(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174663
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20241210BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B65G1/00 543Z
B65G1/00 511J
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092607
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北岡 丈義
(72)【発明者】
【氏名】川島 智彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 凌
【テーマコード(参考)】
3F022
5F131
【Fターム(参考)】
3F022FF01
3F022JJ09
3F022KK02
3F022MM15
3F022MM57
5F131CA47
5F131DB02
5F131DB43
5F131DB52
5F131DB54
5F131DB72
5F131DB99
5F131DC03
5F131DC04
5F131GB27
(57)【要約】
【課題】可動の保持部へのケーブルの配線を容易に行えるようにする。
【解決手段】搬送装置(キャリッジ主要部100)は、リンク機構支持部(120)に対して保持部(140)を水平に進退移動させる、それぞれリンク機構支持部と保持部とを接続する一対の多関節アーム(130A、130B)を有するリンク機構(130)を備え、ケーブル(160)が、保持部に固定された部分から進退方向の後退の向きに伸びてから前進の向きに折り返して、リンク機構支持部に対して固定され、保持部が前進するにつれてケーブルの折り返し位置(F)も前進するように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部上に設けられたリンク機構支持部と、
搬送対象物を保持する保持部と、
前記リンク機構支持部に対して前記保持部を水平に進退移動させるリンク機構であって、それぞれ前記リンク機構支持部と前記保持部とを接続する一対の多関節アームを有するリンク機構と、
前記保持部と前記リンク機構支持部とに固定されたケーブルと、を備え、
前記ケーブルは、前記保持部に固定された部分から前記保持部の進退方向の後退の向きに伸びてから、前記進退方向の前進の向きに折り返して、前記リンク機構支持部に対して固定され、
前記保持部が前記ケーブルの前記保持部に固定された部分とともに前進するにつれて、前記保持部に固定された部分と前記リンク機構支持部に対して固定された部分の間の前記ケーブルの折り返し位置も前進するように構成されている、搬送装置。
【請求項2】
前記リンク機構支持部に対して固定され、前記進退方向に延伸したケーブルガイドであって、前記ケーブルの少なくとも一部が接離可能に載置されるケーブルガイドと、を更に備え、
前記保持部が前記ケーブルの前記保持部に固定された部分とともに前進するにつれて、前記ケーブルの前記ケーブルガイド上に載置された部分が、前記進退方向の後退の向き側より順に前記ケーブルガイドから離間するように構成されている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記ケーブルは、前記保持部が最も前進した場合においても前記ケーブルガイド上に載置される部分で前記ケーブルガイドに固定されている請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記多関節アームは、前記リンク機構支持部に回動可能に接続された第1アームと、前記第1アーム及び前記保持部にそれぞれ回動可能に接続された第2アームと、を有しており、
前記ケーブルガイドは、一対の前記第2アームに挟まれた位置に配置されている、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
