(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174667
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電子写真装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/147 20060101AFI20241210BHJP
G03G 5/05 20060101ALI20241210BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G03G5/147 502
G03G5/05 101
G03G9/097 374
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092612
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】中村 延博
(72)【発明者】
【氏名】樋山 史幸
(72)【発明者】
【氏名】西田 孟
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊太郎
【テーマコード(参考)】
2H068
2H500
【Fターム(参考)】
2H068AA03
2H068AA13
2H068BB20
2H068BB27
2H068BB51
2H068BB53
2H500AA09
2H500CB04
(57)【要約】
【課題】トナーの外添剤としてチタン酸ストロンチウムを使用した画像形成装置において電子写真感光体の耐久性を維持しつつ、低温低湿条件下においても転写性に優れた電子写真装置の提供。
【解決手段】結着樹脂として樹脂Xを含有する表面層を有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を転写媒体に転写する転写手段とを有し、前記トナーが外添剤としてチタン酸ストロンチウムを有し、前記樹脂Xが、式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とする電子写真装置を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂として樹脂Xを含有する表面層を有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を転写媒体に転写する転写手段とを有し、
前記トナーが外添剤としてチタン酸ストロンチウムを有し、
前記樹脂Xが、式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とする電子写真装置。
【化1】
【請求項2】
前記樹脂Xが、さらに式(2)で表される構造単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置。
【化2】
(式(2)中、R
1及びR
2はメチル基を表し、R
3及びR
4は互いに結合して炭素原子数5又は6のシクロアルキリデン基を表すか、又は、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
3はメチル基を表し、R
4は水素原子、又は炭素原子数2若しくは3のアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記樹脂Xに含まれる式(2)で表される構造単位の数n2に対する前記樹脂Xに含まれる式(1)で表される構造単位の数n1の比の値n2/n1は1.0以上であることを特徴とする請求項2に記載の電子写真装置。
【請求項4】
前記表面層中の結着樹脂における式(1)と式(2)で表される構造単位を含む樹脂Xの含有量が50質量%以上100質量%以下であることを特徴とする請求項2に記載の電子写真装置。
【請求項5】
前記式(2)で表される構造単位が、式(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)、又は(2-5)で表される構造単位である、請求項2に記載の電子写真装置。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項6】
前記式(2)で表される構造単位が、式(2-5)で表される構造単位である、請求項2に記載の電子写真装置。
【化8】
【請求項7】
前記表面層は、式(PE1-1)及び式(PE1-2)からなる群より選ばれる少なくとも何れかで表される構造単位と、式(PE2-1)及び式(PE2-2)からなる群より選ばれる少なくとも何れかで表される構造単位を有する樹脂Yをさらに含有する、請求項1又は2に記載の電子写真装置。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【請求項8】
前記トナーにおけるトナー粒子に対する前記チタン酸ストロンチウムの質量が0.1~1.0質量%である、請求項1又は2に記載の電子写真装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体を用いた電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置やプロセスカートリッジに搭載される電子写真感光体としては、有機光導電性物質(電荷発生物質)を含有する有機電子写真感光体(以下、単に「電子写真感光体」あるいは「感光体」とも称する。)が用いられている。近年、より長寿命の電子写真装置が求められており、そのため、画質、及び耐摩耗性(機械的耐久性)を向上させた電子写真感光体の提供が望まれている。
また、近年の電子写真装置では、上述した長寿命化への対応に加えて、転写工程を効率化することで、転写時のトナーの飛び散りを抑制して画質を向上させ、廃トナーを削減することが求められている。
【0003】
電子写真感光体の電荷輸送層用の結着樹脂として、従来、ポリカーボネート樹脂がよく使用されてきた。また、静電荷像現像用トナーの外添剤として、トナーの帯電性を制御する目的などでチタン酸ストロンチウムが使用されてきた。特許文献1では、感光体の電荷輸送層用の結着樹脂としてポリカーボネート樹脂を用い、外添剤としてチタン酸ストロンチウムを使用したトナーを用いた電子写真装置が提案されている。
【0004】
また、電荷輸送層用の結着樹脂としてポリカーボネート樹脂よりも機械的強度が高いポリアリレート樹脂を使用することで、電子写真感光体の耐久性を向上させる提案がなされている。ポリアリレート樹脂は、芳香族ジカルボン酸ポリエステル樹脂の1種である。特許文献2にポリアリレート樹脂を感光層中に含有させることにより、耐久性や、電気特性を向上させた感光体の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-131520号公報
【特許文献2】特開2011-227486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によると、感光体の耐久性の向上を目的として特許文献1に記載の電子写真感光体のポリカーボネート樹脂を特許文献2に記載のポリアリレート樹脂に置き換えた画像形成装置では、耐久後の低温低湿の環境下において転写性に改善の余地があった。
【0007】
したがって本発明の目的は、トナーの外添剤としてチタン酸ストロンチウムを使用した画像形成装置において電子写真感光体の耐久性を維持しつつ、低温低湿条件下においても転写性に優れた電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明に係る電子写真装置は、
結着樹脂として樹脂Xを含有する表面層を有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を転写媒体に転写する転写手段とを有し、
前記トナーが外添剤としてチタン酸ストロンチウムを有し、
前記樹脂Xが、式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とする。
【化1】
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トナーの外添剤としてチタン酸ストロンチウムを使用した画像形成装置において電子写真感光体の耐久性を維持しつつ、低温低湿条件下においても転写性に優れた電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
