(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174656
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H01L23/40 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092594
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田添 忠徳
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BB09
5F136BC02
5F136DA05
5F136EA13
5F136EA40
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】半導体素子にはんだ形状制御部材を設けずとも、半導体素子と金属部材とを接合するはんだのフィレット形状が制御された半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体素子3にはんだ42を配置し、はんだ42上に上面5a、下面5bおよび側面5cを有する金属部材5の下面5bを接触するように載せる。はんだ42を溶融させた状態で半導体素子3と金属部材5との距離をはんだ42の溶融前よりも大きくし、この状態を維持したままはんだ42を固化させる。これにより、はんだ42が厚み方向における中心に向かって凹んだ円弧形状となり、はんだ42のうち半導体素子3に接する部分のフィレット角が所定未満となるため、半導体素子3にかかる応力が緩和された半導体装置を製造できる。
【選択図】
図4C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子(3)と、上面(5a)、下面(5b)および前記上面と前記下面との間の面である側面(5c)を有し、前記半導体素子と対向する部分の平面サイズが前記半導体素子よりも小さい金属部材(5)とを用意することと、
前記半導体素子にはんだ(42)を配置し、前記半導体素子のうち前記はんだが配置される面の外郭内側に前記金属部材を配置するとともに、前記はんだに前記金属部材の前記下面を接触するように載せることと、
前記はんだを溶融させた状態における前記金属部材と前記半導体素子との距離を前記はんだの溶融前よりも大きくすることと、
前記距離を前記はんだの溶融前よりも大きくしたままの状態で前記はんだを固化させることと、を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
リードフレーム(7)を用意することと、
前記リードフレームにはんだ(43)を介して前記金属部材の前記上面を接触するように載せることと、
はんだを介して接続された前記半導体素子、前記金属部材および前記リードフレームを有してなるワークを乗せる台座(101)と、前記リードフレームを支える複数の支柱(102)とを有する治具(100)を用意することと、をさらに含み、
前記距離を大きくすることにおいては、前記ワークを前記治具にセットし、複数の前記支柱を伸ばして前記リードフレームを持ち上げることにより行う、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
リードフレーム(7)を用意することと、
前記リードフレームにはんだ(43)を介して前記金属部材の前記上面を接触するように載せることと、
はんだを介して接続された前記半導体素子、前記金属部材および前記リードフレームを有してなるワークを乗せる台座(101)と、前記リードフレームを支える複数の支柱(102)とを有する治具(100)を用意することと、
前記台座に前記はんだを溶融させるときに膨張し、前記はんだを固化するときに収縮する熱伸縮部材(110)を配置し、前記熱伸縮部材の上に前記ワークを乗せること、をさらに含み、
前記距離を大きくすることにおいては、複数の前記支柱により前記リードフレームを支えたまま、前記熱伸縮部材を収縮させることにより行う、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記距離を大きくすることにおいては、前記金属部材を直接持ち上げることにより行う、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記距離を大きくする前に、前記距離を前記はんだの溶融前よりも小さくし、前記はんだを前記側面に付着させること、をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記金属部材を用意することにおいては、前記側面と前記下面とを繋ぐ部分に、前記側面および前記下面とは異なる平面または湾曲面とされたはんだ誘導部(51)が形成されたものを用意する、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記金属部材を用意することにおいては、前記側面のうち前記下面の端部側に凹部とされたはんだ誘導部(51)が形成されたものを用意する、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
半導体装置であって、
