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特開2024-174650信号増幅回路およびこれを備えたセンサ信号処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174650
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】信号増幅回路およびこれを備えたセンサ信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/34 20060101AFI20241210BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H03F3/34 220
H03F3/34 210
H03F3/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092584
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田 明宏
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA11
5J500AA51
5J500AC13
5J500AF15
5J500AF18
5J500AH10
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH39
5J500AK02
5J500AK05
5J500AK17
5J500AK18
5J500AK33
5J500AK34
5J500AK47
5J500AM13
5J500AM21
5J500AS15
5J500AT01
5J500AT02
5J500AT06
(57)【要約】
【課題】オートゼロ方式のアンプの入力オフセット電圧の補正に関して、さらなる検討の余地があった。
【解決手段】信号増幅回路(X)は、第1アンプ(1)と、補正回路(2x)と、を備えるオートゼロ方式の信号増幅回路である。第1アンプ(1)は、入力信号(Vin)を増幅するように構成されている。補正回路(2x)は、第1アンプ(1)の第1入力オフセット電圧(Vofs1)を補正するように構成されている。信号増幅回路(X)は、第1アンプ(1)の出力信号(Vout)の飽和状態を検出して、第1アンプ(1)の第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正動作を停止するように補正回路(2x)を制御するように構成された補正制御回路(5)を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅するように構成された第1アンプと、
前記第1アンプの第1入力オフセット電圧を補正するように構成された補正回路と、
を備えるオートゼロ方式の信号増幅回路であって、
前記第1アンプの出力信号の飽和状態を検出して、前記第1アンプの前記第1入力オフセット電圧の補正動作を停止するように前記補正回路を制御するように構成された補正制御回路と、
を備える信号増幅回路。
【請求項2】
前記第1アンプは、
前記入力信号を受けて第1内部信号を生成する入力段と、
前記第1内部信号を受けて第2内部信号を生成するように構成された利得段と、
前記第2内部信号を受けて前記出力信号を生成するように構成された出力段と、
を含み、
前記補正制御回路は、前記第2内部信号に基づいて前記出力信号の飽和状態を検出する請求項1に記載の信号増幅回路。
【請求項3】
前記補正制御回路は、
電源基準の前記第2内部信号を受けてグランド基準の第3内部信号を生成するように構成されたレベルシフタと、
前記第3内部信号に基づいて前記出力信号の飽和状態を検出するように構成された飽和状態検出回路と、
を含む請求項2に記載の信号増幅回路。
【請求項4】
前記レベルシフタは、
電圧信号である前記第2内部信号を受けて所定の電流信号を生成するように構成された電圧電流変換回路と、
前記電圧電流変換回路の出力端と接地端との間に接続された抵抗と、
を含み、
前記第3内部信号は、前記電流信号によって前記抵抗の両端間に発生する電圧に応じた信号である請求項3に記載の信号増幅回路。
【請求項5】
前記補正回路は、
第1キャパシタおよび第2キャパシタと、
差動入力信号を受けて、前記第1キャパシタおよび前記第2キャパシタを充放電するように構成された第2アンプと、
前記第1キャパシタおよび前記第2キャパシタの充放電状態を切り換えるように構成されたスイッチ回路と、
を含み、
前記スイッチ回路は、
前記第2アンプの差動入力端を短絡した状態で前記第2アンプの出力により前記第1キャパシタを充放電する第1状態と、
前記第2アンプに前記入力信号を入力した状態で前記第2アンプの出力により前記第2キャパシタを充放電する第2状態と、
を含み、
前記第1アンプは、前記第2キャパシタの充電電圧に応じて前記第1入力オフセット電圧を補正する機能を備え、
前記第2アンプは、前記第1キャパシタの充電電圧に応じて前記第2アンプの第2入力オフセット電圧を補正する機能を備える、請求項1に記載の信号増幅回路。
【請求項6】
前記補正制御回路は、前記出力信号の飽和状態を検出すると、前記第2キャパシタを放電するように前記スイッチ回路を制御する請求項5に記載の信号増幅回路。
【請求項7】
前記補正制御回路は、前記出力信号の飽和状態を検出すると、前記差動入力端を短絡した状態で前記第2アンプの出力により前記第1キャパシタを充放電しつつ、前記第2キャパシタを放電するように前記スイッチ回路を制御する請求項6に記載の信号増幅回路。
【請求項8】
前記スイッチ回路は、前記補正制御回路が前記出力信号の飽和状態を検出していない状態で、前記補正回路の状態を、前記第1状態と前記第2状態とに交互に繰り返し切り替える請求項5から7のいずれかに記載の信号増幅回路。
【請求項9】
前記入力信号は、監視対象電流に応じた電流検出信号である、請求項1から7のいずれかに記載の信号増幅回路。
【請求項10】
前記入力信号を生成するセンサと、
請求項1から7のいずれかに記載の信号増幅回路と、
