(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174611
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】記録装置、記録方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 209
B41J2/01 451
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092523
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】安谷 純
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB27
2C056EB36
2C056EC37
2C056EC77
2C056FA13
(57)【要約】
【課題】記録媒体上に記録されたテストチャートが分割して読み取られた場合であっても、適切に記録位置調整を行うこと。
【解決手段】プリントコントローラは、第1の読み取り画像と第2の読み取り画像の各記録素子基板に対応するパッチの代表位置を、各読み取り画像の重複領域に位置する原点からの差分位置情報に変換する。プリントコントローラは、第2の読み取り画像の差分位置情報と伸縮率Kとに基づき、第2の読み取り画像の差分位置情報を伸縮率が1となるように変換する。伸縮率が1となるように変換するとは、第2の読み取り画像における特定のパターン間の距離を第1の読み取り画像の対応する同じ特定のパターン間の距離と等しくなるように変換することを意味する。プリントコントローラは、第1の読み取り画像について、記録素子基板間のずれ量を算出するための基準線の傾きを算出する。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材を付与する複数の記録素子基板を含む記録手段を1つ又は複数有する記録装置であって、
前記記録手段により記録媒体に印刷された前記記録素子基板それぞれに対応する複数のパッチを含むテストチャートを複数の光学センサで分割して読み取り装置に読み取らせる読み取り制御手段と、
前記読み取り装置により前記記録媒体に印刷されたテストチャートを読み取らせて得られた複数の読み取り画像に基づき、当該複数の読み取り画像のうちの2つの読み取り画像からなる読み取り画像対について、同じ記録手段に含まれる記録素子基板に対応するパッチの伸縮率を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出した前記伸縮率と、前記複数の読み取り画像における前記パッチの位置情報とに基づき、前記記録手段から付与される記録材の付着位置を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記同じ記録手段に含まれる記録素子基板に対応するパッチは、前記読み取り画像対において前記テストチャートの同じ部分を重複して読み取った重複領域に含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記同じ記録手段に含まれる記録素子基板に対応するパッチは、同じ記録手段に含まれる同じ記録素子基板に対応するパッチである、
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記読み取り画像対の一方における前記パッチの位置情報を前記伸縮率が1になるよう変換し、前記重複領域における前記パッチの位置情報に基づき、前記読み取り画像対の前記パッチの位置情報を結合する、
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記結合されたパッチの位置情報に基づき前記記録材の付着位置のずれ量を算出し、当該ずれ量に基づき前記記録手段から付与される記録材の付着位置を調整する、
ことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記ずれ量は、前記結合されたパッチの位置情報における2つの所定の記録素子基板に対応するパッチの位置を結んだ基準線に基づき算出するずれ量を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記基準線は、同じ記録手段に含まれる異なる2つの記録素子基板に対応するパッチの位置を結んだ線である、
ことを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記基準線を構成する2つのパッチの位置は、共通する1つの座標系の座標点で表される、
ことを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項9】
前記基準線を構成する2つのパッチの位置は、前記重複領域における所定のパッチの位置からの距離を示す差分として表される、
ことを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項10】
前記調整手段は、前記記録手段を複数有する場合、前記基準線の傾きが当該複数の記録手段の傾きの平均と同じになるよう前記基準線を補正する、
ことを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項11】
前記記録素子基板は、インクを吐出するノズルが配列された記録素子基板である、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項12】
前記読み取り画像対は、前記読み取り装置において隣接する2つの前記光学センサにより得られた2つの読み取り画像からなる、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項13】
記録材を付与する複数の記録素子基板を含む記録手段を1つ又は複数有する記録方法であって、
前記記録手段により記録媒体に印刷された前記記録素子基板それぞれに対応する複数のパッチを含むテストチャートを複数の光学センサで分割して読み取り装置に読み取らせるステップと、
前記読み取り装置により前記記録媒体に印刷されたテストチャートを読み取らせて得られた複数の読み取り画像に基づき、当該複数の読み取り画像のうちの2つの読み取り画像からなる読み取り画像対について、同じ記録手段に含まれる記録素子基板に対応するパッチの伸縮率を算出するステップと、
前記算出するステップにより算出した前記伸縮率と、前記複数の読み取り画像における前記パッチの位置情報とに基づき、前記記録手段から付与される記録材の付着位置を調整するステップと、
を備えることを特徴とする記録方法。
【請求項14】
コンピュータに、請求項13に記載の記録方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置における記録位置を調整するための制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体の幅に相当する記録幅を持つ、いわゆるフルライン型の記録ヘッドを用いる記録装置が知られており、このような記録装置の1つにインクジェット記録装置がある。フルライン型のインクジェット記録装置における記録ヘッドは、複数のノズル列を含む記録素子基板が複数配置され、記録媒体に対して1回相対移動させることにより、記録媒体のほぼ全面に画像を記録できる。フルライン型の記録ヘッドが設けられた記録装置においては、記録ヘッドの取り付け位置や、複数の記録ヘッド間における相対的な取り付け位置に誤差が生じることがある。この誤差は、記録媒体上での記録材の付着位置(インクジェット記録装置ではインク着弾位置)にずれを生じさせ、記録品位の低下要因となる。以下、このような、記録材の付着位置のずれを補正する処理を「記録位置調整」と呼称する。
【0003】
記録位置調整では、記録媒体上に記録されたテストチャートを、イメージセンサを備えたスキャナ装置を用いて読み取り、読み取った画像からテストチャートに含まれるノズル列、記録素子基板に対応するパッチの位置をまず検出する。そして、それらパターン間の相対的な位置を求め、この相対位置に基づいて記録位置の調整を行う。パッチの位置検出精度を高める方法として、特許文献1には、記録ヘッドの両端部に近い2つの記録素子基板の推定位置を結んだ基準線と各記録素子基板との距離から求めた記録素子基板間のずれ量に基づき記録位置調整を行う方法が開示されている。
【0004】
フルライン型の記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置で大判印刷を行う場合、記録ヘッドは記録媒体に合せて大きくすることになる。記録ヘッドが大きくなると記録位置調整用のテストチャートも大きくなるため、スキャナ装置はテストチャートの大きさに対応した読み取りサイズが必要になる。読み取りサイズの大きいスキャナ装置には、複数のイメージセンサを組み合わせたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術において複数のイメージセンサを組み合わせたスキャナ装置を用いると、基準線を求めるための記録ヘッドの両端部に近い2つの記録素子基板の位置は、読み取り条件が異なる2つの読み取り画像に基づき推定することになる。その結果、基準線を求めるための2つ記録素子基板の相対的な位置の推定精度が低下して基準線の精度も低下するため、適切に記録位置調整ができなくなる。
【0007】
そこで本発明は、記録媒体上に記録されたテストチャートが分割して読み取られた場合であっても、適切に記録位置調整を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、記録材を付与する複数の記録素子基板を含む記録手段を1つ又は複数有する記録装置であって、前記記録手段により記録媒体に印刷された前記記録素子基板それぞれに対応する複数のパッチを含むテストチャートを複数の光学センサで分割して読み取り装置に読み取らせる読み取り制御手段と、前記読み取り装置により前記記録媒体に印刷されたテストチャートを読み取らせて得られた複数の読み取り画像に基づき、当該複数の読み取り画像のうちの2つの読み取り画像からなる読み取り画像対について、同じ記録手段に含まれる記録素子基板に対応するパッチの伸縮率を算出する算出手段と、前記算出手段により算出した前記伸縮率と、前記複数の読み取り画像における前記パッチの位置情報とに基づき、前記記録手段から付与される記録材の付着位置を調整する調整手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録媒体上に記録されたテストチャートが分割して読み取られた場合であっても、適切に記録位置調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】スキャナ装置がテストチャートを読み取る際の、スキャナ装置上方側からの俯瞰図。
【
図3】インクジェット記録装置を制御するためのハードウェア構成を示すブロック図。
【
図4】ノズル列位置ずれ補正用のパッチを説明するための図。
【
図5】パターンマッチング用パターンの例を示す図。
【
図6】スキャナ装置とテストチャートと記録ヘッドとの位置関係を示す図。
【
図7】ヘッド位置ずれ補正用のテストチャートを説明するための図。
【
図8】ノズル列間のずれ量を算出する方法を説明するための図。
【
図9】記録素子基板間のずれ量を算出する方法を説明するための図。
【
図10】記録ヘッドの傾き量を算出する方法を説明するための図。
【
図11】記録ヘッド間のずれ量を算出する方法を説明するための図。
【
図12】記録素子基板に対応したパッチの検知マークの検出を説明するための図。
【
図13】スキャナ装置の2つのセンサから取得した2つの読み取り画像例を示す図。
【
図14】本実施形態に係るずれ量算出処理を説明するためのフローチャート。
【
図15】本実施形態に係るずれ量算出処理1を説明するためのフローチャート。
【
図16】読み取り画像間の伸縮率を算出するための手順を説明するための図。
【
図17】本実施形態に係るずれ量算出処理2を説明するためのフローチャート。
【
図18】本実施形態に係る一方の読み取り画像の各記録素子基板の差分位置情報を対応する伸縮率で補正する手順を説明するための図。
【
