(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174639
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】医用画像生成装置
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20241210BHJP
G06T 11/80 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G16H10/00
G06T11/80 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092567
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 晃裕
【テーマコード(参考)】
5B050
5L099
【Fターム(参考)】
5B050AA02
5B050BA06
5B050BA12
5B050CA08
5B050DA04
5B050EA09
5B050EA19
5B050FA02
5B050FA05
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】医師の判定や診断結果に基づいて、受診者のアバター画像を生成すること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像生成装置は、検出部と、生成部と、補正部と、を備える。検出部は、受診者の顔を含む撮像画像から顔の特徴を示す特徴情報を検出する。生成部は、特徴情報から受診者のアバター画像を生成する。補正部は、受診者の疾患情報に基づいて、アバター画像を補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受診者の顔を含む撮像画像から前記顔の特徴を示す特徴情報を検出する検出部と、
前記特徴情報から前記受診者のアバター画像を生成する生成部と、
前記受診者の疾患情報に基づいて、前記アバター画像を補正する補正部と、
を備える、医用画像生成装置。
【請求項2】
前記疾患情報は、医師の判定結果、遺伝子診断の診断結果、手術箇所を含む手術歴のうち、少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の医用画像生成装置。
【請求項3】
前記医師の判定結果は、複数の疾患候補のうち、前記受診者の疾患に対応する、前記受診者の顔に現れる少なくとも1つの疾患候補に対応する疾患候補情報を含む、
請求項2に記載の医用画像生成装置。
【請求項4】
前記疾患情報に対応する疾患の発生確率を示す重要度に基づいて、前記特徴情報に対応する検出項目数を決定する決定部と、を備え、
前記検出部は、前記検出項目数に対応して、前記特徴情報を検出する検出位置及び検出数に基づいて、前記特徴情報を再検出し、
前記補正部は、再検出された前記特徴情報に基づいて、前記アバター画像を補正する、
請求項2に記載の医用画像生成装置。
【請求項5】
前記アバター画像の表示又は非表示を行う表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、前記アバター画像に含まれる前記特徴情報の一部を非表示にする場合、非表示に対応した前記特徴情報の顔の部位を示す部位情報を表示する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の医用画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院を受診する受診者は、スマートフォンやPC(Personal Computer)からネットワークを介して接続して病院(クリニック)の予約・問診・処方箋又は薬の受け取り・決済までをインターネット上で行う「オンライン診療」が普及している。
【0003】
また、最近では、仮想空間上でアバターによる活動を行う「メタバース」と呼ばれる技術が進化しており、メタバース上で社会生活を送ることが可能になりつつある。メタバース技術の発展に伴い、「メタバースクリニック」という、メタバース上で匿名アバターとして参加し、医師などの医療資格者による、医療相談、カウンセリング、座談会などが受けられるヘルスケアコミュニティーサービスが展開されている。以上を踏まえると、今後オンライン(メタバース)上で病院を受診する機会はさらに増えていくことが予想できる。
【0004】
例えば、疾患の診断が難しい場合や、複数の疾患疑いがある場合、又はそれに関係なく患者の情報を詳しく保存しておくため、なるべく顔の特徴を多く残した状態でアバターを生成したいという要望があると考えられる。そのため、残すべき特徴を取捨選択した上でマスクを生成する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医師の判定や診断結果に基づいて、受診者のアバター画像を生成することができる医用画像生成装置を提供することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る医用画像生成装置は、検出部と、生成部と、補正部と、を備える。検出部は、受診者の顔を含む撮像画像から顔の特徴を示す特徴情報を検出する。生成部は、特徴情報から受診者のアバター画像を生成する。