特許文献1に記載のポリカーボネート樹脂を有した電子写真感光体とチタン酸ストロンチウムを外添したトナーを使用した画像形成装置では、転写性の悪化は生じない。しかし、ポリカーボネート樹脂を耐久性の向上を目的としてポリアリレート樹脂を含有した電子写真感光体に変更した組み合わせの画像形成装置では、低温低湿条件下において、転写性の悪化が発生する。このことから、ポリアリレート樹脂を含有した電子写真感光体では転写性が悪化する理由について、本発明者らは以下のように推測している。
感光体の表面を帯電させる際に、帯電部材から感光体への放電が発生する。この際の放電エネルギーによって、感光体表面に含有される物質の放電劣化が発生し、具体的には感光体表面の結着樹脂の結合が切断される場合がある。ポリアリレート樹脂は放電によりエステル結合部分が切断され、COOH基が発生しやすい。特に低温低湿条件下では、放電が不安定なため、強い放電が発生することがあり、放電劣化の発生が顕著になりやすい。そのため、長期間の使用による繰り返し使用時に感光体表面にCOOH基が多数発生しやすい。また、チタン酸ストロンチウムはペロブスカイト結晶構造を有しており、金属であるチタンと官能基などが相互作用しやすい。特にCOOHは非共有電子対が金属であるチタンの軌道と配位結合することで強い相互作用を示す。このため、繰り返し使用時には、チタン酸ストロンチウムを外添したトナーとポリアリレート樹脂を含有した感光体との付着力が強くなり、転写性の悪化が発生していると考えられる。ポリカーボネートはCOOH基が発生しづらく、またポリアリレートに比べて機械的強度が低いため、感光体表面の摺擦によりCOOH基が除去されやすい。そのため、チタン酸ストロンチウムを、従来のポリカーボネートと組み合わせた場合は転写性の悪化はなく、ポリアリレートと組み合わせた場合は転写性の悪化が発生したと推測している。
【0012】
上記推測に基づき、トナーの外添剤としてチタン酸ストロンチウムを使用し、電子写真感光体の耐久性を向上しつつ、転写性が悪化しない手段を種々検討した結果、本発明の構成に至った。
ポリアリレート樹脂は芳香環を含むジカルボン酸由来の構造と芳香環を含むジオール(ビスフェノール)が結合した構造を有している。樹脂が芳香環の間の結合にエーテル構造を有した場合、放電劣化に対して強いことを見出した。さらに式(1)に示す構造のようにジカルボン酸由来構造とビスフェノール由来構造のそれぞれの芳香環の間にエーテル構造を同時に有する樹脂Xを使用した場合、特に放電劣化に強くなり、COOH基が発生しにくくなる。そのため、チタン酸ストロンチウムを外添したトナーとの付着力が強くなることを防ぎ、低温低湿条件での耐久においても転写性が向上したと推測している。
【0013】
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、少なくとも支持体と、支持体上に形成された感光層を有する。
本発明の電子写真感光体を製造する方法としては、後述する各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、リング塗布などが挙げられる。これらの中でも、効率性及び生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
以下、各層について説明する。
【0014】
<支持体>
本発明において、電子写真感光体は支持体を有する。本発明において、支持体は導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合又は被覆するなどの処理によって、導電性を付与してもよい。
【0015】
<導電層>
本発明において、支持体の上に導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体のムラや欠陥の被覆、干渉縞の防止が可能となる。導電層の平均膜厚は5μm以上40μm以下であることが好ましい。
導電層は、導電性粒子と、結着樹脂を含有することが好ましい。導電性粒子としては、カーボンブラック、金属粒子及び金属酸化物粒子などが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。ドープする元素やその酸化物としては、リン、アルミニウム、ニオブ、タンタルなどが挙げられる。
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズ、酸化チタンなどの金属酸化物が挙げられる。
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0016】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などをさらに含有してもよい。
導電層の平均膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましい。
導電層は、上記各材料及び溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0017】
<下引き層>
本発明において、支持体又は導電層の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
【0018】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などをさらに含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
また、下引き層は、添加剤をさらに含有してもよい。
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
下引き層は、上述の各材料及び溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0019】
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層を有する。本発明に係る電子写真感光体は、積層型感光層を有することが好ましい。
【0020】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。本発明の一実施形態として、電荷輸送層が表面層となる。
【0021】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられ、中でもチタニルフタロシアニンがより好ましい。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、ウレタン樹脂、アガロース樹脂、セルロース樹脂、カゼイン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル共重合体及びポリビニルベンザール樹脂などの樹脂(絶縁性樹脂)が挙げられる。また、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレンなどの有機光導電性ポリマーを用いることもできる。また、結着樹脂は、1種のみを使用してもよく、混合又は共重合体として2種以上を併用してもよい。
【0022】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン、メチラール、テトラヒドロフラン、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、メトキシプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、溶剤は、単独又は混合して1種又は2種以上用いることができる。
電荷発生層は、電荷発生物質としてのフタロシアニン顔料、及び必要に応じて結着樹脂を溶剤に分散させて電荷発生層用塗布液を調製し、電荷発生層用塗布液の塗膜を形成し乾燥させることによって得られる。
電荷発生層用塗布液は、電荷発生物質だけを溶剤に加えて分散処理した後に結着樹脂を加えて調製してもよいし、電荷発生物質と結着樹脂を一緒に溶剤に加えて分散処理して調製してもよい。