半導体素子(3)と、
上面(5a)、下面(5b)および前記上面と前記下面との間の面である側面(5c)を有し、前記半導体素子よりも平面サイズが小さい金属部材(5)と、
前記半導体素子と前記金属部材の前記下面とを接合するはんだ(4)と、を備え、
前記金属部材は、前記半導体素子のうち前記はんだが配置される面の外郭内側に配置されており、
前記はんだは、外郭の一部が前記側面よりも前記金属部材の内側に入り込むとともに、前記側面の少なくとも一部を覆っている、半導体装置。
【請求項9】
前記金属部材は、前記側面と前記下面とを繋ぐ部分に、前記側面および前記下面とは異なる平面または湾曲面とされたはんだ誘導部(51)が形成されている、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記金属部材は、前記側面のうち前記下面の端部側に凹部とされたはんだ誘導部(51)が形成されている、請求項8に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子にはんだを介して金属部材が接合された構成の半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体装置では、金属部材と半導体素子とを接合するはんだのうち半導体素子に接する部分における盛り上がりの形状、すなわちフィレット形状が半導体素子の信頼性に影響を及ぼすことが知られている。具体的には、例えば、はんだが接続対象である金属部材のうち半導体素子の表面と向き合う面からはみ出し、その側面を這い上がることで、フィレット形状は、半導体素子の表面と金属部材の側面とを略直線的に繋ぐ状態となることがある。はんだのフィレット形状がこのような状態になると、半導体素子にかかる応力が大きくなり、信頼性が低下してしまう。このような信頼性低下を抑制する半導体装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の半導体装置は、半導体素子のうちはんだ接合がされる領域を囲む絶縁性材料からなるはんだ形状制御部材が配置されており、はんだのフィレット形状が制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の半導体装置は、半導体素子に予めはんだ形状制御部材を形成しなければならず、製造コストの増大が懸念される。このため、より簡便にはんだのフィレット形状を制御することが求められる。
【0006】
本開示は、上記の点に鑑み、半導体素子にはんだ形状制御部材を設けずとも、半導体素子と金属部材とがはんだ接合され、はんだが半導体素子にかかる応力を緩和されたフィレット形状に制御された半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの観点によれば、半導体装置の製造方法は、半導体素子(3)と、上面(5a)、下面(5b)および上面と下面との間の面である側面(5c)を有し、半導体素子と対向する部分の平面サイズが半導体素子よりも小さい金属部材(5)とを用意することと、半導体素子にはんだ(41)を配置し、半導体素子のうちはんだが配置される面の外郭内側に金属部材を配置するとともに、はんだに金属部材の下面を接触するように載せることと、はんだを溶融させた状態における金属部材と半導体素子との距離をはんだの溶融前よりも大きくすることと、当該距離をはんだの溶融前よりも大きくしたままの状態ではんだを固化させることと、を含む。
【0008】
これによれば、半導体素子および金属部材の2つの部材間にはんだを配置し、当該はんだを溶融させた状態で2つの部材の距離を相対的に大きく維持したまま、当該はんだを固化させる半導体装置の製造方法となる。このため、溶融はんだの外郭の一部が表面張力により金属部材の側面よりも内側に凹んだ状態となるとともに、はんだがこの状態のままで固化することとなり、はんだのフィレット形状を緩やかに金属部材側に立ち上がったものに制御することが容易となる。よって、半導体素子にはんだ形状制御部材を設けることなく、より簡便にはんだのフィレット形状が制御された半導体装置を製造することができる。
【0009】
本開示の別の1つの観点によれば、半導体装置は、半導体素子(3)と、上面(5a)、下面(5b)および上面と下面との間の面である側面(5c)を有し、半導体素子と対向する部分の平面サイズが半導体素子よりも小さい金属部材(5)と、半導体素子と金属部材の下面とを接合するはんだ(4)と、を備え、金属部材は、半導体素子のうちはんだが配置される面の外郭内側に配置されており、はんだは、外郭の一部が側面よりも金属部材の内側に入り込むとともに、側面の少なくとも一部を覆っている。
【0010】
この半導体装置は、半導体素子と金属部材との間のはんだのうち余剰部分が金属部材の側面に付着することで、半導体素子と金属部材との間のはんだ量が調整された結果、はんだの外郭の一部が金属部材の側面よりも内側に入り込んでいる。このため、この半導体装置は、はんだのフィレット形状が緩やかに金属部材側に立ち上がるものとなり、半導体素子にかかる応力が緩和された構造となる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の半導体装置の一例を示す断面図である。
【
図2】