図19】本実施形態に係る基準線を得る手順を説明するための図。
【
図20】本実施形態に係る基準線の傾きを補正し、第1の読み取り画像上での第2の読み取り画像の各記録素子基板の座標を算出する手順を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して本実施形態について説明する。尚、この実施の形態に記載されている構成要素は、本発明の例としての形態を示すものであり、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0012】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置100を概略的に示した正面図である。インクジェット記録装置100は、本実施形態で使用する連続した印刷が可能な連続紙(以下ロール紙)110に印刷する装置である。本実施例では、インクジェット記録装置100は、ロール紙110を搬送する給紙装置103、印刷を行うメインユニット111、ロール紙110の巻き取りを行う排紙装置104、操作パネル101で構成される。
【0013】
給紙装置103は、ロール紙110をメインユニット111に供給する装置である。給紙装置103は、回転軸112を中心にロール紙110の紙管を回転させてその紙管に巻かれているロール紙110を、複数ローラ(搬送ローラ、給紙ローラなど)を経由して、一定の速度でインクジェット記録装置100に向けて搬送する。
【0014】
排紙装置104は、メインユニット111から搬送されてきたロール紙110を、紙管を中心としてロール状に巻き取る装置である。排紙装置104は、例えば、図に示すように、ロール紙110が回転軸113の紙管に巻かれてロール状に保持される。排紙装置104は、回転軸113を中心に回転させて紙管に搬送されてきたロール紙110を、複数のローラー(例えば、搬送ローラー、排紙ローラー)を経由して、一定の速度で回転軸113にロール紙の成果物として巻き取る装置である。印刷開始前に、給紙装置103から、排紙装置104にロール紙110を通す。給紙装置103にロール紙110をセットして、ロール紙110の先端を斜行補正装置109の上に通す。次に、メインユニット111のインクジェット記録方式の記録ヘッド102の下を通して、乾燥装置105の下を通して、冷却装置107、108の上を通す。スキャナ装置106を通して、排紙装置104で巻き取る。
【0015】
スキャナ装置106では、光学センサを利用してロール紙上に印刷された印刷パターン等を光学的に読み取る。ロール紙110をインクジェット記録装置100内に通したあと、インクジェット記録装置100の制御用PC114に印刷ジョブを投入する。印刷ジョブ投入後、操作パネル101で印刷スタートボタンを押下して印刷を開始する。
【0016】
図2は、スキャナ装置106がテストチャートを読み取る際の、スキャナ装置上方側からの俯瞰図である。ロール紙110である記録媒体Pは、搬送方向201へ搬送され、スキャナ装置106の近傍で搬送速度を調整し、光学センサであるセンサ202A及び202Bを利用して撮像領域203の撮像を行う。センサ202A及びセンサ202Bは、スキャナ装置106の記録媒体Pと対面する側面に一部の撮像領域が重なるように千鳥構成で配置されている。こうした千鳥配置のため、センサ202Aとセンサ202Bは、搬送方向201に沿って互いに離間して配置されている。また、センサ202A及びセンサ202Bは、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(不図示)を含む。スキャナ装置106により得られた撮像領域203の読み取り画像は、各種の補正値の算出に利用される。補正値の算出方法については後述する。尚、スキャナ装置106は、メインユニット111内に予め設置されている構成でも、オプション装着可能な構成であってもよい。
【0017】
図3は、インクジェット記録装置100を制御するためのハードウェア構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリントエンジンを統括するプリントエンジンユニット400と、インクジェット記録装置全体を統括するコントローラユニット300によって構成されている。プリントコントローラ402は、コントローラユニット300のメインコントローラ301の指示に従ってプリントエンジンユニット400の各種機構を制御する。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0018】
コントローラユニット300において、CPUにより構成されるメインコントローラ301は、ROM306に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM305をワークエリアとしながらインクジェット記録装置100全体を制御する。例えば、ホストI/F302を介してホスト装置500から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ301の指示に従って、画像処理部307が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ301はプリントエンジンI/F304を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット400へ送信する。
【0019】
尚、インクジェット記録装置100は、プリントエンジンユニット400へ送信する画像データを、インクジェット記録装置100に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から取得しても良い。操作パネル303は、ユーザが記録装置に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル303を介してプリントや紙送りの動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置の情報を認識したりすることができる。操作パネル303はタッチパネルとなっており、マウスやキーボードを接続して入力することも可能である。
【0020】
プリントエンジンユニット400において、CPUにより構成されるプリントコントローラ402は、ROM403に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、インクジェット記録装置100が備える各種機構を制御する。このときプリントコントローラ402は、RAM404をワークエリアとして用いる。コントローラI/F401を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ402は、これを一旦RAM404に保存する。記録ヘッド102が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ402は画像処理コントローラ405に対してRAM404に保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ402は、ヘッドI/F406を介して記録ヘッド102に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ402は、搬送制御部407を介して
図1に示す給紙装置103、排紙装置104を駆動して、記録媒体であるロール紙110を搬送させる。また、プリントコントローラ402は、搬送制御部407を介して乾燥装置105及び、冷却装置107、108のヒータとファンを駆動して搬送した用紙を乾燥、冷却させる。さらに、搬送制御部407は搬送ローラに備えられたエンコーダから、搬送量を検出できる。プリントコントローラ402の指示に従って、ロール紙の搬送動作に連動して記録ヘッド102による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0021】
記録ヘッド102は上下(ロール紙110の記録面に対して垂直方向)に動作できる構成としており、印刷する場合には下降しているが、メンテナンス時などは上に上昇させる。ヘッドキャリッジ制御部408は、インクジェット記録装置100のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド102の上下位置を変更させる。インク供給制御部409は、記録ヘッド102へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニットを制御する。メンテナンス制御部410は、記録ヘッド102に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニットを上昇させたヘッド下に移動させ、キャップやワイピング等のヘッドのメンテナンスの動作を制御する。
【0022】
スキャナ制御部411は、スキャナ装置106の制御を行う。記録動作が実行される画像データが各種補正値算出用のパターンであるテストチャートの場合、プリントコントローラ402は、搬送速度の調整を搬送制御部407に指示する。さらに、ロール紙に記録されたテストチャートの読み取りタイミングをプリントコントローラ402から指示されたスキャナ制御部411は、スキャナ装置106で撮像を実施して得られた読み取り画像をRAM404に保存させる。保存された読み取り画像を用いた各種補正値算出処理は、プリントコントローラ402で実行される。得られた補正値は、プリントコントローラ402から画像処理コントローラ405に渡すことで、記録動作に反映される。尚、保存された読み取り画像はコントローラユニット300を経由してホスト装置500に転送し、各種補正値算出処理を実施して、得られた補正値をプリントコントローラ402に出力する構成であってもよい。
【0023】
ここからは、各種補正値のひとつである、記録ヘッドの位置ずれ補正方法についての詳細を記述する。
【0024】
(記録ヘッドの位置ずれ補正方法)
図4は、記録ヘッド102を構成する記録素子基板1002の1つに対応したパッチ1007、1016とノズルの対応について示す図である。記録ヘッド102は複数の記録素子基板1002で構成されている。記録素子基板1002は、複数のノズルから構成されており、各ノズルは記録素子を駆動することでインクを吐出できるように構成されている。インクを吐出するための記録素子は、ヒータであっても、ピエゾ素子であってもよい。本実施形態において、記録素子基板は、平行四辺形の形状にて複数のノズル列が配置された例を示す。複数のノズルが配列する方向であるノズル配列方向1001は、搬送方向201と交差し、記録媒体の幅方向に対応する。記録素子基板1002の拡大図である1006において、記録素子基板1002は複数のノズル列1005を備え、1つのノズル列1005は、複数のノズルから構成される。1つの記録素子基板1002に対するテストチャートは、記録素子基板1002が有する各ノズル列1005の破線1003、1004で挟まれる範囲内のノズルを使用して記録される。この範囲は、記録素子基板1002の構成によって変化してよい。
【0025】
本実施例において、記録ヘッドは17個の記録素子基板1002から構成され、各記録素子基板1002は、16列のノズル列1005から構成される例を示す。また、各ノズル列は512個のノズルから構成される。尚、記録ヘッドを構成する記録素子基板1002の数や、記録素子基板1002を構成するノズル列1005の数、各ノズル列1005を構成するノズル数はこれに限定されない。
【0026】
便宜上、ノズル配列方向1001の左から数えてn番目(n≧0)の記録素子基板1002をCn、搬送方向201の下流側から数えてn番目(n≧0)のノズル列1005をRnと呼称する。例えば、記録素子基板1031はノズル配列方向1001の左端に位置するためC0、記録素子基板1032は右端に位置するためC16である。また、ノズル列1005は搬送方向201の最上流側に位置するためR15、最下流側に位置するノズル列1033はR0である。ノズル列1033は、ノズル1034を左端ノズルとし、右端ノズルのノズル1035まで512個のノズル(不図示)で構成される。他のノズル列も同様に512個のノズルで構成されている。
【0027】
