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特開2024-17460モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法
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  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図1
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図2
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図3
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図4
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図5
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図6
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図7
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図8
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図9
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図10
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図11
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図12
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図13
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図14
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図15
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図16
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図17
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図18
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図19
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図20
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図21
  • 特開-モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法 図22
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017460
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】モーター試験装置、及び、モーター試験装置を用いて被試験モーターの特性を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/34 20200101AFI20240201BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20240201BHJP
【FI】
G01R31/34 F
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120104
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】508264841
【氏名又は名称】有限会社 宮脇工房
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓佐敏
(72)【発明者】
【氏名】壬生 喬大
(72)【発明者】
【氏名】高柳 秀明
【テーマコード(参考)】
2G116
5H501
【Fターム(参考)】
2G116BA02
2G116BC05
5H501BB09
5H501DD04
5H501GG05
5H501HA01
5H501HA08
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501JJ25
5H501LL01
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL26
5H501LL28
5H501LL32
(57)【要約】
【課題】被試験モーターの過渡応答特性や、T-N特性、始動トルク等を正確に測定するためのモーター試験装置を提供する。
【解決手段】モーター試験装置は、被試験モーターの回転軸に連結される第1カップリングと、第1カップリングに連結された第1回転軸と、第2回転軸とを有するトルク計と、トルク計の第2回転軸に連結された第2カップリングと、第2カップリングに連結された回転軸を有しコアレスモーター構造を有する電気ブレーキと、電気ブレーキのコイルに電気的に接続され、コイルに発生する交流誘起電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換部と、AC/DC変換部に電気的に接続され、直流電圧による電力を消費する直流負荷部と、を備える。直流負荷部は、直流電流値を可変に調整する可変電流制御部と、抵抗器とが、直流電圧が印加される2つの入力端子の間に直列に配置された構成を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験モーターの特性試験に使用するモーター試験装置であって、
前記被試験モーターの回転軸に連結される第1カップリングと、
前記第1カップリングに連結された第1回転軸と、第2回転軸とを有し、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間のトルクを測定するトルク計と、
前記トルク計の前記第2回転軸に連結された第2カップリングと、
前記第2カップリングに連結された回転軸を有する電気ブレーキであって、コアレスモーター構造を有する電気ブレーキと、
前記電気ブレーキのコイルに電気的に接続され、前記コイルに発生する交流誘起電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換部と、
前記AC/DC変換部に電気的に接続され、前記直流電圧による電力を消費する直流負荷部と、
を備え、
前記直流負荷部は、直流電流値を可変に調整する可変電流制御部と、抵抗器とが、前記直流電圧が印加される2つの入力端子の間に直列に配置された構成を有する、
モーター試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモーター試験装置を用いて前記被試験モーターの特性を測定する方法であって、
前記被試験モーターを前記モーター試験装置に連結して、前記被試験モーターのT-N特性を測定する工程と、
前記被試験モーターが連結されていない状態における前記モーター試験装置の損失に対応する損失トルクと、回転数と、の関係を示す予め作成された損失T-N特性の前記損失トルクを、前記被試験モーターの前記T-N特性のトルクに加算する補正を行うことによって、前記被試験モーターについての補正T-N特性を求める工程と、
を含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載のモーター試験装置を用いて前記被試験モーターの始動トルクを測定する方法であって、
