は、室温~100℃の範囲内であればよい。
【0055】
本発明に係るインスタント飲料用組成物は、飲用1杯分(例えば、120~180mLの液体に溶解させてインスタント飲料を調製するための量)を小パウチなどに個包装したり、使用時に容器から振り出したりスプーンで取り出したりして使用するように瓶などの容器に数杯分をまとめて包装して商品として供給することもできる。
【0056】
個包装タイプとは、スティック状アルミパウチなどに飲料1杯分の中身を充填包装するものであり、容器を開けて指で押し出すなどの方法で中身を取り出すことができる。個包装タイプは、1杯分が密閉包装されているので取り扱いも簡単で、衛生的であるという利点を有する。
【実施例0057】
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、特に記載がない限り、「%」は「質量%」、「ppm」は「質量ppm」を意味する。
【0058】
[実施例1]
含窒素ガス粉末とクリーミングパウダーとを含有させたインスタントコーヒー飲料用組成物について、水に溶解させて液面に泡が形成されたインスタントコーヒー飲料を調製し、泡質について調べた。
【0059】
(1)含窒素ガス粉末の調製
含窒素ガス粉末としては、粉あめとホエイタンパク質を粉末化基材とした含窒素ガス粉末Aと、オクテニルコハク酸でん粉を粉末化基材とし、タンパク質を含有していない含窒素ガス粉末B(市販品、kievit社製)を用いた。
【0060】
含窒素ガス粉末Aは、以下の通りにして調製した。
まず、原料の粉あめの一部と原料の粉末状のホエイタンパク質の全量をタンクに投入して混合させた後、当該タンクに温水を注入して溶解させ、その後残りの粉あめを投入して溶解させることによって、95質量%、ホエイタンパク質を5質量%含有する基材原料溶液を得た。当該基材原料溶液に、気液比(vol:vol)が2:5になるように窒素ガスを注入した。気液比の調整は、液の流量を360mL/分(モーノポンプ回転数90rpm)に固定し、ガス流量で合わせた。その後、窒素ガスを注入した基材原料溶液をローターステーター型ミキサー(マイルダーMDN303V型、太平洋機工社製)により、回転数10,000rpmの条件で泡立てた後、FSD4.0型スプレードライヤーにて、下記表1に記載の条件で噴霧乾燥を実施して、多孔質粒子からなる粉末基材を得た。得られた粉末基材の物性を表2に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
粉末基材の粒子密度は、ガスピクノメーター(アキュピックII 1340、島津製作所製)により測定した。粉末基材の粒子径は、ロータップ式ふるい分け装置を用いて、ふるい分け法によりメジアン平均粒子径を求めた。具体的には、ロータップマシン(飯田製作所製)の受け皿に、目開きが250μm、180μm、150μm、106μm、及び75μmの多段ふるいを置き、試料100gを入れて5分間振とうした。次いで、各ふるい上の試料の重量を測定して、粒子径分布(累積分布)を求めた。得られた粒子径分布から、当該粉末基材のメジアン平均粒子径(μm)を求めた。
【0064】
粉末基材の閉細孔量(%)は、ガスピクノメーター(アキュピックII 1340、島津製作所製)により測定した粒子密度と真密度から、下記式により求めた。粉末基材の真密度は、粉末基材を細かく粉砕して細孔を無くした状態とし、この粉砕物の粒子密度を前記ガスピクノメーターで求めたものである。
【0065】
[閉細孔量(%)]=(1-[粒子密度]/[真密度])×100(%)
【0066】
粉末基材50gを、オートクレーブ(日東高圧社製)に入れ、ボルトを締めて密封した後、窒素ガスを注入して7MPaになるように圧力をかけ、60rpmで攪拌した。粉末の品温が140℃になるようにオートクレーブの高温用循環槽の熱媒を流し、90分間攪拌しながら加熱・加圧を続けた。なお、窒素ガスの注入は、圧力を5~15MPa、粉末の品温度が90~180℃になるような条件でも実施することができる。経過後、予め-20℃に設定していた冷却熱媒を流して、冷却した。冷却時も加圧・攪拌は続けた。品温が30℃を下回った後、冷却・加圧・攪拌を止め、除圧バルブを一気に開放することにより大気圧に戻した。大気圧に戻ったことを確認後、オートクレーブの蓋を開け、サンプルをアルミパウチに取り、ヒートシールをして冷蔵庫に保管した。
【0067】
(2)クリーミングパウダーの調製
