(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174674
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】テールクリアランス計測システムおよびテールクリアランス計測方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G01C15/00 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092629
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】志田 智之
(57)【要約】
【課題】高い精度でテールクリアランスを計測できるテールクリアランス計測システムおよびテールクリアランス計測方法を提供する。
【解決手段】シールド掘削機2のスキンプレート3とセグメント4との間のテールクリアランスを計測するテールクリアランス計測システム1であって、撮像手段および深度情報取得手段を有する情報取得手段10と、解析手段20とを備える。解析手段20は、視差量とセグメント4の継手面4bの3次元形状とに基づいて、画像においてセグメント4の基準点が含まれる範囲を特定するセグメント基準点範囲特定手段22と、前記画像の前記範囲に対して画像処理を実施し、当該画像上でのセグメント4の基準点を特定するセグメント基準点特定手段23とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘削機のスキンプレートとセグメントとの間のテールクリアランスを計測するテールクリアランス計測システムであって、
前記スキンプレートと前記セグメントとを含む画像を撮像する撮像手段と、
前記セグメントの継手面までの距離に関する深度情報を取得する深度情報取得手段と、
前記画像上の前記スキンプレートと前記セグメントとの位置関係に基づいて、前記テールクリアランスを求める解析手段と、を備え、
前記解析手段は、前記深度情報を用いて前記画像上での前記セグメントと前記スキンプレートの位置を特定する、
ことを特徴とするテールクリアランス計測システム。
【請求項2】
前記解析手段は、
前記撮像手段と前記深度情報取得手段との視差量と、前記深度情報に基づいて認識可能な前記継手面の3次元形状とに基づいて、前記画像において前記セグメントの基準点が含まれる範囲を特定するセグメント基準点範囲特定手段と、
前記画像の前記範囲に対して画像処理を実施し、当該画像上での前記セグメントの基準点を特定するセグメント基準点特定手段と、
前記深度情報と前記撮像手段の画角とに基づいて、前記画像上での前記スキンプレートの基準点を特定するプレート基準点特定手段と、
前記画像上での前記セグメントの基準点と前記スキンプレートの基準点との間の画素数に基づいて、テールクリアランスを求めるテールクリアランス算出手段と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のテールクリアランス計測システム。
【請求項3】
前記継手面に関する設計データを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記セグメント基準点範囲特定手段は、
前記3次元形状の任意断面における断面形状と、前記設計データにおける前記継手面の断面形状とを、縮尺および位置を調整して重ね合わせ、前記設計データにおける継手面の基準点を、前記3次元形状における継手面の基準点として決定し、
決定した前記3次元形状の基準点を前記視差量によって補正することで、前記画像上で前記セグメントの基準点が含まれる範囲として特定する、
ことを特徴とする請求項2に記載のテールクリアランス計測システム。
【請求項4】
前記セグメント基準点範囲特定手段は、回帰分析手法によって重ね合わせの完了を判定する、ことを特徴とする請求項3に記載のテールクリアランス計測システム。
【請求項5】
前記深度情報取得手段は、構造化照明方式またはTime of Flight方式のデプスカメラである、ことを特徴とする請求項1に記載のテールクリアランス計測システム。
【請求項6】
前記セグメント基準点特定手段は、空間高周波検出フィルタまたはハフ変換により前記画像上での前記セグメントの基準点を特定する、
ことを特徴とする請求項2に記載のテールクリアランス計測システム。
【請求項7】
前記撮像手段は、
シールドジャッキが最小ストロークの状態において、前記スキンプレートと前記セグメントとの隙間周辺を撮影可能な画角に設定された近距離撮影用の第1撮像手段と、
前記シールドジャッキが最大ストロークの状態において、前記隙間周辺を撮影可能な画角に設定されている遠距離撮影用の第2撮像手段と、を少なくとも有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のテールクリアランス計測システム。
【請求項8】
シールド掘削機のスキンプレートとセグメントとの間のテールクリアランスを計測するテールクリアランス計測方法であって、
前記スキンプレートと前記セグメントとを含む画像および前記セグメントの継手面までの距離に関する深度情報を、撮像手段および深度情報取得手段によって取得する情報取得工程と、
前記画像上の前記スキンプレートと前記セグメントとの位置関係に基づいて、前記テールクリアランスを求める解析工程と、を有し、