一対の前記第2アームは、前記ケーブルガイドを配置するための隙間を設けて前記保持部に回動可能に接続されている、請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記ケーブルは、複数の単位ケーブルが並列に配置された断面横長の構造をなしている、請求項1から5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリッジに物品を搭載し搬送する搬送装置が知られている。キャリッジにはキャリッジ本体から突出した状態で保管棚等から物品を取り上げ、また保管棚等に載置するための、キャリッジ本体から進退可能な、例えばフォークを有した保持部が設けられている。またキャリッジには保持部を進退させるためのリンク機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような搬送装置において保持部には、物品を検知する目的あるいは保持部の姿勢を検知する目的等のためセンサが設けられる。そのため可動の保持部に対して信号を伝達するケーブル(電線)が必要である。キャリッジの製造時において、このようなケーブルの配線を容易に行えるようにすることが求められる。本開示の一態様は、可動の保持部へのケーブルの配線を容易に行える搬送装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る搬送装置は、基部と、前記基部上に設けられたリンク機構支持部と、搬送対象物を保持する保持部と、前記リンク機構支持部に対して前記保持部を水平に進退移動させるリンク機構であって、それぞれ前記リンク機構支持部と前記保持部とを接続する一対の多関節アームを有するリンク機構と、前記保持部と前記リンク機構支持部とに固定されたケーブルと、を備え、前記ケーブルは、前記保持部に固定された部分から前記保持部の進退方向の後退の向きに伸びてから、前記進退方向の前進の向きに折り返して、前記リンク機構支持部に対して固定され、前記保持部が前記ケーブルの前記保持部に固定された部分とともに前進するにつれて、前記保持部に固定された部分と前記リンク機構支持部に対して固定された部分の間の前記ケーブルの折り返し位置も前進するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、可動の保持部へのケーブルの配線を容易に行える搬送装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における、本発明の搬送装置が適用されたスタッカクレーンを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る搬送装置であるキャリッジ主要部を示す斜視図である。保持部が最も後退した位置である退避位置にある状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る搬送装置であるキャリッジ主要部を示す斜視図である。保持部が最も後退した位置である退避位置にある状態を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る搬送装置であるキャリッジ主要部を示す斜視図である。保持部が最も前進した位置である進出位置にある状態を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係る搬送装置であるキャリッジ主要部を示す側面図である。保持部が最も後退した位置である退避位置にある状態を示す。
【
図6】本発明の実施形態に係る搬送装置であるキャリッジ主要部を示す側面図である。保持部が最も前進した位置である進出位置にある状態を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係る搬送装置のケーブルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態〕
<スタッカクレーンの概要>
以下、本開示の一実施形態が、図面を参照しつつ説明される。
図1は本発明が適用された装置の例示としての、スタッカクレーン1を示す図である。
図1についての説明の便宜上、図中に矢印で示されるように、上下方向、前後方向、及び左右方向を定義する。上下方向は鉛直方向である。前後方向及び左右方向は水平面に平行な方向であり、それぞれ上下方向と直交する。前後方向は左右方向と直交する。
【0009】
スタッカクレーン1は、左右方向に敷設された走行レールに沿って走行する、搬送対象物としての物品を搬送する装置である。スタッカクレーン1は、マスト10と、走行台車20と、キャリッジ30と、制御ボックス40と、を備えている。制御ボックス40には、スタッカクレーン1の各部を制御する情報処理装置である制御部が収納されている。
【0010】
走行台車20は、台車フレーム21と、走行モータユニット25とを有している。台車フレーム21は、走行レール上を転動する車輪22を支持している。走行モータユニット25が、少なくとも一部の車輪22を駆動することでスタッカクレーン1が走行レール上を自走する。
【0011】