上記分散の際には、サンドミルやボールミルなどのメディア型分散機や、液衝突型分散機や超音波分散機などの分散機を用いることができる。
【0023】
(1-2)電荷輸送層
本発明の表面層が電荷輸送層である場合、電荷輸送層は、結着樹脂を有する。さらに、電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有することが好ましい。
【0024】
[結着樹脂]
電荷輸送層に用いられる結着樹脂は、式(1)で表される構造単位を有する樹脂Xを含有する。
【化2】
【0025】
また、樹脂Xはさらに式(2)で表される構造単位を有することが好ましい。
【化3】
式(2)中、R
1及びR
2はメチル基を表し、R
3及びR
4は互いに結合して炭素原子数5又は6のシクロアルキリデン基を表すか、又は、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
3はメチル基を表し、R
4は水素原子、又は炭素原子数2若しくは3のアルキル基を表す。
【0026】
式(1)と式(2)の構造単位を含むことで、電荷輸送層の耐摩耗性の向上と放電劣化の抑制がより向上する。耐摩耗性と放電劣化抑制が向上する理由は次のように推測される。式(2)はジカルボン酸由来構造と、ビスフェノール由来構造とを含む。そして、ジカルボン酸由来構造に耐摩耗性と放電劣化に強いエーテル構造を含み、ビスフェノール由来構造は片側にかさ高い骨格となる。
【0027】
R1とR2も含めて、主鎖に対して、対称でない位置やサイズの分子があることで、電荷輸送層中の結着樹脂と電荷輸送物質の偏在を防ぎやすい。
すると、電荷輸送層中の結着樹脂と電荷輸送物質の偏在を防いで均一になり、電荷輸送層での式(1)と式(2)の構造単位による放電劣化抑制の効果が十分に発揮され、耐摩耗性と放電劣化抑制が向上する。
【0028】
電荷輸送層の樹脂Xに含まれる式(2)で表される構造単位の数n2に対する樹脂Xに含まれる式(1)で表される構造単位の数n1の比の値n2/n1は1.0以上であることが好ましい。10.0以上であると、耐摩耗性と放電劣化抑制の効果が得られにくい。より好ましくはn2/n1は1.0以上3.0以下である。
【0029】
式(2)の好適な例としては、式(2―1)、式(2―2)、式(2―3)、式(2―4)、式(2―5)が挙げられる。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
さらにその中でも樹脂Xは式(2―5)を含むことがより好ましい。
【0030】
樹脂Xの粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、40,000以上であることがより好ましい。樹脂Xの粘度平均分子量が10,000以上であると、感光体の耐摩耗性が向上する。一方、樹脂Xの粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。樹脂Xの粘度平均分子量が80,000以下であると、樹脂Xが感光層形成用の溶剤に容易に溶解する。
【0031】
電荷輸送層は、結着樹脂として式(1)や、さらに式(2)で示される構造単位を含む樹脂X以外の樹脂をさらに含有してもよい。その他の樹脂としては、例えば、その他のポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂などがあげられる。ポリアリレート樹脂は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期共重合体、又はブロック共重合体であってもよい。
【0032】
その他のポリアリレート樹脂の構造単位としては下記のような例があげられる。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0033】
また、本発明の電子写真感光体の表面層の結着樹脂に用いられる式(1)で表される構造単位を有する樹脂Xは、式(1)で表される構造単位を有すれば、他の構造単位を有していてもよく、式(1)とは異なる他の2価のカルボン酸に由来する基及び2価の有機残基からなる構造単位との共重合体であってもよい。
電荷輸送層中の結着樹脂における式(1)と式(2)で表される構造単位を含む樹脂Xの含有量は50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0034】
電荷輸送層中の結着樹脂として、さらに下記構造を有する樹脂Yを少量含むと本発明の効果の転写性が向上し好ましい。樹脂Yはジカルボン酸由来の構造単位として式(PE1-1)及び(PE1-2)からなる群より選ばれる少なくとも何れかで表される構造単位を含み、ジオール由来の構造単位として(PE2-1)及び(PE2-2)からなる群より選ばれる少なくとも何れかで表される構造単位を有する。好ましくは、樹脂Yは好ましくは式(PE-A)で表される樹脂である。電荷輸送層におけるこれら樹脂Yの含有割合は、質量比で0.5質量%以上6.0質量%以下が好ましい。なお、式中の添え字(例えば式PE-Aにおいては2つの50.0)はそれぞれのユニットのモル比(共重合比)を示す。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0035】
樹脂Xの製造方法は、特に限定されない。例えば、ビスフェノール由来構造を構成するためのビスフェノールと、ジカルボン酸由来構造を構成するためのジカルボン酸とを重縮合させる方法が挙げられる。重縮合する合成方法は公知の方法を使用できる。
ビスフェノールとジカルボン酸は、誘導体を使用してもよい。ビスフェノールの誘導体としては芳香族ジアセテートを使用してもよい。ジカルボン酸の誘導体の例としては、ジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸ジメチルエステル、ジカルボン酸ジエチルエステル、及びジカルボン酸無水物が挙げられる。
比率n1/n2は、樹脂Xを製造する際に、ビスフェノールとジカルボン酸の種類と量を変更することにより、調整できる。
比率n1/n2は、核磁気共鳴分析や熱分解GC-MS分析によって分析し、算出することができる。
【0036】
[電荷輸送物質]
電荷輸送物質としては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)及び式(25)で表される化合物を用いるのが好ましい。
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0037】
式(20)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。a1、a2、a3、及びa4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。式(20)中、a1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR11は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。a2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR12は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。a3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR13は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。a4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR14は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。式(20)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基又はエチル基を表すことがより好ましい。a1、a2、a3、及びa4は、各々独立に、1以上3以下の整数を表すことが好ましく、1を表すことがより好ましい。
【0038】
