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特開2024-174605記録装置、記録装置の制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174605
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】記録装置、記録装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/42 20060101AFI20241210BHJP
   B65H 5/24 20060101ALI20241210BHJP
   B65H 29/60 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J11/42
B65H5/24
B65H29/60 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092508
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古松 亮汰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅史
(72)【発明者】
【氏名】田口 基之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 翔
(72)【発明者】
【氏名】有田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】玉利 健人
【テーマコード(参考)】
2C058
3F053
3F101
【Fターム(参考)】
2C058AB08
2C058AC07
2C058AE02
2C058AF20
2C058AF23
2C058GA07
2C058GE16
3F053EA05
3F053EB04
3F053EC01
3F053LA07
3F053LB03
3F101LA07
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】重ね合わせ状態を解消し、排紙後のシートにおける排紙整列性が悪化するのを抑制することができる記録装置、記録装置の制御方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】引き離し完了時に適切な距離Dpを設定し、引き離し動作において、距離Dpに基づいて、先行する記録媒体1Pを搬送する下流側のローラの搬送速度と後続の記録媒体2Pを搬送する上流側のローラの搬送速度とを調整して記録媒体1Pと記録媒体2Pとの重ね合わせ状態を解消する。その後、下流側のローラの搬送速度を減速する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録部と、
記録媒体を搬送する第1搬送手段と、
前記搬送方向において前記第1搬送手段より下流側に設けられ、前記記録部で記録された記録媒体を搬送する第2搬送手段と、
前記第1搬送手段および前記第2搬送手段を制御することによって、第1記録媒体と前記第1記録媒体に続く第2記録媒体との搬送を実行する制御手段と、
を備えた記録装置であって、
前記制御手段は、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を第1速度で搬送して前記第1記録媒体の後端と前記第2記録媒体の先端とを離間させた後に、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を前記第1速度より遅い第2速度で搬送することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1搬送手段は、前記第1記録媒体の後端と前記第2記録媒体の先端とを予め重ねて搬送することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第1搬送手段は、前記搬送方向において前記記録部の下流側に設けられた第1ローラを用いて記録媒体をニップし搬送することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1記録媒体の後端が前記第1搬送手段を通過した後、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を前記第1速度で搬送することで、前記第1記録媒体と前記第2記録媒体とを離間させ、前記第1速度は前記第1搬送手段による前記第2記録媒体の搬送速度より速いことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1記録媒体の後端が、前記第2搬送手段より上流の所定の位置に到達したときに、前記第2搬送手段による前記第1記録媒体の搬送速度を前記第1速度から前記第2速度に変更することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第2搬送手段の搬送速度を前記第1速度よりも遅くなるよう変更するか否かを、記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する所定条件に応じて切り替えることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する前記所定条件は、記録デューティーであることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する前記所定条件は、前記第1記録媒体へ記録する記録面積であることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項9】
前記記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する前記所定条件は、前記第1記録媒体へのインクの付与量であることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項10】
前記記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する前記所定条件は、前記第1記録媒体の紙種であることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項11】
前記記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する前記所定条件は、使用環境であることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項12】