を含むセンサ信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号増幅回路およびこれを備えたセンサ信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号増幅回路として、オートゼロ方式を採用するものがある。このような信号増幅回路は、メインアンプと、補正用アンプと、複数のコンデンサとを含んで構成されている。
【0003】
オートゼロ方式の信号増幅回路は、補正用アンプと各コンデンサの信号経路を切り替えて各コンデンサを充放電し、各コンデンサの充電電圧によって各アンプの入力オフセット電圧を補正するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-006637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなオートゼロ方式のアンプは、入力オフセット電圧の補正に関して、さらなる検討の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に開示されている信号増幅回路は、第1アンプと、補正回路と、を備えるオートゼロ方式の信号増幅回路である。第1アンプは、入力信号を増幅するように構成されている。補正回路は、第1アンプの第1入力オフセット電圧を補正するように構成されている。信号増幅回路は、第1アンプの出力信号の飽和状態を検出して、第1アンプの第1入力オフセット電圧の補正動作を停止するように補正回路を制御するように構成された補正制御回路を備える。
【0007】
本明細書中に開示されているセンサ信号処理装置は、入力信号を生成するセンサと、上記構成の信号増幅回路と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本明細書中に開示されている信号増幅回路によれば、入力オフセット電圧の補正に関して、より好適なものになる。
【0009】
また、本明細書中に開示されているセンサ信号処理装置によれば、入力オフセット電圧の補正に関して、より好適なセンサ信号処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1状態の比較例の信号増幅回路を示すブロック図である。
図2図2は、第2状態の比較例の信号増幅回路を示すブロック図である。
図3図3は、帰還制御によって差動入力信号に応じて出力信号が変化することを示したグラフである。
図4図4は、差動入力信号と、出力信号と、各スイッチの両端間に生じる電圧と、第2キャパシタの充電電圧を示すタイミングチャートである。
図5図5は、本開示の信号増幅回路を示すブロック図である。
図6図6は、第1アンプの内部の構成を示したブロック図である。
図7図7は、差動入力信号と、出力信号と、ハイサイド信号の電圧レベルと、各スイッチの両端間に生じる電圧と、第2キャパシタの充電電圧を示すタイミングチャートである。
図8図8は、第2実施形態に係る信号増幅回路の補正制御回路を示すブロック図である。
図9図9は、センサモジュールを示すブロック図である。
図10図10は、電流検出アンプの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<比較例の信号増幅回路Y>
初めに、信号増幅回路Yについて、本開示の信号増幅回路Xとの比較例(=後出の本開示の実施形態と対比される構成)として図1から図3を用いて説明する。図1は、第1状態の比較例の信号増幅回路Yを示すブロック図である。図2は、第2状態の比較例の信号増幅回路Yを示すブロック図である。
【0012】
信号増幅回路Yは、複数の要素を集積化した集積回路(IC[Integrated Circuit])である。図1図2に示すように、信号増幅回路Yは、外部との電気的な接続を確立するための手段として、複数の外部端子(本図に即して述べると、例えば、入力端INP、INM、出力端OUT)を有する。
【0013】
信号増幅回路Yは、入力端INP、INMに供給される差動入力信号Vin(=入力信号Vinp、Vinmの差電圧)を反転増幅して出力端OUTから出力信号Voutを出力する。
【0014】
信号増幅回路Yには、抵抗20~23が外付けされている。入力信号Vinpは、抵抗20を介して入力端INPに入力される。入力信号Vinmは、抵抗21を介して入力端INMに入力される。出力端OUTと入力端INMが抵抗22を介して短絡して、出力信号Voutに応じた帰還経路を形成している。入力端INPには、バイアス電圧として、抵抗23を介した参照電圧Vrefが入力される。信号増幅回路Yについて、詳細には次の通りである。
【0015】
信号増幅回路Yは、第1アンプ1と、補正回路2yと、を備える。
【0016】
第1アンプ1は、差動入力信号Vinを増幅して出力信号Voutを生成するように構成されたオペアンプである。入力端INPが第1アンプ1の非反転入力端(+)に接続され、入力端INMが第1アンプ1の反転入力端(-)に接続されている。第1アンプ1の出力は、出力端OUTに入力される。
【0017】
第1アンプ1には、入力オフセット電圧が生じている。第1アンプ1の入力オフセット電圧を、第1入力オフセット電圧Vofs1とする。
【0018】
第1アンプ1は、オフセット調整端子PT1を有する。第1アンプ1は、オフセット調整端子PT1に入力される電圧に基づいて、第1入力オフセット電圧Vofs1を補正する機能を有している。
【0019】
補正回路2yは、第1入力オフセット電圧Vofs1を補正するように構成されている。より詳細には、補正回路2yは、第1アンプ1が第1入力オフセット電圧Vofs1を補正するために必要な電圧を生成して、オフセット調整端子PT1に入力するように構成されている。具体的には、次の通りである。
【0020】
補正回路2yは、第2アンプ3と、第1キャパシタC1と、第2キャパシタC2と、スイッチ回路4yと、スイッチコントローラー15yと、を含んで構成されている。
【0021】
