(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174649
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】レーザヘッド及びそれを備えたレーザ加工装置、レーザヘッドの保護方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20241210BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092583
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一聡
(72)【発明者】
【氏名】高橋 渉
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168AD11
4E168BA00
4E168CA11
4E168EA17
4E168EA24
4E168KA15
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で確実に自身の温度上昇を抑制可能なレーザヘッドを提供する。
【解決手段】レーザヘッド50は、筐体51とシールドユニット40と状態検出回路30とを備えている。状態検出回路30は、温度検出器31と挿入検知スイッチ32と演算部34とを有している。シールドユニット40は、筐体51に対して着脱可能に取り付けられている。ホルダ42には、温度検出器31が取り付けられている。筐体51には、筐体51に対するシールドユニット40の装着状態を検出する挿入検知スイッチ32が取り付けられている。演算部34は、温度検出器31の出力信号に基づいてレーザヘッド50の温度を算出する。温度検出器31と挿入検知スイッチ32とは直列に接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数の光学部品を有する筐体と、前記筐体に対して着脱可能に取り付けられたシールドユニットと、を少なくとも備え、受け取ったレーザ光をワークに向けて照射するレーザヘッドであって、
前記レーザヘッドは、前記レーザヘッドの温度に関する状態と前記筐体に対する前記シールドユニットの装着状態とを検出する状態検出回路をさらに備え、
前記シールドユニットは、保護ガラスと、前記保護ガラスを保持するホルダとを有し、
前記ホルダには、前記レーザヘッドの温度を検出する温度検出器が取り付けられており、
前記筐体には、前記筐体に対する前記シールドユニットの装着状態を検出する挿入検知スイッチが取り付けられており、
前記温度検出器は、前記保護ガラスの近傍に取り付けられており、
前記状態検出回路は、前記温度検出器と前記挿入検知スイッチと演算部とを少なくとも有し、
前記演算部は、前記温度検出器の出力信号に基づいて前記レーザヘッドの温度を算出し、
前記温度検出器と前記挿入検知スイッチとは直列に接続されていることを特徴とするレーザヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザヘッドにおいて、
前記シールドユニットには、前記温度検出器と前記挿入検知スイッチとの電気接点が設けられ、
前記電気接点は、前記シールドユニットにおける発熱部と熱的に分離されていることを特徴とするレーザヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザヘッドにおいて、
前記温度検出器は、熱電対であり、
前記熱電対は補償導線を介して前記電気接点に電気的に接続されていることを特徴とするレーザヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザヘッドにおいて、
前記演算部は、算出した前記レーザヘッドの温度を前記補償導線の長さに応じて補正することを特徴とするレーザヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載のレーザヘッドにおいて、
前記演算部は、前記挿入検知スイッチの出力信号に基づいて、前記シールドユニットが前記筐体に正しく装着されているか否かを判定し、
当該判定結果が否定的な場合、前記演算部は、第1エラー信号を出力することを特徴とするレーザヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザヘッドにおいて、
前記演算部は、前記温度検出器の出力信号に基づいて、前記レーザヘッドの温度が第1しきい値を超えたかであるか否かを判定し、
当該判定結果が肯定的な場合、前記演算部は、第2エラー信号を出力することを特徴とするレーザヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザヘッドにおいて、
前記演算部は、前記温度検出器の出力信号に基づいて、所定の期間における前記レーザヘッドの温度変化量が第2しきい値を超えたか否かを判定し、
当該判定結果が肯定的な場合、前記演算部は、第2エラー信号を出力することを特徴とするレーザヘッド。
【請求項8】
請求項1に記載のレーザヘッドにおいて、
前記演算部は、前記状態検出回路がクローズ状態であるか、またはオープン状態であるかを判定し、
前記状態検出回路が前記オープン状態である場合、前記演算部は第3エラー信号を出力することを特徴とするレーザヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザヘッドにおいて、
前記レーザヘッドから前記レーザ光が照射されている期間に前記第3エラー信号が出力された場合、前記演算部は、前記レーザヘッドの温度が所定のしきい値を超えていると判定し、
前記レーザヘッドから前記レーザ光が照射されていない期間に前記第3エラー信号が出力された場合、前記演算部は、前記シールドユニットが前記筐体に正しく装着されてないと判定することを特徴とするレーザヘッド。
【請求項10】
前記レーザ光を発生させるレーザ発振器と、
請求項6または7に記載のレーザヘッドと、
少なくとも前記レーザ発振器の動作を制御するコントローラと、を少なくとも備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項11】
請求項10に記載のレーザ加工装置において、
前記演算部から出力された前記第2エラー信号を前記コントローラが受信した場合、
前記コントローラは、前記レーザ発振器でのレーザ発振を停止させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
前記レーザ光を発生させるレーザ発振器と、
請求項8または9に記載のレーザヘッドと、
少なくとも前記レーザ発振器の動作を制御するコントローラと、を少なくとも備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項13】
請求項12に記載のレーザ加工装置において、
前記演算部から出力された前記第3エラー信号を前記コントローラが受信した場合、
前記コントローラは、前記レーザ発振器でのレーザ発振を停止させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項14】
請求項1に記載のレーザヘッドの保護方法であって、
前記ワークへの前記レーザ光の照射前に、前記状態検出回路がオープン状態であるか、またはクローズ状態であるかを判定する第1ステップと、
前記ワークへの前記レーザ光の照射を開始する第2ステップと、