補正部は、受診者の疾患情報に基づいて、アバター画像を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る医用情報処理システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る医用画像生成装置が取得した撮像画像の一例である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る医用画像生成装置が検出した特徴情報の一例である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る医用画像生成装置が生成したマスクの一例である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る医用画像生成装置が検出した特徴情報の一例である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る医用画像生成装置が生成したマスクの一例である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る医用画像生成装置が処理する流れを示すブロック図である。
【
図8】
図8は、疾患情報に対応する、基準検出項目数及び重要度の関係を説明するための一例を示すテーブルである。
【
図9】
図9は、検出項目数に対応する、検出位置及び検出数の関係を説明するための一例を示すテーブルである。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る医用画像生成装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図11は、変形例1に係る医用情報処理システムの構成例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、変形例1に係る医用画像生成装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係る医用情報処理システムを説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。例えば、医用情報処理システム100にPACS(Picture Archiving and Communication System)が導入されている場合、各装置は、医用画像データに付帯情報を付与したDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)形式の医用画像データ等を相互に送受信する。ここで、付帯情報には、例えば、患者を識別する患者ID(Identifier)、検査を識別する検査ID、マイナンバーカードのID、各装置を識別する装置ID、各装置による1回の撮影を識別するシリーズID等が含まれる。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る医用情報処理システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、医用情報処理システム100は、情報処理装置10、医用画像生成装置20及び検診管理端末30を備える。医用情報処理システム100では、情報処理装置10、医用画像生成装置20及び検診管理端末30がインターネット等のネットワークを介して相互に通信可能である。
【0011】
ここで、医用情報処理システム100において、情報処理装置10は、受診者によって利用される。この受診者は、オンライン診療の対象となる者である。受診者は、例えば、メタバース上に存在する医療機関においてオンライン診療を受診する。また、この受診者は、医用画像生成装置20が提供するサービスの利用者でもある。なお、医用情報処理システム100において、受診者の数は任意に変更可能である。
【0012】
情報処理装置10は、受診者によって操作される端末装置である。情報処理装置10は、例えば、スマートフォンである。なお、情報処理装置10は、スマートフォンに限定されるものではなく、デスクトップ型のPC(Personal Computer)、ノート型PC、タブレット等であっても良い。情報処理装置10は、入力インターフェース11と、ディスプレイ12と、カメラ13と、通信制御回路14と、記憶回路15と、処理回路16とを有する。
【0013】
入力インターフェース11は、例えば、マウス、キーボード、ボタン、タッチパネル等に対応する。入力インターフェース11は、情報処理装置10の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を処理回路16に対して適宜転送する。
【0014】
ディスプレイ12は、操作者が入力インターフェース11を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、情報処理装置10における処理結果等を表示したりする。
【0015】
カメラ13は、情報処理装置10に設けられる。カメラ13は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサにより構成される。例えば、カメラ13は、操作者の顔面を撮像し、撮像した撮像画像を取り込んで、取り込んだ画像を、記憶回路15に出力する。
【0016】
通信制御回路14は、インターネット等のネットワークを介して他の装置との間で行われる通信を制御する。例えば、通信制御回路14は、操作者の指示に応じて記憶回路25から撮像画像を読み出し、読み出した撮像画像を、ネットワークを介して医用画像生成装置20に送信する。ここで、通信制御回路14は、撮像画像に受診者を識別する受診者ID(Identifier)を対応付けて医用画像生成装置20に撮像画像を送信する。また、例えば、通信制御回路14は、医用画像生成装置20により生成された種々の情報を、ネットワークを介して受信する。