パッチ1007は、1つの記録素子基板1002に対応するパッチの1つである。検知マーク1019、アライメントマーク1020、およびパターンマッチング用パターン1008を含むように構成される。
【0028】
パッチ1007に含まれるパターンマッチング用パターン1008は、複数のノズル列それぞれに対応して設けられる。ここでは、パターンマッチング用パターン1008はそれぞれ別のノズル列1005を使用して記録される。つまり、16のノズル列1005に対して、0~15のパターンマッチング用パターン1008が設けられる。レイアウト1012は、ノズル列1005別の各パターンマッチング用パターン1008の配置を示す。各パターンマッチング用パターン1008に対応する矩形1010には、その位置にパターンマッチング用パターン1008を記録するノズル列1005を示す数値が記載されている。例えば、R0のノズル列1005で記録されるパターンマッチング用パターン1008に対応する矩形1010には、「0」が記載されている。このように、矩形内に記載された数字は、その矩形に対応するパターンマッチング用パターン1008を記録するノズル列1005を示すRnの数値nである。R0のノズル列1005で記録されたパターンマッチング用パターン1008を基準として、他のノズル列1005で記録された各パターンマッチング用パターン1008との相対位置から位置ずれを算出する。例外として、矩形1011に対応するパターンマッチング用パターンが設けられる。これは、記録素子基板1002がCnとすると、その右隣りの記録素子基板1002であるCn+1に含まれるノズルのうち、R12のノズル列1005で記録されるパターンマッチング用パターン1008である。尚、矩形1011に対応するパターンマッチング用パターン1008を記録する、隣接する記録素子基板1002のノズル列1005は、R12に限定するものではない。矩形1011に対応するパターンマッチング用パターン1008を記録するノズル列1005は、記録素子基板1002を構成するノズル列1005の数や、記録素子基板1002の形状などによって変化してよい。
【0029】
また、黒色で表現されている領域は、対応するインクで記録した領域である。また、白色で表現されている領域は、記録媒体の下地色であり、インクで記録されていない領域である。
【0030】
各パッチ1007におけるノズル列1005毎のパターンマッチング用パターン1008から、そのパッチ1007を記録した記録素子基板1002における製造誤差によるノズル列1005の位置ずれを算出する。詳細は
図8を用いて後述する。尚、矩形1011に対応するパターンマッチング用パターンは、他のパターンマッチング用パターン1008とは異なる記録素子基板1002で記録されたものであり、記録素子基板1002毎のノズル列1005の位置ずれを算出するためには用いない。
【0031】
記録素子基板1002間の位置ずれ、および記録ヘッド102の傾きもパッチ1007を用いて算出する。同一記録ヘッド102内の複数の記録素子基板1002間の位置ずれと、記録ヘッド102の傾きとは、左端より1つ内側のパッチ1007の代表位置と、右端より1つ内側のパッチ1007の代表位置とを結んだ線分を基準として算出される。詳細は
図9、10を用いて後述する。
【0032】
尚、本実施形態に係る装置では、記録媒体1201のサイズが可変である。そのため、記録媒体1201の左端または右端において、パッチ1007の一部が欠けた状態で記録されることがあり得る。このようなパッチ1007の一部が欠けている場合に、パッチ1007が検知マーク1019以上の長さにて記録されている場合は、左端は矩形1010に対応するパターンマッチング用パターン1008を算出用のパターンとして選択する。右端は矩形1011に対応するパターンマッチング用パターン1008を算出用のパターンとして選択する。
【0033】
記録ヘッド102によっては、記録素子基板1002毎のパッチとして、パッチ1007の他に、パッチ1016が記録されることになることがある。パッチ1016は、検知マーク1023、アライメントマーク1024、およびパターンマッチング用パターン1017を含むように構成される。パターンマッチング用パターン1017はそれぞれ、複数のノズル列1005により記録される。レイアウト1018のPは複数のノズル列1005で記録することを表している。このパッチ1016を用いて、そのパッチ1016を記録した記録ヘッド102の傾きを算出する。
【0034】
記録素子基板1002毎のパッチ1007、1016は、記録媒体への記録タイミングを、ノズル列1005の製造誤差と記録素子基板1002の製造誤差の交差を加味した量だけずらし、誤差によるテストチャートの重なりが生じないように記録されている。
【0035】
検知マーク1019、1023は、画像解析処理により、読み取り画像における記録素子基板1002に対応したパッチ1007、1016を検出するために用いられる。各検知マーク1019、1023は、矩形領域の形状にて記録されるパターンである。
【0036】
本実施形態では、各検知マーク1019、1023は、複数のノズル列1005による打滴によって記録される。複数のノズル列1005を使用して記録することで、特定のノズル列1005に不吐ノズルが存在する場合でも、他のノズル列1005のノズルによって打滴されるため、不吐ノズルによる検知パターンの欠損が生じ難くなる。これによって、画像解析処理において、安定して検知マーク1019、1023を検出することができる。
【0037】
アライメントマーク1020、1024は、画像解析処理により、パターンマッチング用パターン1008、1017の解析領域の基準位置を算出するために用いられる。各アライメントマーク1020、1024は、矩形領域の形状にて記録される。各アライメントマーク1020、1024は、各ノズル列1005に対応したパターンマッチング用パターン1008、1017ごとに、複数列のノズル列1005の打滴によって記録される。
【0038】
パターンマッチング用パターン1008、1017は、画像解析処理により、記録ヘッド102の位置ずれを検出するためにも用いられるが、記録ヘッド102のインク色や算出するずれ量の種類に応じて、パッチ1007、1016が使い分けられる。
【0039】
図5(a)はパターンマッチング用パターン1008、
図5(b)はパターンマッチング用パターン1017の詳細レイアウトを示す図である。距離1101はパターンマッチング用パターン1008の縦方向の画素数に対応し、距離1102はパターンマッチング用パターン1008の横方向の画素数に対応する。距離1103はパターンマッチング用パターン1017の縦方向の画素数に対応し、距離1104はパターンマッチング用パターン1017の横方向の画素数に対応する。
【0040】
本実施形態において、パターンマッチング用パターン1008における距離1101の方向は搬送方向201と平行方向であり、距離1102の方向はノズル配列方向1001と平行であり、どちらも1200DPI単位で82画素に相当する。また、パターンマッチング用パターン1017における距離1103の方向は搬送方向201と平行方向であり、距離1104の方向はノズル配列方向1001と平行であり、どちらも1200DPI単位で210画素に相当する。尚、各パターンマッチング用パターンを構成する画素数は上記に限定するものではなく、他の画素数であってもよい。
【0041】
図6は、本実施形態に係るノズル列間、記録素子基板間、および記録ヘッド間のずれ量を算出するためのテストチャートを説明するための図である。この図では、記録媒体1201にロール紙を用いて記録ヘッド102によりテストチャート1202が記録されている。テストチャート1202のうち、テストチャート1206~1213は、ノズル列1005間、記録素子基板1002間のずれ量、および記録ヘッド102の傾き量を算出するためテストチャートである。テストチャート1214は、記録ヘッド102間のずれ量を算出するためのテストチャートである。
図4で示したように、ノズル配列方向1001は、記録ヘッド102のノズル配列方向を示している。
【0042】
図1に示すように、インクジェット記録装置100には、複数の記録ヘッド102が備えられる。各記録ヘッド102は、記録媒体1201の搬送方向上流から、Pr(プライマー液)、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、O(オレンジ)、V(バイオレット)、G(グリーン)の8色に対応しているものとする。記録ヘッド102の色順は変化してもよいし、他の色に対応した記録ヘッドが増えたり、置き換えたりしてもよい。
【0043】
スキャナ装置106は、記録ヘッド102に対して、記録媒体1201の搬送方向の下流側に配置する。スキャナ装置106は、記録ヘッド102の位置ずれ量を検出するために、記録媒体1201に記録されたテストチャート1202を読み取る。
【0044】
ヘッド位置ずれの種類について説明する。いずれも、記録ヘッド102の記録素子基板1002やノズルの造形誤差、もしくは、記録ヘッド102の設置誤差等に起因する。ずれの種類として、記録素子基板1002毎のノズル列1005間の列間ずれ、記録ヘッド102毎の記録素子基板1002間の位置ずれ、記録ヘッド102間の色間ずれ等がある。このようなずれがある場合、インクの打滴位置が理想位置からずれるため、記録画像の品位が低下する。ヘッド位置ずれ補正は、記録素子基板1002のインク吐出タイミング、または、吐出を行うノズルを変化させることで、インクの打滴位置を補正する機能である。
【0045】
本実施形態では、ノズル配列方向1001と直交方向(搬送方向201)のずれについては、記録ヘッド102を構成する記録素子基板1002それぞれの吐出タイミングを変化させることにより位置ずれを補正する。ノズル配列方向1001のずれについては、吐出データを変化させることによって位置ずれを補正する。記録ヘッド102の傾きについては、吐出タイミングの変化と吐出データの変化の両方を組み合わせることで位置ずれを補正する。
【0046】
図6に示すテストチャート1202は、記録ヘッド102のヘッド位置ずれ補正をするためのテストチャートである。テストチャート1206~1214は8ヘッド分のテストチャートであり、各テストチャートは対応する記録ヘッド102それぞれの位置ずれ量を検出するために用いられる。これらのテストチャート1206~1214を用いて、記録素子基板1002毎の各ノズル列1005間のずれ量と、記録ヘッド102毎の記録素子基板1002間のずれ量と、記録ヘッド102の傾き量とを算出する。本実施形態では、テストチャート1206~1213はそれぞれ、O、G、V、K、C、M、Y、Prの記録ヘッド102の1つに対応するテストチャートである。テストチャート1202に含まれる記録ヘッド102のテストチャートは、8ヘッド分から増減してもよいし、テストチャートの順番が変わってもよい。したがって、テストチャートの数は、テストを行う対象の記録ヘッド102の数に応じて変動してよい。また、テストチャート1214は、記録ヘッド102間の色間ずれ量を算出するためのテストチャートであって、全ての記録ヘッド102を用いて記録される。テストチャート1214については、
図7を用いて後述する。
【0047】
本実施形態において、テストチャート1215は、インク色Kに対応するテストチャート1209の一部を拡大した図である。テストチャート1215において、黒色で表現されている領域は、対応するインクで記録した領域である。また、白色で表現されている領域は、記録媒体1201の下地色であり、インクで記録されていない領域である。また、記録ヘッド102を構成する記録素子基板1002ごとに、記録素子基板1002に対応したパッチ1007が、ノズル配列方向1001と平行して並ぶように直線的に記録される。
【0048】
本実施形態において、インク色O、G、V、C,M,Yに対応するテストチャート1206~1208、1210~1212それぞれも、テストチャート1209と同等の構成を有する。
【0049】
本実施形態において、テストチャート1216は、プライマー液に対応するテストチャート1211の一部を拡大した図である。テストチャート1216は、記録素子基板1002ごとに、
図4で示したパッチ1016がノズル配列方向1001と平行して並ぶように直線的に記録されるように構成されている。
【0050】
尚、