前記第2搬送手段は、前記搬送方向において前記第1ローラよりも下流側に設けられた第2ローラを用いて記録媒体をニップして搬送および排紙を行い、
前記第1記録媒体の上流側端部が前記第2ローラのニップ部に到達した時点において、前記第1記録媒体の上流側端部は、前記第2記録媒体の下流側端部よりも、前記搬送方向の下流側に位置することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項13】
前記第1記録媒体を排紙する時の搬送速度は、前記記録部が前記第1記録媒体に対する記録を行う時の前記第1搬送手段を用いた前記第1記録媒体と前記第2記録媒体との搬送速度よりも遅いことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項14】
前記記録装置は、前記記録部が記録媒体に対し記録を行いながら前記搬送方向と交差する方向にスキャンする動作と、記録媒体を前記搬送方向に搬送する搬送動作とを交互に行うシリアル型の記録装置であり、
前記記録部が前記第1記録媒体に対する記録を行う時の搬送速度は、間欠的に行われる前記搬送動作を連続搬送とみなした場合の平均の搬送速度であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項15】
前記記録装置は、所定の搬送速度で連続搬送される記録媒体に対し、前記記録部が記録を行うフルライン型の記録装置であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項16】
前記第1搬送手段は、前記第1ローラと、前記搬送方向において前記第1ローラよりも下流側で且つ前記第2ローラよりも上流側に設けられた第3ローラと、前記第1ローラ及び前記第3ローラを共に駆動する駆動源と、を有し、前記第3ローラは前記第1ローラよりも速い速度で記録媒体を搬送可能であることを特徴とする請求項12に記載の記録装置。
【請求項17】
前記第2ローラと前記第3ローラとの間に、搬送経路の分岐が設けられていることを特徴とする請求項16に記載の記録装置。
【請求項18】
搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録工程と、
第1搬送手段により記録媒体を搬送する第1搬送工程と、
前記搬送方向において前記第1搬送手段より下流側に設けられた第2搬送手段によって、前記記録工程で記録された記録媒体を搬送する第2搬送手段と、
前記第1搬送手段および前記第2搬送手段を制御することによって、第1記録媒体と前記第1記録媒体に続く第2記録媒体との搬送を実行する制御工程と、
を備えた記録装置の制御方法であって、
前記制御工程では、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を第1速度で搬送して前記第1記録媒体の後端と前記第2記録媒体の先端とを離間させた後に、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を前記第1速度より遅い第2速度で搬送することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項19】
請求項1に記載の記録装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、記録装置の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の記録装置では、搬送する際のシート間隔を可能な限り詰めて、単位時間当たりに画像形成できる枚数をできるだけ多くする高速処理の必要性が求められている。そして、高速な画像形成を実現するために、先行するシートの後端部と後続するシートの先端部とを一部重ね合わせた状態で連続搬送する記録装置が提供されている。特許文献1には、画像形成後の重ね合わせ状態を解消するために、先行するシートの搬送速度を速め、先行するシートを後続するシートから引き離した後に排紙する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-56299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、シートを引き離しながら高速で排紙するため、排紙トレイにおける排紙整列性が悪化する場合がある。
【0005】
よって本発明は、連続するシートを搬送する記録装置において、排紙後のシートにおける排紙整列性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の記録装置は、搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録部と、記録媒体を搬送する第1搬送手段と、前記搬送方向において前記第1搬送手段より下流側に設けられ、前記記録部で記録された記録媒体を搬送する第2搬送手段と、前記第1搬送手段および前記第2搬送手段を制御することによって、第1記録媒体と前記第1記録媒体に続く第2記録媒体との搬送を実行する制御手段と、を備えた記録装置であって、前記制御手段は、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を第1速度で搬送して前記第1記録媒体の後端と前記第2記録媒体の先端とを離間させた後に、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を前記第1速度より遅い第2速度で搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排紙後のシートにおける排紙整列性が悪化するのを抑制することができる記録装置、記録装置の制御方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態を適用可能な記録装置の要部を示した側面図である。
図2】記録装置を示すブロック図である。
図3】記録装置における記録媒体の搬送工程を工程順に示した一連の図である。
図4】記録装置における記録媒体の搬送工程を工程順に示した一連の図である。
図5】記録装置における記録媒体の搬送工程を工程順に示した一連の図である。
図6】記録装置における記録媒体の搬送工程を工程順に示した一連の図である。
図7】引き離し動作を示したフローチャートである。
図8】タイミングチャートを示した図である。
図9】記録装置における記録媒体の搬送工程を工程順に示した一連の図である。
図10】記録装置における記録媒体の搬送工程を工程順に示した一連の図である。
図11】記録装置における記録媒体の搬送工程を工程順に示した一連の図である。
