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2024-174626半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174626
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092545
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 陽一
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102FA01
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GD10
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GR07
5F102GT01
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC02
5F102HC15
(57)【要約】
【課題】優れた信頼性を有する高性能の半導体装置を実現する。
【解決手段】半導体装置1は、ドレイン電極40側に、電子走行層22と電子供給層24とを含む半導体積層構造20に設けられてドレイン電極40が接続される半導体層70bを備える。半導体層70bは、半導体積層構造20の電子供給層24側の面20aから電子走行層22に達し、n型不純物を含有する。ドレイン電極40は、半導体層70bと、半導体層70bに隣接する面20aの部位20abとを覆う。これにより、半導体層70bと面20aに設けられる絶縁膜60とが接する界面の形成が回避され、当該界面の電子トラップ及びそれに起因した性能低下が抑えられる。更に、ドレイン電極40と電子走行層22との間の電流密度の上昇及びそれに起因したエレクトロマイグレーションによる信頼性低下が抑えられる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子走行層と電子供給層とを含む半導体積層構造と、
前記半導体積層構造に設けられ、前記半導体積層構造の前記電子供給層側の第1面から前記電子走行層に達し、n型不純物を含有する第1半導体層と、
前記第1半導体層と接続され、前記第1半導体層を覆い、前記半導体積層構造の前記第1面の、前記第1半導体層に隣接する第1部位と接する第1電極と、
を含む、半導体装置。
【請求項2】
前記第1電極は、前記第1部位を覆う、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体積層構造の前記第1面に設けられ、前記第1面の、前記第1電極で覆われる前記第1部位とは異なる第2部位を覆う絶縁膜を更に含む、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁膜は、前記半導体積層構造の前記第1面における前記第2部位と、前記第1部位を覆う前記第1電極とに接する、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体層は、前記第1面と平行な方向の幅が、前記第1面から前記電子走行層に向かって狭くなる、テーパー形状を有する、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1半導体層は、前記半導体積層構造の前記第1面における、前記第1電極で覆われる前記第1部位の、前記第1電極の端よりも内側の一部を覆う、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体積層構造に、前記第1半導体層から分離されて設けられ、前記第1面から前記電子走行層に達し、n型不純物を含有する第2半導体層と、
前記第1電極から分離されて設けられ、前記第2半導体層と接続される第2電極と、
を更に含む、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2電極は、前記第2半導体層と、前記半導体積層構造の前記第1面の、前記第2半導体層に隣接する第3部位とを覆う、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
電子走行層と電子供給層とを含む半導体積層構造を形成する工程と、
前記半導体積層構造に、前記半導体積層構造の前記電子供給層側の第1面から前記電子走行層に達し、n型不純物を含有する第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層と接続され、前記第1半導体層を覆い、前記半導体積層構造の前記第1面の、前記第1半導体層に隣接する第1部位と接する第1電極を形成する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
電子走行層と電子供給層とを含む半導体積層構造と、
前記半導体積層構造に設けられ、前記半導体積層構造の前記電子供給層側の第1面から前記電子走行層に達し、n型不純物を含有する第1半導体層と、
前記第1半導体層と接続され、前記第1半導体層を覆い、前記半導体積層構造の前記第1面の、前記第1半導体層に隣接する第1部位と接する第1電極と、
を含む半導体装置を備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一例として、窒化ガリウム系の窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor;HEMT)が知られている。
例えば、窒化ガリウム層及びその上の電荷誘導層の一部に形成した凹部に、N+ドープしたソース/ドレイン構造を再成長し、そのソース/ドレイン構造の上にソース/ドレイン接点を設ける窒化ガリウムトランジスタが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、キャリア走行層上方の、キャリア供給層を含む化合物半導体層と、その上に設けられるオーミック電極の、ゲート電極側の端部から離間した部分との間に、n型のAlGa1-xN(0≦x<1)を設ける化合物半導体装置が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/068935号パンフレット
【特許文献2】特開2017-22214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HEMTに関し、電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造に、電子走行層に達する凹部を設け、その凹部に、n型不純物を含有する半導体層を再成長し、その半導体層に、電子走行層に対してオーミック接続される電極を接続する技術が知られている。電子走行層と電極との間に、n型不純物を含有する半導体層が設けられることで、二次元電子ガス(Tow Dimensional Electron Gas;2DEG)領域が生成される電子走行層と電極との間のコンタクト抵抗が低減される。
【0006】
しかし、このように低コンタクト抵抗化のためにn型の半導体層を設けるHEMTでは、当該半導体層とそれに接続される電極との配置によっては、半導体装置の性能及び信頼性の低下が生じる場合があった。
【0007】
1つの側面では、本発明は、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、電子走行層と電子供給層とを含む半導体積層構造と、前記半導体積層構造に設けられ、前記半導体積層構造の前記電子供給層側の第1面から前記電子走行層に達し、n型不純物を含有する第1半導体層と、前記第1半導体層と接続され、前記第1半導体層を覆い、前記半導体積層構造の前記第1面の、前記第1半導体層に隣接する第1部位と接する第1電極と、を含む、半導体装置が提供される。
【0009】
また、別の態様では、上記のような半導体装置の製造方法、上記のような半導体装置を備える電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】半導体装置の第1例について説明する図である。
図2】半導体装置の第2例について説明する図である。
図3】半導体装置の第2例の構成について更に説明する図である。
図4】第1実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の特性例について説明する図である。
図6】第1実施形態に係る半導体装置の第1構成例について説明する図である。
図7】比較例に係る半導体装置の電流密度について説明する図である。
図8】第1実施形態の第1構成例に係る半導体装置の電流密度について説明する図である。
図9】第1実施形態に係る半導体装置の第2構成例について説明する図である。
図10】第1実施形態の第2構成例に係る半導体装置の電流密度について説明する図である。
図11】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その1)である。
図12】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その2)である。
図13】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その3)である。
図14】第2実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図15】第3実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図16】第4実施形態に係る半導体パッケージの一例について説明する図である。
図17】第5実施形態に係る力率改善回路の一例について説明する図である。
図18】第6実施形態に係る電源装置の一例について説明する図である。
図19】第7実施形態に係る増幅器の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
はじめに、半導体装置の例について説明する。
半導体装置の一例として、窒化物半導体を用いたものが知られている。例えば、窒化ガリウム(GaN)等を電子走行層に用い、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)等を電子供給層に用いたHEMT、いわゆるGaN系HEMTが知られている。尚、電子走行層は、走行層、キャリア走行層、チャネル層等とも称される。電子供給層は、供給層、キャリア供給層、バリア層等とも称される。HEMTは、電子供給層が積層される電子走行層に2DEG領域が生成され、その2DEG領域によって大電流が流れる構造となっている。HEMTは、防衛システムや遠距離通信システム等に向けた高周波且つ高出力のトランジスタとしての応用が期待されている。近年では、更なる大電流化に向けて、電子供給層にインジウム(In)を含有する窒化物半導体、例えば、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)や窒化インジウムアルミニウム(InAlN)等を用いたHEMTも提案されている。
【0013】
図1は半導体装置の第1例について説明する図である。図1(A)には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。図1(B)には、半導体装置の一例の電流-電圧特性を模式的に示している。図1(C)には、半導体装置の一例の入出力特性を模式的に示している。
【0014】
図1(A)に示す半導体装置100Aは、HEMTの一例である。半導体装置100Aは、基板110、半導体積層構造120、ソース電極130、ドレイン電極140、ゲート電極150及び絶縁膜160を含む。
【0015】
