(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174641
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】供給装置
(51)【国際特許分類】
B65H 67/06 20060101AFI20241210BHJP
D01H 9/18 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B65H67/06 C
B65H67/06 B
D01H9/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092570
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】井上 敬
【テーマコード(参考)】
3F112
4L056
【Fターム(参考)】
3F112AA08
3F112BA03
3F112CA03
3F112HA09
3F112KA03
3F112VB05
4L056AA02
4L056AA45
4L056BF45
4L056BF55
4L056BF68
(57)【要約】
【課題】ボビンが立ち上がった状態と倒れた状態を交互に繰り返すことを防止して、個別化部への給糸ボビンの供給効率が高い供給装置を提供する。
【解決手段】供給装置は、受け部と、個別化部と、を備える。受け部には、複数のボビンが投入される。個別化部は、受け部から供給された複数のボビンを個別のボビンに分離して上方に搬送する。受け部は、滞留部と、傾斜部13と、を有する。滞留部は、投入された前記ボビンを一時的に滞留させる。傾斜部13は、滞留部に対してボビンの移動方向の下流側に配置され、ボビンを自重によって個別化部に供給する。傾斜部13は、案内面71と補助面72とを有する。案内面71は、補助面72の下流側に配置され、個別化部に近づくにつれて低くなるように傾斜する。補助面72は、第2方向の全体に設けられており、案内面71と連続する面を含む。離間距離は、第2方向の全体において連続的に変化する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績機で生成された糸が巻かれたボビンを糸巻取機に供給する供給装置において、
複数の前記ボビンが投入される受け部と、
前記受け部から供給された複数の前記ボビンを個別の前記ボビンに分離して上方向に搬送する個別化部と、
を備え、
前記受け部は、
投入された前記ボビンを一時的に滞留させる滞留部と、
前記滞留部に対して前記ボビンの移動方向の下流側に配置され、前記ボビンを自重によって前記個別化部に供給する傾斜部と、
を有し、
平面視において、前記傾斜部から前記個別化部に前記ボビンを供給する方向を第1方向とし、前記第1方向と直交する方向を第2方向としたときに、
前記傾斜部は、案内面と補助面とを有し、
前記案内面は、前記補助面の前記下流側に配置され、前記個別化部に近づくにつれて低くなるように傾斜し、
前記補助面は、前記第2方向の全体に設けられており、前記案内面と連続する面を含み、
前記第1方向における距離であって、前記補助面の前記下流側の端部から前記個別化部までの距離である離間距離は、前記第2方向の全体において連続的に変化することを特徴とする供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の供給装置であって、
水平面に対して前記補助面がなす角度は、水平面に対して前記案内面がなす角度よりも大きいことを特徴とする供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の供給装置であって、
前記離間距離は、前記第2方向の第1端から前記第2方向の中央に近づくにつれて増加する部分があり、かつ、前記第2方向の第2端から前記第2方向の中央に近づくにつれて増加する部分があることを特徴とする供給装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の供給装置であって、
前記傾斜部のうち前記離間距離が最も長い部分は、前記傾斜部を前記第2方向で三等分したときの中央の領域に位置することを特徴とする供給装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の供給装置であって、
前記離間距離は、40mm以上260mm以下であることを特徴とする供給装置。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載の供給装置であって、
前記離間距離は、100mm以上180mm以下であることを特徴とする供給装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の供給装置であって、
前記補助面は、
前記第2方向の中央よりも第1端側を含む領域に設けられる第1補助面と、
前記第2方向の中央よりも第2端側を含む領域に設けられる第2補助面と、
を有し、
前記第1補助面の下流側の端部と前記案内面との境界を示す第1境界線と、前記第2補助面の下流側の端部と前記案内面との境界を示す第2境界線と、が非連続であることを特徴とする供給装置。
【請求項8】
請求項1から6までの何れか一項に記載の供給装置であって、
前記補助面は、
前記第2方向の中央よりも第1端側を含む領域に設けられ、前記第2方向の中央に近づくにつれて低くなるように傾斜する部分を含む第1補助面と、
前記第2方向の中央よりも第2端側を含む領域に設けられ、前記第2方向の中央に近づくにつれて低くなるように傾斜する部分を含む第2補助面と、
を有することを特徴とする供給装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の供給装置であって、