前記温度検出器により、前記レーザヘッドの温度を測定する第3ステップと、
前記温度検出器の出力信号に基づいて、所定の期間における前記レーザヘッドの温度変化量を導出する第4ステップと、
前記温度変化量が第2しきい値を超えたか否かを判定する第5ステップと、
前記レーザヘッドの温度が第1しきい値を超えたか否かを判定する第6ステップと、を少なくとも備え、
前記第1ステップにおいて、前記状態検出回路が前記クローズ状態である場合は、前記第2ステップ以降の処理を続行し、前記状態検出回路が前記オープン状態である場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を停止し、
前記第5ステップの判定結果または前記第6ステップの判定結果のいずれかが肯定的である場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を停止し、
前記第5ステップの判定結果及び前記第6ステップの判定結果のいずれもが否定的な場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を続行することを特徴とするレーザヘッドの保護方法。
【請求項15】
請求項14に記載のレーザヘッドの保護方法において、
前記第6ステップの実行後に、前記状態検出回路が前記オープン状態であるか、または前記クローズ状態であるかを判定する第7ステップをさらに備え、
前記第7ステップで、前記状態検出回路が前記クローズ状態であると判定された場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を続行し、前記状態検出回路が前記オープン状態であると判定された場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を停止することを特徴とするレーザヘッドの保護方法。
【請求項16】
請求項8に記載のレーザヘッドの保護方法であって、
前記温度検出器は、前記レーザヘッドの温度が所定のしきい値を超えたか否かを検出し、
前記ワークへの前記レーザ光の照射前に、前記状態検出回路が前記オープン状態であるか、または前記クローズ状態であるかを判定する第8ステップと、
前記ワークへの前記レーザ光の照射を開始する第9ステップと、
前記温度検出器により、前記レーザヘッドの温度を測定する第10ステップと、
前記レーザヘッドの温度が前記しきい値を超えたか否かを判定する第11ステップと、
前記第11ステップの実行後に、前記状態検出回路が前記オープン状態であるか、または前記クローズ状態であるかを判定する第12ステップと、を少なくとも備え、
前記第8ステップにおいて、前記状態検出回路が前記クローズ状態である場合は、前記第9ステップ以降の処理を続行し、前記状態検出回路が前記オープン状態である場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を停止し、
前記第11ステップの判定結果が肯定的である場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を停止し、前記第11ステップの判定結果が否定的である場合は、前記第12ステップを実行し、
前記第12ステップで、前記状態検出回路が前記クローズ状態であると判定された場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を続行し、前記状態検出回路が前記オープン状態であると判定された場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を停止することを特徴とするレーザヘッドの保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザヘッド及びそれを備えたレーザ加工装置、レーザヘッドの保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ発振器から出射されたレーザ光を光ファイバで導光してレーザヘッドに入射し、レーザヘッドからワークに向けてレーザ光を出射するレーザ加工装置が良く知られている。光ファイバを用いることで、レーザ発振器から離れた場所に置かれたワークに対してレーザ加工を行うことができる。
【0003】
レーザ加工中に、レーザヘッドはワークに近い位置に配置されるため、レーザ光によりワークより溶融して生成されるスパッタやヒューム等の飛散物が、レーザヘッドの内部に入り込むことがある。レーザヘッドの内部には、複数の光学部品が所定の配置関係を保って配置されている。これらの光学部品に前述の飛散物が付着すると、レーザ光が反射または散乱される。このため、レーザ光が所望の出力で、また、ワークにおける所望の位置に照射されないことがある。これを防止するために、通常、レーザヘッドの内部であって、光出射口の近傍には1または複数の保護ガラスが設けられる。
【0004】
しかし、保護ガラスに付着した飛散物はレーザ光を吸収するため、レーザ加工を連続的に行うと、保護ガラスの温度が上昇し、ひいてはレーザヘッド全体の温度が上昇してしまう。極端な場合には、レーザヘッドが焼損するおそれがあった。
【0005】
このような課題を解決するために種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、保護ガラスと光出射口との間に、噴射方向の異なる2種類のエアーノズルを設けて、保護ガラスにエアーを吹き付け、飛散物の付着を防止する構成が開示されている。
【0006】
特許文献2には、飛散物がレーザヘッドの内部に侵入しないように、レーザヘッドの先端からワークまでのワーキングディスタンスを確保するため、ワークテーブルの開口部近傍にワーク支持部材が設けられた構成が開示されている。また、開口部の内周縁に不活性ガス噴出口を備えた保護カバーが設けられる。
【0007】
特許文献3には、集光光学の温度を検出する温度検出器と、温度検出器で検出された温度をもとに温度対デフォーカス量のマップからデフォーカス量を求める手段と、求められたデフォーカス量をワークが設置されたステージにオフセットとして持たせるレーザ加工装置が開示されている。
【0008】
特許文献4には、ワークの材質等に対してレーザ光の波長を変更し、ワークに照射することで、飛散物の量を低減させるレーザ加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5194367号公報
【特許文献2】特許第6091260号公報
【特許文献3】特開平11-058053号公報
【特許文献4】特許第6631202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~4に開示された従来の構成によれば、保護ガラスへのエアー吹付方法やレーザヘッドとワークとの距離、また、照射するレーザ光の波長等を調整することで、飛散物の付着やレーザヘッドの温度上昇を抑制することができる。
【0011】
しかし、特許文献1に開示された構成では、エアーノズルから流せるエアーの流量がノズル径やエアーノズルが接続される配管の直径によって決まる。このため、保護ガラスに吹き付けるエアーの流量を大きくできないおそれがある。一方、エアーの流量が大きすぎると、ワークの加工品質が低下するおそれがある。
【0012】
特許文献2、3に開示された構成では、レーザヘッドとワークとの距離を長くすると、ワークに照射されるレーザ光のスポット径も大きくなってしまう。この場合、ワークの溶込み深さが所望の値よりも小さくなり、深い溶込み深さを必要とする加工ができないおそれがある。
