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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174610
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】熱回収加熱冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/02 20060101AFI20241210BHJP
   F25B 30/02 20060101ALI20241210BHJP
   F24H 15/219 20220101ALI20241210BHJP
   F24H 15/32 20220101ALI20241210BHJP
   F24H 15/335 20220101ALI20241210BHJP
   F24H 15/375 20220101ALI20241210BHJP
   F24H 15/156 20220101ALI20241210BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20241210BHJP
   F24H 15/429 20220101ALI20241210BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241210BHJP
   F25B 25/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F25B27/02 Z
F25B30/02 Z
F24H15/219
F24H15/32
F24H15/335
F24H15/375
F24H15/156
F24H4/02 B
F24H4/02 Z
F24H15/429
F25B1/00 389A
F25B25/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092522
(22)【出願日】2023-06-05
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 健
(72)【発明者】
【氏名】安嶋 賢哲
(72)【発明者】
【氏名】横山 康弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 修平
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA03
3L122AA23
3L122AC14
3L122AC23
3L122BC36
3L122DA21
3L122EA09
(57)【要約】
【課題】自己熱回収システムの冷却工程での熱交換により採熱された排温水が温度低下して加熱工程で利用できない低温域の排温水になっても該排温水が有する熱をさらに有効利用して熱回収率を高めることができる熱回収加熱冷却システムを提供する。
【解決手段】補助冷却器6からの熱回収水の熱を回収して蒸気を生成する排熱利用加熱装置10と、排熱利用加熱装置10により熱交換された熱回収水の熱を回収して冷却器7を冷却する冷却水を生成する排熱利用冷却装置20と、排熱利用冷却装置20により熱交換されて昇温した予熱水と加熱器2からの熱源温水の一部とを熱交換する予熱水熱交換器9と、予熱水熱交換器9で熱交換された予熱水により熱処理対象Wを予熱する予熱器1と、を備え、熱回収水は、熱回収水循環経路L1を流れ、予熱水は、予熱水循環経路L3を流れる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理対象を一連の加熱器を介して段階的に加熱した後に熱処理を行い、該熱処理された熱処理対象を一連の冷却器を介して段階的に冷却させ、前記冷却器により熱交換された熱源温水の熱の一部を前記加熱器に戻して循環させる熱回収加熱冷却システムにおいて、
前記冷却器により熱交換されて温度上昇した熱回収水の熱を回収して蒸気を生成する排熱利用加熱装置と、
前記排熱利用加熱装置により熱交換されて温度低下した前記熱回収水の熱を回収して前記冷却器を冷却する冷却水を生成する排熱利用冷却装置と、
前記排熱利用冷却装置により熱交換されて昇温した冷却水である予熱水と前記加熱器により熱交換された前記熱源温水の一部とを熱交換する予熱水熱交換器と、