【0017】
記憶回路25は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などであり、情報処理装置10による各種処理を行うための制御プログラムや各種データ等を記憶する。また、記憶回路25は、カメラ13から送信された撮像画像を記憶する。
【0018】
処理回路16は、情報処理装置10の処理全体を制御する。具体的には、処理回路16は、入力インターフェース11を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路15から読み込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づいて、各種処理を実行したり、カメラ13、通信制御回路14等の処理を制御したりする。
【0019】
また、撮像制御機能161により処理回路16は、カメラ13と協働して、操作者の顔面を撮像するように制御を行う。
【0020】
また、医用情報処理システム100において、検診管理端末30は、病院等の医療機関に設置され、医師や技師等の医療従事者によって操作される端末装置である。この医療機関は、医用画像生成装置20が提供するサービスの利用者でもある。なお、
図1に示す例では、説明の便宜上1つの医療機関のみを図示しているが、医用情報処理システム100において、医療機関の数は任意に変更可能である。
【0021】
検診管理端末30は、例えば、入力インターフェース31、ディスプレイ32、通信制御回路33、記憶回路34及び処理回路35を備える。
【0022】
入力インターフェース31は、例えば、マウス、キーボード、ボタン、タッチパネル等に対応する。入力インターフェース31は、検診管理端末30の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を処理回路35に対して適宜転送する。
【0023】
ディスプレイ32は、操作者が入力インターフェース31を用いて各種設定要求を入力するためのGUIを表示したり、検診管理端末30における処理結果等を表示したりする。
【0024】
通信制御回路33は、インターネット等のネットワークを介して他の装置との間で行われる通信を制御する。例えば、通信制御回路33は、記憶回路34が記憶する施設情報を、ネットワークを介して医用画像生成装置20に転送する。ここで、通信制御回路33は、施設情報に医療機関を識別する医療機関IDを対応付けて医用画像生成装置20に施設情報を転送する。また、例えば、通信制御回路33は、医用画像生成装置20により生成された種々の情報を、ネットワークを介して受信する。
【0025】
記憶回路34は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などであり、検診管理端末30による各種処理を行うための制御プログラムや各種データ等を記憶する。また、記憶回路34は、医用画像診断装置ごとの検査の予定等を記録した施設情報を記憶する。なお、この施設情報には、医療機関の所在地を示す情報が含まれる。
【0026】
処理回路35は、検診管理端末30の処理全体を制御する。具体的には、処理回路35は、入力インターフェース31を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路34から読み込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づいて、各種処理を実行したり、通信制御回路33の処理を制御したりする。
【0027】
また、医用情報処理システム100において、医用画像生成装置20は、例えば、データセンターに設置される。医用画像生成装置20は、後述するように、情報処理装置10や検診管理端末30からデータを取得して種々の情報を生成し、情報処理装置10や検診管理端末30に生成した種々の情報を出力する。この医用画像生成装置20は、例えば、通信制御回路21、記憶回路22及び処理回路23を備える。
【0028】
通信制御回路21は、インターネット等のネットワークを介して他の装置との間で行われる通信を制御する。例えば、通信制御回路21は、カメラ13が撮像した撮像画像を、ネットワークを介して情報処理装置10から受信する。また、例えば、通信制御回路21は、ネットワークを介して検診管理端末30から施設情報等を含む各種情報を受信する。さらに、例えば、通信制御回路21は、生成した種々のデータを情報処理装置10や検診管理端末30に送信する。
【0029】
記憶回路22は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などである。
【0030】
処理回路23は、医用画像生成装置20の動作を制御する。処理回路23は、
図1に示すように、第1取得機能231、検出機能232及び生成機能233を実行する。ここで、例えば、
図1に示す処理回路103の構成要素である、第1取得機能231、検出機能232及び生成機能233が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路22に記録されている。
【0031】
処理回路23は、各プログラムを記憶回路22から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路23は、
図1の処理回路23内に示された各機能を有することとなる。なお、処理回路23が備える機能はこれに限定されない。
【0032】
第1取得機能231は、受診者の顔面を含む撮像画像を取得する。第1取得機能231は、第1取得部の一例である。具体的には、第1取得機能231は、情報処理装置10が送信する、カメラ13が撮像した受診者の顔面を含む撮像画像を取得する。ここで、撮像画像の一例を