図12】記録装置における記録媒体の搬送工程を工程順に示した一連の図である。
図13】記録装置における記録媒体の搬送工程を工程順に示した一連の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0010】
図1(a)から(c)は、本実施形態を適用可能な記録装置200の要部を示した側面図である。図1(a)から(c)を用いて本実施形態における記録装置200の概略構成について説明する。記録装置200は、用紙積載部11に複数枚のシート(以下、記録媒体という)Pを積載している。ピックアップローラ2は、用紙積載部11に積載された最上位の記録媒体Pに当接して記録媒体Pをピックアップする。給送ローラ3は、ピックアップローラ2によってピックアップされた記録媒体Pを第1搬送路100内に沿って、搬送方向へ給送する。ピックアップローラ2は、ワンウェイローラとなっており、給送ローラ3を超える位置まで記録媒体Pを搬送した後は停止する。ピックアップローラ2を停止しても給送ローラ3によって記録媒体Pの搬送を継続することができる。給送従動ローラ4は、給送ローラ3へ付勢され給送ローラ3とともに記録媒体Pを挟持して給送する。
【0011】
第1搬送ローラ5は、給送ローラ3及び給送従動ローラ4によって給送された記録媒体Pを記録ヘッド(記録部)7と対向する位置へ搬送する。第1搬送従動ローラ6は、搬送ローラ5へ付勢され第1搬送ローラ5とともに記録媒体Pを挟持して搬送する。給送ローラ3及び給送従動ローラ4で形成される給送ニップ部と、搬送ローラ5及び第1搬送従動ローラ6で形成される搬送ニップ部との間では、記録媒体Pは第1搬送路100内をガイドによって案内される。記録媒体検知センサ16は、搬送される記録媒体Pの先端及び後端を検知する。記録媒体検知センサ16は、記録媒体搬送方向において給送ローラ3の下流に設けられている(図1(a)参照)。
【0012】
記録ヘッド7は、搬送ローラ5及び第1搬送従動ローラ6によって搬送された記録媒体Pの第1面(表面)に記録を行う。本実施形態では、インクを吐出することにより記録媒体Pに記録を行うインクジェット方式の記録ヘッド7として説明する。プラテン8は、記録ヘッド7と対向する位置で記録媒体Pの第2面(裏面)を支持する。キャリッジ1は、記録ヘッド7を搭載して記録媒体搬送方向と交差する方向へ移動する。第2搬送ローラ10は、記録ヘッド7によって記録が行われた記録媒体Pを搬送方向に向けて搬送する。第2搬送従動ローラ12は、第2搬送ローラ10へ付勢され第2搬送ローラ10とともに記録媒体Pを挟持して搬送する(図1(b)参照)。
【0013】
第2搬送ローラ10によって搬送された記録媒体Pは、排紙路104内をガイドに沿って搬送される。排紙ローラ22は、第2搬送ローラ10によって搬送された記録媒体Pを排紙部25に排紙する。排紙従動ローラ23は、排紙ローラ22へ付勢され排紙ローラ22とともに記録媒体Pを挟持して搬送する(図1(c)参照)。
【0014】
図2は、本実施形態の記録装置200を示すブロック図である。MPU201は、各部動作やデータの処理などを制御する。ROM202は、画像処理部2021を備えており、MPU201によって実行されるプログラムやデータを格納する。RAM203は、MPU201によって実行される処理データ及びホストコンピュータ214から受信したデータを一時的に記憶する。記録ヘッド7は記録ヘッドドライバ220によって制御される。キャリッジモータ204は、キャリッジ1を駆動する。搬送モータ205は、第1搬送ローラ5及び第2搬送ローラ10を駆動する。第1給送モータ207は、ピックアップローラ2を駆動する。第2給送モータ208は、給送ローラを駆動する。排紙モータ215は、排紙ローラ22を駆動する。モータドライバ218は、上述した各種モータを制御する。
【0015】
ホストコンピュータ214には、使用者によって記録動作の実行が命令された場合に、記録画像や記録画像品位等の記録情報を取りまとめて記録装置と通信するためのプリンタドライバ2141が設けられている。MPU201は、I/F部213を介してホストコンピュータ214と記録画像データ等のやり取りを実行する。
【0016】
記録装置200では、先行する記録媒体Pの後端部上に後続の記録媒体Pの先端部を重ねて(一部重複)搬送を行う。このような搬送で、重なった状態のままフェイスダウン方式(記録面を下側にした状態)で排紙を行うと、排紙時に用紙の順番が入れ替わることがあり排紙整列性が悪化する虞がある。
【0017】
特許文献1では、重なった状態を解消して排紙するために、排紙時の搬送速度を記録時よりも速めて、後続する記録媒体との引き離しを行った後に排紙を行っている。しかし、引き離し動作で搬送速度を速くして排紙を行うと、排紙整列性が悪化する虞がある。
【0018】
そこで本実施形態では、引き離し動作を行った後に、先行する記録媒体の排紙時の搬送速度を引き離し時の速度から下げることで排紙整列性の悪化を抑制する。以下、その方法を説明する。
【0019】
本実施形態において、先行する記録媒体P1に対しては、後続の記録媒体Pが所定量重なった状態のまま、記録ヘッド7による記録動作が行われる。記録媒体P1に対する記録動作が完了した後、記録媒体P1に対する引き離し動作が開始される。
図3(a)から(c)、図4(a)、(b)は、引き離し動作以降の搬送工程を工程順に示した一連の図である。以下、本実施形態の記録装置200における引き離し動作以降の搬送工程を説明する。
【0020】
図3(a)は、先行する記録媒体1Pの搬送方向における上流側端部が第2搬送ローラ10に到達し、先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとが重なっている状態を示す。本実施形態では、この時点が引き離し動作の(離間)開始時点となる。MPU201は、記録媒体検知センサ16が記録媒体1Pを検知した時点からの第1搬送ローラ5の回転量と用紙の長さとから、先行する記録媒体1Pの搬送方向における上流側端部が、第2搬送ローラ10に到達したのを認識することができる。その後、第1搬送ローラ5及び第2搬送ローラ10とは独立して、排紙モータ215により排紙ローラ22を連続して回転させ、引き離し動作を行う。この際、後続する記録媒体2Pの搬送方向における下流側と先行する記録媒体1Pの搬送方向における上流側との重なり量が徐々に少なくなるように排紙ローラ22の速度を制御する。具体的には、排紙ローラ22による搬送速度が、第1搬送ローラ5と第2搬送ローラ10の搬送速度よりも高速になるように、MPU201が排紙モータ215を駆動する。これにより、記録媒体1Pと記録媒体2Pとの重なり量は徐々に減少し、やがて両者は離間する。
【0021】