図6に示す例に限定するものではなく、記録ヘッド102の種類による、各テストチャートとインク色の対応関係は、変更してもよい。
【0051】
図7は、記録ヘッド102間の色間ずれ補正計算を行うためのテストチャート1214と記録素子基板1002の対応について示す図である。各色のテストチャートについては、一部省略している。テストチャート1301は、記録ヘッド102同士の位置誤差を算出するためのテストチャート1214である。テストチャート1301では、レイアウト1302に示す、各インク色の記録ヘッド102でパターンマッチング用パターン1008、1017が記録される。各記録ヘッド102において、テストチャート1301の記録に使用する記録素子基板1002が1つずつ選択される。ここでは、各記録ヘッド102でテストチャート1301を記録するために使用する記録素子基板1002は、記録素子基板1303とノズル配列方向1001の位置が同じ記録素子基板1002とする。すなわち、どの記録ヘッド102を用いる場合も、記録素子基板1303とノズル配列方向1001の位置が同じ記録素子基板1002を使って、パターンマッチング用パターン1008を記録する。テストチャート1301は、黒色で表現されている箇所が、対応のインク色で記録した箇所であり、白色で表現されている箇所が、記録媒体1201の紙白(下地)の箇所を示す。
【0052】
本実施形態において、K、C、M、Y、O、G、Vの有色インクについては、パターンマッチング用パターン1008を使用する。レイアウト1302に示すように、インク色Kに対応する記録ヘッド102を基準ヘッドとして両端のパターンマッチング用パターン1008を記録し、インク色K以外の他の各インクに対応する記録ヘッド102の位置ずれを算出する。レイアウト1310においてはインク色Kに対応する記録ヘッド102を基準ヘッドとしたC、M、Yの各インクに対応する記録ヘッド102の位置ずれ量を算出できる。レイアウト1311においてはインク色Kに対応する記録ヘッド102を基準としたO、G、Vの各インクに対応する記録ヘッド102の位置ずれ量が算出できる。レイアウト1310及びレイアウト1311をそれぞれ複数記録することで、各々のインクに対応する記録ヘッド102について複数回の位置ずれ算出が可能となる。複数回の位置ずれ算出結果の平均値を各記録ヘッド102の位置ずれとすることで、記録タイミングによる位置ずれの誤差の影響が小さくなり、より正確な位置ずれが得られる。レイアウト1310及びレイアウト1311の繰り返しの記録回数は、求める位置ずれ算出の精度に合わせて決定すれば良く、1回でも良い。レイアウト1310及びレイアウト1311の繰り返しについては図中では省略している。
【0053】
本実施形態において、プライマー液に対応する記録ヘッド102の位置ずれについては、パターンマッチング用パターン1017を使用して算出する。レイアウト1302に示すように、インク色Kに対応する記録ヘッド102を基準ヘッドとして記録し、プライマー液に対応する記録ヘッド102の位置ずれを算出する。レイアウト1312を複数記録することで、有色インクと同様にプライマー液に対応する記録ヘッド102について複数回の位置ずれ算出が可能となる。レイアウト1312の繰り返しの記録回数は、求める位置ずれ算出の精度に合わせて決定すれば良く、1回でも良い。レイアウト1312の繰り返しについては図中では省略している。
【0054】
基準ヘッドのパターンマッチング用パターンは、ずれを算出する対象の記録ヘッド102のパターンマッチング用パターンと同様のパターンを使用する。また、色に対応するパターンマッチング用パターンは、
図5や
図7に示すものに限定するものではなく、異なるパターンが用いられてもよい。
【0055】
記録ヘッド102間の色間ずれを算出するために用いられるテストチャート1301は、記録媒体1201への記録タイミングが、記録ヘッド102の色間ずれの最大ずれ量を超えるように、記録している。このように各記録ヘッド102の記録タイミングをずらすことで、テストチャートの重なりが生じないようにしている。
【0056】
(ノズル列間のずれ量算出)
図8は、ノズル列間のずれ量の算出方法を示す図である。上述したように、本実施形態において、1つの記録素子基板1002内に16列のノズル列1005が配置されている。ここでは、搬送方向201の下流側から数えて最初のノズル列1005をR0、最後のノズル列1005をR15としている。
【0057】
レイアウト1012に従って記録されたパッチ1007の読み取り画像を用いた、ノズル列1005間のずれ量の算出方法を説明する。レイアウト1012において、数値n(n≧0)を内包する矩形は、その位置に記録されたパターンマッチング用パターン1008を記録したノズル列1005を示している。例えば、矩形1405に対応するパターンマッチング用パターン1008は、R0のノズル列1005を用いて記録していることを示している。以降、Rnのノズル列1005を用いたパターンマッチング用パターンおよびそのパターンの記録位置を示す矩形を「Rnパターン」と呼称する。
【0058】
図8(a)に示すように、レイアウト1012を、4つの領域1401~1404に分ける。領域1401では、R0パターン1405、1406を基準とする。同様に、領域1402~1404それぞれにおいても、R0パターン1407及び1408、R0パターン1409及び1410、R0パターン1411及び1412を、それぞれ基準とする。領域1401~1404それぞれで、2つのR0パターンを基準として、他のノズル列1005を用いたパターンマッチング用パターン(R1パターン~R15パターン)とのずれ量を算出する。
【0059】
図8(b)を用いて、一例として、R0のノズル列1005とR9のノズル列1005のずれ量を算出する方法について述べる。R0パターン1414は領域1401のR0パターン1405に対応し、R0パターン1415は領域1401のR0パターン1406に対応し、それぞれは、基準となるパターンマッチング用パターンである。R9パターン1416は、領域1401に記録されたR9パターンである。R0のノズル列1005とR9のノズル列1005で各パターンマッチング用パターンを記録した場合、吐出されたインクの着弾位置ずれがない場合は、R0パターン1414とR0パターン1415を結ぶ直線上にR9パターンが記録される。着弾位置ずれがない理想位置で記録されるR9パターンをR9パターン1418で示す。一方、R9パターンの実際の記録位置をR9パターン1416で示す。
【0060】
R9パターン1416とR9パターン1418との間のずれ量は、R0のノズル列1005に対するR9のノズル列1005の位置ずれ量となる。そのずれ量の横方向成分をずれ量1417とし、縦方向成分をずれ量1419とする。ずれ量1419は、R0パターン1414とR0パターン1415を結ぶ直線に対して、R9パターン1416から引いた垂線の長さである。よって、ずれ量1419は、R0パターン1414、R0パターン1415、およびR9パターン1416の位置から算出可能である。同様に、ずれ量1417も、これらの位置から求めることができる。
【0061】
以上に述べた方法を適用することで、R0パターンを基準として、R1パターン~R15パターンのずれ量を算出し、R0のノズル列1005に対するR1~R15のノズル列1005の位置ずれ量を求めることができる。
【0062】
(記録素子基板間のずれ量算出)
図9は、記録素子基板1002間のずれ量の算出方法を説明するための図である。本実施形態において、ノズル配列方向1001の
図9の紙面上の左側から数えて最初の記録素子基板1002がC0、最後の記録素子基板1002がC16とする。パッチ1007のレイアウト1012に従って、記録されたパッチ1007の読み取り画像を用いた、記録素子基板1002間のずれ量の算出方法を、図を用いて説明する。
【0063】
図9(a)に示すパッチ1501~1503はそれぞれ、同一記録ヘッド102内の3つの異なる記録素子基板1002を用いて、
図4に示すレイアウト1012に従って記録されたパッチ1007を模式的に示したものである。記録媒体1201のサイズや搬送誤差によっては、記録媒体1201上に記録を行わない記録素子基板1002も存在する。以降、記録ヘッド102毎の複数の記録素子基板1002のいずれであるかを示すCn(n≧0)を用いて、記録媒体1201上に記録された記録素子基板1002別のパッチを、「Cnパッチ」と呼称する。
【0064】
パッチ1501は、1つの記録ヘッド102により記録された複数のパッチ1007のうち、最左端から1つ右側のC1の記録素子基板1002により記録されたパッチ1007である。記録媒体1201のサイズ等によって、パッチ1501を記録する記録素子基板1002は変わる。本実施形態において、パッチ1501をC1パッチとする。パッチ1502は、C1パッチを記録した記録ヘッド102により記録されたパッチ1007のうち、最右端から1つ左側のC15の記録素子基板1002により記録されたパッチ1007である。本実施形態においては、パッチ1502をC15パッチとする。パッチ1503は、C1パッチ、C15パッチを記録した記録ヘッド102により記録されたパッチ1007のうち、記録素子基板1002間のずれ量算出対象の記録素子基板1002で記録されたパッチ1007である。ここでは例として、記録ヘッド102内の中央に位置するC8の記録素子基板1002を対象として説明する。
【0065】
図9(b)に示す座標点1507は、パッチ1501(C1パッチ)のうちノズル配列方向1001方向に並んだパターンマッチング用パターン1008列における2つのR0パターンを結んだ線分の中点であり、C1パッチの代表位置とする。座標点1508は、パッチ1502(C15パッチ)のうちノズル配列方向1001方向に並んだパターンマッチング用パターン1008列における2つのR0パターンを結んだ線分の中点であり、これがC15パッチの代表位置となる。これらC1パッチおよびC15パッチを記録した記録素子基板1002は、記録素子基板1002間のずれ量を算出するための基準である。座標点1511は、パッチ1503(C8パッチ)のうちノズル配列方向1001方向に並んだパターンマッチング用パターン1008列における2つのR0パターンを結んだ線分の中点であり、これがC8パッチの代表位置となる。ここで、C8の記録素子基板1002が記録素子基板1002間のずれ量の算出対象である。
【0066】
記録素子基板1002間のずれ量算出のため、まずはC1、C8、C15パッチそれぞれの代表位置で各パッチ1007を記録した時に着弾位置ずれがない場合を考える。この場合、座標点1507と座標点1508を結ぶ直線上に、吐出されたインクの着弾位置ずれがない理想位置で記録できた場合のC8パッチの代表位置、すなわち座標点1507と座標点1508を結ぶ線分の中点を座標点1512で示す。一方、読み取り画像上のC8パッチから算出された実際の代表位置を座標点1511で示す。座標点1511と座標点1512との間のずれ量は、座標点1507と座標点1508を結ぶ基準線と平行な成分と垂直な成分とに分けられる。基準線と平行な成分は、基準線と実際のC8パッチの代表位置との間の距離であり、ずれ量1514とする。ずれ量1514は、座標点1511から、基準線に対して引いた垂線の長さである。よって、ずれ量1514は、座標点1507、座標点1508、座標点1511から求めることができる。また、基準線と垂直な成分は、座標点1511を通って基準線に対して直交する線と、座標点1512を通って基準線に対して直交する線との距離であり、ずれ量1513とする。よって、ずれ量1513は、座標点1507、座標点1508、座標点1511、座標点1512から求めることができる。
【0067】
以上に示した方法を適用すれば、2つの記録素子基板1002を基準として、基準となる記録素子基板1002間に挟まれた他の記録素子基板1002のずれ量を、それぞれ求めることができる。ただし、2つの基準(示した例ではC1とC15)よりさらに端部側のそれぞれ左端のC0と右端のC16の記録素子基板1002のずれ量は計算方法が異なる。
【0068】