図2に示す。
図2は、実施形態に係る医用画像生成装置20が取得した撮像画像の一例である。
図2に示す撮像画像41は、受診者の顔面を含む撮像画像である。
【0033】
検出機能232は、顔の特徴を示す特徴情報を検出する。検出機能232は、検出部の一例である。具体的には、検出機能232は、第1取得機能231が取得した受診者の顔を含む撮像画像から顔の特徴を示す特徴情報を検出する。例えば、検出機能232は、学習済みの特徴情報検出モデルを用いて、顔の特徴を示す特徴情報を検出する。ここで、特徴情報の一例を
図3に示す。
図3は、実施形態に係る医用画像生成装置20が検出した特徴情報の一例である。
図3に示す特徴情報42は、受診者の顔面に含まれる、両眉、両目、両耳、鼻孔を含む鼻、唇を含む口、顎等である。
【0034】
生成機能233は、特徴情報から受診者のアバター画像を生成する。生成機能233は、生成部の一例である。具体的には、生成機能233は、検出機能232が検出した特徴情報を利用して、顔再構成技術により顔の回転、平行移動、形状、動きなどを推定した状態で受診者のアバター画像を生成する。
【0035】
例えば、生成機能233は、学習済みの特徴情報から受診者のアバター画像を再構成するモデルを用いる。この時、検出する特徴情報数が多いほど、より精密な顔メッシュモデルが生成でき、より特徴を反映した受診者のアバター画像が生成可能となる。ここで、受診者のアバター画像の一例を
図4に示す。
図4は、実施形態に係る医用画像生成装置20が生成した受診者のアバター画像の一例である。
図4に示す受診者のアバター画像43は、撮像画像41に対応する受診者のアバター画像である。
【0036】
また、例えば、
図5のようにさらに詳しい特徴を残しておきたい部位に対して、検出機能232は、追加で特徴情報検出を行う。そして、生成機能233は、
図6に示すようにその部位の詳しい特徴を受診者のアバター画像に反映させる。
図5は、実施形態に係る医用画像生成装置20が検出した特徴情報の一例である。
図5に示す特徴情報421は、受診者の顔面に含まれる、両目である。
図6は、実施形態に係る医用画像生成装置20が生成した受診者のアバター画像の一例である。
図6に示す受診者のアバター画像431は、撮像画像41に対応する受診者のアバター画像である。
【0037】
なお、最初から
図5のように一部詳しい特徴を反映したアバターを生成しても良い。追加で処理する、特徴情報検出及び再生成はニューラルネットワーク等の深層学習技術や数理モデルを使用することで可能である。生成した受診者のアバター画像は動画、もしくは画像として保存することが可能である。
【0038】
なお、一つの学習モデルで全ての顔の特徴を反映させた受診者のアバター画像を生成することは、モデルが複雑かつ容量も大きくなり現実的に難しいため、細かく部位を分けて特徴スキャンすることが必要である。ここで、
図7を用いて受診者のアバター画像生成処理の流れについて説明する。
図7は、実施形態に係る医用画像生成装置20が処理する流れを示すブロック図である。
【0039】
ステップS1において、検出機能232は、顔の大まかな特徴情報を検出する(ステップS1)。ステップS2において、生成機能233は、顔の大まかな特徴を反映した受診者のアバター画像を生成する(ステップS2)。
【0040】
ステップS3において、検出機能232は、第1取得機能231が取得した撮像画像から、細かく部位を分け、特徴スキャンし、特徴情報を検出する。ステップS3では、特徴スキャンとして、目、口、鼻、頬及び顎の部位周りの追加スキャンする例を示す(ステップS3)。ステップS4において、生成機能233は、顔の細かい特徴を反映した受診者のアバター画像を生成する(ステップS4)。そして、生成機能233は、生成したアバター画像を記憶回路22に記憶する。これにより、医用画像生成装置20は、追加スキャンを行うことで、全ての顔の特徴を反映させた受診者のアバター画像を生成することができる。
【0041】
以上、医用情報処理システム100が有する各装置の構成について説明した。ところで、オンライン診療時は主に患者の顔から病気の兆候を予測することになるため、患者の顔画像を記録する必要がある場合があるが、プライバシーの観点から顔画像をそのまま保存することは個人識別のリスクが高く、画像を加工して保存する必要がある。
【0042】
そこで、顔画像の疾患関連情報を保ちながら、個人識別可能な特徴を消去する「デジタルマスク」と呼ばれる技術が研究されている(文献1)。
【0043】
文献1:Yang Y, Lyu J, Wang R, Wen Q, Zhao L, Chen W, Bi S, Meng J, Mao K, Xiao Y, Liang Y, Zeng D, Du Z, Wu Y, Cui T, Liu L, Iao WC, Li X, Cheung CY, Zhou J, Hu Y, Wei L, Lai IF, Yu X, Chen J, Wang Z, Mao Z, Ye H, Xiao W, Yang H, Huang D, Lin X, Zheng WS, Wang R, Yu-Wai-Man P, Xu F, Dai Q, Lin H. A digital mask to safeguard patient privacy. Nat Med. 2022 Sep;28(9):1883-1892. doi: 10.1038/s41591-022-01966-1. Epub 2022 Sep 15. PMID: 36109638; PMCID: PMC9499857.