前記一連の加熱器の前段に設けられ、前記予熱水熱交換器により昇温された前記予熱水により前記熱処理対象を予熱する予熱器と、
を備え、
前記熱回収水は、前記冷却器、前記排熱利用加熱装置、前記排熱利用冷却装置を順に循環させて前記冷却器に戻す熱回収水循環経路を流れ、
前記予熱水は、前記排熱利用冷却装置、前記予熱水熱交換器、前記予熱器を順に循環させて前記排熱利用冷却装置に戻す予熱水循環経路を流れることを特徴とする熱回収加熱冷却システム。
【請求項2】
前記予熱水熱交換器により熱交換されて温度低下した熱源温水の一部を前記排熱利用加熱装置の被加熱水として供給することを特徴とする請求項1に記載の熱回収加熱冷却システム。
【請求項3】
前記冷却器のうちの後段の冷却器は、冷水チラーが生成して循環するチラー冷却水により冷却され、
前記後段の冷却器により熱交換されて前記冷水チラーに戻るチラー冷却水と、前記排熱利用冷却装置から出力される冷却水である補助冷却水とを熱交換する冷却水熱交換器を備え、
前記補助冷却水は、前記排熱利用冷却装置と前記冷却水熱交換器との間を循環させる補助冷却水循環経路を流れ、前記冷水チラーに戻るチラー冷却水を冷却することを特徴とする請求項1に記載の熱回収加熱冷却システム。
【請求項4】
前記加熱器には、蒸気配管を介して蒸気生成装置から蒸気が供給され、
前記排熱利用加熱装置は、ヒートポンプ式蒸気生成装置であり、生成された蒸気は前記蒸気配管に合流して前記加熱器に供給され、
前記排熱利用冷却装置は、エジェクタ冷却装置であることを特徴とする請求項1に記載の熱回収加熱冷却システム。
【請求項5】
前記冷却器の熱回収水循環経路出口側に設けられ熱回収水温度を計測する温度センサと、
前記冷却器と前記排熱利用加熱装置との間における熱回収水循環経路の分岐点と、前記排熱利用加熱装置と前記排熱利用冷却装置との間における熱回収水循環経路の合流点との間を接続し、前記排熱利用加熱装置をバイパスさせるバイパス配管と、
前記分岐点に設けられて前記熱回収水の供給を、排熱利用加熱装置側とバイパス配管側とに切り替える切替弁と、
前記排熱利用冷却装置と前記冷却器との間の熱回収水循環経路に設けられ、前記熱回収水を循環させる循環ポンプと、
前記温度センサが計測する熱回収水温度をもとに、前記熱回収水温度が第1温度未満かつ第2温度以上の場合、前記切替弁を前記排熱利用加熱装置側に切り替えて前記循環ポンプ、前記排熱利用加熱装置及び前記排熱利用冷却装置を運転させ、前記熱回収水温度が前記第2温度未満かつ第3温度以上の場合、前記切替弁を前記バイパス配管側に切り替えて前記排熱利用加熱装置を停止するとともに、前記循環ポンプ及び前記排熱利用冷却装置を運転させ、前記熱回収水温度が前記第3温度未満の場合、前記切替弁を前記バイパス配管側に切り替えて前記循環ポンプ、前記排熱利用加熱装置及び前記排熱利用冷却装置を停止する制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の熱回収加熱冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己熱回収システムの冷却工程での熱交換により採熱された排温水が温度低下して加熱工程で利用できない低温域の排温水になっても該排温水が有する熱をさらに有効利用して熱回収率を高めることができる熱回収加熱冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品を加熱して熱処理する工程において、熱処理後の製品を冷却する工程で使用した冷却水は製品との熱交換により温度上昇して排温水として捨てられる。そこで、この排温水の一部を加熱工程に戻すことにより、システム全体のエネルギー消費量の低減を図る自己熱回収システムがある。
【0003】
なお、特許文献1には、炭酸含飲料の製造工程において他工程で発生した排熱を加熱工程で利用し、さらにその排熱を吸着式あるいは吸収式冷凍機の熱源にして冷却工程で利用する省エネルギーシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-130195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の自己熱回収システムでは、熱処理後の製品を冷却する冷却工程で熱交換された排温水は、温度低下に伴い、加熱工程で利用できずに捨てられる場合が多い。