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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174612
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両用電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20241210BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20241210BHJP
   B60S 5/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60R16/02 650J
G01M17/007 J
B60S5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092525
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】金原 正樹
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026BA02
3D026BA21
(57)【要約】
【課題】診断の実施状況を把握しやすくする。
【解決手段】診断により検知された異常に対応する故障コードを故障コード記憶部(101)に記憶する車両用電子制御装置(100)であって、故障コードに対応させて、診断の実施の有無を示す診断情報を診断情報記憶部(102)に記憶する記憶処理部(103)と、故障コードの消去要求に応じて、前記故障コード記憶部(101)に記憶された、前記消去要求に係る故障コードを消去し、前記診断情報記憶部(102)に記憶された、当該故障コードに対応する診断情報を初期化する消去処理部(104)と、表示要求に応じて、前記診断情報記憶部(102)に記憶された診断情報を表示部に表示する表示処理部(105)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断により検知された異常に対応する故障コードを故障コード記憶部に記憶する車両用電子制御装置であって、
故障コードに対応させて、診断の実施の有無を示す診断情報を診断情報記憶部に記憶する記憶処理部を備えることを特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項2】
故障コードの消去要求に応じて、前記故障コード記憶部に記憶された、前記消去要求に係る故障コードを消去し、前記診断情報記憶部に記憶された、当該故障コードに対応する診断情報を初期化する消去処理部を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用電子制御装置。
【請求項3】
表示要求に応じて、前記診断情報記憶部に記憶された診断情報を表示部に表示する表示処理部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用電子制御装置。
【請求項4】
診断情報は、診断の実施に応じたカウンタ値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用電子制御装置。
【請求項5】
故障コード毎に診断情報が割り当てられることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用電子制御装置。
【請求項6】
複数の故障コードがグループ分けされて、グループ毎に診断情報が割り当てられることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断により検知された異常に対応する故障コードを故障コード記憶部に記憶する車両用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用電子制御装置の機能として、OBD(On-board Diagnostics)と呼ばれる自己診断機能がある。OBDにより、例えばセンサやアクチュエータになんらかの異常が発生したことを検知した場合、その異常に対応する故障コード(DTC(Diagnostic Trouble Code))を記憶媒体に記憶する。近い将来には、OBDを活用した車検(自動車検査登録制度)も開始される予定である。予め自動車メーカが安全や環境に関する故障コードの情報を提出し、車検時に、この故障コードを検出すると基準不適合になり、車検は不合格になる。この故障コードは、特定故障コード(特定DTC)と呼ばれる。
特許文献1には、DTCを全て記憶し、特定DTCを消去するための要求である消去要求を受信した場合、消去条件が満たされていると判定された場合には、記憶されている特定DTCのうち、消去条件が満たされている特定DTCを消去する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-142642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
OBDには、常に診断を実施する連続診断と、一定の条件が成立したときのみ診断を実施する非連続診断とがある。
非連続診断においては、記憶媒体に記憶されたDTCを参照したときに、異常がなくてDTCが記憶されていないのか、未診断であるためにDTCが記憶されていないのかを容易に判別できないという課題がある。診断項目の中には、詳細な診断条件(例えば所定の範囲の車速で加速及び減速を決められた回数以上繰り返すことを条件とする等)が公開されていないものがあり、ユーザ側で未診断であるか否かを把握することは難しい。
【0005】