【0044】
将来的にオンライン診療では、文献1に開示される技術を用いてデジタルマスク(アバター)の状態で画像データが記録されることが予想される。デジタルマスクは、例えば、ディープラーニング技術により顔の様々なパーツから特徴を抽出し、抽出された特徴に基づいて、3次元再構成により、顔の形状や動きをデジタル化することで生成できる。
【0045】
例えば、疾患の診断が難しい場合や、複数の疾患疑いがある場合、又はそれに関係なく患者の情報を詳しく保存しておくため、なるべく顔の特徴を多く残した状態でアバターを生成したいという要望があると考えられる。そのため、残すべき特徴を取捨選択した上で受診者のアバター画像を生成する必要がある。
【0046】
そこで、本実施形態に係る医用画像生成装置20は、医師の判定や診断結果に基づいて、受診者のアバター画像を補正する。以下、医用画像生成装置20が備える処理回路23は、さらに、第1判定機能234、第2取得機能235、決定機能236、補正機能237及び表示制御機能238を実行する。
【0047】
第1判定機能234は、第1取得機能231が取得した撮像画像に対して、追加スキャンが必要かを判定する。第1判定機能234は、第1判定部の一例である。例えば、第1判定機能234は、第1取得機能231が取得した撮像画像に対して、受診者の顔の特徴情報をより取得する必要かを判定する。追加スキャンとは、再度、撮像画像から予め定められた検出項目数について、検出することをいう。追加スキャンに関する内容について後述する。
【0048】
第2取得機能235は、受診者の疾患情報を取得する。第2取得機能235は、第2取得部の一例である。具体的には、第2取得機能235は、医師の判定結果、遺伝子診断の診断結果、手術箇所を含む手術歴のうち、少なくとも1つを含む、受診者の疾患情報を取得する。受診者の疾患情報は、例えば、マイナンバーカード連携等、受診者のIDと紐づいた情報や、受診者が受診先の各医療機関が保管する情報、あるいは、受診者個人で持っている健康診断結果等の情報等である。医師の判定結果は、複数の疾患候補のうち、受診者の疾患に対応する、受診者の顔に現れる少なくとも1つの疾患候補に対応する疾患候補情報を含む。なお、受診者の疾患情報はこれに限定されない。
【0049】
医師は、例えば、受診者に現れる疾患として、以下の受診者の顔に現れるサインから疾患を判定する。サインは、例えば、緑内障、腎臓病、脳卒中、肝臓疾患、痛風、貧血、胃腸疾患等である。緑内障のサインは、例えば、眼圧が上昇し、瞼が硬くなる症状である。腎臓病のサインは、腎臓の機能低下に伴い目の下が黒ずむ症状(くまが出現する)である。脳卒中のサインは、一側眼瞼下垂と呼ばれる、瞼の片側だけ下がる症状である。肝臓疾患のサインは、顔の頬に現れる、褐色のシミや、クモ状血管腫の症状である。痛風のサインは、痛風結節と呼ばれる耳のこぶの症状である。貧血のサインは、顔がむくむ症状である。胃腸疾患のサインは口角が亀裂する症状である。
【0050】
決定機能236は、疾患情報に対応する疾患の発生確率を示す重要度に基づいて、特徴情報に対応する検出項目数を決定する。決定機能236は、決定部の一例である。検出項目は、医師が判定した疾患に対応する項目である。決定機能236は、上述した追加スキャンに対応する検出項目数を決定する。ここで、検出項目数及び重要度について、
図8を用いて説明する。
図8は、疾患情報に対応する、基準検出項目数及び重要度の関係を説明するための一例を示すテーブルである。
【0051】
例えば、医師の判定結果について、その疾患である確率を重要度とする。
図8に示すように、医師が受診者に対して、疾患情報No.1として、脳卒中である確率が100%と判定した場合(重要度100)、決定機能236は、脳卒中の症状が現れやすい目周辺のみを検出項目として、基準検出項目数と重要度を乗じて、追加スキャンを行う検出項目数を決定する(テーブルT1参照)。