【0013】
また、光吸収率の波長依存性は、ワークの材質に応じて変化する。例えば、銀は、波長が450nmから1100nmまでの範囲で90%以上の吸収率を有している。一方、金は、波長が600nmよりも短くなると、急激に吸収率が低下し、450nmでは40%程度の吸収率となる。
【0014】
特許文献4に開示された構成では、ワークの材質に応じてレーザ光の波長を変更している。しかし、基本的に、レーザ光の波長はレーザ光源の種類によって決まるため、大幅な波長変更を行ったり、波長変更幅を拡げたりするのは容易ではない。
【0015】
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡便な構成で確実にレーザヘッドの温度上昇を抑制できるレーザヘッド及びそれを備えたレーザ加工装置、レーザヘッドの保護方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本開示に係るレーザヘッドは、内部に複数の光学部品を有する筐体と、前記筐体に対して着脱可能に取り付けられたシールドユニットと、を少なくとも備え、受け取ったレーザ光をワークに向けて照射するレーザヘッドであって、前記レーザヘッドは、前記レーザヘッドの温度に関する状態と前記筐体に対する前記シールドユニットの装着状態とを検出する状態検出回路をさらに備え、前記シールドユニットは、保護ガラスと、前記保護ガラスを保持するホルダとを有し、前記ホルダには、前記レーザヘッドの温度を検出する温度検出器が取り付けられており、前記筐体には、前記筐体に対する前記シールドユニットの装着状態を検出する挿入検知スイッチが取り付けられており、前記温度検出器は、前記保護ガラスの近傍に取り付けられており、前記状態検出回路は、前記温度検出器と前記挿入検知スイッチと演算部とを少なくとも有し、前記演算部は、前記温度検出器の出力信号に基づいて前記レーザヘッドの温度を算出し、前記温度検出器と前記挿入検知スイッチとは直列に接続されていることを特徴とする。
【0017】
本開示に係るレーザ加工装置は、前記レーザ光を発生させるレーザ発振器と、前記レーザヘッドと、少なくとも前記レーザ発振器の動作を制御するコントローラと、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0018】
本開示に係るレーザヘッドの保護方法は、前記ワークへの前記レーザ光の照射前に、前記状態検出回路がオープン状態であるか、またはクローズ状態であるかを判定する第1ステップと、前記ワークへの前記レーザ光の照射を開始する第2ステップと、前記温度検出器により、前記レーザヘッドの温度を測定する第3ステップと、前記温度検出器の出力信号に基づいて、所定の期間における前記レーザヘッドの温度変化量を導出する第4ステップと、前記温度変化量が第2しきい値を超えたか否かを判定する第5ステップと、前記レーザヘッドの温度が第1しきい値を超えたか否かを判定する第6ステップと、を少なくとも備え、前記第1ステップにおいて、前記状態検出回路が前記クローズ状態である場合は、前記第2ステップ以降の処理を続行し、前記状態検出回路が前記オープン状態である場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を停止し、前記第5ステップの判定結果または前記第6ステップの判定結果のいずれかが肯定的である場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を停止し、前記第5ステップの判定結果及び前記第6ステップの判定結果のいずれもが否定的な場合は、前記ワークへの前記レーザ光の照射を続行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、簡便な構成で確実にレーザヘッドの温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態1に係るレーザ加工装置の概略構成図である。
【
図5】温度検出器の出力信号の時間応答を示す図である。
【
図6】レーザヘッドの一定期間での温度変化量を説明する図である。
【
図7】保護ガラスの汚れの有無によるレーザヘッドの温度の時間変化の違いを示す図である。
【
図8】実施形態1に係るレーザヘッドの保護手順を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態2に係るレーザヘッドの保護手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
(実施形態1)
[レーザ加工装置の構成]
図1は、実施形態1に係るレーザ加工装置の概略構成である。
図1に示すように、レーザ加工装置100は、レーザヘッド50と、マニピュレータ60と、コントローラ70と、レーザ発振器80と、光ファイバ90とを備えている。
【0023】
レーザヘッド50は、光ファイバ90で伝送されたレーザ光LBをワークWに向けて照射する。レーザヘッド50の構成については後で詳しく述べる。
【0024】
マニピュレータ60は、多関節軸ロボットであり、先端にレーザヘッド50が取り付けられ、レーザヘッド50を移動させる。また、マニピュレータ60とコントローラ70とは、第1ケーブル71で接続されている。各関節軸(図示せず)には、サーボモータ(図示せず)が取り付けられており、第1ケーブル71を介して、コントローラ70から指令信号が入力され、サーボモータの駆動制御が行われる。また、各サーボモータに取り付けられたエンコーダ(図示せず)等の回転量計測器からの出力信号が、第1ケーブル71を介してコントローラ70に入力される。当該出力信号に基づいて、レーザヘッド50の移動速度が制御される。
【0025】
コントローラ70は、1または複数のCPU(Central Processing Unit)またはMCU(Micro Controller Unit)(いずれも図示せず)を有している。また、コントローラ70は、記憶部としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)やSSD(Solid State Drive)等の半導体メモリまたはHDD(Hard Disk Drive)あるいはその両方(いずれも図示せず)を有している。
【0026】
コントローラ70は、レーザ発振を含むレーザ発振器80の動作と、マニピュレータ60の動作と、レーザヘッド50の動作と、を制御する。具体的には、コントローラ70は、レーザ発振器80における電源(図示せず)を動作させ、レーザ光LBのパワーやオンオフのタイミング等を制御する。また、コントローラ70は、前述したマニピュレータ60の各サーボモータの動作を制御する。また、レーザヘッド50に可動部品が設けられている場合、コントローラ70は、当該可動部品の動作を制御する。
【0027】
コントローラ70は、信号線72a、72bを介してレーザヘッド50に設けられた複数の部品に接続されている。なお、説明の便宜上、
図1において、信号線72aと信号線72bを離間して示しているが、実際にはこれらの信号線は1本のケーブルにまとめられている。信号線72a、72bについては後で述べる。
【0028】
なお、コントローラ70は、少なくともレーザ発振器80の動作を制御すればよい。例えば、マニピュレータ60の動作を制御するコントローラと、レーザヘッド50の動作を制御するコントローラとを、コントローラ70と別個に設けてもよい。