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、自己熱回収システムの冷却工程での熱交換により採熱された排温水が温度低下して加熱工程で利用できない低温域の排温水になっても該排温水が有する熱をさらに有効利用して熱回収率を高めることができる熱回収加熱冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる熱回収加熱冷却システムは、熱処理対象を一連の加熱器を介して段階的に加熱した後に熱処理を行い、該熱処理された熱処理対象を一連の冷却器を介して段階的に冷却させ、前記冷却器により熱交換された熱源温水の熱の一部を前記加熱器に戻して循環させる熱回収加熱冷却システムにおいて、前記冷却器により熱交換されて温度上昇した熱回収水の熱を回収して蒸気を生成する排熱利用加熱装置と、前記排熱利用加熱装置により熱交換されて温度低下した前記熱回収水の熱を回収して前記冷却器を冷却する冷却水を生成する排熱利用冷却装置と、前記排熱利用冷却装置により熱交換されて昇温した冷却水である予熱水と前記加熱器により熱交換された前記熱源温水の一部とを熱交換する予熱水熱交換器と、前記一連の加熱器の前段に設けられ、前記予熱水熱交換器により昇温された前記予熱水により前記熱処理対象を予熱する予熱器と、を備え、前記熱回収水は、前記冷却器、前記排熱利用加熱装置、前記排熱利用冷却装置を順に循環させて前記冷却器に戻す熱回収水循環経路を流れ、前記予熱水は、前記排熱利用冷却装置、前記予熱水熱交換器、前記予熱器を順に循環させて前記排熱利用冷却装置に戻す予熱水循環経路を流れることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる熱回収加熱冷却システムは、上記の発明において、前記予熱水熱交換器により熱交換されて温度低下した熱源温水の一部を前記排熱利用加熱装置の被加熱水として供給することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる熱回収加熱冷却システムは、上記の発明において、前記冷却器のうちの後段の冷却器は、冷水チラーが生成して循環するチラー冷却水により冷却され、前記後段の冷却器により熱交換されて前記冷水チラーに戻るチラー冷却水と、前記排熱利用冷却装置から出力される冷却水である補助冷却水とを熱交換する冷却水熱交換器を備え、前記補助冷却水は、前記排熱利用冷却装置と前記冷却水熱交換器との間を循環させる補助冷却水循環経路を流れ、前記冷水チラーに戻るチラー冷却水を冷却することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる熱回収加熱冷却システムは、上記の発明において、前記加熱器には、蒸気配管を介して蒸気生成装置から蒸気が供給され、前記排熱利用加熱装置は、ヒートポンプ式蒸気生成装置であり、生成された蒸気は前記蒸気配管に合流して前記加熱器に供給され、前記排熱利用冷却装置は、エジェクタ冷却装置であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる熱回収加熱冷却システムは、上記の発明において、前記冷却器の熱回収水循環経路出口側に設けられ熱回収水温度を計測する温度センサと、前記冷却器と前記排熱利用加熱装置との間における熱回収水循環経路の分岐点と、前記排熱利用加熱装置と前記排熱利用冷却装置との間における熱回収水循環経路の合流点との間を接続し、前記排熱利用加熱装置をバイパスさせるバイパス配管と、前記分岐点に設けられて前記熱回収水の供給を、排熱利用加熱装置側とバイパス配管側とに切り替える切替弁と、前記排熱利用冷却装置と前記冷却器との間の熱回収水循環経路に設けられ、前記熱回収水を循環させる循環ポンプと、前記温度センサが計測する熱回収水温度をもとに、前記熱回収水温度が第1温度未満かつ第2温度以上の場合、前記切替弁を前記排熱利用加熱装置側に切り替えて前記循環ポンプ、前記排熱利用加熱装置及び前記排熱利用冷却装置を運転させ、前記熱回収水温度が前記第2温度未満かつ第3温度以上の場合、前記切替弁を前記バイパス配管側に切り替えて前記排熱利用加熱装置を停止するとともに、前記循環ポンプ及び前記排熱利用冷却装置を運転させ、前記熱回収水温度が前記第3温度未満の場合、前記切替弁を前記バイパス配管側に切り替えて前記循環ポンプ、前記排熱利用加熱装置及び前記排熱利用冷却装置を停止する制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自己熱回収システムの冷却工程での熱交換により採熱された排温水が温度低下して加熱工程で利用できない低温域の排温水になっても該排温水が有する熱をさらに有効利用して熱回収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施の形態である熱回収加熱冷却システムに適用される排熱利用加熱装置の構成を示す回路図である。