式(21)中、R21、R22、及びR23は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R24、R25、及びR26は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。b1、b2、及びb3は、各々独立に、0又は1を表す。式(21)中、R21、R22、及びR23は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。R21、R22、及びR23は、エテニル基又はブタジエニル基に対して、フェニル基のメタ位に結合することが好ましい。R24、R25、及び26は、各々、水素原子を表すことが好ましい。b1、b2、及びb3は、何れも0を表すか、何れも1を表すことが好ましい。
【0039】
式(22)中、R31、R32、及びR33は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R34は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表す。d1、d2、及びd3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。式(22)中、d1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR31は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。d2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR32は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。d3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR33は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。式(22)中、R34は、水素原子を表すことが好ましい。d1、d2、及びd3は、各々、0を表すことが好ましい。
【0040】
式(23)中、R41、R42、R43、R44、R45、及びR46は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。R47及びR48は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。e1、e2、e3、及びe4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。e5及びe6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。e7及びe8は、各々独立に、0又は1を表す。式(23)中、e1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR41は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。e2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR42は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。e3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR43は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。e4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR44は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。e5が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR45は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。e6が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR46は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。式(23)中、R41~R46は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基又はエチル基を表すことがさらに好ましい。R47及びR48は、水素原子を表すことが好ましい。e1、e2、e3、及びe4は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましく、e1及びe2が0を表しe3及びe4が2を表すことがより好ましい。e5及びe6は、0を表すことが好ましい。e7及びe8は、何れも0を表すか、何れも1を表すことが好ましい。
【0041】
式(24)中、R50及びR51は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。R52、R53、R54、R55、R56、R57、及びR58は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。f1及びf2は、各々独立に、0以上2以下の整数を表す。f3及びf4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。式(24)中、f3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR50は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR51は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。式(24)中、R50及びR51は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。R52及びR53は、各々、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表すことが好ましい。R54~R58は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。f1及びf2は、何れも0を表すか、何れも1を表すか、何れも2を表すことが好ましい。f3及びf4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。R50及びR51が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R52及びR53が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基としては、フェニル基、又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基で1以上5以下の箇所が置換されたフェニル基が好ましい。炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されたフェニル基としては、メチルフェニル基が好ましく、4-メチルフェニル基がより好ましい。R54~R58が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はn-ブチル基を表すことが好ましい。R54~R58が表わす炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、エトキシ基がより好ましい。
【0042】
式(25)中、R61、R62、R63、R64、R65、及びR66は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、h1、h2、h4、及びh5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、h3及びh6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