前記滞留部と前記傾斜部との間に設けられており、上下方向に移動することにより、前記ボビンの移動を阻止する上昇状態と、前記ボビンの移動を許容する下降状態と、を切り替える制限部を備えることを特徴とする供給装置。
【請求項10】
請求項9に記載の供給装置であって、
前記制限部は、
上下方向に移動する第1制限部と、
前記第1制限部と前記傾斜部の間に設けられ、上下方向に移動する第2制限部と、
を有することを特徴とする供給装置。
【請求項11】
請求項10に記載の供給装置であって、
前記第1制限部と前記第2制限部の間に設けられ、糸を吸引する吸引部を備えることを特徴とする供給装置。
【請求項12】
請求項11に記載の供給装置であって、
前記吸引部は、前記ボビンの糸が引っ掛かる引掛け部を備えることを特徴とする供給装置。
【請求項13】
請求項10から12までの何れか一項に記載の供給装置であって、
前記第2制限部は、上下方向における先端部に設けられ、糸を切るカッタを有することを特徴とする供給装置。
【請求項14】
請求項10から13までの何れか一項に記載の供給装置であって、
前記制限部は、稼動中において、前記第1制限部と前記第2制限部の両方が前記下降状態とならないように制御することを特徴とする供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、紡績機で生成された糸が巻かれたボビンを糸巻取機に供給する供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の給糸ボビン供給装置には、複数の給糸ボビンが投入される。投入された複数の給糸ボビンは、案内部を介して個別化部に案内される。案内部は個別化部に向けて下向きに傾斜する底面を有する。個別化部は、複数の給糸ボビンを1本ずつ取り上げてボビン皿に載せて上方に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の給糸ボビン供給装置では、給糸ボビン(ボビン)の軸方向の一端がボビン皿(支持台)に持ち上げられて給糸ボビンが立ち上がる可能性がある。この場合、ボビン皿が上昇することで給糸ボビンの軸方向の一端が支持台から外れ、給糸ボビンは倒れる。その後、ボビン91の軸方向の一端が支持台25によって上方に持ち上げられた場合、ボビン91が立ち上がった状態と倒れた状態を交互に繰り返すことになり、個別化部への給糸ボビンの供給効率が低くなる。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ボビンが立ち上がった状態と倒れた状態を交互に繰り返すことを防止して、個別化部への給糸ボビンの供給効率が高い供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の供給装置が提供される。即ち、供給装置は、紡績機で生成された糸が巻かれたボビンを糸巻取機に供給する。供給装置は、受け部と、個別化部と、を備える。前記受け部には、複数の前記ボビンが投入される。前記個別化部は、前記受け部から供給された複数の前記ボビンを個別の前記ボビンに分離して上方向に搬送する。前記受け部は、滞留部と、傾斜部と、を有する。前記滞留部は、投入された前記ボビンを一時的に滞留させる。前記傾斜部は、前記滞留部に対して前記ボビンの移動方向の下流側に配置され、前記ボビンを自重によって前記個別化部に供給する。平面視において、前記傾斜部から前記個別化部に前記ボビンを供給する方向を第1方向とし、前記第1方向と直交する方向を第2方向とする。前記傾斜部は、案内面と補助面とを有する。前記案内面は、前記補助面の前記下流側に配置され、前記個別化部に近づくにつれて低くなるように傾斜する。前記補助面は、前記第2方向の全体に設けられており、前記案内面と連続する面を含む。前記第1方向における距離であって、前記補助面の前記下流側の端部から前記個別化部までの距離である離間距離は、前記第2方向の全体において連続的に変化する。
【0008】
これにより、補助面の下流側の端部から個別化部までの距離が第2方向の全体において連続的に変化するため、立ち上がったボビンの姿勢が安定しない。そのため、立ち上がったボビンを短時間で倒れ易くすることができる。その結果、ボビンを適切な姿勢で個別化部に供給できるため、個別化部へのボビンの供給効率を高くすることができる。
【0009】
前記の供給装置においては、水平面に対して前記補助面がなす角度は、水平面に対して前記案内面がなす角度よりも大きいことが好ましい。
【0010】
これにより、補助面の角度が急峻であるため、補助面に接触したボビンが倒れ易くなる。そのため、立ち上がったボビンをより高確率で短時間で倒すことができる。
【0011】
前記の供給装置においては、前記離間距離は、前記第2方向の第1端から前記第2方向の中央に近づくにつれて増加する部分があり、かつ、前記第2方向の第2端から前記第2方向の中央に近づくにつれて増加する部分があることが好ましい。
【0012】
これにより、第2方向の第1端から第2端まで辿った際に、離間距離が増加する部分と減少する部分が存在するため、ボビンの姿勢が安定せずに倒れ易くなる。そのため、立ち上がったボビンをより高確率で短時間で倒すことができる。
【0013】
前記の供給装置においては、前記傾斜部のうち前記離間距離が最も長い部分は、前記傾斜部を前記第2方向で三等分したときの中央の領域に位置することが好ましい。
【0014】
これにより、第2方向の端部で離間距離が最も長くなる場合と比較して、ボビンの姿勢が安定せずに倒れ易くなる。そのため、立ち上がったボビンをより高確率で短時間で倒すことができる。
【0015】
前記の供給装置においては、前記離間距離は、40mm以上260mm以下であることが好ましく、100mm以上180mm以下であることが更に好ましい。
【0016】
これにより、標準的なボビンの軸方向の長さ及び装置スペースを考慮した適切な範囲の離間距離を実現できる。
【0017】
