(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174648
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】焼き付き告知装置
(51)【国際特許分類】
F16N 29/00 20060101AFI20241210BHJP
F01M 11/10 20060101ALI20241210BHJP
F16N 29/04 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F16N29/00 B
F01M11/10 Z
F16N29/00 D
F16N29/00 Z
F16N29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092582
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015FA02
3G015FA03
3G015FC02
3G015FC03
3G015FC05
3G015FE02
(57)【要約】
【課題】潤滑や冷却のためのオイルが劣化することによる焼き付きの発生を精度良く判定してタイミングよく告知することが可能な焼き付き告知装置を提供する。
【解決手段】オイルによって潤滑され、かつ回転部材を支持している回転支持部の焼き付きを判定して告知する焼き付き告知装置であって、前記判定および告知を行うコントローラを備え、前記コントローラは、前記回転部材のトルクと回転数との積を求め、前記積が予め定めた所定値以上となった回数を予め定めた所定のサンプリングタイムごとに積算して積算値を求め(ステップS2)、前記積算値と予め定めた閾値とを比較し(ステップS3)、前記閾値は前記オイルの温度と前記トルクと前記回転数との増大によって低下する値として保持されており、前記積算値が前記閾値を超えた場合(ステップS3でYES)に前記焼き付きの告知を行う(ステップS4)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルによって潤滑され、かつ回転部材を支持している回転支持部の焼き付きを判定して告知する焼き付き告知装置であって、
前記判定および告知を行うコントローラを備え、
前記コントローラは、前記回転部材のトルクと回転数との積を求め、
前記積が予め定めた所定値以上となった回数を予め定めた所定のサンプリングタイムごとに積算して積算値を求め、
前記積算値と予め定めた閾値とを比較し、前記閾値は前記オイルの温度と前記トルクと前記回転数との増大によって低下する値として保持されており、前記積算値が前記閾値を超えた場合に前記焼き付きの告知を行う
ことを特徴とする焼き付き告知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一例として車両における冷却や潤滑のためのオイルの劣化に起因して摺動部品への焼き付きが発生する可能性がある場合に運転者に告知するための焼き付き告知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オイル交換時期の判定を正確に行うことを目的としたオイル交換時期判定装置が開示されている。特許文献1のオイル交換時期判定装置は、トルク、車速、走行距離およびオイル温度などのオイルの各劣化要素の所定時間ごとの値を算出し、劣化量を予め記憶したテーブルを参照して劣化量を求める。特許文献1の装置は、その劣化量の所定時間ごとの積算値を算出し、その積算値と予め定められた重み係数とによってオイルの劣化度を算出する。そして、特許文献1の装置は、劣化度が所定の閾値以上である場合に、オイル交換を必要とするオイル交換時期情報を出力し、劣化度が所定の閾値未満である場合には、オイル交換を必要とするまでの走行距離であるオイル交換時期情報を出力するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような、車両の動力伝達装置などを冷却や潤滑するために供給されているオイルが添加剤の消耗や酸化などによって劣化してしまうと、例えば部品同士の接触面において材質表面の変質や、摩耗、溶解などのいわゆる焼き付きが生じる可能性がある。オイルが劣化すると、そのような摺動する部品同士の温度や耐久性などに影響が生じ、ひいては燃費の低下などにつながる可能性がある。しかしながら、特許文献1の装置では、オイルの劣化度を判定することができるものの、そのオイルの劣化が要因となる上述した焼き付きなどの実際の影響との関係については考慮されていない。