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  • 特開-バイポーラ型二次電池の検査方法 図1
  • 特開-バイポーラ型二次電池の検査方法 図2
  • 特開-バイポーラ型二次電池の検査方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174652
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】バイポーラ型二次電池の検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092586
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 悟史
【テーマコード(参考)】
5H028
【Fターム(参考)】
5H028AA07
5H028BB05
5H028BB11
5H028CC19
5H028CC26
5H028EE06
5H028HH08
(57)【要約】
【課題】シール部における溶着の良否を精度よく検査できるバイポーラ型二次電池の検査方法を提供する。
【解決手段】本開示に係るバイポーラ型二次電池の検査方法は、正極と負極とを含む一対の電極と、一対の電極の間に設けられるセパレータと、一対の電極とセパレータとを囲むように設けられることによって液体電解質を収容する密閉空間を形成するシール部と、を備えた蓄電モジュールを積層したバイポーラ型二次電池の検査方法である。積層方向に隣り合う蓄電モジュールのシール部を加熱して溶着しながら、加熱に伴う波長域と異なる波長域に基づいて、シール部の温度を測定し、温度変化に基づいて、シール部における溶着の欠陥を検知する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とを含む一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられるセパレータと、前記一対の電極と前記セパレータとを囲むように設けられることによって液体電解質を収容する密閉空間を形成するシール部と、を備えた蓄電モジュールを積層したバイポーラ型二次電池の検査方法であって、
積層方向に隣り合う前記蓄電モジュールの前記シール部を加熱して溶着しながら、前記加熱に伴う波長域と異なる波長域に基づいて、前記シール部の温度を測定し、
前記温度変化に基づいて、前記シール部における溶着の欠陥を検知する、
バイポーラ型二次電池の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイポーラ型二次電池の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車又は電気自動車などに搭載される電池として、バイポーラ型二次電池が知られている。バイポーラ型二次電池では、電解液を保持するために蓄電モジュール間においてシール部が溶着される。バイポーラ型二次電池の製造工程では、シール部の溶着の良否が検査される。
【0003】
例えば、特許文献1には、蓄電装置における筐体と蓋の溶接部を検査する検査方法が開示されている。特許文献1に開示された検査方法では、溶接後における溶接部の温度を赤外放射温度計によって測定し、溶接の良否を検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-021601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された検査方法では、バイポーラ型二次電池のシール部における溶着後の温度を測定できるが、溶着中の温度を測定することができず、溶着の良否を検査するのに不十分であった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みなされたものであって、シール部における溶着の良否を精度よく検査できるバイポーラ型二次電池の検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るバイポーラ型二次電池の検査方法は、
正極と負極とを含む一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられるセパレータと、前記一対の電極と前記セパレータとを囲むように設けられることによって液体電解質を収容する密閉空間を形成するシール部と、を備えた蓄電モジュールを積層したバイポーラ型二次電池の検査方法であって、
積層方向に隣り合う前記蓄電モジュールの前記シール部を加熱して溶着しながら、前記加熱に伴う波長域と異なる波長域に基づいて、前記シール部の温度を測定し、
前記温度変化に基づいて、前記シール部における溶着の欠陥を検知する。
【0008】
本開示に係るバイポーラ型二次電池の検査方法では、加熱に伴う波長域と異なる波長域に基づいて、温度を測定している。このような構成により、シール部を溶接中であっても、温度を測定できるため、溶着欠陥を検知してシール部の溶着の良否を精度よく検査できる。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、シール部における溶着の良否を精度よく検査できるバイポーラ型二次電池の検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】バイポーラ型二次電池の断面図(xz平面図)である。
図2】実施形態1に係るバイポーラ型二次電池の検査方法を例示したフローチャートである。
図3】実施形態1に係るバイポーラ型二次電池の検査方法によって、溶着中、及び溶着後におけるシール部の温度を測定した結果の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。また、図面が煩雑にならないように、いくつかの符号は省略されている。