【0052】
また、
図8に示すように、医師が受診者に対して、疾患情報No.2として、脳卒中及び肝臓疾患の両方の可能性もあると判定した場合(例えばどちらも重要度50)、決定機能236は、目と口頬が同じ程度で検出項目として、基準検出項目数と重要度を乗じて、追加スキャンを行う検出項目数を決定する(テーブルT1参照)。
【0053】
また、例えば、遺伝子診断の結果について、遺伝子診断の結果に基づくある疾患の発症リスク確率を重要度とする。肝臓疾患リスクが100%の場合(重要度100)は、決定機能236は、頬や目に症状が現れやすいため、現在症状が出ていなくても、頬や目の周辺を検出項目として、基準検出項目数と重要度を乗じて、追加スキャンを行う検出項目数を決定する。
【0054】
さらに、例えば、手術箇所について、手術痕などの直り具合をフォローアップする場合には、手術痕の箇所を100%(重要度100)とする。この場合は、手術痕のみを実物のままに維持して、他はアバター画像の状態にすることも可能である。
【0055】
また、検出項目は、例えば、目、口、鼻、頭及び耳の周辺と、顔全体である。目周辺は、例えば、大まかな目の形状、瞼、眼球、虹彩、瞳孔、眉毛、睫毛、結膜等である。口周辺は、例えば、大まかな口の形状、唇、歯肉、歯、舌、口蓋垂等である。鼻周辺は、例えば、大まかな鼻の形状、鼻根、鼻背、鼻尖、鼻翼、外鼻孔等である。頭周辺は、例えば、大まかな頭の形状、おでこ、毛の生え際等である。顔全体は、例えば、大まかな顔の形状、皴、膨らみ、肌(テクスチャ)等である。なお、テクスチャに関しては、マスク生成時におけるスキャンとは別のテクスチャスキャンや、カメラ13から得られた受診者本人の撮像画像等から得られる。
【0056】
検出機能232は、決定機能236が決定した検出項目数に対応して、特徴情報を検出する検出数及び検出位置に基づいて、特徴情報を再検出する。ここで、
図9を用いて、特徴情報を再検出する内容について説明する。
図9は、検出項目数に対応する、検出位置及び基準検出数の関係を説明するための一例を示すテーブルである。
【0057】
例えば、検出数は、上述した重要度を基に変化する。検出数が多いほど、3次元顔メッシュモデルが精細になり、アバター画像もより実物の特徴を反映することができる。検出数の変化方法は、検出数の最大値が変動する。例えば、
図9に示すように、疾患情報No.1として、検出機能232は、検出位置を目、検出数を100とした場合、基準検出数と重要度を乗じて、追加スキャンを行う検出数を決定する(テーブルT2参照)。また、
図9に示すように、疾患情報No.2として、検出機能232は検出位置を目と頬とした場合、基準検出数と重要度を乗じて、追加スキャンを行う検出数を決定する(テーブルT2参照)。
【0058】
検出機能232が検出する検出位置は、例えば、以下の文献2及び文献3等の深層学習モデルを使用することで検出することができる。
【0059】
文献2:F. Schroff, D. Kalenichenko and J. Philbin, 「FaceNet: A unified embedding for face recognition and clustering」, 2015 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2015, pp. 815-823, doi: 10.1109/CVPR.2015.7298682.
【0060】
文献3:H. Wang et al., 「CosFace: Large Margin Cosine Loss for Deep Face Recognition」, 2018 IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, 2018, pp. 5265-5274, doi: 10.1109/CVPR.2018.00552.