基板110には、シリコンカーバイド(SiC)基板、GaN基板、シリコン(Si)基板、サファイア基板等、各種基板が用いられる。所定の基板110上に、有機金属気相エピタキシー(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy;MOVPE)法等を用いて、半導体積層構造120が設けられる。
【0016】
半導体積層構造120は、例えば、バッファ層121、電子走行層122、スペーサ層123及び電子供給層124を含む。バッファ層121、電子走行層122、スペーサ層123及び電子供給層124の各層には、窒化物半導体が用いられる。バッファ層121には、例えば、窒化アルミニウム(AlN)が用いられる。電子走行層122には、例えば、GaNが用いられる。スペーサ層123には、例えば、AlN又はAlGaNが用いられる。電子供給層124には、例えば、AlGaN、InAlGaN又はInAlNが用いられる。基板110上に、MOVPE法等を用いて、バッファ層121、電子走行層122、スペーサ層123及び電子供給層124が順次積層される。半導体積層構造120の、電子供給層124が積層される電子走行層122に、2DEG領域180が生成される。
【0017】
ソース電極130及びドレイン電極140は、半導体積層構造120の電子供給層124側の面120a上に設けられる。ソース電極130及びドレイン電極140は、対向する位置に、互いに分離されて、設けられる。ソース電極130及びドレイン電極140には、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。ソース電極130及びドレイン電極140は、オーミック電極として機能するように設けられる。
【0018】
ゲート電極150は、半導体積層構造120の面120a上であって、ソース電極130とドレイン電極140との間に、設けられる。ゲート電極150は、ソース電極130及びドレイン電極140から分離されて、設けられる。ゲート電極150には、ニッケル(Ni)、金(Au)等の金属材料が用いられる。ゲート電極150は、例えば、ショットキー電極として機能するように設けられる。或いは、ゲート電極150は、半導体積層構造120の面120a上に、ゲート絶縁膜(図示せず)を介して設けられ、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型ゲート構造とされてもよい。
【0019】
絶縁膜160は、ソース電極130及びドレイン電極140並びにゲート電極150が設けられる半導体積層構造120の面120a上に設けられる。絶縁膜160には、窒化シリコン(SiN)等の絶縁材料が用いられる。絶縁膜160は、半導体積層構造120を保護する。絶縁膜160は、保護膜、パッシベーション膜等とも称される。
【0020】
半導体装置100Aの動作時には、例えば、ソース電極130に対してドレイン電極140が高電位となるように電圧が印加されると共に、ゲート電極150に所定の電圧が印加される。ゲート電極150に印加される電圧による電界効果により、ソース電極130とドレイン電極140との間のゲート電極150直下の2DEG領域180を通過する電荷量が制御され、出力のドレイン電流の大きさが制御される。
【0021】
半導体装置100Aでは、ソース電極130及びドレイン電極140と電子走行層122との間に、電子供給層124等の層が介在する。そのため、半導体装置100Aでは、ソース電極130及びドレイン電極140と、2DEG領域180が生成される電子走行層122との間のコンタクト抵抗Rcが比較的高くなる。
【0022】
ここで、図1(B)は、半導体装置100Aのドレイン電圧Vdとドレイン電流Idとの関係の一例を模式的に示したものである。
図1(B)の「w/o pulse」は、所定のゲート電圧にて、ドレイン電圧Vd=0Vを初期バイアス点とし、当該初期バイアス点からパルス的に所定のドレイン電圧Vdを印加していく条件で測定した時の、ドレイン電流Idの推移を示したものである。尚、「w/o」は“without”の意である。この「w/o pulse」の測定条件は、半導体装置100Aにドレイン電圧Vdをスイープさせながら印加した時の動作(「スイープ動作」とも言う)をDC(Direct Current)で疑似的に再現したものである。
【0023】
図1(B)の「w/ pulse」は、所定のゲート電圧にて、0Vよりも大きい所定の正のドレイン電圧Vdを初期バイアス点とし、当該初期バイアス点からパルス的に所定のドレイン電圧Vdを印加していく条件で測定した時の、ドレイン電流Idの推移を示したものである。尚、「w/」は“with”の意である。この「w/ pulse」の測定条件は、半導体装置100Aに高周波(Radio Frequency;RF)パルスでドレイン電圧Vdを印加した時の動作(「RFパルス動作」とも言う)をDCで疑似的に再現したものである。
【0024】
コンタクト抵抗Rcが比較的高くなる半導体装置100Aでは、図1(B)の「w/o pulse」に示すように、スイープ動作の測定条件の場合、ドレイン電流Id及びその最大ドレイン電流Imaxが、「理想特性」に対して低下してしまう。半導体装置100Aのドレイン電流Id及びその最大ドレイン電流Imaxは、図1(B)の「w/ pulse」に示すように、RFパルス動作の測定条件の場合、「w/o pulse」の場合よりも更に低下してしまう。図1(B)に示すように、半導体装置100Aでは、コンタクト抵抗Rcが比較的高いことで、それを抵抗成分とするソース電極130とドレイン電極140との間のオン抵抗Ronも、「理想特性」に対して高くなってしまう。
【0025】
図1(C)は、半導体装置100Aの入力電力Pinと出力電力Poutとの関係の一例を模式的に示したものである。半導体装置100Aでは、ドレイン電流Id及びその最大ドレイン電流Imaxの低下並びにオン抵抗Ronの増加の結果、図1(C)の「実特性」に示すように、出力電力Pout及びその飽和出力電力Psatが、「理想特性」に対して低下してしまう。
【0026】
このように半導体装置100Aでは、HEMTの特性を活かした十分な性能を実現することができない場合がある。
上記のような半導体装置100Aに対し、次の図2に示すような半導体装置が提案されている。
【0027】
図2は半導体装置の第2例について説明する図である。図2(A)には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。図2(B)には、半導体装置の一例の電流-電圧特性を模式的に示している。図2(C)には、半導体装置の一例の入出力特性を模式的に示している。
【0028】
図2(A)に示す半導体装置100Bは、HEMTの一例である。半導体装置100Bは、ソース電極130及びドレイン電極140と電子走行層122との間に、半導体層170a及び半導体層170bがそれぞれ設けられた構成を有する。ソース電極130は、半導体層170aと接続される。ドレイン電極140は、半導体層170bと接続される。半導体装置100Bは、このような構成を有する点で、上記半導体装置100A(図1)と相違する。
【0029】
半導体層170a及び半導体層170bは、半導体積層構造120の面120aから電子走行層122に達するように設けられる。半導体層170a及び半導体層170bには、窒化物半導体が用いられる。半導体層170a及び半導体層170bは、n型不純物を含有する。半導体層170a及び半導体層170bには、例えば、n型不純物としてSiを含有するn型GaNが用いられる。半導体層170a及び半導体層170bはそれぞれ、半導体積層構造120の面120aから電子走行層122に達するように設けられた凹部125a及び凹部125bに、MOVPE法等を用いて成長(再成長)される。半導体層170a及び半導体層170bは、再成長層等とも称される。
【0030】
半導体装置100Bでは、n型の半導体層170a及び半導体層170bが設けられることで、上記半導体装置100Aに比べて、ソース電極130及びドレイン電極140と、2DEG領域180が生成される電子走行層122との間のコンタクト抵抗が低減される。
【0031】
ここで、図2(B)は、半導体装置100Bのドレイン電圧Vdとドレイン電流Idとの関係の一例を模式的に示したものである。図2(B)に示す「w/o pulse」及び「w/ pulse」の測定条件はそれぞれ、上記図1(B)について述べたのと同様の測定条件である。
【0032】
n型の半導体層170a及び半導体層170bが設けられる半導体装置100Bでは、ソース電極130及びドレイン電極140と電子走行層122との間のコンタクト抵抗が低減される。半導体装置100Bは、このようにコンタクト抵抗が低減されることで、図2(B)の「w/o pulse」に示すように、スイープ動作の測定条件の場合、ドレイン電流Idの推移が、「理想特性」と同等又は「理想特性」に近くなる。しかし、半導体装置100Bのドレイン電流Idは、図2(B)の「w/ pulse」に示すように、RFパルス動作の測定条件の場合、「理想特性」及び「w/o pulse」の場合よりも低下してしまう。即ち、半導体装置100Bは、RFパルスでドレイン電圧Vdが印加される動作条件では、ドレイン電圧Vdが高くなるとドレイン電流Idが低下し、電流コラプスが増加してしまう。
【0033】
図2(C)は、半導体装置100Bの入力電力Pinと出力電力Poutとの関係の一例を模式的に示したものである。半導体装置100Bでは、電流コラプスの増加の結果、図2(C)の「実特性」に示すように、出力電力Pout及びその飽和出力電力Psatが、「理想特性」に対して低下してしまう。
【0034】
半導体装置100Bについて更に述べる。
図3は半導体装置の第2例の構成について更に説明する図である。図3には、図2(A)のドレイン電極側Q0部の拡大断面図を模式的に示している。図3には、電流の流れを矢印で模式的に示している。
【0035】
上記のように、半導体装置100Bは、電子走行層122及び電子供給層124等を含む半導体積層構造120を含み、ドレイン電極140側に、半導体積層構造120の面120aから電子走行層122に達しn型不純物を含有する半導体層170bを含む。半導体層170b上にドレイン電極140が設けられる。ドレイン電極140は、例えば、図3に示すように、半導体層170bの一部の上に設けられる。即ち、この例では、半導体層170bの、ゲート電極150(図2(A))側の端部171は、ドレイン電極140によっては覆われない構成となっている。ドレイン電極140で覆われない半導体層170bの端部171と、半導体積層構造120の面120aとを覆うように、パッシベーション膜としてSiN等の絶縁膜160が設けられる。
【0036】
半導体装置100Bの動作時には、図3に矢印で示すように、ドレイン電極140から半導体層170bを通じて電子走行層122に電流190が流れる。電子走行層122に流れた電流190は、電子走行層122内を、2DEG領域180に沿って、ソース電極130(図2(A))側に向かって流れる。
【0037】
ここで、図3に示すように配置される半導体層170b及びドレイン電極140を含む半導体装置100Bでは、半導体層170bの端部171を覆うようにパッシベーション膜の絶縁膜160が設けられることで、次のようなことが起こり得る。
【0038】
即ち、半導体装置100Bでは、半導体層170bの端部171とそれを覆う絶縁膜160との界面に、電子トラップ(電子捕獲)の準位が形成され得る。例えば、半導体層170bを再成長するプロセスの不安定性のために、このような電子トラップの準位が形成され得る。よって、半導体層170bの端部171と絶縁膜160との界面には、図3に示すように、電子191がトラップされ得る。例えば、高電圧動作時に電子走行層122の2DEG領域180の準位から飛び出した電子が、半導体層170bの端部171と絶縁膜160との界面に、電子191としてトラップされ得る。或いは、ゲートリーク電流による電子が、半導体層170bの端部171と絶縁膜160との界面に、電子191としてトラップされ得る。