(a)Mを2以上の整数としたとき、M相コイルを有する前記被試験モーターを前記モーター試験装置に連結した状態で、前記M相コイルのうちの1つの特定相コイルに一定電流値の直流電流を入力して、前記特定相コイルの入力電圧を測定する工程と、
(b)前記一定電流値の前記直流電流を前記特定相コイルに入力した状態で、前記電気ブレーキにより前記被試験モーターに回転を加えて、前記回転に伴うトルク変化の最大トルクを求める工程と、
(c)前記一定電流値を変更して前記工程(a)~(b)を複数回実行することによって、前記特定相コイルに関して、複数の前記入力電圧に応じた複数の前記最大トルクを求める工程と、
(d)前記複数の入力電圧に応じた前記複数の最大トルクを用いて、前記複数の入力電圧に応じた始動トルクの変化を示す始動トルク特性曲線を作成する工程と、
(e)前記始動トルク特性曲線を外挿することによって、前記複数の入力電圧よりも高い特定電圧に対する始動トルクを算出する工程と、
を含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載のモーター試験装置を用いて前記被試験モーターの始動トルクを測定する方法であって、
(a)Mを2以上の整数としたとき、M相コイルを有する前記被試験モーターを前記モーター試験装置に連結し、前記M相コイルのうちの1つの特定相コイルに関する前記被試験モーターの駆動回路のPWMデューティを100%に設定した状態で、前記駆動回路を介して前記特定相コイルに一定電流値の直流電流を入力して、前記駆動回路の入力電圧を測定する工程と、
(b)前記一定電流値の前記直流電流を前記特定相コイルに入力した状態で、前記電気ブレーキにより前記被試験モーターに回転を加えて、前記回転に伴うトルク変化の最大トルクを求める工程と、
(c)前記一定電流値を変更して前記工程(a)~(b)を複数回実行することによって、前記特定相コイルに関して、複数の前記入力電圧に応じた複数の前記最大トルクを求める工程と、
(d)前記複数の入力電圧に応じた前記複数の最大トルクを用いて、前記複数の入力電圧に応じた始動トルクの変化を示す始動トルク特性曲線を作成する工程と、
(e)前記始動トルク特性曲線を外挿することによって、前記複数の入力電圧よりも高い特定電圧に対する始動トルクを算出する工程と、
を含む、方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法であって、
前記工程(d)は、
前記M相コイルのうちの1相のコイルを前記特定相コイルとして順次選択して前記工程(a)~(c)を実行し、前記複数の入力電圧のそれぞれについて、前記M相コイルに対するM個の前記最大トルクの平均値、最大値、又は、最小値を前記始動トルクとして選択する工程、
を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載のモーター試験装置を用いて前記被試験モーターの始動トルクを測定する方法であって、
(a)Mを2以上の整数としたとき、M相コイルを有する前記被試験モーターを前記モーター試験装置に連結し、前記被試験モーターの駆動回路を介して前記M相コイルのうちの1つの特定相コイルに一定電流値の直流電流を入力した状態で、前記電気ブレーキにより前記被試験モーターに回転を加えて、前記回転に伴うトルク変化を測定する工程と、
(b)前記トルク変化のうちの最大トルク値になった回転角度で前記電気ブレーキの回転を停止させて前記回転角度を維持する工程と、
(c)前記電気ブレーキの前記回転角度を維持した状態で、前記駆動回路を介して前記被試験モーターの前記特定相コイルに特定電圧値の矩形パルス電圧を印加してピークトルクを測定する工程と、
(d)前記ピークトルクを用いて前記被試験モーターの始動トルクを決定する工程と、
を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記工程(d)は、
前記M相コイルのうちの1相のコイルを前記特定相コイルとして順次選択して前記工程(a)~(c)を実行し、前記M相コイルに対するM個の前記ピークトルクの平均値、最大値、又は、最小値を前記始動トルクとして選択する工程、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モーター試験装置、及び、それを用いて被試験モーターの特性を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被試験モーターの特性を測定するモーター試験装置が記載されている。このモーター試験装置では、ギアを介して被試験モーターと負荷モーターとを連結し、負荷モーターに対して速度指令を出力するシミュレータ部を用いて、シミュレータ部から入力した速度指令に従ってコントローラーが負荷モーターを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-012340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、急激な過渡変化に対する被試験モーターの過渡応答特性を正しく測定することが難しいという問題があった。また、従来は、被試験モーターのT-N特性や始動トルクを正確に測定することが難しいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、被試験モーターの特性試験に使用するモーター試験装置が提供される。このモーター試験装置は、前記被試験モーターの回転軸に連結される第1カップリングと、前記第1カップリングに連結された第1回転軸と、第2回転軸とを有し、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間のトルクを測定するトルク計と、前記トルク計の前記第2回転軸に連結された第2カップリングと、前記第2カップリングに連結された回転軸を有する電気ブレーキであって、コアレスモーター構造を有する電気ブレーキと、前記電気ブレーキのコイルに電気的に接続され、前記コイルに発生する交流誘起電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換部と、前記AC/DC変換部に電気的に接続され、前記直流電圧による電力を消費する直流負荷部と、を備える。前記直流負荷部は、直流電流値を可変に調整する可変電流制御部と、抵抗器とが、前記直流電圧が印加される2つの入力端子の間に直列に配置された構成を有する。
このモーター試験装置によれば、コアレスモーター構造を有する電気ブレーキを用い、被試験モーターの回転によって発生する電気ブレーキの交流誘起電圧を直流電圧に変換して直流負荷部でその電力を消費するので、急激な過渡変化に対する被試験モーターの過渡応答特性を試験することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態におけるモーター試験システムの構成を示すブロック図。
図2】電気ブレーキのI-T特性を示すグラフ。
図3】AC/DC変換部の内部構成の一例を示す図。
図4】極性分離回路の動作を示す説明図。
図5】直流負荷部の内部構成の一例を示す図。
図6】過渡応答試験における負荷パターンの例を示す説明図。
図7】モーター試験装置の損失特性を示すグラフ。
図8】モーター試験装置の損失特性を示すグラフ。
図9】モーター試験装置の損失T-N特性を求める工程を示す説明図。
図10】被試験モーターのT-N特性試験の手順を示すフローチャート。
図11】モーター試験装置の被試験モーターの効率を示すグラフ。
図12】被試験モーターのT-N特性の一例を示すグラフ。
図13】第2実施形態において被試験モーターの始動トルクを測定するモーター試験システムの構成を示すブロック図。
図14】第2実施形態における被試験モーターの始動トルク測定の原理を示す説明図。
図15】第2実施形態における被試験モーターの始動トルク測定のフローチャート。
