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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174630
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】遠隔サポート装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G08G1/09 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092550
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 康佑
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両の走行に対して遠隔で支援を行う遠隔サポート装置であって、車両の旋回中、特定の舵角で車両を旋回させたときの車両の旋回外側の部分の今後の動きを遠隔ドライバーに把握させることができる遠隔サポート装置を提供する。
【解決手段】遠隔サポート装置11は、車両100と無線通信可能な遠隔サポート制御装置91を備え、車両の走行を遠隔で支援する。遠隔サポート制御装置は、車両の撮像装置126により取得される車両の進行方向の画像を無線通信により取得して遠隔サポート装置の表示装置114により表示し、設定舵角で車両が旋回したときに車両の旋回外側の部分が通過すると予測されるラインである設定舵角ラインを表示装置に表示している画像に表示する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と無線通信可能な遠隔サポート制御装置を備え、前記車両の走行を遠隔で支援する遠隔サポート装置において、
前記遠隔サポート制御装置は、
前記車両の撮像装置により取得される前記車両の進行方向の画像を無線通信により取得して当該遠隔サポート装置の表示装置により表示し、
設定舵角で前記車両が旋回したときに前記車両の旋回外側の部分が通過すると予測されるラインである設定舵角ラインを前記表示装置に表示している前記画像に表示する、
ように構成されている、
遠隔サポート装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔サポート装置において、
前記遠隔サポート制御装置は、前記画像の解像度が第1解像度であるときには、前記解像度が前記第1解像度よりも大きい第2解像度であるときよりも、前記設定舵角を小さい舵角に設定するように構成されている、
遠隔サポート装置。
【請求項3】
請求項1に記載の遠隔サポート装置において、
前記遠隔サポート制御装置は、前記車両との無線通信の遅延量が第1遅延量であるときよりも、前記遅延量が前記第1遅延量よりも大きい第2遅延量であるときのほうが、前記設定舵角を小さい舵角に設定するように構成されている、
遠隔サポート装置。
【請求項4】
請求項1に記載の遠隔サポート装置において、
前記車両は、前記遠隔サポート制御装置との無線通信が途絶したときに自動で停車するように構成されており、
前記遠隔サポート制御装置は、
前記車両との無線通信が途絶したとしたときに前記車両が自動で停車する位置として予測される位置である停車予測位置が前記画像内に表示可能な位置である場合、当該停車予測位置を前記画像に表示し、
前記停車予測位置が前記画像内に表示可能な位置ではないときには、前記停車予測位置が前記画像内に表示可能な位置であるときよりも、高い視認性で前記設定舵角ラインを前記画像に表示する、
ように構成されている、
遠隔サポート装置。
【請求項5】
請求項1に記載の遠隔サポート装置において、
前記遠隔サポート制御装置は、前記車両の舵角が前記設定舵角以下の範囲で当該設定舵角に近い舵角になるほど高い視認性で前記設定舵角ラインを前記画像に表示するように構成されている、