【0043】
電荷輸送化合物(20)の好適な例としては、式(H-11)で表される化合物が挙げられる。電荷輸送化合物(21)の好適な例としては、式(H-7)及び(H-8)で表される化合物が挙げられる。電荷輸送化合物(22)の好適な例としては、式(H-6)で表される化合物が挙げられる。電荷輸送化合物(23)の好適な例としては、式(H-9)及び(H-10)で表される化合物が挙げられる。電荷輸送化合物(24)の好適な例としては、式(H-1)、(H-2)、(H-3)、及び(H-5)で表される化合物が挙げられる。電荷輸送化合物(25)の好適な例としては、式(H-4)で表される化合物が挙げられる。以下、式(H-1)~(H-11)で表される化合物を、各々、電荷輸送化合物(H-1)~(H-11)と記載することがある。
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【0044】
電荷輸送物質の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、30質量部以上120質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。感光層は、1種の電荷輸送化合物のみを含有してもよく、2種以上の電荷輸送化合物を含有してもよい。また、感光層は、電荷輸送化合物(20)、(21)、(22)、(23)、(24)及び(25)以外の電荷輸送化合物(以下、その他の電子輸送化合物、あるいは電子輸送物質と記載することがある)をさらに含有してもよい。その他の電荷輸送化合物としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、及びジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5-ジ(4-メチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1-フェニル-3-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物が挙げられる。
【0045】
電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
電荷輸送層の平均膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましい。
電荷輸送層は、上記各材料及び溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤又は芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0046】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂及び溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
【0047】
[トナー]
本発明に係るトナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子及び外添剤を有しており、外添剤としてはチタン酸ストロンチウムを有する。チタン酸ストロンチウムはトナーの帯電性や流動性を調節することができる。チタン酸ストロンチウムの含有量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.05~5.0質量部である。好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0048】
<結着樹脂>
本発明に係るトナー粒子が含む結着樹脂は、特段限定されず、公知のものを用いることができるが、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましい。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びその他の結着樹脂として、以下の樹脂又は重合体が例示できる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これら結着樹脂は単独又は混合して使用できる。好ましくは、スチレン系共重合体である。
結着樹脂はカルボキシ基を含有することが好ましく、カルボキシ基を含む重合性単量体を用いて製造された樹脂であることが好ましい。
カルボキシ基を含む重合性単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸;α-エチルアクリル酸、クロトン酸などのアクリル酸又はメタクリル酸のα-アルキル誘導体又はβ-アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノアクリロイルオキシエチレンエステル、フタル酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノメタクリロイルオキシエチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステル誘導体などが挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させたものを用いることができる。
カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び、トリメリット酸が挙げられる。アルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、及び、ペンタエリスリトールが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。ポリエステル樹脂は末端などのカルボキシ基はキャップしないことが好ましい。
【0049】
<ワックス>
本発明に係るトナーは、ワックスを含有してもよい。好適に用いられるワックスとしては上述した通りである。ワックスの含有量としては、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100.0質量部に対して5.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0050】
<着色剤>
着色剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180、185、193。
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
必要により、重合阻害のない物質により着色剤に表面処理を施してもよい。なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100.0質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
【0051】
<荷電制御剤>
本発明に係るトナーは荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が好ましい。
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
これら荷電制御剤は単独で又は2種類以上組み合わせて含有することができる。荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂100.0質量部に対して、0.01質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
【0052】
<トナー外添剤>
本発明に係るトナーは、外添剤としてチタン酸ストロンチウム以外に、流動性や帯電性、ブロッキング性などを向上させる目的で外添剤を含有してもよい。
外添剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などの無機微粒子が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
