(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174635
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】耐火構造および耐火構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20241210BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20241210BHJP
E04C 3/36 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
E04B1/94 V
E04B1/30 Z
E04C3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092559
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田村 純太朗
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 博則
【テーマコード(参考)】
2E001
2E163
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA06
2E001FA02
2E001GA12
2E001GA66
2E001HA01
2E001HA21
2E001HB02
2E001HC01
2E163FA02
2E163FB09
2E163FC03
2E163FF02
(57)【要約】
【課題】施工性の高い耐火構造および耐火構造の施工方法を提供する。
【解決手段】耐火構造体30は、鋼材31と、鋼材31を囲繞する空気層32と、空気層32を囲繞する木質耐火被覆材33と、空気層32において、鋼材31と木質耐火被覆材33とを接続する接続材34と、を有する。木質耐火被覆材33は、鋼材31を囲繞するように配設され、互いに接合された複数の木質板部によって形成されている。接続材34は、鋼材31に固定される鋼材側接続部55と、木質耐火被覆材33に固定される木質耐火被覆材側接続部60と、を有する。接続材34においては、鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60とが係合している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材と、
前記鋼材を囲繞する空気層と、
前記空気層を囲繞する木質耐火被覆材と、を有する耐火構造であって、
前記空気層において、前記鋼材と前記木質耐火被覆材とを接続する接続材を有し、
前記木質耐火被覆材は、
前記鋼材を囲繞するように配設される複数の木質板部が接合されることにより形成され、
前記接続材は、
前記鋼材に固定される鋼材側接続部と、
前記木質板部に固定される木質耐火被覆材側接続部と、を有し、
前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部とが係合している
耐火構造。
【請求項2】
前記木質耐火被覆材の前記空気層側に面して設けられる耐火材を有し、
前記木質耐火被覆材側接続部は、前記耐火材および前記木質板部に固定されている
請求項1に記載の耐火構造。
【請求項3】
前記接続材は、
前記鋼材側接続部又は前記木質耐火被覆材側接続部の一方に固定される棒材と、
前記鋼材側接続部又は前記木質耐火被覆材側接続部の他方に設けられ、前記棒材が係合し、前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部とを相対移動可能とするルーズ孔と、を有する
請求項1または2に記載の耐火構造。
【請求項4】
前記相対移動可能とする方向は、前記鋼材と前記木質板部とが対向する対向方向である
請求項3に記載の耐火構造。
【請求項5】
前記相対移動可能とする方向は、前記鋼材と前記木質板部とが対向する対向方向と直交する直交方向である
請求項3に記載の耐火構造。
【請求項6】
前記相対移動可能とする方向は、前記鋼材の軸方向である
請求項3に記載の耐火構造。
【請求項7】
前記鋼材の内側にコンクリート材を有し、前記鋼材と前記コンクリート材で鋼管コンクリート構造を形成している
請求項1に記載の耐火構造。
【請求項8】
前記木質耐火被覆材側接続部は、下地材を介して前記木質板部に固定され、
前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部は、前記鋼材の上部で係合している
請求項1に記載の耐火構造。
【請求項9】
前記下地材は、前記木質板部と複数箇所で固定されている
請求項8に記載の耐火構造。
【請求項10】
鋼材と、前記鋼材を囲繞する空気層と、前記空気層を囲繞する木質耐火被覆材と、前記空気層において前記鋼材と前記木質耐火被覆材とを接続する接続材と、を有する耐火構造の施工方法であって、
前記木質耐火被覆材は、
前記空気層を囲繞するように配設される複数の木質板部を接合することにより形成され、
前記接続材は、
前記鋼材に固定された鋼材側接続部と、
前記木質板部に固定された木質耐火被覆材側接続部と、を有し、
予め前記鋼材と前記鋼材側接続部とを固定した鋼材側接続部固定ユニットを製作するステップと、
予め前記木質板部と前記木質耐火被覆材側接続部とを固定した木質耐火被覆材側接続部固定ユニットを製作するステップと、
施工現場で前記鋼材側接続部固定ユニットと前記木質耐火被覆材側接続部固定ユニットとを係合するステップと、を有する
耐火構造の施工方法。
【請求項11】
鋼材と、前記鋼材を囲繞する空気層と、前記空気層を囲繞する木質耐火被覆材と、前記空気層において前記鋼材と前記木質耐火被覆材とを接続する接続材と、を有する耐火構造の施工方法であって、
前記木質耐火被覆材は、
前記空気層を囲繞するように配設される複数の木質板部を接合することにより形成され、
前記接続材は、
前記鋼材に固定された鋼材側接続部と、
前記木質板部に固定され、前記鋼材側接続部に対して前記鋼材と当該木質板部とが対向する対向方向に相対移動可能に係合する木質耐火被覆材側接続部と、を有し、
隣り合う前記木質板部のうち、前記鋼材と前記対向方向において対向する前記木質板部を対向木質板部、前記対向木質板部に隣接する前記木質板部を隣接木質板部とするとき、
前記隣接木質板部には、前記対向木質板部との接合によって形成される内側隅部を閉塞する火炎侵入防止隅部が固定されており、