遠隔サポート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔サポート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行を遠隔でサポートする遠隔サポート装置が知られている。この種の遠隔サポート装置として、遠隔サポート装置のディスプレイに車両の進行ルートを表示することにより、遠隔サポート装置を用いて車両を遠隔で運転する操作者(遠隔ドライバー)に車両の進行ルートに関する情報を提供するように構成された遠隔サポート装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-174921号公報
【発明の概要】
【0004】
車両の旋回中、特定の舵角で車両を旋回させたときの車両の旋回外側の部分の今後の動きを遠隔ドライバーが把握することができれば、当該遠隔ドライバーが遠隔サポート装置による支援を行いやすくなる。
【0005】
本発明の目的は、車両の走行に対して遠隔で支援を行う遠隔サポート装置であって、車両の旋回中、特定の舵角で車両を旋回させたときの車両の旋回外側の部分の今後の動きを遠隔ドライバーに把握させることができる遠隔サポート装置を提供することにある。
【0006】
本発明に係る遠隔サポート装置は、車両と無線通信可能な遠隔サポート制御装置を備え、前記車両の走行を遠隔で支援する。前記遠隔サポート制御装置は、前記車両の撮像装置により取得される前記車両の進行方向の画像を無線通信により取得して当該遠隔サポート装置の表示装置により表示し、設定舵角で前記車両が旋回したときに前記車両の旋回外側の部分が通過すると予測されるラインである設定舵角ラインを前記表示装置に表示している前記画像に表示するように構成されている。
【0007】
本発明に係る遠隔サポート装置によれば、設定舵角で車両を旋回させたときに車両の旋回外側の部分が通過するラインが表示装置に表示される。このため、遠隔サポート装置を操作して車両の走行を遠隔で支援する操作者(遠隔ドライバー)は、車両の旋回中、設定舵角で車両を旋回させたときの車両の旋回外側の部分の今後の動きを把握することができる。
【0008】
尚、本発明に係る遠隔サポート装置において、前記遠隔サポート制御装置は、前記画像の解像度が第1解像度であるときには、前記解像度が前記第1解像度よりも大きい第2解像度であるときよりも、前記設定舵角を小さい舵角に設定するように構成され得る。
【0009】
本発明に係る遠隔サポート装置によれば、画像の解像度が比較的小さく、車両が通過する正確なエリアを遠隔ドライバーが画像から把握しづらい場合、設定舵角が小さい舵角に設定される。従って、このときに画像に表示される設定舵角ラインは、より小さい舵角で車両を旋回させたときに通過するラインとなる。このため、遠隔ドライバーが車両の走行に対する支援をより適正に行うことができる。
【0010】
又、本発明に係る遠隔サポート装置において、前記遠隔サポート制御装置は、前記車両との無線通信の遅延量が第1遅延量であるときよりも、前記遅延量が前記第1遅延量よりも大きい第2遅延量であるときのほうが、前記設定舵角を小さい舵角に設定するように構成され得る。
【0011】
本発明に係る遠隔サポート装置によれば、車両との無線通信の遅延量が大きく、車両が通過する正確なエリアを遠隔ドライバーが画像から把握しづらい場合、設定舵角が小さい舵角に設定される。従って、このときに画像に表示される設定舵角ラインは、より小さい舵角で車両を旋回させたときに通過するラインとなる。このため、遠隔ドライバーが車両の走行に対する支援をより適正に行うことができる。
【0012】
又、本発明に係る遠隔サポート装置において、前記車両は、前記遠隔サポート制御装置との無線通信が途絶したときに自動で停車するように構成され得る。この場合において、前記遠隔サポート制御装置は、前記車両との無線通信が途絶したとしたときに前記車両が自動で停車する位置として予測される位置である停車予測位置が前記画像内に表示可能な位置である場合、当該停車予測位置を前記画像に表示し、前記停車予測位置が前記画像内に表示可能な位置ではないときには、前記停車予測位置が前記画像内に表示可能な位置であるときよりも、高い視認性で前記設定舵角ラインを前記画像に表示するように構成され得る。
【0013】
停車予測位置が画像内に表示されない場合、車両の遠隔走行支援に資する設定舵角ラインを高い視認性で表示することが好ましい。本発明に係る遠隔サポート装置によれば、停車予測位置が画像内に表示されない場合、高い視認性で設定舵角ラインが表示される。このため、遠隔ドライバーは、適切な遠隔走行支援を行うことができる。