例えば、基準とする2つの記録素子基板1002の左端側はC1、右端側はC15であるため、左端はC0パッチの代表位置が調整対象の座標点1511となり、右端はC16パッチの代表位置が調整対象の座標点1511となる。右端のC16パッチの代表位置は、他と同様に、ノズル配列方向1001方向に並んだパターンマッチング用パターン1008列における2つのR0パターンを結んだ線分の中点を用いる。一方、左端のC0パッチの代表位置は、右隣りのC1の記録素子基板1002により記録された矩形1011に対応するパターンマッチング用パターンの位置を用いる。これは、端部の記録素子基板1002がレイアウト1012を部分的にしか記録媒体1201に記録できない可能性があるためである。
【0069】
記録媒体1201のノズル列配列方向1001の長さによっては、記録を行う範囲の左端の記録素子基板1002や右端の記録素子基板1002よりも外側にC0やC16の記録素子基板1002が存在してしまう可能性がある。このような場合、C0やC16の記録素子基板1002は、記録媒体1201に記録不可能であるため、C0パッチやC16パッチの完全な形での検知が不可能である。よって、左端側の外側の記録素子基板1002は1つ右隣のずれ量を補正用の値として使用する。同様に、右端側の外側の記録素子基板1002は1つ左隣のずれ量を補正用の値として使用する。
【0070】
(記録ヘッドの傾き量算出)
図10を用いて、レイアウト1012に従って記録されたパッチ1007の読み取り画像を用いた、記録ヘッド102の傾き量の算出方法を説明する。記録ヘッド102の傾き量の算出は、記録素子基板1002間のずれ量を算出するパッチと同様のパッチ1007を使用する。また、記録ヘッド102の傾き補正量とは、全記録ヘッドの平均傾きからのずれ量とし、全記録ヘッドそれぞれについて傾き補正量を計算する。
【0071】
図10(a)に示すパッチ1501、1502は、同一の記録ヘッド102により記録されたC1パッチ、C15パッチである。
図10(b)に示すパッチ1504、パッチ1505は、パッチ1501、パッチ1502を記録した記録ヘッド102とは異なる記録ヘッドであるが、同一の記録ヘッド102により記録されたC1パッチ、C15パッチである。パッチ1504、パッチ1505からも、パッチ1501、パッチ1502と同様に、C1パッチの代表位置である座標点1509、C15パッチの代表位置である座標点1510が得られる。
【0072】
図10(c)は記録ヘッド102の傾き量算出方法を説明するための図である。まず、各記録ヘッド102の傾き量を計算する。座標点1507及び座標点1508は、パッチ1501、パッチ1502を記録した記録ヘッド102Aにおける左右端の1つ内側の基準となる記録素子基板1002により記録されたC1パッチ、C15パッチの代表位置である。角度1516は、座標点1507と座標点1508を結ぶ線分と、記録ヘッド102Aの傾きによる着弾位置ずれのない理想線とからなる角(劣角)を示し、記録ヘッド102Aの傾き量を示す。
【0073】
同様に、記録ヘッド102Bの傾き量を計算する。座標点1509及び座標点1510は、記録ヘッド102Bについて前述の左右端部側の基準となる記録素子基板1002により記録されたC1パッチ、C15パッチの代表位置である。角度1517は、座標点1509と座標点1510を結ぶ線分と、記録ヘッドBの傾きによる着弾位置ずれのない理想線とからなる角(劣角)を示し、記録ヘッド102Bの傾き量を示す。不図示であるが、他の全記録ヘッド102について、同様に傾き量が得られる。
【0074】
最後に、各記録ヘッド102の傾き補正の計算量を計算する。各記録ヘッド102の相対的な傾き量に基づく傾き補正量は以下の式により算出できる。ここでの記録ヘッド102の傾き量は、角度にて示されるものとする。
【0075】
(各記録ヘッド102の傾き補正量)
=(全記録ヘッド102の傾きの平均)-(各記録ヘッド102の傾き)
図10(b)に示す角度1518が全記録ヘッド102の傾きの平均とすると、例えば、記録ヘッド102Aの傾き補正量は、角度1518から角度1516を差し引いた値となる。
【0076】
以上に示した方法を適用すれば、全記録ヘッド102の傾きの平均に対して、各記録ヘッド102の傾き補正量を、それぞれ求めることができる。
【0077】
(記録ヘッド間のずれ量算出)
図11は、記録ヘッド102間のずれ量の算出方法を説明するための図である。本実施形態において、搬送方向201の上流側から数えて最初の記録ヘッド102を、プライマー液を用いる記録ヘッドPrとする。それ以降の記録ヘッド102を、使用する有色インクの色に応じてそれぞれ記録ヘッドK、記録ヘッドC、記録ヘッドM、記録ヘッドY、記録ヘッドO、記録ヘッドV、記録ヘッドGと呼称する。レイアウト1302に従って複数のインク色に対応する記録ヘッド102を用いて記録されたテストチャート1301の読み取り画像を用いた、記録ヘッド102間のずれ量(以後、「色間ずれ」と呼称する)の算出方法を説明する。
【0078】
図11(a)に示すテストチャート1301は、色間ずれ量を算出するために用いられるテストチャート1214である。レイアウト1302に示される所定の色に対応した記録ヘッド102の所定の位置にある記録素子基板1303を使って、テストチャート1301を記録する。ここでの所定の位置にある記録素子基板1303として、本実施形態ではC8を用いる。本実施形態では、パターンマッチング用パターン1601~1606は、基準ヘッドである記録ヘッドKのC8の記録素子基板1303にて記録されたパターンである(以後、Kパターンと呼称する)。それ以外のインク色を示す文字が記載されたパターンはそれぞれ、記録ヘッド102間の位置ずれの算出対象である記録ヘッド102により記録されたパターンである。本実施形態では、これらのパターンは、C、M、Y、O、V、G、Prのパターン(以降、Cパターン等と呼称する)としているが、インク色の数は増減してもよい。本実施形態では、C、M、Y、O、V、Gは、
図5に示すパターンマッチング用パターン1008の構成を用いて記録する。これらの基準となるKパターン1601~1604も同様にパターンマッチング用パターン1008の構成を用いて記録する。一方、Prのパターン(以降、Prパターンと呼称する)は、本実施形態では
図5に示すパターンマッチング用パターン1017の構成を用いて記録する。これらの基準となるKパターン1605、1606もパターンマッチング用パターン1017の構成を用いて記録する。
【0079】
本実施形態では、記録ヘッドK(基準ヘッド)と、K以外の他のインク色の記録ヘッド102との間のずれ量を算出する際に、各記録ヘッド102に対して同様の方法を用いて算出する。ここでは、その例として記録ヘッドKと記録ヘッドV間のずれ量を算出する方法について述べる。
図11(b)に示すKパターン1620は、Kパターン1603に対応し、Kパターン1621はパターン1604に対応する。これらは、基準となる記録ヘッドKのC8で記録されたパターンマッチング用パターンである。Vパターン1622はVパターン1617に対応し、記録ヘッドVのC8の記録素子基板1002で記録されたパターンマッチング用パターンであり、ずれ量の算出対象の記録ヘッド102にて記録されたパターンマッチング用パターンである。
【0080】
記録ヘッドVで記録されたVパターンは、吐出されたインクの着弾位置ずれがない場合は、Kパターン1620とKパターン1621を結ぶ基準線上に記録される。吐出されたインクの着弾位置ずれがない理想位置で記録できた場合のVパターンの位置をVパターン1624で示す。一方、実際のVパターンの位置をVパターン1622で示す。
【0081】
本実施形態では、読み取り画像におけるVパターン1622と理想位置のVパターン1624との間のずれ量は、基準線と垂直な成分と平行な成分とに分けられる。Vパターン1622、1624とのずれ量のうち、基準線と垂直な成分をずれ量1625とする。このずれ量1625は、Vパターン1622から基準線に対して引いた垂線の長さである。よって、ずれ量1625は、Kパターン1620、Kパターン1621、Vパターン1622の位置から求めることができる。Vパターン1622、1624とのずれ量のうち、基準線と平行な成分をずれ量1626とする。このずれ量1626は、Vパターン1622を通って基準線と直交する線と、Vパターン1624を通って基準線と直交する線との距離である。よって、ずれ量1626は、Kパターン1620、Kパターン1621、Vパターン1622、Vパターン1624の位置から求めることができる。本実施形態におけるヘッド位置ずれ補正では、ずれ量1625とずれ量1626についての両方向について補正量の計算を行う。
【0082】
以上に示した方法を適用すれば、基準ヘッドである記録ヘッドKと、K以外の他のインク色の記録ヘッド102との色間ずれ量を、それぞれ求めることができる。
【0083】
(マーク検出処理)
図12は、記録素子基板1002に対応したマーク検出処理を説明するための図である。本実施形態において、ずれ量算出のテストチャート1202の読み取り画像から、各記録素子基板1002に対応したパッチ1007毎の検知マークを検出する処理について説明する。
図12は、
図4に示すパッチ1007に相当する、各記録素子基板1002に対応したパッチを示している。本実施形態において、各記録素子基板1002に対応したパッチは、
図4のパッチ1007、1016の2種類があるが、検出処理はいずれも同様の方法で行われる。また、記録ヘッド102同士の位置誤差を算出するための、
図7に示すテストチャート1301についても検出処理は同様である。ここでは一例として、
図4に示すパッチ1007を用いて説明する。
【0084】
マーク検知処理は、大きく分けて3つのステップがある。第1ステップでは、検知マーク1019を検出する。検知マーク1019の検出位置に基づいて、記録素子基板1002の1つ分のパッチ1007の位置を推定する。第2ステップでは、第1ステップで得られたパッチ1007の推定位置に基づいて、パターンマッチング用パターン1008の位置を推定するアライメントマーク1703を検出する。アライメントマーク1703は、
図4に示すパッチ1007におけるアライメントマーク1020と同様のマークである。このアライメントマーク1703は、各パターンマッチング用パターン1008の近傍に記録されているため、アライメントマーク1703の検出位置から対応するパターンマッチング用パターン1008の位置を推定する。第3ステップでは、第2ステップにおけるパターンマッチング用パターン1008の推定位置に基づいて、パターンマッチングを用いたパターン位置検出を行う。
【0085】
第1ステップにおける、検知マーク1019を検出する処理を説明する。本処理は、スキャナ装置106が読み取り可能な読み取り画像のRGBの3つのチャンネルのうち、検出対象のパターンの記録ヘッド102のインク色で最も濃度が高くなるチャンネルの輝度値を使用する。例えば、濃度が最も高くなるチャンネルが、C(シアン)の場合はRチャンネルであり、M(マゼンタ)の場合はGチャンネルであり、Y(イエロー)の場合はBチャンネルである。尚、K(ブラック)のように、全てのチャンネルで高い濃度となるインク色の場合は、いずれかの任意のチャンネルを指定して使用する。
【0086】
1705は、検知マーク1019の一部を拡大した図である。検知マーク1019は、読み取り画像の所定領域の平均濃度に基づき検出する。検知マーク検出領域1706は、平均濃度を取得する領域である。検知マーク検出領域1706にて取得された平均濃度が所定濃度以上の場合、その領域を検知マーク領域として特定し、その中心位置を検知マーク検出位置1707とする。検知マーク検出領域1706の範囲や閾値として用いられる所定濃度は変更してもよい。
【0087】
続いて、検知マーク1019の左上端位置と右上端位置を検出する。1708は検知マーク1019の左上端部の周辺、1710は右上端部の周辺をそれぞれ拡大した図である。検知マーク検出位置1707から所定濃度以上の領域を走査し、所定濃度以上の領域の左上端部を検知マーク左上端位置1709とする。同様に、その所定濃度以上の領域の右上端部を検知マーク右上端位置1711とする。検知マーク左上端位置1709に基づき決定した位置を起点として、所定領域の濃度重心を計算することでアライメントマーク1703の検出範囲を推定する。検知マーク1019を検出することで、アライメントマーク1703の検出範囲を推定することができる。アライメントマーク1703の検出処理についても、検知マーク1019の検出処理と同様で、所定濃度以上の領域を走査し、領域に対する濃度重心の計算により、アライメントマーク1703の位置を検出する。