前記隣接木質板部および前記対向木質板部について前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部とを係合させた状態で、前記鋼材に前記対向木質板部を前記対向方向において近接させながら、前記火炎侵入防止隅部に対する前記対向木質板部の固定と、前記対向木質板部と前記隣接木質板部との接合と、を行う
耐火構造の施工方法。
【請求項12】
鋼材と、前記鋼材を囲繞する空気層と、前記空気層を囲繞する木質耐火被覆材と、前記空気層において前記鋼材と前記木質耐火被覆材とを接続する接続材と、を有する耐火構造の施工方法であって、
前記木質耐火被覆材は、
前記空気層を囲繞するように配設される複数の木質板部を接合することにより中空四角柱形状に形成され、
前記接続材は、
前記鋼材に固定された鋼材側接続部と、
前記木質板部に固定され、前記鋼材側接続部に係合する木質耐火被覆材側接続部と、を有し、
前記耐火構造は、
隣り合う前記木質板部に固定され、前記隣り合う木質板部によって形成される内側隅部を閉塞する火炎侵入防止隅部をさらに有し、
隣り合う2つの前記木質板部が接合された第1L型ユニットおよび第2L型ユニットであって、前記火炎侵入防止隅部として、前記2つの木質板部に固定された第1火炎侵入防止隅部と前記2つの木質板部の一方に設けられて他方のL型ユニットの前記木質板部に固定される第2火炎侵入防止隅部とを有する前記第1L型ユニットおよび第2L型ユニットを予め製作し、
施工現場で、前記第1L型ユニットおよび前記第2L型セットの双方について前記接続材の係合を行ったのち、前記第1L型ユニットの前記第2火炎侵入防止隅部と前記第2L型ユニットの前記木質板部との固定と、前記第2L型ユニットの前記第2火炎侵入防止隅部と前記第2L型ユニットの前記木質板部との固定と、前記第1L型ユニットの前記木質板部と前記第2L型ユニットの前記木質板部との接合と、を行う
耐火構造の施工方法。
【請求項13】
鋼材と、前記鋼材を囲繞する空気層と、前記空気層を囲繞する木質耐火被覆材と、前記空気層において前記鋼材と前記木質耐火被覆材とを接続する接続材と、を有する耐火構造の施工方法であって、
前記木質耐火被覆材は、
前記空気層を囲繞するように配設される複数の木質板部を接合することにより中空四角柱形状に形成され、
前記接続材は、
前記鋼材に固定された鋼材側接続部と、
前記木質板部に固定され、前記鋼材側接続部に係合する木質耐火被覆材側接続部と、を有し、
前記耐火構造は、
隣り合う前記木質板部に固定され、前記隣り合う木質板部によって形成される内側隅部を閉塞する火炎侵入防止隅部をさらに有し、
前記隣り合う木質板部が接合されているとともに前記隣り合う木質板部が前記火炎侵入防止隅部で固定されたチャンネル型ユニットを予め製作し、
施工現場で、前記チャンネル型ユニットおよび前記残りの木質板部について前記接続材の係合を行ったのち、前記チャンネル型ユニットの前記木質板部と前記残りの木質板部との前記火炎侵入防止隅部を用いた固定と、前記チャンネル型ユニットの前記木質板部と前記残りの木質板部との接合と、を行う
耐火構造の施工方法。
【請求項14】
前記隣り合う木質板部は、勝ち側の前記木質板部の側面に負け側の前記木質板部の小口面が当接した状態で接合されており、
前記火炎侵入防止隅部は、負け側となる前記木質板部の端部に、前記小口面と面一となるように予め固定されている
請求項10~13のいずれか一項に記載の耐火構造の施工方法。
【請求項15】
前記木質板部には、前記空気層側に面して耐火材が設けられており、
前記木質耐火被覆材側接続部は、前記耐火材および前記木質板部に固定されており、
隣り合う前記木質板部に固定され、前記隣り合う木質板部によって形成される内側隅部を閉塞する火炎侵入防止隅部をさらに有し、
前記耐火材は、前記隣り合う木質板部の内側隅部において、勝ち側の前記耐火材の側面に負け側の前記耐火材の小口面が当接し、
前記火炎侵入防止隅部は、負け側となる前記耐火材の端部に、前記小口面と面一となるように予め固定されている
請求項10~13のいずれか一項に記載の耐火構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材を取り囲むように木質耐火被覆材が配設される耐火構造および耐火構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材を取り囲むように木質耐火被覆材が配設される耐火構造として、損傷抑制材が周囲に配置された鋼管に対して、例えば特許文献1には、該鋼管を取り囲むように一対の半割木質材を嵌合させた耐火構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の耐火構造は、施工現場において鋼管に半割木質材を嵌合させることは困難であるため、完成品を施工現場へと搬入しなければならず、施工性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する耐火構造は、鋼材と、前記鋼材を囲繞する空気層と、前記空気層を囲繞する木質耐火被覆材と、を有する耐火構造であって、前記空気層において、前記鋼材と前記木質耐火被覆材とを接続する接続材を有し、前記木質耐火被覆材は、前記鋼材を囲繞するように配設される複数の木質板部を接合することにより形成され、前記接続材は、前記鋼材に固定される鋼材側接続部と、前記木質板部に固定される木質耐火被覆材側接続部と、を有し、前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部とが係合している。こうした構成によれば、耐火構造の施工性を向上させることができる。
【0006】
上記課題を解決する耐火構造の施工方法は、鋼材と、前記鋼材を囲繞する空気層と、前記空気層を囲繞する木質耐火被覆材と、前記空気層において前記鋼材と前記木質耐火被覆材とを接続する接続材と、を有する耐火構造の施工方法であって、前記木質耐火被覆材は、前記空気層を囲繞するように配設される複数の木質板部を接合することにより形成され、前記接続材は、前記鋼材に固定された鋼材側接続部と、前記木質板部に固定された木質耐火被覆材側接続部と、を有し、予め前記鋼材と前記鋼材側接続部とを固定した鋼材側接続部固定ユニットを製作するステップと、予め前記木質板部と前記木質耐火被覆材側接続部とを固定した木質耐火被覆材側接続部固定ユニットを製作するステップと、施工現場で前記鋼材側接続部固定ユニットと前記木質耐火被覆材側接続部固定ユニットとを係合するステップと、を有する。