【0039】
半導体層170bの端部171と絶縁膜160との界面に電子191がトラップされると、トラップされた電子191の影響により、その直下の領域AR0(図3に点線枠で図示)の電子走行層122が空乏化され、当該領域AR0における電子濃度が低下する。半導体装置100Bでは、このような電子191のトラップに起因した電子走行層122の電子濃度の低下により、上記図2(B)及び図2(C)に示したように、電流コラプスが増加し、出力電力が低下して、高周波特性が低下する恐れがある。
【0040】
更に、図3に示すように、半導体装置100Bにおいて、ドレイン電極140から流れる電流190は、半導体層170b内を、比較的電子濃度が高い2DEG領域180に向かって流れ易い。そのため、半導体装置100Bでは、電流190がドレイン電極140から半導体層170bを通じて電子走行層122に流れる際の電流密度が上昇し易い。電流密度の上昇は、電流190が流れる電流経路上のドレイン電極140、半導体層170b及び電子走行層122の間の元素移動を引き起こすエレクトロマイグレーションを招く恐れがある。尚、図3ではドレイン電極140側を例にするが、ソース電極130側についても同様に、電子走行層122から半導体層170aに流れる電流の電流密度が上昇し、それによりエレクトロマイグレーションが生じる恐れがある。エレクトロマイグレーションは、半導体装置100Bの性能及び信頼性を低下させる恐れがある。
【0041】
このように半導体装置100Bでは、HEMTの特性を活かした十分な性能を実現すること、更には、十分な性能を高い信頼性で実現することができない場合がある。
以上のような点に鑑み、ここでは以下に実施の形態として示すような構成を採用し、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置を実現する。
【0042】
[第1実施形態]
図4は第1実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。図4には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0043】
図4に示す半導体装置1は、HEMTの一例である。半導体装置1は、基板10、半導体積層構造20、半導体層70a、半導体層70b、ソース電極30、ドレイン電極40、ゲート電極50及び絶縁膜60を含む。
【0044】
基板10には、SiC基板、GaN基板、Si基板、サファイア基板等、各種基板が用いられる。基板10は、導電性であってもよいし、絶縁性であってもよいし、半絶縁性であってもよい。所定の基板10上に、MOVPE法等を用いて、半導体積層構造20が設けられる。
【0045】
半導体積層構造20は、例えば、バッファ層21、電子走行層22、スペーサ層23及び電子供給層24を含む。バッファ層21、電子走行層22、スペーサ層23及び電子供給層24の各層には、窒化物半導体が用いられる。バッファ層21には、例えば、AlNが用いられる。電子走行層22には、例えば、GaNが用いられる。スペーサ層23には、例えば、AlN又はAlGaNが用いられる。電子供給層24には、例えば、AlGaN、InAlGaN又はInAlNが用いられる。基板10上に、MOVPE法等を用いて、バッファ層21、電子走行層22、スペーサ層23及び電子供給層24が順次積層される。バッファ層21の厚さは、例えば、その上層に電子走行層22をはじめとする各層が順次形成可能となる所定の厚さに設定される。電子走行層22の厚さは、例えば、3μmに設定される。スペーサ層23の厚さは、例えば、1nmに設定される。電子供給層24の厚さは、例えば、10nmに設定される。半導体積層構造20の、電子供給層24が積層される電子走行層22、この例では、スペーサ層23を介して電子供給層24が積層される電子走行層22に、2DEG領域80が生成される。
【0046】
半導体積層構造20において、電子供給層24には、電子走行層22に用いられる窒化物半導体よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体が用いられる。半導体積層構造20では、電子供給層24に用いられる窒化物半導体の自発分極、及び、電子走行層22に用いられる窒化物半導体との格子定数差に起因した歪みによって電子供給層24に発生するピエゾ分極により、電子走行層22に2DEG領域80が生成される。ここで、InAlGaNやInAlN等のInを含有する窒化物半導体は、比較的高いAl組成が実現可能な窒化物半導体の一種である。Al組成を高めたInAlGaNやInAlN等は、非常に強い自発分極を有する。従って、電子供給層24に、このようなInを含有するInAlGaNやInAlN等を用いると、Inを含有しないAlGaN等を用いる場合に比べて、より高濃度の2DEG領域80の生成が可能になる。
【0047】
半導体積層構造20では、スペーサ層23を省略し、電子走行層22上に直接電子供給層24を形成することもできる。また、バッファ層21を基板10の一部(その表層部)と見なすこともできる。
【0048】
尚、電子走行層22に含まれる窒化物半導体を、「第1窒化物半導体」とも言う。電子供給層24に含まれる窒化物半導体を、「第2窒化物半導体」とも言う。
半導体層70a及び半導体層70bは、半導体積層構造20に設けられる。半導体層70a及び半導体層70bは、半導体積層構造20の電子供給層24側の面20aから電子走行層22に達するように設けられる。半導体層70a及び半導体層70bは、ソース電極30及びドレイン電極40が形成される領域内にそれぞれ設けられる。半導体層70a及び半導体層70bは、対向する位置に、互いに分離されて、設けられる。半導体層70a及び半導体層70bには、窒化物半導体が用いられる。半導体層70a及び半導体層70bは、n型不純物を含有する。半導体層70a及び半導体層70bには、例えば、n型不純物としてSiを含有するn型GaNが用いられる。半導体層70a及び半導体層70bはそれぞれ、半導体積層構造20の面20aから電子走行層22に達するように設けられた凹部25a及び凹部25bに、MOVPE法等を用いて成長(再成長)される。半導体層70a及び半導体層70bは、例えば、半導体積層構造20の面20aと平行な方向の幅が、面20aから電子走行層22に向かって狭くなる、テーパー形状を有する。半導体層70a及び半導体層70bは、再成長層、コンタクト層、低抵抗層等とも称される。
【0049】
尚、半導体積層構造20の電子供給層24側の面20aを、「第1面」とも言う。半導体層70a及び半導体層70b、又は、それらのうちの一方(例えば半導体層70b)に含まれる窒化物半導体を、「第3窒化物半導体」とも言う。
【0050】
ソース電極30及びドレイン電極40はそれぞれ、半導体積層構造20に設けられる半導体層70a及び半導体層70b並びに面20aの一部の上に設けられる。ソース電極30及びドレイン電極40は、対向する位置に、互いに分離されて、設けられる。ソース電極30は、半導体層70aと接続される。ドレイン電極40は、半導体層70bと接続される。ソース電極30は、半導体層70aと、半導体積層構造20の面20aの、半導体層70aに隣接する部位20aaとを覆うように、設けられる。この部位20aaは、半導体層70aの、対向する半導体層70b側に隣接する部位である。ドレイン電極40は、半導体層70bと、半導体積層構造20の面20aの、半導体層70bに隣接する部位20abとを覆うように、設けられる。この部位20abは、半導体層70bの、対向する半導体層70a側に隣接する部位である。ソース電極30及びドレイン電極40には、Ta、Al等の金属材料が用いられる。ソース電極30及びドレイン電極40は、オーミック電極として機能するように設けられる。
【0051】
尚、半導体積層構造20に設けられ、ドレイン電極40と接続されて且つドレイン電極40で覆われる半導体層70bを、「第1半導体層」とも言う。半導体積層構造20の面20aの、半導体層70bに隣接し且つドレイン電極40で覆われる部位20abを、「第1部位」とも言う。半導体積層構造20に設けられ、ソース電極30と接続されて且つソース電極30で覆われる半導体層70aを、「第2半導体層」とも言う。半導体積層構造20の面20aの、半導体層70aに隣接し且つソース電極30で覆われる部位20aaを、「第3部位」とも言う。
【0052】
ゲート電極50は、半導体積層構造20の面20a上であって、ソース電極30とドレイン電極40との間に、設けられる。ゲート電極50は、ソース電極30及びドレイン電極40から分離されて、設けられる。ゲート電極50には、Ni、Au等の金属材料が用いられる。ゲート電極50は、例えば、ショットキー電極として機能するように設けられる。或いは、ゲート電極50は、半導体積層構造20の面20a上に、ゲート絶縁膜(図示せず)を介して設けられ、MIS型ゲート構造とされてもよい。ゲート電極50は、高耐圧化のため、ドレイン電極40よりもソース電極30の方に近付けた、いわゆる非対称配置とされてもよい。
【0053】
尚、ドレイン電極40を、「第1電極」とも言う。ソース電極30を、「第2電極」とも言う。ゲート電極50を、「第3電極」とも言う。
絶縁膜60は、ソース電極30及びドレイン電極40並びにゲート電極50が設けられる半導体積層構造20の面20a上に設けられる。絶縁膜60は、少なくとも、半導体積層構造20の面20aの、ソース電極30及びドレイン電極40並びにゲート電極50から露出する部位20adを覆うように、設けられる。即ち、絶縁膜60は、半導体積層構造20の面20aのうち、ソース電極30で覆われる部位20aa、ドレイン電極40で覆われる部位20ab、及び、ゲート電極50で覆われる部位20acを除いた、面20aの部位20adを覆うように、設けられる。絶縁膜60は、半導体積層構造20の面20aの部位20adと、部位20aaを覆うソース電極30とに接し、ソース電極30で覆われる半導体層70aからは分離される。絶縁膜60は、半導体積層構造20の面20aの部位20adと、部位20abを覆うドレイン電極40とに接し、ドレイン電極40で覆われる半導体層70bからは分離される。絶縁膜60には、SiN等の絶縁材料が用いられる。絶縁膜60は、半導体積層構造20を、水分、外気、外力等から保護する。絶縁膜60は、パッシベーション膜としての機能を有する。絶縁膜60は、半導体積層構造20の面20aの部位20adのほか、ソース電極30及びドレイン電極40を覆うように設けられてもよい。
【0054】
尚、半導体積層構造20の面20aの、絶縁膜60で覆われる部位20adを、「第2部位」とも言う。
半導体装置1の動作時には、例えば、ソース電極30に対してドレイン電極40が高電位となるように電圧が印加されると共に、ゲート電極50に所定の電圧が印加される。ゲート電極50に印加される電圧による電界効果により、ソース電極30とドレイン電極40との間のゲート電極50直下の2DEG領域80を通過する電荷量が制御され、出力のドレイン電流の大きさが制御される。
【0055】
上記のような構成を有する半導体装置1では、ソース電極30と電子走行層22との間に、n型不純物を含有する半導体層70aが設けられる。これにより、ソース電極30と、2DEG領域80が生成される電子走行層22との間のコンタクト抵抗が低減される。半導体装置1では、ドレイン電極40と電子走行層22との間に、n型不純物を含有する半導体層70bが設けられる。これにより、ドレイン電極40と、2DEG領域80が生成される電子走行層22との間のコンタクト抵抗が低減される。