【0061】
補正機能237は、受診者の疾患情報に基づいて、アバター画像を補正する。補正機能237は、補正部の一例である。具体的には、補正機能237は、第2取得機能235が取得した受診者の疾患情報に基づいて、生成機能233が生成したアバター画像を補正する。例えば、補正機能237は、検出機能232が再検出された特徴情報に基づいて、アバター画像を補正する。そして、補正機能237は、補正したアバターか像を記憶回路22に記憶する。これにより、オンライン診療での受診者の画像保存時に、医師の判断に基づき必要な疾患情報が選択された状態で、個人識別不可能なアバター画像が生成、補正され、保存することができる。
【0062】
表示制御機能238は、アバター画像の表示を行うように制御を行う。表示制御機能238は、表示制御部の一例である。具体的には、表示制御機能238は、生成機能233が生成したアバター画像の表示を行うように、ネットワークを介して、情報処理装置10及び検診管理端末30に対して制御を行う。また、表示制御機能238は、補正機能237が補正したアバター画像の表示を行うように、ネットワークを介して、情報処理装置10及び検診管理端末30に対して制御を行う。
【0063】
次に、
図10を用いて、受診者のアバター画像を生成する手順の一例を説明する。
図10は、本実施形態に係る医用画像生成装置20の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。なお、本処理は、受診者の撮像画像を取得した後に開始するものとする。
【0064】
まず、検出機能232は、顔の特徴を示す特徴情報を検出する(ステップS21)。続いて、生成機能233は、特徴情報から受診者のアバター画像を生成する(ステップS22)。続いて、第1判定機能234は、第1取得機能231が取得した撮像画像に対して、追加スキャンが必要かを判定する(ステップS23)。ここで、第1判定機能234が、追加スキャンが必要ないと判定した場合(ステップS23:No)、処理回路23は、ステップS28へ進む。他方で、第1判定機能234が、追加スキャンが必要であると判定した場合(ステップS23:Yes)、処理回路23は、ステップS24へ進む。
【0065】
ステップS24において、第2取得機能235は、受診者の疾患情報を取得する(ステップS24)。続いて、決定機能236は、疾患情報に対応する疾患の発生確率を示す重要度に基づいて、特徴情報に対応する検出項目数を決定する(ステップS25)。続いて、検出機能232は、決定機能236が決定した検出項目数に対応して、特徴情報を検出する検出数及び検出位置に基づいて、特徴情報を再検出する(ステップS26)。
【0066】
続いて、補正機能237は、検出機能232が再検出された特徴情報に基づいて、アバター画像を補正する(ステップS27)。そして、補正機能237は、補正したアバター画像を記憶回路22に記憶する(ステップS28)。ステップS28が終了すると、本処理は終了する。
【0067】
上述したように、実施形態によれば、医用画像生成装置20は、受診者の顔を含む撮像画像から顔の特徴を示す特徴情報を検出し、特徴情報から受診者のアバター画像を生成し、受診者の疾患情報に基づいて、アバター画像を補正する。
【0068】
これにより、例えば、医用画像生成装置20は、医師の判定や診断結果等の疾患情報に基づいて、オンライン診療を受診する受診者のアバター画像を生成することができる。受診者のアバター画像は、疾患情報に基づいて補正されているため、個人識別不可能なアバター画像となる。そのため、医用画像生成装置20は、個人識別不可能なアバター画像を記憶回路22に記憶することができる。
【0069】
なお、上述した実施形態は、各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については同一の符号を付与しえ詳細な説明を省略する。また、以下で説明する他の実施形態は、個別に実施されても良いし、適宜組み合わせて実施されても良い。
【0070】
(変形例1)
上述した実施形態では、医用画像生成装置20の決定機能236により処理回路23は、疾患情報に対応する疾患の発生確率を示す重要度に基づいて、特徴情報に対応する検出項目数を決定する形態について説明した。これに対し、変形例1では、検出項目数は、医師等のユーザが検出項目数を予め選択する形態について説明する。
【0071】
図11は、変形例1に係る医用情報処理システムの構成例を示すブロック図である。
図11に示すように、変形例1に係る医用情報処理システム100は、
図1に示す実施形態に係る医用情報処理システム100と同様に、情報処理装置10、医用画像生成装置20及び検診管理端末30を備える。また、変形例1に係る医用画像生成装置20の処理回路23は、第1取得機能231、検出機能232、生成機能233、第1判定機能234、第2取得機能235、決定機能236、補正機能237、表示制御機能238、選択機能239及び第2判定機能240を実行する。
【0072】
選択機能239は、ユーザの操作に基づいて、検出項目を選択する。選択機能239は、選択部の一例である。例えば、検診管理端末30は、ネットワークを介して、ユーザが操作する入力インターフェース31を用いて入力された検出項目が転送する。そして、医用画像生成装置20の通信制御回路21は、ネットワークを介して検診管理端末30から入力された検出項目を受信する。そして、選択機能239は、受信した検出項目を選択する。
【0073】
第2判定機能240は、生成機能233が生成したアバター画像について、個人認識度が高いかを判定する。個人認識度とは、例えば、受診者の個人を特定する認識度の割合である。個人認識度は、例えば、以下の文献4及び文献5等の顔認証モデルを用いることで計算することができる。
【0074】
文献4:F. Schroff, D. Kalenichenko and J. Philbin, 「FaceNet: A unified embedding for face recognition and clustering」, 2015 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2015, pp. 815-823, doi: 10.1109/CVPR.2015.7298682.