【0007】
上記課題を解決する耐火構造の施工方法は、鋼材と、前記鋼材を囲繞する空気層と、前記空気層を囲繞する木質耐火被覆材と、前記空気層において前記鋼材と前記木質耐火被覆材とを接続する接続材と、を有する耐火構造の施工方法であって、前記木質耐火被覆材は、前記空気層を囲繞するように配設される複数の木質板部を接合することにより形成され、前記接続材は、前記鋼材に固定された鋼材側接続部と、前記木質板部に固定され、前記鋼材側接続部に対して前記鋼材と当該木質板部とが対向する対向方向に相対移動可能に係合する木質耐火被覆材側接続部と、を有し、隣り合う前記木質板部のうち、前記鋼材と前記対向方向において対向する前記木質板部を対向木質板部、前記対向木質板部に隣接する前記木質板部を隣接木質板部とするとき、前記隣接木質板部には、前記対向木質板部との接合によって形成される内側隅部を閉塞する火炎侵入防止隅部が固定されており、前記隣接木質板部および前記対向木質板部について前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部とを係合させた状態で、前記鋼材に前記対向木質板部を前記対向方向において近接させながら、前記火炎侵入防止隅部に対する前記対向木質板部の固定と、前記対向木質板部と前記隣接木質板部との接合と、を行う。
【0008】
上記課題を解決する耐火構造の施工方法は、鋼材と、前記鋼材を囲繞する空気層と、前記空気層を囲繞する木質耐火被覆材と、前記空気層において前記鋼材と前記木質耐火被覆材とを接続する接続材と、を有する耐火構造の施工方法であって、前記木質耐火被覆材は、前記空気層を囲繞するように配設される複数の木質板部を接合することにより中空四角柱形状に形成され、前記接続材は、前記鋼材に固定された鋼材側接続部と、前記木質板部に固定され、前記鋼材側接続部に係合する木質耐火被覆材側接続部と、を有し、前記耐火構造は、隣り合う前記木質板部に固定され、前記隣り合う木質板部によって形成される内側隅部を閉塞する火炎侵入防止隅部をさらに有し、隣り合う2つの前記木質板部が接合された第1L型ユニットおよび第2L型ユニットであって、前記火炎侵入防止隅部として、前記2つの木質板部に固定された第1火炎侵入防止隅部と前記2つの木質板部の一方に設けられて他方のL型ユニットの前記木質板部に固定される第2火炎侵入防止隅部とを有する前記第1L型ユニットおよび第2L型ユニットを予め製作し、施工現場で、前記第1L型ユニットおよび前記第2L型セットの双方について前記接続材の係合を行ったのち、前記第1L型ユニットの前記第2火炎侵入防止隅部と前記第2L型ユニットの前記木質板部との固定と、前記第2L型ユニットの前記第2火炎侵入防止隅部と前記第2L型ユニットの前記木質板部との固定と、前記第1L型ユニットの前記木質板部と前記第2L型ユニットの前記木質板部との接合と、を行う。
【0009】
上記課題を解決する耐火構造の施工方法は、鋼材と、前記鋼材を囲繞する空気層と、前記空気層を囲繞する木質耐火被覆材と、前記空気層において前記鋼材と前記木質耐火被覆材とを接続する接続材と、を有する耐火構造の施工方法であって、前記木質耐火被覆材は、前記空気層を囲繞するように配設される複数の木質板部を接合することにより中空四角柱形状に形成され、前記接続材は、前記鋼材に固定された鋼材側接続部と、前記木質板部に固定され、前記鋼材側接続部に係合する木質耐火被覆材側接続部と、を有し、前記耐火構造は、隣り合う前記木質板部に固定され、前記隣り合う木質板部によって形成される内側隅部を閉塞する火炎侵入防止隅部をさらに有し、前記隣り合う木質板部が接合されているとともに前記隣り合う木質板部が前記火炎侵入防止隅部で固定されたチャンネル型ユニットを予め製作し、施工現場で、前記チャンネル型ユニットおよび前記残りの木質板部について前記接続材の係合を行ったのち、前記チャンネル型ユニットの前記木質板部と前記残りの木質板部との前記火炎侵入防止隅部を用いた固定と、前記チャンネル型ユニットの前記木質板部と前記残りの木質板部との接合と、を行う。
【0010】
上述した耐火構造および耐火構造の施工方法によれば、耐火構造の施工性を向上させることができる。
上記耐火構造は、前記木質耐火被覆材の前記空気層側に面して設けられる耐火材を有し、前記木質耐火被覆材側接続部は、前記耐火材および前記木質板部に固定されていてもよい。こうした構成によれば、耐火構造の耐火性を向上させることができる。
【0011】
上記耐火構造において、前記接続材は、前記鋼材側接続部又は前記木質耐火被覆材側接続部の一方に固定される棒材と、前記鋼材側接続部又は前記木質耐火被覆材側接続部の他方に設けられ、前記棒材が係合し、前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部とを相対移動可能とするルーズ孔と、を有していてもよい。こうした構成によれば、前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部との位置調整を行うことができる。
【0012】
上記耐火構造において、前記相対移動可能とする方向は、前記鋼材と前記木質板部とが対向する対向方向であることが好ましい。こうした構成によれば、対向方向において前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部との位置調整を行うことができる。
【0013】
上記耐火構造において、前記相対移動可能とする方向は、前記鋼材と前記木質板部とが対向する対向方向と直交する直交方向であることが好ましい。こうした構成によれば、直交方向において前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部との位置調整を行うことができる。
【0014】
上記耐火構造において、前記相対移動可能とする方向は、前記鋼材の軸方向であることが好ましい。こうした構成によれば、鋼材の軸方向において前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部との位置調整を行うことができる。
【0015】
上記耐火構造は、前記鋼材の内側にコンクリート材を有し、前記鋼材と前記コンクリート材で鋼管コンクリート構造を形成していてもよい。こうした構成によれば、鋼材が受けた熱の一部をコンクリート材に伝熱することができる。これにより、鋼材の耐火性を向上させることができる。