マスト10は、台車フレーム21上に立設された上下方向に延伸する柱状の部材である。スタッカクレーン1には、一対のマスト10としての、第1マスト10A及び第2マスト10Bが設けられている。第1マスト10A及び第2マスト10Bは、左右方向すなわちスタッカクレーン1の走行方向に離間するようにして、走行台車20上に配置されている。
【0012】
第1マスト10Aと第2マスト10Bとの間にキャリッジ30が配置される。第1マスト10A及び第2マスト10Bの対向する側面のそれぞれには、キャリッジ30をマストに沿って案内する昇降ガイドレール11が設けられている。マスト10の上方には、上部フレーム14が設けられている。上部フレーム14は、第1マスト10Aの上方の端部と第2マスト10Bの上方の端部を接続するように設けられる。
【0013】
マスト10の下方には、キャリッジ30をマスト10に対して昇降させるための駆動部である昇降モータユニット15が設けられている。キャリッジ30のフレームには、昇降モータユニット15によって駆動されるワイヤあるいはベルトが接続されており、キャリッジ30がマスト10に沿って昇降することが可能なように構成されている。
【0014】
以上、本発明が適用される装置の例示としての、スタッカクレーン1を示したが、本発明が適用される装置は、スタッカクレーン1には限られない。例えば、本発明が適用される装置は、マストあるいはフレーム等を昇降する昇降台としてのキャリッジ30を備えたリフタであってもよい。
【0015】
なお、このような昇降台としてのキャリッジ30が、本発明が適用される装置とみなされてもよい。また本発明が適用される装置は、所定の軌道上を走行するあるいは無軌道走行をする台車にキャリッジ30の主要部(後述するキャリッジ主要部100)が備えられた搬送車であってもよい。
【0016】
<キャリッジ主要部:概要>
図2~6は、キャリッジ30のフレームに固定される、キャリッジ30の要部であるキャリッジ主要部100を示す図である。キャリッジ主要部100は、搬送対象物としての物品Pの移載を実行する。各図に示されるように、Z軸が鉛直方向、XY平面が水平面となるようにXYZ座標系が定義される。
【0017】
キャリッジ主要部100には搬送する物品Pを取り上げ(ピックし)、載置し(プレースし)、また保持するための保持部140が設けられている。本実施形態において、保持部140は、保持部本体141から水平方向に突き出たフォーク145を有しており、フォーク145によって保管棚等に載置された物品Pを掬うことで、物品Pを保持することが可能である。
【0018】
しかしながら、保持部140による物品の保持の方法はフォーク145を用いるものに限られず、公知の適宜の手法が適用可能である。物品の保持の方法は例えば、物品の把持による方法、係合機構による方法、磁力や真空により物品を吸着する方法などであってもよい。
【0019】
キャリッジ主要部100は、基部110、リンク機構支持部120、リンク機構130、保持部140、ケーブルガイド150、及びケーブル160を備えている。物品Pの移載を行うキャリッジ主要部100自体が、本発明の一実施形態に該当する搬送装置と見なされてもよい。基部110の底面は略水平面、すなわち基部110の底面の主面はXY平面に平行である。リンク機構支持部120は、鉛直軸(Z軸に平行な軸)の回りで回転可能に基部110に支持されている。
【0020】
<キャリッジ主要部:リンク機構>
リンク機構130は、リンク機構支持部120に支持されている。リンク機構130は、リンク機構支持部120に対して保持部140を水平に進退移動させる、一対の多関節アーム130A、130Bからなる機構である。リンク機構130を支持するリンク機構支持部120が基部110に対して回転可能であるから、スタッカクレーン1においてキャリッジ30は、
図1の前後両方向において、基部110から突出した状態で物品の授受が可能である。
【0021】
ここで、
図2~6の各図においては、基部110に対するリンク機構支持部120の回転角度を共通として固定しており、保持部140の進退移動の方向が、X軸に平行であるものとした。各図において、保持部140が保管棚等から物品を取り上げるために前進する向きを、X軸方向正の向き、保管棚等から物品を取り上げた保持部140が、物品を基部110の上方で保持するために後退する向きをX軸方向負の向きとした。
【0022】
図2及び
図3は、保持部140が最も後退した位置である退避位置にあるときのキャリッジ主要部100を示す斜視図である。
図4は、保持部140が最も前進した位置である進出位置にあるときのキャリッジ主要部100を示す斜視図である。
図5は保持部140が最も後退した位置である退避位置にあるときのキャリッジ主要部100を示す側面図である。