前記解析工程では、前記深度情報を用いて前記画像上での前記セグメントと前記スキンプレートの位置を特定する、
ことを特徴とするテールクリアランス計測方法。
【請求項9】
前記解析工程は、
前記撮像手段と前記深度情報取得手段との視差量と、前記深度情報に基づいて認識可能な前記継手面の3次元形状とに基づいて、前記画像において前記セグメントの基準点が含まれる範囲を特定するセグメント基準点範囲特定工程と、
前記画像の前記範囲に対して画像処理を実施し、当該画像上での前記セグメントの基準点を特定するセグメント基準点特定工程と、
前記深度情報と前記撮像手段の画角とに基づいて、前記画像上での前記スキンプレートの基準点を特定するプレート基準点特定工程と、
前記画像上での前記セグメントの基準点と前記スキンプレートの基準点との間の画素数に基づいて、テールクリアランスを求めるテールクリアランス算出工程と、を有する、
ことを特徴とする請求項8に記載のテールクリアランス計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テールクリアランス計測システムおよびテールクリアランス計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工事の施工管理項目の1つとして「テールクリアランス」がある。テールクリアランスは、シールド掘削機のテール内に組み立てられたセグメントの外周面と、シールド掘削機の鋼殻(スキンプレート)の内周面との距離である。
従来では、シールド掘進の完了時やセグメント組み立ての完了時に、作業員が所定の場所に移動し、測定具(例えば、コンベックスやノギス)を用いてテールクリアランスを測定していた。また、テールクリアランスの計測に関して、例えば、カメラやラインレーザ計測器を用いてテールクリアランスを計測する技術が存在する(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-023632号公報
【特許文献2】特開2009-025252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業員が測定具を用いてテールクリアランスを測定する場合、測定箇所への移動等が必要であり、工事の作業効率がその分だけ低下する。また、測定箇所が高所の場合、慎重に作業を行うため、測定箇所が低所である場合に比べて時間を要するという問題もある。
また、カメラ等を用いてテールクリアランスを計測する場合、撮影条件によっては計測ができない場合があった。例えば、
図16(b)に示すように、水濡れしたスキンプレートなどが光を反射してセグメントと同じ色と認識される場合や、
図16(c)に示すように、テールグリスがセグメントと同じ色と認識される場合は、カメラによる計測は適さない。なお、
図16(a)は、テールクリアランスを計測可能な状態を示している。
このような観点から、本発明は、高い精度でテールクリアランスを計測できるテールクリアランス計測システムおよびテールクリアランス計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るテールクリアランス計測システムは、シールド掘削機のスキンプレートとセグメントとの間のテールクリアランスを計測するシステムである。このテールクリアランス計測システムは、撮像手段と、深度情報取得手段と、解析手段とを備える。
撮像手段は、前記スキンプレートと前記セグメントとを含む画像を撮像する。深度情報取得手段は、前記セグメントの継手面までの距離に関する深度情報を取得する。解析手段は、前記深度情報を用いて前記画像上での前記セグメントと前記スキンプレートの位置を特定し、前記画像上の前記スキンプレートと前記セグメントとの位置関係に基づいてテールクリアランスを求める。前記解析手段は、セグメント基準点範囲特定手段と、セグメント基準点特定手段と、テールクリアランス算出手段とを有する。
セグメント基準点範囲特定手段は、前記撮像手段と前記深度情報取得手段との視差量と、前記深度情報に基づいて認識可能な前記継手面の3次元形状とに基づいて、前記画像において前記セグメントの基準点が含まれる範囲を特定する。セグメント基準点特定手段は、前記画像の前記範囲に対して画像処理を実施し、当該画像上での前記セグメントの基準点を特定する。プレート基準点特定手段は、前記深度情報と前記撮像手段の画角とに基づいて、前記画像上での前記スキンプレートの基準点を特定する。テールクリアランス算出手段は、前記画像上での前記セグメントの基準点と前記スキンプレートの基準点との間の画素数に基づいて、テールクリアランスを求める。
【0006】
本発明に係るテールクリアランス計測システムにおいては、深度情報取得手段で取得した情報に基づいて画像上でセグメントの基準点が含まれる範囲を特定し、当該範囲に画像処理を実施して画像上での基準点を特定する。そのため、特定した範囲から外れる外乱に影響されることなく画像処理を実施できる。その結果、画像から基準点を直接認識するよりも誤認識が起こり難い。
【0007】
前記継手面に関する設計データを記憶する記憶手段をさらに備えてもよい。その場合、前記セグメント基準点範囲特定手段は、前記3次元形状の任意断面における断面形状と、前記設計データにおける前記継手面の断面形状とを、縮尺および位置を調整して重ね合わせ、前記設計データにおける継手面の基準点を、前記3次元形状における継手面の基準点として決定する。そして、決定した前記3次元形状の基準点を前記視差量によって補正することで、前記画像上で前記セグメントの基準点が含まれる範囲として特定してもよい。