図1中のII線の領域を拡大したものを示す拡大断面図である。
【
図3】
図2に相当する図であって、比較例の半導体装置のフィレット形状に起因するクラックを示す拡大断面図である。
【
図4A】第1実施形態の半導体装置における半導体素子と金属部材とのはんだ接合において、はんだ量が所定以下の場合の第1工程を示す断面図である。
【
図4B】
図4Aに続くはんだ接合の第2工程を示す断面図である。
【
図4C】
図4Bに続くはんだ接合の第3工程を示す断面図である。
【
図5A】第1実施形態の半導体装置における半導体素子と金属部材とのはんだ接合において、はんだ量が多い場合の第1工程を示す断面図である。
【
図5B】
図5Aに続くはんだ接合の第2工程を示す断面図である。
【
図5C】
図5Bに続くはんだ接合の第3工程を示す断面図である。
【
図5D】
図5Cに続くはんだ接合の第4工程を示す断面図である。
【
図6】第2はんだとして高温はんだを用いる場合のはんだ接合工程を示す断面図である。
【
図7】第1ないし第3はんだとして同一材料を用いる場合のはんだ接合工程を示す断面図である。
【
図8A】
図7のはんだ接合工程に用いる治具の一例を示す断面図である。
【
図8B】
図8Aの治具を用いたはんだの固化工程を示す断面図である。
【
図9A】
図7のはんだ接合工程に用いる治具の他の一例を示す断面図である。
【
図9B】
図9Aの治具を用いたはんだの固化工程を示す断面図である。
【
図10】第2実施形態の半導体装置を示す拡大断面図であって、
図2に相当する図である。
【
図11】金属部材の他の形状例を示す断面図であって、
図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態の半導体装置1について、図面を参照して説明する。
【0015】
〔基本構成例〕
本実施形態の半導体装置1は、例えば
図1に示すように、半導体素子3と、金属部材5と、これらを接合するはんだ4とを備える。半導体装置1は、例えば、半導体素子3としてパワー半導体素子を有し、半導体素子3の両面にはんだ4を介して放熱部材が接続された両面放熱モジュール等のパワー半導体装置に適用されると好適であるが、勿論、他のデバイスとして構成されてもよい。本明細書では、限定するものではないが、半導体装置1が両面放熱モジュールとして構成された場合を代表例として説明する。
【0016】
半導体装置1は、例えば両面放熱モジュールとされる場合、上記の構成部材に加えて、第1リードフレーム2と、ワイヤ6と、第2リードフレーム7と、モールド樹脂8とを有した構成とされる。半導体装置1は、リードフレーム2、7が半導体素子3および金属部材5を挟んだ両側に配置され、第1リードフレーム2が半導体素子3の裏面3bに、第2リードフレーム7が金属部材5を介して半導体素子3の表面3aに、それぞれ接続されている。半導体装置1は、リードフレーム2、7の一部、半導体素子3、はんだ4、金属部材5、およびワイヤ6がモールド樹脂8に封止されるとともに、リードフレーム2、7のうち半導体素子3とは反対側の面がモールド樹脂8から露出した両面放熱構造となっている。
【0017】
第1リードフレーム2は、例えば、Cu(銅)やFe(鉄)等の金属やその合金などの導電性材料で構成され、プレス打ち抜き等により形成される。第1リードフレーム2は、例えば、ヒートシンク21と、ヒートシンク21から延設された第1端子22と、ヒートシンク21から独立した第2端子23とを有してなる。第1リードフレーム2は、ヒートシンク21の一面21aにはんだ4を介して半導体素子3が接合され、ヒートシンク21の他面21bがモールド樹脂8から露出している。第1リードフレーム2は、第1端子22および第2端子23がモールド樹脂8の側面から突出しており、端子22、23を介して半導体素子3と電気的な接続が可能となっている。
【0018】
半導体素子3は、例えば、表面3aおよび裏面3bを有する板状とされ、Si(シリコン)やSiC(炭化珪素)等の半導体材料を主に構成される。半導体素子3は、例えば、IGBTやパワーMOSFET等のパワー半導体素子とされ、公知の半導体プロセスにより製造される。なお、IGBTとはInsulated Gate Bipolar Transistorの略称であり、MOSFETとはMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。半導体素子3は、例えば、表面3aには図示しないゲート電極およびエミッタ電極もしくはソース電極が、裏面3bには図示しないコレクタ電極もしくはドレイン電極が、それぞれ形成された構成となっている。半導体素子3は、表面3a側がはんだ4を介して金属部材5に、ワイヤ6を介して第2端子23に、裏面3b側がはんだ4を介してヒートシンク21に、それぞれ接続されている。
【0019】
半導体素子3は、例えば
図2に示すように、半導体基板31と、ポリイミド等の絶縁性材料で構成された絶縁膜32と、Al(アルミニウム)等の導電性材料で構成された電極膜33と、Ni(ニッケル)等の導電性材料で構成されためっき膜34とを備える。半導体素子3は、所定のパターン形状とされた絶縁膜32の開口部において電極膜33が絶縁膜32から露出するとともに、電極膜33上にめっき膜34が積層された構成となっている。半導体素子3は、例えば、めっき膜34がはんだ4を介して金属部材5と接合されている。