例えば、上述した焼き付きは、エンジンが高負荷の状態で連続的に作動した場合などに発生しやすくなるだけでなく、オイルの劣化が進んでいる場合には、オイルが劣化していない場合と比較して、焼き付きがさらに発生しやすくなる可能性がある。このように、推定したオイルの劣化による部品同士の焼き付きなどの実際の影響に対する対応については改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、潤滑や冷却のためのオイルが劣化することによる焼き付きの発生を精度良く判定してタイミングよく告知することが可能な焼き付き告知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、オイルによって潤滑され、かつ回転部材を支持している回転支持部の焼き付きを判定して告知する焼き付き告知装置であって、前記判定および告知を行うコントローラを備え、前記コントローラは、前記回転部材のトルクと回転数との積を求め、前記積が予め定めた所定値以上となった回数を予め定めた所定のサンプリングタイムごとに積算して積算値を求め、前記積算値と予め定めた閾値とを比較し、前記閾値は前記オイルの温度と前記トルクと前記回転数との増大によって低下する値として保持されており、前記積算値が前記閾値を超えた場合に前記焼き付きの告知を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の焼き付き告知装置は、回転部材を支持する回転支持部の焼き付きを判定して告知する。焼き付き告知装置は、回転部材のトルクと回転数との積が予め定められた所定値以上となった回数を予め定めた所定のサンプリングタイムごとに積算した積算値を求める。そして、その積算値と予め定めた閾値とを比較し、積算値が閾値を超えた場合に、焼き付きの告知を行う。また、その閾値は、オイルの温度と、トルクと、回転数との増大によって低下する値となっている。そのため、回転部材のトルクと回転数とに基づいて焼き付きの発生しやすさが判定されるので、焼き付きの発生しやすさを精度良く判定することができる。また、閾値が、オイルの温度とトルクと回転数との増大によって低下するので、オイルの劣化によって焼き付きが生じやすくなっているときに、告知が遅れてしまうことなどを抑制することができる。また、推定したオイルの劣化度を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態における焼き付き告知装置を搭載した車両の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態における焼き付き告知装置の機能構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】焼き付きパラメータとして積算される値を説明するためのタイムチャートである。
【
図4】焼き付きが生じる可能性があることを判定するための所定の閾値を説明するための説明図である。
【
図5】オイルの劣化度に応じて設定される所定の閾値を説明するための説明図である。
【
図6】本発明の実施形態における焼き付き告知装置によって実行される制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を具体化した場合の一例に過ぎないのであって、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1には、本発明の実施形態における焼き付き告知装置を適用した車両Veを示してある。
図1に示すように、車両Veは、エンジンなどの駆動力源(以下、エンジンと記す。)1、動力伝達装置2、表示器3、車輪4、検出部5、電子制御装置(ECU)6などを備えている。本発明の実施形態における焼き付き告知装置は、主に車両Veの動力伝達装置2において、車両Veの走行時、例えばエンジン1の動作時などに摺動が生じる回転部材やその回転支持部などの部品に、いわゆる焼き付きが発生する可能性があるときに、運転者に告知するように構成されている。
【0011】
エンジン1は、従来知られているエンジンと同様に、ガソリンなどの燃料と空気との混合気を燃焼することにより車両Veの駆動力を発生させるように構成されている。具体的には、エンジン1は、複数の気筒を有しており、その複数の気筒内において、吸気、圧縮、燃焼(膨張)、排気の工程が実行されることにより動力を出力する。なお、駆動力源としてモータを併用したり、あるいは、駆動力源がモータのみであったりするような構成でもよい。
【0012】