図2図2は、本実施の形態である熱回収加熱冷却システムに適用される排熱利用冷却装置の構成を示す回路図である。
図3図3は、本発明の実施の形態である熱回収加熱冷却システムの全体構成を示す図である。
図4図4は、動作モードとその内容を示す図である。
図5図5は、制御部による動作モード制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
まず、本実施の形態である熱回収加熱冷却システム101に適用される排熱利用加熱装置10および排熱利用冷却装置20について説明する。
【0016】
<排熱利用加熱装置>
図1は、本実施の形態である熱回収加熱冷却システム101に適用される排熱利用加熱装置10の構成を示す回路図である。排熱利用加熱装置10は、ヒートポンプ式蒸気生成装置であり、排温水(熱源温水)から熱を回収し、回収した熱を利用して飽和水蒸気を生成して出力する装置である。
【0017】
図1に示すように、排熱利用加熱装置10は、冷媒を圧縮する圧縮機11、圧縮機11で圧縮された冷媒を被加熱水と熱交換して凝縮させる凝縮器12、凝縮器12で凝縮した冷媒を減圧する膨張弁13、および、膨張弁13で膨張した冷媒を熱源温水から回収した熱により蒸発させる蒸発器14を環状に接続したヒートポンプサイクルを形成する。
【0018】
蒸発器14には、接続点14Aから熱源温水が供給され、冷媒と熱交換して温度低下した熱源温水は接続点14Bから排出される。凝縮器12は、接続点12Aから被加熱水が供給され、被加熱水を加熱して水蒸気を生成し、接続点12Bから出力する。
【0019】
<排熱利用冷却装置>
図2は、本実施の形態である熱回収加熱冷却システム101に適用される排熱利用冷却装置20の構成を示す回路図である。排熱利用冷却装置20は、エジェクタ冷却装置であり、図2に示すように、接続点22Aから供給される熱源温水を利用して接続点26Aからの被冷却水を冷却した冷却水として出力する装置である。
【0020】
排熱利用冷却装置20は、冷媒ポンプ21、蒸気生成器22、エジェクタ23と、凝縮器24、膨張弁25及び蒸発器26を有する。冷媒ポンプ21は、液相の冷媒を昇圧させて回路内で冷媒を循環させる。蒸気生成器22は、冷媒ポンプ21から吐出された冷媒と、接続点22Aから供給される熱源温水と熱交換し、冷媒を蒸発させる。熱交換された熱源温水は、接続点22Bから排出される。
【0021】
エジェクタ23は、蒸気生成器22で蒸発した冷媒が駆動流口に供給されて、吐出口から凝縮器24に冷媒を供給する。凝縮器24は、エジェクタ23から供給される気相の冷媒と、接続点24Aから供給される冷却水とを熱交換して冷媒を凝縮させる。凝縮器24で凝縮された冷媒は冷媒ポンプ21に導入されて回路を循環するとともに、一部が分岐して膨張弁25を介して蒸発器26に供給される。なお、冷媒と熱交換された冷却水は接続点24Bから、後述する予熱水として排出される。
【0022】
膨張弁25は液相の冷媒を所定の低圧となるように制御する。蒸発器26では膨張弁25で減圧された冷媒が、接続点26Aから供給される被冷却水との間で熱交換を行って蒸発する。蒸発器26で蒸発した冷媒は、エジェクタ23の吸引口から吸引されるようになっている。蒸発器26では、冷媒がエジェクタ23の吸引作用によって生ずる低圧冷媒となっており、その潜熱を利用して冷却水を生成し接続点26Bから出力する。エジェクタ23では、駆動流口から導入された高圧の冷媒がノズルによって減圧されて噴出される。このとき吸引口を通じて冷媒が吸引流として本体部の内部に吸引され、駆動流および吸引流は混合昇圧され、吐出口から吐出される。
【0023】
<熱回収加熱冷却システムの全体構成>