前記の供給装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記補助面は、第1補助面と、第2補助面と、を有する。前記第1補助面は、前記第2方向の中央よりも第1端側を含む領域に設けられる。前記第2補助面は、前記第2方向の中央よりも第2端側を含む領域に設けられる。前記第1補助面の下流側の端部と前記案内面との境界を示す第1境界線と、前記第2補助面の下流側の端部と前記案内面との境界を示す第2境界線と、が非連続である。
【0018】
これにより、ボビンの姿勢が安定せずに倒れ易くなる。そのため、立ち上がったボビンをより高確率で短時間で倒すことができる。
【0019】
前記の供給装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記補助面は、第1補助面と、第2補助面と、を有する。前記第1補助面は、前記第2方向の中央よりも第1端側を含む領域に設けられ、前記第2方向の中央に近づくにつれて低くなるように傾斜する部分を含む。前記第2補助面は、前記第2方向の中央よりも第2端側を含む領域に設けられ、前記第2方向の中央に近づくにつれて低くなるように傾斜する部分を含む。
【0020】
これにより、ボビンが第2方向の中央に寄り易くなる。その結果、ボビン同士が接触することによりボビンの姿勢が安定せずに倒れ易くなる。そのため、立ち上がったボビンをより高確率で短時間で倒すことができる。
【0021】
前記の供給装置においては、前記滞留部と前記傾斜部との間に設けられており、上下方向に移動することにより、前記ボビンの移動を阻止する上昇状態と、前記ボビンの移動を許容する下降状態と、を切り替える制限部を備えることが好ましい。
【0022】
これにより、傾斜部に大量のボビンが存在する事態を抑制できる。
【0023】
前記の供給装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記制限部は、第1制限部と、第2制限部と、を有する。前記第1制限部は、上下方向に移動する。前記第2制限部は、前記第1制限部と前記傾斜部の間に設けられ、上下方向に移動する。
【0024】
2つの制限部を有することにより、様々な動作が実現可能である。
【0025】
前記の供給装置においては、前記第1制限部と前記第2制限部の間に設けられ、糸を吸引する吸引部を備えることが好ましい。
【0026】
これにより、不要な糸を吸引して除去できる。
【0027】
前記の供給装置においては、前記吸引部は、前記ボビンの糸が引っ掛かる引掛け部を備えることが好ましい。
【0028】
これにより、ボビンから延びる糸があった場合に当該糸を引っ掛けて、吸引等により対処することができる。
【0029】
前記の供給装置においては、前記第2制限部は、上下方向における先端部に設けられ、糸を切るカッタを有することが好ましい。
【0030】
これにより、ボビンから延びる糸を除去できるので、糸の絡みを未然に防止できる。
【0031】
前記の供給装置においては、前記制限部は、稼動中において、前記第1制限部と前記第2制限部の両方が前記下降状態とならないように制御することが好ましい。
【0032】
これにより、大量のボビンがまとめて傾斜部に送られる事態を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係る供給装置の側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0035】
初めに、
図1及び
図2を参照して、供給装置1の概要について説明する。以下の説明では、ボビン91が搬送される方向の上流、下流を単に上流、下流と称する。
【0036】
供給装置1は、ボビン91を自動ワインダ等の糸巻取機に供給する。ボビン91は、紡績機で生成された糸を芯管に巻くことで形成された給糸ボビンである。糸巻取機は、ボビン91に巻かれた糸を巻き取ってパッケージを形成する。
図1に示すように、供給装置1は、受け部10と、個別化部20と、セット部30と、制御装置40と、を備える。
【0037】
図1に示す収容体90には、紡績機で形成された複数のボビン91が収容されている。収容体90は、箱状の部材であり、上側に開口が形成されている。オペレータ又は図略の投入装置により、収容体90が傾けられて開口が下向きになることにより、収容体90に収容された複数のボビン91が受け部10に投入される。
【0038】
受け部10は、滞留部11と、制限部12と、傾斜部13と、を有する。収容体90から投入されたボビン91は、滞留部11に一時的に滞留する。また、滞留部11は下流側に近づくにつれて高さが低くなる傾斜面を有しており、ボビン91を自重により搬送できる。なお、斜面に代えてコンベアを用いてボビン91を搬送してもよい。
【0039】
制限部12は、ボビン91の搬送方向において、滞留部11と傾斜部13の間に設けられている。制限部12は、後述する機構により昇降可能である。制限部12が昇降することにより、制限部12は上昇状態と下降状態の間で位置を変更する。制限部12が上昇状態にある間は、ボビン91の移動が阻止される。制限部12が下降状態にある間は、ボビン91の移動が許容される。また、制限部12が上昇状態と下降状態を所定のタイミングで切り替えることにより、滞留部11から傾斜部13へのボビン91の供給量を調整できる。制限部12の詳細な構成については後述する。
【0040】
傾斜部13は、下流側に近づくにつれて高さが低くなる傾斜面を有している。傾斜部13は、ボビン91を自重によって搬送する。ボビン91は、倒れた状態で傾斜部13を転がる又は滑り落ちて移動し、個別化部20に供給される。ボビン91が倒れた状態とは、ボビン91が搬送面(傾斜面等)に対して立ち上がっておらず、かつ、ボビン91の軸方向が搬送面と平行又は略平行なことである。なお、傾斜部13の詳細な構成については後述する。
【0041】