動力伝達装置2は、エンジン1の出力を車輪4に伝達するための機構であり、例えば、遊星歯車機構(変速機)や伝動機構、デファレンシャルギヤなどの機構を含む。動力伝達装置2には、それらの機構を潤滑あるいは冷却するための図示しないオイルが供給される。そのオイルが、部品同士の摺動が生じる部品に供給されることによって、その部品同士の接触面において材質表面の変質や、摩耗、溶解などの焼き付きを抑制している。なお、摺動が生じる部品とは、例えば、ベアリング、ギヤ、デファレンシャルギヤの差動部および滑り軸受などである。
【0013】
表示器3は、車両Veのインストルメントパネル等に設けられており、例えば、メーターパネルやカーナビゲーションのディスプレイなどである。表示器3には、車両Veの走行に必要な情報や、ユーザに対する通知が表示される。また、表示器3は、オイルが劣化していることなどによって動力伝達装置2に焼き付きが生じ易くなっている可能性がある場合に、シンボルなどを表示することによって運転者や搭乗者に告知することができるように構成されている。なお、車両に設けられているスピーカなどからの音声による告知を併用してもよい。
【0014】
検出部5は、車両Veの走行のための制御や、オイルの劣化の度合いを推定するために必要な各種のデータや情報を取得するための機器あるいは装置である。検出部5は、エンジン1の回転数を検出する回転数センサ5a、エンジン1の出力トルクを検出するエンジントルクセンサ5b、および、上述したオイルの温度を検出する油温センサ5cなどの各種センサ・機器を有している。なお、トルクはエンジン1の動作状態もしくは制御状態から演算して求めてもよい。例えば、エンジン1の出力とエンジン1の出力軸の回転数とに基づいて算出されてもよい。あるいは、駆動力源としてモータを併用している場合には、レゾルバによってエンジンのトルクが入力されるモータの回転数と、動力伝達装置におけるギヤ比とに基づいて出力軸のトルクを算出したり、モータへの指示電流値に基づいてトルクに換算し、ギヤ比に基づいて出力軸のトルクを算出するように構成されていてもよい。
【0015】
ECU6は、本発明の実施形態におけるコントローラに相当し、従来知られているECUと同様に、マイクロコンピュータを主体に構成されていて、車両Veに設けられた種々のセンサから信号が入力され、その入力された信号と予め記憶されているマップや演算式などとに基づいて得られた結果を制御指令信号として、エンジン1などに出力するように構成されている。ECU6に入力されるデータには、上述したようなエンジン1のトルクや回転数、オイルの温度などが含まれる。なお、検出部5、ECU6および車両Veの走行のための各アクチュエータやセンサなどは、例えば、CANやワイヤーハーネス等によって互いに電気的に接続されており、取得した検出値または算出値に応じた電気信号を検出データとしてECU6に出力する。また、ECU6は、
図2に示すように、積算実施判定部7、焼き付きパラメータ算出部8、焼き付き判定部9、オイル劣化度算出部10、および、焼き付き告知部11を備えている。
【0016】
積算実施判定部7は、動力伝達装置2における焼き付きの発生に寄与するパラメータを算出するための演算を実行するか否かを判定する。積算実施判定部7には、予め定められた積算実施閾値Stnが記憶されている。積算実施判定部7は、エンジン1の出力トルクおよび回転数を取得し、その出力トルクと回転数とを乗算した基準値が、積算実施閾値Stn以上となった場合に、焼き付きの発生を推定するための演算を開始すべきと判定する。また、積算実施判定部7は、その基準値が積算実施閾値Stnより小さい値となっている時間が所定時間Ty以上となった場合には、その演算を終了することを判定するように構成されている。なお、積算実施閾値Stnは実験やシミュレーションによって予め定めておくことができる。
【0017】
焼き付きパラメータ算出部8は、オイルを劣化させる要因となる複数のパラメータに基づいて焼き付きパラメータDyakiを算出する。焼き付きパラメータ算出部8は、エンジン1の出力トルクおよびエンジン1の回転数を乗算した基準値を、サンプリングタイムごとに算出し、その積算値である焼き付きパラメータDyakiを算出する。言い換えれば、焼き付きパラメータDyakiは、基準値が積算実施閾値Stn以上となった回数をサンプリングタイムごとに積算した値である。また、積算実施閾値Stnが、本発明の実施形態における予め定めた所定値に相当している。
【0018】
焼き付きパラメータDyakiを算出するときの概要を、縦軸に基準値をとり、横軸に時間をとったタイムチャートである
図3を用いて説明する。