第2アンプ3は、差動入力信号を受けて第1キャパシタC1および第2キャパシタC2を充放電するように構成されたオペアンプである。第2アンプ3は、オフセット調整端子PT2を有する。第2アンプ3は、オフセット調整端子PT2に入力される電圧に応じて自身の入力オフセット電圧を補正する機能を有している。ここでは、第2アンプ3の入力オフセット電圧を第2入力オフセット電圧Vofs2とし、図1においても第2入力オフセット電圧Vofs2として模式的に示している。
【0022】
スイッチ回路4yは、スイッチ40~43を含んでいる。スイッチ回路4yは、後述する第1状態と第2状態とに切り替え可能に構成されている。スイッチ40、42は、後述するスイッチ制御信号SW1によってオン/オフを制御される。スイッチ41、43は、後述するスイッチ制御信号SW2によってオン/オフを制御される。
【0023】
第2アンプ3の非反転入力端(+)は、スイッチ41を介して入力端INPに接続されている。第2アンプ3の反転入力端(-)は、入力端INMに接続されている。スイッチ40は、第2アンプ3の非反転入力端(+)と、第2アンプ3の反転入力端(-)との間に接続されている。第2アンプ3の出力端は、スイッチ42を介して第1キャパシタC1と、スイッチ43を介して第2キャパシタC2と、に、並列に接続されている。
【0024】
第1キャパシタC1の第1端は、オフセット調整端子PT2に接続されている。第1キャパシタC1の第2端は、接地端に接続されている。第2キャパシタC2の第1端は、オフセット調整端子PT1に接続されている。第2キャパシタC2の第2端は、接地端に接続されている。
【0025】
ここで、上述した第1状態とは、スイッチ40、42がオン、スイッチ41、43がオフした状態(図1の状態)である。すなわち、第2アンプ3の非反転入力端(+)と反転入力端(-)とが短絡し、第2アンプ3の出力が第1キャパシタC1に入力される状態である。
【0026】
また、上述した第2状態とは、スイッチ40、42がオフ、スイッチ41、43がオンした状態(図2の状態)である。第2状態では、第2アンプ3の非反転入力端(+)に入力信号Vinpが入力され、反転入力端(-)に入力信号Vinmが入力される。換言すると、第2状態での第2アンプ3の差動入力信号は、入力信号Vinpと入力信号Vinpとの差電圧、即ち第1入力オフセット電圧Vofs1となる。また、第2アンプ3の出力は、第2キャパシタC2およびオフセット調整端子PT1に入力される。
【0027】
スイッチコントローラー15yは、不図示のクロック信号を受けて、スイッチ回路4yを第1状態と第2状態とに切り替える。具体的には、スイッチコントローラー15yは、スイッチ制御信号SW1、SW2を生成し、スイッチ回路4yに入力する。スイッチ制御信号SW1は、スイッチ40、42の両方をオン/オフする信号である。スイッチ制御信号SW2は、スイッチ41、43の両方をオン/オフする信号である。スイッチコントローラー15yは、クロック信号がハイレベルのとき、スイッチ回路4yが第1状態になるようスイッチ40~43のオン/オフを制御する。反対に、スイッチコントローラー15yは、クロック信号がローレベルのとき、第2状態になるようにスイッチ40~43のオン/オフを制御する。
【0028】
上述した通り、第1状態では、第2アンプ3の非反転入力端(+)と反転入力端(-)とが短絡している。このため、第2アンプ3の差動入力信号は、第2入力オフセット電圧Vofs2となる。これにより、第2アンプ3は、第2入力オフセット電圧Vofs2に応じた出力よって第1キャパシタC1を充放電する。このときの第1キャパシタC1の充電電圧がオフセット調整端子PT2に入力されることで、第2アンプ3は第2入力オフセット電圧Vofs2をゼロに近づけるように補正する。第2状態を経た後であれば、第1状態においても、第1アンプ1は第2キャパシタC2の充電電圧に応じて第1入力オフセット電圧Vofs1をゼロに近づけるように補正する。
【0029】
第2状態においても、第1キャパシタC1の充電電圧がオフセット調整端子PT2に入力される。これにより、第2アンプ3は、第2入力オフセット電圧Vofs2を略ゼロに補正した状態を維持している。このため、第2アンプ3は、第1入力オフセット電圧Vofs1に応じた出力によって、第2キャパシタC2を充放電する。このときの第2キャパシタC2の充電電圧がオフセット調整端子PT1に入力されることで、第1アンプ1は、第1入力オフセット電圧Vofs1をゼロに近づけるように補正する。
【0030】
このようにスイッチ回路4yを第1状態と第2状態とを交互に切り替えて第1アンプ1および第2アンプ3の電流経路を切り換えつつ第1キャパシタC1および第2キャパシタC2を充放電することで、第1入力オフセット電圧Vofs1を略ゼロに補正することができる。この、スイッチ回路4yを第1状態と第2状態とを切り換えて第1入力オフセット電圧Vofs1を略ゼロに補正する動作を、以下「オートゼロ動作(補正動作)」とも称する。
【0031】
<出力飽和状態に関する考察>
図3は、帰還制御によって差動入力信号Vinに応じて出力信号Voutが変化することを示したグラフである。図3に示すように、差動入力信号Vinの電圧レベルが所定の範囲r1内のとき、出力信号Voutは差動入力信号Vinに追従するようにリニアに変化する。差動入力信号Vinがゼロのとき、出力信号Voutが参照電圧Vrefと一致する。
【0032】
差動入力信号Vinの電圧値が所定の範囲r1内のとき、出力信号Voutから入力信号Vinmへ適切に帰還制御される。差動入力信号Vinの電圧値が範囲r1内のとき、上述した第1入力オフセット電圧Vofs1および第2入力オフセット電圧Vofs2の補正動作も正常になされる。
【0033】
一方、過大な電圧値の差動入力信号Vinが信号増幅回路Yに入力された場合(差動入力信号Vinの電圧レベルが図3に示す範囲r1の外側の範囲r2にある場合)、出力信号Voutが飽和状態となる。飽和状態とは、差動入力信号Vinが変化したとしても出力信号Voutが変化せずに一定の値となっている状態である。出力信号Voutが飽和状態になると、帰還制御が適切に成立しなくなる。すなわち、出力信号Voutがバイアス点(=参照電圧Vref)から乖離してしまい、第1入力オフセット電圧Vofs1が適切に補正されない状態となる。このため、信号増幅回路Yは、出力信号Voutを正常状態に復帰させるのに時間を要するものとなってしまう。