図2に示すように、平面視において、滞留部11がボビン91を搬送する方向と、傾斜部13がボビン91を搬送する方向と、は直交する。ただし、これらの方向は、90度以外の角度で交差してもよいし、一致していてもよい。また、以下の説明では、平面視において、傾斜部13がボビン91を搬送する方向(特に、傾斜部13がボビン91を個別化部20に供給する方向)を第1方向と称する。また、平面視において第1方向と直交する方向を第2方向と称する。本実施形態では、滞留部11がボビン91を搬送する方向と第2方向とが一致するが、異なっていてもよい。
【0042】
個別化部20は、受け部10の傾斜部13から供給された複数のボビン91を個別の前記ボビン91に分離して搬送して、セット部30に供給する。詳細には、個別化部20は、上下方向に配設されたコンベアを用いて、ボビン91を分離して搬送する。
【0043】
具体的には、
図3及び
図4に示すように、個別化部20は、ベルト21を有する。ベルト21は、上下方向に配置された2つの回転ローラ22の間にループ状に掛け渡された帯状(シート状)の部材である。上側の回転ローラ22は、駆動源23によって回転駆動される。本実施形態において、駆動源23はステッピングモータである。当該ステッピングモータの出力軸の回転は、駆動伝達ベルト等を介して、上側の回転ローラ22に伝達される。これにより、ベルト21が循環駆動される。
【0044】
ベルト21の外側面には、支持台25が設けられている。支持台25は、ベルト21の長手方向において等間隔で設けられている。支持台25は、ベルト21と一体的に移動する。また、支持台25には、ボビン91が載せられる。これにより、支持台25は、載せられたボビン91を支持しつつ、ボビン91を搬送する。支持台25は、倒れた状態のボビン91を載せることができるように長方形の面を有している。この長方形の支持台25は、その長手方向が、ベルト21の幅方向に沿うようにして、ベルト21に取り付けられている。また、支持台25の奥行方向(第1方向)の長さは、ボビン91が2つ並んで載ることができない程度とされる。個別化部20は、ベルト21を循環駆動することにより、ボビン91を支持台25の上に1本ずつ載せて、鉛直方向の上向きに搬送する。このようにして、受け部10に投入された複数のボビン91を1本ずつ分離する(個別化する)ことができる。なお、個別化部20は倒れた状態のボビン91を支持台25に載せて搬送する構成であるため、個別化部20に対してボビン91を供給する際には、倒れた状態のボビン91を供給することが好ましい。
【0045】
また、1つの支持台25の上に、ボビン91が上下方向に2本以上重なった状態で載った場合、以下の構成により、ボビン91が個別化される。即ち、個別化部20は、分離部材27を備える。分離部材27は、支持台25によって搬送されるボビン91に接触可能な部材である。分離部材27は、支持台25がボビン91を搬送する搬送方向に沿って設けられており、支持台25に1つのボビン91が載るように1又は複数のボビン91を支持台25から落として分離する。本実施形態の分離部材27は、金属製のワイヤである。ただし、ボビン91に接触してボビン91を支持台25から落とすことが可能であれば、分離部材27は金属製のワイヤに限られない。
【0046】
図3に示すように、支持台25には、奥行方向(第1方向)に沿う方向にスリット26が形成されている。分離部材27は、スリット26を通るように配置されている。また、スリット26は、支持台25の長手方向に複数形成されており、分離部材27は各スリット26に対応して複数配置されている。この構成で、分離部材27は、支持台25に乗ったボビン91に対して、ベルト21側から接触することができる。
【0047】
分離部材27には、支持台25の先端側(平面視における第1方向のうち傾斜部13側)に突出する突出部27aが形成されている。これにより、支持台25に載って搬送されるボビン91は、突出部27aの位置にさしかかると、突出部27aによって支持台25の先端側に向かって押される。
【0048】
例えば
図4のように、1つの支持台25に2本のボビン91が重なって載っている場合、当該支持台25が突出部27aの位置にさしかかると、2本のボビン91は、突出部27aによって押されることにより揺さぶり作用が与えられ、上に重なっているボビン91が支持台25の先端側から下方に落とされる。即ち、分離部材27によって、支持台25に載るボビン91の数を1本に制限することができるので、ボビン91を確実に個別化することができる。
【0049】
セット部30は、個別化部20から供給されたボビン91をトレイ92にセットする。トレイ92はコンベア等によって構成された搬送経路93に沿って移動可能である。ボビン91は、トレイ92にセットされた状態で搬送経路93に沿って移動し、糸巻取機に供給される。
【0050】
制御装置40は、CPU等の演算装置と、RAMと、ストレージと、を備える。ストレージは、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等である。ストレージには、供給装置1に関するプログラムと、プログラムの実行に必要な条件等のデータと、が記憶されている。演算装置は、ストレージに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行する。これにより、制御装置40は、制限部12、個別化部20、及びセット部30に関する様々な制御を行う。
【0051】
次に、
図5から
図7を参照して、制限部12について詳細に説明する。
【0052】
図5から
図6に示すように、制限部12は、第1制限部50と、第2制限部60と、を有する。第1制限部50及び第2制限部60は、第2方向に並べて設けられている。第1制限部50は、第2方向において、滞留部11と第2制限部60の間に設けられている。第2制限部60は、第2方向において、第1制限部50と傾斜部13の間に設けられている。