【0088】
続いて、パターンマッチング用パターン1008の位置を推定する。領域1704はパターンマッチング用パターン1008の左上端位置を示す領域である。また、検知マーク1019の検知結果が、このパターンマッチング用パターン1008はどの記録ヘッド102のどの記録素子基板1002に対応するパターンであるかの判断に使用される。パターンマッチング用パターン1008は上記の処理によって、大まかな位置を推定した後、パターンマッチング処理を含む位置検出処理を行うことによって、最終的な読み取り画像上の位置が検出される。このパターンマッチング用パターン1008の読み取り画像上の位置が、ヘッド位置ずれ補正における各種ずれ量の計算で使用する距離を算出する位置である。ここでの各種ずれ量とは、ノズル列1005間の製造誤差、記録素子基板1002間の製造誤差、記録ヘッド102の傾き、記録ヘッド102間の位置ずれが該当する。
【0089】
(複数センサで読み取った読み取り画像)
図13は、記録媒体1201を搬送方向201に沿って搬送させつつ、スキャナ装置106の2つのセンサ202A、202Bで取得した、テストチャート1202の読み取り画像の例である。読み取り画像2001と読み取り画像2002は、それぞれCCDラインセンサであるセンサ202A、センサ202Bでテストチャートを読み取ったものを簡略的に表したものである。記録媒体1201の幅がセンサ202Aの撮像領域とセンサ202Bの撮像領域との両方にわたる場合、テストチャート1202の読み取り画像は、センサ202Aから得られる読み取り画像と、センサ202Bから得られる読み取り画像とからなる。
【0090】
ここで、スキャナ装置106を用いて読み取り画像を得る方法について説明する。スキャナ装置106のランプ(不図示)により光が記録媒体1201の記録面にあたって反射し、この反射光がレンズを通してセンサ202Aまたは202Bに収束する。この反射光を受光した各センサ202は光量に応じた強度を有するアナログ信号を出力し、各センサ202から出力された信号はスキャナ制御部411によってデジタル信号に変換される。このように、記録媒体1201は、まず、CCDラインセンサによってセンサ列方向(
図13に示す矢印Xの方向)にわたるライン状に読み取られる。このライン状の読み取りを、センサ列方向Xと交差(理想的には直行)する記録媒体の搬送方向201に動かしながら繰り返し、テストチャート1202全体を読み取る。読み取って得られたデジタル信号を集積して、記録されたテストチャート1202全体の読み取り画像を得る。このような方法で得られたテストチャート1202の読み取り画像が読み取り画像2001、2002であり、本実施形態ではこれら複数の読み取り画像に基づきインク着弾位置の理想位置からのずれ量を算出する。
【0091】
図13では、各読み取り画像において、テストチャート1206、1207、1213を構成している記録素子基板1002毎のパッチ1007もしくは1016は数字nを内包する矩形で表している。すなわち、数字nを内包する矩形は、Cnの記録素子基板1002で記録したパッチであることを示している。例えば、パッチ2003は、有色インクOの記録ヘッド102のC8パッチである。図中では、一部の記録ヘッド102のテストチャート1202については省略しており、テストチャート1202の全体像は記録ヘッド102の数や色の組み合わせにより異なる。また、各読み取り画像には、C8パッチの下側に記録ヘッド102間の色間ずれ量を算出するためのテストチャート1214がある。
【0092】
また、センサ202Aとセンサ202Bは千鳥配置のため、搬送方向201に沿ってお互いに離間して設置されている。スキャン中に、用紙のバタつき、周辺気流の乱れ、装置の振動などの突発事象により、記録媒体1201の搬送速度が一時的に変動する場合がある。このような場合、搬送方向201に沿ってスキャンデータの伸縮が発生する。この時、センサ202Aとセンサ202Bとが搬送方向に離間しているため、センサ202Aのスキャンデータとセンサ202Bのスキャンデータとで伸縮が発生するスキャンデータ上の範囲が異なる。そのため、同じテストチャートをスキャンしたとしても、センサ202Aから得られた読み取り画像上のテストチャート1202とセンサ202Bから得られた読み取り画像上のテトスチャート1202とで伸縮の影響が異なる領域に出る。
図13に示す例では、センサ202Aから得られた読み取り画像においてはテストチャート1207に搬送方向201に沿って伸長する搬送速度変動の影響が出ている。それに対して、センサ202Bから得られた読み取り画像においてはテストチャート1206に搬送方向201に沿って伸長する搬送速度変動の影響が出ている。ここで搬送速度変動の影響の大きさを見るため、例えば、記録媒体の搬送速度が20m/分、すなわち333.33mm/秒、読み取り解像度が600×600dpi、パッチ1007の搬送方向の長さが10.50mmである場合を考える。この場合、搬送速度が一時的に5%速度低下して316.66mm/秒となったとすると、この搬送速度変動時に読み取ったパッチ1007の搬送方向の長さは11.025mmとなる。パッチ1007の搬送速度変動前後での長さの変化量は、11.025-10.50=+0.525(mm)であり、+12画素/600dpiとなる。
【0093】
センサ202Aとセンサ202Bは千鳥構成で配置されているため、読み取られた読み取り画像2001、2002にはどちらのセンサにも読み取られている領域がある。以降この領域を重複領域、この領域以外の領域を非重複領域と呼称する。読み取り画像2001では領域2004、読み取り画像2002では領域2005が重複領域となる。重複領域の幅はセンサ同士の重なり具合により異なるが、本実施形態では、読み取り画像間で伸縮率を算出できるパターンを含むことができる幅である必要がある。読み取り画像間の伸縮率を算出できるパターンとは、例えばパターン2003のように、1つの記録ヘッド102の1つの記録素子基板1002により記録されるパッチである。重複領域に位置するパッチを使った、読み取り画像間の伸縮率の算出と、その利用の詳細については後述する。
【0094】
(複数の読み取り画像に分割されたテストチャートに基づくずれ量算出)
以下に、本実施形態における読み取り画像から、ノズル列1005間、記録素子基板1002間、記録ヘッド102間のずれ量、および記録ヘッド102の傾き量を算出する方法について解説する。
【0095】
記録ヘッド102の位置ずれ補正方法については既述の通りであるが、複数のセンサ202に分けて読み取られることで、テストチャート1202が
図13に示すように複数の読み取り画像に分割されて得られる場合は、その点の考慮が必要となる。特に記録素子基板1002間のずれ量算出では、基準となる記録素子基板1002間を結ぶ基準線に対し、それら基準となる記録素子基板1002に挟まれた他の記録素子基板1002とのずれ量をそれぞれ求める。両端から1つ内側の記録素子基板1002が基準となるため、
図13に示すテストチャート1202ではC1とC15が基準となる。しかし、
図13に示すようにテストチャート1202が複数の読み取り画像に分割されると、C1は読み取り画像2001にのみ含まれ、C15は読み取り画像2002にのみ含まれる。つまり、各読み取り画像には基準となる記録素子基板1002に対応するパッチが1つずつしか存在しないため、一方の読み取り画像だけでは基準となる記録素子基板1002間を結ぶ基準線を求めることができず、各ずれ量や傾き量を算出できない。例えば、重複領域を利用し、2つの読み取り画像2001、2002を結合して1枚の画像とすることで、基準となる記録素子基板1002間を結ぶ基準線を得ることも可能ではある。しかし、読み取り画像が大きいほど読み取り画像自体のデータ量が大きくなり、CPU処理の負荷が高まり、読み取り画像解析以外の処理速度が低下する可能性もある。また、2つの読み取り画像2001、2002を結合するためにはセンサ202A、202Bとの間の傾きや色味の違いを合わせるための処理も必要となる。そのため、読み取り画像2001、2002を結合することなく、各ずれ量や傾き量を算出できることがより望ましい。そこで本実施形態では、複数のセンサ202A、202Bから得られた複数の読み取り画像2001、2002の結合は行わない。一方の読み取り画像上のテストチャート1202における基準となる記録素子基板1002の位置情報に対して、それに対応する伸縮率を乗じることで、対応する同じパターン間の距離が等しくなるよう補正する。そして補正した位置情報と対応する他方の読み取り画像上の補正していない基準となる記録素子基板1002の位置情報とに基づき基準線を求める。そのようにして得られた基準線を用いて、ノズル列1005間、記録素子基板1002間、記録ヘッド102間のずれ量、および記録ヘッド102の傾き量を算出する。
【0096】
図14は、本実施形態におけるずれ量算出フローである。各ステップについて解説する。
【0097】
S3001では、スキャナ装置106は、記録媒体1201に記録されたテストチャート1202を読み取る。スキャナ装置106がテストチャート1202の読み取りを開始するタイミングは、テストチャート1202の記録開始から所定時間が経過したタイミングでもよい。また、テストチャート1202の記録終了から所定量の記録媒体を搬送した時点でも良い。読み取りを終了するタイミングは、読み取り開始から所定のライン数だけ読み取りを行ったタイミングとする。
【0098】
S3002では、プリントコントローラ402は、S3001でセンサ202Aが読み取った読み取り画像2001である第1の読み取り画像2001について、ずれ量算出処理1を実施する。ずれ量算出処理1は、ノズル列1005間のずれ量と、記録ヘッド102間のずれ量、および読み取り画像間の伸縮率を算出する処理であって、処理の詳細については
図15を用いて後述する。
【0099】
S3003では、プリントコントローラ402は、S3001でセンサ202Bが読み取った読み取り画像2002である第2の読み取り画像2002に対して、ずれ量算出処理1を実施する。ずれ量算出処理1は、S3002と同じ処理である。
【0100】
S3004では、プリントコントローラ402は、第1の読み取り画像2001と、第2の2002とについて、ずれ量算出処理2を実施する。ずれ量算出処理2は、読み取り画像2001、2002間の伸縮率と、記録ヘッド102の傾き量とに基づき補正した基準線に基づき、記録素子基板1002間のずれ量を算出する処理であって、処理の詳細については
図17を用いて後述する。
【0101】
尚、別の実施形態として、上記ずれ量算出フローの各ステップは、ホスト装置500が実施するようにしてもよい。
【0102】
図15は、ずれ量算出処理1の処理フローを示す図である。この
図15を用いて、ずれ量算出処理1の各ステップについて解説する。
【0103】
S3101では、プリントコントローラ402は、S3001で読み取ったテストチャート1201の第1および第2の読み取り画像から、各記録素子基板1002に対応したパッチを検出する。各記録素子基板1002に対応したパッチを検出する処理については、
図12を用いて述べた方法で行うことができる。
【0104】
S3102では、プリントコントローラ402は、記録素子基板1002間のずれ量およびノズル列1005間のずれ量についての解析を行っていない記録ヘッド102に対応したテストチャートがあるか否か判定する。記録ヘッド102に対応したテストチャートとは、
図6や
図13に示すテストチャート1206~1213である。解析を行っていない記録ヘッド102に対応したテストチャートがある場合はS3103に進み、解析を行っていない記録ヘッド102に対応したパッチがない場合はS3108に進む。
【0105】
S3103では、プリントコントローラ402は、各種ずれ量についての解析を行っていない記録ヘッド102に対応したテストチャートを、例えば、テストチャート1206から順に1つ選択する。
【0106】