【0014】
又、本発明に係る遠隔サポート装置において、前記遠隔サポート制御装置は、前記車両の舵角が前記設定舵角以下の範囲で当該設定舵角に近い舵角になるほど高い視認性で前記設定舵角ラインを前記画像に表示するように構成され得る。
【0015】
舵角が設定舵角に近くなると舵角が最大舵角に近づくので、車両の遠隔走行支援に資する設定舵角ラインを高い視認性で表示することが好ましい。本発明に係る遠隔サポート装置によれば、舵角が設定舵角に近くなるほど高い視認性で設定舵角ラインが表示される。このため、遠隔ドライバーは、適切な遠隔走行支援を行うことができる。
【0016】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る遠隔サポート装置を含む遠隔サポートシステムを示した図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る遠隔サポート装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施形態に係る遠隔サポート装置のディスプレイを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態においては、遠隔サポートの一種である遠隔運転を例に挙げて説明する。遠隔運転とは、車両を遠隔でサポートする遠隔サポートのうち、車両の遠隔地にいる人物によって少なくとも一部のDDT(ダイナミックドライビングタスク)が行われることを指す。又、遠隔地にいる人物は遠隔ドライバーと呼ぶ。
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る遠隔運転装置を含む遠隔運転システムについて説明する。ここで図1に、遠隔運転システム10が示されている。遠隔運転システム10は、遠隔運転装置11及び車両100を含んでいる。車両100には、車両制御装置12が搭載されている。
【0020】
遠隔運転装置11は、車両100の外部に設置されている装置であり、後述するように、車両100の走行を遠隔で支援するために利用される。特に、本例において、遠隔運転装置11は、車両100を遠隔で走行させるために利用される。
【0021】
図1に示したように、遠隔運転装置11は、制御装置としてのECU(遠隔運転ECU91)を備えている。同様に、車両制御装置12も、制御装置としてのECU(車両制御ECU92)を備えている。
【0022】
遠隔運転ECU91及び車両制御ECU92は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM及び不揮発性メモリ等の記憶媒体、並びに、インターフェース等を含む。CPUは、記憶媒体に格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。特に、本例において、遠隔運転装置11は、当該遠隔運転装置11が実行する各種制御を実現するプログラムを記憶媒体に記憶しており、車両制御装置12も、当該車両制御装置12が実行する各種制御を実現するプログラムを記憶媒体に記憶している。
【0023】
尚、遠隔運転装置11及び車両制御装置12は、記憶媒体に記憶してあるプログラムを外部の装置との無線通信(例えば、インターネット通信)により更新(アップデート)することができるように構成されていてもよい。
【0024】
遠隔運転装置11には、送受信装置としての送受信機(遠隔運転送受信機110)が搭載されている。又、車両100には、送受信装置としての送受信機(車両制御送受信機120)が搭載されている。遠隔運転送受信機110は、遠隔運転ECU91に電気的に接続されている。又、車両制御送受信機120は、車両制御ECU92に電気的に接続されている。遠隔運転装置11と車両制御装置12とは、遠隔運転送受信機110及び車両制御送受信機120を介して互いに信号(情報)を送受信することができる。即ち、遠隔運転装置11は、車両100と無線通信可能となっている。
【0025】