【0020】
はんだ4は、Sn(錫)を主成分とする接合材料で構成され、半導体装置1の構成部材間の接合に用いられる。以下、説明の便宜上、はんだ4のうち第1リードフレーム2と半導体素子3とを接合するものを「第1はんだ41」と称し、半導体素子3と金属部材5とを接合するものを「第2はんだ42」と称する。また、はんだ4のうち金属部材5と第2リードフレーム7とを接合するものを「第3はんだ43」と称する。第1はんだ41ないし第3はんだ43は、同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。少なくとも第2はんだ42は、半導体素子3への応力集中を緩和して信頼性を向上させるため、例えば
図2に示すように、後述する半導体素子3と金属部材5の接合工程によりその端部が厚み方向の中央に向かって括れた形状となっている。以下、
図2に示すように、第2はんだ42の外郭のうち半導体素子3に接する端部を単に「フィレット」と称し、フィレットと半導体素子3の接合表面(例えばめっき膜34)とのなす角度を「フィレット角α」と称する。
【0021】
金属部材5は、例えば、Cu等の金属やその合金等の導電性材料で構成され、半導体素子3と第2リードフレーム7との間に配置され、これらのそれぞれにはんだ4を介して接合される部材である。金属部材5は、半導体素子3と第2リードフレーム7とを電気的に接続するとともに、半導体素子3と第2リードフレーム7との隙間を所定以上に確保し、ワイヤ6が第2リードフレーム7に接触することを抑制する役割を果たす。金属部材5は、「金属ブロック」や「ターミナル」などとも称されうる。金属部材5は、例えば、半導体素子3のうち第2はんだ42が配置される表面3aの外郭内側に収まる平面サイズとされる。言い換えると、表面3aに対する法線方向から見て、金属部材5は、例えば、半導体素子3よりも平面サイズが小さく、金属部材5の全域が半導体素子3の表面3a内に収まるように配置される。
【0022】
なお、
図1や
図2などでは、金属部材5の全体の平面サイズが半導体素子3よりも小さい場合を代表例として示しているが、これに限定されるものではない。例えば、金属部材5は、少なくとも半導体素子3と対向する部分、すなわち接続部分の平面サイズが半導体素子3よりも小さく、接続部分以外の部分の平面サイズが半導体素子3よりも大きい構成であってもよい。具体的には、例えば、金属部材5は、リードフレームのように半導体素子3よりも平面サイズが大きく、かつ半導体素子3よりも平面サイズが小さい突起状の接続部分を有し、当該接続部分が半導体素子3の外郭内側に配置された状態で接合されてもよい。
【0023】
金属部材5は、例えば、矩形の板状部材である。以下、説明の便宜上、金属部材5の表面のうち第2リードフレーム7側の面を「上面5a」と称し、その反対面を「下面5b」と称し、上面5aと下面5bとの間の面を「側面5c」と称する。金属部材5は、後述する製造工程により、側面5cのうち下面5b側の端部を含む少なくとも一部が第2はんだ42により覆われている。
【0024】
ワイヤ6は、例えば、Au(金)等の導電性材料で構成される。ワイヤ6は、ワイヤボンディングにより半導体素子3の表面3aに形成された図示しない電極部および端子22に接続され、これらを電気的に接続する。
【0025】
第2リードフレーム7は、第1リードフレーム2と同様の導電性材料により構成されており、プレス打ち抜き加工等により形成される。第2リードフレーム7は、半導体素子3および金属部材5を挟んで、第1リードフレーム2の反対側に配置されている。第2リードフレーム7は、半導体素子3とは反対側の一面7aがモールド樹脂8から露出するとともに、一面7aとは反対側の他面7bがはんだ4を介して金属部材5の上面5aに接合されている。第2リードフレーム7は、例えば、金属部材5にはんだ接合される部位がヒートシンクとされるとともに、図示しない端子を有した構成とされる。
【0026】
モールド樹脂8は、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性の樹脂材料により構成され、図示しない金型を用いたコンプレッション成形等の任意の樹脂成形法により形成される。
【0027】
以上が、両面放熱モジュールとされた場合の半導体装置1の基本的な構成である。半導体装置1は、半導体素子3と金属部材5とをはんだ4により接合する際にこれらの距離調整される簡便な工程により、第2はんだ42のフィレット角αが制御された構造となっている。
【0028】
〔はんだのフィレット角制御〕
次に、本実施形態の半導体装置1の製造における半導体素子3と金属部材5との接合工程およびこれによるフィレット角αの制御について説明する。
【0029】
まず、半導体素子3と金属部材10とを従来のはんだ接合工程により得られる比較例の半導体装置およびその課題について説明する。
【0030】
従来のはんだ接合では、半導体素子3の絶縁膜32に囲まれためっき膜34にはんだ4を塗布した後、はんだ4上に例えば金属部材10として直方体の金属ブロックをマウントし、はんだ4を加熱・固化することで、半導体素子3と金属部材10とを接合する。金属部材10は、半導体素子3のめっき膜34よりも平面サイズが小さく、かつめっき膜34の外郭内側にすべて収まるように配置され、はんだ4により接合固定される。比較例の半導体装置は、例えば