以下、図3(b)、(c)を参照して説明する。図3(b)は、先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの引き離し完了時の状態を示しており、図3(c)は、先行する記録媒体1Pの搬送方向における上流側端部が排紙ローラ22に到達した時の状態を示している。先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの引き離しが完了すると、MPU201は、排紙ローラ22の搬送速度を下げる。具体的には、排紙ローラ22による搬送速度が、第1、第2搬送ローラの搬送速度よりも低速になるように、MPU201が排紙モータ215を駆動する。そのため、図3(b)で示す引き離し完了時から図3(c)で示す先行する記録媒体1Pの搬送方向における上流側端部が排紙ローラ22に到達するまでの間は、先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの間隔は狭くなっていく。ここで、後続の記録媒体2Pが先行する記録媒体1Pに追いついてしまうと、記録媒体1Pと記録媒体2Pとが衝突してしまいジャムが発生する虞がある。
【0022】
そこで、本実施形態では、先行する記録媒体1Pの搬送方向における上流側端部が、排紙ローラ22に到達した際の、先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの距離が0より大きくなるように排紙ローラ22の回転速度を制御する。これによって、先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの重なりを解消した状態で、先行する記録媒体1Pの排紙時の搬送速度を好適な速度に下げることができる。
【0023】
その後、図4(a)のように、記録が終了した記録媒体1Pは、排紙ローラ22の回転により、排紙トレイ25に排出される。そして、後続の記録媒体2Pの最終行の画像形成動作が終了すると、本例では、1ジョブ内最後の記録媒体である記録媒体2Pに対して記録が終了したことになる。ここで、排紙ローラ22、第2搬送ローラ10、第1搬送ローラ5を回転することにより、記録媒体2Pを排紙トレイ25に排出する(図4(b)参照)。
【0024】
このように記録媒体の搬送を制御することで、記録媒体1Pと記録媒体2Pとが重なっていない状態で、かつ排紙整列性が乱れない程度の適切な排紙速度で記録媒体を排紙することができる。これにより、排紙整列性の悪化を抑制することができる。
【0025】
以下、より具体的に本実施形態における記録媒体の搬送制御について説明する。なお、以下の説明で用いる上流、下流の記載は、特に説明がない場合、搬送方向における上流、搬送方向における下流を意味する。
【0026】
図5(a)から(d)は、本実施形態の記録装置200における記録媒体Pの引き離し動作の搬送工程を工程順に示した一連の図である。図6(a)から(c)は、本実施形態の記録装置200における記録媒体Pの引き離し動作以降の搬送工程を工程順に示した一連の図である。理解を容易にするために、記録媒体の搬送経路を直線的に示している。以下、本実施形態の記録装置200における搬送工程を説明する。
【0027】
図5(a)は、先行する記録媒体1Pへの記録が終了した後であって、後続の記録媒体2Pの下流側端部が第2搬送ローラ10に到達した時点の状態を示す。この時点では、まだ、記録媒体1Pと記録媒体2Pとの引き離し動作(以下、単に引き離し動作という)は開始されていない。その後、図5(b)のように、先行する記録媒体1Pの上流側端部が第2搬送ローラ10に到達し、第2搬送ローラによるニップが解除されると引き離し動作が開始される。なお、引き離し動作の開始タイミングは、第2搬送ローラ10に到達した直後に限定するものでなく、到達後であればよい。引き離し動作では、先行する記録媒体1Pの上流側端部が、排紙ローラ22より上流側の任意の所定位置である点T(引き離し終了点)に到達するまで行われる。本実施形態では、点Tは、第2搬送ローラ10と排紙ローラ22との間の区間に設定されている。
【0028】
ここで、第2搬送ローラ10から点Tまでの領域を引き離し領域とし、その距離は、距離Lである。また、先行する記録媒体1Pの上流側端部が点Tに到達時、つまり引き離し動作完了直後(図5(d)に相当)における、先行する記録媒体1Pの上流側端部と後続の記録媒体2Pの下流側端部との間隔を距離Dpとする。また、先行する記録媒体1Pの上流側端部が第2搬送ローラ10に到達した時(図5(b)に相当)の、第2搬送ローラ10から後続の記録媒体2Pの下流側端部までの距離を距離Wとする。この距離Wは、引き離し動作開始時の記録媒体1Pと記録媒体2Pとが重なっている量(重ね量)でもある。
【0029】
図5(c)、(d)のように、引き離し動作が開始され、先行する記録媒体1Pの上流側端部が、引き離しが終了する点Tに到達するまでは、先行する記録媒体1Pは、引き離し速度V2で搬送される。本実施形態では、図6(a)のように、先行する記録媒体1Pの上流側端部が、引き離しが終了する点Tに到達した直後に、排紙ローラ22の搬送速度をV2からV3に下げる場合について説明する。なお、搬送速度を減速するタイミングは、先行する記録媒体1Pの上流側端部が点Tに到達した直後に限定するものでなく到達後であればよい。
【0030】
先行する記録媒体1Pの上流側端部が、引き離しが終了する点Tに到達し、排紙ローラ22の搬送速度が下げられると、図6(b)に示すように先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pの間隔は距離Dpから距離Dp‘のように短くなる。図6(c)に示すように先行する記録媒体1Pの上流側端部が排紙ローラ22に到達した際に、記録媒体1Pと記録媒体2Pとの間隔として所定距離Dp2が確保されている状態となるように、図5(d)の引き離し動作完了時に適切な距離Dpを確保しておく。
【0031】
その上で、MPU201は、引き離し動作時の排紙ローラ22の速度を制御する。ここで、先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの距離の関係としては、0<Dp2<Dpである。距離Dpの算出方法と排紙ローラ22の速度の算出方法の詳細に関しては、図7の制御フローを参照して説明する。
【0032】
図7は、本実施形態における引き離し動作を示したフローチャートである。以下、図7のフローチャートを用いて本実施形態における引き離し動作を説明する。なお、図7で示される一連の処理は、記録装置200のMPU201がROM202に記憶されているプログラムコードをRAM203に展開し実行することにより行われる。あるいはまた、図7におけるステップの一部または全部の機能をASICまたは電子回路等のハードウェアで実現してもよい。なお、各処理の説明における記号「S」は、当該フローチャートにおけるステップであることを意味する。