【0029】
レーザ発振器80は、レーザ発振によりレーザ光LBを発生させ、光ファイバ90に出力する。光ファイバ90は、レーザ発振器80から出力されたレーザ光LBをレーザヘッド50まで伝送する。
【0030】
図1に示すレーザ加工装置100は、ワークWの切断や溶接、穴あけ加工等を行うのに使用される。レーザ加工装置100では、コントローラ70により、レーザ発振器80を動作させてレーザ光LBを発生させる。さらに、コントローラ70によりマニピュレータ60を動作させるか、または、レーザヘッド50とマニピュレータ60の両方を動作させて、ワークWにレーザ光LBを照射し、レーザ加工を行う。
【0031】
[レーザヘッドの構成]
図2は、レーザヘッドの概略構成図である。
図3は、シールドユニットの模式図である。
【0032】
図2に示すように、レーザヘッド50は、筐体51と筐体51の内部に所定の配置関係を保って配置された複数の部品とを有している。また、筐体51の外周面には基板ボックス20が取り付けられている。なお、
図2では、筐体51の内部に配置された部品として、コリメーションレンズ10とフォーカスレンズ11と2組のシールドユニット40,40とを示しているが、これら以外の部品が筐体51の内部に設けられていてもよい。
【0033】
基板ボックス20は、レーザヘッド50に入力されるか、レーザヘッド50に入力される電気信号の中継器(図示せず)または信号処理部を内部に有している。信号処理部として、後で述べる演算部34(
図4参照)が基板ボックス20に配置されている。なお、演算部34以外の信号処理部、または電気回路が基板ボックス20に設けられていてもよい。
【0034】
筐体51は、光入射口51aと光出射口51bとを有している。光入射口51aには光ファイバ90が接続される。レーザ発振器80で発生したレーザ光LBは、光ファイバ90を通って光入射口51aから筐体51の内部に入射される。レーザ光LBは、さらに前述した複数の部品を透過して光出射口51bからワークWに向けて照射される。
【0035】
コリメーションレンズ10は、レーザ光LBを平行化し、フォーカスレンズ11は、コリメーションレンズ10で平行化されたレーザ光LBを受け取って、ワークWの表面またはその近傍で焦点を結ぶようにレーザ光LBを集光する。
【0036】
また、筐体51の内部における光出射口51bの近傍に、2組のシールドユニット40,40が配置されている。2組のシールドユニット40,40は、筐体51の内部におけるレーザ光LBの進行方向に間隔をあけて配置されている。なお、
図2に示す例では、筐体51の内部に、2組のシールドユニット40,40が配置されているが、1つ以上のシールドユニット40がさらに配置されていてもよい。
【0037】
図3に示すように、シールドユニット40は、保護ガラス41と保護ガラス41を保持するホルダ42とを有している。シールドユニット40は、筐体51に対して着脱可能に取り付けられている。また、シールドユニット40が、筐体51に対して正しく挿入された場合、
図2,3に示すように、ホルダ42が筐体51に取り付けられた挿入検知スイッチ32に当接する。挿入検知スイッチ32の機能等については後で述べる。
【0038】
保護ガラス41はレーザ光LBに対して透明な材質の光学部材である。保護ガラス41は、レーザ光LBを透過させる一方、レーザ加工中にワークWから飛来するスパッタやヒューム等の飛散物が筐体51に内部に進入するのを防止する。本実施形態に示すレーザヘッド50では、シールドユニット40を2組設けることで、飛散物が筐体51の内部に進入することを確実に防止している。
【0039】
保護ガラス41を有するシールドユニット40を光出射口51bの近傍に設けることにより、コリメーションレンズ10やフォーカスレンズ11に飛散物が付着するのを防止できる。このことにより、レーザ光LBをワークWの所望の位置に所定の出力で照射することができる。
【0040】
一方、飛散物は保護ガラス41に付着する。飛散物の付着量が多くなると、レーザ光LBの進行が妨げられる。また、付着した飛散物がレーザ光LBを吸収して発熱するため、保護ガラス41の温度が上昇してしまう。保護ガラス41の温度が上がりすぎると、シールドユニット40,ひいてはレーザヘッド50が焼損するおそれがあることは前述した通りである。
【0041】
そこで、本実施形態では、レーザヘッド50に状態検出回路30を設けることで、レーザヘッド50の温度を確実に検出している。また、検出された温度に基づいて、レーザ発振器80の動作を制御している。以降、このことについてさらに説明する。
【0042】
[状態検出回路の構成]
図4は、状態検出回路の概略構成図である。なお、説明の便宜上、
図4において、ホルダ42の形状を簡略化して図示するとともに、保護ガラス41の図示を省略している。また、筐体51の図示を省略している。
【0043】
図4に示すように、状態検出回路30は、温度検出器31と挿入検知スイッチ32と演算部34とで構成される。
【0044】
温度検出器31は、シールドユニット40のホルダ42に取り付けられている。本実施形態では、温度検出器31は熱電対である。ただし、特にこれに限定されず、温度検出器31は他の種類の素子であってもよい。また、本実施形態において、温度検出器31は、光出射口51bに近い側に配置されたシールドユニット40に取り付けられている。
【0045】
温度検出器31を保護ガラス41の近傍に配置されるホルダ42に取り付けることで、レーザ光LBの進行を妨げることなく、保護ガラス41の温度を検出することができる。また、保護ガラス41の温度がシールドユニット40,ひいてはレーザヘッド50の温度を代表する。
【0046】
挿入検知スイッチ32は、一般的な押釦スイッチである。ホルダ42が筐体51に対して設定された位置まで挿入されたとき、ホルダ42が挿入検知スイッチ32の先端を押圧し、挿入検知スイッチ32の状態が開状態(以下、オープン状態とも言う。)から閉状態(以下、クローズ状態とも言う。)に切り替わる。
【0047】
演算部34は、1または複数のCPUで構成される。演算部34は、温度検出器31の出力信号、具体的には出力電圧と、予め求めておいた温度検出器31の出力電圧値と温度との関係を記述したテーブルとに基づいて、シールドユニット40の温度を算出する。
【0048】
また、演算部34には、挿入検知スイッチ32の出力信号も入力される。演算部34は、挿入検知スイッチ32の出力信号に基づいて、挿入検知スイッチ32がオープン状態であるか、またはクローズ状態であるかを判定する。
【0049】
また、
図4に示すように、ホルダ42には2つの電気接点33a、33bが設けられている。温度検出器31の一端は電気接点33aに、他端は電気接点33bにそれぞれ接続されており。また、挿入検知スイッチ32に接続された2本の信号線のうち、1本は電気接点33bに接続されている。つまり、温度検出器31と挿入検知スイッチ32とは、電気接点33bを介して直列に接続されている。また、挿入検知スイッチ32に接続されたもう1本の信号線は信号線72bであり、コントローラ70に接続されている。なお、
また、電気接点33aには別の信号線が接続されており、この信号線は演算部34に接続されている。
図4に示す例では、温度検出器31と挿入検知スイッチ32と演算部34とが直列に接続されている。また、演算部34は、信号線72aを介してコントローラ70に接続されている。
【0050】