図3は、本発明の実施の形態である熱回収加熱冷却システム101の全体構成を示す図である。熱回収加熱冷却システム101は、熱処理対象Wを一連の加熱器2,3を介して加熱した後に熱処理を行い、該熱処理された熱処理対象Wを一連の冷却器5,7を介して冷却させ、冷却器5により熱交換された熱源温水の熱の一部を加熱器2に戻して循環させる構成を前提としている。本実施の形態の熱回収加熱冷却システム101では、熱処理対象を水として滅菌水を生成するものであるが、これに限らず、熱処理対象は製品などであってもよい。本実施の形態では、常温の水(20~30℃)を加熱器2,3により段階的に加熱して、100~130℃の加熱水を殺菌処理装置4に一定時間保持することにより滅菌水を生成し、その後、冷却器5,7により滅菌水を冷却し、20~30℃の滅菌水として出力する。なお、加熱器2,3や冷却器5,7の段数は、熱処理対象Wの熱処理温度、加熱器2,3の加熱能力、冷却器5,7の冷却能力により変動する。
【0024】
図3に示すように、熱回収加熱冷却システム101は、ボイラ100、クーリングタワー31、冷水チラー30を有する。ボイラ100は、120~150℃の蒸気を生成し、加熱器3に供給する蒸気生成装置である。加熱器3で熱交換された熱源温水(90~100℃)は、冷却器5の熱交換により70~80℃に昇温した熱源温水と合流点PT2で合流して80~90℃の熱源温水となって加熱器3の前段に配置された加熱器2に供給される。加熱器2は、熱交換により60~70℃の熱源温水となって冷却器5に供給される。したがって、熱源温水は、加熱器2と冷却器5との間を循環する熱源温水循環経路L10を流れる。熱源温水循環経路L10には熱源温水を循環させるための循環ポンプP10が配置される。
【0025】
冷水チラー30は、冷却器7に供給するチラー冷却水(10~20℃)を生成する。冷水チラー30は、図示しない内蔵する冷凍機によりチラー冷却水を生成し、その排熱をクーリングタワー31との間で循環する水と熱交換し大気中に放熱する。生成されたチラー冷却水は、冷却器7により熱交換された後、後述する冷却水熱交換器8を介してさらに冷却された後、25~35℃のチラー冷却水として冷水チラー30に戻る。チラー冷却水は、冷水チラー30、冷却器7、冷却水熱交換器8を介したチラー冷却水循環経路L30を循環する。これにより、冷却器7は、60~70℃の滅菌水を20~30℃に冷却して出力する。なお、チラー冷却水循環経路L30にはチラー冷却水を循環させる循環ポンプP30が設けられる。また、クーリングタワー31と冷水チラー30との間の循環経路には、水を循環させるための循環ポンプP31が設けられる。
【0026】
本実施の形態では、さらに予熱器1、予熱水熱交換器9、補助冷却器6、排熱利用加熱装置10、排熱利用冷却装置20、冷却水熱交換器8を設けている。予熱器1は、加熱器2の前段に設けられる。補助冷却器6は、冷却器5と冷却器7との間に設けられる。予熱器1は、熱処理対象Wの水(20~30℃)を加熱器2に供給する前に、30~65℃に予熱し、予熱した水を加熱器2に出力する。補助冷却器6は、冷却器であり、冷却器5により80~90℃に冷却された滅菌水を60~70℃に冷却し、冷却器7に出力する。この結果、加熱工程では、3段の加熱器が配置され、冷却工程では、3段の冷却器が配置されることになる。
【0027】
補助冷却器6、排熱利用加熱装置10および排熱利用冷却装置20の間には熱回収水循環経路L1が形成される。補助冷却器6の熱交換により熱回収した熱回収水は、熱回収水循環経路L1を介して排熱利用加熱装置10の蒸発器14に供給され、蒸発器14により熱回収された熱回収水は、熱回収水循環経路L1を介して排熱利用冷却装置20の蒸気生成器22に供給され、蒸気生成器22により熱回収された熱回収水は、熱回収水循環経路L1を介して補助冷却器6に戻る。補助冷却器6から出力される熱回収水の温度は70~90℃であり、排熱利用加熱装置10に熱回収された後は60~80℃になる。この60~80℃の熱回収水は排熱利用冷却装置20により熱回収されて50~70℃の熱回収水として補助冷却器6に入力される。なお、排熱利用冷却装置20と補助冷却器6との間の熱回収水循環経路L1には、熱回収水を循環させる循環ポンプP1が配置される。これにより、排熱利用加熱装置10は、熱回収水を有効利用しているので、全体的な熱回収効率が向上する。
【0028】