また、整備後に、記憶媒体に記憶されたDTCを消去するようにした場合に、(A)~(D)の状態が考えられる。この場合、(A)、(B)、(D)がいずれもDTCなしになるため、診断済みの(A)と未診断の(B)及び(D)とを切り分けることができない。
(A)正しい整備が行われて、診断が実施された場合 → DTCなし
(B)正しい整備が行われて、診断が実施されていない場合 → DTCなし
(C)誤った整備が行われて、診断が実施された場合 → DTCあり
(D)誤った整備が行われて、診断が実施されていない場合 → DTCなし
【0006】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、診断の実施状況を把握しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用電子制御装置は、診断により検知された異常に対応する故障コードを故障コード記憶部に記憶する車両用電子制御装置であって、故障コードに対応させて、診断の実施の有無を示す診断情報を診断情報記憶部に記憶する記憶処理部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、診断の実施状況が把握しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係る自動車の概略構成、及び車両用電子制御装置の機能構成を示す図である。
図2】実施例に係る車両用電子制御装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
図3】実施例に係る車両用電子制御装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
図4】実施例に係る車両用電子制御装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
図5】実施例に係る診断情報記憶部が記憶する診断情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る車両用電子制御装置は、診断により検知された異常に対応する故障コードを故障コード記憶部(101)に記憶する車両用電子制御装置(100)であって、故障コードに対応させて、診断の実施の有無を示す診断情報を診断情報記憶部(102)に記憶する記憶処理部(103)を備える。
これにより、診断の実施状況が把握しやすくなる。
【実施例0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について説明する。
図1に、実施例に係る車両である自動車1の概略構成を示す。
自動車1は、複数台のECU(Electronic Control Unit)2~4と、電源5と、ゲートウェイ6と、通信コネタク7とが搭載される。ECU2~4は、通信ライン9を介して相互に情報の授受が可能である。また、ECU2~4のうちのいずれか一つ又は複数台が、通信コネタク7を介してスキャンツール8と通信可能である。
ECU2は、CPU2aと、RAM等の一次記憶媒体2bと、EEPROMやデータフラッシュ等の不揮発性メモリ2cとを備える。なお、図示は省略するが、他のECU3、4も同様の構成を有する。
【0012】
図2に、実施例に係る車両用電子制御装置100の機能構成を示す。ECU2~4のうちのいずれか一つが、又は複数台が協働して、図2に示す車両用電子制御装置100として機能する。
車両用電子制御装置100は、故障コード記憶部101と、診断情報記憶部102と、記憶処理部103と、消去処理部104と、表示処理部105とを備える。
【0013】
記憶処理部103は、OBDの診断により検知された、特定故障と呼ぶ異常に対応する特定故障コード(特定DCT)を故障コード記憶部101に記憶する。特定故障コードとは、これが検出されると、基準不適合になり、車検は不合格になる故障コードである。
また、記憶処理部103は、特定故障コードに対応させて、診断の実施の有無を示す診断情報を診断情報記憶部102に記憶する。本実施例では、診断情報は、特定故障の診断の実施に応じたカウンタ値である。図5は、診断情報記憶部102が記憶する診断情報の例を示す図である。図5に示すように、診断情報記憶部102は、特定故障コード毎にカウンタ値を記憶する。車両用電子制御装置100は、特定故障コード毎に個別にカウンタ機能を有し、各特定故障の診断の実施に応じて、カウンタを1ずつ繰り上げて、そのカウンタ値を診断情報記憶部102に記憶する。連続診断では、ドライビングサイクル中に常に診断が実施されるので、一度のドライビングサイクルで1だけカウンタ値を上げるようにする。また、非連続診断では、診断が実施される毎に1だけカウンタ値を上げるようにしてもよいし、一度のドライビングサイクルで最大1だけカウンタ値を上げるようにしてもよい。
【0014】
消去処理部104は、スキャンツール8からの特定故障コードの消去要求に応じて、故障コード記憶部101に記憶された、消去要求に係る特定故障コードを消去し、診断情報記憶部102に記憶された、当該特定故障コードに対応するカウンタを初期化する、すなわちカウンタ値を0にする。
【0015】
表示処理部105は、スキャンツール8からの表示要求に応じて、診断情報記憶部102に記憶されたカウンタ値を、スキャンツール8の表示部に表示する。
【0016】
図2は、車両用電子制御装置100が実行する処理の例を示すフローチャートである。図2のフローチャートは、ドライビングサイクルが開始されると開始して、ドライビングサイクルが終了すると終了する。なお、図2は、ある一の特定故障を対象としており、特定故障の種別の数だけ、図2のフローチャートが実行される。