つまり、状態検出回路30とコントローラ70とは閉回路をなすように直列に接続されている。
【0051】
コントローラ70は、演算部34の出力結果を受け取って、レーザヘッド50を保護するようにレーザ発振器80の動作を制御する。具体的には、保護ガラス41の温度で代表されるレーザヘッド50の温度が所定の範囲から外れている場合、コントローラ70は、図示しない電源に停止信号を送って、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させる。また、挿入検知スイッチ32の状態がクローズ状態である場合も、コントローラ70は、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させる。以下、このことについてさらに説明する。
【0052】
[レーザヘッドの保護手順]
図5は、温度検出器の出力信号の時間応答を示す図である。
図6は、レーザヘッドの一定期間での温度変化量を説明する図である。
図7は、保護ガラスの汚れの有無によるレーザヘッドの温度の時間変化の違いを示す図である。
図8は、レーザヘッドの保護手順を示すフローチャートである。なお、
図5~7において、縦軸である温度検出器31の出力信号は、温度に換算されている。
【0053】
まず、温度検出器31の出力信号の時間応答について説明する。
【0054】
レーザヘッド50の温度が所定の温度まで上昇した場合、それ以上に温度が上昇すると、前述したようにレーザヘッド50が焼損するおそれがある。この焼損を防止するために、例えば、コントローラ70がレーザ発振器80でのレーザ発振を停止させ、レーザ光LBがレーザヘッド50に入射されるのを停止する。このときの温度を発振停止設定温度Ts(以下、単に設定温度Tsまたは第1しきい値Tsという。)とする。
【0055】
一方、温度検出器31の出力信号は、一定の周期S毎に演算部34で温度に換算される。
図5に示すように、温度検出器31の出力信号が温度に換算された直後に、保護ガラス41の実際の温度が設定温度Tsに達した場合、次の温度換算のタイミングまでは少なくともレーザ発振が継続され、保護ガラス41,ひいてはレーザヘッド50の温度がオーバーシュートして、設定温度Tsよりも高くなってしまう。
【0056】
このオーバーシュートの度合いは、保護ガラス41の表面の汚れ具合に依存する。保護ガラス41の表面に付着した飛散物の量が多い程、オーバーシュート量、言い換えると一定期間(周期S)でのレーザヘッド50の温度変化量(以下、温度変化量ΔTという(
図6参照))は大きくなる。
【0057】
よって、
図7に示すように、保護ガラス41に汚れが無い場合のレーザヘッド50の温度変化量を温度変化量ΔTsとすると、保護ガラス41に汚れがある場合のレーザヘッド50の温度変化量ΔTは、温度変化量ΔTsよりも大きくなる。
【0058】
このことを利用すると、温度Tや温度変化量ΔTに基づいて、保護ガラス41の汚れ具合を間接的に評価できる。また、レーザヘッド50の温度上昇の度合い等を予測できる。例えば、温度検出器31でレーザヘッド50の温度の時間変化を測定し、温度変化量ΔTが式(1)に示す関係を満たす場合は、コントローラ70がレーザ発振器80でのレーザ発振を停止させるようにする。なお、定数αは、α≧0を満たす値であり、適宜設定される。また、以降の説明において、(ΔTs+α)を第2しきい値と呼ぶことがある。
【0059】
ΔT>ΔTs+α ・・・(1)
以上を踏まえて、
図8を参照しながら、本実施形態におけるレーザヘッド50の保護手順を説明する。
【0060】
まず、コントローラ70からレーザ発振器80に対してレーザ発振指令が出力される(ステップS1)。
【0061】
次に、演算部34は状態検出回路30がオープン状態であるか、クローズ状態であるかを判定する(ステップS2)。実際には、演算部34は、挿入検知スイッチ32の出力信号に基づいて、シールドユニット40が筐体51に正しく装着されているか否かを判定する。
【0062】
ステップS2での判定結果がクローズ状態である場合、言い換えると、シールドユニット40が筐体51に正しく装着されていると判定されれば、ステップS3に進む。一方、ステップS2での判定結果がオープン状態である場合、言い換えると、シールドユニット40が筐体51に正しく装着されていないと判定されれば、演算部34は、挿入エラー信号として第1エラー信号をコントローラ70に出力し(ステップS9)、コントローラ70は、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させる(ステップS12)。
【0063】
ステップS3では、レーザ発振指令を受けて、レーザ発振器80でレーザ発振が開始する。発生したレーザ光LBは光ファイバ90を通ってレーザヘッド50に導光される。
【0064】
ステップS3の実行後、演算部34は、温度検出器31の出力信号を温度に換算して、レーザヘッド50の温度Tを測定する(ステップS4)。また、演算部34は、周期Sが経過する毎に温度変化量ΔTを導出する(ステップS5)。なお、ステップS4、S5は、実際には演算部34で並行して実行される。
【0065】
次に、演算部34は、ステップS5で導出した温度変化量ΔTが式(1)に示す関係を満たすか否か、言い換えると、当該温度変化量ΔTが第2しきい値(=ΔTs+α)を超えたか否かを判定する(ステップS6)。
【0066】
ステップS6での判断結果が否定的な場合、すなわち、温度変化量ΔTが第2しきい値を超えていない場合、レーザヘッド50の温度が急激に上昇して焼損等が生じるおそれが低いと判断される。この場合は、ステップS7に進む。
【0067】
一方、ステップS6での判断結果が肯定的な場合、すなわち、温度変化量ΔTが第2しきい値を超えて、レーザヘッド50の焼損等が生じるおそれが高いと判断される場合は、演算部34は温度エラー信号として第2エラー信号をコントローラ70に出力する(ステップS10)。コントローラ70は、第2エラー信号が入力されると、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させる(ステップS13)。
【0068】
演算部34は、さらに、ステップS4で導出した温度Tが第1しきい値(=Ts)を超えたか否かを判定する(ステップS7)。なお、ステップS7は、ステップS6の前に実行してもよい。
【0069】
ステップS7での判断結果が否定的な場合、すなわち、温度Tが第1しきい値を超えていない場合、レーザヘッド50の焼損等が生じるおそれが低いと判断される。この場合は、ステップS8に進む。
【0070】
一方、ステップS7での判断結果が肯定的な場合、すなわち、温度Tが第1しきい値を超えて、レーザヘッド50の焼損等が生じるおそれが高いと判断される場合は、演算部34は温度エラー信号として第2エラー信号をコントローラ70に出力する(ステップS11)。コントローラ70は、第2エラー信号が入力されると、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させる(ステップS13)。
【0071】
ステップS8では、ステップS2と同様の判定を再度実行する。つまり、ステップS8での判定結果がクローズ状態である場合、ステップS9に進み、レーザ光LBの照射を続行する。さらに、ステップS4に戻って、所定のレーザ加工が終了するまで一連の処理を繰り返す。
【0072】