図3に示すように、金属部材10のうちめっき膜34と向き合う下面10aの全域とめっき膜34とがはんだ4により接合される。
【0031】
比較例の半導体装置では、はんだ4は、外表面が金属部材10のうち下面10aに隣接する側壁面10bの端部と半導体素子3の表面とを略直線状に繋ぐ形状となり、フィレット角αが大きくなる。この場合、
図3に白抜き矢印で示すように、はんだ4に起因する応力F
1が半導体素子3のめっき膜34に作用するとともに、フィレット角αが大きいため、応力F
1の向きは、より上向きとなる。本発明者らの実験によれば、比較例の半導体装置は、特に絶縁膜32、電極膜33およびめっき膜34の3つの境界が重なる点(以下「三重点」という)にはんだ4に起因する応力F
1が集中し、三重点を起点とするクラックCが生じることが判明した。このクラックCが生じると、半導体素子3にクラックCが進展し、半導体装置の信頼性が低下してしまう。
【0032】
このような三重点を起点とするクラックCの発生を抑制するためには、はんだ4のフィレット角αを小さくすること、すなわちはんだ4の外表面である端部の形状が厚み方向の中心に向かって括れた状態にすることが有効である。これにより、例えば
図2に示すように、三重点に作用する応力F
1の向きが比較例に比べて下向きとなり、クラックCの発生を抑制することができる。そこで、本実施形態の半導体装置1は、半導体素子3と金属部材5とを次に説明する工程により接合することで、フィレット角αが小さくなるように第2はんだ42の形状が制御されている。
【0033】
次に、半導体素子3と金属部材5との第一の接合方法について、
図4Aないし
図4Cを参照して説明する。
【0034】
なお、
図4Bでは、金属部材5の持ち上げ前における金属部材5および第2はんだ42の外郭を破線で示すとともに、持ち上げによる位置の変化方向を白抜き矢印で示している。
図4Cでは、第2はんだ42の固化前における外郭を破線で示すとともに、当該外郭の変化の方向を白抜き矢印で示している。
図4Aないし
図4Cでは、見易くするため、半導体素子3の裏面3b側に接続される部材については省略している。これは、後述する
図5Aないし
図5Dについても同様である。
【0035】
まず、例えば
図4Aに示すように、半導体素子3のめっき膜34に第2はんだ42を塗布し、第2はんだ42上に金属部材5を載置する。第2はんだ42は、この時点では溶融しておらず、半導体素子3と接する部分のフィレット角をα
0として、α
0がαよりも大きい状態となっている。以下、説明の便宜上、第2はんだ42の溶融前における半導体素子3と金属部材5との距離をD0とする。距離D0は、半導体素子3の厚み方向、すなわち半導体素子3の表面に対する法線方向に沿った半導体素子3と金属部材5との距離ともいえる。
【0036】
続けて、例えば
図4Bに示すように、第2はんだ42を溶融させ、金属部材5を図示しない治具などを用いて持ち上げることにより、半導体素子3と金属部材5との距離をD0よりも大きいD1とする。これにより、第2はんだ42は、半導体素子3側から金属部材5側に引っ張られた状態となる。なお、治具は、例えば、金属部材5の上面5aを真空吸着する吸着機構を備える吸着治具であってもよいし、金属部材5の上面5aに接続されるリードフレーム7などを持ち上げる後述の治具100等を用いて金属部材5を間接的に持ち上げるものであってもよい。
【0037】
次いで、例えば
図4Cに示すように、
図4Bの状態、すなわち半導体素子3と金属部材5との距離をD1で維持したまま、第2はんだ42を固化させる。これにより、第2はんだ42は、表面張力および凝固時の収縮により、厚み方向の中心に向かって凹んだ状態となり、略円弧形状のような括れた状態で固化することとなる。この結果、第2はんだ42は、半導体素子3に接する端部が緩やかに金属部材5に向かって立ち上がる形状となり、フィレット角αがα
0よりも小さくなる。
【0038】
第2はんだ42の量が所定以下である場合には、例えば、上記した工程により第2はんだ42のフィレット形状を制御することが可能となる。
【0039】
次に、半導体素子3と金属部材5との第二の接合方法について、
図5Aないし
図5Dを参照して説明するが、ここでは、第一の接合方法との相違点について主に説明する。
【0040】
第2はんだ42の量は、半導体装置の製造工程上における不可避の誤差などの要因によりばらつくことがある。はんだ量が多い場合には、金属部材5を持ち上げる前に半導体素子3側に一度押し込む工程を挟むことで、第2はんだ42のフィレット形状をより安定して制御することが可能となる。
【0041】
まず、例えば
図5Aに示すように、半導体素子3のめっき膜34に第2はんだ42を塗布し、第2はんだ42上に金属部材5を載置するが、はんだ量が多い場合には、半導体素子3と金属部材5との距離は、D0より大きいD2となる。
【0042】
続いて、例えば
図5Bに示すように、第2はんだ42を加熱して溶融させ、金属部材5を図示しない治具などにより半導体素子3側に押し込む。このとき、半導体素子3と金属部材5との距離は、D2よりも小さいD3となる。これにより、第2はんだ42は、下面5bよりも外側の領域に押し出され、側面5cに余剰部分が付着するとともに、下面5bとめっき膜34との間に位置する部分の量が適正化される。