図3に示すように、t1時点において、エンジン1の出力トルクと回転数とを乗算した基準値が積算実施閾値Stn以上になったことにより、演算を実施する条件を満たしたことが積算実施判定部7によって判定される。そのように判定されたことにより、焼き付きパラメータ算出部8は、上述したオイルの劣化度を算出するための演算を開始する。その後、基準値が積算実施閾値Stnより小さくなるとともに、その状態が所定時間Ty続いたことにより、t2時点において、焼き付きパラメータ算出部8における演算が終了される。また、t2時点において、t1からt2にかけて実行された演算によって算出された焼き付きパラメータDyakiがリセットされる。
【0019】
その後、t3時点において、基準値が積算実施閾値Stn以上になったことにより、焼き付きパラメータ算出部8によって、上述したオイルの劣化度を算出するための演算が開始される。t4時点において、基準値が積算実施閾値Stnより小さくなり、t5時点までその状態が継続し、t5時点から再度、基準値が積算実施閾値Stn以上となっている。この場合には、t4時点において基準値が積算実施閾値Stnより小さくなっているものの、t4時点からt5時点までの時間が、所定時間Tyより短いことにより、積算値がリセットされない。つまり、t3時点から実行されているオイルの劣化度を算出するための演算が、t4時点からt5時点までの間を除き、t5時点以降も焼き付きパラメータDyakiの演算が継続される。t5時点以降は、基準値が積算実施閾値Stnより小さくなっている時間が所定時間Ty以上となるまで積算値の算出が継続される。
【0020】
焼き付き判定部9は、焼き付きパラメータ算出部8によって算出された焼き付きパラメータDyakiに基づき、動力伝達装置2における摺動が生じる部品同士に焼き付きが発生する可能性があることを判定する。具体的には、焼き付き判定部9は、予め定められた焼き付きパラメータの閾値Dyaki_limを記憶しており、
図4に示すように、焼き付きパラメータDyakiが、その閾値Dyaki_limより大きいか否かを判定する。焼き付きパラメータDyakiが閾値Dyaki_limより大きい場合には、オイルの劣化によって焼き付きが発生しやすい状態であると判定し、反対に、焼き付きパラメータDyakiが閾値Dyaki_lim以下である場合には、焼き付きが生じる可能性は低いと判定する。なお、閾値Dyaki_limは実験やシミュレーションによって予め定めておくことができる。
【0021】
オイル劣化度算出部10は、
図5に示すように、オイルの温度や、回転部材に入力されるトルク、回転数の増大によって、段階的に閾値Dyaki_limを小さくする。具体的には、オイル劣化度算出部10は、実験やシミュレーションなどに基づき、油温に応じて予め設定されている加速倍率を記憶している。その加速倍率に、上述した焼き付きパラメータDyakiを乗算した値を、オイル劣化度として算出する。オイル劣化度算出部10は、
図5に示すように、そのオイル劣化度が大きくなるにつれて、段階的に閾値Dyaki_limを小さくしていくように構成されている。つまり、オイルの劣化度の進行に応じて閾値Dyaki_limが小さくされるので、焼き付きの発生の判定がされやすくなるように構成されている。なお、このときのオイル劣化度の進行度と閾値Dyaki_limの下げ幅との関係は、予め実験やシミュレーションによって定められている。また、加速倍率は、本発明の実施形態における予め定められた定数に相当している。
【0022】
焼き付き告知部11は、焼き付き判定部9によって動力伝達装置2に焼き付きが発生しやすい状態であると判定された場合に、そのような状態であることを車両Veの運転者に告知する。つまり、焼き付き告知部11は、表示器3に予め定められたシンボルやメッセージを表示することなどによって車両Veの運転者に告知する。したがって、焼き付きの告知は、焼き付きが生じた状態やその直前の状態の告知に限らず、焼き付きが生じる可能性が、予め定めた基準以上に高くなった状態の告知のいずれであってもよい。
【0023】
つぎに、動力伝達装置2において焼き付きが生じる可能性があることを運転者に告知するときに実行される制御について、
図6に示すフローチャートを用いて説明する。
図6に示すように、ステップS1において、エンジン1の出力トルクおよび回転数を乗算した基準値を算出し、その基準値が積算実施閾値Stn以上であることが判定される。ステップS1では、基準値がオイルの特性に基づいて予め定められた積算実施閾値Stn以上であることにより、オイルの劣化が促進される条件を満たしていることを判定する。基準値が積算実施閾値Stnより小さいことにより、ステップS1でNOと判定された場合には、処理がステップS5に移行する。
【0024】