特に、遠隔運転装置11及び車両制御装置12は、車両100の遠隔運転(遠隔サポート)を行うものであり、車両制御装置12は、遠隔運転装置11が車両100の遠隔運転を行うために使用する情報として、車両100の識別情報(いわゆるID)、情報を送信した時刻、車両100の位置、走行速度、加速及び進行方向、方向指示器信号及び警笛情報、燃料量及び/又はバッテリ充電量、車両100の異常情報、並びに、タイヤ摩擦及び/又は道路摩擦等の各種情報を遠隔運転装置11に送信する。
【0026】
又、車両100には、走行装置121が搭載されている。走行装置121は、車両100を走行させるための装置であり、本例においては、駆動装置、制動装置及び操舵装置を含んでいる。駆動装置は、車両100に駆動力を与える装置である。制動装置は、車両100に制動力を与える装置である。操舵装置は、車両100に操舵力を与える装置である。
【0027】
更に、車両100には、舵角センサ122、ヨーレートセンサ123、横加速度センサ124、車速検出装置125及び撮像装置としてのカメラ126が搭載されている。
【0028】
これら舵角センサ122、ヨーレートセンサ123及び横加速度センサ124、車速検出装置125及びカメラ126は、車両制御ECU92に電気的に接続されている。車両制御装置12は、舵角センサ122により車両100の舵角を舵角δとして取得し、ヨーレートセンサ123により車両100のヨーレートをヨーレートYRとして取得し、横加速度センサ124により車両100の横加速度を横加速度Gyとして取得し、車速検出装置125により車両100の走行速度を車速Vとして取得し、カメラ126により車両100の周囲の画像をカメラ画像として取得する。
【0029】
車両制御装置12は、取得した舵角δの情報、ヨーレートYRの情報、横加速度Gyの情報、車速Vの情報及びカメラ画像の情報を車両制御送受信機120を介して車両100の外部に発信する。車両制御装置12から発信された情報は、遠隔運転送受信機110を介して遠隔運転ECU91により取得される。
【0030】
又、遠隔運転装置11には、加速操作器111、減速操作器112、操舵操作器113及び表示装置としてのディスプレイ114が搭載されている。
【0031】
これら加速操作器111、減速操作器112、操舵操作器113及びディスプレイ114は、遠隔運転ECU91に電気的に接続されている。
【0032】
加速操作器111は、車両100に駆動力を与えるために遠隔ドライバーにより操作される機器である。遠隔運転装置11は、加速操作器111が操作された場合、加速操作器111に対する操作に関する情報(加速操作情報)を遠隔運転送受信機110を介して遠隔運転装置11の外部に発信する。車両制御装置12は、遠隔運転装置11が発信した加速操作情報を車両制御送受信機120を介して取得し、当該加速操作情報に基づいて走行装置121の作動を制御して車両100に駆動力を与える。
【0033】
尚、遠隔ドライバーは、遠隔運転装置11を用いて車両100の走行に対する支援を遠隔で行う者であり、本例においては、遠隔運転装置11を用いて車両100を遠隔で運転する者である。
【0034】
減速操作器112は、車両100に制動力を与えるために遠隔ドライバーにより操作される機器である。遠隔運転装置11は、減速操作器112が操作された場合、減速操作器112に対する操作に関する情報(減速操作情報)を遠隔運転送受信機110を介して遠隔運転装置11の外部に発信する。車両制御装置12は、遠隔運転装置11が発信した減速操作情報を車両制御送受信機120を介して取得し、当該減速操作情報に基づいて走行装置121の作動を制御して車両100に制動力を与える。
【0035】
操舵操作器113は、車両100に操舵力を与えるために遠隔ドライバーにより操作される機器である。遠隔運転装置11は、操舵操作器113が操作された場合、操舵操作器113に対する操作に関する情報(操舵操作情報)を遠隔運転送受信機110を介して遠隔運転装置11の外部に発信する。車両制御装置12は、遠隔運転装置11が発信した操舵操作情報を車両制御送受信機120を介して取得し、当該操舵操作情報に基づいて走行装置121の作動を制御して車両100に操舵力を与える。
【0036】