【0043】
次いで、例えば
図5Cに示すように、図示しない治具により金属部材5を持ち上げ、半導体素子3と金属部材5との距離をD3よりも大きいD4とする。これにより、第2はんだ42は、余剰部分が金属部材5の側面5cに付着した状態のまま、下面5bとめっき膜34との間に位置する部分が半導体素子3側から金属部材5に向かって引っ張られることとなる。
【0044】
そして、例えば
図5Dに示すように、
図5Cの状態、すなわち半導体素子3と金属部材5との距離をD4で維持したまま、第2はんだ42を固化させる。これにより、第2はんだ42は、表面張力および凝固時の収縮により、厚み方向の中心に向かって凹んだ状態となり、略円弧形状の括れた状態のまま固化する。
【0045】
第2はんだ42の量が所定量を超える場合には、例えば、上記した工程のように、一度、金属部材5の側面5cに第2はんだ42の余剰部分を付着させることより、第2はんだ42のフィレット形状をより安定して制御することが可能となる。なお、D1やD4は、例えば、限定するものではないが、例えば50μm~150μm程度とされる。
【0046】
〔第一の接合工程を経た製造方法〕
第1はんだ41、第2はんだ42に第3はんだ43よりも融点が高い高温はんだを用いる場合には、例えば
図6に示す接合工程により第2はんだ42の形状制御が可能である。なお、
図6では、見易くするため、第1リードフレーム2および半導体素子3を簡略化して示すとともに、金属部材5の持ち上げ方向を太線矢印で示している。
【0047】
第1リードフレーム2を図示しないマウンタ装置で吸着固定し、第1はんだ41を塗布し、第1はんだ41上に半導体素子3を載置する。その後、半導体素子3の表面3a側に第2はんだ42を塗布し、金属部材5を第2はんだ42上に載置する。なお、第1はんだ41および第2はんだ42は、はんだ箔を載置する方法により配置されてもよい。続けて、例えば
図6に示すように、ワークを加熱し、第1はんだ41、第2はんだ42を溶融させ、金属部材5を半導体素子3側に押し込んだ後に図示しない吸着治具により金属部材5を持ち上げる。この状態で溶融させた第1はんだ41および第2はんだ42を固化することで、第1はんだ41および第2はんだ42が厚み方向における中心に向かって他の部位よりも凹んだ括れ形状となり、フィレット角αが制御された状態で固定される。
【0048】
続けて、半導体素子3にワイヤ6を接続し、第1はんだ41、第2はんだ42よりも融点が低いはんだで構成された第3はんだ43を金属部材5の上面5aに塗布し、第2リードフレーム7を載置する。そして、第1はんだ41および第2はんだ42の融点よりも低い温度で第3はんだ43を加熱して溶融させた後に固化する。これにより、第1はんだ41および第2はんだ42が再溶融することなく、そのフィレット形状が維持される。最後に、樹脂封止を行うことで半導体装置1を製造することができる。
【0049】
〔第二の接合工程を経た製造方法〕
はんだ41~43として例えば同一材料のはんだを用いる場合には、例えば
図7に示す接合工程により第2はんだ42の形状制御が可能である。なお、
図7では、見易くするため、リードフレーム2、7および半導体素子3を簡略化して示すとともに、ワイヤ6を省略している。また、
図7では、第2リードフレーム7および金属部材5の押し込み前における位置を破線で示している。
【0050】
まず、第1リードフレーム2を図示しないマウンタ装置で吸着固定し、第1はんだ41を塗布し、第1はんだ41上に半導体素子3を載置し、第1はんだ41を加熱して溶融させた後に固化し、第1リードフレーム2と半導体素子3とを接合する。続けて、例えば、半導体素子3にワイヤ6を接合した後に、半導体素子3の表面3a側に第2はんだ42を塗布し、金属部材5を第2はんだ42上に載置する。次いで、金属部材5の上面5aに第3はんだ43を塗布し、第2リードフレーム7を第3はんだ43上に載置する。なお、第1はんだ41、第2はんだ42および第3はんだ43は、はんだ箔を載置する方法により配置されてもよい。その後、例えば
図7に示すように、ワークを加熱し、はんだ41~43を溶融させ、図示しない錘等により第2リードフレーム7を介して金属部材5を半導体素子3側に押し込んだ後、後述する治具100を用いて半導体素子3と金属部材5との距離を大きくする。そして、半導体素子3と金属部材5との距離を大きくしたまま、はんだ41~43を固化することにより、はんだ41~43が厚み方向における中心に向かって他の部位よりも凹んだ括れ形状となり、フィレット角αが制御された状態で固定される。最後に、樹脂封止を行うことで半導体装置1を製造することができる。
【0051】
次に、治具100の第一の例について、
図8Aおよび
図8Bを参照して説明する。なお、
図8A、
図8Bでは、
図7と同様に、リードフレーム2、7および半導体素子3を簡略化するとともに、ワイヤ6については省略している。また、
図8A、
図8Bでは、ワークに作用する押し込みなどによる力の方向を白抜き矢印で示している。これらは、後述する
図9A、
図9Bについても同様である。
【0052】
治具100は、例えば