図5に示すように、第1制限部50と第2制限部60は、上下方向に独立して移動可能である。なお、第1制限部50と第2制限部60の移動方向は、上下方向(鉛直方向)の成分を含んでいればよい。例えば、滞留部11の傾斜面に直交する方向に第1制限部50又は第2制限部60が移動してもよい。
【0053】
以下では、第1制限部50と第2制限部60のそれぞれについて、可動範囲の上端又はその近傍に位置する状態を上昇状態と称し、可動範囲の下端又はその近傍に位置する状態を下降状態と称する。
図5には、第1制限部50と第2制限部60の動作の一例が示されている。
図5に示すように、第1制限部50が上昇状態の場合は第2制限部60が下降状態となるように、かつ、第1制限部50が下降状態の場合は第2制限部60が上昇状態となるように制御装置40によって制御される。そのため、例えば
図5の左図では、第1制限部50が下降状態にあるので上流側から移動してきた複数のボビン91が第1制限部50の上面に位置する。また、第2制限部60が上昇状態にあるので第1制限部50の上面に位置するボビン91の移動が規制される。従って、
図5の左図では、第1制限部50の上面に複数のボビン91が滞留する。
【0054】
その後、
図5の右図に示すように、第1制限部50が上昇状態に切り替わり、第2制限部60が下降状態に切り替わる。これにより、第1制限部50の上面に滞留していた複数のボビン91が第2制限部60を超えて傾斜部13に供給される。なお、第1制限部50が上昇状態であるため、第1制限部50よりも上流側のボビン91は傾斜部13に供給されない、以上により、多過ぎない数のボビン91をまとめて傾斜部13に供給できる。
【0055】
なお、
図5に示した動作は一例であり、変更可能である。例えば、
図5に示す例では、第1制限部50が上昇状態のときに第2制限部60は下降状態である。これに代えて、第1制限部50が上昇状態のときに第2制限部60が上昇状態と下降状態の間の状態であってもよい。ただし、第1制限部50と第2制限部60が両方とも下降状態である場合は、大量のボビン91がまとめて傾斜部13に供給される可能性があるため、この状態を実現しないように制御することが好ましい。
【0056】
制御装置40は、第1制限部50と第2制限部60の上昇状態と下降状態は予め定めたタイミングで切り替えてもよい。あるいは、制御装置40は、傾斜部13に存在するボビン91の量を検出するセンサの検出結果に応じて、第1制限部50と第2制限部60の上昇状態と下降状態を切り替えてもよい。
【0057】
図6には、第1制限部50の具体的な構成が示されている。
図6に示すように、第1制限部50は、第1制限板51と、載置板52と、第1昇降シリンダ53と、第1カッタユニット54と、を備える。なお、
図6では、第1カッタユニット54の構成を分かり易く示すために、載置板52を鎖線で示している。
【0058】
第1制限板51は、板状の部材であり、上下方向に延びるように設けられている。具体的には、第1制限板51は、厚み方向が第2方向(即ち、ボビン91が移動する方向)と一致するように設けられている。第1制限板51には、後述する第1カッタ55が設けられる領域に対応して凹部51aが形成されている。載置板52は、第1制限部50が下降状態のときにボビン91が載る部分である。そのため、載置板52は、厚み方向が上下方向と一致する部分を含む。また、載置板52は第1カッタユニット54を覆っている。第1昇降シリンダ53は、本体部とロッド部を有している。第1昇降シリンダ53は、制御装置40の指令に応じて、本体部に対してロッド部をスライド可能である。第1昇降シリンダ53の本体部は第1制限板51に固定されている。第1昇降シリンダ53のロッド部は受け部10のベース部14に固定されている。以上により、第1昇降シリンダ53の本体部に対してロッド部をスライドさせることにより、第1制限部50を上下方向に昇降させることができる。
【0059】
また、ボビン91は、自重により転がるように移動することもあるため、ボビン91から糸が外側に延びている場合(糸引きがある場合)は、糸の絡みが発生し易い。ボビン91の糸の絡みが発生した場合、個別化部20による個別化を適切に行えないという状況が発生し得る。第1カッタユニット54は、ボビン91から外側に延びた糸を切るために設けられている。
【0060】
第1カッタユニット54は、第1カッタ55と、揺動シリンダ56と、伝達部57と、を備える。第1カッタ55は固定刃と可動刃を有しており、固定刃に対して可動刃を移動可能である。揺動シリンダ56は、本体部とロッド部を有している。揺動シリンダ56は、制御装置40の指令に応じて、本体部に対してロッド部をスライド可能である。揺動シリンダ56の本体部は第1制限板51に固定されている。揺動シリンダ56のロッド部は伝達部57に固定されている。伝達部57は、第1カッタ55の可動刃の根元部分と接触しており、伝達部57を揺動させることにより、第1カッタ55の可動刃を固定刃に対して移動させることができる。以上により、揺動シリンダ56の本体部に対してロッド部をスライドさせることにより、第1カッタ55を動作させることができる。
【0061】
上述したように、第1制限板51には凹部51aが形成されている。ボビン91から外側に延びた糸は、第1制限板51が上昇した際に第1制限板51の凹部51aに入り込み易い。また、上述したように、第1制限板51の凹部51aに対応する位置には、第1カッタ55が設けられている。そのため、第1制限板51を上昇させたタイミングで、制御装置40が揺動シリンダ56を制御して第1カッタ55を動作させることにより、ボビン91から外側に延びた糸を切ることができる。なお、第1カッタ55の動作タイミングは上述した例に限られない。
【0062】