【0034】
図4は、差動入力信号Vinと、出力信号Voutと、スイッチ制御信号SW1及びSW2と、第2キャパシタC2の充電電圧を示すタイミングチャートである。図4に示すように、差動入力信号Vinの電圧レベルは、例えば、第1電圧レベルV1と第2電圧レベルV2とに交互に切り替わり得る。なお、第1電圧レベルV1は、先出の図3に示される範囲r1に属する。一方、第2電圧レベルV2は、先出の図3に示される範囲r2(ただしVinp>Vinm)に属する。図4では、差動入力信号Vinの電圧レベルが第2電圧レベルV2の期間(時刻t0~t1、および時刻t4~t5の期間)で、差動入力信号Vinが正方向に過大な状態となっている。
【0035】
上述した通り、差動入力信号Vinが過大な状態では、出力信号Voutが飽和状態となっており、帰還制御も適切に成立していない。このため、時刻t1が到来して差動入力信号Vinが第1電圧レベルV1に立下がった後、時刻t2が到来するまで出力信号Voutは変化せず一定(=ハイレベルに張り付いた状態)となっている。さらに、時刻t2が到来すると、出力信号Voutは低下に転じているが、本来のバイアス点よりも低い電圧値までアンダーシュートしてしまっている。このため、時刻t3において出力信号Voutがバイアス点で比較的安定化するまで、所定の時間(時刻t1から時刻t3までの時間)を要する。すなわち、出力信号Voutが飽和状態から正常状態に復帰するまで、比較的長い時間を要するものとなってしまう。なお、本図では、差動入力信号Vinが正方向に過大な状態となる例が描写されているが、差動入力信号Vinが負方向に過大な状態となる場合にも同様の課題がある。
【0036】
<本開示の信号増幅回路>
このような問題に対して、本開示に係る信号増幅回路Xによれば、過大な差動入力信号Vinが入力されても、オフセット補正動作が正常状態に復帰するまでの時間が長引くのを抑制し、かつ出力信号Voutに誤差が生じるのを抑制することが可能になる。以下、本開示に係る信号増幅回路Xについて、詳細に説明する。なお、上述した信号増幅回路Yと共通の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
先ず、信号増幅回路Xの第1実施形態について説明する。図5は、本開示の信号増幅回路Xを示すブロック図である。信号増幅回路Xは、複数の要素を集積化した集積回路(IC)である。図5に示すように、信号増幅回路Xは、外部との電気的な接続を確立するための手段として、複数の外部端子(本図に即して述べると、例えば、入力端INP、INM、出力端OUT)を有する。
【0038】
信号増幅回路Xは、入力端INP、INMに供給される差動入力信号Vin(=入力信号Vinp、Vinmの差電圧)を反転増幅して出力端OUTから出力信号Voutを出力する。出力端OUTと入力端INMが短絡して、出力信号Voutに応じた帰還経路を形成している。
【0039】
信号増幅回路Xは、第1アンプ1と、補正回路2xと、補正制御回路5と、を備える。
【0040】
図6は、第1アンプ1の内部の構成を示したブロック図である。図6に示すように、第1アンプ1は、入力段6と、利得段7と、出力段8と、を含んでいる。
【0041】
入力段6は、ゲート端子が非反転入力端(+)に接続されたPMOSFET[P-Channel Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor]と、ゲート端子が、反転入力端子(-)に接続されたPMOSFETとを含んで構成されている。入力段6は、差動入力信号Vinを受けて内部信号(=第1内部信号)を生成し、利得段7に入力する。
【0042】
利得段7は、入力段6からの内部信号を受けて、ハイサイド信号G1(=第2内部信号)およびローサイド信号G2(=第2内部信号)を生成する。より詳細には、次の通りである。利得段7は、ハイサイドドライバ[high side driver]とローサイドドライバ[low side driver]とを有する。ハイサイドドライバは、後述するPMOSFET9のゲート端子に、ハイサイド信号G1を入力する。ローサイドドライバは、後述するNMOSFET10のゲート端子に、ローサイド信号G2を入力する。
【0043】
出力段8は、PMOSFET9と、NMOSFET10とを含んで構成されている。PMOSFET9のドレインとNMOSFET10のドレインは、出力端OUTに接続されている。出力段8は、ハイサイド信号G1およびローサイド信号G2に応じた出力信号Voutを生成する。
【0044】
図5に戻って、補正回路2xは、第2アンプ3と、第1キャパシタC1と、第2キャパシタC2と、スイッチ回路4xと、を含んで構成されている。
【0045】
スイッチ回路4xは、スイッチ40~44と、スイッチコントローラー15xと、を含んでいる。スイッチ回路4xは、第1状態(上述した通り、スイッチ40、42がオン、スイッチ41、43がオフの状態)と、第2状態(上述した通り、スイッチ40、42がオフ、スイッチ41、43がオンの状態)と、に切り替え可能に構成されている。
【0046】
スイッチ44は、第2キャパシタC2の両端間に接続されている。スイッチ44がオンすると、第2キャパシタC2の両端が短絡した状態となる。スイッチ44は、後述するスイッチ制御信号SW3によってオン/オフを制御される。
【0047】
スイッチコントローラー15xは、不図示のクロック信号を受けて、スイッチ回路4xを第1状態と第2状態とに切り替える。具体的には、スイッチコントローラー15xは、スイッチ制御信号SW1~SW3を生成し、スイッチ回路4xに入力する。スイッチ制御信号SW3は、スイッチ44をオン/オフする信号である。より詳細には、次の通りである。
【0048】
まず、後述する補正制御回路5の出力レベルがローレベル(補正制御回路5が出力信号Voutの飽和状態を検出していない状態)である場合について説明する。この場合、スイッチコントローラー15xは、クロック信号がハイレベルのとき、スイッチ回路4xが第1状態になるようにスイッチ40~44のオン/オフを制御する。反対に、スイッチコントローラー15xは、クロック信号がローレベルのとき、スイッチ回路4xが第2状態になるようにスイッチ40~44のオン/オフを制御する。補正制御回路5がローレベルの信号を出力している場合、クロック信号の電圧レベルに関わらず、スイッチコントローラー15xは、スイッチ44をオフしたままにする。