また、前記セグメント基準点範囲特定手段は、回帰分析手法によって重ね合わせの完了を判定してもよい。また、前記深度情報取得手段は、構造化照明方式またはTime of Flight方式のデプスカメラであってもよい。また、前記セグメント基準点特定手段は、空間高周波検出フィルタまたはハフ変換により前記画像上での前記セグメントの基準点を特定してもよい。
【0008】
前記撮像手段は、シールドジャッキが最小ストロークの状態において、前記スキンプレートと前記セグメントとの隙間周辺を撮影可能な画角に設定された近距離撮影用の第1撮像手段と、前記シールドジャッキが最大ストロークの状態において、前記隙間周辺を撮影可能な画角に設定されている遠距離撮影用の第2撮像手段とを少なくとも有する構成であってもよい。
このようにすると、オートフォーカス機能を使わないので、当該機能を実現するための機構に起因する誤差を排除することができる。そのため、高い精度でテールクリアランスを計測できる。
【0009】
本発明に係るテールクリアランス計測方法は、シールド掘削機のスキンプレートとセグメントとの間のテールクリアランスを計測する方法である。このテールクリアランス計測方法は、情報取得工程と、解析工程とを有する。
情報取得工程では、前記スキンプレートと前記セグメントとを含む画像および前記セグメントの継手面までの距離に関する深度情報を、撮像手段および深度情報取得手段によって取得する。解析工程では、前記深度情報を用いて前記画像上での前記セグメントと前記スキンプレートの位置を特定し、前記画像上の前記スキンプレートと前記セグメントとの位置関係に基づいてテールクリアランスを求める。解析工程は、セグメント基準点範囲特定工程と、セグメント基準点特定工程と、プレート基準点特定工程と、テールクリアランス算出工程とを有する。
セグメント基準点範囲特定工程では、前記撮像手段と前記深度情報取得手段との視差量と、前記深度情報に基づいて認識可能な前記継手面の3次元形状とに基づいて、前記画像において前記セグメントの基準点が含まれる範囲を特定する。セグメント基準点特定工程では、前記画像の前記範囲に対して画像処理を実施し、当該画像上での前記セグメントの基準点を特定する。プレート基準点特定工程では、前記深度情報と前記撮像手段の画角とに基づいて、前記画像上での前記スキンプレートの基準点を特定する。テールクリアランス算出工程では、前記画像上での前記セグメントの基準点と前記スキンプレートの基準点との間の画素数に基づいて、テールクリアランスを求める。
【0010】
本発明に係るテールクリアランス計測方法においては、深度情報取得手段で取得した情報に基づいて画像上でセグメントの基準点が含まれる範囲を特定し、当該範囲に画像処理を実施して画像上での基準点を特定する。そのため、特定した範囲から外れる外乱に影響されることなく画像処理を実施できる。その結果、画像から基準点を直接認識するよりも誤認識が起こり難い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い精度でテールクリアランスを計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るテールクリアランス計測システムの構成図である。
【
図2】情報取得手段とスキンプレートとセグメントとの位置関係を示した概略図である。
【
図3】撮像手段によって撮像した画像の一例である。
【
図4】撮像手段を説明するための図であり、(a)は第1撮像手段の撮影イメージであり、(b)は第2撮像手段の撮影イメージである。
【
図5】セグメント基準点範囲特定手段の処理を説明するための図であり、(a)はデプス画像の例示であり、(b)はデプス画像の断面イメージであり、
図5(a)のVB-VBに対応する断面イメージである。
【
図6】セグメント基準点範囲特定手段の処理を説明するための図であり、(a)は実測したセグメントの断面形状に設計データの断面形状を重ね合わせる工程を示し、(b)は実測したセグメントの断面形状に設計データの断面形状が重ね合わさった状態を示している。
【
図7】セグメント基準点範囲特定手段の処理を説明するための図であり、(a)はデプス画像の例示であり、(b)および(c)は画像の例示である。
【
図8】エッジ検出処理を説明するための図であり、(a)は垂直方向空間高周波検出フィルタを用いた処理のイメージであり、(b)はハフ変換処理のイメージである。
【
図9】プレート基準点特定手段の処理を説明するための図であり、(a)は基準点までの距離が「4m」の場合を示し、(b)は基準点までの距離が「3m」の場合を示し、(c)は距離に応じた画像内での基準点の位置を示している。
【
図10】画像上での基準点の位置の計算方法を説明するための図であり、(a)は撮像手段の位置および画角、スキンプレートの位置、並びに基準点の位置の関係を示す概略図であり、(b)距離と画像内での基準点との関係を示す図である。
【
図11】画像上での基準点の位置の計算方法を説明するための図であり、(a)は撮像手段が有するレンズの画角の一例であり、(b)は距離と基準点の垂直座標との関係を示した表である。
【
図12】(a)は撮像手段の画角と視野高さとの関係を示す図であり、(b)はテールクリアランス算出手段の処理を説明するための図である。
【
図13】テールクリアランス計測方法の工程を示したフローチャートの例示である。
【