排熱利用冷却装置20と冷却水熱交換器8との間には、補助冷却水循環経路L2が形成される。冷却水熱交換器8は、冷却器7により熱交換されて冷水チラー30に戻るチラー冷却水と、排熱利用冷却装置20の蒸発器26から出力される冷却水である補助冷却水とを熱交換し、チラー冷却水を冷却する。冷却水熱交換器8から出力された25~35℃の冷却水(被冷却水)は、排熱利用冷却装置20の蒸発器26により冷却され、20~30℃の冷却水(補助冷却水)として冷却水熱交換器8に戻る。なお、補助冷却水循環経路L2には補助冷却水を循環させる循環ポンプP2が配置されている。これにより、冷水チラー30の冷却負荷を低減することができる。また、補助冷却器6において熱回収水と熱交換し熱回収されることにより、冷却器7に入る熱処理対象Wの温度は低くなり、この点において冷却器7を冷却する冷水チラー30の冷却負荷を低減することができる。また、排熱利用冷却装置20は、排熱利用加熱装置10が排出する熱回収水を利用しているため、さらに全体的な熱回収効率が向上する。なお、排熱利用冷却装置20の蒸発器26から出力される冷却水を用いて冷却器7を直接冷却するようにしてもよい。
【0029】
排熱利用冷却装置20と予熱水熱交換器9を介した予熱器1との間には、予熱水循環経路L3が形成される。予熱水熱交換器9は、排熱利用冷却装置20の凝縮器24から排出した35~45℃の予熱水と、加熱器2により熱交換された60~70℃の熱源温水の一部とを熱交換する。すなわち、排熱利用冷却装置20の凝縮器24から排出した35~45℃の予熱水は、50~60℃の予熱水として昇温され、予熱器1に供給される。予熱器1は、50~60℃の予熱水により、予熱器1に入力された熱処理対象Wの水(20~30℃)を35~65℃に昇温し、排熱した25~35℃の予熱水は排熱利用冷却装置20の凝縮器24に戻される。なお、加熱器2により熱交換された60~70℃の熱源温水の一部はポンプP11により排出される。この予熱水循環経路L3を用いた予熱器1による排熱利用の予加熱により、加熱負荷を低減することができる。これにより、全体的な熱回収効率がさらに向上する。
【0030】
なお、予熱水熱交換器9により排熱された50~60℃の熱源温水の一部は、分岐点PT5を介して排熱利用加熱装置の凝縮器12に対して被加熱水として給水され、残りの熱源温水は外部に排水される。そして、排熱利用加熱装置の凝縮器12により生成された120~150℃の蒸気は、ボイラ100と加熱器3との間の蒸気配管の合流点PT1を介して加熱器3に供給される。これにより、従来20℃程度の被加熱水の給水温度が50~60℃程度の給水温度に上昇するため、排熱利用加熱装置10の加熱負荷が低減し、効率を高くすることができる。
【0031】
また、本実施の形態では、蒸気配管の合流点PT1に排熱利用加熱装置10が生成した蒸気を合流させているため、ボイラ100の焚き減らし効果を得ることができる。
【0032】
<動作モード制御>
ところで、熱回収加熱冷却システム101による熱処理対象Wの製造ラインが始動し、加熱工程および冷却工程が安定するまでの間や、熱処理対象Wがバッチ供給されて加熱工程および冷却工程での温度が変化するような場合などには、補助冷却器6から排出される熱回収水の出口温度(熱回収水温度T1)が変動する。熱回収水温度T1が排熱利用加熱装置10や排熱利用冷却装置20の動作可能となる温度に達しない場合、そのまま運転すると、高温蒸気が発生せず、ボイラ100の負荷が増加し、あるいは、排熱利用冷却装置20が出力する補助冷却水の温度が上昇し、冷水チラー30に戻るチラー冷却水温度が上昇することで、冷水チラー30の負荷が増加することにより、システム全体の効率が悪化する。そこで、制御部Cは、補助冷却器6で採熱した熱回収水の熱回収水温度T1に応じて動作モードを変えた運転をするようにしている。
【0033】
図3に示すように、補助冷却器6から排出される熱回収水の出口側には、熱回収水温度を計測する温度センサSが設けられる。また、補助冷却器6と排熱利用加熱装置10との間を接続する熱回収水循環経路L1の途中に設けた分岐点PT3と、排熱利用加熱装置10と排熱利用冷却装置20との間を接続する熱回収水循環経路L1の途中に設けた合流点PT4との間を接続し、排熱利用加熱装置10をバイパスさせるバイパス配管LB1が設けられる。さらに、分岐点PT3には、熱回収水の供給を排熱利用加熱装置側A10とバイパス配管側A20とに切り替える切替弁V1が設けられる。制御部Cは、温度センサS、切替弁V1、循環ポンプP1、排熱利用加熱装置10及び排熱利用冷却装置20に接続される。
【0034】