ステップS5では、基準値が積算実施閾値Stnより小さい状態が所定時間継続したか否かが判定される。ステップS5では、焼き付きパラメータDyakiが演算されている場合に、その演算による積算をリセットするか否かが判定される。つまり、上述したように、基準値が積算実施閾値Stn以上となった場合に焼き付きパラメータDyakiの演算が開始される。そして、基準値が積算実施閾値Stnより小さくなったことにより、その演算が一時的に停止される。ステップS5では、基準値が積算実施閾値Stnより小さい状態の継続時間に基づき、演算が一時的に停止されている状態を継続するか、その演算によって算出された値(積算値)をリセットするか、を判定している。基準値が積算実施閾値Stnを下回ってから所定時間未満しか継続していない場合には、ステップS5でNOと判定され、このフローチャートを一旦終了する。その場合には、再度、基準値が積算実施閾値Stn以上となったときに、一時的に停止されている演算が再開され、サンプリングタイムごとの、基準値が積算実施閾値Stn以上となった回数の積算が継続される。
【0025】
反対に、基準値が積算実施閾値Stn以上になってから所定時間以上継続している場合には、ステップS5でYESと判定され、処理がステップS6に移行する。ステップS6では、焼き付きパラメータDyakiを一旦リセットする。すなわち、ステップS6では、基準値が積算実施閾値Stn以上になってから所定時間以上継続していることにより、動力伝達装置2における直ちに焼き付きが発生する可能性が低いので、焼き付きパラメータDyakiの演算を終了する。
【0026】
ステップS1に戻り、基準値が積算実施閾値Stn以上であることにより、ステップS1でYESと判定された場合には、処理がステップS2に移行する。ステップS2では、焼き付きパラメータDyakiを算出する。焼き付きパラメータDyakiは、上述したように、積算実施閾値Stn以上となっているときのエンジン1の出力トルクおよびエンジン1の回転数を乗算した基準値の回数をサンプリングタイムごとに積算することにより算出される。
【0027】
ステップS2において、焼き付きパラメータDyakiが算出された後、処理がステップS3に移行する。ステップS3では、算出された焼き付きパラメータDyakiが予め定められた閾値Dyaki_limより大きいか否かが判定される。閾値Dyaki_limは、実験やシミュレーションによって予め定められており、オイルの劣化度やエンジン1、動力伝達装置2などの特性に基づき、動力伝達装置2において焼き付きが発生する可能性があることを判定が可能な値に設定されている。また、閾値Dyaki_limは、上述したように、オイルの劣化が進行するにつれて、段階的に小さい値となるように設定されている。焼き付きパラメータDyakiが予め定められた閾値Dyaki_lim以下であることにより、ステップS3においてNOと判定された場合には、以降の制御を実行することなく、このフローチャートを一旦終了する。
【0028】
反対に、焼き付きパラメータDyakiが予め定められた閾値Dyaki_lim以上であると判定された場合には、ステップS3においてYESと判定され、処理がステップS4に進む。ステップS4では、運転者や搭乗者に対して、焼き付きが発生する可能性が高いことを告知する。告知は、車両Veに搭載されている表示器3などによって行われ、例えば、シンボルやメッセージなどを表示することによって運転者や搭乗者に告知するように構成されている。
【0029】
したがって、本発明の実施形態における焼き付き告知装置では、エンジン1の出力トルクおよびエンジン1の回転数を乗算した基準値を求め、その基準値が積算実施閾値Stn以上となった回数を、サンプリングタイムごとに積算した値を焼き付きパラメータDyakiとして算出する。そして、その焼き付きパラメータが、予め定められた閾値Dyaki_limを超えた場合に、運転者や搭乗者に、焼き付きが発生する可能性が高いことが告知される。また、その閾値Dyaki_limは、オイルの劣化が進むにつれて、小さい値となるように設定されている。つまり、オイルの劣化が進むにつれて、焼き付きが発生する可能性が高いことの告知が発生しやすくなっている。すなわち、推定したオイルの劣化度に応じて焼き付きの発生を運転者に適切に告知することができる。したがって、オイルの劣化によって比較的焼き付きが生じやすくなっているときに、告知が遅れてしまうことなどを抑制することができる。また、推定したオイルの劣化度を有効に活用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 エンジン
2 動力伝達装置
3 表示器
7 積算実施判定部
8 焼き付きパラメータ算出部
9 焼き付き判定部
10 オイル劣化度算出部
11 焼き付き告知部
Ve 車両