図16】第2実施形態で得られる被試験モーター単独の始動トルクを示すグラフ。
図17】第3実施形態において被試験モーターの始動トルクを測定するモーター試験システムの構成を示すブロック図。
図18】第3実施形態における被試験モーターの始動トルク測定のフローチャート。
図19】第3実施形態で得られる被試験モーター単独の始動トルクを示すグラフ。
図20】第4実施形態において被試験モーターの始動トルクを測定するモーター試験システムの構成を示すブロック図。
図21】第4実施形態における被試験モーターの始動トルク測定のフローチャート。
図22】第4実施形態において特定相コイルに矩形パルス電圧を印加する状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態におけるモーター試験システムの構成を示すブロック図である。このモーター試験システムは、被試験モーター100と、モーター試験装置200と、試験制御装置300とを備えている。
【0009】
被試験モーター100としては、任意の相数を有する任意の種類のモーターを使用できる。本実施形態では、被試験モーター100は、ローターの回転位置を測定する磁気センサー104を有している。但し、被試験モーター100をセンサーレス駆動する場合には、磁気センサー104は省略可能である。被試験モーター100は、駆動回路120と電気的に接続されている。駆動回路120には、定電圧電源130から直流の入力電圧Eiが供給される。入力電圧Eiの電圧値は、試験制御装置300によって調整することが可能である。駆動回路120は、例えばHブリッジ回路として構成されたモータードライバーであり、駆動回路120内のトランジスターは、試験制御装置300から供給される制御信号Sdに応じてオン/オフ動作する。制御信号Sdは、例えば、被試験モーター100のPWM制御を行うための信号である。PWM制御では、磁気センサー104の出力に応じて被試験モーター100の回転位置が検出され、この回転位置に応じて各相の制御信号Sdが生成される。定電圧電源130と駆動回路120の間の配線には、入力電流Iiを測定する入力電流計150と、入力電圧Eiを測定する入力電圧計160が設けられている。駆動回路120と非試験モーター100の間の配線には、各相の相電流Isを測定する相電流計151と、各相の相電圧Esを測定する相電圧計161が設けられている。電流計150,151と電圧計160,161は、被試験モーター100への入力電力を求めるために使用される。尚、定電圧電源130は、駆動回路120の端子電圧を検出するリモートセンシングによる電圧供給を行って、ライン間の電圧ドロップ及び電圧変動を軽減させるように構成されていることが好ましい。
【0010】
モーター試験装置200は、第1カップリング211と、トルク計220と、第2カップリング212と、電気ブレーキ230と、AC/DC変換部240と、直流負荷部250と、パワーメーター260とを備える。第1カップリング211とトルク計220と第2カップリング212と電気ブレーキ230とを含む機械的な連結構造を、試験連結構造270と呼ぶ。
【0011】
被試験モーター100の回転軸110とトルク計220の第1回転軸221は、第1カップリング211によって連結される。トルク計220は、第1回転軸221と第2回転軸222とを有し、第1回転軸221と第2回転軸222との間のトルクTを測定する。トルク計220は、更に、回転軸221,222の回転数Nを測定できるように構成されていることが好ましい。回転数Nをトルク計220で測定する代わりに、被試験モーター100に設けられた磁気センサー104を用いて回転数Nを測定するようにしてもよい。トルク計220の第2回転軸222と電気ブレーキ230の回転軸232は、第2カップリング212によって連結されている。電気ブレーキ230は、鉄損失(コギング損、ヒステリシス損等)の少ないコアレスモーター構造を有する。電気ブレーキ230は、例えば2相や3相のブラシレスモーターとして構成される。本実施形態において、電気ブレーキ230は、ローターの回転位置を測定する磁気センサー234を有している。本実施形態において、磁気センサー234は、ステーターに固定され、ローターに設けられた永久磁石の磁束密度を測定するセンサーである。磁気センサー234は、例えばホールICによって構成される。但し、磁気センサー234は省略可能である。
【0012】
AC/DC変換部240は、電気ブレーキ230の複数相のコイルに電気的に接続されており、コイルに発生する交流誘起電圧Viを全波整流して直流電圧Vdに変換する。直流負荷部250は、AC/DC変換部240に電気的に接続されており、直流電圧Vdによる電力を消費する。直流負荷部250は、直流電流値を可変に調整する可変電流制御部252と、抵抗器256とを有する。AC/DC変換部240と直流負荷部250の具体例は後述する。
【0013】
パワーメーター260は、トルクT[N・m]と回転数N[rpm]から、次式に従って回転エネルギーP[W]を算出する。
P = T×2πN/60 …(1)
トルクTと回転数Nと回転エネルギーPは、パワーメーター260から試験制御装置300に供給される。パワーメーター260は、入力電圧計160で測定された入力電圧値Eiと、入力電流計150で測定された入力電流値Iiと、トルク計220で測定されたトルクT及び回転数Nと、相電圧計161で測定された相電圧値Esと、相電流計で測定された相電流値Isと、を含む複数の入力信号を用いて、被試験モーター100の出力の実効値と有効値と力率を演算する。
【0014】
試験制御装置300は、モーター試験装置200の各部を制御し、また、被試験モーター100の駆動回路120や定電圧電源130を制御する。試験制御装置300は、例えば、パーソナルコンピューターで実現することができる。被試験モーター100に関する各種の試験は、メモリー310に格納されたモーター試験用のアプリケーションプログラムをプロセッサーが実行することによって実現される。
【0015】
本実施形態において、電気ブレーキ230は、コアレスモーター構造を有する。コアレスモーター構造は、コア付きモーター構造に比べて以下の利点がある。
(a)鉄心を用いていないためコイルインダクタンスが小さい。
(b)コギング損及びヒステリシス損が無い。
(c)鉄心特性によるコイル電流の磁気飽和が無い。
【0016】
電気ブレーキ230のコイルインダクタンスは極めて小さいので、急激な過渡変化に対する被試験モーター100の過渡応答特性を正しく測定することができる。電気ブレーキ230の各相のコイルの自己インダクタンスは、例えば、4μH以下であることが好ましい。また、電気ブレーキ230はコギング損及びヒステリシス損が無いので、被試験モーター100に対して安定した負荷を与えることができる。
【0017】
図2は、電気ブレーキ230のI-T特性を示すグラフである。黒点は、実測した点である。この図からも理解できるように、電気ブレーキ230はコイルの磁気飽和が無いので、コイル電流が大きくなったときに、コイル電流に比例したトルクを得ることができる。換言すれば、電気ブレーキ230のコイル電流に比例した負荷を被試験モーター100に与えることができる。また、本実施形態の電気ブレーキ230は、損失が極めて小さいので、I-T特性がほぼ原点を通る直線となっている。
【0018】
電気ブレーキ230はコアレスモーター構造を有するので鉄損は無視できる程度であり、また、ベアリングなどに起因する機械損も極めて少ない。例えば、電気ブレーキ230の機械損は、10000rpmの回転数で10ワット以下であることが好ましい。このような損失の小さな電気ブレーキ230を使用すれば、急激な過渡変化に対する被試験モーターの過渡応答特性を正確に試験できる。損失の小さな電気ブレーキ230は、例えば、WO2018-139245A1に記載されている2相構造や3相構造のコアレス電気機械装置で実現することが可能である。
【0019】