図14】本発明の実施形態に係るテールクリアランス計測システムの効果を検証するために行ったシミュレーションの内容を説明するための図であり、(a)はテールクリアランス計測システムの概略図であり、(b)はレンズの画角であり、(c)は距離と1画素当たりの長さとの関係を示した表であり、(d)は、距離とテールクリアランスとの関係を示した表である。
【
図15】本発明の実施形態に係るテールクリアランス計測システムの効果を説明するための図であり、(a)は従来のRGBカメラを用いて基準点を誤認識した場合を示し、(b)は実際に物体がない位置に基準点を設定する場合を示している。
【
図16】課題を説明するための図であり、(a)はテールクリアランスを計測可能な状態を示し、(b)および(c)はテールクリアランスを計測不可能な状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0014】
<実施形態に係るテールクリアランス計測システムの構成>
図1および
図2を参照して、実施形態に係るテールクリアランス計測システム1の構成について説明する。
図1は、テールクリアランス計測システム1の構成図である。
図2は、情報取得手段10とスキンプレート3とセグメント4との位置関係を示した概略図である。
図1に示すテールクリアランス計測システム1は、シールド工事においてテールクリアランスを自動で計測可能なシステムである。シールド掘削機2は、前端に設けられたカッター5を回転させながら、後方に組み付けられたセグメント4の継手面(前端面)4bにシールドジャッキ6を押し付けることで、推進力を得て地山を掘削する。シールドジャッキ6(
図1ではシールド掘削機2の上下のみ図示)は、円周方向に所定ピッチで複数配設されている。
【0015】
図1に示すスキンプレート3は、筒状の部材である。スキンプレート3の後部において、複数のセグメント4を周方向に連結することによりセグメントリングが形成される。スキンプレート3の内周面3aとセグメント4の外周面4aとの間には隙間が形成されている。
スキンプレート3の後端部の内側には、テールシール8が設けられている。テールシール8は、地下水、土砂、裏込め材などがスキンプレート3とセグメント4との隙間からシールド掘削機2内に流入することを防止するものである。テールシール8は、例えばワイヤブラシ製であり、グリースが充填されている。
【0016】
テールクリアランスは、シールド掘削機2のテール内におけるセグメント4の外周面4aと、シールド掘削機2のスキンプレート3の内周面3aとの距離であり、シールド工事の施工管理項目の1つである。例えば、
図2に示すセグメント4に設定した基準点4cと、スキンプレート3に設定した基準点3cとの距離を測定する。セグメント4側の基準点4cは、外周面4aと継手面(前端面)4bとの境界部分に設定されており、スキンプレート3の基準点3cは、基準点4cから径方向外側に向かった位置である。本実施形態におけるセグメント4は、継手面4bの上縁部および下縁部に段差形状が形成されており、外周面4aと当該外周面4aから連続する垂直面との境界部分に基準点4cが設定されている。
【0017】
図1に示すように、テールクリアランス計測システム1は、一つ以上の情報取得手段10と、解析手段20とを備える。
情報取得手段10および解析手段20は、シールド掘削機2内に設置される。情報取得手段10と解析手段20とはデータ通信可能に接続されている。データ通信方法は特に限定されず、有線および無線の何れであってもよい。なお、解析手段20は、シールド掘削機2の外部(例えば、トンネル坑外の事務所内)に設置することも可能である。また、情報取得手段10が解析手段20の機能を備えるように構成されてもよい(つまり、情報取得手段10および解析手段20が単一の装置として構成されてもよい)。
【0018】
(情報取得手段)
図1に示す情報取得手段10は、テールクリアランスの算出に必要な情報を取得する。本実施形態での情報取得手段10は、シールドジャッキ6の取付け位置(例えば、リングガーダー)に設置される。
図2に示すように、情報取得手段10は、深度情報取得手段11と、少なくとも一つ以上の撮像手段12(本実施形態では第1撮像手段12Aと、第2撮像手段12Bとの二つ)とを有する。なお、本実施形態では、情報取得手段10として、深度情報取得手段11および撮像手段12が一つの筐体内に収納された単一の装置を想定しているが、これらの構成要素が別々の筐体内に収納されることで複数の装置を構成してもよい。情報取得手段10は、シールドジャッキ6に対して周方向にずれた位置に配置され、スプレッダー6aの間からセグメント4の撮影やセグメント4の深度情報を取得する。
【0019】
深度情報取得手段11は、当該深度情報取得手段11の基準点から対象物までの距離である深度に関する深度情報を取得することが可能である。深度情報取得手段11は、例えばデプスカメラであり、本実施形態では深度情報取得手段11として「構造化照明方式」や「Time of Flight(ToF)方式」のデプスカメラを想定する。この場合の深度は、レンズから対象物までの距離である。このデプスカメラで取得したデプス画像(深度画像)の画素値は、対象物までの距離を示す。深度情報取得手段11は、
図2に示すスキンプレート3とセグメント4との隙間7の周辺の情報を取得可能に設置される。深度情報取得手段11は、取得した深度情報を解析手段20に出力する。なお、深度情報取得手段11として3Dスキャナ、レーザー距離計を用いることも可能である。また、深度情報取得手段11は、掘進管理システム40(