また、第2方向において、第1制限部50と第2制限部60の間(詳細には第1制限板51と後述の第2制限板61の間)には、吸引部59が設けられている。吸引部59の上部には吸引口59aが設けられている。吸引部59は図略の吸引源に接続されており、吸引口59aに吸引流を発生させることができる。これにより、吸引部59は、第1カッタ55が切った糸又はその他の糸屑を吸引して除去する。また、吸引口59aの縁には、引掛け部59bが形成されている。引掛け部59bは櫛歯状であり、吸引口59aの縁に触れた糸は引掛け部59bに引っ掛かり易い。これにより、不要な糸を吸引して除去できる確率を高くすることができる。
【0063】
図7には、第2制限部60の具体的な構成が示されている。
図7に示すように、第2制限部60は、第2制限板61と、第2昇降シリンダ63と、第2カッタユニット64と、を備える。
【0064】
第2制限板61は、板状の部材であり、上下方向に延びるように設けられている。具体的には、第2制限板61は、厚み方向が第2方向と一致するように設けられている。第2制限板61には、第1制限板51と同様に、凹部61aが形成されている。第2昇降シリンダ63は、本体部とロッド部を有している。第2昇降シリンダ63は、制御装置40の指令に応じて、本体部に対してロッド部をスライド可能である。第2昇降シリンダ63の本体部は受け部10のベース部14に固定されている。第2昇降シリンダ63のロッド部は、リンク部材65を介して、第2制限板61に固定されている。以上により、第2昇降シリンダ63の本体部に対してロッド部をスライドさせることにより、第2制限部60を上下に昇降させることができる。
【0065】
第2カッタユニット64は、第1カッタユニット54と同様の構成であるため、説明を簡略化する。即ち、第2カッタユニット64は、第2カッタと揺動シリンダと伝達部とを備え、揺動シリンダを動作させることにより、第2カッタを動作させることができる。
【0066】
本実施形態では、制限部12が第1制限部50と第2制限部60を備えるが、第1制限部50又は第2制限部60を省略してもよい。本実施形態では、第1制限部50と第2制限部60の両方にカッタが設けられるが、何れか一方又は両方のカッタを省略してもよい。また、第1制限部50と第2制限部60について、シリンダに代えて、別のアクチュエータ(例えば電磁ソレノイド又は電気モータ)を用いてもよい。第1制限部50と第2制限部60の何れか一方又は両方を省略してもよい。また、吸引部59を省略してもよい。
【0067】
次に、
図8を参照して、傾斜部13について詳細に説明する。
図8に示すように、傾斜部13は、案内面71と、補助面72と、を有する。
【0068】
案内面71は、下流側に近づくにつれて高さが低くなるように傾斜した面である。また、案内面71は第2方向には傾斜していない。言い換えれば、案内面71は、第1方向の位置が同じであれば、第2方向の位置が変わっても高さは一定である。なお、案内面71が第2方向に傾斜していてもよい。また、案内面71は、補助面72よりも下流側に設けられている。なお、案内面71よりも更に下流側には個別化部20が設けられている。また、案内面71は、傾斜部13の第2方向の全体にわたって設けられている。従って、傾斜部13に供給されたボビン91は、基本的には、最後に案内面71によって搬送されて個別化部20に供給される。案内面71は、1枚の平板であってもよいし、平板の一部に折曲げ等の加工を行うことにより形成されていてもよい。
【0069】
補助面72は、案内面71の上流側に、かつ、傾斜部13の第2方向の全体にわたって設けられている。また、本実施形態では、補助面72の一部は、案内面71の上面に重ねるように設けられている。なお、案内面71と補助面72が重なっていなくてもよい。また、案内面71を折り曲げることにより、補助面72を形成してもよい。
【0070】
補助面72は、第1補助面73と、第2補助面74と、を有する。第1補助面73は、第2方向の中央よりも第1端側を含む領域に設けられている、なお、第1補助面73の一部が当該領域の外側に位置していてもよい。第1補助面73は、第2方向の中央側に近づくにつれて高さが低くなるように傾斜した面を含む。第2補助面74は、第2方向の中央よりも第2端側を含む領域に設けられている、なお、第2補助面74の一部が当該領域の外側に位置していてもよい。第2補助面74は、第2方向の中央側に近づくにつれて高さが低くなるように傾斜した面を含む。これにより、ボビン91が第2方向の第1端又は第2端に寄って個別化部20に案内されにくくなる事態を抑制できる。
【0071】
ここで、供給装置1の効率を向上させるためには、傾斜部13が個別化部20に適切な姿勢でボビン91を供給する必要がある。理想的には、支持台25の長手方向とボビン91の長手方向とが平行に近くなるようにボビン91を傾斜部13が個別化部20に供給することが好ましい。しかし、個別化部20に供給されるボビン91の姿勢に依っては、ボビン91の軸方向の一端が支持台25によって上方に持ち上げられることで、ボビン91が立ち上がる可能性がある。この場合、支持台25が上昇することでボビン91の軸方向の一端が支持台25から外れ、ボビン91は倒れる。その後、再びボビン91の軸方向の一端が支持台25によって上方に持ち上げられた場合、ボビン91が立ち上がった状態と倒れた状態を交互に繰り返すことになり、傾斜部13から個別化部20へのボビン91の供給効率が低くなる。その結果、セット部30及び糸巻取機へのボビン91の供給効率が低くなる。
【0072】
この点、本実施形態の補助面72は、立ち上がったボビン91が短時間で倒れ易くなるための様々な形状を有する。短時間でボビン91が倒れた場合、ボビン91は、再び持ち上げられる前に適切な姿勢(支持台25の長手方向とボビン91の長手方向とが平行に近い状態)で個別化部20に供給され易い。これにより、ボビン91の軸方向の一端が支持台25に持ち上げられる事態が発生しにくいので、個別化部20は、ボビン91を適切に搬送できる。以下、補助面72について具体的に説明する。以下の説明では、案内面71と第1補助面73の境界を第1境界線73aと称し、案内面71と第2補助面74の境界を第2境界線74aと称する。また、第1方向における、補助面72の下流側の端部から個別化部20までの距離を離間距離Lと称する。また、傾斜部13の下流側の端部から第1補助面73までの距離を第1離間距離L1と称し、傾斜部13の下流側の端部から第2補助面74までの距離を第2離間距離L2と称する。なお、本実施形態では、案内面71の下流側の端部に隣接して個別化部20が設けられるため、離間距離Lは、補助面72の下流側の端部から案内面71の下流側の端部までと言い換えることもできる(第1離間距離L1と第2離間距離L2においても同様)。