【0075】
文献5:H. Wang et al., 「CosFace: Large Margin Cosine Loss for Deep Face Recognition」, 2018 IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, 2018, pp. 5265-5274, doi: 10.1109/CVPR.2018.00552.
【0076】
個人認識度は、撮像画像とアバター画像をモデルとして入力すると、二つの画像の一致度が計算される。そして、個人認識度は、所定の閾値を越えた場合、撮像画像とアバター画像が一致すると推定される場合、第2判定機能240は、個人認識度が高いと推定される。なお、ユーザによる視覚評価でも個人認識度を推定しても良い。
【0077】
以下、変形例1に係る医用画像生成装置20で行われる処理の流れについて説明する。
図12は、変形例に係る医用画像生成装置20の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。また、実施形態に係る医用画像生成装置20が実行する処理と共通する処理の説明は省略する。
【0078】
ステップS31において、選択機能239は、ユーザの操作に基づいて、検出項目を選択する(ステップS31)。ステップS32において、第2判定機能240は、生成機能233が生成したアバター画像について、個人認識度が高いかを判定する(ステップS32)。ここで、第2判定機能240が、アバター画像について個人認識度が低いと判定した場合(ステップS32:No)、処理回路23は、ステップS28へ進む。他方で、第2判定機能240が、アバター画像について個人認識度が高いと判定した場合(ステップS32:Yes)、処理回路23は、ステップS24へ進む。
【0079】
例えば、医用画像生成装置20は、ユーザの操作に基づいて、検出項目を選択し、検出項目に対応して生成されたアバター画像について、個人認識度が高いかを判定する。これにより、医用画像生成装置20は、医師等のユーザが選択した検出項目に基づいて、オンライン診療を受診する受診者のアバター画像を生成することができる
【0080】
(変形例2)
例えば、医用画像生成装置20の表示制御機能238は、アバター画像の表示又は非表示を行うように表示制を行う。例えば、表示制御機能238は、アバター画像に含まれる特徴情報の一部を非表示にする場合、非表示に対応した特徴情報の顔の部位を示す部位情報を表示する。部位情報は、例えば、受診者の顔に存在する手術箇所である。
【0081】
例えば、受診者の顔に手術箇所がある場合、受診者は手術箇所の治療についてオンライン診療を受ける場合がある。この場合、医師は、手術箇所のみについて、特定できれば良いため、医師は、アバター画像に含まれる特徴情報の一部である手術箇所のみを表示し、手術箇所以外の特徴情報の一部を非表示にする場合がある。その場合、表示制御機能238は、非表示に対応した特徴情報の顔の部位を示す部位情報を表示する。
【0082】
(変形例3)
上述した重要度は、疾患情報として、医師の判定結果、遺伝子診断の診断結果、手術箇所を含む手術歴から重要度が決定したが、これに限定されない。例えば、生成したアバター画像の左右差を重要度としても良い。アバター画像の左右差は、例えば、顔の左右の同じ部位の検出位置の中心からの位置の差などを用いる。複数症状が出ているが疾患が分からない場合や、特に症状は見られないが疾患はありそうな場合などに使用する。選択した検出項目の左右差を全て計算し、重要度の合計を100になるようにした上で、各左右差を重要度としても良い。
【0083】
以上説明した少なくとも1つの実施形態等によれば、医師の判定や診断結果に基づいて、受診者のアバター画像を生成することができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
10 情報処理装置
20 医用画像生成装置
23 処理回路
30 検診管理端末
100 医用情報処理システム
231 第1取得機能
232 検出機能
233 生成機能
234 第1判定機能
235 第2取得機能
236 決定機能
237 補正機能
238 表示制御機能
239 選択機能
240 第2判定機能