クリーミングパウダーとしては、表3に記載の組成の3種類(X、Y、及びZ)を調製した。表中、グリセリン脂肪酸エステルは「ポエムP-200」(グリセリンモノ・ジステアレート、理研ビタミン社製)を、ソルビタン脂肪酸エステルは「エマゾールP-10V」(ソルビタンモノパルミテート、花王社製)を、それぞれ用いた。
【0068】
【表3】
【0069】
原料水に、カゼイン、pH調整剤を添加し、60℃で混合した。得られた混合液に、乳原料(乳糖、脱脂粉乳、カゼイン、ホエイタンパク質)を必要に応じて混合し、さらにグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、植物油脂を添加して、ホモミキサー(製品名:「ラボ・リューション」、プライムミクス社製)を用いて、8000rpmで15分間攪拌した。撹拌後の原料混合物を、ホモジナイザー(製品名:「APV―2000」、APV社製)を用いて、400kg/cmで均質化した。均質化した乳化物を、スプレードライヤー(製品名:「ミニスプレードライヤーB-290」、BUCHI社製)を用いて、熱風温度が180℃、排風温度が90℃の条件で噴霧乾燥し、クリーミングパウダーを得た。
なお、脱脂粉乳(100g)中のタンパク質含有量は34.0gであり(日本食品標準成分表2020年版(八訂))、また、タンパク質の約80%がカゼインであることから、脱脂粉乳におけるカゼイン濃度は27.2%である。つまり、組成Y中のカゼイン濃度は、約7.1%(6.1%×0.272+5.4%)であった。
【0070】
(3)インスタントコーヒー飲料用組成物とインスタントコーヒー飲料の調製と泡保持性の評価
含窒素ガス粉末(A又はB)とクリーミングパウダー(X、Y、又はZ)を用いて、表4に記載の組成でインスタントコーヒー飲料用組成物を調製した。インスタントコーヒーとしては、焙煎コーヒー豆の熱水抽出液をスプレードライした粉末(味の素AGF社製)を用いた。
【0071】
【表4】
【0072】
各インスタントコーヒー飲料用組成物12.6gを300mL容メスシリンダーに投入し、沸騰したお湯を160mL注ぎ、長めのスプーンで10回攪拌した。液面に形成された泡の高さ(mL)を、経時的に目視で測定した。測定結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5に示すように、含窒素ガス粉末AとクリーミングパウダーXを組み合わせた試験区1-1のインスタントコーヒー飲料用組成物から形成されたインスタントコーヒー飲料では、10分間経過後でも調製直後の50%以上の泡が保持されていた。クリーミングパウダーXは、クリーミングパウダーY及びZよりも、pH調製剤と乳化剤の含有量が顕著に少ない以外は、ほぼ同様の組成であることから、試験区1-1の顕著に優れた泡保持性は、pH調製剤と乳化剤の含有量が低く抑えられていたためと推定された。また、含窒素ガスBを用いた試験区1-4では、試験区1-1ほどの顕著な泡保持性は得られなかったことから、pH調製剤と乳化剤の含有量が低く抑えられたクリーミングパウダーと、炭水化物だけではなくタンパク質を基材に含む含窒素ガス粉末とを組み合わせることで初めて得られる効果であると推察された。
【0075】
(4)インスタントコーヒー飲料用組成物とインスタントコーヒー飲料の調製と泡の官能評価
含窒素ガス粉末(A又はB)とクリーミングパウダー(X、Y、又はZ)を用いて、表6に記載の組成でインスタントコーヒー飲料用組成物を調製した。インスタントコーヒーとしては、焙煎コーヒー豆の熱水抽出液をスプレードライした粉末(味の素AGF社製)を用いた。
【0076】
【表6】
【0077】
各インスタントコーヒー飲料用組成物10.5gをコーヒーカップに入れ、沸騰したお湯を160mL注ぎ、スプーンで10回攪拌した。得られたインスタントコーヒー飲料について、5名の専門パネルに、2種類の食感(泡のキメ細かさによる口当たりのなめらかさと泡のもっちり感)と、2種類の風味(ミルク感と飲料全体の濃度感)を、1~10点で評価した。全ての専門パネルの評価点の平均点を、当該サンプルの評価とし、評価点が5を超えるものが、食感・風味両面において優れている(総合評価が〇)と判断した。評価結果を表に示す。
【0078】
【表7】
【0079】
表7に示すように、含窒素ガス粉末AとクリーミングパウダーXを組み合わせたインスタントコーヒー飲料用組成物から形成された試験区2-1のインスタントコーヒー飲料では、スチームドミルクのように肌理が細かく、食感が良好な泡が形成されていた。また、ミルク風味も非常に良好であった。