【0056】
更に、半導体装置1では、半導体層70aと、それに隣接する半導体積層構造20の面20aの部位20aaとが、ソース電極30で覆われる。半導体層70bと、それに隣接する半導体積層構造20の面20aの部位20abとが、ドレイン電極40で覆われる。絶縁膜60は、半導体積層構造20の面20aにおける、ソース電極30及びドレイン電極40でそれぞれ覆われる部位20aa及び部位20abとは異なる部位20adを覆うように設けられる。そのため、絶縁膜60は、半導体層70a及び半導体層70bからは分離される。よって、半導体装置1では、絶縁膜60と、半導体層70a及び半導体層70bとが接する界面の形成が回避される。
【0057】
このような界面の形成が回避されることで、半導体装置1の動作時に比較的高電圧が印加されるドレイン電極40側において、半導体層70b上の電子トラップの発生が抑えられ、当該電子トラップに起因した電子走行層22の電子濃度の低下が抑えられる。これにより、半導体装置1では、電流コラプスの増加、出力電力の低下が抑えられる。この点について更に述べる。
【0058】
図5は第1実施形態に係る半導体装置の特性例について説明する図である。図5(A)には、半導体装置の一例の電流-電圧特性を模式的に示している。図5(B)には、半導体装置の一例の入出力特性を模式的に示している。
【0059】
図5(A)は、半導体装置1のドレイン電圧Vdとドレイン電流Idとの関係の一例を模式的に示したものである。図5(A)に示す「w/o pulse」及び「w/ pulse」の測定条件はそれぞれ、上記図1(B)及び図2(B)について述べたのと同様の測定条件である。
【0060】
半導体装置1では、n型の半導体層70a及び半導体層70bが設けられ、ソース電極30及びドレイン電極40と電子走行層22との間のコンタクト抵抗が低減される。半導体装置1では、このようにコンタクト抵抗が低減されることで、図5(A)の「w/o pulse」に示すように、スイープ動作の測定条件の場合、ドレイン電流Idの推移が、「理想特性」と同等又は「理想特性」に近くなる。
【0061】
更に、半導体装置1では、ドレイン電極40側において、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとがドレイン電極40で覆われる。パッシベーション膜の絶縁膜60が設けられる場合、半導体層70bは絶縁膜60からは分離される。これにより、絶縁膜60と半導体層70bとが接する界面の形成が回避される。よって、半導体装置1の動作時に比較的高電圧がドレイン電極40側に印加される際にも、半導体層70b上の電子トラップの発生が抑えられ、当該電子トラップに起因した電子走行層22の電子濃度の低下、電流コラプスの増加が抑えられる。そのため、半導体装置1では、コンタクト抵抗の低減に加えて、電流コラプスの増加が抑えられることで、図5(A)の「w/ pulse」に示すように、RFパルス動作の測定条件の場合にも、ドレイン電流Idの推移が、「理想特性」及び「w/o pulse」の場合に近付く。
【0062】
図5(B)は、半導体装置1の入力電力Pinと出力電力Poutとの関係の一例を模式的に示したものである。半導体装置1では、コンタクト抵抗が低減され、且つ、電流コラプスの増加が抑えられることで、図5(B)の「実特性」に示すように、出力電力Pout及びその飽和出力電力Psatが、「理想特性」と同等又は「理想特性」に近くなる。
【0063】
上記のように、半導体装置1では、半導体積層構造20に半導体層70bが設けられ、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うようにドレイン電極40が設けられる。このような構成が採用されることで、半導体層70bと絶縁膜60とが接する界面の形成が回避され、当該界面の電子トラップ、それに起因した電子走行層22の電子濃度の低下、電流コラプスの増加が抑えられる。これにより、高性能の半導体装置1が実現される。
【0064】
また、半導体装置1では、例えばドレイン電極40側において、半導体層70b及びそれに隣接する部位20abがドレイン電極40で覆われる。そのため、電流は、ドレイン電極40から半導体層70bに流れるほか、部位20abから電子供給層24にも流れ、電子走行層22に流れる。これにより、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流の電流密度が緩和される。電流密度が緩和されることで、電流経路上に存在する元素のエレクトロマイグレーションが抑えられ、半導体装置1の性能及び信頼性の低下が抑えられる。
【0065】
ここで、半導体装置1の構成例及び電流密度の緩和について更に述べる。
まず、第1構成例について説明する。
図6は第1実施形態に係る半導体装置の第1構成例について説明する図である。図6には、図4のドレイン電極側Q1部の第1構成例の拡大断面図を模式的に示している。
【0066】
上記のように、半導体装置1は、電子走行層22及び電子供給層24等を含む半導体積層構造20を含み、ドレイン電極40側に、半導体積層構造20の面20aから電子走行層22に達しn型不純物を含有する半導体層70bを含む。半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うように、ドレイン電極40が設けられる。面20aの、ドレイン電極40で覆われる部位20abとは異なる部位20adが、パッシベーション膜の絶縁膜60で覆われる。
【0067】
半導体装置1において、半導体層70bは、図6に示すように、そのゲート電極50(図4)側の端部71が、半導体積層構造20の面20aの部位20abを部分的に覆うように、設けられてもよい。例えば、半導体層70bは、ドレイン電極40で覆われる部位20abの、ドレイン電極40の端41よりも内側の一部を覆うように、設けられる。半導体層70bは、ドレイン電極40で覆われる部位20abの、ドレイン電極40の端41よりも内側の一部を覆うように、端部71が部位20ab上に乗り上げた形状を有しているとも言える。
【0068】
尚、ここではドレイン電極40側を例にするが、半導体装置1では、ソース電極30側についても同様に、半導体層70aの端部が面20aの部位20aa上に乗り上げた形状とされてよい。半導体層70a及び半導体層70bを形成(再成長)する際、このように面20aに乗り上げる形状となるようにすると、凹部25a及び凹部25bがそれぞれ半導体層70a及び半導体層70bで十分に充填されるようになる。これにより、凹部25aの半導体層70aによる充填不足及び凹部25bの半導体層70bによる充填不足、それらによって形成される窪みの基板(ウェハ)面内分布が抑えられる。その結果、例えば、ウェハ上に更に形成される各種層のパターニング精度の低下や形状の不均一化等が抑えられる。
【0069】
この図6に示すような構成を採用した半導体装置1における電流密度の緩和について、次の図7及び図8を参照して説明する。
図7は比較例に係る半導体装置の電流密度について説明する図である。図8は第1実施形態の第1構成例に係る半導体装置の電流密度について説明する図である。図7(A)には、上記図2及び図3に示した半導体装置100Bのドレイン電極側要部断面図を電流の流れと共に模式的に示している。図7(B)には、上記図2及び図3に示した半導体装置100Bのドレイン電極側電流密度[A/cm]の分布を模式的に示している。また、図8(A)には、上記図4及び図6に示した半導体装置1のドレイン電極側要部断面図を電流の流れと共に模式的に示している。図8(B)には、上記図4及び図6に示した半導体装置1のドレイン電極側電流密度[A/cm]の分布を模式的に示している。
【0070】
図7(A)に示すように、比較例の半導体装置100Bでは、半導体積層構造120に設けられた半導体層170b上に、ドレイン電極140が設けられる。ドレイン電極140は、位置a1から位置b1の範囲に延びる半導体層170b上に、位置b1からゲート電極150(図2)側にはみ出ないように、設けられる。即ち、ドレイン電極140は、半導体層170bの端部171を覆わないように、設けられる。ドレイン電極140で覆われない半導体層170bの端部171を覆うように、半導体積層構造120の面120aに、パッシベーション膜の絶縁膜160が設けられる。尚、位置a1は、例えば、ドレイン電極140の端、又は、半導体装置1の電界効果トランジスタ構造が形成される活性領域(素子領域)の端、或いは、活性領域とその外側に形成される素子分離領域との境界の位置である。
【0071】
この図7(A)のような構成を採用した半導体装置100Bでは、ドレイン電極140から電子走行層122に流れる電流190の電流密度が、例えば、図7(B)に示すような分布となる。尚、図7(B)には、半導体装置100Bの電流密度分布を「Tr0」で示している。半導体層170bの端部171がドレイン電極140で覆われない半導体装置100Bでは、端部171とそれに接する絶縁膜160との界面における電子トラップにより、端部171直下の電子走行層122の電子濃度が低下し得る。ドレイン電極140が半導体層170bの位置b1からはみ出ない半導体装置100Bでは、ドレイン電極140から流れる電流190が、半導体層170b内を、電子走行層122の比較的電子濃度が高い2DEG領域180に向かって流れ易い。そのため、半導体装置100Bでは、位置b1から位置a1側の一定幅W1の領域に電流190が集中し易くなり、電流密度が高くなる。例えば、位置b1から位置a1側の幅W1が5μm程度までの領域に電流密度のピークが現れ、そのピークの電流密度J0が5×10A/cm程度といった極めて高い値を示し得る。
【0072】
これに対し、図8(A)に示す半導体装置1では、半導体積層構造20に半導体層70bが設けられ、その半導体層70b上と、それに隣接する半導体積層構造20の面20aの部位20ab上とに、ドレイン電極40が設けられる。半導体層70bは、位置a1から位置d1の範囲に延びる。半導体層70bは、位置b1から位置c1の範囲が、テーパー状に幅が変化する部位であり、位置c1から位置d1の範囲が、半導体積層構造20の面20aに乗り上げる部位である。面20aの、位置c1から位置e1の範囲が、半導体層70bに隣接する部位20abである。ドレイン電極40は、半導体層70bとそれに隣接する部位20abとを覆うように、設けられる。半導体積層構造20の面20aの、部位20abとは異なる部位20adに、パッシベーション膜の絶縁膜60が設けられる。尚、位置a1は、例えば、ドレイン電極40の端、又は、電界効果トランジスタ構造が形成される活性領域(素子領域)の端、或いは、活性領域とその外側の素子分離領域との境界の位置である。
【0073】
この図8(A)のような構成を採用した半導体装置1では、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流90の電流密度が、例えば、図8(B)に示すような分布となる。尚、図8(B)には、図8(A)の構成を採用した半導体装置1の電流密度分布を「Tr1」(実線)で示している。図8(B)には比較のため、図7(A)の構成を採用した半導体装置100Bの電流密度分布を「Tr0」(鎖線)で併せて示している。半導体層70bとそれに隣接する部位20abとがドレイン電極40で覆われる半導体装置1(Tr1)では、半導体層70bと絶縁膜60とが接する界面の形成が回避される。よって、当該界面における電子トラップの発生、それによる電子走行層22の電子濃度の低下が抑えられる。半導体層70bとそれに隣接する部位20abとがドレイン電極40で覆われる半導体装置1(Tr1)では、ドレイン電極40から流れる電流90が、半導体層70bに流れるほか、部位20abから電子供給層24にも流れ、電子走行層22に流れる。これにより、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流90の電流密度が緩和される。