【0049】
次に、後述する補正制御回路5の出力レベルがハイレベルである場合(補正制御回路5が出力信号Voutの飽和状態を検出している状態)について説明する。この場合、スイッチコントローラー15xは、第1状態であって、かつスイッチ44をオンするように、スイッチ40~44のオン/オフを制御する。
【0050】
補正制御回路5は、第1アンプ1の出力信号Voutの飽和状態を検出してオートゼロ動作を停止するように、補正回路2xを制御する。具体的には、次の通りである。
【0051】
補正制御回路5は、ハイサイド信号G1およびローサイド信号G2を監視することで、出力信号Voutの飽和状態を検出可能となっている。補正制御回路5は、出力信号Voutの飽和状態を検出すると、ハイレベルの信号をスイッチコントローラー15xに入力する。補正制御回路5は、出力信号Voutの飽和状態を検出していないときには、ローレベルの信号をスイッチコントローラー15xに入力する。具体的には、次の通りである。
【0052】
図6に示すように、補正制御回路5は、コンパレータCOMP1、COMP2と、ORゲート11と、を含んで構成されている。補正制御回路5は、過大な差動入力信号Vinが入力された場合(出力信号Voutが飽和状態となっている場合)、コンパレータCOMP1、COMP2の少なくとも一方がハイレベルの出力を生成し、差動入力信号Vinの過大な状態が解消されると、コンパレータCOMP1およびコンパレータCOMP2の双方がローレベルの出力を生成するように構成されている。ORゲート11は、コンパレータCOMP1、COMP2の出力を受けて、ハイレベル/ローレベルの出力を生成し、スイッチコントローラー15xに入力する。より詳細には、次の通りである。
【0053】
コンパレータCOMP1の非反転入力端(+)には、電源基準の第1閾値電圧Vth1(例えばVcc-Vth)が入力される。コンパレータCOMP1の反転入力端(-)には、ハイサイド信号G1が入力される。コンパレータCOMP1は、ハイサイド信号G1と第1閾値電圧Vth1との比較結果に応じてハイレベル/ローレベルの出力を生成する。
【0054】
コンパレータCOMP2の非反転入力端(+)には、ローサイド信号G2が入力される。コンパレータCOMP2の反転入力端(-)には、グランド基準の第2閾値電圧Vth2が入力される。コンパレータCOMP2は、ローサイド信号G2と第2閾値電圧Vth2との比較結果に応じてハイレベル/ローレベルの出力を生成する。
【0055】
例えば、差動入力信号Vinが正方向に過大な状態となっている場合、PMOSFET9がフルオン状態となり、NMOSFET10がフルオフ状態となって、出力信号Voutは飽和状態となっている。このとき、ハイサイド信号G1は第1閾値電圧Vth1を下回る。その結果、コンパレータCOMP1はハイレベルの出力を生成する。
【0056】
反対に、差動入力信号Vinが負方向に過大な状態となっている場合、PMOSFET9がフルオフ状態となり、NMOSFET10がフルオン状態となって、出力信号Voutは飽和状態となっている。このとき、ローサイド信号G2は第2閾値電圧Vth2を上回る。その結果、コンパレータCOMP2はハイレベルの出力を生成する。
【0057】
図7は、差動入力信号Vinと、出力信号Voutと、ハイサイド信号G1の電圧レベルと、スイッチ制御信号SW1~SW3と、第2キャパシタC2の充電電圧を示すタイミングチャートである。図7では、差動入力信号Vinの電圧レベルが第2電圧レベルV2の期間(時刻t0~t1、および時刻t4~t6の期間)で、差動入力信号Vinが正方向に過大な状態となっている。
【0058】
時刻t0の時点で、差動入力信号Vinは第2電圧レベルV2である。すなわち、差動入力信号Vinが正方向に過大な状態となっている。このとき、上述したオートゼロ動作は停止し、スイッチ44はオンした状態となっている。時刻t1が到来すると差動入力信号Vinは第1電圧レベルV1に立下がる。しかし、時刻t1の時点では、出力信号Voutはハイレベルのまま飽和状態となっている。
【0059】
時刻t2が到来すると、ハイサイド信号G1がハイレベルに立ち上がる。すると、補正制御回路5は、ハイサイド信号G1の立ち上がり(G1>Vth1)を検出する。そして、補正制御回路5は、時刻t2から所定のタイムラグ(数μs)を挟んだ時刻t3において、オートゼロ動作を再開する。時刻t2から時刻t3の間に出力信号Voutはバイアス点(=Vref)まで低下する。
【0060】
時刻t3から時刻t4の期間、スイッチ回路4xは第1状態と第2状態とに交互に切り替わり、かつスイッチ44はオフした状態となる。このため、スイッチ40~43のそれぞれの両端間の電圧がハイレベル/ローレベルに交互に変化する。
【0061】
時刻t4が到来し、差動入力信号Vinが再び第2電圧レベルV2に立ち上がって正方向に過大な状態となると、ハイサイド信号G1がローレベルに立ち下がる。補正制御回路5は、このハイサイド信号G1の立下り(G1<Vth1)を検出すると、時刻t4から所定のタイムラグ(数μs)を挟んだ時刻t5において、オートゼロ動作を停止する。すなわち、スイッチ回路4xが第1状態となり、スイッチ44をオンした状態にする。
【0062】
時刻t4からオートゼロ動作が停止する時刻t5までのわずかな期間に、第1キャパシタC1の充電電圧が上昇するものの、スイッチ44がオフすることで、スイッチ44の充電電圧はグランドレベルまで低下する。そして、時刻t6(次に補正制御回路5がハイサイド信号G1の立下りを検出し、所定のタイムラグを挟んだタイミング)が到来するまで、オートゼロ動作を停止したままにする。
【0063】