ディスプレイ114は、画像を表示する機器である。遠隔運転装置11は、各種画像をディスプレイ114に表示することができる。特に、遠隔運転装置11は、車両制御装置12から無線通信で取得した車両100の進行方向のカメラ画像をディスプレイ114に表示するようになっている。
【0037】
尚、ディスプレイ114は、車両100の進行方向のカメラ画像を表示するディスプレイのみを含んでいてもよいし、これに加えて、車両100の左側方の画像及び車両100の左サイドミラーに映る風景の画像を表示する左サイドモニター、並びに、車両100の右側方の画像及び車両100の右サイドミラーに映る風景の画像を表示する右サイドモニターを含んでいてもよい。
【0038】
<遠隔運転システムの作動>
次に、遠隔運転システム10の作動について説明する。遠隔運転システム10は、遠隔ドライバーが遠隔運転装置11の加速操作器111、減速操作器112及び操舵操作器113を操作することにより、遠隔で車両100を走行させるシステムである。
【0039】
従って、先に述べたように、遠隔ドライバーが加速操作器111、減速操作器112及び操舵操作器113を操作すると、遠隔運転装置11は、加速操作情報、減速操作情報及び操舵操作情報を車両100に送信し、車両制御装置12は、これら加速操作情報、減速操作情報及び操舵操作情報に基づいて走行装置121の作動を制御して車両100を走行させる。
【0040】
又、遠隔運転装置11は、図2に示したルーチンを所定演算周期で実行することにより、所定条件が成立した場合、補助線(auxiliary line)としての後内輪ラインLin、バンパーラインLbp及び設定舵角ラインLsetをディスプレイ114に表示するようになっている。
【0041】
即ち、遠隔運転装置11は、所定のタイミングになると、図2に示したルーチンのステップS200から処理を開始し、その処理をステップS205に進め、車両100が旋回中であるか否かを判定する。遠隔運転装置11は、舵角δ、ヨーレートYR及び横加速度Gy等に基づいて車両100が旋回中であるか否かを判定する。
【0042】
遠隔運転装置11は、ステップS205にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS210に進め、後内輪ラインLin及びバンパーラインLbpを演算により取得する。
【0043】
後内輪ラインLinは、車両100の左右後輪のうち、旋回内側の後輪が今後通過するラインとして予測されるラインである。尚、遠隔運転装置11は、後内輪ラインLinに代えて、車両100の左側部分又は右側部分のうち、旋回内側の部分であって、最も旋回内側を通過する部分が今後通過するラインとして予測されるラインを演算により取得するように構成されてもよい。
【0044】
又、バンパーラインLbpは、車両100のフロントバンパーの左端が今後通過するラインとして予測されるライン(バンパー左端ラインLbp_L)、及び、車両100のフロントバンパーの右端が今後通過するラインとして予測されるライン(バンパー右端ラインLbp_R)である。
【0045】
尚、遠隔運転装置11は、舵角δ、ヨーレートYR及び横加速度Gy等に基づいて後内輪ラインLin及びバンパーラインLbpを演算する。
【0046】
又、遠隔運転装置11は、舵角δとは無関係に一定の長さの後内輪ラインLinを演算してもよいが、本例においては、舵角δに応じて異なる長さの後内輪ラインLinを演算するようになっている。具体的には、遠隔運転装置11は、舵角δが大きいほど長い長さの後内輪ラインLinを演算するようになっている。即ち、 遠隔運転装置11は、車両100の舵角δが第1舵角であるときよりも、舵角δが第1舵角よりも大きい第2舵角であるときのほうが、遠い地点までの後内輪ラインLinを予測するように構成されている。
【0047】
又、後内輪ラインLinとしては、車両100が左旋回しているときには、左後輪が今度通過するラインとして予測されるラインが演算され、車両100が右旋回しているときには、右後輪が今後通過するラインとして予測されるラインが演算される。
【0048】
次いで、遠隔運転装置11は、処理をステップS215に進め、表示条件が成立しているか否かを判定する。
【0049】