図3は、AC/DC変換部240の内部構成の一例を示す図である。AC/DC変換部240は、電気ブレーキ230のA相コイル231A用の全波整流回路241Aと、B相コイル231B用の全波整流回路241Bと、平滑コンデンサー242と、A相用の極性分離回路243Aと、B相用の極性分離回路243Bと、を有している。本実施形態では、全波整流回路241A,241Bは電圧降下の少ないMOSFETのブリッジ回路として構成されている。極性分離回路243A,243Bは、電気ブレーキ230のA相磁気センサー234AとB相磁気センサー234Bのセンサー出力MPa,MPbに応じて、A相とB相の区間を示す極性信号Pa,Pbを生成する。
【0020】
図4は、極性分離回路243A,243Bの動作を示す説明図である。A相磁気センサー234Aのセンサー出力MPaは、電気ブレーキ230のローターの永久磁石の回転位置に応じた正弦波状の波形を示す。B相磁気センサー234Bのセンサー出力MPbも同様である。極性分離回路243Aは、センサー出力MPaのゼロクロス位置でLレベルからHレベルに立ち上がる第1極性信号Pa+と、センサー出力MPaのゼロクロス位置でHレベルからLレベルに立ち下がる第2極性信号Pa-とを生成する。極性分離回路243Bも同様に、センサー出力MPbのゼロクロス位置でLレベルからHレベルに立ち上がる第1極性信号Pb+と、センサー出力MPbのゼロクロス位置でHレベルからLレベルに立ち下がる第2極性信号Pb-とを生成する。これらの極性信号Pa+,Pa-,Pb+,Pb-は、全波整流回路241A,241BのMOSFETのゲート信号として使用される。この結果、A相コイル231Aに生じた誘起交流電圧とB相コイル231Bに生じた誘起交流電圧が、全波整流回路241A,241Bによって直流電圧Vdcに変換される。直流電圧Vdcは、平滑コンデンサー242で平滑化されて、出力端子246p,246nから出力される。このように、MOSFETで構成された全波整流回路241A,241Bを有するAC/DC変換部240を使用すれば、AC/DC変換部240による電力損失を小さく抑えることができる。但し、ダイオードで構成された全波整流回路を用いてAC/DC変換部240を構成してもよい。
【0021】
図5は、直流負荷部250の内部構成の一例を示す図である。直流負荷部250は、可変電流制御部252と抵抗器256とが、2つの入力端子251p,251nの間に直列に配置された構成を有する。可変電流制御部252は、抵抗器256に流れる直流電流値を可変に調整することが可能な定電流回路として構成されている。本実施形態において、可変電流制御部252は、トランジスター253と、オペアンプ254と、電流指令部255とを有する。電流指令部255は、試験制御装置300からの命令に応じて、電流指令値Vtをオペアンプ254に入力する。オペアンプ254の出力は、トランジスター253のゲート電極に供給される。オペアンプ254には、トランジスター253の出力電圧Vmがフィードバックされており、オペアンプ254は、トランジスター253の出力電圧Vmと電流指令値Vtとの差分に応じて、トランジスター253のゲート信号のレベルを調整する。この結果、電流指令値Vtに応じた電流値Irの直流電流がトランジスター253から抵抗器256に流れる。
【0022】
このように、可変電流制御部252と抵抗器256とが直列接続された構成を有する直流負荷部250を用いて、電気ブレーキ230で発生した誘起起電力を一定の電流値で抵抗器256によって消費できる。この結果、安定した負荷トルクを被試験モーター100に与えることが可能である。
【0023】
図6は、過渡応答試験における負荷パターンP1~P4の例を示す説明図である。本実施形態のモーター試験システムでは、このような各種の負荷パターンに従って被試験モーター100の過渡応答試験を行うことが可能である。特に、本実施形態では負荷装置としてコアレスモーター構造を有する電気ブレーキ230を使用しているので、急激な過渡変化を伴う過渡応答特性を試験することができる。例えば、負荷パターンP1,P2,P4は、いずれもほぼ垂直な負荷変化を含んでいる。このような急激な過渡変化を伴う負荷パターンP1,P2,P4は、負荷装置としてコア付きモーターを使用した場合に実現することは不可能である。
【0024】
過渡応答試験を行う際には、予め定められた負荷パターンを試験制御装置300のメモリー310に格納しておき、その負荷パターンを用いてフィードバック制御を実行する。具体的には、負荷パターンの負荷トルクを目標値とし、トルク計220で測定されたトルクを制御量とし、直流負荷部250の電流指令値を操作量とする。即ち、負荷パターンの負荷トルク目標値と、トルク計220で測定されたトルクとの差分がゼロになるように、直流負荷部250の電流指令値が調節される。
【0025】
モーター試験装置200は、過渡応答試験の他に、T-N特性や始動トルク特性の測定などの種々の測定や試験に利用することが可能である。本開示の発明者は、被試験モーター100のT-N特性測定において、モーター試験装置200の損失による影響が無視できないことを見出した。以下に説明するように、被試験モーター100のT-N特性測定において測定されたトルクを、モーター試験装置200の損失に対応する損失トルクで補正することによって、より正確なT-N特性を求めることが可能である。
【0026】
図7は、モーター試験装置200の損失-回転数特性を示すグラフである。第1の損失Pdは、被試験モーター100を第1カップリング211に連結しない状態におけるモーター試験装置200の損失である。第2の損失Pbは、電気ブレーキ230単独の損失である。この図から理解できるように、電気ブレーキ230の損失Pbは、極めて小さい。電気ブレーキ230は、鉄損がほぼ無視できるので、その損失Pbは機械損であるものと考えることができる。電気ブレーキ230の損失Pbは、10000rpmの回転数で10ワット以下であることが好ましい。このような損失の小さな電気ブレーキ230を使用すれば、急激な過渡変化に対する被試験モーターの過渡応答特性を正確に試験できる。
【0027】
図8は、モーター試験装置200の損失T-N特性を示すグラフである。第1の損失トルクTdは、被試験モーター100を第1カップリング211に連結しない状態におけるモーター試験装置200の損失に相当するトルクであり、図7に示した損失Pdから上記(1)式に従って算出したものである。第2の損失トルクTbは、電気ブレーキ230単独の損失であり、図7に示した損失Pbから上記(1)式に従って算出したものである。図8の下部の図は、電気ブレーキ230単独の損失トルクTbの縦軸を拡大して示している。回転数が約5000rpm以上になると損失トルクTbが急激に増加している原因は、電気ブレーキ230の軸受けの機械損によるものと推定される。
【0028】
被試験モーター100を連結しない状態におけるモーター試験装置200の損失T-N特性は、試験制御装置300のメモリー310に格納されて、被試験モーター100のT-N特性を補正するために使用される。
【0029】
図9は、モーター試験装置200の損失T-N特性を求める工程を示す説明図である。ステップS1では、被試験モーター100をモーター試験装置200に連結せずに、被試験モーター100単体を無負荷状態で回転させて、トルクTs0と出力Ps0と回転数Nを測定する。この測定は、被試験モーター100の駆動回路120への入力電圧Eiを複数の値に設定した状態でそれぞれ実行される。また、電気ブレーキ230にブレーキ作用が発生しないように、直流負荷部250に流れる電流を0とする。或いは、電気ブレーキ230とAC/DC変換部240の間の結線を外すようにしてもよい。
【0030】
被試験モーター100のトルクTs0[N・m]は、被試験モーター100の出力Ps0[W]と回転数N[rpm]を用いて次式に従って算出される。
Ts0=Ps0×60/2πN …(2)
【0031】
ステップS2では、被試験モーター100をモーター試験装置200に連結した状態で、ステップS1と同様に被試験モーター100を無負荷状態で回転させて、トルク計220によってトルクTs1と出力Ps1と回転数Nを測定する。この測定も、ステップS1と同様に、被試験モーター100の駆動回路120への入力電圧Eiを複数の値に設定した状態でそれぞれ実行される。