上述した通り、補正制御回路5がハイサイド信号G1の立ち上がりを検出してから立ち下がりを検出するまでの期間(時刻t0~t1)、オートゼロ動作が停止している。このため、時刻t1において差動入力信号Vinの過大な状態が解消されてから、出力信号Voutが差動入力信号Vinに追従してバイアス点に立下がるまでの時間(時刻t1から時刻t3までの期間)を、比較的短いものとすることができる。また、出力信号Voutは、バイアス点に立下がる際にアンダーシュートを生じにくくなる。このため、出力信号Voutが正常状態になるまでの時間が比較的短くなり、正常にオフセット補正を速やかに復帰できる。
【0064】
上記実施形態に係る信号増幅回路Xによると、出力信号Voutの飽和状態を検出することで、差動入力信号Vinが過大な状態であることを検出することができる。そして、出力信号Voutの飽和状態を検出したときにオートゼロ動作が停止する。すなわち、過大な差動入力信号Vinが入力された場合に、オートゼロ動作が停止する。これにより、オフセット調整端子PT1に、第1入力オフセット電圧Vofs1の補正に適さないような補正電圧(=第2キャパシタC2の充電電圧)が入力されるのを抑制できる。従って、差動入力信号Vinの過大な状態が解消された後、出力信号Voutが正常状態(入力信号Vinmへの帰還制御が正常に動作している状態)になるまでの時間を短縮することができる。
【0065】
また、差動入力信号Vinの過大な状態が解消されると、オートゼロ動作が再開される。このため、第1入力オフセット電圧Vofs1をゼロに補正する期間を確保することができる。さらに、出力信号Voutが正常状態になるまでの時間が短縮されることで、速やかに第1入力オフセット電圧Vofs1をゼロに補正できる。
【0066】
また、上述した通り、出力信号Voutが飽和状態になると、スイッチ44がオンし、第2キャパシタC2が放電される。このため、差動入力信号Vinが過大な状態となったときに、第2キャパシタC2が第2アンプ3によって僅かな期間でも充放電されてしまったとしても、第2キャパシタC2の電荷を放出して、第2キャパシタC2の充電電圧を低下させることができる。これにより、オフセット調整端子PT1に不適切な電圧(より詳細には、第1アンプ1が第1入力オフセット電圧Vofs1を補正するのに適さない電圧)が入力されるのを抑制しつつ、差動入力信号Vinの過大な状態が解消された後に、オートゼロ動作の復帰時間を短縮化することができる。
【0067】
また、上述した通り、出力信号Voutが飽和状態になると、補正回路2xは第1状態となる。このため、差動入力信号Vinが過大な状態となっていても、第2入力オフセット電圧Vofs2を補正することができる。このため、差動入力信号Vinの過大な状態が解消された後、第2キャパシタC2の充放電に要する時間を短縮することができる。なお、本図では、差動入力信号Vinが正方向に過大な状態となる例が描写されているが、差動入力信号Vinが負方向に過大な状態となる場合にも、出力信号Voutが正常状態になるまでの時間を短縮することができる。
【0068】
次に、信号増幅回路Xの第2実施形態について説明する。なお、以下では、第1実施形態との相違点を述べ、第1実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略している。図8は、第2実施形態に係る信号増幅回路Xの補正制御回路5を示すブロック図である。図8に示すように、本実施形態に係る補正制御回路5は、レベルシフタ16と、飽和状態検出回路12と、を含んで構成されている。
【0069】
レベルシフタ16は、電源基準のハイサイド信号G1を受けて、グランド基準の内部信号G3(第3内部信号)を生成するように構成されている。具体的には、次の通りである。
【0070】
レベルシフタ16は、電圧電流変換回路13と、抵抗14とを含んで構成されている。電圧電流変換回路13は、ハイサイド信号G1を受けて所定の電流信号を生成するように構成されている。抵抗14は、電圧電流変換回路13の出力端と接地端との間に接続されている。内部信号G3は、電圧電流変換回路13の生成した電流信号によって抵抗14の両端間に発生する電圧に応じた信号である。
【0071】
飽和状態検出回路12は、内部信号G3を監視して、出力信号Voutの飽和状態を検出するように構成されている。具体的には、次の通りである。
【0072】
飽和状態検出回路12は、コンパレータCOMP3、COMP4と、ORゲート11と、を含んで構成されている。コンパレータCOMP3、COMP4は、共にグランド基準で動作する。
【0073】
コンパレータCOMP3の非反転入力端(+)には、内部信号G3が入力される。コンパレータCOMP3の反転入力端(-)には、グランド基準の第2閾値電圧Vth2が入力されている。コンパレータCOMP3の出力は、ORゲート11に入力されている。
【0074】
コンパレータCOMP4の非反転入力端(+)には、ローサイド信号G2が入力される。コンパレータCOMP4の反転入力端(-)には、グランド基準の第2閾値電圧Vth2が入力されている。コンパレータCOMP4の出力は、ORゲート11に入力されている。
【0075】
第2実施形態に係る信号増幅回路Xでは、電圧電流変換回路13の生成する電流信号を十分小さく絞っておくことにより、内部信号G3も比較的低電圧となる。そして、コンパレータCOMP3は、グランド基準で動作する。このため、コンパレータCOMP3を低耐圧素子によって構成することができる。従って、補正制御回路5の回路面積の大型化を抑制できる。
【0076】
<センサ信号処理装置>
ここで、上記各実施形態に係る信号増幅回路Xは、電流検出アンプとして、センサ信号処理装置100に用いることができる。以下、センサ信号処理装置100を備えるセンサモジュール200について説明する。
【0077】
図9は、センサモジュール200を示すブロック図である。図9に示すように、センサモジュール200は、センサ101と、センサ信号処理装置100と、を備えている。センサ101は、電流センス抵抗を含んで構成される。センサ信号処理装置100は、センサ101により検出される微弱な検出信号を受けて、MPU[Micro Processor Unit]で処理できる信号に増幅および変換する回路である。
【0078】