図6は、保持部140が最も前進した位置である進出位置にあるときのキャリッジ主要部100を示す側面図である。
【0023】
多関節アーム130Aと多関節アーム130Bは、それぞれが、リンク機構支持部120に回動可能に接続された第1アーム131と、第1アーム131及び保持部140の保持部本体141にそれぞれ回動可能に接続された第2アーム132と、を有している。多関節アーム130Aと多関節アーム130BとはXZ平面に平行な面に対して鏡面対象であるように構成されている。
【0024】
このような多関節アーム130A及び多関節アーム130Bは、SCARA(Selective Compliance Assembly Robot Arm)とも称されるタイプのロボットアームである。そのため保持部140の進退運動を可能とするリンク機構130は、SCARAタイプの進退機構と称されることがある。このようなSCARAタイプの進退機構は、例えばレール上で前後運動するフォークを用いたような進退機構と比較して、発塵やグリスの飛散が少ない特徴がある。
【0025】
リンク機構130の一対の第1アーム131の開き角を、それぞれの第1アーム131の長手方向の間の角度であって、
図2等におけるX軸方向負の向きを挟む角度と定義する。
図2及び
図3に示されるように上記開き角は、保持部140が上記退避位置にあるとき最小であり、180度未満の角度である。また
図4に示されるように上記開き角は、保持部140が上記進出位置にあるときにあるとき最大であり、180度を超える角度である。上記開き角は、リンク機構130が保持部140を前進させるにつれて大きくなり、後退させるにつれて小さくなる。
【0026】
<キャリッジ主要部:保持部>
保持部140は、上述の保持部本体141、フォーク145に加えて、接続部材142、ケーブル引き出し部143、及びケーブル固定具144を有している。接続部材142は、保持部本体141上に立設された、ケーブル引き出し部143を保持部本体141に対して固定するための部材である。
【0027】
また接続部材142は
図5及び
図6に示されるように、キャリッジ主要部100が搬送する搬送対象物である物品Pの荷崩れを防止する役割も果たしている。ケーブル固定具144は、ケーブル引き出し部143においてケーブル160を固定する部材である。物品を検知する目的あるいは保持部の姿勢を検知する目的等のため、保持部140には不図示のセンサが適宜設けられる。
【0028】
したがって保持部140のセンサへの電力供給、あるいはセンサとの間の信号の伝送のために、詳細は後述されるように、保持部140とリンク機構支持部120とに固定されたケーブル160がキャリッジ主要部100には設けられている。なお保持部140には、センサに限らず、物品を保持するための動力を備えた機構が更に設けられていてもよい。この場合には、ケーブル160は、当該機構への電力供給あるいは当該機構との間の信号の伝送のために用いられてもよい。
【0029】
<キャリッジ主要部:ケーブル、ケーブルガイドの配置等>
ケーブル160の保持部140に対する固定は、保持部140のケーブル引き出し部143において行われている。ケーブル引き出し部143は、接続部材142によって保持部本体141に固定され、保持部本体141の上方で、ケーブル160を案内している。ケーブル160は、ケーブル固定具144によって、保持部140の進退方向の後退の向き(X軸方向負の向き)に伸びるようにしてケーブル引き出し部143上にケーブル固定具144によって固定されている。
【0030】
ケーブル引き出し部143は、保持部140の進退方向の後退の向き(X軸方向負の向き)に進むにつれて、徐々に下方に向かうように湾曲している。そのため、
図2、
図3及び
図5に示されるように、保持部140が退避位置にある場合に、ケーブル160は、ケーブル固定具144から離れる向きである、保持部140の進退方向の後退の向き(X軸方向負の向き)に進むにつれて、ケーブル引き出し部143に案内されて徐々に下向き(Z軸方向負の向き)に向かうようになる。
【0031】
更にケーブル固定具144から離れるにつれて、ケーブル160は、ケーブル引き出し部143やケーブルガイド150に接触しない状態で、向きを保持部140の進退方向の前進の向き(X軸方向正の向き)へと逆転させる。すなわちケーブル160は、ケーブル引き出し部143から保持部140の進退方向の後退の向き(X軸方向負の向き)の方向に引き出された後、折り返して保持部140の進退方向の前進の向き(X軸方向正の向き)に方向を変える。保持部140の進退方向(X軸方向)におけるケーブル160の折り返し位置は、
図5において符号Fで示されている。
【0032】