【0073】
初めに、本実施形態では、補助面72が第2方向の全体にわたって形成されており、かつ、離間距離Lが第2方向の全体にわたって連続的に変化する。言い換えれば、離間距離Lが一定となる領域が殆ど存在しない。つまり、第1境界線73a及び第2境界線74aは、案内面71の下流端とは平行ではなく、案内面71の下流端に対して角度をなすか、あるいは、湾曲している。これにより、ボビン91の姿勢が安定しにくいので、立ち上がったボビン91が短時間で倒れ易い。
【0074】
更に詳細には、第1離間距離L1は、第1端において最小であり、第2方向の中央に近づくにつれて徐々に増加する。第1離間距離L1は、第1補助面73の他端において最大となる。本実施形態では第2方向の全ての領域で第1離間距離L1が増加するが、一部の領域で第1離間距離L1が増加してもよい。第2離間距離L2は、第2端において最小であり、第2方向の中央に近づくにつれて徐々に増加する。第2離間距離L2は、第2補助面74の他端で最大となる。本実施形態では第2方向の全ての領域で第2離間距離L2が増加するが、一部の領域で第2離間距離L2が増加してもよい。このように、本実施形態において離間距離Lは第2方向の端部において小さく、第2方向の中央において大きくなる。具体的には、
図8に鎖線で示すように、傾斜部13を第2方向で三等分したときにおいて、中央の領域で離間距離Lが最大をとる。傾斜部13を以上の形状にすることにより、ボビン91の姿勢が安定しにくいので、立ち上がったボビン91が短時間で倒れ易い。
【0075】
特に、本実施形態では、第1境界線73aと第2境界線74aは非連続である。即ち、第2方向において、第1境界線73aと第2境界線74aが重複する部分がある。つまり、第1境界線73aの長さと第2境界線74aの長さの和が、案内面71の下流端の長さよりも大きい。仮に、第1境界線73aと第2境界線74aが連続していた場合、第1補助面73の影響と第2補助面74の影響が打ち消し合って、ボビン91が第2方向に移動しにくく、ボビン91の姿勢が変化しにくい。その結果、ボビン91が立ち上がった状態と倒れた状態を交互に繰り返すことになり易い。この点、本実施形態のように第1境界線73aと第2境界線74aを非連続にすることにより、第1境界線73aと第2境界線74aが第2方向で重複する範囲において、離間距離Lが長いレイアウトになり易い。その結果、初めにボビン91の軸方向の一端が持ち上げられて倒れた後に、ボビン91は更に下流に進んだ状態で軸方向の一端が持ち上げられる。具体的には、例えばボビン91の軸方向の他端と第2境界線74aが接している状態において、ボビン91の軸方向の一端が持ち上げられることが想定される。この場合、ボビン91の軸方向の一端が持ち上げられた際、又はボビン91が持ち上げられて倒れた際に、ボビン91が更に下流に進む。これにより、ボビン91の軸方向の他端が第1境界線73aと接することになり、適切な姿勢となり易くなる。このように、ボビン91の姿勢が安定しにくくなるので、次にボビン91が倒れた状態では、ボビン91が適切な姿勢になり易い。
【0076】
また、案内面71と補助面72は水平面に対する傾斜角度が異なる。具体的には、水平面に対して補助面72がなす角度(傾斜角度)は、水平面に対して案内面71がなす角度(傾斜角度)よりも大きい。案内面71と補助面72の傾斜角度が異なることにより、ボビン91が倒れ易いので、ボビン91が倒れ易い。特に、補助面の傾斜角度が案内面71の傾斜角度よりも大きいことにより、傾斜部13に供給されたボビン91は、補助面72によって倒れ易くなり、また、案内面71によって案内されるボビン91の挙動を抑えて個別化部20に供給される。
【0077】
また、離間距離Lは、40mm以上260mm以下であることが好ましく、100mm以上180mm以下であることが更に好ましい。なぜなら、離間距離Lが小さ過ぎる場合、搬送経路93を搬送されるボビン91が案内面71の影響を受けにくいので、ボビン91の倒れを誘発する機能が発揮されにくくなる。一方で、離間距離Lが大き過ぎる場合、装置サイズが大きくなり過ぎる。従って、一般的なボビン91のサイズ等を考慮すると、離間距離Lが上記の範囲であることが好ましい。
【0078】
上述した傾斜部13の形状は一例であり、以下のように変更可能である。例えば、補助面72が2つではなく1つだけ設けられていてもよい。また、離間距離Lが第2方向の中央に近づくにつれて小さくなってもいてもよい。第1境界線73aと第2境界線74aが連続していてもよい。第1境界線73aと第2境界線74aが直線ではなく、少なくとも一部に曲線を含んでいてもよい。
【0079】
以上に説明したように、本実施形態の供給装置1は、紡績機で生成された糸が巻かれたボビン91を糸巻取機に供給する。供給装置1は、受け部10と、個別化部20と、を備える。受け部10には、複数のボビン91が投入される。個別化部20は、受け部10から供給された複数のボビン91を個別のボビン91に分離して上方向に搬送する。受け部10は、滞留部11と、傾斜部13と、を有する。滞留部11は、投入された前記ボビンを一時的に滞留させる。傾斜部13は、滞留部11に対してボビン91の移動方向の下流側に配置され、ボビン91を自重によって個別化部20に供給する。平面視において、傾斜部13から個別化部20にボビン91を供給する方向を第1方向とし、第1方向と直交する方向を第2方向とする。傾斜部13は、案内面71と補助面72とを有する。案内面71は、補助面72の下流側に配置され、個別化部20に近づくにつれて低くなるように傾斜する。補助面72は、第2方向の全体に設けられており、案内面71と連続する面を含む。第1方向における距離であって、補助面72の下流側の端部から個別化部20までの距離である離間距離Lは、第2方向の全体において連続的に変化する。