【0074】
例えば、図8(B)に示すように、半導体装置1(Tr1)の電流密度は、半導体層70bが存在する、位置b1から位置a1側の一定幅の領域に、ピークが現れる。この半導体装置1(Tr1)のピークの電流密度J1は、半導体装置100B(Tr0)のピークの電流密度J0に比べて、大幅に低減される。そして、半導体装置1(Tr1)の電流密度は、半導体層70bの幅がテーパー状に変化する、位置b1から位置c1の領域で、ピークの電流密度J1から徐々に減少する。半導体装置1(Tr1)では、半導体層70bに隣接する部位20abの、位置c1から位置e1の領域にも、一定電流密度で電流90が流れる。
【0075】
図8(A)の構成を採用した半導体装置1では、ピーク電流密度が低減されると共に、半導体層70bとそれに隣接する部位20abとを含むより広い領域が電流経路となることで、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流90の電流密度が緩和される。電流密度が緩和されることで、電流経路上に存在する元素のエレクトロマイグレーションが抑えられ、半導体装置1の性能及び信頼性の低下が抑えられる。
【0076】
尚、ここではドレイン電極40側を例にするが、半導体装置1では、ソース電極30側についても同様に、半導体層70aとそれに隣接する部位20aaとを覆うようにソース電極30が設けられる。これにより、電流密度に関し、上記ドレイン電極40側について述べたのと同様の効果が得られる。即ち、半導体層70aとそれに隣接する部位20aaとを含むより広い領域が電流経路となることで、電子走行層22からソース電極30に流れる電流の電流密度が緩和される。電流密度が緩和されることで、電流経路上に存在する元素のエレクトロマイグレーションが抑えられ、半導体装置1の性能及び信頼性の低下が抑えられる。
【0077】
続いて、第2構成例について説明する。
図9は第1実施形態に係る半導体装置の第2構成例について説明する図である。図9には、図4のドレイン電極側Q1部の第2構成例の拡大断面図を模式的に示している。
【0078】
半導体装置1において、半導体層70bは、図9に示すように、その端部が半導体積層構造20の面20aを部分的に覆わない形状、即ち、隣接する部位20ab上に乗り上げない形状を有していてもよい。半導体層70bは、その上面が半導体積層構造20の面20aと同一平面内に位置する形状を有しているとも言える。図9の例では、半導体積層構造20の凹部25b内に、半導体層70bが設けられ、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うように、ドレイン電極40が設けられる。面20aの、ドレイン電極40で覆われる部位20abとは異なる部位20adが、パッシベーション膜の絶縁膜60で覆われる。
【0079】
尚、ここではドレイン電極40側を例にするが、半導体装置1では、ソース電極30側についても同様に、半導体層70aの端部が面20aの部位20aa上に乗り上げない形状、或いは、半導体層70bの上面が面20aと同一平面内に位置する形状とされてよい。半導体層70a及び半導体層70bを形成(再成長)する際、このように半導体層70a及び半導体層70bが面20aに乗り上げない形状となるようにすると、基板(ウェハ)の平坦性が向上する。その結果、例えば、ウェハ上に更に形成される各種層のパターニング精度の低下や形状の不均一化等が抑えられる。
【0080】
この図9に示すような構成を採用した半導体装置1における電流密度の緩和について、次の図10を参照して説明する。
図10は第1実施形態の第2構成例に係る半導体装置の電流密度について説明する図である。図10(A)には、上記図4及び図9に示した半導体装置1のドレイン電極側要部断面図を電流の流れと共に模式的に示している。図10(B)には、上記図4及び図9に示した半導体装置1のドレイン電極側電流密度[A/cm]の分布を模式的に示している。
【0081】
図10(A)に示す半導体装置1において、半導体層70bは、位置a1から位置c1の範囲に延びる。半導体層70bは、位置b1から位置c1の範囲が、テーパー状に幅が変化する部位である。面20aの、位置c1から位置e1の範囲が、半導体層70bに隣接する部位20abである。ドレイン電極40は、半導体層70bとそれに隣接する部位20abとを覆うように、設けられる。半導体積層構造20の面20aの、部位20abとは異なる部位20adに、パッシベーション膜の絶縁膜60が設けられる。尚、位置a1は、例えば、ドレイン電極40の端、又は、半導体装置1の電界効果トランジスタ構造が形成される活性領域(素子領域)の端、或いは、活性領域とその外側に形成される素子分離領域との境界の位置である。
【0082】
この図10(A)のような構成を採用した半導体装置1では、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流90の電流密度が、例えば、図10(B)に示すような分布となる。尚、図10(B)には、図10(A)の構成を採用した半導体装置1の電流密度分布を「Tr2」(実線)で示している。図10(B)には比較のため、図7(A)の構成を採用した半導体装置100Bの電流密度分布を「Tr0」(鎖線)で、また、図8(A)の構成を採用した半導体装置1の電流密度分布を「Tr1」(点線)で、併せて示している。半導体層70bとそれに隣接する部位20abとがドレイン電極40で覆われる半導体装置1(Tr2)では、半導体層70bと絶縁膜60とが接する界面の形成が回避される。よって、当該界面における電子トラップの発生、それによる電子走行層22の電子濃度の低下が抑えられる。半導体層70bとそれに隣接する部位20abとがドレイン電極40で覆われる半導体装置1(Tr2)では、ドレイン電極40から流れる電流90が、半導体層70bに流れるほか、部位20abから電子供給層24にも流れ、電子走行層22に流れる。これにより、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流90の電流密度が緩和される。
【0083】
例えば、図10(B)に示すように、半導体装置1(Tr2)の電流密度は、半導体層70bが存在する、位置b1から位置a1側の一定幅の領域に、ピークが現れる。この半導体装置1(Tr2)のピークの電流密度J2は、半導体装置100B(Tr0)のピークの電流密度J0に比べて、大幅に低減される。そして、半導体装置1(Tr2)の電流密度は、半導体層70bの幅がテーパー状に変化する、位置b1から位置c1の領域で、ピークの電流密度J2から徐々に減少する。半導体装置1(Tr2)では、半導体層70bに隣接する部位20abの、位置c1から位置e1の領域にも、一定電流密度で電流90が流れる。
【0084】
図10(A)の構成を採用した半導体装置1(Tr2)では、図8(A)の構成を採用した半導体装置1(Tr1)に比べて、半導体層70bが存在する、位置b1から位置a1側の一定幅の領域におけるピークの電流密度J2が低くなる。そして、半導体層70bの幅がテーパー状に変化する、位置b1から位置c1の領域では、ピークの電流密度J2からの減少が緩やかとなり、半導体層70bに隣接する部位20abの、位置c1から位置e1の領域では、電流密度が高くなる。部位20ab上に乗り上げた端部71を有しない半導体装置1(Tr2)では、そのような端部71を有する半導体装置1(Tr1)に比べて、半導体層70bを通じて電子走行層22に流れる電流90が減少する。その一方、半導体装置1(Tr2)では、半導体装置1(Tr1)に比べて、部位20abから電子供給層24を通じて電子走行層22に流れる電流90が増加する。
【0085】
図10(A)の構成を採用した半導体装置1でも、ピーク電流密度が低減されると共に、半導体層70bとそれに隣接する部位20abとを含むより広い領域が電流経路となることで、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流90の電流密度が緩和される。電流密度が緩和されることで、電流経路上に存在する元素のエレクトロマイグレーションが抑えられ、半導体装置1の性能及び信頼性の低下が抑えられる。
【0086】
尚、ここではドレイン電極40側を例にするが、半導体装置1では、ソース電極30側についても同様に、半導体層70aとそれに隣接する部位20aaとを覆うようにソース電極30が設けられる。これにより、電流密度に関し、ドレイン電極40側について述べたのと同様の効果が得られる。即ち、半導体層70aとそれに隣接する部位20aaとを含むより広い領域が電流経路となることで、電子走行層22からソース電極30に流れる電流の電流密度が緩和される。電流密度が緩和されることで、電流経路上に存在する元素のエレクトロマイグレーションが抑えられ、半導体装置1の性能及び信頼性の低下が抑えられる。
【0087】
上記のように、半導体装置1では、半導体積層構造20に半導体層70bが設けられ、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うようにドレイン電極40が設けられる構成が採用される。これにより、半導体層70bと絶縁膜60とが接する界面の形成が回避され、当該界面の電子トラップ、それに起因した電子走行層22の電子濃度の低下が抑えられる。更に、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。また、半導体装置1では、半導体積層構造20に半導体層70aが設けられ、半導体層70aとそれに隣接する面20aの部位20aaとを覆うようにソース電極30が設けられる構成が採用される。これにより、電子走行層22からソース電極30に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。上記のような構成が採用されることで、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置1が実現される。
【0088】
尚、半導体装置1において、半導体層70a及び半導体層70bは、例えば、半導体積層構造20の面20aと平行な方向の幅が、面20aから電子走行層22に向かって狭くなるようなテーパー形状を有する。例えば、半導体層70bをテーパー形状とすると、半導体層70bを通じて電子走行層22に流れる電流90の電流密度と、部位20abの電子供給層24を通じて電子走行層22に流れる電流90の電流密度との間の変化が急峻になることが抑えられる。即ち、図8(A)及び図8(B)の位置b1から位置c1の範囲、或いは、図10(A)及び図10(B)の位置b1から位置c1の範囲に見られるように、ピーク電流密度から一定電流密度まで減少する電流密度の変化(勾配)が緩やかになる。また、半導体層70aをテーパー形状とする場合も同様に、電子走行層22から半導体層70aに流れる電流の電流密度と、電子走行層22から部位20aaの電子供給層24に流れる電流の電流密度との間の変化(勾配)が急峻になることが抑えられる。
【0089】