S3104では、プリントコントローラ402は、選択されたテストチャートにおいて、ノズル列1005間のずれ量についての解析を行っていない記録素子基板1002に対応したパッチ1007又は1016があるか否か判定する。解析を行っていない記録素子基板1002に対応するパッチ1007又は1016があればS3105に進み、解析を行っていない記録素子基板1002に対応するパッチ1007又は1016がなければS3107に進む。解析の対象となる記録素子基板1002に対応するパッチは、S3101で読み取った読み取り画像2001、2002内に存在する記録素子基板1002別のパッチ1007又は1016であり、重複領域の中心付近に存在するパッチを境界とする。境界とするパッチをC8パッチとすると、読み取り画像2001であればC0パッチからC8パッチ、読み取り画像2002であればC8パッチからC16パッチが解析の対象となる。境界となるパッチ1007又は1016は、重複領域に存在しているものであれば良く、読み取り画像2001及び読み取り画像2002であれば、境界はC7パッチやC9パッチでも良い。
【0107】
S3105では、プリントコントローラ402は、解析対象の記録素子基板1002に対応するパッチを、例えば読み取り画像2001であればC0から順に1つ選択する。
【0108】
S3106では、プリントコントローラ402は、選択された解析対象の記録素子基板1002に対応するパッチ1007又は1016を含む読み取り画像を用いて、対象の記録素子基板1002内のノズル列1005間のずれ量を算出する。本実施形態でのノズル列1005間のずれ量を算出する方法については、
図8を用いて述べた方法で行われる。選択された解析対象のパッチがパッチ1007である場合は解析が行われ、選択された解析対象のパッチがパッチ1016である場合は解析がスキップされる。読み取り画像2001と読み取り画像2002の両方で解析されるC8のノズル列間のずれ量については、どちらか一方の読み取り画像による算出結果を利用する。
【0109】
S3107では、プリントコントローラ402は、解析対象の記録素子基板1002の位置を推定する。記録素子基板1002の座標とは、
図9、10を用いて述べた座標点1507のような、各記録素子基板1002のR0を用いて記録した2つのパターンマッチング用パターン1008を結んだ線分の中点である。読み取り画像2001と読み取り画像2002の両方で解析されるC8の記録素子基板1002の位置については、読み取り画像2001の座標系における位置と読み取り画像2002の座標系における位置とを別々に推定する。S3107の次は、S3103に戻り、解析を行っていない記録素子基板1002を解析対象の記録素子基板1002として、対象の記録ヘッド102内の全記録素子基板1002に対応するパッチに対してS3106及びS3107の処理を実施する。
【0110】
S3108では、プリントコントローラ402は、読み取り画像2001、2002における記録ヘッド102間におけるずれ量を計測するためのテストチャート1214を用いて、記録ヘッド102間のずれ量を算出する。本実施形態での記録ヘッド102間におけるずれ量を算出する方法については、
図11で述べた通りである。テストチャート1214は、読み取り画像2001及び読み取り画像2002の両方に含まれるため、記録ヘッド102間のずれ量については、どちらか一方の読み取り画像による算出結果を利用する。
【0111】
S3109では、プリントコントローラ402は、読み取り画像間において、テキストチャート1202毎に、記録素子基板1002に対応するパッチ1007、1016の伸縮率を算出する。読み取り画像間における記録素子基板1002に対応するパッチ1007、1016の伸縮率の算出方法については
図16を用いて説明する。
【0112】
図16は、読み取り画像間において、テキストチャート1202毎に、記録素子基板1002に対応するパッチ1007、1016の伸縮率の算出手順を説明するための図である。
図16(a)は、
図13に示す読み取り画像2001のパッチ2003、
図16(b)は、
図13に示す読み取り画像2002のパッチ2003の詳細図である。読み取り画像2001のパッチ2003と読み取り画像2002のパッチ2003とでは、搬送速度変動の影響箇所が異なるため、搬送方向201に沿って生じた伸縮に差がある。その差を以下のようしにて求める。
【0113】
パッチ2003は、ノズル列1005間のずれ量を算出するために使われる
図4に示すレイアウト1012で構成されたパッチであり、読み取り画像2001、2002の重複領域に存在するパッチである。読み取り画像2001、2002において、ノズル列1005間のずれ量算出で基準となるR0のノズル列1005で記録したR0パターン1405の上端からR0パターン1411の上端までの距離4001、距離4002が得られる。距離4001と距離4002をそれぞれSR、ERと呼称する。そして読み取り画像2002における距離ERで、読み取り画像2001の距離SRを除算する。これにより、
図16(c)に示すように、読み取り画像2002のテキストチャート1202のうちの1つに対する読み取り画像2001の対応する同じテキストチャート1202の伸縮率4003を算出することができる。この伸縮率4003をKと呼称する。Kの計算式を以下に示す。
【0114】
【数1】
ここで、前述の搬送速度変動前後の具体的な数値を当てはめてみると、搬送速度変動前の長さをSR=10.50mm、搬送速度変動時の長さをER=11.025mmとすると、それらの間の伸縮率Kは、10.50/11.025=0.952となる。
【0115】
図16に示す例では、SR<ERとしているが、逆の大小関係になることもある。また、センサ202A、202Bから得られる読み取り画像2001、2002のパッチ2003の搬送方向201に沿った長さを得るために、パッチ2003における他の2点を利用しても良い。ここでは、有色インクOの記録ヘッド102のC8パッチであるパッチ2003を使って各センサから得られる読み取り画像間のテキストチャート1202の1つに対応する伸縮率を得る手順を示した。しかし、両読み取り画像2001、2002の重複領域に含まれ、かつ、搬送方向201に沿った距離を算出できればその他のインク色の記録ヘッド102で記録されたパッチを用いてもよい。また、両読み取り画像2001、2002の重複領域に含まれ、かつ、同じ記録ヘッド102に含まれる記録素子基板1002に対応するパッチであれば、読み取り画像2001、2002で異なる記録素子基板1002に対応するパッチを用いてもよい。また、スキャナ装置が3つ以上のセンサを備え、読み取り画像が3つ以上得られる場合、伸縮率は2つ1組の読み取り画像対に対して上述の方法で求める。このとき読み取り画像対とする2つの読み取り画像は、スキャナ装置106において隣接する2つのセンサから得られた読み取り画像とする。
【0116】
図17は、ずれ量算出処理2の処理フローを示す図である。この
図17を用いて、ずれ量算出処理2の各ステップについて解説する。
【0117】
S3201では、プリントコントローラ402は、センサ202Aから得られた第1の読み取り画像2001において、記録ヘッド102の傾き量算出を行っていない記録ヘッド102に対応するテストチャートがあるか否かを判定する。記録ヘッドの傾き量算出を行っていない記録ヘッド102に対応するテストチャートがある場合はS3202に進み、記録ヘッド102の傾き量算出を行っていない記録ヘッド102に対応するテストチャートがない場合はS3206に進む。記録ヘッド102の傾き算出を行っていない記録ヘッド102を解析対象として、S3202からS3205の処理を実施する。
【0118】
S3202では、プリントコントローラ402は、傾き量算出を行っていない記録ヘッド102に対応するテストチャートにおける各記録素子基板1002の位置情報を取得する。この記録素子基板1002の位置情報とは、センサ202Aから得られた第1の読み取り画像2001及びセンサ202Bから得られた第2の読み取り画像2002について、S3107で推定されていたものである。
【0119】
S3203では、プリントコントローラ402は、第1の読み取り画像2001と第2の読み取り画像2002の各記録素子基板1002に対応するパッチ1007の代表位置を、各読み取り画像の重複領域に位置する原点からの差分位置情報に変換する。S3203の詳細については
図18(a)を用いて後述する。
【0120】
S3204では、プリントコントローラ402は、第2の読み取り画像2002の差分位置情報と伸縮率Kとに基づき、第2の読み取り画像2002の差分位置情報を伸縮率が1となるように変換する。ここで伸縮率が1となるように変換するとは、第2の読み取り画像2002における特定のパターン間の距離を第1の読み取り画像2001の対応する同じ特定のパターン間の距離と等しくなるように変換することを意味する。S3204の詳細については
図18(b)を用いて後述する。
【0121】
S3205では、プリントコントローラ402は、第1の読み取り画像2001について、記録素子基板1002間のずれ量を算出するための基準線の傾きを算出してS3201に戻る。S3205の詳細については
図19を用いて後述する。
【0122】
S3206では、プリントコントローラ402は、記録素子基板1002間のずれ量の算出を行っていない記録ヘッド102に対応するテストチャートがあるか否かを判定する。記録素子基板1002間のずれ量を算出していない記録ヘッド102に対応するテストチャートがある場合はS3207に進む。記録素子基板1002間のずれ量の算出を行っていない記録ヘッド102別のテストチャート1202がない場合は一連の処理を終了する。
【0123】
S3207では、プリントコントローラ402は、記録素子基板1002間のずれ量の算出を行っていない記録ヘッド102に対応するテストチャートの1つを選択する。
【0124】
S3208では、プリントコントローラ402は、S3207で選択したテストチャート1202に対応する基準線の傾きが全記録ヘッド102の傾きの平均と同じになるよう基準線を補正する。詳細については
図20(a)を用いて後述する。
【0125】
S3209では、プリントコントローラ402は、第1の読み取り画像2001の座標系における、第2の読み取り画像2002の各記録素子基板1002の座標を算出する。詳細については
図20(b)を用いて後述する。
【0126】
S3210では、ここまでの各ステップで得られた第1の読み取り画像2001の座標系における基準線と各記録素子基板1002の座標情報を利用して、第1の読み取り画像の座標系において、全記録素子基板1002間のずれ量を算出する。
【0127】
図18及び
図19、
図20は、
図17の各ステップを説明するための図である。図中において、画像の横軸をX軸、縦軸をY軸とする。ここでは、第1の読み取り画像2001及び第2の読み取り画像2002における、テストチャート1206の領域である1206A及び1206Bのみを抽出している。以降、テストチャート1206を例にして説明を記載するが、テストチャート1207~1213においても適用できる。図中では、各読み取り画像において、テストチャート1206を構成している記録素子基板1002毎のパッチ1007は数字nを内包した矩形で表現し、記録素子基板Cnで記録したパッチであることを示している。また、各記録素子基板1002のパッチ1007の位置は、実際のずれが発生している様子を表している。
【0128】