【0016】
上記耐火構造において、前記木質耐火被覆材側接続部は、下地材を介して前記木質板部に固定され、前記鋼材側接続部と前記木質耐火被覆材側接続部は、前記鋼材の上部で係合していることが好ましい。こうした構成によれば、木質耐火被覆材の自重を分散して、木質耐火被覆材側接続部に伝達することができる。
【0017】
上記耐火構造において、前記下地材は、前記木質板部と複数箇所で固定されていることが好ましい。こうした構成によれば、耐火材の支持点を多く設けることができ、耐火材の脱落を防止することができる。
【0018】
上記構成の耐火構造の施工方法において、前記隣り合う木質板部は、勝ち側の前記木質板部の側面に負け側の前記木質板部の小口面が当接した状態で接合されており、前記火炎侵入防止隅部は、負け側となる前記木質板部の端部に、前記小口面と面一となるように予め固定されていることが好ましい。こうした構成によれば、負け側の木質板部に火炎侵入防止隅部を固定する際の位置合わせを容易に行うことができる。
【0019】
上記構成の耐火構造の施工方法において、前記木質板部には、前記空気層側に面して耐火材が設けられており、前記木質耐火被覆材側接続部は、前記耐火材および前記木質板部に固定されており、隣り合う前記木質板部に固定され、前記隣り合う木質板部によって形成される内側隅部を閉塞する火炎侵入防止隅部をさらに有し、前記耐火材は、前記隣り合う木質板部の内側隅部において、勝ち側の前記耐火材の側面に負け側の前記耐火材の小口面が当接し、前記火炎侵入防止隅部は、負け側となる前記耐火材の端部に、前記小口面と面一となるように予め固定されていることが好ましい。こうした構成によれば、負け側の耐火材に火炎侵入防止隅部を固定する際の位置合わせを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】耐火構造の一実施形態を備えた耐火構造体の概略構成を示す図である。
【
図2】(a)耐火構造体の横断面を模式的に示す図であり、(b)2b線で囲まれた部分の拡大図である。
【
図4】第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニットを模式的に示す斜視図である。
【
図5】耐火構造の施工方法の一例を模式的に示す図であって、鋼材に対して一方の第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニットが接続される様子を示す図である。
【
図6】鋼材側接続部と木質耐火被覆材側接続部とが係合する様子を模式的に示す図である。
【
図7】係合状態にある鋼材側接続部と木質耐火被覆材側接続部とを上方から見た図である。
【
図8】鋼材に対して一方の第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニットが接続される様子を模式的に示す図である。
【
図9】鋼材に対して他方の第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニットが接続される様子を模式的に示す図である。
【
図10】木質板部の隙間部分が熱分解した状態を模式的に示す図である。
【
図11】変形例において、耐火構造の施工方法の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~
図10を参照して、耐火構造および耐火構造の施工方法について説明する。
図1に示すように、立設構造10は、下部構造体11、上部構造体12、および、耐火構造体30を有する。本実施形態において、耐火構造体30は、四角柱形状の外見を有して下部構造体11と上部構造体12とを繋ぐように設置される柱である。
【0022】
下部構造体11は、例えば、仕口部材13、梁14、スラブ15などで構成されている。仕口部材13は、梁14と耐火構造体30とを接続する部材である。梁14は、例えばH形鋼を用いて形成されている。スラブ15は、例えばコンクリートで形成される。
【0023】
上部構造体12は、例えば、下部構造体11と同様に、仕口部材17、梁18、図示されないスラブなどで構成されている。仕口部材17は、梁18と耐火構造体30とを接続する部材である。梁18は、例えばH形鋼を用いて形成されている。
【0024】
(耐火構造体)
耐火構造体30は、鋼材31、空気層32、木質耐火被覆材33、接続材34、および、まくら材35を備える。
【0025】
鋼材31は、例えば断面矩形状を有して耐火構造体30の軸方向を長さ方向とする鋼管材である。鋼材31が鋼管材である場合、鋼材31の内側にコンクリート材が形成されることにより、鋼管コンクリート構造が構成されてもよい。空気層32は、鋼材31を囲繞するように形成されている。木質耐火被覆材33は、空気層32を囲繞するとともに鋼材31を内包する中空四角柱形状に形成されている。接続材34は、空気層32において、鋼材31と木質耐火被覆材33とを接続している。接続材34は、鋼材31側に設けられた鋼材側接続部55と木質耐火被覆材33側に設けられた木質耐火被覆材側接続部60とで構成されている。鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60は、耐火構造体30の上側端部において係合し、耐火構造体30の上側端部におけるスペーサーとしても機能している。まくら材35は、耐火構造体30の下側端部におけるスペーサーとして機能している。
【0026】
(木質耐火被覆材)
図2(a)および
図2(b)に示すように、木質耐火被覆材33は、互いに接合された複数の木質板部41によって構成されている。
【0027】
木質板部41は、木質耐火被覆材33の各側面部を構成する仕上げ材である。木質板部41は、紙面直交方向、すなわち耐火構造体30の軸方向を長さ方向とする板材である。木質板部41は、例えばCLT(Cross Laminated Timber)材で形成される。木質板部41は、外周が連続するように設けられている。各木質板部41は、隣り合う木質板部41とによって、中空四角柱形状をなす木質耐火被覆材33の各隅部を形成している。なお、木質板部41は、CLT材のほか、集成材、製材、合板などであってもよい。木質板部41は、耐火被覆材であるため、構造性能を確保する必要がない。このことから、JAS(Japanese Agricultural Standard)認定材以外の材料、例えば2ply以下のCLT材も利用可能である。その結果、製作コストの抑制と木材利用の促進とを図ることができる。