【0032】
ステップS3では、ステップS1とステップS2の結果を用いて、モーター試験装置200の損失Pdと、損失Pdに対応する損失トルクTdを次式で求める。
Pd=Ps1-Ps0 …(3a)
Td=Ts1-Ts0 …(3b)
【0033】
ステップS1,S2は、入力電圧Eiを複数の値に設定した状態でそれぞれ実行するので、複数の回転数Nに応じて損失トルクTdがそれぞれ算出される。
【0034】
上述したステップS1~S3によって、被試験モーター100を連結しない状態におけるモーター試験装置200の損失T-N特性を作成できる。この損失T-N特性は、メモリー310に格納しておくことが可能である。以下に説明するように、試験制御装置300は、この損失T-N特性を用いて被試験モーター100のT-N特性を補正する。
【0035】
図10は、被試験モーター100のT-N特性試験の手順を示すフローチャートである。ステップS10では、被試験モーター100をモーター試験装置200に連結した状態で、被試験モーター100のT-N特性を測定する。この測定は、特定の入力電圧Eiに対して行われる。ステップS20では、モーター試験装置200の損失T-N特性を、試験制御装置300のメモリー310から読み出す。ステップS30では、モーター試験装置200の損失T-N特性を用いて被試験モーター100のT-N特性を補正する。即ち、図8に示した損失T-N特性の損失トルクTdを、被試験モーター100のT-N特性のトルクに加算する補正を行うことによって、被試験モーター100についての補正T-N特性が求められる。図10の処理を行えば、モーター試験装置200の損失に相当する損失トルク成分を含まない被試験モーター100単独の補正T-N特性を求めることができる。
【0036】
図11は、モーター試験装置200の損失補正前後の被試験モーター100の効率を示すグラフである。このグラフの横軸はトルクであり、縦軸は効率(=出力/入力)である。被試験モーター100の出力は、トルク計220で測定されたトルクTと回転数Nに応じて上記(1)式に従って算出される。被試験モーター100の入力は、相電流計151で測定された相電流値Isと、相電圧計161で測定された相電圧値Esと、力率とを乗算することによって算出される。補正前のグラフは図10のステップS10で得られたT-N特性に対応する効率を示し、補正後のグラフはステップS30で補正された後の補正T-N特性に対応する効率を示している。補正後の効率は、被試験モーター100の真の効率を示しているものと考えることができる。
【0037】
図11のグラフから理解できるように、トルクTが小さく無負荷に近い回転状態では、モーター試験装置200の損失による影響がかなり大きい。この結果、図10のステップS10で得られる通常のT-N特性では、被試験モーター100のトルクや効率が真の値よりも低くなってしまう傾向にある。一方、モーター試験装置200の損失に相当する損失トルクTdを用いて被試験モーター100のトルクや出力を補正すれば、被試験モーター100の真のトルクや効率を正しく算出できる。
【0038】
図12は、被試験モーター100のT-N特性の一例を示すグラフである。このT-N特性は、一定の入力電圧Eiに対する特性であり、図10による補正を行った後の特性である。破線で示す試験領域は、通常のT-N特性試験において測定を実施できる範囲を示している。回転数Nがゼロの状態における始動トルクTsは、試験領域におけるT-N特性を外挿することによって求められる。
【0039】
以上のように、第1実施形態では、コアレスモーター構造を有する電気ブレーキ230を用い、被試験モーター100の回転によって発生する電気ブレーキ230の交流誘起電圧を直流電圧に変換して直流負荷部250でその電力を消費するので、急激な過渡変化に対する被試験モーター100の過渡応答特性を試験することができる。
【0040】
モーター試験装置200は、以下のような各種の試験を行うための装置としても使用可能である。
(1)通常のPWM周波数が20KHz程度であるモーターを被試験モーター100として、電気角内制御をより細かく行い、PWM周波数を100KHz~200KHz以上に上げた高分解能な電気角制御を行った場合の特性を測定する装置。
(2)ドローンに用いられるモーターを被試験モーター100として、上昇気流、乱気流等の自然環境における過渡変化に適応するため、プロペラの正転・逆転制御の過渡応答性や自立平衡制御性等の特性を評価する装置。
(3)航空産業の離陸、着陸、方向転回に用いるラダー、フラップ操作に用いられるモーターを被試験モーター100として、その過渡応答性を向上させ自然環境における乱気流等の過渡変化に適応するため、過渡応答性や自立平衡制御性等の特性を評価する装置。
(4)流体の圧縮装置に用いられるモーターを被試験モーター100として、短期間に高トルクで圧縮する動作を伴う熱交換器や、人口呼吸器、高濃度酸素発生機、放水防火ポンプ等の特性を評価する装置。
【0041】
B.第2実施形態:
従来の測定方法で得られる始動トルクTsは、駆動回路120の駆動特性(トランジスターのオン抵抗、基板配線の電圧減衰、駆動波形、位相角等)の影響を大きく受けてしまう。第2実施形態では、駆動回路120の駆動特性の影響を受けることなく、始動トルクTsを測定する方法を説明する。
【0042】
図13は、第2実施形態において被試験モーター100の始動トルクを測定するモーター試験システムの構成を示すブロック図である。第2実施形態と第1実施形態のシステム構成の違いは、定電圧電源130の代わりに定電流電源140が用いられている点、被試験モーター100の駆動回路120が省略されている点、及び、電気ブレーキ230をモーターとして駆動する駆動回路235を設けた点、の3点であり、他の構成は第1実施形態と同じである。尚、定電圧電源130と定電流電源140は説明上分けて説明するが、両機能が一体となっている定電圧定電流電源を用いても良い。この点は後述する他の実施形態でも同様である。
【0043】
図14は、第2実施形態における被試験モーター100の始動トルク測定の原理を示す説明図である。図14の上部には、被試験モーター100の通常の駆動状態におけるA相コイルのPWM波形と、A相コイルで発生するトルク変化を示している。ここでは、被試験モーター100が2相モーターであるものと仮定しているが、3相以上のモーターでも測定原理はほぼ同じである。PWM波形は、A相コイルに印加される実効的な電圧波形であり、ほぼ正弦波状の形状を有している。このPWM波形に応じて、A相コイルから、正弦波状のトルクが発生する。このトルク変化は、被試験モーター100の回転角度に応じたトルクの変化であると考えることができる。また、このトルク変化の最大値は、被試験モーター100の始動トルクTsに等しい。
【0044】
このような通常の駆動状態でのトルクの発生原理を考慮すると、A相コイルから発生するトルクの回転角度に応じた変化を測定し、その最大値を求めることによって、被試験モーター100の始動トルクTsを測定することが可能であることが理解できる。そこで、第2実施形態では、図14の下部に示すように、A相コイルに一定の入力電流値の直流電力を入力した状態で、電気ブレーキ230を駆動回路235で駆動することによって被試験モーター100の回転軸を回転させてトルク計220でトルクの変化を測定し、その最大値を始動トルクTsとして測定する。トルクの測定は、少なくとも電気角で2πに相当する回転角度の範囲Δθに渡って行うことが好ましい。A相の単一相だけでも始動トルクTsを得ることはできるが、相バラツキを考慮して、B相コイルについても同様に始動トルクTsを得ることが可能である。
【0045】
図15は、第2実施形態における被試験モーター100の始動トルク測定のフローチャートである。第2実施形態~第4実施形態では、Mを2以上の整数としたとき、被試験モーター100はM相のコイルを有するコアレスモーターであるものと仮定する。代表的な例では、Mは2又は3である。但し、被試験モーター100をコア付きモーターとしてもよい。