なお、当然のことながら、図面に示した右手系xyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正向きが鉛直上向き、xy平面が水平面である。
【0012】
(実施形態1)
<バイポーラ型二次電池の構成>
まず、図1を参照しながら、バイポーラ型二次電池の構成の一例について説明する。図1は、バイポーラ型二次電池の断面図(xz平面図)である。図1は、バイポーラ型二次電池の放充電に関する部位だけを図示しており、拘束板などの部材は省略している。バイポーラ型二次電池10は、例えば、ニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。バイポーラ型二次電池10は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、及び電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。
【0013】
図1に示すように、バイポーラ型二次電池10は、複数の蓄電モジュール12を積層して構成されている。図1に示した例では、バイポーラ型二次電池10は、複数の蓄電モジュール12がz軸方向に積層されて構成されている。以下では、図面のz軸方向を積層方向と称する。
【0014】
蓄電モジュール12は、正極17と負極18とを含む一対の電極と、一対の電極の間に設けられるセパレータ14と、シール部11と、を備えている。シール部11は、正極17と負極18とを含む一対の電極と、セパレータ14と、を囲むように設けられることによって液体電解質を収容する密閉空間SPを形成する。
【0015】
換言すると、バイポーラ型二次電池10では、積層方向に隣り合う蓄電モジュール12のシール部11を溶着することによって、液体電解質がバイポーラ型二次電池10の外部に漏れないように構成されている。また、シール部11は、バイポーラ型二次電池10の発電のために供給される水素、酸素、冷却水がバイポーラ型二次電池10の外部に漏れないようにバイポーラ型二次電池10を密閉している。
【0016】
ここで、バイポーラ型二次電池10は、バイポーラ電極13とセパレータ14とが交互に積層して構成されているともいえる。図1に示した例では、蓄電モジュール12は、複数のバイポーラ電極13と複数のセパレータ14とが積層方向に交互に積層されている。
【0017】
バイポーラ電極13について説明する。バイポーラ電極13は、正極集電体15a及び負極集電体15bと、正極集電体15aの一方の面に設けられた正極17と、負極集電体15bの一方の面に設けられた負極18と、を有する。バイポーラ電極13は、正極17と正極集電体15a及び負極集電体15bと負極18とがこの順番に積層配置された構造となっている。
【0018】
バイポーラ電極13における正極17と負極18との間には、正極集電体15a及び負極集電体15bが設けられている。正極集電体15aと負極集電体15bとは、一方の面が対向して当接している。また、正極集電体15aは、他方の面が正極17に当接しており、負極集電体15bは他方の面が負極18に当接している。正極集電体15a及び負極集電体15bは、例えば、導電性のある金属箔等で構成される。正極集電体15aは、例えば、銅箔である。負極集電体15bは、例えば、アルミニウム箔である。図1に示した例では、バイポーラ型二次電池10の積層端は、z軸正方向側が負極集電体15bであり、z軸負方向側が正極集電体15aである。
【0019】
蓄電モジュール12は、導電板(不図示)と電気的に接続され、正極17及び負極18を介して、バイポーラ型二次電池10の充放電が行われる。
【0020】
<バイポーラ型二次電池の検査方法>
次に、図2を参照しながら、実施形態1に係るバイポーラ型二次電池の検査方法について説明する。図2は、実施形態1に係るバイポーラ型二次電池の検査方法を例示したフローチャートである。以下では、図1も適宜参照しながら、説明する。
【0021】
まず、シール部を加熱溶着しながら、加熱に伴う波長域と異なる波長域によってシール部の温度を測定する(ステップST1)。図1を参照しながら、より具体的に説明する。図1に示すように、積層方向に隣り合う蓄電モジュール12のシール部11を加熱して溶着しながら、加熱に伴う波長域と異なる波長域に基づいてシール部11の温度を測定する。温度の測定は、例えば、サーモカメラを用いる。
【0022】
加熱に伴う波長域と異なる波長域とは、シール部11の加熱に用いる加熱装置が放出する波長と異なる波長域のことである。シール部11が吸収波長3.4マイクロメートル辺りにピークをもつポリオレフィン系の樹脂により構成されている場合を例にして説明する。
【0023】
ここでは、加熱装置は、カーボンヒーターであり、2~3マイクロメートル付近にピークを持ち、0.5マイクロメートル~5.8マイクロメートル付近までの波長を放出すると仮定する。なお、加熱装置は、その他の例として、シール部11を非接触で溶着できる赤外線ヒーター、セラミックヒーター、グラファイトヒーター、ハロゲンヒーター等でもよい。また、加熱方法は、加熱装置を適切な場所に配置して1対の電極を回転させながら加熱する方法でも、加熱装置を複数ヶ所に配置して同時に加熱する方法でもよい。加熱装置のピーク波長は、材料の吸収波長のピーク波長から5マイクロメートル以内が好ましく、2.5マイクロメートル以内がより好ましい。
【0024】