【0033】
先行する記録媒体1Pの上流側端部が第2搬送ローラ10に到達し、第2搬送ローラ10によるニップが解除され引き離し動作が開始されると、S701で、MPU201は、重ね量Wを取得する。重ね量Wは、記録媒体の種類などによって予め定められた固定値である。その後S702でMPU201は、後続の記録媒体2Pへ記録する記録データから、記録媒体1Pの上流側端部が引き離し動作開始(図5(b))から終了(図5(d))まで進む間における、引き離し動作中に行われる実際のスキャン数Sを算出する。
次に、S703でMPU201は、先行する記録媒体1Pの上流側端部が、引き離しが終了する点Tに到達して引き離しが完了した時点(図5(d)に相当)において求められる、記録媒体1Pの上流側端部と記録媒体2Pの下流側端部との距離Dpを算出する。
【0034】
具体的には、記録時の記録媒体2Pの搬送速度V1、点Tから排紙ローラ22までの距離L1、排紙ローラ22の排紙時の搬送速度(減速後の速度)V3とする。更に、排紙ローラ22の減速開始から記録媒体1Pの上流側端部が排紙ローラ22を通過する間の、キャリッジ1による減速開始から排紙完了までのスキャン数S’とする。更に、1スキャンの所要時間Ts、先行する記録媒体1Pの上流側端部が排紙ローラ22に到達した時点における、記録媒体1Pの上流側端部と記録媒体2Pの下流側端部との距離を所定距離Dp2とする。この場合、距離Dpは、
Dp=V1(L1/V3-S’・Ts)-L1+Dp2
と算出することができる。
【0035】
ここで、図8は、引き離し動作以降の、キャリッジ1、第1搬送ローラ5、第2搬送ローラ10、排紙ローラ22の動作のタイミングチャートを示した図である。横軸は時間、縦軸は搬送速度又はキャリッジの駆動速度を示す。ここでは、S702で求めたスキャン数SがS=2であった場合を示している。上記式における1スキャンの所要時間Tsは、図8のタイミングチャートに示すようにキャリッジ1のスキャン動作に必要な時間である。1スキャンの所要時間Tsには、動作前後の待機時間や加減速時間を含んでもよい。また、キャリッジ1のスキャン動作に必要な時間がスキャンごとに異なる場合には、1スキャンの所要時間Tsをその平均値としてもよい。なお、図8中のVcはキャリッジ1の駆動速度である。図中、V1は、第1搬送ローラ5及び第2搬送ローラ10による実際の搬送速度を示す。一方V1´は、本実施形態の間欠搬送を連続搬送とみなした場合の平均搬送速度を示している。すなわち、V1´は、第1搬送ローラ5及び第2搬送ローラ10が実際に記録媒体を搬送速度V1で搬送させる期間と、キャリッジが移動する間に記録媒体を停止させる搬送速度が0となる停止時間(Ts)とで、搬送速度を平均化して得られる値である。
【0036】
図7のフローチャートに戻り、S704では、先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの引き離しが完了するまでの時間である引き離し可能時間TmaxをMPU201が算出する。重ね量W、スキャン数S、1スキャンの所要時間Ts、引き離し領域の距離L、引き離し動作後の用紙間の距離Dp、後続の記録媒体2Pの搬送速度V1から算出するものであり、引き離し可能時間Tmaxは、
Tmax=(L-W-Dp)/V1+S・Ts
と算出することができる。
【0037】
その後、S705では、引き離し動作時の先行する記録媒体P1の搬送速度V2をMPU201が算出する。搬送速度V2は、引き離し可能時間Tmaxと引き離し領域の距離Lとから、
V2=L/Tmax
と算出することができる。
【0038】
ここで搬送速度V2は、図8のタイミングチャートに示すように排紙ローラ22による連続搬送の搬送速度である。そして、S706で、先行する記録媒体1Pの上流側端部が、第2搬送ローラ10に到達したかを判定する。到達していないと判定された場合(NO)、S706の処理を繰り返す。一方、到達したと判定された場合(YES)、S707に移行する。
【0039】
S707で、排紙ローラ22を搬送速度V2以上の速度で回転させる。この動作により、図5(b)で示すように、先行する記録媒体1Pが後続の記録媒体2Pから引き離され、重ね量WはW’に減少する。この時、搬送速度V2以上の速度で回転させることにより、図5(d)で示すように、先行する記録媒体1Pの上流側端部が、引き離しが終了する点Tに到達するまでに距離Dp以上の用紙間隔をあけることが可能となり、重ね状態を解消することができる。
【0040】
S708では、先行する記録媒体1Pの上流側端部の引き離しが終了する点Tに到達したか否かをMPU201が判定する。到達していないと判定された場合(No)、S708の処理を繰り返す。一方、到達したと判定された場合(Yes)、S709に移行する。
【0041】
S709では、先行する記録媒体1Pの記録デューティーが閾値(所定の記録デューティー)より高いか否かをMPU201が判定する。閾値となる記録デューティーは、紙種と環境に対応付けられて予めROMに記憶されている。記録デューティーが閾値より低いと判定された場合(No)、本処理を終了する。一方、記録デューティーが閾値より高いと判定された場合(Yes)、S710に移行する。ここで、記録デューティーの閾値は、紙面全域における記録面積または一定格子内のインクの吐出量より算出される。記録デューティーが高い場合、記録媒体に含まれる水分量が多くなり、記録媒体はカールしやすい状態になっていることから、記録デューティーが高い記録媒体を高速で排出すると排紙整列性は悪くなる。そのため、本実施形態では、排紙する記録媒体における記録デューティーが閾値よりも高い場合には、排紙ローラによる搬送速度を速度V2から速度V3に落として排紙を行う。
【0042】
図8に示すように、排紙ローラによる搬送速度V3は、本実施形態では、第1、第2搬送ローラの搬送速度V1よりも遅い速度となっている。しかし、これに限定するものでなく、搬送速度V3は、搬送速度V2よりも遅ければよい。
【0043】
S710で、本実施形態では排紙ローラ22を搬送速度V3で回転させる。ここでは図8のタイミングチャートに示すように連続搬送の搬送速度であり、図8の排紙動作開始の時点は先行する記録媒体1Pの上流側端部が、引き離しが終了する点Tに到達した時に対応する。この動作により、図6(b)で示すように、先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの間隔が狭くなり、距離Dpは距離Dp’に減少する。しかし図6(c)に示すように、S703で算出した引き離し完了時点での距離Dpを確保しているため、先行する記録媒体1Pの上流側端部が排紙ローラ22に到達した時、記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの間隔は所定距離Dp2が確保される。