【0046】
ステップS110では、被試験モーター100のM相コイルのうちの1つの特定相コイルに一定電流値の直流電流を入力して、特定相コイルへの入力電圧を測定する。被試験モーター100が2相モーターである場合には、特定相コイルとしてA相コイルとB相コイルのうちの一方が選択されて直流電流が入力され、他方には直流電流は入力されない。また、被試験モーター100が3相モーターである場合には、特定相コイルとしてU相コイルとV相コイルとW相コイルのうちの1相のコイルが選択されて直流電流が入力され、他の2相のコイルには直流電力は入力されない。但し、U相コイルを特定相コイルとした場合には、U相コイルに入力された直流電流は、U相コイルを介してV相コイルとW相コイルの両方に流れる。特定相コイルに入力される直流電流の電流値Iiは入力電流計150で測定され、入力電圧値Eiは入力電圧計160で測定される。
【0047】
ステップS120では、ステップS110と同じ一定電流値の直流電流を被試験モーター100の特定相コイルに供給した状態で、電気ブレーキ230により被試験モーター100に回転を加えて、回転に伴うトルク変化の最大トルクをトルク計220で測定する。この際、被試験モーター100の回転の範囲を、被試験モーター100の電気角で2π以上とすることが好ましい。図14に示したように、モーターのトルクは、電気角に依存しており、電気角で2πの回転角度範囲においてピークを示す正弦波状の波形を示す。従って、電気角で2π以上の回転角度範囲に亘って被試験モーター100を回転させることによって、被試験モーター100で発生する最大トルクを求めることが可能である。
【0048】
電気ブレーキ230により被試験モーター100に回転を加える制御は、駆動回路235によって行われる。なお、ステップS120では、被試験モーター100の回転軸110をゆっくり回転しながらトルクを測定してもよく、或いは、複数の回転角度で被試験モーター100の回転軸110を停止させた状態でトルクを測定してもよい。
【0049】
ステップS130では、他の電流値でステップS110,S120の処理を実行するか否かを判定する。第2実施形態では、複数の電流値でステップS110,S120が実行される。他の電流値でステップS110,S120の処理を実行する場合には、ステップS140に進み、直流電流の電流値を変更してステップS110に戻る。こうして、複数の電流値を用いてステップS110,S120を実行することによって、1つの特定相コイルに関して、複数の入力電圧に応じた複数の最大トルクを求めることができる。
【0050】
ステップS150では、他相のコイルを用いて上述したステップS110~S140の処理を実行するか否かが判断される。被試験モーター100のM相コイルのすべてに関してステップS110~S140の処理が完了していない場合には、ステップS150からステップS110に戻り、特定相コイルを変更してステップS110~S140が再度実行される。こうしてM相のすべてのコイルについてステップS110~S140の処理が終了すると、ステップS160に進む。
【0051】
ステップS160では、複数の入力電圧のそれぞれについて、被試験モーター100のM相コイルに対して得られたM個の最大トルクから、複数の入力電圧に応じた始動トルクの変化を示す始動トルク特性曲線を作成する。この際、個々の入力電圧について、M相コイルに対して得られたM個の最大トルクから、被試験モーター100の始動トルクが決定される。例えば、M個の最大トルクの平均値、最大値、又は、最小値を始動トルクとして決定することができる。最大トルクの平均値を始動トルクとして選択すれば、被試験モーター100に期待される始動トルクの期待値を始動トルクとすることができる。また、最大トルクの最大値を始動トルクとして選択すれば、被試験モーター100の回転軸110がトルク発生に関して最も有利な回転位置にある状態において発生可能なトルクを始動トルクとするこができる。最大トルクの最小値を始動トルクとして選択すれば、被試験モーター100の回転軸110がトルク発生に関して最も不利な回転位置にある状態において発生可能なトルクを始動トルクとするこができる。
【0052】
なお、M相コイルのすべてに関してステップS110~S140の処理を実行する必要はなく、少なくとも1相のコイルについてステップS110~S140の処理を実行するようにしてもよい。例えば、1相のコイルのみについてステップS110~S140の処理を実行する場合には、そのコイルについて得られた最大トルクがそのまま始動トルクとして決定される。
【0053】
図16は、第2実施形態で得られる被試験モーター100の始動トルク特性を示すグラフである。図16の横軸は入力電圧であり、縦軸は始動トルクである。複数の黒丸は測定点を示し、点線は複数の測定点から作成された始動トルク特性曲線G2を示す。
【0054】
始動トルク特性曲線G2は、複数の測定点を近似する近似関数によって表すことができる。図16の例において、始動トルク特性曲線G2は直線である。被試験モーター100がコアレスモーターである場合には、始動トルク特性曲線G2は直線で表すことができる。なお、通常は、図15の処理で測定される入力電圧Eiは、被試験モーター100の定格電圧に比べて極めて小さい値である。図16の例において、被試験モーター100の定格電圧を10[V]としたとき、測定点の入力電圧Eiの値はその1/10以下である。この理由は、入力電圧Eiが定格電圧に近い値になるように直流電圧値を大きな値に設定すると、被試験モーター100のコイルが過熱して、被試験モーター100が損傷してしまう可能性があるからであり、また、この試験は被試験モーター100自身の発熱の影響を受けないように測定するのがポイントとなるからである。この意味では、図15の処理において、入力電圧Eiは、被試験モーター100の定格電圧の1/10以下になるように設定することが更に好ましい。
【0055】
ステップS170では、始動トルク特性曲線G2を外挿することによって、ステップS110~S140の測定で使用された複数の入力電圧よりも高い特定電圧に対する始動トルクを算出する。図16の例では、特定電圧を10Vとしており、その特定電圧に対する始動トルクTsが始動トルク特性曲線G2の外挿により算出されている。本実施形態では、始動トルク特性曲線G2は直線なので、その外挿によって、特定電圧に対する始動トルクTsを精度良く求めることが可能である。但し、始動トルク特性曲線G2が直線でない場合にも、精度はやや低下するものの、始動トルク特性曲線G2の外挿によって測定点よりも高い入力電圧に対する始動トルクを算出することが可能である。
【0056】
図16の始動トルク特性曲線G2は、駆動回路120を被試験モーター100に接続しない状態で測定された特性であり、被試験モーター100単独の始動トルク特性を示している。このように、第2実施形態では、駆動回路120の特性の影響を受けることなく、被試験モーター100単独の始動トルク特性を正確に測定することができる。
【0057】
C.第3実施形態:
図17は、第3実施形態において被試験モーター100の始動トルクを測定するモーター試験システムの構成を示すブロック図である。第3実施形態と第2実施形態のシステム構成の違いは、定電流電源140と被試験モーター100の間に駆動回路120が追加されている点だけであり、他の構成は第2実施形態と同じである。
【0058】
図18は、第3実施形態における被試験モーター100の始動トルク測定のフローチャートである。この処理手順は、図15に示した第2実施形態の処理手順のステップS110を、ステップS210,S220で置き換えたものであり、他のステップは第2実施形態と同じである。
【0059】