但し、半導体層70a及び半導体層70bは、必ずしもテーパー形状を有していることを要しない。半導体層70a及び半導体層70bは、半導体積層構造20の面20aと平行な方向の幅が、面20aから電子走行層22まで一定幅となるような形状を有してもよい。半導体装置1では、例えば、半導体層70bが一定幅の形状とされる場合にも、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うようにドレイン電極40が設けられる構成が採用されることで、高い性能及び信頼性が実現される。即ち、半導体層70bと絶縁膜60との界面の電子トラップに起因した電子走行層22の電子濃度の低下が抑えられ、更に、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流の電流密度の上昇が抑えられ、半導体装置1の高い性能及び信頼性が実現される。また、半導体装置1では、例えば、半導体層70aが一定幅の形状とされる場合にも、半導体層70aとそれに隣接する面20aの部位20aaとを覆うようにソース電極30が設けられる構成が採用されることで、高い性能及び信頼性が実現される。即ち、電子走行層22からソース電極30に流れる電流の電流密度の上昇が抑えられ、半導体装置1の高い性能及び信頼性が実現される。
【0090】
半導体装置1において、半導体層70bに隣接しドレイン電極40で覆われる部位20abは、半導体層70bと対向する半導体層70a側(又はソース電極30側)に隣接する部位である。半導体装置1において、半導体層70aに隣接しソース電極30で覆われる部位20aaは、半導体層70aと対向する半導体層70b側(又はドレイン電極40側)に隣接する部位である。半導体装置1において、電流90は、ドレイン電極40からソース電極30に向かって流れる。従って、ドレイン電極40からソース電極30に向かって電流90が流れていく側の部位20abがドレイン電極40で覆われることで、電子トラップに起因した電子濃度の低下、及び、電流密度の上昇が効果的に抑えられるようになる。ドレイン電極40からソース電極30に向かって電流90が流れてくる側の部位20aaがソース電極30で覆われることで、電流密度の上昇が効果的に抑えられるようになる。これにより、半導体装置1の高い性能及び信頼性が実現される。
【0091】
尚、ドレイン電極40が、半導体層70bを覆い、半導体積層構造20の面20aの半導体層70bに隣接する部位20abと接する構成であれば、電子トラップ及びそれに起因した電子濃度の低下の抑制並びに電流密度の上昇の抑制に対し一定の効果が得られる。
【0092】
次に、上記のような半導体装置1の製造方法について説明する。
図11から図13は第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図である。図11(A)、図11(B)、図12(A)、図12(B)、図13(A)及び図13(B)にはそれぞれ、半導体装置製造工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0093】
はじめに、図11(A)に示すような基板10及び半導体積層構造20が準備される。まず、所定の基板10が準備され、その基板10上に、例えば、MOVPE法を用いて、半導体積層構造20のバッファ層21、電子走行層22、スペーサ層23及び電子供給層24が順次形成される。例えば、基板10としてSiC基板が用いられ、その上に、AlNのバッファ層21、GaNの電子走行層22、AlNのスペーサ層23、及び、InAlGaNの電子供給層24が、順次形成される。バッファ層21の厚さは、例えば、その上層に電子走行層22をはじめとする各層が順次成長可能となる所定の厚さに設定される。電子走行層22の厚さは、例えば、3μmに設定される。スペーサ層23の厚さは、例えば、1nmに設定される。電子供給層24の厚さは、例えば、10nmに設定される。電子供給層24が積層される電子走行層22、この例では、スペーサ層23を介して電子供給層24が積層される電子走行層22に、2DEG領域80が生成される。
【0094】
半導体積層構造20の形成後、図11(B)に示すように、半導体層70a及び半導体層70bを形成する領域に、凹部25a及び凹部25bがそれぞれ形成される。例えば、リソグラフィ技術及びエッチング技術が用いられ、半導体積層構造20の所定の領域に、凹部25a及び凹部25bが形成される。凹部25a及び凹部25bは、半導体積層構造20の電子供給層24側の面20aからスペーサ層23を貫通して電子走行層22に達するように、形成される。凹部25a及び凹部25bの形成には、例えば、ドライエッチングが用いられる。凹部25a及び凹部25bは、ドライエッチングにより、面20aと平行な方向の幅が電子走行層22に向かって狭くなるようなテーパー形状に形成され得る。凹部25a及び凹部25bは、ドライエッチング時のエッチング条件が調整されることで、テーパー形状に形成されてもよい。凹部25a及び凹部25bは、ドライエッチング時のエッチング条件が調整されることで、テーパー形状に形成される際の、その傾斜角度が調整されてもよい。凹部25a及び凹部25bの形成には、ドライエッチングに代えて、或いは、ドライエッチングと共に、ウェットエッチングが用いられてもよい。
【0095】
凹部25a及び凹部25bの形成後、図12(A)に示すように、凹部25a及び凹部25bにそれぞれ、半導体層70a及び半導体層70bが形成される。例えば、半導体層70a及び半導体層70bを形成する領域を除く領域に、SiN等(図示せず)を形成し、それをマスクとして、例えば、MOVPE法を用いて、半導体層70a及び半導体層70bが形成(再成長)される。半導体層70a及び半導体層70bとして、例えば、n型不純物であるSiをドープしたn型GaNが形成される。これにより、半導体積層構造20の凹部25aに、n型不純物を含有する半導体層70aが形成される。半導体積層構造20の凹部25bに、n型不純物を含有する半導体層70bが形成される。例えば、半導体層70a及び半導体層70bの形成後、マスクとして用いたSiN等は除去される。
【0096】
凹部25aに形成される半導体層70aは、その端部が半導体積層構造20の面20aの一部に乗り上げる形状となるように、形成されてもよい。凹部25bに形成される半導体層70bは、その端部が半導体積層構造20の面20aの一部に乗り上げる形状となるように、形成されてもよい。半導体層70a及び半導体層70bがこのように形成されることで、上記図6等で述べたような形状を有する半導体層70a及び半導体層70bが得られる。半導体層70a及び半導体層70bをこのように形成することで、凹部25a及び凹部25bがそれぞれ半導体層70a及び半導体層70bで十分に充填され、凹部25a及び凹部25bの充填不足によって形成される窪みの基板面内分布が抑えられる。
【0097】
凹部25aに形成される半導体層70aは、その上面が半導体積層構造20の面20aと同一平面内に位置する形状(即ち面20aに乗り上げない形状)となるように、形成されてもよい。凹部25bに形成される半導体層70bは、その上面が半導体積層構造20の面20aと同一平面内に位置する形状(即ち面20aに乗り上げない形状)となるように、形成されてもよい。半導体層70a及び半導体層70bがこのように形成されることで、上記図9等で述べたような形状を有する半導体層70a及び半導体層70bが得られる。また、半導体層70a及び半導体層70bをこのように形成することで、基板平坦性が向上する。
【0098】
半導体層70a及び半導体層70bの形成後、図12(B)に示すように、ソース電極30及びドレイン電極40が形成される。例えば、リソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術が用いられ、ソース電極30及びドレイン電極40を形成する領域に電極用金属材料が形成される。例えば、電極用金属材料として、TaとAlとの積層体又はAl含有金属が形成される。電極用金属材料は、半導体層70aとそれに隣接する半導体積層構造20の面20aの部位20aaとを覆うように、形成される。電極用金属材料は、半導体層70bとそれに隣接する半導体積層構造20の面20aの部位20abとを覆うように、形成される。電極用金属材料の形成後、窒素雰囲気中、400℃から1000℃の範囲の温度、例えば、600℃で熱処理が行われ、電極用金属材料のオーミック接続が確立される。これにより、図12(B)に示すように、半導体層70aとそれに隣接する部位20aaとを覆うソース電極30、及び、半導体層70bとそれに隣接する部位20abとを覆うドレイン電極40が形成される。ソース電極30及びドレイン電極40は、オーミック電極として機能する。
【0099】
ソース電極30及びドレイン電極40の形成後、図13(A)に示すように、パッシベーション膜としての絶縁膜60が形成される。例えば、まず、半導体積層構造20の面20aにおける、少なくともソース電極30及びドレイン電極40から露出する部位20adを覆うように、絶縁膜60に用いるSiN等の絶縁材料が形成される。尚、絶縁材料は、部位20adのほか、ソース電極30及びドレイン電極40を覆うように形成されてもよい。絶縁材料の形成後、リソグラフィ技術及びエッチング技術が用いられ、ゲート電極50を形成する領域(面20aの部位20ac)に開口部61が形成される。これにより、図13(A)に示すような絶縁膜60、即ち、半導体積層構造20の面20aの部位20adを覆い、開口部61から面20aの部位20acが露出する、絶縁膜60が形成される。絶縁膜60は、面20aの部位20ad並びにソース電極30及びドレイン電極40に接し、半導体層70a及び半導体層70bからは分離される。
【0100】
開口部61を有する絶縁膜60の形成後、図13(B)に示すように、ゲート電極50が形成される。例えば、リソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術が用いられ、ゲート電極50を形成する領域、即ち、半導体積層構造20の面20aの部位20acに、電極用金属材料が形成される。例えば、電極用金属材料として、NiとAuとの積層体が形成される。このような電極用金属材料が形成され、ゲート電極50が形成される。ゲート電極50は、ショットキー電極として機能する。尚、ゲート電極50は、半導体積層構造20の面20aの部位20ac上と共に、絶縁膜60の上面の一部(開口部61の縁部)に形成し、断面T字形状としてもよい。また、電極用金属材料の形成前に、面20aの部位20ac上に、酸化物、窒化物又は酸窒化物等が用いられたゲート絶縁膜を形成し、MIS型のゲート電極50としてもよい。ゲート電極50は、ドレイン電極40よりもソース電極30の方に近付けた非対称配置とされてもよい。
【0101】
例えば、以上のような工程により、図13(B)(及び図4図6図9等)に示すような半導体装置1が製造される。半導体装置1では、半導体積層構造20に半導体層70bが設けられ、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うドレイン電極40が設けられる構成が採用される。半導体装置1では更に、半導体積層構造20に半導体層70aが設けられ、半導体層70aとそれに隣接する面20aの部位20aaとを覆うソース電極30が設けられる構成が採用される。これにより、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置1が実現される。
【0102】
尚、半導体装置1のソース電極30及びドレイン電極40並びにゲート電極50に用いる金属材料の種類及び層構造は上記の例に限定されるものではなく、それらの形成方法も上記の例に限定されるものではない。ソース電極30及びドレイン電極40並びにゲート電極50にはそれぞれ、単層構造が用いられてもよいし、積層構造が用いられてもよい。ソース電極30及びドレイン電極40の形成時には、それらの電極用金属材料の形成によってオーミック接続が実現されれば、必ずしも上記のような熱処理が行われることを要しない。ゲート電極50の形成時には、その電極用金属材料の形成後、更に熱処理が行われてもよい。
【0103】
ここでは基板10にSiC基板を用いる例を示したが、電界効果トランジスタの機能を持つ構造部に窒化物半導体が用いられていれば、他の基板材料が用いられてもよい。基板10には、導電性基板が用いられてもよいし、絶縁性基板が用いられてもよいし、半絶縁性基板が用いられてもよい。基板10には、その全部又は一部に、SiC基板、GaN基板、Si基板、サファイア基板、ダイヤモンド基板等を用いることができる。