図1参照)から深度情報を取得してもよい。シールドジャッキ6のストローク値を別手段(例えばジャッキ内包型のストローク計やレーザー距離計)で測定し、測定したストローク値を掘進管理システム40側に提供する。掘進管理システム40は、提供されたストローク値からセグメント4までの距離(深度情報)を求めて、深度情報を深度情報取得手段11に送信する。
【0020】
撮像手段12は、対象物の画像を撮像することが可能であり、例えばRGBカメラである。撮像手段12は、深度情報取得手段11と同じ対象物を撮像するように設置され、本実施形態では
図2に示すスキンプレート3とセグメント4との隙間7およびその周辺を撮像可能に設置される。深度情報取得手段11で取得したデプス画像と撮像手段12で取得したRGB画像とは、画像上の位置にズレが生じないようになっており(例えば、二つの画像の位置を合わせるための補正を行っている)、深度情報取得手段11の解像度ではクリアランス測定精度が不足するため、高解像度の撮像手段12を組み合わせて測定精度を高めている。
【0021】
図2に示す第1撮像手段12Aと第2撮像手段12Bとは、焦点が固定されており、各々が異なる焦点距離Lに設定されている(
図4参照)。
図4(a)は第1撮像手段12Aの撮影イメージであり、(b)は第2撮像手段12Bの撮影イメージである。
例えば、
図4(a)に示すように、第1撮像手段12Aは、焦点距離LAが短く設定されており、シールドジャッキ6(
図1参照)が最小ストロークの状態において隙間7の周辺を適切に撮影可能な画角になっている(つまり、近距離撮影用の設定である)。一方、第2撮像手段12Bは、焦点距離LBが長く設定されており、シールドジャッキ6(
図1参照)が最大ストロークの状態において隙間7の周辺を適切に撮影可能な画角になっている(つまり、遠距離撮影用の設定である)。撮像手段12は、作成した画像データを解析手段20に出力する。
【0022】
(解析手段)
図1に示す解析手段20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなるコンピュータである。解析手段20は、撮像手段12によって撮影した画像上のスキンプレート3とセグメント4との位置関係に基づいて、テールクリアランスを求める。具体的には、
図3に示す画像Fに写るセグメント4の基準点4cと、スキンプレート3の基準点3cとの距離に基づいてテールクリアランスを求める。
図3は、撮像手段12によって撮像した画像Fの一例である。画像F上の基準点3c,4cの位置は、深度情報取得手段11で取得した情報などを用いた解析によって特定する。
図1に示すように、解析手段20は、記憶手段21と、セグメント基準点範囲特定手段22と、セグメント基準点特定手段23と、プレート基準点特定手段24と、テールクリアランス算出手段25とを有する。解析手段20が備える機能は、例えばCPUによるプログラムの実行処理により実現される。
【0023】
記憶手段21には、テールクリアランスの算出に必要な情報が格納されている。例えば、記憶手段21には、セグメント4の継手面4bに関する設計データが記憶されている。継手面4bに関する設計データには、例えば基準点4cに関する情報が含まれる。
また、記憶手段21には、深度情報取得手段11と撮像手段12との視差量に関する情報が記憶されている。深度情報取得手段11と撮像手段12とは、例えば前後方向に直交する平面上(上下左右で構成される平面上)に並べて配置されており、光軸が偏心している。また、深度情報取得手段11と撮像手段12とではレンズが異なるため、画角やレンズ歪みの違いがある。これらを原因とする画像の違い「視差(パララックス)量」を補正するための情報が記憶されている。特定の被写体を同時に撮影しその関係を関数化するキャリブレーションを実施することで、当該視差量が既知となる。
また、記憶手段21には、深度情報取得手段11および撮像手段12と、スキンプレート3との位置関係に関する情報が記憶されている。深度情報取得手段11および撮像手段12は、不動点に設置されており、スキンプレート3との位置関係は不変である。当該情報は、例えばスキンプレート3から深度情報取得手段11および撮像手段12までの距離である。
【0024】
図5ないし
図12を参照して(適宜、
図1ないし
図4を参照)、解析手段20におけるテールクリアランスの算出処理について説明する。ここでは、最下部に配置されるセグメント4(
図1参照)に注目し、セグメント4の基準点4cとして最下点の位置(下端位置)を想定して説明する。
図1に示すセグメント基準点範囲特定手段22は、深度情報取得手段11によって取得した深度情報に基づいて認識可能な継手面4bの3次元形状に基づいて、画像F上におけるセグメント4の基準点4cのおおよその範囲(基準点4cが含まれる可能性が高い範囲)を特定する。具体的には、
図5(a)に示すデプス画像G1を任意断面で切断し、
図5(b)に示すように継手面4bの3次元形状の断面イメージ104(断面形状)を作成する。
図5は、セグメント基準点範囲特定手段22の処理を説明するための図であり、(a)はデプス画像の例示であり、(b)はデプス画像の断面イメージであり、
図5(a)のVB-VBに対応する断面イメージである。デプス画像G1を切断する断面は、水平面(前後左右で構成される平面)に直交する方向のものであるのがよく、その場合には継手面4bを横方向からみた断面イメージ104(断面形状)が作成される(