これらの種々の外添剤の含有量は、その合計が、トナー粒子100.0質量部に対して、好ましくは0.05~5.0質量部である。チタン酸ストロンチウムの含有量は、トナー粒子100.0質量部に対して、好ましくは、0.1~1.0質量部である。
【0053】
トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法が好ましい。湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができ、乳化凝集法がより好ましい。すなわち、トナー粒子が、乳化凝集トナー粒子であることが好ましい。
乳化凝集法は、まず結着樹脂の微粒子や着色剤などの各材料の分散液を調製する。得られた各材料の分散液を、必要に応じて分散安定剤を添加して、分散混合させる。その後、凝集剤を添加することによって所望のトナー粒子の粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行う。さらに必要に応じて、熱による形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する。
【0054】
分散安定剤としては以下のものを使用することができる。
界面活性剤として、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を使用することができる。
無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
凝集剤としては、上述した分散安定剤に使用する界面活性剤と逆極性の界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の無機金属塩を好適に用いることができる。特に無機金属塩は、多価金属元素を水系媒体中でイオン化することで、凝集性制御及びトナー帯電性制御がしやすいため好ましい。好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムの金属塩、及び、ポリ塩化鉄、ポリシリカ鉄、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウムの無機金属塩重合体である。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体、ポリシリカ鉄が好適である。一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上であることが好ましく、また、同じ価数であっても無機金属塩重合体の方がより適している。
外添装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)、ナウターミキサー、メカノハイブリッドなどを用いることができる。外添剤の被覆状態を制御するために、上記の外添装置の回転数、処理時間、ジャケットの水温・水量を調整してトナーを調製することができる。
画像の高精細、高解像の観点から、トナー粒子の重量平均粒径が3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。
【0055】
<プロセスカートリッジ及び電子写真装置>
図1に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図1において、1は円筒状(ドラム状)の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。
電子写真感光体1の表面は、回転過程において、帯電手段3により、正又は負の所定電位に帯電される。次いで、帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。像露光光4は、例えば、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段から出力される、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された光である。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーが供給されて現像(正規現像又は反転現像)され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写媒体7に転写されていく。このとき、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。また、転写媒体7が紙である場合、転写媒体7は給紙部(不図示)から取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期して給送される。
電子写真感光体1からトナー像が転写された転写媒体7は、電子写真感光体1の表面から分離された後、定着手段8へ搬送されて、トナー像の定着処理を受けることにより、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置の外へプリントアウトされる。転写媒体7にトナー像を転写した後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9により、トナー(転写残りトナー)などの付着物の除去を受けて清浄される。近年開発されているクリーナレスシステムにより、転写残りトナーを直接、現像器などで除去することもできる。さらに、電子写真感光体1の表面は、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光手段は必ずしも必要ではない。本発明においては、上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数の構成要素を容器に納めて一体に支持してプロセスカートリッジを形成する。このプロセスカートリッジを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成することができる。例えば、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9から選択される少なくとも1つを電子写真感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化する。電子写真装置本体のレールなどの案内手段12を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光であってもよい。又は、センサーで原稿を読み取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動若しくは液晶シャッターアレイの駆動などにより放射される光であってもよい。
電子写真感光体1は、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、FAX、液晶プリンター及びレーザ製版などの電子写真応用分野にも幅広く適用することができる。
【実施例0056】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0057】
[樹脂X]
(樹脂X(P1))
以下に、合成例として、下記(P1)で表される樹脂Xの合成方法を示す。
下記式(DC-1)で表される構造を有するジカルボン酸クロライドを、ジクロロメタンに溶解させ、酸クロライド溶液を調製した。
また、この酸クロライド溶液とは別に、下記式(BP-1)、式(BP-2)で表される構造を有するビスフェノールをモル比27:23で混合し、10%水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、これに、重合触媒としてトリブチルベンジルアンモニウムクロライドを添加して攪拌し、ビスフェノール溶液を調製した。
次に、酸クロライド溶液をビスフェノール溶液に攪拌しながら加え、重合を開始した。重合は、反応温度を25℃以下に保ち、攪拌しながら、3時間行った。
その後、酢酸を添加して重合反応を停止させ、水層が中性になるまで水での洗浄を繰り返した。
洗浄後、攪拌下のメタノールに滴下して、重合物を沈殿させ、この重合物を真空乾燥させて、(P1)で表される樹脂Xを得た。得られた(P1)の粘度平均分子量は46,000であった。なお、式中の添え字(例えば式P1においては2つの54.0及び46.0)はそれぞれのユニットのモル比(共重合比)を示す。