センサ信号処理装置100は、電流検出アンプ103と、A/D[analog-to-digital]コンバータ62と、温度センサ63と、デジタルブロック64と、D/A[digital-to-anarog]部60と、D/A部65と、有している。
【0079】
図10は、電流検出アンプ103の構成を示すブロック図である。図10に示すように、電流検出アンプ103は、センサ101に接続され、センサ101の出力信号を入力される。センサ101の出力信号は、電流検出アンプ103(より詳細には、信号増幅回路X)の入力ダイナミックレンジを外れ得る信号である。電流検出アンプ103は、センサ101の出力電流(監視対象の電流)に応じた電流検出信号を生成する。電流検出信号は、上述した差動入力信号Vinに相当する。電流検出アンプ103について、具体的には、次の通りである。
【0080】
電流検出アンプ103は、前段アンプ104と、信号増幅回路Xとを含んで構成されている。前段アンプ104は、センサ101の出力を所定のゲインで増幅して、入力信号Vinp、Vinmを生成し、信号増幅回路X(より詳細には、入力端INP、INM)に入力する。信号増幅回路Xは、上述した通り、入力端INP、INMに供給される差動入力信号Vin(=入力信号Vinp、Vinmの差電圧)を反転増幅して出力端OUTから出力信号Voutを出力する。
【0081】
図9に戻って、A/Dコンバータ62は、信号増幅回路Xから入力されるアナログ信号(=出力信号Vout)をA/D変換して、デジタル信号をデジタルブロック64へ出力する。デジタルブロック64は、A/Dコンバータ62から出力されるデジタル信号としての出力信号Voutを、シリアル信号としてMPU31に出力する。
【0082】
D/A部65は、デジタルブロック64から出力されるデジタル信号(出力信号Voutに基づく信号)をD/A変換して、アナログ信号を生成し、このアナログ信号を増幅してDC電圧を出力する。出力されたDC電圧は、MPUへ入力される。
【0083】
D/A部60は、デジタルブロック64から出力されるデジタル信号をD/A変換してアナログ信号を生成し、このアナログ信号を増幅してDC電圧としてセンサ101に入力する。
【0084】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態では、スイッチコントローラー15xは、不図示のクロック信号がハイレベルのときスイッチ回路4xが第1状態に、クロック信号がローレベルのときスイッチ回路4xが第2状態になるようにスイッチ40~43のオン/オフを制御するとした。しかし、不図示のクロック信号がローレベルのときスイッチ回路4xが第1状態に、クロック信号がハイレベルのときスイッチ回路4xが第2状態になるようにスイッチ40~43のオン/オフを制御してもよい。
【0085】
また、上記では、センサ101として電流センス抵抗を含む例が挙げられているが、センサ101は、圧力センサ、磁気センサ及び赤外線センサなどに置換され得る。
【0086】
<付記>
明細書に開示されている信号増幅回路(X)は、入力信号(Vin)を増幅するように構成された第1アンプ(1)と、第1アンプ(1)の第1入力オフセット電圧(Vofs1)を補正するように構成された補正回路(2x)と、を備えるオートゼロ方式の信号増幅回路(X)であって、第1アンプ(1)の出力信号(Vout)の飽和状態を検出して、第1アンプ(1)の第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正動作を停止するように補正回路(2x)を制御するように構成された補正制御回路(5)と、を備える構成(第1の構成)とされている。
【0087】
なお、第1の構成からなる信号増幅回路(X)は、第1アンプ(1)は、入力信号(Vin)を受けて第1内部信号を生成する入力段(6)と、第1内部信号を受けて第2内部信号(G1、G2)を生成するように構成された利得段(7)と、第2内部信号(G1、G2)を受けて出力信号(Vout)を生成するように構成された出力段(8)と、を含み、補正制御回路(5)は、第2内部信号(G1、G2)に基づいて出力信号(Vout)の飽和状態を検出するように構成するとよい(第2の構成)。
【0088】
また、第2の構成からなる信号増幅回路(X)は、補正制御回路(5)は、電源基準の第2内部信号(G1、G2)を受けてグランド基準の第3内部信号を生成するように構成されたレベルシフタ(16)と、第3内部信号に基づいて出力信号(Vout)の飽和状態を検出するように構成された飽和状態検出回路(12)と、を含むように構成するとよい(第3の構成)。
【0089】
また、第3の構成からなる信号増幅回路(X)は、レベルシフタ(16)は、電圧信号である第2内部信号(G1、G2)を受けて所定の電流信号を生成するように構成された電圧電流変換回路(13)と、電圧電流変換回路(13)の出力端と接地端との間に接続された抵抗(14)と、を含み、第3内部信号は、電流信号によって抵抗(14)の両端間に発生する電圧に応じた信号であるように構成するとよい(第4の構成)。
【0090】
また、第1の構成から第4の構成のいずれかの構成に係る信号増幅回路(X)は、補正回路(2x)は、第1キャパシタ(C1)および第2キャパシタ(C2)と、差動入力信号を受けて、第1キャパシタ(C1)および第2キャパシタ(C2)を充放電するように構成された第2アンプ(3)と、第1キャパシタ(C1)および第2キャパシタ(C2)の充放電状態を切り換えるように構成されたスイッチ回路(4x)と、を含み、スイッチ回路(4x)は、第2アンプ(3)の差動入力端を短絡した状態で第2アンプ(3)の出力により第1キャパシタ(C1)を充放電する第1状態と、第2アンプ(3)に入力信号(Vin)を入力した状態で第2アンプ(3)の出力により第2キャパシタ(C2)を充放電する第2状態と、を含み、第1アンプ(1)は、第2キャパシタ(C2)の充電電圧に応じて第1入力オフセット電圧(Vofs1)を補正する機能を備え、第2アンプ(3)は、第1キャパシタ(C1)の充電電圧に応じて第2アンプ(3)の第2入力オフセット電圧(Vofs2)を補正する機能を備えるように構成するとよい(第5の構成)。
【0091】