図5(b)を参照)。なお、深度情報取得手段11では、セグメント4の陰面を撮影できないので、
図5(b)に示す断面イメージ104ではセグメント4の継手面4b付近の形状のみが示されている。なお、
図5(b)に示す符号103は、スキンプレート3の内周面3aの3次元形状の断面イメージ(断面形状)である。
【0025】
次に、セグメント基準点範囲特定手段22は、記憶手段21に記憶される継手面4bの断面イメージ204(断面形状)を、デプス画像G2に設定する(
図6(a)参照)。
図6(a)に示す断面イメージ204は、設計データに基づくセグメント4の断面形状であり、例えばセグメント4の3次元モデルを任意断面で切断したものである。断面イメージ204には、基準点4cに関する情報が関連付けられている。この際、継手面4bまでの距離(深度情報)と深度情報取得手段11の画角に基づいて、断面イメージ104または断面イメージ204のサイズを他方のサイズに変更し(縮尺を換算し)、断面イメージ104と断面イメージ204とのサイズを同じにする。
【0026】
そして、
図6(a)の符号αで示すように、設計データに基づく断面イメージ204を移動させて、実画像に基づく断面イメージ104に重ねる(
図6(b)参照)。つまり、セグメント基準点範囲特定手段22は、縮尺および位置を調整して断面イメージ204と断面イメージ104とを重ね合わせる。
図6では、実写することで取得した断面イメージ104の継手面4bの延長線上に沿って、設計データに基づく断面イメージ204を上下方向に移動している。二つの断面形状(実写することで取得した断面イメージ104と設計データに基づく断面イメージ204)が一致したと判断する基準は、例えば最小二乗法等の回帰分析手法を用いることが可能である。つまり、回帰分析手法によって二つの断面形状の重ね合わせの完了を判定する。なお、回帰分析手法以外の手法を用いて一致の判断を行ってもよい。二つの断面形状(実写することで取得した断面イメージ104と設計データに基づく断面イメージ204)が重ね合わせられると、断面イメージ104における基準点4cの位置が特定される。つまり、二つの断面形状を重ね合わせることにより、断面イメージ204に関連付けられていた基準点4cの位置を断面イメージ104に反映させることが可能であるので、デプス画像G1(
図5(a)参照)における基準点4cの位置が特定される。
【0027】
深度情報取得手段11と撮像手段12とは光軸が偏心しているため、深度情報取得手段11で撮影したデプス画像G1(
図7(a)参照)と撮像手段12で撮影した画像F(
図7(b)参照)とではセグメント4の位置がずれる。また、画角も異なるため、デプス画像G1(
図7(a)参照)と画像F(
図7(b)参照)とではセグメント4が異なった大きさで写る。そのため、デプス画像G1で特定した基準点4cの位置を、そのまま画像Fに反映することはできない。したがって、セグメント基準点範囲特定手段22は、画角の違い、レンズ歪の違い、光軸の違いなどに基づく画像の違い(視差量)を考慮し、視差量によって補正することで画像F上でセグメント4の基準点4cが含まれるおおよその範囲を特定する。
図7(b)では、デプス画像G1(
図7(a)参照)の基準点4cに対応する位置を符号4caで示し、視差量を用いて当該位置4caを補正した範囲を符号4cbで示している。視差量は、例えば、深度情報取得手段11と撮像手段12とを用いて特定の被写体を同時に撮影し、その関係を関数化するキャリブレーションを実施することで把握できる。事前に視差量を把握し、記憶手段21に予め登録しておくのがよい。
【0028】
次に、セグメント基準点特定手段23(
図1参照)は、画像F(
図7(b)参照)で特定した範囲4cbに対して画像処理を実施することによって、画像Fにおける基準点4cを検出する(
図7(c)参照)。画像Fにおける基準点4cを検出するための画像処理は特に限定されず、既存の技術を用いることが可能である。例えば、セグメント4の下端と空間とのエッジ(境界)を検出し、検出したエッジから基準点4cを特定する。エッジ(境界)の検出には、例えば垂直方向空間高周波検出フィルタやハフ変換などの処理を用いるのがよい。
図8(a)は、垂直方向空間高周波検出フィルタを用いた処理のイメージであり、
図8(b)は、ハフ変換処理のイメージである。
【0029】
図8(a)に示すフィルタ処理では、画像の明るさが急激に変化する部分をエッジとして検出する。例えば、画像Fの上端にy座標の原点があるxy座標系を想定した場合、垂直方向空間高周波検出フィルタ301を用いてセグメント4の下端をエッジ4ccとして検出する。例えば、エッジ:E
xy、画素値P
xyとした場合、「E
xy=|P
xy+1-P
xy-1|」を求め、E
xyがある閾値より大きな値になるyの集合Yに対してmaxYをセグメント4の基準点4cとする。
また、
図8(b)に示すハフ変換では、画像内の直線成分を抽出可能であるので、セグメント4の下端を構成する直線4cdを検出する。その検出された直線4cdの任意の位置のy座標をセグメント4の基準点4cとする。
ここまで説明した処理によって、画像Fにおける基準点4cを高精度(例えば、分解能0.5mm以内)に特定することが可能である。
【0030】
次に、プレート基準点特定手段24(
図1参照)は、画像F内でのスキンプレート3の基準点3cの位置を決定する。例えば、撮像手段12の画角が一定であり光軸の方向が固定されている場合を想定する。