保持部140の進退方向の前進の向きに折り返したケーブル160は、ケーブル引き出し部143よりも下方に(Z軸方向負の向きの方に)位置しているケーブルガイド150上にその一部が載置される状態となる。
図2、
図3及び
図5に示されるように、保持部140が退避位置にある場合に、位置Fにおいて折り返したケーブル160は、更にケーブル引き出し部143から離れた箇所において、ケーブルガイド150上に載置された状態で水平に保たれる。
【0033】
ケーブルガイド150は、保持部140の進退方向(X軸方向)に延伸した細長の部材である。ケーブルガイド150は、接続部材121を介して、リンク機構支持部120に対して固定されている。ケーブルガイド150は、ケーブル160が接離可能に載置されるように、上面として水平な面(XY平面に平行な面)が現れた板材である。ケーブル160の載置の逸脱を防止するために、
図3及び
図4に示されているように、ケーブルガイド150の上記水平な面の周囲において、板材が上向きに折り曲げられていることが好ましい。ケーブルガイド150の配置については、後述される。
【0034】
ケーブルガイド150の保持部140の進退方向の前進の向き(X軸方向正の向き)の端部付近において、ケーブル160はケーブルガイド150にケーブル固定具151によって固定される。ケーブル160において、ケーブル引き出し部143に接続部材142によって固定された箇所から、ケーブルガイド150にケーブル固定具151によって固定された箇所までは、ケーブル160の固定はなされていない。
【0035】
したがって、ケーブル引き出し部143に接続部材142によって固定された箇所からケーブルガイド150にケーブル固定具151によって固定された箇所までのケーブル160の部分は変形することが可能である。保持部140がリンク機構130によって前進させられると、ケーブル160の保持部140に固定された部分も保持部140とともに前進する(X軸方向正の向きに移動する)。
【0036】
そうすると、
図4及び
図6に示されるように、ケーブル160の一部が保持部140によって当該一部が伸びている方向に引っ張られて、ケーブル160の折り返しの位置Fが、保持部140の進退方向の前進の向き(X軸方向正の向き)に移動する。また、保持部140がリンク機構130によって前進させられるにつれて、ケーブル160のケーブルガイド150上に載置された部分が、前記進退方向の後退の向き(X軸方向負の向き)側より順に、ケーブルガイド150から離間することとなる。
【0037】
逆に保持部140が最も前進した位置である進出位置からリンク機構130によって後退させられると、ケーブル160の保持部140に固定された部分も保持部140とともに後退する(X軸方向負の向きに移動する)。そうするとケーブル160の一部が保持部140によって当該一部が伸びている方向に押し出され、ケーブル160の折り返しの位置Fが、保持部140の進退方向の後退の向き(X軸方向負の向き)に移動する。
【0038】
また、保持部140がリンク機構130によって後退させられるにつれて、ケーブル160のケーブルガイド150上から離間していた部分が、前記進退方向の前進の向き(X軸方向正の向き)側より順に、ケーブルガイド150上に載置されることとなる。
【0039】
なお、
図2等に示されるように、ケーブルガイド150のケーブル固定具151は、ケーブル160の一部がループをなすようにして、当該ループの根元でケーブル160を固定するようにしてもよい。ループをなしたケーブル160は、保持部140の側から更に離れるにつれて再び保持部140の進退方向の後退の向き(X軸方向負の向き)に向い、それからリンク機構支持部120へと進み、基部110の内部において所要の回路に接続される。
【0040】
以上のようなケーブル160の動きを実現するために、ケーブルガイド150は次のように配置されていることが好ましい。保持部140の進退方向の後退の向き(X軸方向負の向き)側のケーブルガイド150の端部は、退避位置にある保持部140よりも更に保持部140の進退方向の後退の向き(X軸方向負の向き)側に位置する。
【0041】
保持部140が最も後退した場合においても、ケーブルガイド150がケーブル160を案内することができるようにするためである。すなわち、保持部140が退避位置にある場合のケーブル160の折り返しの位置Fは、保持部140よりも更に保持部140の進退方向の後退の向き(X軸方向負の向き)側に位置する。
【0042】