表示条件は、後内輪ラインLin、バンパーラインLbp及び設定舵角ラインLsetをディスプレイ114に表示する条件であり、本例においては、車速Vが比較的小さい所定の車速(所定表示速度Vdp)以下であるとの車速条件、舵角δが比較的大きい所定の舵角(所定表示舵角δdp)以上であるとの舵角条件、及び、後内輪ラインLin及びバンパーラインLbpがディスプレイ114のカメラ画像に表示されたとした場合に後内輪ラインLin又はバンパーラインLbpが当該カメラ画像中の物体と交差するとの交差条件の少なくとも1つである。
【0050】
尚、ディスプレイ114に表示されているカメラ画像は、車両100の進行方向を映し出しているカメラ画像であり、遠隔運転装置11は、カメラ画像情報、後内輪ラインLinに関する情報及びバンパーラインLbpに関する情報に基づいた画像処理により、後内輪ラインLin又はバンパーラインLbpがディスプレイ114に表示されているカメラ画像中の物体と交差するか否かを判定する。
【0051】
遠隔運転装置11は、ステップS215にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS220に進め、設定舵角ラインLsetを演算により取得する。
【0052】
設定舵角ラインLsetは、比較的大きい所定の舵角(設定舵角δset)で車両100が旋回したときに車両100の旋回外側の部分が通過するラインとして予測されるラインであって、本例においては、特に、設定舵角δsetで車両100が旋回したときに車両100の旋回外側の部分であって最も外側の部分が今後通過するラインとして予測されるラインである。
【0053】
設定舵角δsetは、車両100の最大舵角であってもよいが、本例においては、遠隔ドライバーの操作習熟度、カメラ画像解像度及び通信遅延度合の少なくとも1つに基づいて車両100の最大舵角よりも小さい所定の範囲内の角度に設定される。
【0054】
具体的には、遠隔ドライバーの操作習熟度が低いほど、即ち、遠隔ドライバーが当該遠隔運転装置11により車両100を遠隔で走行させた経験が少ないほど、設定舵角δsetは、小さい角度に設定される。
【0055】
又、カメラ画像解像度が低いほど、即ち、ディスプレイ114に表示されているカメラ画像の解像度が低いほど、設定舵角δsetは、小さい角度に設定される。別の言い方をすると、設定舵角δsetは、ディスプレイ114に表示されているカメラ画像の解像度が第1解像度であるときには、ディスプレイ114に表示されているカメラ画像の解像度が第1解像度よりも大きい第2解像度であるときよりも、小さい舵角に設定される。
【0056】
又、通信遅延度合が大きいほど、即ち、遠隔運転ECU91と車両制御ECU92との間で行われる無線通信の遅延の度合が大きいほど、設定舵角δsetは、小さい角度に設定される。別の言い方をすると、設定舵角δsetは、車両100との無線通信の遅延量が第1遅延量であるときよりも、車両100との無線通信の遅延量が第1遅延量よりも大きい第2遅延量であるときのほうが、小さい舵角に設定される。
【0057】
尚、設定舵角δsetの上限値は、適宜設定されればよく、例えば、車両100の設計バラツキや製造バラツキ等を考慮した角度(例えば、車両100の最大舵角の90%の角度)に設定されればよい。
【0058】
又、遠隔運転装置11は、設定舵角δsetで車両100が旋回するときの車両100の旋回半径ρに基づいて設定舵角ラインLsetを演算する。
【0059】
例えば、設定舵角δsetで車両100が旋回するときの車両100の旋回半径ρは、下式1に従った演算により取得することができる。式1において、「Kh」は、スタビリティファクターであり、「V」は、車速Vであり、「L」は、車両100のホイールベースであり、「δset」は、設定舵角δsetである。
【0060】
ρ=(1+Kh×V)×L/δset …(1)
【0061】
そして、設定舵角ラインLsetが演算されるとき、車速Vはゼロに近い低速であることから、式1は、下式2のように近似可能である。
【0062】
ρ=L/δset …(2)
【0063】
そこで、遠隔運転装置11は、式2に従った演算により設定舵角δsetで車両100が旋回するときの車両100の旋回半径ρを取得し、当該旋回半径ρに基づいて設定舵角ラインLsetを演算する。
【0064】