一方、ステップS8での判定結果がオープン状態である場合、演算部34は、挿入エラー信号として第1エラー信号をコントローラ70に出力し(ステップS12)、コントローラ70は、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させる(ステップS13)。
【0073】
レーザ加工装置100の使用中にレーザヘッド50はワークWにおける溶接線に沿って移動する。この移動の途中に移動速度が高すぎると、筐体51に対するシールドユニット40の装着状態が変化することがある。また、移動の途中にレーザヘッド50に衝撃が加わった場合にも、筐体51に対するシールドユニット40の装着状態が変化することがある。ステップS8では、レーザ加工の途中でこのような装着状態の変化が生じているか否かを再度チェックしている。
【0074】
また、ステップS13でレーザ発振を停止した後は、レーザ加工装置100全体を停止させ、エラー原因を調査、点検する。例えば、温度エラーの原因が保護ガラス41の汚れであれば、保護ガラス41を清掃するか交換する。あるいは、シールドユニット40ごと交換する。
【0075】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るレーザヘッド50は、受け取ったレーザ光LBをワークWに向けて照射する。レーザヘッド50は、内部に複数の光学部品を有する筐体51と、シールドユニット40と、状態検出回路30とを少なくとも備えている。
【0076】
状態検出回路30は、レーザヘッド50の温度に関する状態と筐体51に対するシールドユニット40の装着状態とを検出する。状態検出回路30は、温度検出器31と挿入検知スイッチ32と演算部34とを少なくとも有している。
【0077】
シールドユニット40は、筐体51に対して着脱可能に取り付けられ、保護ガラス41と、保護ガラス41を保持するホルダ42とを有している。
【0078】
ホルダ42には、レーザヘッド50の温度を検出する温度検出器31が取り付けられている。また、温度検出器31は、保護ガラス41の近傍に配置されている。
【0079】
筐体51には、筐体51に対するシールドユニット40の装着状態を検出する挿入検知スイッチ32が取り付けられている。
【0080】
演算部34は、温度検出器31の出力信号に基づいてレーザヘッド50の温度を算出する。温度検出器31と挿入検知スイッチ32とは直列に接続されている。
【0081】
本実施形態によれば、簡便な構成で確実にレーザヘッド50の温度上昇を抑制できる。このことにより、レーザヘッド50の焼損等が発生するのを防止できる。
【0082】
また、前述したように、保護ガラス41に飛散物が付着していると、飛散物がレーザ光LBを吸収する。このため、レーザ光LBがレーザヘッド50から出射されている期間では、保護ガラス41がレーザヘッド50の内部で最も発熱する箇所となる。
【0083】
一方、本実施形態によれば、保護ガラス41を保持するホルダ42に温度検出器31を配置し、ホルダ42の温度を直接測定している。よって、レーザヘッド50全体の温度が上昇するよりも前に、温度検出器31で測定された温度に基づいて、レーザ光LBがワークWに照射されるのを停止できる。また、このことにより、レーザヘッド50の焼損等が発生するのを防止できる。
【0084】
また、特許文献1~4に示す従来の構成が有する課題、例えば、ワークWの加工品質低下や溶込み深さの不足等が生じるおそれが無い。なお、特許文献1~4に示す従来の構成において、本実施形態に示す状態検出回路30やレーザヘッド50を適用することは可能である。
【0085】
また、
図1に示すように、多関節軸ロボットであるマニピュレータ60にレーザヘッド50を取り付けてレーザ加工を行う場合、コントローラ70とレーザヘッド50とを接続する信号線72a、72bが長くなる。通常は、これらの信号線の長さが1mを超える。また、信号線72a、72bが収容されるケーブルは、レーザヘッド50が移動する際に屈曲するが、内部の信号線が断線しないようにフレキシビリティと強度とを両立させる必要がある。しかし、内部に収容する配線本数が多くなると、ケーブルが太くなり、レーザヘッド50の小型化が阻害される。
【0086】
例えば、温度検出器31と挿入検知スイッチ32とが、それぞれ独自に設けられた信号線を介して基板ボックス20、さらにコントローラ70に接続される場合、前述したケーブルが太くなってしまう。
【0087】
一方、本実施形態によれば、状態検出回路30において、温度検出器31と挿入検知スイッチ32とを直列に接続することで、コントローラ70とレーザヘッド50とを接続する信号線の本数を少なくできる。このことにより、前述したケーブルが太くなるのを防止して、レーザヘッド50を小型化できる。マニピュレータ60が、小型ロボットまたは中型ロボットである場合、この効果は顕著である。
【0088】
また、本実施形態によれば、状態検出回路30の省スペース化が図れ、状態検出回路30を含むレーザヘッド50の製造コストを低減できる。
【0089】
シールドユニット40には、温度検出器31と挿入検知スイッチ32との電気接点33a、33bが設けられているのが好ましい。このようにすることで、温度検出器31と挿入検知スイッチ32とを確実に電気的に接続することができる。
【0090】
また、電気接点33a、33bは、シールドユニット40における発熱部、つまり、保護ガラス41と熱的に分離されているのが好ましい。このようにすることで、電気接点33a、33bを介して挿入検知スイッチ32に熱が流入し、その動作特性が変動するのを抑制できる。
【0091】
また、本実施形態に示すように、温度検出器31として熱電対を用いる場合、通常、補償導線を介して、基板ボックス20の演算部34に熱電対が接続される。補償導線は、熱電対とほぼ同等の熱起電力特性の金属を使用した導線である。熱電対と補償導線との接続点と、補償導線と基板ボックス20との接続点との間に温度差がある場合、補償導線により当該温度差が保証される。
【0092】
本実施形態では、熱電対である温度検出器31の両端が、電気接点33a、33bに接続され、電気接点33a、33bは、保護ガラス41と熱的に分離されている。このため、補償導線をシールドユニット40の内部のみで使用しても、温度検出器31の出力信号が大きく変動することが無く、演算部34によって算出される温度と実際のシールドヘッド50の温度との差を小さくできる。なお、当該補償導線は、熱容量を小さくするため、線径の細い導電を用いることが好ましい。
【0093】
なお、温度検出器31として熱電対を用いる場合、応答速度を高められるため、レーザヘッド50の温度が急激に上昇した場合にも、これを確実に検出して、レーザヘッド50の焼損等が起こるのを防止できる。
【0094】
また、演算部34は、算出したレーザヘッド50の温度を補償導線の長さに応じて補正するのが好ましい。前述したように、本実施形態において、補償導線は、シールドユニット40の内部のみに設けられる。このため、補償導線の長さが、熱電対と補償導線との接続点と、補償導線と基板ボックス20との接続点との間の温度差を補償するのに十分でないことがある。
【0095】
このような場合に、演算部34がレーザヘッド50の温度を補償導線の長さに応じて補正するようにすれば、レーザヘッド50の温度の算出精度を高めることができる。
【0096】
また、演算部34は、挿入検知スイッチ32の出力信号に基づいて、シールドユニット40が筐体51に正しく装着されているか否かを判定する。当該判定結果が否定的な場合、演算部34は、挿入エラー信号として第1エラー信号を出力する。