図18(a)は、S3203における、各読み取り画像の各記録素子基板1002の差分位置情報を算出する手順を説明するための図である。差分位置情報の算出では、各読み取り画像の重複領域に存在する1つの記録素子基板1002の代表位置を原点と決める。そして、その原点から各記録素子基板1002の代表位置との距離をX軸及びY軸について求める。第1の読み取り画像2001において、C1パッチの代表位置である座標点5001を原点とすると、例えばC8パッチの代表位置は座標点5002であるため、C8パッチの差分位置情報は、X軸が差分5003、Y軸が差分5004となる。第2の読み取り画像において、C8パッチの代表位置である座標点5011を原点とすると、例えばC15パッチの代表位置は座標点5012であるため、C15パッチの差分位置情報は、X軸が差分5013、Y軸が差分5014となる。第1の読み取り画像2001ではC0~C8、第2の読み取り画像ではC8~C16の差分位置情報を保存する。ここでは、差分位置情報を算出するための原点を第1の読み取り画像2001ではC0パッチの代表位置、第2の読み取り画像ではC8パッチの代表位置とした。S3208において基準線の傾きを補正する際の原点がC0パッチの代表位置となるため、第1の読み取り画像2001ではC0パッチの代表位置を原点としておくと良い。S3209において第1の読み取り画像2001上の座標系において第2の読み取り画像2002の各記録素子基板1002に対応するパッチ1007の代表位置を算出する。その際に、重複領域に存在するC8パッチを境界としてC8パッチからの差分位置情報を利用するため、第2の読み取り画像2002ではC8パッチの代表位置を原点とした。本実施形態では、各読み取り画像の原点をC0パッチの代表位置、C8パッチの代表位置としているが、同様の算出ができれば原点はどこに設定しても良い。また、各読み取り画像において差分位置情報を保存する記録素子基板1002に対応するパッチ1007は、各読み取り画像にしか存在しない記録素子基板1002についてのものは各読み取り画像で保存する。重複領域に存在する記録素子基板1002に対応するパッチ1007は、境界とするパッチ1007のみ両方の読み取り画像で保存し、その他はどちらか一方の読み取り画像で保存すれば良い。ここで境界とは、上述の例ではC8パッチが該当する。
【0129】
図18(b)は、S3204における、第2の読み取り画像2002の差分位置情報と対応する伸縮率Kに基づき、第2の読み取り画像2002の差分位置情報を伸縮率が1となるように変換する手順を説明する図である。第1の読み取り画像2001と第2の読み取り画像2002との間のテキストチャート1202それぞれに対応する伸縮率Kは、S3109で算出されているため、その値が第2の読み取り画像2002の補正値となる。第2の読み取り画像2002における特定のパターン間の距離を第1の読み取り画像2001の対応する同じ特定のパターン間の距離と等しくするように変換する。すなわち、差分5014に対応する伸縮率Kを乗算して差分位置情報を補正する。すなわち、
図16に示す第1の読み取り画像2001のC8パッチ内のR0パターン間の距離SRと第2の読み取り画像2002のC8パッチ内のR0パターン間の距離ERが等しくなるように補正する。補正後の第2の読み取り画像2002の各記録素子基板1002の差分位置情報は、S3203で得た補正前の差分位置情報と対応する伸縮率Kがあれば、それらを乗算することで算出できる。
【0130】
C8パッチの代表位置を原点とする差分位置情報を、第2の読み取り画像2002の特定のパターン間の距離が第1の読み取り画像2001の対応する同じ特定のパターン間の距離と等しくなるように補正する。例えばC15パッチの場合、補正後の代表位置は座標点5022となる。すなわち、補正後のC15パッチの差分位置情報は、X軸が差分5023、Y軸が差分5024に変換される。
【0131】
図19(a)及び
図19(b)は、S3205における、基準線を得る手順を説明するための図である。ここでは、第1の読み取り画像2001の座標系において基準線を得る手順で説明する。まず、基準線を求めるために必要なC15パッチの座標点を第1の読み取り画像2001の座標系で算出する必要がある。S3204において第1の読み取り画像2001の特定のパターン間の距離と第2の読み取り画像2002の対応する同じ特定のパターン間の距離とが等しくなるようにしてある。そのため、C15パッチの座標点は、第1の読み取り画像2001におけるC8パッチの差分位置情報に、第2の読み取り画像2002におけるC15パッチの差分位置情報を足し合わせることで算出できる。具体的には、第1の読み取り画像2001の座標系におけるC15パッチのX座標は、差分5003と差分5023を足し合わせたものとなる。第1の読み取り画像2001の座標系におけるC15パッチのY座標は、差分5004と差分5024を足し合わせたものとなる。
図19(a)における座標点5025が、第1の読み取り画像2001の座標系におけるC15パッチの差分位置情報となる。
図19(b)のように、第1の読み取り画像2001の原点となるC1パッチの座標点5001と、得られたC15パッチの座標点5025を結んだ線が該当記録ヘッド102の基準線となる。ここでは、第1の読み取り画像2001の座標系において基準線を得る手順を記載したが、第2の読み取り画像2002の座標系でも同様に基準線を求めることができる。第2の読み取り画像2002の座標系では、基準線を求めるためにC0パッチの座標点を求める必要があるが、これは差分5003及び差分5004を使って求められる。尚、第1の読み取り画像2001の座標系でも、第2の読み取り画像の座標系でもない、第3の座標系において基準線を求めてもよく、共通する座標系において位置情報が得られればよい。
【0132】
図20(a)は、S3208における、基準線の傾きの補正を説明するための図である。本実施形態では、記録素子基板1002間のずれ量を算出する過程で、各記録ヘッド102の傾き補正を実施する。各記録ヘッド102の傾き補正量は、既述の通り全記録ヘッド102の傾きの平均と各記録ヘッド102の傾きの差分から求められる。各記録ヘッド102の傾きはS3205において得られ、そこから全記録ヘッド102の傾きの平均も得られる。
図20に示す座標点5027は、座標点5001を原点として、座標点5025を該当記録ヘッド102の傾き補正量である角度5026回転させた座標点である。そのため、座標点5001と座標点5027を結んだ線が、記録素子基板1002間のずれ量を算出するために用いる最終的な基準線となる。
【0133】
図20(b)は、S3209における、第1の読み取り画像2001上での第2の読み取り画像2002の各記録素子基板1002の座標を算出する手順を説明するための図である。得られた基準線に対して記録素子基板1002間のずれ量を算出するためには、第1の読み取り画像2001の座標系における第2の読み取り画像2002の全記録素子基板1002の座標点を算出する必要がある。このために、S3203で再算出した、第2の読み取り画像2002の各記録素子基板1002の差分位置情報を使う。この手順は、S3205において、C15の座標点を第1の読み取り画像2001の座標系で算出した手順と同じである。このようにして得られた基準線と、各記録素子基板1002の差分位置情報である座標点を用いて、S3210で全記録素子基板1002間のずれ量の算出が可能となる。
【0134】
以上、本発明のインクジェット記録装置によれば、センサを複数有するスキャナ装置に読み取られることによりテストチャートが複数の読み取り画像に分割されて得られた場合であっても、記録ヘッドのずれ量を精度良く算出が可能となる。
【0135】
本実施形態では、スキャナ装置のセンサ数が2つであったが、3つ以上の場合も隣り合うセンサにより得られた読み取り画像にテストチャートが含まれた重複領域があれば適用可能である。
【0136】
また、本実施形態では、記録素子基板間のずれ量算出のために必要な処理を行ったが、補正量を求めるための基準線が複数の読み取り画像に亘って存在する場合であれば、その他の補正量の算出にも適用可能である。
また、ここまで記録装置としてインクジェット記録装置を例に説明したが、記録材を付与する方法はインクを吐出するインクジェット方式に限定されず、他の記録材を付与する方法を用いる記録装置に対しても本開示の技術は適用可能である。
【0137】
<その他の実施形態>
上記の実施形態では、インクジェット記録装置100が複数の記録ヘッド102を有するが、一つの記録ヘッド102を有してもよい。記録ヘッド102はフルラインヘッドでなくてもよく、記録ヘッド102を着脱自在に搭載するキャリッジをY方向に移動させながら記録ヘッド102からインクを吐出してインク像を形成するシリアル方式であってもよい。記録媒体Pは枚葉紙でも良く、その場合は枚葉紙に適した搬送機構を持つ。
【0138】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0139】
本開示は、以下の構成および方法を含む。
[構成1]
記録材を付与する複数の記録素子基板を含む記録手段を1つ又は複数有するインクジェット記録装置であって、
前記記録手段により記録媒体に印刷された前記記録素子基板それぞれに対応する複数のパッチを含むテストチャートを複数の光学センサで分割して読み取り装置に読み取らせる読み取り制御手段と、
前記読み取り装置により前記記録媒体に印刷されたテストチャートを読み取らせて得られた複数の読み取り画像に基づき、当該複数の読み取り画像のうちの2つの読み取り画像からなる読み取り画像対について、同じ記録手段に含まれる記録素子基板に対応するパッチの伸縮率を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出した前記伸縮率と、前記複数の読み取り画像における前記パッチの位置情報とに基づき、前記記録手段から付与される記録材の付着位置を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
[構成2]
前記同じ記録手段に含まれる記録素子基板に対応するパッチは、前記読み取り画像対において前記テストチャートの同じ部分を重複して読み取った重複領域に含まれる、
ことを特徴とする構成1に記載の記録装置。
[構成3]
前記同じ記録手段に含まれる記録素子基板に対応するパッチは、同じ記録手段に含まれる同じ記録素子基板に対応するパッチである、
ことを特徴とする構成2に記載の記録装置。
[構成4]
前記調整手段は、前記読み取り画像対の一方における前記パッチの位置情報を前記伸縮率が1になるよう変換し、前記重複領域における前記パッチの位置情報に基づき、前記読み取り画像対の前記パッチの位置情報を結合する、
ことを特徴とする構成2又は3に記載の記録装置。
[構成5]
前記調整手段は、前記結合されたパッチの位置情報に基づき前記記録材の付着位置のずれ量を算出し、当該ずれ量に基づき前記記録手段から付与される記録材の付着位置を調整する、
ことを特徴とする構成4に記載の記録装置。
[構成6]
前記ずれ量は、前記結合されたパッチの位置情報における2つの所定の記録素子基板に対応するパッチの位置を結んだ基準線に基づき算出するずれ量を含む、
ことを特徴とする構成5に記載の記録装置。
[構成7]
前記基準線は、同じ記録手段に含まれる異なる2つの記録素子基板に対応するパッチの位置を結んだ線である、
ことを特徴とする構成6に記載の記録装置。
[構成8]
前記基準線を構成する2つのパッチの位置は、共通する1つの座標系の座標点で表される、
ことを特徴とする構成6又は7に記載の記録装置。
[構成9]
前記基準線を構成する2つのパッチの位置は、前記重複領域における所定のパッチの位置からの距離を示す差分として表される、
ことを特徴とする構成6乃至8のいずれか1項に記載の記録装置。
[構成10]
前記調整手段は、前記記録手段を複数有する場合、前記基準線の傾きが当該複数の記録手段の傾きの平均と同じになるよう前記基準線を補正する、
ことを特徴とする構成6乃至9のいずれか1項に記載の記録装置。
[構成11]
前記記録素子基板は、インクを吐出するノズルが配列された記録素子基板である、
ことを特徴とする構成1乃至10のいずれか1項に記載の記録装置。
[構成12]
前記読み取り画像対は、前記読み取り装置において隣接する2つの前記光学センサにより得られた2つの読み取り画像からなる、
ことを特徴とする構成1乃至11のいずれか1項に記載の記録装置。
[構成13]
記録材を付与する複数の記録素子基板を含む記録手段を1つ又は複数有する記録方法であって、
前記記録手段により記録媒体に印刷された前記記録素子基板それぞれに対応する複数のパッチを含むテストチャートを複数の光学センサで分割して読み取り装置に読み取らせるステップと、
前記読み取り装置により前記記録媒体に印刷されたテストチャートを読み取らせて得られた複数の読み取り画像に基づき、当該複数の読み取り画像のうちの2つの読み取り画像からなる読み取り画像対について、同じ記録手段に含まれる記録素子基板に対応するパッチの伸縮率を算出するステップと、
前記算出するステップにより算出した前記伸縮率と、前記複数の読み取り画像における前記パッチの位置情報とに基づき、前記記録手段から付与される記録材の付着位置を調整するステップと、
を備えることを特徴とする記録方法。
[構成14]
コンピュータに、構成13に記載の記録方法の各ステップを実行させるためのプログラム。