尚、設定舵角ラインLsetとしては、設定舵角δsetで車両100が左旋回したときに車両100の右側部分が今後通過するライン、及び、設定舵角δsetで車両100が右旋回したときに車両100の左側部分が今後通過するラインの両方が演算により取得されてもよいし、車両100が左旋回しているときには、車両100の右側部分が今後通過するラインのみを演算により取得され、車両100が右旋回しているときには、車両100の左側部分が今後通過するラインのみを演算により取得されてもよい。
【0065】
次いで、遠隔運転装置11は、処理をステップS225に進め、設定舵角ラインLsetの視認性(誘目性)を設定する。
【0066】
本例において、設定舵角ラインLsetの視認性は、車速V、舵角δ、遠隔ドライバーの操作習熟度及びディスプレイ114での停車範囲ラインLspの表示の有無の少なくとも1つに応じて決定される。具体的には、設定舵角ラインLsetの視認性は、車速Vが小さいほど高い視認性に設定される。又、設定舵角ラインLsetの視認性は、舵角δが設定舵角δset以下の範囲で設定舵角δsetに近い舵角になるほど高い視認性に設定される。又、設定舵角ラインLsetの視認性は、遠隔ドライバーの操作習熟度が低いほど高い視認性に設定される。又、設定舵角ラインLsetの視認性は、停車範囲ラインLspがディスプレイ114に表示されるときよりも表示されないときのほうが高い視認性に設定される。
【0067】
尚、本例において、車両制御装置12は、遠隔運転装置11との無線通信が途絶した場合、車両100を自動で停止させるように構成されており、停車範囲ラインLspは、斯くして車両100が自動で停止される位置(停車予測位置)を示すラインである。そして、遠隔運転装置11は、停車範囲ラインLspをディスプレイ114に表示するように構成されている。しかしながら、車速Vが比較的大きいときには、停車範囲ラインLspは、車両100から比較的遠い位置にあることから、遠隔運転装置11は、停車範囲ラインLspをディスプレイ114に表示することができるが、車速Vが比較的小さいときには、停車範囲ラインLspは、車両100に比較的近い位置にあることから、遠隔運転装置11は、停車範囲ラインLspをディスプレイ114に表示することができない。こうしたことから、本例においては、停車範囲ラインLspがディスプレイ114に表示される場合と表示されない場合とがある。そこで、遠隔運転装置11は、停車予測位置(停車範囲ラインLsp)がディスプレイ114に表示されているカメラ画像内に表示可能な位置ではないときには、停車予測位置(停車範囲ラインLsp)がディスプレイ114に表示されているカメラ画像内に表示可能な位置であるときよりも、高い視認性で設定舵角ラインLsetをディスプレイ114に表示されているカメラ画像に表示するように構成されている。
【0068】
次いで、遠隔運転装置11は、処理をステップS230に進め、図3に示したように、後内輪ラインLin及びバンパーラインLbpをディスプレイ114に表示されているカメラ画像に表示するとともに、設定舵角ラインLsetをステップS225にて設定した視認性でディスプレイ114に表示されているカメラ画像に表示する。
【0069】
尚、後内輪ラインLin、バンパーラインLbp及び設定舵角ラインLsetをディスプレイ114に表示されているカメラ画像に表示する場合、これら後内輪ラインLin、バンパーラインLbp及び設定舵角ラインLsetの画像は、カメラ画像に重畳させて表示されてもよいし、後内輪ラインLin、バンパーラインLbp及び設定舵角ラインLsetの画像のデータとカメラ画像のデータとを合成したうえで表示されてもよい。
【0070】
又、このとき、遠隔運転装置11は、ディスプレイ114に表示されているカメラ画像において、車両100の後内輪が通過する位置として予測される位置に後内輪ラインLinを表示し、車両100のフロントバンパーの左端が通過する位置として予測される位置にバンパー左端ラインLbp_Lを表示し、車両100のフロントバンパーの右端が通過する位置として予測される位置にバンパー右端ラインLbp_Rを表示し、舵角δが設定舵角δsetであるときに車両100の旋回外側の部分であって最も外側を通過する部分が通過する位置として予測される位置に設定舵角ラインLsetを表示する。