【0028】
なお、以下では、紙面左右方向で対向する負け側の木質板部41を第1木質板部41A、紙面上下方向で対向する勝ち側の木質板部41を第2木質板部41Bという。また、第1木質板部41Aと第2木質板部41Bを区別しないときは、単に木質板部41という。
【0029】
第1木質板部41Aと第2木質板部41Bは、板部接合材45で接合されている。板部接合材45は、例えばビスである。板部接合材45は、第2木質板部41Bに形成された板部接合用小口46に挿入されたのち、第2木質板部41Bを貫通するように第1木質板部41Aに打ち込まれる。木質板部41A,41Bの接合後、板部接合用小口46には、板部接合材45を覆い隠すように埋木47が配設される。この埋木47は、木質耐火被覆材33の一部として機能する。
【0030】
また、耐火構造体30は、耐火材42および火炎侵入防止隅部43を有する。
耐火材42は、空気層32に面するように各木質板部41の内面に接合されている。耐火材42は、隣り合う木質板部41によって形成される内側隅部において連続するように設けられている。より具体的には、第1木質板部41Aに負け側の耐火材42が設けられ、第2木質板部41Bには勝ち側の耐火材42が設けられている。耐火材42は、例えば石膏ボード、強化石膏ボード、耐火塗料、耐火吹付材などで構成される。耐火材42が石膏ボードや強化石膏ボードである場合、耐火材42は、図示されないビスなどにより木質板部41に接合されてもよいし、接着剤によって接合されてもよい。接着剤で耐火材42が木質板部41に接合されることにより、燃焼中の木質板部41が耐火材42から剥がれ落ちやすくなる。これにより、木質板部41から耐火材42への熱影響を抑えることができる。
【0031】
火炎侵入防止隅部43は、隣り合う耐火材42によって形成される内側隅部の各々に設けられている。火炎侵入防止隅部43は、各内側隅部に沿うように耐火構造体30の軸方向(紙面直交方向)に延びており、隣り合う耐火材42の隙間部分を閉塞している。火炎侵入防止隅部43は、負け側の耐火材42の小口面と面一となるように設けられている。これにより、負け側の耐火材42を有する木質板部41に火炎侵入防止隅部43を予め固定する際に、該耐火材42と火炎侵入防止隅部43との位置合わせを容易に行うことができる。火炎侵入防止隅部43は、例えば高熱容量材(鋼管やアングル材などの鉄材、モルタルバーなど)や不燃材(ケイ酸カルシウム材)、比重の大きい木質など、木質板部41よりも燃えにくい材料で形成されている。本実施形態において、火炎侵入防止隅部43は、アングル材である。
【0032】
火炎侵入防止隅部43は、第1木質板部41Aと該第1木質板部41Aに取り付けられた耐火材42とに対して接合材51によって接合される。接合材51は、例えばビスである。接合材51は、火炎侵入防止隅部43および耐火材42を貫通するように火炎侵入防止隅部43側から第1木質板部41Aに打ち込まれる。
【0033】
また、火炎侵入防止隅部43は、第2木質板部41Bと該第2木質板部41Bに取り付けられた耐火材42とに対して固定材52によって固定される。固定材52は、例えばビスである。固定材52は、第2木質板部41Bに形成された固定用小口53に挿入されたのち、第2木質板部41Bおよび耐火材42を貫通するように火炎侵入防止隅部43に打ち込まれる。これにより、火炎侵入防止隅部43は、隣り合う耐火材42の接合部を押圧するように、また、隣り合う耐火材42の接合部を閉塞するように設けられる。固定材52による固定後、固定用小口53には、固定材52を覆い隠すように埋木54が配設される。埋木54は、木質耐火被覆材33の一部として機能する。
【0034】
(接続材)
図3に示すように、接続材34を構成する鋼材側接続部55は、鋼材31に設けられている。鋼材側接続部55は、鋼材31の一端部において、各側面部の中央部に設けられている。鋼材側接続部55は、アングル材56と棒材57とを有する。アングル材56および棒材57は、金属製である。アングル材56は、溶接によって鋼材31に接合される接合辺部と、木質耐火被覆材33に向かって突出する突出辺部とを有する。棒材57は、アングル材56の突出辺部における中央部に溶接によって接合されている。棒材57は、アングル材56の突出辺部から上方に向かって延びている。
【0035】
次に、接続材34を構成する木質耐火被覆材側接続部60について説明する。木質耐火被覆材側接続部60は、第1木質板部41Aおよび第2木質板部41Bの各々に対して同様の構造で設けられている。ここでは、木質耐火被覆材側接続部60について、第1木質板部41Aを用いて説明する。
【0036】
図4に示すように、木質耐火被覆材側接続部60は、第1木質板部41Aおよび耐火材42に対して、下地材61を介して固定されている。
下地材61は、一対の側枠部62、下枠部63、および、中間枠部64を有する。一対の側枠部62は、第1木質板部41Aの幅方向中央の両側を耐火構造体30の軸方向に延びている。下枠部63は、一対の側枠部62の他端部を接続している。中間枠部64は、一対の側枠部62の中間部を接続している。
【0037】
下地材61は、溶接によって互いに接合された金属製のアングル材によって構成されている。このアングル材は、ビスなどの下地固定材65によって第1木質板部41Aおよび耐火材42に対して複数箇所で固定される固定辺部と、鋼材31に向かって突出する突出辺部とを有する。
【0038】
木質耐火被覆材側接続部60は、金属製のアングル材によって構成されている。このアングル材は、一対の側枠部62に接合される接合辺部と、鋼材31に向かって突出する突出辺部とを有する。木質耐火被覆材側接続部60は、各側枠部62の上端部において、該側枠部62を構成するアングル材の固定辺部に溶接によって接合されている。木質耐火被覆材側接続部60は、下地材61に接合された状態で第1木質板部41Aおよび耐火材42に固定される。
【0039】
木質耐火被覆材側接続部60は、突出辺部の中央部に、鋼材側接続部55の棒材57が挿入可能なルーズ孔68を有している。鋼材側接続部55の棒材57が木質耐火被覆材側接続部60のルーズ孔68に挿入された状態を係合状態という。ルーズ孔68は、棒材57よりも大径の円形状に形成されている。すなわち、ルーズ孔68は、係合状態において鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60とを相対移動可能に形成されている。