【0044】
所定距離Dp2が満たすべき条件は、Dp2>0であり、この条件を満たせば後続の記録媒体2Pが先行する記録媒体1Pに追いつくことを防ぐことができる。
【0045】
なお、重なり状態を解消するにあたり、引き離し動作に用いる下流側のローラ(本実施形態では排紙ローラ22)の搬送速度V2は、引き離し領域の上流側のローラ(第2搬送ローラ10等)の平均搬送速度V1´より速くする。しかし、搬送速度V2の算出結果や、後続の記録媒体2Pへの記録状況によっては、必ずしも搬送速度V2が搬送速度V1より速い必要はなく同様または遅くてもよい。例えば、第2搬送ローラ10と排紙ローラ22とが記録媒体を同じ搬送速度V1で搬送しても、第2搬送ローラ10は記録媒体2Pに対する記録中(キャリッジのスキャン中)には搬送を行わないため間欠的な搬送動作が行われる。それに対し、排紙ローラ22は連続搬送を行うことから、排紙ローラ22が第2搬送ローラ10と同じ搬送速度V1で記録媒体1Pを搬送しても、実質的に排紙ローラ22による記録媒体1Pの搬送量の方が多くなることがある。また、後続の記録媒体2Pにおける記録デューティーが高い場合等、記録媒体2Pに対する記録状況によっては、搬送速度V2が搬送速度V1より遅くても記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの引き離しが可能となる場合もある。
【0046】
また、排紙ローラ22の搬送速度を変えることなく、第1搬送ローラ5と第2搬送ローラ10の搬送速度を変更する(低速にする)ことで、引き離し動作を行ってもよい。
【0047】
また、引き離し動作に用いる下流側のローラ(本実施形態では排紙ローラ22)は、搬送速度V2以上の一定速度で連続駆動しなくてもよく、例えば停止や加減速を含め平均速度が搬送速度V2以上となるように制御してもよい。
【0048】
なお、本実施形態では、キャリッジ1に搭載された記録ヘッド7による記録動作と記録媒体を搬送する搬送動作とを交互に行うシリアル型の記録装置を例に説明した。しかし、記録ヘッドを移動させず、記録媒体を搬送させて記録を行うフルライン型の記録装置にも適用可能である。その場合、距離Dpの算出におけるスキャン数S’および1スキャンの所要時間Tsについては0として算出すればよい。
【0049】
また、本実施形態では、排紙ローラ22の搬送速度を搬送速度V2から搬送速度V3に変更するか否かを、記録デューティーに応じて判断したが、これに限定するものではない。記録後の記録媒体の状態に寄与する、記録媒体へ記録する記録面積、記録媒体へのインクの吐出量、記録媒体の紙種、記録装置の使用環境等の所定条件に応じて、排紙ローラ22の搬送速度を搬送速度V2から搬送速度V3に変更してもよい。また、記録デューティー、記録媒体へ記録する記録面積、記録媒体へのインクの付与量、記録媒体の紙種、記録装置の使用環境等、複数の条件を適宜組み合わせて用いてもよい。無論、条件を設けず、全ての記録媒体に対し、搬送速度をV2からV3に変更してもよい。
なお、以上では説明を簡略化するため、2枚の記録媒体で記録が完了する場合を例に説明したが、無論3枚以上の記録媒体に記録することもできる。3枚目の記録媒体に記録を行う際には、2枚目の記録媒体を先行する記録媒体1P、3枚目の記録媒体を記録媒体2Pとして、上記と同様の工程で搬送制御を行えばよい。
【0050】
このように、引き離し完了時に適切な距離Dpを設定する。そして、引き離し動作において距離Dpに基づいて、先行する記録媒体1Pを搬送する下流側のローラの搬送速度と後続の記録媒体2Pを搬送する上流側のローラの搬送速度とを調整して記録媒体1Pと記録媒体2Pとの重ね合わせ状態を解消する。その後、下流側のローラの搬送速度を減速する。これにより、重ね合わせ搬送を行う記録装置において、排紙後のシートにおける排紙整列性を向上させることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成について説明する。
【0052】
第1の実施形態では第2搬送ローラ10と排紙ローラ22との2つのローラで記録媒体1Pと記録媒体2Pとの引き離しを行う場合について説明したが、第2搬送ローラ10と排紙ローラ22との間にローラが存在していてもよい。
【0053】
図9(a)から(c)、図10(a)、(b)は、本実施形態の記録装置200における記録媒体Pの引き離し動作以降の搬送工程を工程順に示した一連の図である。また、図11(a)から(c)、図12(a)から(c)は、本実施形態の記録装置200における記録媒体Pの引き離し動作以降の搬送工程を工程順に示した一連の図であり、理解を容易にするために、記録媒体の搬送経路を直線的に示している。以下、本実施形態の記録装置200における搬送工程を説明する。
【0054】
第3搬送ローラ21は、第2搬送ローラ10と排紙ローラ22との間に設けられ、搬送モータ205(図2参照)を駆動源として駆動される。本実施形態では、搬送モータ205に対する第3搬送ローラ21の減速比を第2搬送ローラ10に対して増速系になるように構成している。具体的には、第2搬送ローラ10が搬送速度V1で回転しているとき、第3搬送ローラ21は、搬送速度V2(V2>V1)で回転するように、減速比が予め調整されている。また、第3搬送ローラ21は、ワンウェイローラであり、搬送方向に対し空転可能であるものとする。このような本実施形態によれば、搬送モータ205が同じ駆動を継続している状態であっても、記録媒体が第2の搬送ローラのニップ部から外れたタイミングで、その記録媒体の搬送速度はV1からV2に切り替えられる。なお、第3搬送従動ローラ21は、第3搬送ローラ20へ付勢され第3搬送従動ローラ21とともに記録媒体Pを挟持して搬送する。
【0055】
図9(a)を参照して説明する。図9(a)は、図7で説明した引き離し動作を開始したときの状態を示している。第1の実施形態と同様、引き離し動作は、先行する記録媒体1Pの上流側端部が第2搬送ローラ10のニップ部を通過した時点で開始される。第2搬送ローラ10のニップ部を通過した先行する記録媒体1Pは、第3搬送ローラ21によって排紙ローラ22に向かって搬送される。また、後続する記録媒体2Pは、用紙積載部11から給紙され第1搬送ローラ5及び第2搬送ローラ10によって搬送されている。
【0056】