また、第5の構成からなる信号増幅回路(X)は、補正制御回路(5)は、出力信号(Vout)の飽和状態を検出すると、第2キャパシタ(C2)を放電するようにスイッチ回路(4x)を制御するように構成するとよい(第6の構成)。
【0092】
また、第6の構成からなる信号増幅回路(X)は、補正制御回路(5)は、出力信号(Vout)の飽和状態を検出すると、差動入力端を短絡した状態で第2アンプ(3)の出力により第1キャパシタ(C1)を充放電しつつ、第2キャパシタ(C2)を放電するようにスイッチ回路(4x)を制御するように構成するとよい(第7の構成)。
【0093】
また、第5の構成から第7の構成のいずれかの構成に係る信号増幅回路(X)は、スイッチ回路(4x)は、補正制御回路(5)が出力信号(Vout)の飽和状態を検出していない状態で、補正回路(2x)の状態を、第1状態と第2状態とに交互に繰り返し切り替えるように構成するとよい(第8の構成)。
【0094】
また、第1の構成から第8の構成のいずれかの構成に係る信号増幅回路(X)は、入力信号(Vin)は、監視対象電流に応じた電流検出信号であるように構成するとよい(第9の構成)。
【0095】
また、明細書に開示されているセンサ信号処理装置は、入力信号(Vin)を生成するセンサと、第1の構成から第9の構成のいずれかの構成の信号増幅回路(X)と、を含むように構成するとよい(第10の構成)。
【0096】
第1の構成に係る信号増幅回路(X)によると、出力信号(Vout)が飽和状態となると、第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正動作が停止する。このため、入力信号(Vin)が過大な状態であっても、第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正が不適切なものとなるのを抑制することができる。
【0097】
また、第2の構成に係る信号増幅回路(X)によると、入力信号(Vin)が過大な状態であることをより好適に検出することができる。
【0098】
また、第3の構成に係る信号増幅回路(X)によると、電源電圧又は出力電圧が比較的高電圧な場合であっても、補正制御回路(5)を構成する素子を比較的低耐圧のものとすることができる。これにより、補正制御回路(5)の回路面積が大型化するのを抑制することができる。
【0099】
また、第4の構成に係る信号増幅回路(X)によると、補正制御回路(5)の回路面積が大型化するのを好適に抑制することができる。
【0100】
また、第5の構成に係る信号増幅回路(X)によると、第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正が不適切なものとなるのをより好適に抑制することができる。
【0101】
また、第6の構成に係る信号増幅回路(X)によると、出力電圧が飽和状態になると第2キャパシタ(C2)を放電する。これにより第2キャパシタ(C2)の充電電圧が低下する。これにより、第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正動作をより好適に停止することができる。
【0102】
また、第7の構成に係る信号増幅回路(X)によると、第1キャパシタ(C1)は、差動入力が短絡した状態の第2アンプ(3)の出力によって充放電される。また、第2キャパシタ(C2)が放電されることで、第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正動作は停止する。このため、第2入力オフセット電圧(Vofs2)が補正された状態のまま、第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正動作を停止することができる。これにより、第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正動作を再開する際に、補正動作の復帰時間を短縮化することができる。
【0103】
また、第8の構成に係る信号増幅回路(X)によると、オートゼロ動作によって好適に第1入力オフセット電圧(Vofs1)を補正することができる。
【0104】
また、第9の構成に係る信号増幅回路(X)によると、電流検出信号が比較的高電圧となった場合でも、第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正動作の復帰時間を短縮化することができる。
【0105】
また、第10の構成に係るセンサ信号処理装置によると、センサの生成した入力信号(Vin)の電圧が過大な状態となったとしても、第1入力オフセット電圧(Vofs1)の補正動作の復帰時間を短縮化することが可能なセンサ信号処理装置を提供できる。
【符号の説明】
【0106】
1 第1アンプ
2x 補正回路
2y 補正回路
3 第2アンプ
4x スイッチ回路
4y スイッチ回路
5 補正制御回路
6 入力段
7 利得段
8 出力段
11 ORゲート
12 飽和状態検出回路
13 電圧電流変換回路
14 抵抗
15x スイッチコントローラー
15y スイッチコントローラー
16 レベルシフタ
40~44 スイッチ
60 D/A部
60 D/Aコンバータ
62 A/Dコンバータ
64 デジタルブロック
65 D/A部
100 センサ信号処理装置
101 センサ
103 電流検出アンプ
104 前段アンプ
200 センサモジュール
C1 第1キャパシタ
C2 第2キャパシタ
COMP1 コンパレータ
COMP2 コンパレータ
COMP3 コンパレータ
COMP4 コンパレータ
G1 ハイサイド信号
G2 ローサイド信号
G3 内部信号
INP、INM 入力端
OUT 出力端
PT1 オフセット調整端子
PT2 オフセット調整端子
SW1 スイッチ制御信号
SW2 スイッチ制御信号
Vin 差動入力信号
Vinp 入力信号
Vofs1 第1入力オフセット電圧
Vofs2 第2入力オフセット電圧
Vout 出力信号
Vref 基準電圧
Vth1 第1閾値電圧
Vth2 第2閾値電圧
X 信号増幅回路
Y 信号増幅回路
r1 範囲
r2 範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10