ステップS210では、被試験モーター100のM相コイルのうちの1つを特定相コイルとして選択し、特定相コイルに関する駆動回路120のPWMデューティを100%に設定する。ステップS220では、ステップS210の状態を維持したまま、特定相コイルに一定電流値Is(=Ii)の直流電流を入力して、駆動回路120への入力電圧Eiを測定する。この入力電圧Eiは、駆動回路120と特定相コイルに発生する電圧の合計値に相当する。ステップS120以降の処理は、図15で説明した第2実施形態と同じなので説明を省略する。
【0060】
図19は、第3実施形態で得られる被試験モーター100の始動トルク特性を示すグラフである。複数の黒丸は測定点を示し、点線は複数の測定点から作成された始動トルク特性曲線G3を示す。この始動トルク特性曲線G3も、図16に示した第2実施形態の始動トルク特性曲線G2と同様に直線であるが、直線以外の近似曲線としてもよい。第3実施形態においても、図18の処理において、入力電圧Eiは、被試験モーター100の定格電圧の1/10以下になるように設定することが好ましい。
【0061】
図19の始動トルク特性曲線G3は、駆動回路120を被試験モーター100に接続した状態で測定された特性であり、被試験モーター100と駆動回路120とで構成される駆動系についての始動トルク特性を示している。このように、第3実施形態では、駆動回路120の特性の影響を含む状態で、被試験モーター100の始動トルク特性を正確に測定することができる。また、第2実施形態の方法に従って被試験モーター100単独の始動トルク特性曲線G2を求め、第3実施形態の方法に従って被試験モーター100と駆動回路120とを含む駆動系についての始動トルク特性曲線G3を求めるようにすれば、その差分から、駆動回路120の性能の優劣を判定することが可能である。
【0062】
D.第4実施形態:
図20は、第4実施形態において被試験モーター100の始動トルクを測定するモーター試験システムの構成を示すブロック図である。第4実施形態と第3実施形態のシステム構成の違いは、定電流電源140の他に定電圧電源130も使用される点、両者を切り替えて駆動回路120に接続するスイッチ回路170が追加されている点、及び、電気ブレーキ230の回転軸を制動する電磁ブレーキ236とその駆動回路237とが設けられている点、の3点だけであり、他の構成は第3実施形態と同じである。
【0063】
図21は、第4実施形態における被試験モーター100の始動トルク測定のフローチャートである。ステップS310では、特定相コイルに一定電流値の直流電流を入力した状態で、電気ブレーキ230により被試験モーター100を回転させる。このステップS310では、定電流電源140がスイッチ回路170を介して駆動回路120に接続され、定電流電源140からの直流電流が駆動回路120を介して特定相コイルに入力される。なお、駆動回路120を介することなく、定電流電源140からの直流電流を被試験モーター100に入力するようにしてもよい。ステップS310の動作は、図15で説明した第2実施形態のステップS120の動作と実質的に同じである。ステップS310では、回転に伴うトルクの変化がトルク計220によって測定され、回転に伴うトルクの最大値が求められる。
【0064】
ステップS320では、トルクが最大値になった回転位置で回転軸を固定させ、また、直流電流の入力を停止する。回転軸の固定は、電気ブレーキ230の回転軸に連結された電磁式ブレーキ236を、駆動回路237により作動させることによって実行される。尚、通常時は、電磁ブレーキ236を非制動状態として、電気ブレーキ230の回転軸を固定させない状態を保つ。電磁ブレーキ236以外の制動装置を用いて、被試験モーター100の回転軸をトルクが最大値になった回転位置で固定するようにしてもよい。
【0065】
ステップS330では、トルク計220をピークホールドモードに設定し、また、被試験モーター100への電源を、定電流電源140から定電圧電源130に切り替える。ピークホールモードとは、測定されたトルクのうちのピーク値を保持するモードである。
【0066】
ステップS340では、被試験モーター100の特定相コイルに矩形パルス電圧を印加してピークトルクを測定する。
【0067】
図22は、ステップS340において特定相コイルに矩形パルス電圧Vpを印加する状態を示す説明図である。駆動回路120は、A相コイル101を駆動する4つのトランジスター121~124で構成されるHブリッジ回路を含んでいる。4つのトランジスター121~124のゲート電極には、制御信号Sd1~Sd4がそれぞれ入力される。A相コイル101を特定相コイルとして使用する場合に、2つのトランジスター121,124の制御信号Sd1,Sd4をオンレベルに設定し、他の2つのトランジスター122,123の制御信号Sd2,Sd3をオフレベルに設定すれば、A相コイル101に矩形パルス電圧Vpを与えることが可能である。矩形パルス電圧Vpの電圧レベルEsは、定電圧電源130から供給される入力電圧Eiとほぼ同じである。このように、ステップS350の処理では、被試験モーター100の特定相コイルに特定の入力電圧Eiが供給された状態において、被試験モーター100が発生するピークトルクを測定することができる。このピークトルクは、始動トルクに相当するものである。
【0068】
矩形パルス電圧Vpのオン期間Toは、試験制御装置300によって任意に設定することができる。但し、オン期間Toの長さが過度に短いと、始動トルクをうまく測定できない可能性があるので、オン期間Toは100μs以上に設定することが好ましい。一方、オン期間Toの長さが過度に長いと、特定相コイルが過度に発熱する可能性があるので、オン期間Toは20ms以下に設定することが好ましく、10ms以下に設定することが更に好ましい。
【0069】
ステップS340においてピークトルクを測定する際には、例えば、矩形パルス電圧Vpのオン期間Toの初期値を十分に小さな値に設定し、オン期間Toを徐々に増加しながら、オン期間Toの長さ毎にトルクのピーク値をトルク計220で測定する。そして、オン期間Toを増加してもピーク値が実質的に増加なくなった時点のトルクを「ピークトルク」と決定することができる。例えば、ピーク値の一定回数にわたる移動平均の極大値を「ピークトルク」と決定してもよい。
【0070】
ステップS350では、他相のコイルを用いて上述したステップS310~S340の処理を実行するか否かが判断される。被試験モーター100のM相コイルのすべてに関してステップS310~S340の処理が完了していない場合には、ステップS350からステップS310に戻り、特定相コイルを変更してステップS310~S340が再度実行される。こうしてM相のすべてのコイルについてステップS310~S340の処理が終了すると、ステップS360に進む。
【0071】
ステップS360では、被試験モーター100のM相コイルに対して得られたM個のピ-クトルクから、被試験モーター100の始動トルクを決定する。例えば、M個のピ-クトルクの平均値、最大値、又は、最小値を始動トルクとして決定することができる。
【0072】
なお、M相コイルのすべてに関してステップS310~S340の処理を実行する必要はなく、少なくとも1相のコイルについてステップS310~S140の処理を実行ようにしてもよい。例えば、1相のコイルのみについてステップS310~S340の処理を実行する場合には、そのコイルについて得られたピークトルクが始動トルクとしてそのまま決定される。
【0073】
第4実施形態では、特定相コイルに一定の入力電圧Eiを印加した状態における始動トルクを測定することが可能である。この入力電圧Eiは、第2実施形態や第3実施形態において直流電流に応じて発生する入力電圧に比べて高い電圧値とすることが可能であり、被試験モーター100の定格電圧と等しい値に設定可能である。また、始動トルク測定の際には、矩形パルス電圧Vpを用いるので、特定相コイルに過度の発熱を生じさせることなく、被試験モーター100の始動トルクを測定することが可能である。
【0074】
本開示は、上述の実施形態や実施形態、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、開示の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0075】