図9(b)を参照して説明する。図9(b)は、引き離しが完了して、先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pとの距離Dpが確保されている状態である。この時、先行する記録媒体1Pは、第3搬送ローラ20と排紙ローラ22とにニップされており、搬送速度V2で搬送される。
【0057】
図9(b)、(c)を参照して説明する。図9(b)では、引き離しが完了して、排紙ローラ22の搬送速度を速度V2から速度V3へ下げ始めるタイミングを示している。排紙ローラ22の搬送速度を下げ始めると、先行する記録媒体1Pは、減速後の速度V3で搬送される。この時、第3搬送ローラ20はワンウェイローラとなっており、排紙ローラ22に連れ回りさせられる。つまり、先行する記録媒体1Pは大きな負荷を受けずに速度V3で搬送することができる。その後、先行する記録媒体1Pが第3搬送ローラ20を通過すると、第3搬送ローラ20は再び速度V2で回転を始める。その後も、先行する記録媒体1Pは、図10(a)のように排紙ローラ22によって搬送速度V3で搬送され、図10(b)のように、トレイ25に排紙される。
【0058】
これにより先行する記録媒体1Pの上流側端部と後続の記録媒体2Pの下流側先端との重なりを解消して、かつ後続の記録媒体2Pが記録媒体1Pに追いつくことを防ぎ、用紙の順番が入れ替わることなくトレイ25に排紙速度を下げて排紙することができる。
【0059】
図11(a)から(c)は、本実施形態の記録装置200における記録媒体Pの引き離し動作の搬送工程を工程順に示した一連の図である。図12(a)から(c)は、本実施形態の記録装置200における記録媒体Pの引き離し動作以降の搬送工程を工程順に示した一連の図である。理解を容易にするために、記録媒体の搬送経路を直線的に示している。以下、本実施形態の記録装置200における搬送工程を説明する。
【0060】
図11(a)は、先行する記録媒体1Pへの記録が終了し、先行する記録媒体1Pの上流側端部が第2搬送ローラ10に到達した時点の状態を示す。この時点では、まだ、記録媒体1Pと記録媒体2Pとの引き離し動作(以下、単に引き離し動作という)は開始されていない。先行する記録媒体1Pの上流側端部のニップが解除されると、先行する記録媒体1Pは、第3搬送ローラ20によって速度V2で搬送されて引き離し動作が開始される。つまり、ニップが解除されると、第3搬送ローラ20は空転状態ではなくなり、先行する記録媒体1Pは、第3搬送ローラ20によって速度V2で搬送される。引き離し動作では、先行する記録媒体1Pの上流側端部が、第3搬送ローラ20より上流側の任意の所定位置である点T(引き離し終了点)に到達するまで行われる。本実施形態では、点Tは、第2搬送ローラ10と第3搬送ローラ20との間の区間に設定されている。
【0061】
ここで、第2搬送ローラ10から点Tまでの領域を引き離し領域とし、その距離は、距離Lである。また、先行する記録媒体1Pの上流側端部が点Tに到達時、つまり引き離し動作完了直後における、先行する記録媒体1Pの上流側端部と後続の記録媒体2Pの下流側端部との間隔を距離Dpとする(図11(c)参照)。また、先行する記録媒体1Pの上流側端部が第2搬送ローラ10に到達した時(図11(a)に相当)の、第2搬送ローラ10から後続の記録媒体2Pの下流側端部までの距離を距離Wとする。この距離Wは、引き離し動作開始時の記録媒体1Pと記録媒体2Pとが重なっている量(重ね量)でもある。
【0062】
図11(a)、(b)のように、引き離し動作が開始され、先行する記録媒体1Pの上流側端部が、引き離しが終了する点Tに到達するまでは、先行する記録媒体1Pは、第3搬送ローラ20によって引き離し速度V2で搬送される。図11(c)のように、引き離しが終了した時点では、先行する記録媒体1Pは、第3搬送ローラ20と排紙ローラ22とにニップされており、ここまでは搬送速度V2で搬送される。そして、図12(a)のように、先行する記録媒体1Pの上流側端部が、引き離しが終了する点Tに到達した直後に、排紙ローラ22の搬送速度をV2からV3に下げる。なお、搬送速度を減速するタイミングは、先行する記録媒体1Pの上流側端部が点Tに到達した直後に限定するものでなく到達後であればよい。
【0063】
先行する記録媒体1Pの上流側端部が、引き離しが終了する点Tに到達し、排紙ローラ22の搬送速度がV3に下げられると、図12(b)に示すように先行する記録媒体1Pと後続の記録媒体2Pの間隔は距離Dpから距離Dp’のように短くなる。図12(c)に示すように、先行する記録媒体1Pの上流側端部が排紙ローラ22に到達した際に記録媒体1Pと記録媒体2Pとの間隔として、所定距離Dp2が確保されている状態となるように、図11(c)の引き離し動作完了時に適切な距離Dpを確保する。
このように、重ね合わせ搬送を行う記録装置において、第2搬送ローラ10と排紙ローラ22との間に、これらローラに回転速度を追従可能な駆動ローラを配する構成によっても、排紙後のシートにおける排紙整列性を向上させることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成について説明する。
【0065】
図13(a)から(c)は、本実施形態の記録装置200における記録媒体Pの搬送工程を工程順に示した一連の図である。本実施形態では、第3搬送ローラ20と排紙ローラ22との間に、分岐が設けられている。分岐の先は、例えば搬送されてきた記録媒体の表裏面を反転するための両面反転パスなどとすることが出来る。
【0066】
先行する記録媒体1Pを、図13(b)に示すように、矢印E方向に排紙路104に搬送して排紙することもできるし、図13(c)のように、フラッパー24より矢印F方向に搬送して第3搬送路102へも搬送可能である。分岐の先が両面反転パスである場合、第3搬送路102に搬送された記録媒体は、不図示の搬送経路を移動した後、記録が行われていない側の面を記録ヘッド7に向けた状態で、プラテン8上に戻る。図13(c)に示す経路の場合、第3搬送路102への搬送時にジャムが生じる虞がある。よって、本実施形態では、先行する記録媒体1Pの先端がフラッパー24まで搬送される前に、搬送速度を下げる構成とする。
なお、ここでは、一例として両面反転パス用の分岐としたが、分岐の用途は特に限定されるものではない。複数用意されたトレイに選択的に排出するなどの用途であってもよい。
【0067】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0068】
本実施形態の開示は、以下の構成、方法、プログラムを含む。
【0069】
(構成1)
搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録部と、
記録媒体を搬送する第1搬送手段と、