図8Aに示すように、半導体装置1の製造途中のワークを載せる台座101と、台座101のうちワークが載せられる領域の周囲に配置される複数の支柱102とを備える。治具100は、例えば、複数の支柱102のうち台座101から突き出た部分の高さ、すなわち支柱高さが略同一に揃えられている。治具100は、例えば、複数の支柱102の先端面に第2リードフレーム7が載せられるとともに、複数の支柱102が第2リードフレーム7を支持する支持体として機能する。治具100は、例えば、複数の支柱102が台座101から押し上げられることで、支柱高さを調整することが可能な構成となっている。治具100は、例えば、第2リードフレーム7が載せられる時点においては、複数の支柱102の支柱高さが所定の高さで固定されている。このとき、ワークは、台座101側から第1リードフレーム2、第1はんだ41、半導体素子3、第2はんだ42、金属部材5、第3はんだ43および第2リードフレーム7の順に積み上げられた状態となる。そして、このワークは、第2リードフレーム7の一面7a側に図示しない錘が載せられることで、金属部材5が第2リードフレーム7を介して半導体素子3側に押され、半導体素子3との距離が小さくされる。
【0053】
治具100は、例えば
図8Bに示すように、ワークを加熱し、はんだ41~43を溶融させた後に、複数の支柱102を押し上げることで支柱高さが当初よりも大きい状態とされる。これにより、ワークは、第2リードフレーム7が持ち上げられるとともに、金属部材5も持ち上げられるため、半導体素子3と金属部材5との距離が第2はんだ42の溶融前よりも大きい状態となる。そして、治具100を複数の支柱102が押し上げられ、支柱高さが大きくされた状態で維持し、はんだ41~43を固化することにより、はんだ41~43のフィレット形状が略円弧形状で固定される。このような治具100を用いることで、半導体素子3に予め前処理等を行うことなく、半導体素子3と金属部材5とを接合する第2はんだ42のフィレット形状を制御することが可能となる。
【0054】
次に、治具100の第二の例について、
図9Aおよび
図9Bを参照して説明する。ここでは、第二の例との相違点について主に説明する。
【0055】
治具100は、第二の例では、複数の支柱102の支柱高さが第一の例よりも高い状態で完全に固定されており、支柱高さが半導体素子3と金属部材5との接合工程において変動しない構成となっている。治具100は、はんだ41~43の溶融時に膨張する熱伸縮部材110をさらに備え、熱伸縮部材110上にワークが配置される。
【0056】
熱伸縮部材110は、例えば、はんだ41~43が溶融する加熱時に熱膨張し、はんだ41~43が固化する冷却時に熱収縮して元の大きさに戻る所定の材料で構成される。熱伸縮部材110は、例えば、亜鉛やアルミニウムなどの金属材料あるいはその合金材料のように、熱膨張率が大きく、かつ少なくともはんだ41~43の融点で状態変化しない、すなわちはんだ41~43よりも耐熱性が高い任意の材料で構成される。熱伸縮部材110は、例えば
図9Aに示すように、はんだ41~43を溶融させる加熱工程においては、熱膨張により第1リードフレーム2を第2リードフレーム7側に押し上げ、半導体素子3と金属部材5との距離を小さくする役割を果たす。なお、このとき、複数の支柱102の先端面に載置される第2リードフレーム7は、例えば、一面7aに図示しない錘などが置かれており、熱伸縮部材110が熱膨張しているときにその位置が変動しない状態とされる。
【0057】
また、熱伸縮部材110は、例えば
図9Bに示すように、はんだ41~43を固化させる冷却工程においては、熱収縮することで、第1リードフレーム2が自重で第2リードフレーム7から離れる状態とする。つまり、熱伸縮部材110は、はんだ41~43の固化工程においては、第1リードフレーム2を介して半導体素子3と金属部材5との距離を大きくする役割を果たす。これにより、ワークは、はんだ41~43の溶融時には半導体素子3と金属部材5との距離が小さくされ、その後のはんだ41~43の固化時には当該距離が大きくなるため、はんだ41~43のフィレット形状が略円弧形状となる。
【0058】
なお、熱伸縮部材110は、例えば、矩形板状とされるが、その形状や寸法については任意であり、はんだ41~43の溶融時の加熱温度や当該温度における熱膨張率などに応じて適宜変更される。また、熱伸縮部材110は、上記した材料例に限定されるものではなく、はんだ41~43よりも耐熱性が高い他の金属材料等で構成されてもよい。
【0059】
本実施形態によれば、半導体素子3と金属部材5とのはんだ接合において、金属部材5を第2はんだ42が溶融した状態で半導体素子3との距離を大きくし、第2はんだ42を固化させることで、第2はんだ42のフィレット形状が制御された半導体装置1となる。つまり、はんだ接合時に半導体素子3と金属部材5との距離を制御することで、第2はんだ42が凝固して収縮する際に厚み方向における中心に向かって凹んだ円弧状の括れた形状となり、半導体素子3側のフィレット角αが所定未満の小さい形状に制御される。また、第2はんだ42の量に応じて、半導体素子3と金属部材5とのはんだ接合時に、一度、半導体素子3と金属部材5との距離を小さくすることで、第2はんだ42の余剰部分を金属部材5の側面5cに付着させる。これにより、半導体素子3と金属部材5との間におけるはんだ量を適正化し、第2はんだ42の形状制御の精度を確保することができる。したがって、半導体素子3にはんだ形状制御部材を設けずとも、第2はんだ42のうち半導体素子3に接する部分のフィレット角αが所定未満に制御され、半導体素子3にかかる応力が緩和された構成の半導体装置1となる。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態の半導体装置1について、図面を参照して説明する。