【0104】
また、半導体積層構造20に含まれるバッファ層21、電子走行層22、スペーサ層23及び電子供給層24の各層に用いられる窒化物半導体は、上記の例に限定されるものではない。半導体装置1がHEMTとして機能すれば、半導体積層構造20の各層には、各種窒化物半導体が用いられてもよい。また、半導体積層構造20では、スペーサ層23を省略し、電子走行層22上に直接電子供給層24を形成することもできる。
【0105】
[第2実施形態]
図14は第2実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。図14には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0106】
図14に示す半導体装置1Aは、HEMTの一例である。半導体装置1Aは、ソース電極30が半導体層70aの一部の上に設けられ、半導体層70aの端部72がソース電極30で覆われない構成を有する。半導体装置1Aは、このような構成を有する点で、上記第1実施形態で述べた半導体装置1と相違する。半導体装置1Aでは、ソース電極30で覆われない半導体層70aの端部72がパッシベーション膜の絶縁膜60と接する構成となる。
【0107】
半導体装置1Aの動作時には、ドレイン電極40に対して低電位となるようにソース電極30に電圧が印加される。比較的低電位とされるソース電極30側では、半導体層70aと絶縁膜60との界面における電子トラップが比較的生じ難い。そのため、端部72の直下における電子走行層22の空乏化、それによる電子濃度の低下が抑えられる。一方、比較的高電位とされるドレイン電極40は、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うように設けられる。部位20abとは異なる部位20adに、絶縁膜60が設けられる。これにより、半導体層70bと絶縁膜60とが接する界面の形成が回避され、当該界面の電子トラップ、それに起因した電子走行層22の電子濃度の低下が抑えられる。更に、ドレイン電極40側では、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。
【0108】
この図14に示すような構成によっても、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置1Aが実現される。
尚、半導体装置1Aにおいて、半導体積層構造20のスペーサ層23は、省略することもできる。また、半導体装置1Aにおいて、半導体層70a及び半導体層70bは、半導体積層構造20の面20aから電子走行層22に向かって幅が狭くなるテーパー形状とされてもよいし、面20aから電子走行層22まで一定幅の形状とされてもよい。
【0109】
[第3実施形態]
図15は第3実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。図15には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0110】
図15に示す半導体装置1Bは、HEMTの一例である。半導体装置1Bは、半導体積層構造20が、その面20a側に設けられたキャップ層26を含む構成を有する。キャップ層26の上面が、半導体積層構造20の面20aとなる。半導体装置1Bは、このような構成を有する点で、上記第1実施形態で述べた半導体装置1と相違する。
【0111】
キャップ層26には、窒化物半導体が用いられる。キャップ層26には、例えば、GaN、AlN等が用いられる。半導体装置1Bでは、キャップ層26、電子供給層24及びスペーサ層23を貫通し電子走行層22に達する凹部25a及び凹部25bに、それぞれ半導体層70a及び半導体層70bが設けられる。半導体装置1Bでは、半導体層70aとそれに隣接する面20a(キャップ層26の上面)の部位20aaとを覆うように、ソース電極30が設けられる。半導体装置1Bでは、半導体層70bとそれに隣接する面20a(キャップ層26の上面)の部位20abとを覆うように、ドレイン電極40が設けられる。部位20aa及び部位20abとは異なる部位20adに、パッシベーション膜の絶縁膜60が設けられる。
【0112】
半導体積層構造20が、このようなキャップ層26を含むような場合にも、上記第1実施形態で述べた半導体装置1の例に従い、半導体層70a及びソース電極30、並びに、半導体層70b及びドレイン電極40を設けることができる。これにより、半導体装置1について述べたのと同様の効果を得ることができる。
【0113】
この図15に示すような構成によっても、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置1Bが実現される。
尚、半導体装置1Bにおいて、半導体積層構造20のスペーサ層23は、省略することもできる。また、半導体装置1Bにおいて、半導体層70a及び半導体層70bは、半導体積層構造20の面20aから電子走行層22に向かって幅が狭くなるテーパー形状とされてもよいし、面20aから電子走行層22まで一定幅の形状とされてもよい。また、半導体装置1Bにおいて、ソース電極30側には、上記第2実施形態で述べた半導体装置1Aの例に従い、半導体層70aの端部がソース電極30で覆われないような構成が採用されてもよい。
【0114】
以上、第1から第3実施形態について説明した。
以上述べた半導体装置1、1A、1B等は、各種電子装置に適用することができる。一例として、上記のような構成を有する半導体装置を、半導体パッケージ、力率改善回路、電源装置及び増幅器に適用する場合について、以下に説明する。
【0115】
[第4実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、半導体パッケージへの適用例を、第4実施形態として説明する。
【0116】
図16は第4実施形態に係る半導体パッケージの一例について説明する図である。図16には、半導体パッケージの一例の要部平面図を模式的に示している。
図16に示す半導体パッケージ200は、ディスクリートパッケージの一例である。半導体パッケージ200は、例えば、上記第1実施形態で述べたような半導体装置1(図4等)、半導体装置1が搭載されたリードフレーム210、及びそれらを封止する樹脂220を含む。
【0117】
半導体装置1は、例えば、リードフレーム210のダイパッド210a上にダイアタッチ材等(図示せず)を用いて搭載される。半導体装置1には、上記ゲート電極50と接続されたパッド50a、ソース電極30と接続されたパッド30a、及びドレイン電極40と接続されたパッド40aが設けられる。パッド50a、パッド30a及びパッド40aはそれぞれ、Au、Al等のワイヤ230を用いてリードフレーム210のゲートリード211、ソースリード212及びドレインリード213に接続される。ゲートリード211、ソースリード212及びドレインリード213の各一部が露出するように、リードフレーム210とそれに搭載された半導体装置1及びそれらを接続するワイヤ230が、樹脂220で封止される。
【0118】
半導体装置1の、ゲート電極50と接続されたパッド50a及びドレイン電極40と接続されたパッド40aが設けられる面とは反対側の面に、ソース電極30と接続された外部接続用電極が設けられてもよい。当該外部接続用電極を、ソースリード212に繋がるダイパッド210aに、半田等の導電性接合材を用いて接続してもよい。
【0119】
例えば、上記第1実施形態で述べたような半導体装置1が用いられ、このような構成を有する半導体パッケージ200が得られる。
上記のように、半導体装置1では、半導体積層構造20に半導体層70bが設けられ、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うようにドレイン電極40が設けられる構成が採用される。これにより、半導体層70bと絶縁膜60とが接する界面の形成が回避され、当該界面の電子トラップ、それに起因した電子走行層22の電子濃度の低下が抑えられる。更に、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。また、半導体装置1では、半導体積層構造20に半導体層70aが設けられ、半導体層70aとそれに隣接する面20aの部位20aaとを覆うようにソース電極30が設けられる構成が採用される。これにより、電子走行層22からソース電極30に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。上記のような構成が採用されることで、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置1が実現される。このような半導体装置1が用いられ、高性能の半導体パッケージ200が実現される。
【0120】
ここでは、半導体装置1を例にしたが、他の半導体装置1A、1B等を用いて同様に半導体パッケージを得ることが可能である。
[第5実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、力率改善回路への適用例を、第5実施形態として説明する。
【0121】
図17は第5実施形態に係る力率改善回路の一例について説明する図である。図17には、力率改善回路の一例の等価回路図を示している。
図17に示す力率改善(Power Factor Correction;PFC)回路300は、スイッチ素子310、ダイオード320、チョークコイル330、コンデンサ340、コンデンサ350、ダイオードブリッジ360及び交流電源370(AC)を含む。
【0122】
PFC回路300において、スイッチ素子310のドレイン電極と、ダイオード320のアノード端子及びチョークコイル330の一端子とが接続される。スイッチ素子310のソース電極と、コンデンサ340の一端子及びコンデンサ350の一端子とが接続される。コンデンサ340の他端子とチョークコイル330の他端子とが接続される。コンデンサ350の他端子とダイオード320のカソード端子とが接続される。また、スイッチ素子310のゲート電極には、ゲートドライバが接続される。コンデンサ340の両端子間には、ダイオードブリッジ360を介して交流電源370が接続され、コンデンサ350の両端子間から直流電源(DC)が取り出される。
【0123】
例えば、このような構成を有するPFC回路300のスイッチ素子310に、上記半導体装置1、1A、1B等が用いられる。
上記のように、半導体装置1、1A、1B等では、半導体積層構造20に半導体層70bが設けられ、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うようにドレイン電極40が設けられる構成が採用される。これにより、半導体層70bと絶縁膜60とが接する界面の形成が回避され、当該界面の電子トラップ、それに起因した電子走行層22の電子濃度の低下が抑えられる。更に、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。また、例えば半導体装置1のように、半導体積層構造20に半導体層70aが設けられ、半導体層70aとそれに隣接する面20aの部位20aaとを覆うようにソース電極30が設けられる構成が採用されてよい。これにより、電子走行層22からソース電極30に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。上記のような構成が採用されることで、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置1、1A、1B等が実現される。このような半導体装置1、1A、1B等が用いられ、高性能のPFC回路300が実現される。