【0040】
なお、まくら材35は、第1木質板部41Aおよび該第1木質板部41Aに接合された耐火材42に対してビスなどの固定材によって固定されている。まくら材35は、耐火構造体30の他端部において、鋼材31と木質耐火被覆材33との間のスペースを確保する。ここで、接続材34の係合位置に対して木質板部41の重心位置が偏心していると木質板部41の下部が鋼材31側に接近してしまう。こうした木質板部41の材軸方向の傾きを修正するべく、まくら材35は、その厚さが現場で調整される。まくら材35は、不燃材(例えば、石膏ボードやケイカル板、金属製のアングル材など)が望ましい。
【0041】
(耐火構造体の施工方法)
耐火構造体30の施工方法の一例について説明する。耐火構造体30の施工方法は、製作ステップ、建方ステップ、囲繞ステップを有する。
【0042】
製作ステップは、施工現場や施工現場外の製作施設に木質耐火被覆材33の構成部材が搬入され、木質板部41に対して耐火材42などを固定することで木質耐火被覆材側接続部固定ユニットを製作する工程である。
【0043】
具体的には、第1木質板部41Aに対して、耐火材42、一対の火炎侵入防止隅部43、下地材61、および、木質耐火被覆材側接続部60を固定することにより、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニットを製作する。また、第2木質板部41Bに対して耐火材42、下地材61、および、木質耐火被覆材側接続部60を固定することにより、第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニットを製作する。
図4は、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニットを示している。
【0044】
なお、製作ステップにおいては、中空四角柱が形成されるように第1および第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニットを配置して各所の寸法値などを測定することにより、第1および第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニットの検品を行うことが可能である。
【0045】
また、製作ステップは、製作施設において鋼材31に対して鋼材側接続部55を固定することにより、鋼材側接続部固定ユニットを製作する工程を含んでいてもよい。
図3は、鋼材側接続部固定ユニットを示している。
【0046】
建方ステップは、建方施設の施工現場において、鋼材31が所定の位置に設置される工程である。具体的には、仕口部材13に鋼材31が接合されることにより、鋼材31が所定位置に設置される。なお、鋼材側接続部55は、設置後の鋼材31に対して接合されてもよい。この場合、建方ステップは、製作ステップに先行して行われてもよい。
【0047】
囲繞ステップは、建方施設の施工現場において、設置後の鋼材31を第1および第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニットで囲繞する工程である。
まず、
図5に示すように、一方の第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aを鋼材31の第1側面部に対向するように配置する。
【0048】
その後、
図6に示すように、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aを揚重して位置合わせを行ったのち、鋼材側接続部55の棒材57を木質耐火被覆材側接続部60のルーズ孔68に挿入する。これにより、鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60とが係合状態となり、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aが仮置き状態となる。仮置き状態のとき、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aの下部は、まくら材35によって鋼材31側への変位が規制される。
【0049】
図7に示すように、仮置き状態においては、鋼材側接続部55に対する木質耐火被覆材側接続部60の相対移動、すなわち鋼材31に対する第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aの位置調整が可能となっている。より具体的には、鋼材31の軸方向における位置調整、鋼材31の軸方向に直交する平面方向における位置調整、これらが可能となっている。平面方向は、鋼材31の側面部と第1木質板部41Aとが対向する対向方向(
図7における左右方向)、および、該対向方向に直交する直交方向(
図7における上下方向)を含む方向である。
【0050】
次に、
図8に示すように、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aと一方の第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bとが接続される。このとき、第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bの第2木質板部41Bは対向木質板部として機能し、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aの第1木質板部41Aは対向木質板部に隣接する隣接木質板部として機能する。
【0051】
まず、第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bを鋼材31の第2側面部に対向するように配置する。その後、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aと同様に、鋼材側接続部55の棒材57を木質耐火被覆材側接続部60のルーズ孔68に挿入する。これにより、第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bが仮置き状態となる。
【0052】