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【0058】
(樹脂X(P2)~(P15))
樹脂X(P2)~(P15)を樹脂X(P1)の製造において、使用するビスフェノールを変更し、表1に記載の比率になるように調整した以外は、樹脂X(P1)と同様に製造した。また、表1に樹脂Xの粘度平均分子量を示す。
【0059】
【0060】
以下に樹脂X(P2)~(P15)の構造を示す。
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【0061】
[樹脂Y]
樹脂Yとして、PE-Aを用意した。粘度平均分子量は23000であった。
【0062】
<電子写真感光体の製造>
電子写真感光体の各層の膜厚は、電荷発生層を除き、渦電流式膜厚計(Fischerscope、フィッシャーインスツルメント製)を用いる方法、又は、単位面積当たりの質量から比重換算する方法で求めた。電荷発生層の膜厚は、感光体の表面に分光濃度計(商品名:X-Rite504/508、X-Rite製)を押し当てて測定したマクベス濃度値と断面SEM画像観察による膜厚測定値から予め取得した校正曲線を用いて、感光体のマクベス濃度値を換算することで測定した。
【0063】
[感光体1]
<導電層>
直径24mm、長さ257.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
次に、以下の材料を用意した。
・金属酸化物粒子としての酸素欠損型酸化スズ(SnO2)で被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子(平均一次粒子径230nm)214部
・結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ-325、DIC(株)製、樹脂固形分:60質量%)132部
・溶剤としての1-メトキシ-2-プロパノール98部
これらを、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。得られた分散液に、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、平均粒径2μm)を添加した。シリコーン樹脂粒子の添加量は、ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して10質量%となるようにした。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)を分散液に添加した。次に、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料と表面粗し付与材の合計質量(すなわち、固形分の質量)が分散液の質量に対して67質量%になるように、メタノールと1-メトキシ-2-プロパノールの混合溶剤(質量比1:1)を分散液に添加した。その後、攪拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを140℃で1時間加熱することによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
【0064】
<下引き層>
表面処理された酸化チタン(数平均一次粒子径10nm)を準備した。アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いてさらに表面処理した。次いで、表面処理された酸化チタン2質量部と、ポリアミド樹脂(東レ株式会社製「アミラン CM8000」、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂)1質量部と、メタノール10質量部と、ブタノール1質量部と、トルエン1質量部とを、ビーズミルを用いて5時間混合して、下引き層用塗布液を得た。その後、得られた下引き層用塗布液を用いて上記のとおり調製された導電性基体に浸漬塗布して塗膜を形成し、130℃で30分間熱乾燥することにより、膜厚が1.5μmの下引き層を形成した。導電性基体としては、アルミニウム製のドラム状支持体を用いた。
【0065】
<電荷発生層>
電荷発生物質としてのY型チタニルフタロシアニン(1.5質量部)と、ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX-5」)(1質量部)とを、プロピレングリコールモノメチルエーテル(40質量部)及びテトラヒドロフラン(40質量部)を含む溶剤に添加した。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶剤を12時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷発生層用塗布液を作製した。得られた電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を温度100℃で10分間加熱乾燥することにより、膜厚が0.25μmの電荷発生層を形成した。
【0066】
<電荷輸送層>
電荷輸送物質として、(HTM-1)6質量部、結着樹脂として樹脂X(P1)4.5質量部、下記式で表される構造単位を含むポリアリレート樹脂(P16)5.5質量部、テトロヒドロフラン67.5質量部、トルエン22.5質量部とを混合して電荷輸送層用塗布液を作製した。得られた電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を温度120℃で30分間加熱乾燥することにより、膜厚が18μmの電荷輸送層を形成した。
【化54】
(粘度平均分子量40000)
【0067】
[感光体2~34、感光体A~N]
表2に記載の、電荷輸送層中すなわち表面層中の電荷輸送物質、結着樹脂、及び結着樹脂の含有量に対する電荷輸送物質の含有量、となるように、上記<感光体1>からそれぞれ変更して電子写真感光体を作製した。
【0068】
【0069】
ポリアリレート樹脂(P17)~(P25)は下記式で表される構造単位を含む。
【化55】
(粘度平均分子量42000)
【化56】
(粘度平均分子量42500)
【化57】
(粘度平均分子量42300)
【化58】
(粘度平均分子量43300)
【化59】
(粘度平均分子量41600)
【化60】
(粘度平均分子量42900)
【化61】
(粘度平均分子量44000)
【化62】
(粘度平均分子量45000)
【化63】
(粘度平均分子量46200)
【0070】
(ポリカーボネート樹脂)
以下のポリカーボネート樹脂を準備した
三菱瓦斯化学株式会社製「ユーピロンZ400」(粘度平均分子量40,000)
以下、トナーの製造例について説明する。
【0071】
<結着樹脂粒子分散液の調製例>
スチレン78.0部、アクリル酸ブチル20.7部、カルボキシ基付与モノマーとしてアクリル酸1.3部、n-ラウリルメルカプタン3.2部を混合し溶解させた。この溶液にネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.5部のイオン交換水150部の水溶液を添加して、分散させた。
さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部のイオン交換水10部の水溶液を添加した。窒素置換をした後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.2μmの樹脂粒子分散液1を得た。
得られた樹脂粒子は、酸価を測定するために、一部について、界面活性剤を除去するために純水による洗浄、並びに減圧乾燥した。樹脂の酸価を測定した結果、9.5mgKOH/gであることを確認した。
【0072】
<離型剤分散液の調製例>
ベヘン酸ベヘニル(融点:72.1℃)100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水385部に混合させ、湿式ジェットミル JN100((株)常光製)を用いて約1時間分散して離型剤分散液を得た。離型剤分散液の濃度は20質量%であった。
【0073】