ステップS1で、車両用電子制御装置100は、カウントアップフラグを初期化する。カウントアップフラグは、カウントアップしたか否かを示すフラグである。
【0017】
ステップS2で、車両用電子制御装置100は、特定故障の診断を実施するまで待機し、特定故障の診断を実施した場合、ステップS3に進む。
ステップS3で、車両用電子制御装置100は、ステップS2の診断により特定故障が検知されたか否かを判定する。特定故障が検知された場合、ステップS4に進み、特定故障が検知されない場合、ステップS5に進む。
ステップS4で、車両用電子制御装置100の記憶処理部103は、特定故障に対応する特定故障コードを故障コード記憶部101に記憶する。
【0018】
ステップS5で、カウントアップフラグが未セットであるか否かを判定する。カウントアップフラグが未セットである場合、ステップS6に進み、カウントアップフラグが未セットでない場合、ステップS2に戻る。
ステップS6で、車両用電子制御装置100の記憶処理部103は、ステップS4で記憶した特定故障コードに割り当てられたカウンタを1繰り上げて、カウンタ値を診断情報記憶部102に記憶する。
ステップS7で、車両用電子制御装置100は、カウントアップフラグをセットし、その後、ステップS2に戻る。
【0019】
図2の例では、連続診断及び非連続診断において、一度のドライビングサイクルで最大1だけカウンタ値を上げるようにしている。
非連続診断については、カウントアップフラグを用いずに、診断を実施する毎にカウントアップするようにしてもよい。具体的には、図2のフローチャートにおいて、ステップS1、S5、S7をなくし、ステップS2、S3、S4、S6だけを行うフローチャートを実行するようにすればよい。
【0020】
図3は、車両用電子制御装置100が実行する処理の例を示すフローチャートである。図3のフローチャートは、スキャンツール8が接続された状態で実行される。
ステップS11で、車両用電子制御装置100は、スキャンツール8からの特定故障コードの消去要求の有無を判定する。特定故障コードの消去要求がある場合、ステップS12に進み、特定故障コードの消去要求がない場合、本フローチャートを抜ける。
ステップS12で、車両用電子制御装置100の消去処理部104は、ステップS11の消去要求に係る特定故障コードを故障コード記憶部101から消去する。
ステップS13で、車両用電子制御装置100の消去処理部104は、診断情報記憶部102に記憶された、当該特定故障コードに対応するカウンタ値を初期化する。
【0021】
図4は、車両用電子制御装置100が実行する処理の例を示すフローチャートである。図4のフローチャートは、スキャンツール8が接続された状態で実行される。
ステップS21で、車両用電子制御装置100は、スキャンツール8からの表示要求の有無を判定する。表示要求がある場合、ステップS22に進み、表示要求がない場合、本フローチャートを抜ける。
ステップS22で、車両用電子制御装置100の表示処理部105は、ステップS21の表示要求に応じて、診断情報記憶部102に記憶されたカウンタ値を、スキャンツール8の表示部に表示する。
【0022】
以上述べたように、特定故障コードに対応させて、診断の実施の有無を示す診断情報(カウンタ値)を診断情報記憶部102に記憶するようにしたので、診断の実施状況が把握しやすくなる。
これにより、異常がなくて特定故障コードが記憶されていないのか、未診断であるために特定故障コードが記憶されていないのかを容易に判別できるようになる。このように整備の必要がない状態と、整備の要否が未確定の状態とを判別でき、整備時間が削減され、整備費用を抑えることが可能になる。
【0023】
また、本願明細書の[発明が解決しようとする課題]で述べた(A)~(D)の状態において、(A)にはカウンタ値が与えられるが、(B)、(D)にはカウンタ値が与えられないので、診断済みの(A)と未診断の(B)及び(D)とを切り分けることが可能になり、正しい整備が行われて、故障が直っていることを確認することができる。
【0024】
また、特定故障コード毎にカウンタ値を見ることで、特定故障が検知された後で特定故障コードを不正に消去した車両を見つけやすくなる。例えば、所定の特定故障コードのカウンタ値が0で、他の所定の特定故障コードのカウンタ値が大きい場合等、不正の可能性があると考えられる。部品交換等の整備後、カウンタ値は0を示すので部品の交換履歴を参照する必要がある。
【0025】
なお、本実施例では、診断情報として、診断の実施に応じたカウンタ値を用いるようにしたが、例えば、診断済みであるか否かを示すフラグを用いてもよい。
また、本実施例では、特定故障コード毎に診断情報が割り当てられるようにしたが、複数の特定故障コードがグループ分けされて、グループ毎に診断情報が割り当てられるようにしてもよい。これにより、車両用電子制御装置100に持たせるカウンタの数を減らすことができる。
また、ドライビングサイクル数をカウントするカウンタ機能を持たせ、ドライビングサイクルと、各診断の実施頻度との関係を求められるようにしてもよい。
【0026】
以上、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明したが、各実施例は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、各実施例に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1:自動車、2~4:ECU、5:電源、6:ゲートウェイ、7:通信コネクタ、8:スキャンツール、9:通信ライン、100:車両用電子制御装置、101:故障コード記憶部、102:診断情報記憶部、103:記憶処理部、104:消去処理部、105:表示処理部
図1
図2
図3
図4
図5