図9(a)に示す撮像手段12からスキンプレート3の基準点3cまでの距離が「4m」の場合と、
図9(b)に示す撮像手段12からスキンプレート3の基準点3cまでの距離が「3m」の場合とを比べると、
図9(a)に示す距離が遠い方が画像Fの中央近くに基準点3cが写し出される。つまり、
図9(c)に示すように、セグメント4までの距離が遠いほど画像Fの中央近くにスキンプレート3の基準点3cが位置し、セグメント4までの距離が近づくにつれて基準点3cの位置が画像Fの外側に移動する。このように、セグメント4までの距離が分かれば画像F内でのスキンプレート3の基準点3cの位置を特定できる。
なお、撮像手段12の画角にはばらつきが発生するが、例えば製造時に、各距離における理論上の基準点3cの位置と実際の基準点3cの位置との差をキャリブレーションで関係づけることで、正しい位置を割り出すことができる。また、光軸のばらつきは、撮像手段12の取付時の調整により補正するのがよい。
【0031】
図10(a)を参照して、距離Dの位置にある基準点3cの画像F内での位置の計算について説明する。ここで、撮像手段12のレンズ画角θが既知で、光軸がスキンプレート3に対して平行とする。また、
図10(b)に示すように、画像Fの左上角部を原点とするxy座標系が当該画像Fに設定されている。
図10は、画像F上での基準点3cの位置の計算方法を説明するための図であり、(a)は撮像手段12の位置および画角、スキンプレート3の位置、並びに基準点3cの位置の関係を示す概略図であり、(b)距離Dと画像F内での基準点3cとの関係を示す図である。
【0032】
距離Dにおいて、1画素当たりの長さdlは、「dl=D×tan(θ/2)×2/垂直画素数」で求められる。
また、撮像手段12の中心(光軸)から基準点3cまでの画素数dpは、「dp=H/dl」で求められる。
また、基準点3cの垂直座標v_flは、「v_fl=垂直画素数/2+dp=垂直画素数/2+H/(D×tan(θ/2)×2/垂直画素数)」で求められる。
ここで、距離Dは深度情報取得手段11による測定結果(深度情報)により既知であり、また、距離Hは撮像手段12を不動点に設置することで既知である。
【0033】
撮像手段12の設置の高さ「H=0.3m」であり、イメージセンサの水平画素数が「3840」であり、垂直画素数が「2880」である場合を想定する。また、
図11(a)に示すように、近距離撮影用の第1撮像手段12Aのレンズの焦点距離が「6mm」であり、垂直画角が「42.9510°」である。また、遠距離撮影用の第2撮像手段12Bのレンズの焦点距離が「12mm」であり、垂直画角が「22.2569°」である。なお、ここでは、垂直方向のみを考慮することとし、水平画角については触れないこととする。
この条件で算出したスキンプレート3の基準点3cの画像F上の垂直座標v_flは、
図11(b)に示す表の通りである。
図11(b)に示す表では、距離Dによって垂直座標v_flが異なる値となっている。距離Dが小さいほど垂直座標v_flが大きくなり、距離Dが大きくなるにしたがって垂直座標v_flが小さくなる。このようにして、プレート基準点特定手段24は、画像F内での基準点3cの位置を計算する。
【0034】
図12(a)に示すように、撮像手段12の画角と、撮像手段12からセグメント4の継手面4bまでの距離が分かると、写っている範囲の視野高さが決まるので、垂直画素数(例えば3000画素)で除算することで1画素当たりの長さが分かる。なお、画角がばらつく場合には、特定の被写体を撮影することで、キャリブレーションを実施するのがよい。
そして、
図12(b)に示すように、セグメント4の基準点4cからスキンプレート3の基準点3cまでの間の画素数に、1画素当たりの長さを乗じることでテールクリアランスを算出できる。このようにして、テールクリアランス算出手段25は、画像Fからテールクリアランスを算出する。
【0035】
<実施形態に係るテールクリアランス計測方法>
図13を参照して(適宜、
図1ないし
図12を参照)、テールクリアランス計測システム1を用いたテールクリアランスの計測方法について説明する。
図13は、テールクリアランス計測方法の工程を示したフローチャートの例示である。
最初に、深度情報取得手段11(一例は、デプスカメラ)でスキンプレート3とセグメント4との隙間7(
図2参照)およびその周辺を撮像し、セグメント基準点範囲特定手段22は、デプス画像を用いてセグメント4の基準点4cを検知する(ステップS11)。
図6に示すように、基準点4cの検知では、実写することで取得した継手面(前端面)4bの断面イメージ104に設計データに基づく断面イメージ204を重ね合わせる。そして、断面イメージ204に設定されていた基準点4cの位置を断面イメージ104に反映させる。また、反映させた基準点4cまでの距離(深度情報)をデプス画像から読み取る。
【0036】
次に、セグメント4の基準点4cまでの距離に応じて使用する撮像手段12を選択する(ステップS12)。
図4(a)に示すように、基準点4cまでの距離が、あらかじめ設定した2つのレンズ切替位置より近い場合には、近距離撮影用の第1撮像手段12Aを選択する。また、
図4(b)に示すように、基準点4cまでの距離が切替位置より遠い場合には、遠距離用の第2撮像手段12Bを選択する。そして、選択した撮像手段12(第1撮像手段12Aおよび第2撮像手段12Bの何れか一方)を用いて、スキンプレート3とセグメント4との隙間7(