【0124】
[第6実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、電源装置への適用例を、第6実施形態として説明する。
【0125】
図18は第6実施形態に係る電源装置の一例について説明する図である。図18には、電源装置の一例の等価回路図を示している。
図18に示す電源装置400は、一次側回路410及び二次側回路420、並びに一次側回路410と二次側回路420との間に設けられるトランス430を含む。
【0126】
一次側回路410には、上記第5実施形態で述べたようなPFC回路300、及びPFC回路300のコンデンサ350の両端子間に接続されたインバータ回路、例えば、フルブリッジインバータ回路440が含まれる。フルブリッジインバータ回路440には、複数、ここでは一例として4つのスイッチ素子441、スイッチ素子442、スイッチ素子443及びスイッチ素子444が含まれる。
【0127】
二次側回路420には、複数、ここでは一例として3つのスイッチ素子421、スイッチ素子422及びスイッチ素子423が含まれる。
例えば、このような構成を有する電源装置400の、一次側回路410に含まれるPFC回路300のスイッチ素子310、及びフルブリッジインバータ回路440のスイッチ素子441-444に、上記半導体装置1、1A、1B等が用いられる。例えば、電源装置400の、二次側回路420のスイッチ素子421、422、423には、Siを用いた通常のMIS型電界効果トランジスタが用いられる。
【0128】
上記のように、半導体装置1、1A、1B等では、半導体積層構造20に半導体層70bが設けられ、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うようにドレイン電極40が設けられる構成が採用される。これにより、半導体層70bと絶縁膜60とが接する界面の形成が回避され、当該界面の電子トラップ、それに起因した電子走行層22の電子濃度の低下が抑えられる。更に、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。また、例えば半導体装置1のように、半導体積層構造20に半導体層70aが設けられ、半導体層70aとそれに隣接する面20aの部位20aaとを覆うようにソース電極30が設けられる構成が採用されてよい。これにより、電子走行層22からソース電極30に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。上記のような構成が採用されることで、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置1、1A、1B等が実現される。このような半導体装置1、1A、1B等が用いられ、高性能の電源装置400が実現される。
【0129】
[第7実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、増幅器への適用例を、第7実施形態として説明する。
【0130】
図19は第7実施形態に係る増幅器の一例について説明する図である。図19には、増幅器の一例の等価回路図を示している。
図19に示す増幅器500は、デジタルプレディストーション回路510、ミキサー520、ミキサー530及びパワーアンプ540を含む。
【0131】
デジタルプレディストーション回路510は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー520は、非線形歪みが補償された入力信号SIと交流信号とをミキシングする。パワーアンプ540は、入力信号SIが交流信号とミキシングされた信号を増幅する。増幅器500では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力信号SOをミキサー530で交流信号とミキシングしてデジタルプレディストーション回路510に送出することができる。増幅器500は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。
【0132】
このような構成を有する増幅器500のパワーアンプ540に、上記半導体装置1、1A、1B等が用いられる。
上記のように、半導体装置1、1A、1B等では、半導体積層構造20に半導体層70bが設けられ、半導体層70bとそれに隣接する面20aの部位20abとを覆うようにドレイン電極40が設けられる構成が採用される。これにより、半導体層70bと絶縁膜60とが接する界面の形成が回避され、当該界面の電子トラップ、それに起因した電子走行層22の電子濃度の低下が抑えられる。更に、ドレイン電極40から電子走行層22に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。また、例えば半導体装置1のように、半導体積層構造20に半導体層70aが設けられ、半導体層70aとそれに隣接する面20aの部位20aaとを覆うようにソース電極30が設けられる構成が採用されてよい。これにより、電子走行層22からソース電極30に流れる電流の電流密度が緩和され、エレクトロマイグレーションが抑えられる。上記のような構成が採用されることで、優れた信頼性を有する高性能の半導体装置1、1A、1B等が実現される。このような半導体装置1、1A、1B等が用いられ、高性能の増幅器500が実現される。
【0133】
上記半導体装置1、1A、1B等を適用した各種電子装置(上記第4から第7実施形態で述べた半導体パッケージ200、PFC回路300、電源装置400及び増幅器500等)は、各種電子機器又は電子装置に搭載することができる。例えば、コンピュータ(パーソナルコンピュータ、スーパーコンピュータ、サーバ等)、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、センサ、カメラ、オーディオ機器、測定装置、検査装置、製造装置、送信器、受信器、レーダー装置といった、各種電子機器又は電子装置に搭載することが可能である。
【0134】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 電子走行層と電子供給層とを含む半導体積層構造と、
前記半導体積層構造に設けられ、前記半導体積層構造の前記電子供給層側の第1面から前記電子走行層に達し、n型不純物を含有する第1半導体層と、
前記第1半導体層と接続され、前記第1半導体層を覆い、前記半導体積層構造の前記第1面の、前記第1半導体層に隣接する第1部位と接する第1電極と、
を含む、半導体装置。
【0135】
(付記2) 前記第1電極は、前記第1部位を覆う、付記1に記載の半導体装置。
(付記3) 前記半導体積層構造の前記第1面に設けられ、前記第1面の、前記第1電極で覆われる前記第1部位とは異なる第2部位を覆う絶縁膜を更に含む、付記1又は2に記載の半導体装置。
【0136】
(付記4) 前記絶縁膜は、前記半導体積層構造の前記第1面における前記第2部位と、前記第1部位を覆う前記第1電極とに接する、付記3に記載の半導体装置。
(付記5) 前記第1半導体層は、前記第1面と平行な方向の幅が、前記第1面から前記電子走行層に向かって狭くなる、テーパー形状を有する、付記1又は2に記載の半導体装置。
【0137】
(付記6) 前記第1半導体層は、前記半導体積層構造の前記第1面における、前記第1電極で覆われる前記第1部位の、前記第1電極の端よりも内側の一部を覆う、付記2に記載の半導体装置。
【0138】
(付記7) 前記電子走行層は、ガリウムを含有する第1窒化物半導体を含み、
前記電子供給層は、インジウムと、アルミニウム及びガリウムのうちの少なくとも一方とを含有する第2窒化物半導体を含み、
前記第1半導体層は、ガリウムを含有する第3窒化物半導体を含む、付記1又は2に記載の半導体装置。
【0139】
(付記8) 前記半導体積層構造は、前記第1面側にキャップ層を更に含む、付記1又は2に記載の半導体装置。
(付記9) 前記半導体積層構造に、前記第1半導体層から分離されて設けられ、前記第1面から前記電子走行層に達し、n型不純物を含有する第2半導体層と、
前記第1電極から分離されて設けられ、前記第2半導体層と接続される第2電極と、
を更に含む、付記1又は2に記載の半導体装置。
【0140】
(付記10) 前記半導体積層構造の前記第1面における前記第1部位は、前記第1半導体層の、前記第2半導体層側に隣接する、付記9に記載の半導体装置。
(付記11) 前記第2電極は、前記第2半導体層と、前記半導体積層構造の前記第1面の、前記第2半導体層に隣接する第3部位とを覆う、付記9に記載の半導体装置。
【0141】
(付記12) 前記半導体積層構造の前記第1面における前記第3部位は、前記第2半導体層の、前記第1半導体層側に隣接する、付記11に記載の半導体装置。
(付記13) 前記第1電極と前記第2電極との間に、前記第1電極及び前記第2電極から分離されて設けられる第3電極を更に含む、付記9に記載の半導体装置。
【0142】
(付記14) 電子走行層と電子供給層とを含む半導体積層構造を形成する工程と、
前記半導体積層構造に、前記半導体積層構造の前記電子供給層側の第1面から前記電子走行層に達し、n型不純物を含有する第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層と接続され、前記第1半導体層を覆い、前記半導体積層構造の前記第1面の、前記第1半導体層に隣接する第1部位と接する第1電極を形成する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【0143】
(付記15) 電子走行層と電子供給層とを含む半導体積層構造と、
前記半導体積層構造に設けられ、前記半導体積層構造の前記電子供給層側の第1面から前記電子走行層に達し、n型不純物を含有する第1半導体層と、
前記第1半導体層と接続され、前記第1半導体層を覆い、前記半導体積層構造の前記第1面の、前記第1半導体層に隣接する第1部位と接する第1電極と、
を含む半導体装置を備える、電子装置。
【符号の説明】
【0144】
1、1A、1B、100A、100B 半導体装置
10、110 基板
20、120 半導体積層構造
20a、120a 面
20aa、20ab、20ac、20ad 部位
21、121 バッファ層
22、122 電子走行層
23、123 スペーサ層
24、124 電子供給層
25a、25b、125a、125b 凹部
26 キャップ層
30、130 ソース電極
30a、40a、50a パッド
40、140 ドレイン電極
41 端
50、150 ゲート電極
60、160 絶縁膜
61 開口部
70a、70b、170a、170b 半導体層
71、72、171 端部
80、180 2DEG領域
90、190 電流
191 電子
200 半導体パッケージ
210 リードフレーム
210a ダイパッド
211 ゲートリード
212 ソースリード
213 ドレインリード
220 樹脂
230 ワイヤ
300 PFC回路
310、421、422、423、441、442、443、444 スイッチ素子
320 ダイオード
330 チョークコイル
340、350 コンデンサ
360 ダイオードブリッジ
370 交流電源
400 電源装置
410 一次側回路
420 二次側回路
430 トランス
440 フルブリッジインバータ回路
500 増幅器
510 デジタルプレディストーション回路
520、530 ミキサー
540 パワーアンプ
a1、b1、c1、d1、e1 位置
AR0 領域
W1 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19