そして、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aの端部と第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bの端部とを嵌合させたのち、固定材52を用いて第2木質板部41Bおよび該第2木質板部41Bに取りつけられている耐火材42を火炎侵入防止隅部43に固定する。また、板部接合材45を用いて第1木質板部41Aと第2木質板部41Bとを接合する。これにより、火炎侵入防止隅部43に第2木質板部41Bが固定され、かつ、第1木質板部41Aに第2木質板部41Bが密着した状態で、それら第1木質板部41Aと第2木質板部41Bとを接合することができる。板部接合材45を用いた接合と固定材52を用いた固定は、第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bの対向方向に沿うように、鋼材31に第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bを近接させながら行われる。このようにして第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aに第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bが接続されると、各小口46,53には、それぞれ埋木47,54が配設される。
【0053】
次に、
図9に示すように、第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bと同様にして、他方の第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Cが鋼材31の第3側面部に対向するように第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aに接続される。
【0054】
そして、他方の第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Dが鋼材31の第4側面部に対向するように配置される。そして、位置合わせを行ったのち、鋼材側接続部55の棒材57を木質耐火被覆材側接続部60のルーズ孔68に挿入する。これにより、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Dが仮置き状態となる。そして、固定材52を用いて2つの第2木質板部41Bおよびそれら第2木質板部41Bに取りつけられている耐火材42を第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Dの火炎侵入防止隅部43に固定する。また、板部接合材45を用いて第1木質板部41Aに対して2つの第2木質板部41Bを接合する。これらの作業後、各小口46,53には、それぞれ埋木47,54が配設される。こうして第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70B,70Cと第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Dが接続されると、
図2に示すように、空気層32を介して鋼材31が木質耐火被覆材33で囲繞される。
【0055】
本実施形態の効果について説明する。
(1)耐火構造体30においては、木質耐火被覆材33の施工時に、鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60との係合により、各木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70A~70Dを仮置き状態とすることができる。これにより、各木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70A~70Dの位置合わせのほか、木質耐火被覆材側接続部固定ユニット同士の接続を容易に行うことができる。また、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Aと第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bとの接続は、鋼材31に対する第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bの対向方向に、第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70Bを近接させながら行われる。これにより、第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70A,70Dの後側に外壁があって作業スペースが確保できない場合であったとしても、その外壁側からビスなどを打つ作業が発生しない。以上のことから、耐火構造体30の施工性を向上させることができる。
【0056】
(2)木質板部41には、空気層32側に面して耐火材42が設けられている。これにより、施工性に加えて、耐火構造体30の耐火性を向上させることができる。
(3)また、耐火構造体30には、隣り合う耐火材42の接合部を押圧する火炎侵入防止隅部43が設けられている。
【0057】
ここで、
図10に示すように、火災が発生したとき、耐火構造体30は、木質耐火被覆材33における外周隅部が熱影響を受けやすい。特に、木質板部41A,41Bの隙間部分が熱影響を受けやすい。耐火構造体30においては、木質板部41A,41Bが隙間部分で燃焼すると耐火材42が露出する。この際、火炎侵入防止隅部43、接合材51、および、固定材52が耐火材42の接合部分に隙間が形成されるのを防止するとともに、それらが耐火材42を支持していることで耐火材42の脱落を防止する。これにより、木質耐火被覆材33の内側への火炎の侵入を抑制することができる。その結果、耐火構造体30の耐火性をさらに向上させることができる。また、第1木質板部41Aと第2木質板部41Bとが板部接合材45によって接合されていることで、火災が発生したときに、勝ち側である第2木質板部41Bに反りが生じにくくなる。すなわち、火災時に木質板部41A,41Bに生じる隙間を小さくすることができる。
【0058】