【0097】
シールドユニット40が筐体51に正しく装着されていない場合、スパッタやヒューム等の飛散物が筐体51の内部に入り込み、コリメーションレンズ10やフォーカスレンズ11等の光学部品に付着するおそれがある。このようなことが起こると、ワークWへのレーザ光LBの照射が妨げられるだけでなく、付着した飛散物がレーザ光LBを吸収し、光学部品が発熱、損傷するおそれがある。
【0098】
本実施形態によれば、演算部34が第1エラー信号を出力し、挿入エラーをコントローラ70または図示しない報知部等に通知することにより、加工作業者等が、前述した課題が発生するおそれがあることを確実に認識できる。
【0099】
また、演算部は、温度検出器31の出力信号に基づいて、所定の期間におけるレーザヘッド50の温度変化量ΔTが第2しきい値(=ΔTs+α)を超えたか否かを判定する。なお、本実施形態における所定の期間は、前述の周期Sに相当する。
【0100】
当該判定結果が肯定的な場合、演算部34は、温度エラー信号として、第2エラー信号を出力する。
【0101】
温度変化量ΔTが第2しきい値を超える場合は、保護ガラス41の汚れが急速に進行している予兆であると考えられる。この状態が続くと、レーザヘッド50の温度が急激に上昇して焼損等が生じるおそれがある。
【0102】
したがって、本実施形態に示すように、温度変化量ΔTが第2しきい値を超えた場合、演算部34が第2エラー信号を出力し、温度エラーをコントローラ70または図示しない報知部等に通知することにより、加工作業者等が、前述した課題が発生するおそれがあることを確実に認識できる。
【0103】
また、演算部34は、温度検出器31の出力信号に基づいて、レーザヘッド50の温度が第1しきい値(=Ts)を超えたかであるか否かを判定する。
【0104】
当該判定結果が肯定的な場合、演算部34は、温度エラー信号として第2エラー信号を出力すること。
【0105】
温度Tが第1しきい値を超える場合は、保護ガラス41の汚れが既に進んでおり、レーザヘッド50の温度が許容値を超えていると考えられる。この場合、レーザヘッド50の焼損等が生じるおそれがある。
【0106】
したがって、本実施形態に示すように、温度Tが第1しきい値を超えた場合、演算部34が第2エラー信号を出力し、温度エラーをコントローラ70または図示しない報知部等に通知することにより、加工作業者等が、前述した課題が発生するおそれがあることを確実に認識できる。
【0107】
本実施形態に係るレーザ加工装置100は、レーザ光LBを発生させるレーザ発振器80と、レーザヘッド50と、少なくともレーザ発振器80の動作を制御するコントローラ70と、を少なくとも備えている。
【0108】
レーザ加工装置100をこのように構成することで、レーザヘッド50の温度や、筐体51に対するシールドユニット40の装着状態をモニターしつつ、レーザ加工を行うことができる。
【0109】
演算部34から出力された第1エラー信号または第2エラー信号をコントローラ70が受信した場合、コントローラ70は、レーザヘッド50からワークWにレーザ光LBが照射されるのを停止する。
【0110】
また、演算部34から出力された第2エラー信号をコントローラ70が受信した場合、コントローラ70は、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させる。
【0111】
第1エラー信号または第2エラー信号をコントローラ70が受信した場合、レーザヘッド50の温度が上昇して、内部の光学部品やレーザヘッド50自体が焼損するおそれがあると推定される。
【0112】
本実施形態では、このような場合に、コントローラ70が、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させることで、レーザヘッド50の温度が上昇するのを防止している。
【0113】
特に、第2エラー信号をコントローラ70が受信した場合、レーザヘッド50の温度が既に上昇しているため、レーザ発振を停止して、レーザヘッド50の温度が低下するようにするのが好ましい。
【0114】
本実施形態に係るレーザヘッド50の保護方法は、以下の第1~第6ステップを少なくとも備えている。
【0115】
第1ステップでは、ワークWへのレーザ光LBの照射前に、演算部34は、状態検出回路30がオープン状態であるか、またはクローズ状態であるかを判定する(
図8のステップS2)。さらに言うと、演算部34は、筐体51に対してシールドユニット40が正しく装着されているか否かを判定する。
【0116】
第2ステップでは、ワークWへのレーザ光LBの照射を開始する(
図8のステップS3)。
【0117】
第3ステップでは、温度検出器31により、レーザヘッド50の温度Tを測定する(
図8のステップS4)。
【0118】
第4ステップでは、温度検出器31の出力信号に基づいて、演算部34が、所定の期間におけるレーザヘッド50の温度変化量ΔTを導出する(
図8のステップS5)。
【0119】
第5ステップでは、演算部34は、温度変化量ΔTが第2しきい値を超えたか否かを判定する(
図8のステップS6)。
【0120】
第6ステップでは、演算部34は、温度Tが第1しきい値を超えたか否かを判定する(
図8のステップS7)。
【0121】
第1ステップで、状態検出回路30がクローズ状態である場合は、第2ステップ以降の処理を続行し、オープン状態である場合は、ワークWへのレーザ光LBの照射を停止する(
図8のステップS13)。
【0122】
第5ステップの判定結果が肯定的、つまり、温度変化量ΔTが第2しきい値を超えた場合は、ワークWへのレーザ光LBの照射を停止する(
図8のステップS13)。
【0123】
第6ステップの判定結果が肯定的、つまり、温度Tが第1しきい値を超えた場合は、ワークWへのレーザ光LBの照射を停止する(
図8のステップS13)。
【0124】
第5ステップ及び第6ステップの判定結果がいずれも否定的な場合は、ワークWへのレーザ光LBの照射を続行する(
図8のステップS9)。
【0125】
このようにすることで、確実にレーザヘッド50の温度上昇を抑制できる。このことにより、レーザヘッド50の焼損等が発生するのを防止して、レーザヘッド50を保護できる。
【0126】
このレーザヘッド50の保護方法は、第7ステップをさらに備えていてもよい。
【0127】
第7ステップでは、第6ステップの実行後に、第1ステップと同様に、演算部34が、状態検出回路30がオープン状態であるか、またはクローズ状態であるかを判定する(
図8のステップS8)。
【0128】
第7ステップで、状態検出回路30がクローズ状態である場合は、ワークWへのレーザ光LBの照射を続行し(
図8のステップS9)、オープン状態である場合は、ワークWへのレーザ光LBの照射を停止する(
図8のステップS13)。
【0129】
第7ステップを設けることにより、レーザ加工中にレーザヘッド50に衝撃が加わる等して、筐体51に対するシールドユニット40の装着状態が変化した場合にも、これを確実に検知し、レーザヘッド50の焼損等が発生するのを防止して、レーザヘッド50を保護できる。
【0130】
(実施形態2)
実施形態1では、温度検出器31として熱電対を用いる例を示したが、温度検出器31は、他の種類の素子であってもよい。例えば、温度検出器31は、測温用の抵抗体であってもよいし、バイメタルを用いたサーモスタットであってもよい。
【0131】