【0061】
本実施形態の半導体装置1は、例えば
図10に示すように、金属部材5がはんだ誘導部51を有する点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0062】
金属部材5は、本実施形態では、側面5cと下面5bとを繋ぐ部分がはんだ誘導部51となっている。はんだ誘導部51は、例えば、下面5bおよび側面5cとは異なる面であって、平面形状とされた領域であるが、これに限定されるものではなく、曲面形状を有する湾曲面であってもよいし、複数の面で構成されてもよく、その形状については適宜変更される。はんだ誘導部51は、金属部材5を半導体素子3とはんだ4で接合する際に、はんだ4の余剰部分が流れ込むスペースとなり、フィレット角αを所定以下にする効果を高める役割を果たす。はんだ誘導部51は、例えば、切削加工などの任意の方法により形成される。
【0063】
なお、はんだ誘導部51は、Auフラッシュや迎えはんだ等の処理がなされることで下面5bよりもはんだ4の濡れ性が高い状態とされてもよいし、特にはんだ4の濡れ性向上の処理がなされず、はんだ4の濡れ性が下面5bと同程度であってもよい。
【0064】
また、はんだ誘導部51は、その傾斜角度、高さや幅についてははんだ4の余剰部分の体積に応じて適宜変更されうる。ここでいう「傾斜角度」とははんだ誘導部51のなす平面と下面5bとのなす角度であり、「高さ」とは金属部材5の厚み方向に沿ったはんだ誘導部51の幅であり、「幅」とは金属部材5の平面方向に沿ったはんだ誘導部51の幅である。また、金属部材5の厚み方向とは上面5aと下面5bとを繋ぐ方向であり、平面方向とは下面5bのなす平面に対して平行な方向である。
【0065】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる半導体装置1およびその製造方法となる。また、金属部材5がはんだ誘導部51を有することで、半導体素子3と金属部材5との接合時に第2はんだ42の余剰部分が流れ込むスペースが生じ、第2はんだ42が括れ形状になり易くなり、フィレット角αを小さくする制御効果が向上する効果も得られる。
【0066】
(第2実施形態の変形例)
はんだ誘導部51は、例えば
図11に示すように、下面5bと側面5cとを繋ぐ平面形状でなく、側面5cのうち下面5b側の端部近傍であって、当該端部から離れた位置に設けられた凹部であってもよい。この場合、はんだ誘導部51は、半導体素子3と金属部材5との接合時において、第2はんだ42の余剰部分が金属部材5の側面5cに濡れ広がった際に余剰部分の一部が流れ込む溝状のスペースとして機能する。そして、はんだ誘導部51は、第2はんだ42の余剰部分の調整構造として機能し、第2はんだ42をより括れ形状になり易くする役割を果たす。はんだ誘導部51は、側面5cに設けられる凹部とされる場合、凹部形状やサイズ等については任意であり、適宜変更されうる。はんだ誘導部51は、少なくとも側面5cのうち金属部材5を半導体素子3側に押し込んだときに溶融した第2はんだ42が這い上がる範囲内に設けられる。
【0067】
本変形例によっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる半導体装置1およびその製造方法となる。
【0068】
(他の実施形態)
(1)本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0069】
(2)上記第1実施形態では、はんだ41~43が同一材料で構成される場合、はんだ41~43を固化させる工程で、第2リードフレーム7を持ち上げるか、第1リードフレーム2を自重で第2リードフレーム7から離す例について説明したが、逆でもよい。例えば、治具100の台座101側から第2リードフレーム7、第3はんだ43、金属部材5、第2はんだ42、半導体素子3、第1はんだ41、第1リードフレーム2の順に積み上げる。そして、はんだ41~43を固化させる工程では、複数の支柱102で第1リードフレーム2を持ち上げる、または熱伸縮部材110の収縮により第2リードフレーム7を自重で第1リードフレーム2から引き離す。これによっても、はんだ41~43の固化工程において、半導体素子3と金属部材5との距離が大きくされ、第2はんだ42が略円弧形状となり、フィレット形状が制御され、半導体素子3への応力が緩和される。
【0070】
(3)なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
3…半導体素子、4…はんだ、42…第2はんだ、43…第3はんだ、5…金属部材
5a…上面5a…下面、5c…側面、51…はんだ誘導部、7…リードフレーム
100…治具、101…台座、102…支柱