そして、制御部Cは、図4に示すように、温度センサSが計測する熱回収水温度T1をもとに、熱回収水温度T1が第1温度(例えば、100℃)未満かつ第2温度(例えば、70℃)以上の場合、動作モードM1として、切替弁V1を排熱利用加熱装置側A10に切り替えて循環ポンプP1、ヒートポンプ式蒸気生成装置である排熱利用加熱装置10及びエジェクタ冷却装置である排熱利用冷却装置20を運転させる。また、制御部Cは、熱回収水温度T1が第2温度未満かつ第3温度(例えば、60℃)以上の場合、すなわち、熱回収水温度T1が排熱利用加熱装置10の可動範囲を下回り、排熱利用冷却装置20の可動範囲内である場合、動作モードM2として、切替弁V1をバイパス配管側A20に切り替えて排熱利用加熱装置10を停止するとともに、循環ポンプP1及び排熱利用冷却装置20を運転させる。また、制御部Cは、熱回収水温度T1が第3温度未満の場合、すなわち、熱回収水温度T1が排熱利用加熱装置10および排熱利用冷却装置20の可動範囲をともに下回る場合、動作モードM3として、切替弁V1をバイパス配管側A20に切り替えて循環ポンプP1、排熱利用加熱装置10及び排熱利用冷却装置20を停止する制御を行う。なお、熱回収水温度T1が100℃以上である場合、熱回収水の蒸気化に伴う循環ポンプP1の故障等のトラブルを回避するため熱回収水循環経路L1の装置は全て停止する。
【0035】
<制御部による動作モード制御手順>
図5は、制御部Cによる動作モード制御手順の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、まず制御部Cは、熱回収水温度T1を計測する(ステップS101)。その後、熱回収水温度T1が60℃未満であるか否かを判定する(ステップS102)。熱回収水温度T1が60℃未満である場合(ステップS102:Yes)、動作モードM3により制御し(ステップS105)、ステップS101に移行する。
【0036】
一方、熱回収水温度T1が60℃未満でない場合(ステップS102:No)、さらに熱回収水温度T1が60℃以上、かつ、70℃未満であるか否かを判定する(ステップS103)。熱回収水温度T1が60℃以上、かつ、70℃未満である場合(ステップS103:Yes)、動作モードM2により制御し(ステップS106)、ステップS101に移行する。
【0037】
熱回収水温度T1が60℃以上、かつ、70℃未満でない場合(ステップS103:No)、さらに熱回収水温度T1が70℃以上、かつ、100℃未満であるか否かを判定する(ステップS104)。熱回収水温度T1が70℃以上、かつ、100℃未満である場合(ステップS104:Yes)、動作モードM1により制御し(ステップS107)、ステップS101に移行する。
【0038】
一方、熱回収水温度T1が70℃以上、かつ、100℃未満でない場合(ステップS104:No)、熱回収水循環経路L1の装置を全て停止して(ステップS108)、本処理を終了する。
【0039】
本実施の形態では、補助冷却器6の排温水である熱回収水を利用した排熱利用加熱装置10の排熱をさらに排熱利用冷却装置20で利用するとともに、排熱利用冷却装置20の冷却水を加熱器2からの排熱の一部を利用して昇温し熱処理対象Wを予加熱することにより、より低温側まで排熱を有効利用することができる。
【0040】
なお、上記の実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 予熱器
2,3 加熱器
4 殺菌処理装置
5,7 冷却器
6 補助冷却器
8 冷却水熱交換器
9 予熱水熱交換器
10 排熱利用加熱装置
11 圧縮機
12,24 凝縮器
12A,12B,14A,14B,22A,22B,24A,24B,26A,26B 接続点
13,25 膨張弁
14,26 蒸発器
20 排熱利用冷却装置
21 冷媒ポンプ
22 蒸気生成器
23 エジェクタ
30 冷水チラー
31 クーリングタワー
100 ボイラ
101 熱回収加熱冷却システム
A10 排熱利用加熱装置側
A20 バイパス配管側
C 制御部
L1 熱回収水循環経路
L2 補助冷却水循環経路
L3 予熱水循環経路
L10 熱源温水循環経路
L30 チラー冷却水循環経路
LB1 バイパス配管
M1~M3 動作モード
P1,P2,P10,P30,P31 循環ポンプ
P11 ポンプ
PT1,PT2,PT4 合流点
PT3,PT5 分岐点
S 温度センサ
T1 熱回収水温度
V1 切替弁
W 熱処理対象
図1
図2
図3
図4
図5