図2参照)の周辺を撮像する。なお、ステップS11で、第1撮像手段12Aおよび第2撮像手段12Bが深度情報取得手段11と同時に撮影し、ステップS12で選択した一方の撮像手段12の画像を採用するようにしてもよい(その場合、選択しなかった他方の撮像手段12の画像を破棄する)。
【0037】
次に、セグメント4の基準点4cとスキンプレート3の基準点3cとの距離を、撮像手段12で取得した撮像データを画像解析することで算定する(ステップS13)。例えば、
図7(b)に示すように、視差(パララックス)量に基づいて画像Fにおける基準点4cのおおよその範囲4cbを特定し、当該範囲4cbに対して画像処理を実施することによって画像Fにおける基準点4cの位置を検出する(
図7(c)参照)。基準点4cを検出するための画像処理の一例は、垂直方向空間高周波検出フィルタやハフ(Hough)変換などの処理である。また、ステップS11の処理によってセグメント4の基準点4cまでの距離が既知なので、
図9に示すように、基準点4cまでの距離に基づいて、画像F内でのスキンプレート3の基準点3cの位置を特定する。そして、
図12(b)に示すように、セグメント4の基準点4cからスキンプレート3の基準点3cまでの間の画素数に、1画素当たりの長さを乗じることでテールクリアランスを算出する。
【0038】
なお、ステップS13での算定結果(テールクリアランス)を掘進管理システム40(
図1参照)に出力し、当該算定結果を可視化してもよい(ステップS14)。可視化の方法は限定されず、例えば作業員が一目でテールクリアランスを確認可能なように表示するのが望ましい。ステップS11~S14の工程を、掘進中に繰り返し実行する。
【0039】
以上のように、本実施形態に係るテールクリアランス計測システム1においては、深度情報取得手段11で取得した情報に基づいて画像F上でセグメント4の基準点4cが含まれる範囲4cb(
図7参照)を特定し、当該範囲4cbに画像処理を実施して画像F上での基準点4cを特定する。そのため、特定した範囲4cbから外れる外乱に影響されることなく画像処理を実施できる。その結果、画像Fから基準点4cを直接認識するよりも誤認識が起こり難い。
また、本実施形態に係るテールクリアランス計測システム1では、オートフォーカス機能を使わないので、当該機能を実現するための機構に起因する誤差を排除することができる。そのため、高い精度でテールクリアランスを計測できる。
【0040】
本実施形態に係るテールクリアランス計測システム1の効果を検証するためのシミュレーションを実施したので、その結果を
図14に示す。
図14は、効果を検証するために行ったシミュレーションの内容を説明するための図であり、(a)はテールクリアランス計測システム1の概略図であり、(b)はレンズの画角であり、(c)は距離と1画素当たりの長さとの関係を示した表であり、(d)は、距離とテールクリアランスとの関係を示した表である。
【0041】
シミュレーションでは、深度情報取得手段11(一例は、デプスカメラ)の測定距離に「±2%」の誤差が発生した場合のクリアランスへの影響(テールクリアランスの誤差)を計算した。シミュレーションでの条件は、
図14(a)ないし(c)に示す通りである。例えば、
図14(b)に示すように、近距離撮影用の第1撮像手段12Aのレンズの焦点距離が「6mm」であり、水平画角が「55.2911°」であり、垂直画角が「42.9510°」である。また、遠距離撮影用の第2撮像手段12Bのレンズの焦点距離が「12mm」であり、水平画角が「29.3541°」であり、垂直画角が「22.2569°」である。また、
図14(c)に示すように、イメージセンサの水平画素数が「3840」であり、垂直画素数が「2880」である。
図14(d)に示すように、テールクリアランスの距離「40mm」に対して、近距離および遠距離のシミュレーション結果がともに「±1mm」以内に収まっており、実際の施工現場で十分に使用可能なことが確認できた。
【0042】
また、本実施形態に係るテールクリアランス計測システム1によれば、セグメント4の継手面4bが平面でなく凹凸が形成されている場合でも、深度情報取得手段11(一例は、デプスカメラ)で当該凹凸を正しく認識した上で基準点4cを検出できる。
なお、従来のRGBカメラだけを用いる場合には、
図15(a)に示すように、継手面4bに面取り加工が施されている場合に基準点4cを誤認識する可能性があり、その場合にはテールクリアランスを正確に計測できない。
また、本実施形態に係るテールクリアランス計測システム1によれば、深度情報取得手段11(一例は、デプスカメラ)で継手面4bを3次元的に検出可能である。そのため、
図15(b)に示すように、実際に物体がない位置に基準点4cを設定することも可能であり、様々なシチュエーションに対応することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 テールクリアランス計測システム
2 シールド掘削機
3 スキンプレート
3a 内周面
3c 基準点
4 セグメント
4a 外周面
4b 継手面
4c 基準点
5 カッター
6 シールドジャッキ
10 情報取得手段
11 深度情報取得手段
12 撮像手段
12A 第1撮像手段
12B 第2撮像手段
20 解析手段
21 記憶手段
22 セグメント基準点範囲特定手段
23 セグメント基準点特定手段
24 プレート基準点特定手段
25 テールクリアランス算出手段