【0080】
これにより、補助面72の下流側の端部から個別化部20までの距離が第2方向の全体において連続的に変化するため、立ち上がったボビン91の姿勢が安定しない。そのため、立ち上がったボビン91を短時間で倒れ易くすることができる。その結果、ボビン91を適切な姿勢で個別化部20に供給できるため、個別化部20へのボビン91の供給効率を高くすることができる。
【0081】
本実施形態の供給装置1において、水平面に対して補助面72がなす角度は、水平面に対して案内面71がなす角度よりも大きい。
【0082】
これにより、補助面72の角度が急峻であるため、補助面72に接触したボビン91が倒れ易くなる。そのため、立ち上がったボビン91をより高確率で短時間で倒すことができる。
【0083】
本実施形態の供給装置1において、離間距離Lは、第2方向の第1端から第2方向の中央に近づくにつれて増加する部分があり、かつ、第2方向の第2端から第2方向の中央に近づくにつれて増加する部分がある。
【0084】
これにより、第2方向の第1端から第2端まで辿った際に、離間距離Lが増加する部分と減少する部分が存在するため、ボビン91の姿勢が安定せずに倒れ易くなる。そのため、立ち上がったボビン91をより高確率で短時間で倒すことができる。
【0085】
本実施形態の供給装置1において、傾斜部13のうち離間距離Lが最も部分は、傾斜部13を第2方向で三等分したときの中央の領域に位置する。
【0086】
これにより、第2方向の端部で離間距離Lが最も長くなる場合と比較して、ボビン91の姿勢が安定せずに倒れ易くなる。そのため、立ち上がったボビン91をより高確率で短時間で倒すことができる。
【0087】
本実施形態の供給装置1において、離間距離Lは、40mm以上260mm以下であることが好ましく、100mm以上180mm以下であることが更に好ましい。
【0088】
これにより、標準的なボビン91の軸方向の長さ及び装置スペースを考慮した適切な範囲の離間距離Lを実現できる。
【0089】
本実施形態の供給装置1において、補助面72は、第1補助面73と、第2補助面74と、を有する。第1補助面73は、第2方向の中央よりも第1端側を含む領域に設けられる。第2補助面74は、第2方向の中央よりも第2端側を含む領域に設けられる。第1補助面73の下流側の端部と案内面71との境界を示す第1境界線73aと、第2補助面74の下流側の端部と案内面71との境界を示す第2境界線74aと、が第2境界線74aである。
【0090】
これにより、ボビン91の姿勢が安定せずに倒れ易くなる。そのため、立ち上がったボビン91をより高確率で短時間で倒すことができる。
【0091】
本実施形態の供給装置1において、補助面72は、第1補助面73と、第2補助面74と、を有する。第1補助面73は、第2方向の中央よりも第1端側を含む領域に設けられ、第2方向の中央に近づくにつれて低くなるように傾斜する部分を含む。第2補助面74は、第2方向の中央よりも第2端側を含む領域に設けられ、第2方向の中央に近づくにつれて低くなるように傾斜する部分を含む。
【0092】
これにより、ボビン91が第2方向の中央に寄り易くなる。その結果、ボビン91同士が接触することによりボビン91の姿勢が安定せずに倒れ易くなる。そのため、立ち上がったボビン91をより高確率で短時間で倒すことができる。
【0093】
本実施形態の供給装置1は、滞留部11と傾斜部13との間に設けられており、上下方向に移動することにより、ボビン91の移動を阻止する上昇状態と、ボビン91の移動を許容する下降状態と、を切り替える制限部12を備える。
【0094】
これにより、傾斜部13に大量のボビン91が存在する事態を抑制できる。
【0095】
本実施形態の供給装置1において、制限部12は、第1制限部50と、第2制限部60と、を有する。第1制限部50は、上下方向に移動する。第2制限部60は、(第2方向又はボビン91の搬送方向において)第1制限部50と傾斜部13の間に設けられ、上下方向に移動する。
【0096】
2つの制限部(第1制限部50及び第2制限部60)を有することにより、様々な動作が実現可能である。
【0097】
本実施形態の供給装置1は、(第2方向又はボビン91の搬送方向において)第1制限部50と第2制限部60の間に設けられ、糸を吸引する吸引部59を備える。
【0098】
これにより、不要な糸を吸引して除去できる。
【0099】
本実施形態の供給装置1において、吸引部59は、ボビン91の糸が引っ掛かる引掛け部59bを備える。
【0100】
これにより、ボビン91から延びる糸があった場合に当該糸を引っ掛けて、吸引等により対処することができる。
【0101】
本実施形態の供給装置1において、第2制限部60は、上下方向における先端部に設けられ、糸を切るカッタを有する。
【0102】
これにより、ボビン91から延びる糸を除去できるので、糸の絡みを未然に防止できる。
【0103】
本実施形態の供給装置1において、制限部12は、稼動中において、第1制限部50と第2制限部60の両方が第2制限部60とならないように制御する。
【0104】
これにより、大量のボビン91がまとめて傾斜部13に送られる事態を抑制できる。
【符号の説明】
【0105】
1 供給装置
10 受け部
11 滞留部
12 制限部
13 傾斜部
20 個別化部
51 第1制限板
55 第1カッタ(カッタ)
59 吸引部
61 第2制限板
71 案内面
72 補助面
73 第1補助面
74 第2補助面