保持部140の進退方向の前進の向き(X軸方向正の向き)側のケーブルガイド150の端部は、リンク機構支持部120に回動可能に接続された第1アーム131の当該回動軸よりも、保持部140の進退方向の前進の向き(X軸方向正の向き)側に位置する。すなわち、ケーブルガイド150のケーブル固定具151の位置は、当該回動軸よりも更に保持部140の進退方向の前進の向き(X軸方向正の向き)側に位置する。保持部140が最も前進した場合においても、ケーブルガイド150上に載置される部分でケーブル160がケーブルガイド150に固定されるようにするためである。また保持部140が最も前進した場合においても、リンク機構支持部120の側から保持部140へと十分にケーブル160を送り出せるようにするためである。
【0043】
ケーブルガイド150は、上下方向(Z軸方向)において、リンク機構130の第2アーム132が配置される高さにおいて、一対の第2アーム132に挟まれる位置に配置される。つまり、ケーブルガイド150は、上下方向(Z軸方向)において、リンク機構130の第1アーム131が配置される高さよりも高い位置(Z軸方向正の側の位置)に、一対の第1アーム131と干渉することなく配置される。
【0044】
そのため、第2アーム132が保持部140の保持部本体141に回動可能に接続された箇所において、一対の第2アーム132の間には、ケーブルガイド150が通過する隙間が設けられるように構成されている。すなわち一対の第2アーム132は、ケーブルガイド150を配置するための隙間を設けて保持部140の保持部本体141に回動可能に接続されている。
【0045】
換言すれば、保持部本体141の上方で保持部140から、X軸方向負の向きに伸びるように引き出されたケーブル160は、X軸方向正の向きに折り返された後、リンク機構130の第2アーム132が配置される高さにおいて、一対の第2アーム132に挟まれる位置に配置される。また、第2アーム132が保持部140の保持部本体141に回動可能に接続された箇所において、一対の第2アーム132の間には、ケーブル160が通過する隙間が設けられるように構成されている。
【0046】
ケーブルガイド150は、リンク機構支持部120上に立設された3つの接続部材121によって、上記のようにリンク機構支持部120上に固定されている。3つの接続部材121のうち、2つはケーブルガイド150の両端付近それぞれでケーブルガイド150に接続される。またもう1つはケーブルガイド150の中央部付近でケーブルガイド150に接続される。
【0047】
ケーブル160がリンク機構130の各部に干渉せずに、保持部140の進退運動に伴って動くために、ケーブル160はリンク機構130の中央の、保持部140の進退方向に沿った鉛直面内において配置されている。リンク機構130において、第1アーム131とリンク機構支持部120との接続機構は、リンク機構130の荷重をも支えるために、保持部本体141と第2アーム132の接続機構よりも頑丈に構成する必要がある。なお、これらの接続機構は、回動可能な接続機構であって例えばギアボックス等を有している。よって第1アーム131とリンク機構支持部120との接続機構は、保持部本体141と第2アーム132の接続機構と比較すると、コンパクトにすることが難しい。
【0048】
そのため、本実施形態のキャリッジ主要部100においては、リンク機構130の上記中央で、ケーブル160及びケーブルガイド150が、保持部本体141と第2アーム132の接続部の一対の第2アーム132の間の隙間を通るように構成されている。一方、第1アーム131とリンク機構支持部120の接続部において、ケーブル160及びケーブルガイド150を通すための隙間を第1アーム131の間に確保しようとすると、リンク機構130の耐荷重が低下してしまう問題が生じるのである。
【0049】
<キャリッジ主要部:ケーブルの構造>
以上の説明のように、ケーブル160はリンク機構130の中央の、保持部140の進退方向に沿った鉛直面内において屈曲運動をする。そのため、ケーブル160が当該鉛直面から逸脱することの無いように構成されていることが望ましい。
図7は、そのためのケーブル160の構成の一例を示した断面図である。
【0050】
図7においてケーブル160は、複数の単位ケーブル161が一列に並ぶようにして、互いに接続されて横長に構成されている。すなわち、ケーブル160は、複数の単位ケーブル161が並列に配置された断面横長の構造をなしている。単位ケーブル161同士の接続は、例えば溶着によって行われ得る。
【0051】
本構成によりケーブル160は、Y方向には変形しにくいようになっている。このように、キャリッジ主要部100において、単位ケーブル161が並ぶ方向が水平方向(Y方向)であり、ケーブル160がY方向に曲がり上記鉛直面から逸脱してしまうことが防止される。
【0052】
なお、