(1)本開示の一形態によれば、被試験モーターの特性試験に使用するモーター試験装置が提供される。このモーター試験装置は、前記被試験モーターの回転軸に連結される第1カップリングと、前記第1カップリングに連結された第1回転軸と、第2回転軸とを有し、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間のトルクを測定するトルク計と、前記トルク計の前記第2回転軸に連結された第2カップリングと、前記第2カップリングに連結された回転軸を有する電気ブレーキであって、コアレスモーター構造を有する電気ブレーキと、前記電気ブレーキのコイルに電気的に接続され、前記コイルに発生する交流誘起電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換部と、前記AC/DC変換部に電気的に接続され、前記直流電圧による電力を消費する直流負荷部と、を備える。前記直流負荷部は、直流電流値を可変に調整する可変電流制御部と、抵抗器とが、前記直流電圧が印加される2つの入力端子の間に直列に配置された構成を有する。
このモーター試験装置によれば、コアレスモーター構造を有する電気ブレーキを用い、被試験モーターの回転によって発生する電気ブレーキの交流誘起電圧を直流電圧に変換して直流負荷部でその電力を消費するので、急激な過渡変化に対する被試験モーターの過渡応答特性を試験することができる。
【0076】
(2)上記モーター試験装置を用いて前記被試験モーターの特性を測定する方法であって、前記被試験モーターを前記モーター試験装置に連結して、前記被試験モーターのT-N特性を測定する工程と、前記被試験モーターが連結されていない状態における前記モーター試験装置の損失に対応する損失トルクと、回転数と、の関係を示す予め作成された損失T-N特性の前記損失トルクを、前記被試験モーターの前記T-N特性のトルクに加算する補正を行うことによって、前記被試験モーターについての補正T-N特性を求める工程と、を含む方法。
この方法によれば、モーター試験装置の損失に相当する損失トルク成分を含まない被試験モーター単独の補正T-N特性を求めることができる。
【0077】
(3)上記モーター試験装置を用いて前記被試験モーターの始動トルクを測定する方法であって、(a)Mを2以上の整数としたとき、M相コイルを有する前記被試験モーターを前記モーター試験装置に連結した状態で、前記M相コイルのうちの1つの特定相コイルに一定電流値の直流電流を入力して、前記特定相コイルの入力電圧を測定する工程と、(b)前記一定電流値の前記直流電流を前記特定相コイルに入力した状態で、前記電気ブレーキにより前記被試験モーターに回転を加えて、前記回転に伴うトルク変化の最大トルクを求める工程と、(c)前記一定電流値を変更して前記工程(a)~(b)を複数回実行することによって、前記特定相コイルに関して、複数の前記入力電圧に応じた複数の前記最大トルクを求める工程と、(d)前記複数の入力電圧に応じた前記複数の最大トルクを用いて、前記複数の入力電圧に応じた始動トルクの変化を示す始動トルク特性曲線を作成する工程と、(e)前記始動トルク特性曲線を外挿することによって、前記複数の入力電圧よりも高い特定電圧に対する始動トルクを算出する工程と、を含む。
この方法によれば、駆動回路の影響を受けることなく、被試験モーター単独の始動トルクを正確に測定できる。
【0078】
(4)上記モーター試験装置を用いて前記被試験モーターの始動トルクを測定する方法であって、(a)Mを2以上の整数としたとき、M相コイルを有する前記被試験モーターを前記モーター試験装置に連結し、前記M相コイルのうちの1つの特定相コイルに関する前記被試験モーターの駆動回路のPWMデューティを100%に設定した状態で、前記駆動回路を介して前記特定相コイルに一定電流値の直流電流を入力して、前記駆動回路の入力電圧を測定する工程と、(b)前記一定電流値の前記直流電流を前記特定相コイルに入力した状態で、前記電気ブレーキにより前記被試験モーターに回転を加えて、前記回転に伴うトルク変化の最大トルクを求める工程と、(c)前記一定電流値を変更して前記工程(a)~(b)を複数回実行することによって、前記特定相コイルに関して、複数の前記入力電圧に応じた複数の前記最大トルクを求める工程と、(d)前記複数の入力電圧に応じた前記複数の最大トルクを用いて、前記複数の入力電圧に応じた始動トルクの変化を示す始動トルク特性曲線を作成する工程と、(e)前記始動トルク特性曲線を外挿することによって、前記複数の入力電圧よりも高い特定電圧に対する始動トルクを算出する工程と、を含む。
この方法によれば、被試験モーターと駆動回路とを含む駆動系に関する始動トルクを正確に測定できる。
【0079】
(5)上記方法であって、前記工程(d)は、前記M相コイルのうちの1相のコイルを前記特定相コイルとして順次選択して前記工程(a)~(c)を実行し、前記複数の入力電圧のそれぞれについて、前記M相コイルに対するM個の前記最大トルクの平均値、最大値、又は、最小値を前記始動トルクとして選択する工程、を含むものとしてもよい。
この方法によれば、始動トルクをより正確に求めることができる。
【0080】
(6)上記モーター試験装置を用いて前記被試験モーターの始動トルクを測定する方法であって、(a)Mを2以上の整数としたとき、M相コイルを有する前記被試験モーターを前記モーター試験装置に連結し、前記被試験モーターの駆動回路を介して前記M相コイルのうちの1つの特定相コイルに一定電流値の直流電流を入力した状態で、前記電気ブレーキにより前記被試験モーターに回転を加えて、前記回転に伴うトルク変化を測定する工程と、(b)前記トルク変化のうちの最大トルク値になった回転角度で前記電気ブレーキの回転を停止させて前記回転角度を維持する工程と、(c)前記電気ブレーキの前記回転角度を維持した状態で、前記駆動回路を介して前記被試験モーターの前記特定相コイルに特定電圧値の矩形パルス電圧を印加してピークトルクを測定する工程と、(d)前記ピークトルクを用いて前記被試験モーターの始動トルクを決定する工程と、を含む。
この方法によれば、特定電圧値に対する被試験モーターの始動トルクを正確に測定できる。
【0081】
(7)上記方法であって、前記工程(d)は、前記M相コイルのうちの1相のコイルを前記特定相コイルとして順次選択して前記工程(a)~(c)を実行し、前記M相コイルに対するM個の前記ピークトルクの平均値、最大値、又は、最小値を前記始動トルクとして選択する工程、を含むものとしてもよい。
この方法によれば、始動トルクをより正確に求めることができる。
【符号の説明】
【0082】
100…被試験モーター、101…A相コイル、104…磁気センサー、110…回転軸、120…駆動回路、121~124…トランジスター、130…定電圧電源、140…定電流電源、150…入力電流計、151…相電流計、160…入力電圧計、161…相電圧計、170…スイッチ回路、200…モーター試験装置、211…第1カップリング、212…第2カップリング、220…トルク計、221…第1回転軸、222…第2回転軸、230…電気ブレーキ、231A…A相コイル、231B…B相コイル、232…回転軸、234…磁気センサー、234A…A相磁気センサー、234B…B相磁気センサー、235…駆動回路、236…電磁ブレーキ、237…駆動回路、240…AC/DC変換部、241A…全波整流回路、241B…全波整流回路、242…平滑コンデンサー、243A…極性分離回路、243B…極性分離回路、246p,246n…出力端子、250…直流負荷部、251p,251n…入力端子、252…可変電流制御部、253…トランジスター、254…オペアンプ、255…電流指令部、256…抵抗器、260…パワーメーター、270…試験連結構造、300…試験制御装置、310…メモリー
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