(4)接続材34においては、鋼材側接続部55に棒材57が設けられ、木質耐火被覆材側接続部60に棒材57が係合するルーズ孔68が設けられている。これにより、鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60との相対移動が可能となっている。その結果、鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60とが係合状態にあるときにも、鋼材31の軸方向における位置調整、および、鋼材31の軸方向に直交する平面方向における位置調整を行うことができる。
【0059】
(5)木質耐火被覆材側接続部60は、下地材61を介して木質板部41に固定されている。また、下地材61は、複数箇所において木質板部41に固定されている。このように耐火材42の支持点を多く設けることができ、耐火材42の脱落および木質耐火被覆材側接続部60が脱落しにくくなる。
【0060】
(6)鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60は、鋼材31の上部において係合している。木質耐火被覆材33の自重を分散して、木質耐火被覆材側接続部60に伝達することができる。
【0061】
(7)鋼材31の内側にコンクリート材が形成されることにより、鋼材31が受けた熱の一部をコンクリート材へと伝えることができる。その結果、熱影響による鋼材31の耐力低下を抑制することができる。
【0062】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・木質耐火被覆材側接続部60は、下地材61を介すことなく木質板部41に固定されていてもよい。
【0063】
・下地材61は、枠状の形状のものに限らず、例えば木質耐火被覆材側接続部60から下方に向かって延びる縦材で構成されてもよい。
・接続材34は、例えば、鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60とが鋼材31の上部の複数箇所において係合する構成であってもよい。こうした構成によれば、下地材61に作用する荷重を効果的に分散させることができる。
【0064】
・接続材34は、例えば、鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60とが鋼材31の下部や鋼材31の中間部において係合する構成であってもよい。
・接続材34は、例えば係合タイプの金物など、既製品によって構成されていてもよい。既製品を用いることにより、製作コストを低減することができる。
【0065】
・ルーズ孔68は、棒材57が挿入可能であればよく、特定の方向に延びる長穴形状であってもよい。
・耐火構造体30は、耐火材42を備えていなくともよい。すなわち、火炎侵入防止隅部43や下地材61が木質板部41に直接固定されている構成であってもよい。この場合、火炎侵入防止隅部43は、負け側の木質板部41の小口面と面一となるように設けられることが好ましい。
【0066】
・接続材34の係合構造は、棒材57がルーズ孔68に挿入される構造に限らず、例えば、凸部と凹部との嵌合構造により具現化されてもよい。
・接続材34における鋼材側接続部55と木質耐火被覆材側接続部60との係合を全ての木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70A~70Dにおいて行ってから、木質耐火被覆材側接続部固定ユニット70A~70Dの接続を行ってもよい。
【0067】
・耐火構造体30は、柱だけでなく、梁に適用されてもよい。
耐火構造体が梁に適用される場合、鋼材として、上下一対のフランジと当該フランジ間のウェブを有するH形鋼が配置され、当該H形鋼の上フランジ両端に鋼材側接続部が固定され、空気層を隔てて、当該鋼材側接続部に係合される木質耐火被覆材側接続部が固定された一対の木質板部がH形鋼の両側に配置される。また、H形鋼の下フランジの底面から空気層を隔てて梁底面を形成する木質板部が配置される。この梁がコンクリート床下に設けられる場合、H型鋼の上フランジ上面にスタッド等を介してコンクリート床が設けられ、空気層は、梁の両側面と底面の三方に形成される。なお、耐火構造体が外壁等に接して設けられる場合、空気層は、外壁面側においては省略され、鋼材の二方、又は、三方等、部分的に鋼材を囲繞する。
【0068】
・上記実施形態では、接続材34における係合、ならびに、木質板部41の固定および接合を1つ1つ順番に行った。これに限らず、耐火構造の施工方法は、以下のようにしてもよい。
【0069】
例えば、
図11に示すように、1つの第1木質板部41Aと1つの第2木質板部41Bとを接合・固定した第1L型ユニット75Aおよび第2L型ユニット75Bを予め製作する。そして、第1L型ユニット75Aおよび第2L型ユニット75Bについて接続材34の係合を行ったのち、これらL型ユニット75A,75Bを接合・固定することにより耐火構造体30が形成される構成であってもよい。なお、各L型ユニット75A,75Bにおいて、第1木質板部41Aと第2木質板部41Bとを固定している火炎侵入防止隅部43が第1火炎侵入防止隅部である。第1木質板部41Aのみに固定されている火炎侵入防止隅部43が第2火炎侵入防止隅部である。
【0070】
また例えば、
図9に例示されるように、一方の第1木質板部41Aと一対の第2木質板部41Bとを接続したチャンネル型ユニットを予め製作する。そして、チャンネル型ユニットおよび他方の第1木質板部41Aについて接続材34の係合を行ったのち、そのチャンネル型ユニットの木質板部41Bと他方の第1木質板部41Aとの固定・接合を行うことにより、耐火構造体30が形成される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…立設構造、11…下部構造体、12…上部構造体、13…仕口部材、14…梁、15…スラブ、17…仕口部材、18…梁、30…耐火構造体、31…鋼材、32…空気層、33…木質耐火被覆材、34…接続材、35…まくら材、40…耐火構造体、41…木質板部、41A…第1木質板部、41B…第2木質板部、42…耐火材、43…火炎侵入防止隅部、45…板部接合材、46…板部接合用小口、47…埋木、51…接合材、52…固定材、53…固定用小口、54…埋木、55…鋼材側接続部、56…アングル材、57…棒材、60…木質耐火被覆材側接続部、61…下地材、62…側枠部、63…下枠部、64…中間枠部、65…下地固定材、68…ルーズ孔、70A,70D…第1木質耐火被覆材側接続部固定ユニット、70B,70C…第2木質耐火被覆材側接続部固定ユニット、75A…第1L型ユニット、75B…第2L型ユニット。