図7には単位ケーブル161の詳細な構造の一例も併せて示されている。単位ケーブル161は、複数のツイストペア線162を内蔵している。複数のツイストペア線162は充填材163と共にテープ164によって巻回され、さらにポリ塩化ビニル(PVC)等によって構成されるシースに覆われている。
【0053】
<作用、効果>
従来、リンク機構支持部から保持部へのケーブルの配線は、リンク機構を構成する各アームの内部を連通させるようにして行われていた。しかしながら、このような配線作業は極めて手間がかかり搬送装置の製造の効率化の点で課題であった。
【0054】
また、リンク機構における回動可能な接続部においてケーブルを通すためには、回動軸に沿った中空のシャフトを内部に設ける必要があった。しかし、このような構造を接続部に設けることは、リンク機構のコンパクト化と耐荷重性の両立を困難にする課題があった。しかし本実施形態によればリンク機構の接続部におけるケーブルを通すためのシャフトは不要である。本実施形態によれば、これらの課題が解消できる搬送装置が実現される。
【0055】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る搬送装置は、基部と、前記基部上に設けられたリンク機構支持部と、搬送対象物を保持する保持部と、前記リンク機構支持部に対して前記保持部を水平に進退移動させるリンク機構であって、それぞれ前記リンク機構支持部と前記保持部とを接続する一対の多関節アームを有するリンク機構と、前記保持部と前記リンク機構支持部とに固定されたケーブルと、を備え、前記ケーブルは、前記保持部に固定された部分から前記保持部の進退方向の後退の向きに伸びてから、前記進退方向の前進の向きに折り返して、前記リンク機構支持部に対して固定され、前記保持部が前記ケーブルの前記保持部に固定された部分とともに前進するにつれて、前記保持部に固定された部分と前記リンク機構支持部に対して固定された部分の間の前記ケーブルの折り返し位置も前進するように構成されている。
【0056】
本開示の態様2に係る搬送装置は、上記態様1において、前記リンク機構支持部に対して固定され、前記進退方向に延伸したケーブルガイドであって、前記ケーブルの少なくとも一部が接離可能に載置されるケーブルガイドと、を更に備え、前記保持部が前記ケーブルの前記保持部に固定された部分とともに前進するにつれて、前記ケーブルの前記ケーブルガイド上に載置された部分が、前記進退方向の後退の向き側より順に前記ケーブルガイドから離間するように構成されている。
【0057】
本開示の態様3に係る搬送装置は、上記態様2において、前記ケーブルは、前記保持部が最も前進した場合においても前記ケーブルガイド上に載置される部分で前記ケーブルガイドに固定されている。
【0058】
本開示の態様4に係る搬送装置は、上記態様2または3において、前記多関節アームは、前記リンク機構支持部に回動可能に接続された第1アームと、前記第1アーム及び前記保持部にそれぞれ回動可能に接続された第2アームと、を有しており、前記ケーブルガイドは、一対の前記第2アームに挟まれた位置に配置されている。
【0059】
本開示の態様5に係る搬送装置は、上記態様4において、一対の前記第2アームは、前記ケーブルガイドを配置するための隙間を設けて前記保持部に回動可能に接続されている。
【0060】
本開示の態様6に係る搬送装置は、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記ケーブルは、複数の単位ケーブルが並列に配置された断面横長の構造をなしている。
【0061】
本開示の態様7に係る搬送装置は、上記態様1から6のいずれかにおいて、マストと、前記マストに沿って前記基部を昇降させる昇降機構部と、前記マストが立設される走行台車と、を更に備える。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 スタッカクレーン(搬送装置)
10 マスト
11 昇降ガイドレール
14 上部フレーム
15 昇降モータユニット
20 走行台車
21 台車フレーム
22 車輪
25 走行モータユニット
30 キャリッジ
40 制御ボックス
100 キャリッジ主要部(搬送装置)
110 基部
120 リンク機構支持部
121 接続部材
130 リンク機構
130A、130B 多関節アーム
131 第1アーム
132 第2アーム
140 保持部
141 保持部本体
142 接続部材
144 ケーブル固定具
145 フォーク
150 ケーブルガイド
151 ケーブル固定具
160 ケーブル
161 単位ケーブル
162 ツイストペア線
163 充填材
164 テープ
P 物品(搬送対象物)
F ケーブルの折り返し位置