<着色剤分散液の調製例>
着色剤としてカーボンブラック「Nipex35(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)」100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液を得た。
【0074】
<トナーの製造例>
樹脂粒子分散液265部、ワックス分散液1:10部、着色剤分散液10部をホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた。撹拌しながら
容器内の温度を30℃に調整して、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整した。
凝集剤として、塩化アルミニウム0.25部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を、30℃攪拌下、10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、50℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定する。重量平均粒径が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム0.9部とネオゲンRK5.0部を添加して粒子成長を停止させた。
1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=9.0に調整してから95℃まで昇温し、凝集粒子の球形化を行った。平均円形度が0.980に到達したら降温を開始し、室温まで冷却して、トナー粒子分散液を得た。
得られたトナー粒子分散液に塩酸を添加してpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキは、乾燥を行い、さらに分級機を用いて、重量平均粒径(D4)が6.0μmになるように分級して、トナー粒子を得た。
上記で得られたトナー粒子(100部)に対して、外添剤としてチタン酸ストロンチウム粒子(0.7部)(個数平均1次粒子径70nm)と、ジメチルシリコーンオイルで表面処理したシリカ粒子(2.5部)(個数平均1次粒子径12nm)を、FM10C(日本コークス工業株式会社製)によって外添混合した。外添条件は、下羽根をA0羽根とし、デフクレターの壁との間隔を20mmにセットさせ、トナー粒子の仕込み量:2.0kg、回転数:66.6s-1、外添時間:10分、冷却水を温度20℃・流量10L/minで行った。
その後、目開き200μmのメッシュで篩い、トナーを得た。
【0075】
<実施例1>
<評価>
上記で作製した電子写真感光体とトナーを用いて、以下の評価を行った。評価結果を表3に示す。
電子写真装置としてヒューレットパッカード社製のレーザービームプリンター、商品名HP LaserJet Enterprise Color M553dnの改造機を使用した。改造点としては、帯電ローラーへの印加電圧の調節及び測定、像露光光量の調節及び測定、転写工程の印加電圧の調節及び測定ができるように改造した。
ブラックトナーカートリッジからトナーを抜き取り、作成したトナーに詰め替えた。また、感光体1をブラックトナーカートリッジに装着した。
続いて、15℃10%RHの低温低湿の環境下において、A4サイズの普通紙に対し、印字比率1%のテストチャートによる画像出力を10000枚出力した。帯電条件としては、暗部電位が-500V、露光条件としては、像露光光量を0.25μJ/cm2に調整した。用紙は、普通紙CS-680(68g/m2)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)を用いた。
【0076】
[耐摩耗性の評価]
10,000枚の繰り返し画像出力前後の感光体膜厚の差から、電荷輸送層の摩耗量を求めた。
【0077】
[転写性の評価]
10,000枚の繰り返し画像出力後、普通紙CS-680に30mm幅の全ベタ画像を用紙の縦方向に出力し、ベタ画像形成時の出力を停止させて電子写真感光体上の転写残トナーを、透明なポリエステル製の透明テープ(ポリエステルテープ 5511 ニチバン)を用いて捕集した。
転写残トナーの濃度測定は以下の手法で行った。電子写真感光体の表面から剥がした転写残トナーを捕集した透明テープと、新品の透明テープをそれぞれ高白色紙上(GFC081 キヤノン)に貼った。そして、転写残トナー捕集部の透明テープの濃度D1と、新品の透明テープ部の濃度D0をそれぞれX-Riteカラー反射濃度計(X-rite社製、X-rite 500Series)で測定した。
測定により得られる差分「D1-D0」を転写残トナーの濃度とした。転写残トナー濃度は、数値が小さいほど転写残トナーが少ないことを意味している。
【0078】
(評価基準)
A:転写残濃度が0.02未満
B:転写残濃度が0.02以上0.06未満
C:転写残濃度が0.06以上0.10未満
D:転写残濃度が0.10以上
【0079】
【0080】
<実施例2~34>
実施例2~34では、表3に示すように感光体2~34及びトナーをそれぞれ用いてプロセスカートリッジを作製し、実施例1と同様の画像出力試験を行った。それぞれの評価結果を表3に示す。
【0081】
<比較例1~14>
比較例1~14では、表3に示すように感光体A~N及びトナーをそれぞれ用いてプロセスカートリッジを作製し、実施例1と同様の画像出力試験を行った。それぞれの評価結果を表3に示す。
【0082】
本発明の実施形態は以下の構成を含む。
[構成1]
結着樹脂として樹脂Xを含有する表面層を有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を転写媒体に転写する転写手段とを有し、
前記トナーが外添剤としてチタン酸ストロンチウムを有し、
前記樹脂Xが、式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とする電子写真装置。
【化64】
[構成2]
前記樹脂Xが、さらに式(2)で表される構造単位を含むことを特徴とする構成1に記載の電子写真装置。
【化65】
(式(2)中、R
1及びR
2はメチル基を表し、R
3及びR
4は互いに結合して炭素原子数5又は6のシクロアルキリデン基を表すか、又は、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
3はメチル基を表し、R
4は水素原子、又は炭素原子数2若しくは3のアルキル基を表す。)
[構成3]
前記樹脂Xに含まれる式(2)で表される構造単位の数n2に対する
前記樹脂Xに含まれる式(1)で表される構造単位の数n1の比の値n2/n1は1.0以上であることを特徴とする請求項2に記載の電子写真装置。
[構成4]
前記表面層中の結着樹脂における式(1)と式(2)で表される構造単位を含む樹脂Xの含有量が50質量%以上100質量%以下であることを特徴とする構成2又は3に記載の電子写真装置。
[構成5]
前記式(2)で表される構造単位が、式(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)、又は(2-5)で表される構造単位である、構成2から4のいずれか1項に記載の電子写真装置。
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【化70】
[構成6]
前記式(2)で表される構造単位が、式(2-5)で表される構造単位である、構成2から5のいずれか1項に記載の電子写真装置。
【化71】
[構成7]
前記表面層は、式(PE1-1)及び式(PE1-2)からなる群より選ばれる少なくとも何れかで表される構造単位と、式(PE2-1)及び式(PE2-2)からなる群より選ばれる少なくとも何れかで表される構造単位を有する樹脂Yをさらに含有する、構成1から6のいずれか1項に記載の電子写真装置。
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
[構成8]
前記トナーにおけるトナー粒子に対する前記チタン酸ストロンチウムの質量が0.1~1.0質量%である、請求項1から7のいずれか1項に記載の電子写真装置。