シール部11の溶着中における温度の測定には、測定精度を高めるために、シール部11の吸収波長に近い波長を測定できるサーモカメラを用いることが好ましい。しかし、吸収波長3.4マイクロ付近の波長を測定できるサーモカメラを用いると、カーボンヒーターの放出している波長も測定してしまう。そのため、カーボンヒーターが放出している波長域外である、例えば、6マイクロメートル付近の波長を測定できるサーモカメラを用いることによって、シール部の溶着中の温度を精確に測定できる。なお、測定に用いる波長は、シール部の吸収波長よりも高い波長である方がより好ましい。
【0025】
シール部11の溶着後における温度の測定には、測定精度を高めるために、シール部の吸収波長のピークに近い波長を測定できるサーモカメラを用いることが好ましい。
【0026】
次に、シール部の温度変化に基づいて溶着の良否を判定する(ステップST2)。図3を参照しながら、より具体的に説明する。図3は、実施形態1に係るバイポーラ型二次電池の検査方法によって、溶着中、及び溶着後におけるシール部の温度を測定した結果の一例を示した図である。図3の上段には、シール部の溶着の欠陥が発生していない例を示している。図3の中段には、シール部の溶着の欠陥が溶着中に発生している例を示している。図3の下段には、シール部の溶着の欠陥が溶着後に発生している例を示している。
【0027】
図3の上段、中段、及び下段において、横軸は時間を、縦軸は温度を示している。また、図3の上段、中段、及び下段において、横軸の1点鎖線は、加熱装置による溶着中と溶着後の境目を示している。溶着中は加熱装置が起動しており、溶着後は加熱装置が起動していない。図3の上段、中段、及び下段では、異なる波長域を測定できる2台のサーモカメラ1、2により測定されたシール部の温度分布20、30と、シール部の溶着における欠陥が発生しない基準範囲40と、シール部の実温度50と、が異なる線種を用いて示されている。なお、シール部の実温度50は、例えば、シール部にシート型の熱電対を貼り付けることによって測定される。
【0028】
前述のように、溶着中においては、加熱装置が放出する波長の影響を受けないようにするために、6マイクロメートル付近の波長を測定できるサーモカメラ2を用いる。一方で、溶着後においては、加熱装置が起動していないため、3.4マイクロ付近の波長を測定できるサーモカメラ1を用いる。
【0029】
まず、図3の上段について説明する。溶着中におけるサーモカメラ2により測定した温度分布30は、基準範囲40内である。そのため、溶着中において欠陥が発生していない。
また、溶着後におけるサーモカメラ1により測定した温度分布20も基準範囲40内である。そのため、溶着後においても欠陥が発生していない。
【0030】
次に、図3の中段について説明する。溶着中におけるサーモカメラ2により測定した温度分布30は、矢印により示した一部の分布が基準範囲40外である。そのため、溶着中において欠陥が発生している。このように、溶着中にボイド等の欠陥が発生した場合は、シール部が周囲の空気により温められず、温度が下がる。
一方で、溶着後におけるサーモカメラ1により測定した温度分布20は、基準範囲40内である。そのため、溶着後においては欠陥が発生していない。
【0031】
このように、加熱に伴う波長域と異なる波長域に基づいてシール部の温度を測定しているため、シール部を溶着中であっても、その温度変化に基づいて、溶着の欠陥を検知できる。
【0032】
次に、図3の下段について説明する。溶着中におけるサーモカメラ2により測定した温度分布30は、基準範囲40内である。そのため、溶着中において欠陥が発生していない。
一方で、溶着後におけるサーモカメラ2により測定した温度分布20は、矢印により示した一部の分布が基準範囲40外である。そのため、溶着中において欠陥が発生している。このように、溶着後にボイド等の欠陥が発生した場合は、溶着中と同様に、温度が下がる。
【0033】
図3の中段に示すように、溶着中においては、加熱に伴う波長域と異なる波長域を測定できるサーモカメラ2を用いて温度を測定している。また、図3の下段に示すように、溶着後においては、シール部の材質や量に依存する吸収波長に近い波長を測定できるサーモカメラ1を用いて温度を測定している。このような構成により、溶着後だけでなく溶着中における溶着の欠陥を検知できる。
【0034】
なお、図3では、溶着中と溶着後において2台のサーモカメラを切り替えてシール部の温度を測定している。しかし、これに限定されることはなく、光を波長ごとに分光して複数の波長を測定できる1台のサーモカメラを用いて、シール部の温度を測定してもよい。すなわち、溶着中と溶着後において1台のサーモカメラの測定波長を切り替えてシール部の温度を測定してもよい。
【0035】
ここでは、シール部の温度測定にサーモカメラを用いたが、放射温度計を用いてもよい。また、温度測定は、シール部の一部に対して行われてもよい。さらに、シール部の形状に合わせて温度の測定箇所を分割してもよい。
【0036】
このように、実施形態1に係るバイポーラ型二次電池の検査方法では、加熱に伴う波長域と異なる波長域に基づいて温度を測定している。このような構成により、シール部を溶接中であっても、温度を測定できるため、溶着欠陥を検知してシール部の溶着の良否を精度よく検査できる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。すなわち上記の記載は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされており、当業者であれば、実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 バイポーラ型二次電池
11 シール部
12 蓄電モジュール
13 バイポーラ電極
14 セパレータ
15a 正極集電体
15b 負極集電体
17 正極
18 負極
20、30 温度分布
40 基準範囲
50 シール部の実温度
SP 密閉空間
図1
図2
図3