【0071】
尚、このとき、ディスプレイ114が左サイドモニター及び右サイドモニターを含んでいる場合、後内輪ラインLin、バンパーラインLbp又は設定舵角ラインLsetが左サイドモニター又は右サイドモニターに表示されてもよい。
【0072】
又、遠隔運転装置11は、設定舵角ラインLsetの視認性と同様に、後内輪ラインLin及び/又はバンパーラインLbpの視認性を設定し、斯くして設定した視認性で後内輪ラインLin及び/又はバンパーラインLbpをディスプレイ114に表示するように構成されてもよい。
【0073】
又、遠隔運転装置11は、後内輪ラインLinをディスプレイ114のカメラ画像に表示したとした場合に後内輪ラインLinがカメラ画像中の物体と交差する場合、高い視認性で後内輪ラインLinをディスプレイ114に表示するように構成されてもよい。更に、この場合、遠隔運転装置11は、後内輪ラインLinがカメラ画像中の物体と交差する箇所全体を色づけしたり、当該箇所を点滅させたり等して強調表示するように構成されてもよい。
【0074】
本例において、設定舵角ラインLsetの視認性は、例えば、設定舵角ラインLsetの濃さを変更したり、設定舵角ラインLsetの色を変更したり、ラインのタイプを実線のラインと鎖線のラインとの間で切り替えたり、ラインを連続点灯と点滅との間で切り替えたりすることにより変更される。
【0075】
又、図3において、符号OBJは、カメラ画像中の物体である。
【0076】
次いで、遠隔運転装置11は、処理をステップS295に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0077】
又、遠隔運転装置11は、ステップS205又はステップS215にて「No」と判定した場合、処理をステップS295に直接進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0078】
以上が遠隔運転システム10の作動である。このように、遠隔運転装置11は、車両100と無線通信可能な遠隔運転制御装置(遠隔運転ECU91)を備え、車両100の走行を遠隔で支援する。そして、遠隔運転制御装置(遠隔運転ECU91)は、車両100の撮像装置(カメラ126)により取得される車両100の進行方向の画像(カメラ画像)を無線通信により取得して遠隔運転装置11の表示装置(ディスプレイ114)により表示し、車両100の旋回中、車両100の後内輪が通過するラインとして予測されるラインである後内輪ラインLinを表示装置(ディスプレイ114)に表示しているカメラ画像に表示する。
【0079】
これによれば、車両100の旋回中、後内輪ラインLinが車両100の進行方向の画像(カメラ画像)に表示される。このため、遠隔運転装置11を操作して車両100の走行を遠隔で支援する操作者(遠隔ドライバー)は、車両100の今後の動きを把握することができる。
【0080】
又、遠隔運転装置11は、設定舵角ラインLsetを表示装置(ディスプレイ114)に表示している画像(カメラ画像)に表示する。
【0081】
これによれば、遠隔ドライバーは、設定舵角δsetで車両100を旋回させたときに車両100の旋回外側の部分が通過するライン(設定舵角ラインLset)を把握することができる。
【0082】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0083】
本発明は、遠隔運転のみならず、遠隔支援及び遠隔監視を含む遠隔サポート全般に適用可能である。尚、遠隔支援とは、自動運転車両が対応できない状況に遭遇した際に、自動運転車両から遠隔に位置する遠隔支援者によって自動運転を継続するための情報を提供することである。又、遠隔監視とは、自動運転車両から遠隔に位置する人物により自動運転車両の通信状態、走行環境、車両状態、自動運転システム状態及び乗客状態の少なくとも一部を監視することである。
【符号の説明】
【0084】
10…遠隔運転システム、11…遠隔運転装置、12…車両制御装置、91…遠隔運転ECU、92…車両制御ECU、100…車両、110…遠隔運転送受信機、114…ディスプレイ、120…車両制御送受信機、126…カメラ

図1
図2
図3