前記搬送方向において前記第1搬送手段より下流側に設けられ、前記記録部で記録された記録媒体を搬送する第2搬送手段と、
前記第1搬送手段および前記第2搬送手段を制御することによって、第1記録媒体と前記第1記録媒体に続く第2記録媒体との搬送を実行する制御手段と、
を備えた記録装置であって、
前記制御手段は、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を第1速度で搬送して前記第1記録媒体の後端と前記第2記録媒体の先端とを離間させた後に、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を前記第1速度より遅い第2速度で搬送することを特徴とする記録装置。
(構成2)
前記第1搬送手段は、前記第1記録媒体の後端と前記第2記録媒体の先端とを予め重ねて搬送することを特徴とする構成1に記載の記録装置。
(構成3)
前記第1搬送手段は、前記搬送方向において前記記録部の下流側に設けられた第1ローラを用いて記録媒体をニップし搬送することを特徴とする構成1または2に記載の記録装置。
(構成4)
前記第1記録媒体の後端が前記第1搬送手段を通過した後、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を前記第1速度で搬送することで、前記第1記録媒体と前記第2記録媒体とを離間させ、前記第1速度は前記第1搬送手段による前記第2記録媒体の搬送速度より速いことを特徴とする構成1ないし3のいずれか1つに記載の記録装置。
(構成5)
前記制御手段は、前記第1記録媒体の後端が、前記第2搬送手段より上流の所定の位置に到達したときに、前記第2搬送手段による前記第1記録媒体の搬送速度を前記第1速度から前記第2速度に変更することを特徴とする構成1ないし4のいずれか1つに記載の記録装置。
(構成6)
前記制御手段は、前記第2搬送手段の搬送速度を前記第1速度よりも遅くなるよう変更するか否かを、記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する所定条件に応じて切り替えることを特徴とする構成5に記載の記録装置。
(構成7)
前記記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する前記所定条件は、記録デューティーであることを特徴とする構成6に記載の記録装置。
(構成8)
前記記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する前記所定条件は、前記第1記録媒体へ記録する記録面積であることを特徴とする構成6または7に記載の記録装置。
(構成9)
前記記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する前記所定条件は、前記第1記録媒体へのインクの付与量であることを特徴とする構成6ないし8のいずれか1つに記載の記録装置。
(構成10)
前記記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する前記所定条件は、前記第1記録媒体の紙種であることを特徴とする構成6ないし9のいずれか1つに記載の記録装置。
(構成11)
前記記録後の前記第1記録媒体の状態に寄与する前記所定条件は、使用環境であることを特徴とする構成6ないし10のいずれか1つに記載の記録装置。
(構成12)
前記第2搬送手段は、前記搬送方向において前記第1ローラよりも下流側に設けられた第2ローラを用いて記録媒体をニップして搬送および排紙を行い、
前記第1記録媒体の上流側端部が前記第2ローラのニップ部に到達した時点において、前記第1記録媒体の上流側端部は、前記第2記録媒体の下流側端部よりも、前記搬送方向の下流側に位置することを特徴とする構成3に記載の記録装置。
(構成13)
前記第1記録媒体を排紙する時の搬送速度は、前記記録部が前記第1記録媒体に対する記録を行う時の前記第1搬送手段を用いた前記第1記録媒体と前記第2記録媒体との搬送速度よりも遅いことを特徴とする構成1に記載の記録装置。
(構成14)
前記記録装置は、前記記録部が記録媒体に対し記録を行いながら前記搬送方向と交差する方向にスキャンする動作と、記録媒体を前記搬送方向に搬送する搬送動作とを交互に行うシリアル型の記録装置であり、
前記記録部が前記第1記録媒体に対する記録を行う時の搬送速度は、間欠的に行われる前記搬送動作を連続搬送とみなした場合の平均の搬送速度であることを特徴とする構成1に記載の記録装置。
(構成15)
前記記録装置は、所定の搬送速度で連続搬送される記録媒体に対し、前記記録部が記録を行うフルライン型の記録装置であることを特徴とする構成1ないし13のいずれか1つに記載の記録装置。
(構成16)
前記第1搬送手段は、前記第1ローラと、前記搬送方向において前記第1ローラよりも下流側で且つ前記第2ローラよりも上流側に設けられた第3ローラと、前記第1ローラ及び前記第3ローラを共に駆動する駆動源と、を有し、前記第3ローラは前記第1ローラよりも速い速度で記録媒体を搬送可能であることを特徴とする構成12に記載の記録装置。
(構成17)
前記第2ローラと前記第3ローラとの間に、搬送経路の分岐が設けられていることを特徴とする構成16に記載の記録装置。
(方法1)
搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録工程と、
第1搬送手段により記録媒体を搬送する第1搬送工程と、
前記搬送方向において前記第1搬送手段より下流側に設けられた第2搬送手段によって、前記記録工程で記録された記録媒体を搬送する第2搬送手段と、
前記第1搬送手段および前記第2搬送手段を制御することによって、第1記録媒体と前記第1記録媒体に続く第2記録媒体との搬送を実行する制御工程と、
を備えた記録装置の制御方法であって、
前記制御工程では、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を第1速度で搬送して前記第1記録媒体の後端と前記第2記録媒体の先端とを離間させた後に、前記第2搬送手段によって前記第1記録媒体を前記第1速度より遅い第2速度で搬送することを特徴とする記録装置の制御方法。
(プログラム1)
構成1から17のいずれか1項に記載の記録装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0070】
1 キャリッジ
5 第1搬送ローラ
7 記録ヘッド
10 第2搬送ローラ
20 第3搬送ローラ
22 排紙ローラ
200 記録装置
1P 記録媒体
2P 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13