後者の場合、レーザヘッド50の温度が所定のしきい値を超えたか否かしか検知できないが、レーザヘッド50の温度上昇、ひいてはレーザヘッド50の焼損等のリスクを防止するという点では有用である。なお、この場合のしきい値は、実施形態1に示した設定温度Tsと同じであってもよい。また、温度検出器31の動作安定性を考慮して、当該しきい値が設定温度Tsよりも低い値であってもよい。
【0132】
図9は、実施形態2に係るレーザヘッドの保護手順を示すフローチャートであり、温度検出器31は、バイメタルを用いたサーモスタットである。
【0133】
図9に示すステップS21~S23、S26~S28、S30は、
図8に示すステップS1~S3、S8~S10、S13とそれぞれ同様の処理であるため、説明を省略する。
【0134】
また、
図9に示すフローチャートでは、
図8に示すステップS5、S6は省略されている。本実施形態の温度検出器31では、温度変化量ΔTを評価できないためである。
【0135】
また、
図9では、説明の便宜上、ステップS24とステップS25とを区別しているが、実際には、これらは一体の処理である。つまり、温度検出器31でレーザヘッド50の温度Tを測定し、温度Tがしきい値以下であれば、バイメタルの接点は当初の状態を維持する。温度Tがしきい値を超えれば、状態が変化する。当初、接点が接触していれば、温度Tがしきい値を超えた時点で接点が開く。当初、接点が開いていれば、温度Tがしきい値を超えた時点で接点が接触する。
【0136】
また、ステップS25で、温度Tがしきい値を超えた場合、演算部34は第3エラー信号を出力する(ステップS29)。
【0137】
また、
図9に示すように、ステップS28で、挿入検知スイッチ32の出力信号に基づいて、演算部34が、筐体51に対してシールドユニット40が正しく装着されていないと判定した場合も、演算部34は第3エラー信号を出力する(ステップS29)。
【0138】
言い換えると、本実施形態のレーザヘッド50において、演算部34は、状態検出回路30がクローズ状態であるか、またはオープン状態であるかを判定する。状態検出回路30がオープン状態である場合、演算部34は第3エラー信号を出力する。
【0139】
また、本実施形態のレーザヘッド50において、レーザヘッド50からレーザ光LBが照射されている期間に第3エラー信号が出力された場合、演算部34は、レーザヘッド50の温度が所定のしきい値を超えていると判定する。
【0140】
一方、レーザヘッド50からレーザ光LBが照射されていない期間に第3エラー信号が出力された場合、演算部34は、シールドユニット40が筐体51に正しく装着されてないと判定する。
【0141】
また、レーザ加工装置100において、演算部34から出力された第3エラー信号をコントローラ70が受信した場合、コントローラ70は、レーザヘッド50からワークWにレーザ光LBが照射されるのを停止する。具体的には、コントローラ70は、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させる。
【0142】
本実施形態によれば、実施形態1に示した構成が示すのと同様の効果を奏することができる。つまり、確実にレーザヘッド50の温度上昇を抑制できる。このことにより、レーザヘッド50の焼損等が発生するのを防止して、レーザヘッド50を保護できる。
【0143】
また、コントローラ70が、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させることで、レーザヘッド50の温度上昇、ひいてはレーザヘッド50の焼損等の発生を防止することができる。
【0144】
また、第3エラー信号の出力タイミングとレーザ光LBの発生状態とから、第3エラー信号が挿入エラー信号であるか、または温度エラー信号であるかを簡単に判別できる。このようにすることで、演算部34から出力される信号の種類を減らすことができる。
【0145】
また、本実施形態のレーザヘッド50の保護方法は、以下の第8~第12ステップを少なくとも備えている。
【0146】
第8ステップ(
図9のステップS22)では、ワークWへのレーザ光LBの照射前に、状態検出回路30がオープン状態であるか、またはクローズ状態であるかを判定する。
【0147】
第9ステップ(
図9のステップS23)では、ワークWへのレーザ光LBの照射を開始する。
【0148】
第10ステップ(
図9のステップS24)では、温度検出器31により、レーザヘッド50の温度を測定する。
【0149】
第11ステップ(
図9のステップS25)では、レーザヘッド50の温度Tがしきい値を超えたか否かを判定する。
【0150】
第12ステップ(
図9のステップS26)では、第11ステップの実行後に、状態検出回路30がオープン状態であるか、またはクローズ状態であるかを判定する。
【0151】
第8ステップにおいて、状態検出回路30がクローズ状態である場合は、第9ステップ以降の処理を続行し、状態検出回路30がオープン状態である場合は、ワークWへのレーザ光LBの照射を停止する(ステップS30)。
【0152】
第11ステップの判定結果が肯定的である場合、つまり、レーザヘッド50の温度Tがしきい値を超えた場合は、ワークWへのレーザ光LBの照射を停止する。一方、第11ステップの判定結果が否定的である場合、つまり、レーザヘッド50の温度Tがしきい値を超えていない場合は、第12ステップを実行する。
【0153】
第12ステップで、状態検出回路30がクローズ状態であると判定された場合は、ワークWへのレーザ光LBの照射を続行する(ステップS27)。状態検出回路30がオープン状態であると判定された場合は、ワークWへのレーザ光LBの照射を停止する(ステップS27)。
【0154】
本実施形態によれば、実施形態1に示した方法と同様の効果を奏することができる。つまり、確実にレーザヘッド50の温度上昇を抑制できる。このことにより、レーザヘッド50の焼損等が発生するのを防止して、レーザヘッド50を保護できる。また、レーザ発振器80でのレーザ発振を停止させることで、レーザヘッド50の温度上昇、ひいてはレーザヘッド50の焼損等の発生を防止することができる。
【0155】
なお、本実施形態で用いられる温度検出器31は、レーザヘッド50の温度Tがしきい値を超えたか否かを検出できる構造であればよく、前述した抵抗体や形状記憶合金等であってもよい。
【0156】
(その他の実施形態)
実施形態1において、温度検出器31は、光出射口51bに近い側に配置されたシールドユニット40に取り付けられている。ただし、特にこれに限定されず、光出射口51bから遠い側に配置されたシールドユニット40に温度検出器31が取り付けられていてもよい。また、両方のシールドユニット40に温度検出器31が取り付けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本開示のレーザヘッドは、簡便な構成で確実に自身の温度上昇を抑制できるため、有用である。
【符号の説明】
【0158】
10 コリメーションレンズ
11 フォーカスレンズ
20 基板ボックス
30 状態検出回路
31 温度検出器
32 挿入検知スイッチ
33a、33b 電気接点
34 演算部
40 シールドユニット
41 保護ガラス
42 ホルダ
50 レーザヘッド
51 筐体
51a 光入射口
51b 光出射口
60 マニピュレータ
70 コントローラ
80 レーザ発振器
90 光ファイバ
100 レーザ加工装置
LB レーザ光
W ワーク