(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174683
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】回転電機およびポンプ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/278 20220101AFI20241210BHJP
【FI】
H02K1/278
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092646
(22)【出願日】2023-06-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度~令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構グリーンイノベーション基金事業/次世代航空機の開発/水素航空機向けコア技術開発にかかる委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】小森 智裕
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CB01
5H622DD01
5H622DD02
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】高速回転に適したSPM構造のロータを備える回転電機およびポンプ装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る回転電機3~3Eは、ロータR~REと、ロータの回転が伝達される回転軸7と、を有してなる。ロータ、または、回転軸は、円柱状の外周面を有するコア部71を備える。ロータは、コア部に固定される複数の磁石81~88と、複数の磁石をコア部に固定する樹脂材12と、を備える。複数の磁石それぞれは、継ぎ目の無い円環状である。複数の磁石それぞれはコア部の径方向においてコア部の外方に配置されて、コア部の軸心方向に沿って配置されて、樹脂材はコア部と複数の磁石との間に充填される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータの回転が伝達される回転軸と、
を有してなり、
前記ロータ、または、前記回転軸は、円柱状の外周面を有するコア部、を備えて、
前記ロータは、
前記コア部に固定される複数の磁石と、
複数の前記磁石を前記コア部に固定する第1樹脂材と、
を備えて、
複数の前記磁石それぞれの形状は、継ぎ目の無い円環状であり、
複数の前記磁石それぞれは、
前記コア部の径方向において、前記コア部の外方に配置されて、
前記コア部の軸心方向に沿って配置されて、
前記第1樹脂材は、前記コア部と複数の前記磁石との間に充填される、
回転電機。
【請求項2】
前記軸心方向において、前記第1樹脂材は、隣り合う前記磁石同士の間に充填される、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ロータは、隣り合う前記磁石同士の間に配置される第2樹脂材、を備えて、
前記第2樹脂材は、前記第1樹脂材に当接する、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記軸心方向において、前記磁石それぞれは、
一方向側に面する第1面と、
他方向側に面する第2面と、
を備えて、
前記第2樹脂材は、前記磁石それぞれの前記第1面と前記第2面とに付けられる、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第2樹脂材は、隣り合う前記磁石同士の間に配置されるスペーサにより構成される、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項6】
前記軸心方向において、前記第2樹脂材の厚みは、前記コア部の中央部から前記コア部の端部に向かうにつれて厚くなるように構成される、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項7】
前記ロータは、前記コア部に取り付けられる円環状の一対の環状部材、を備え、
前記軸心方向において、一対の前記環状部材は、複数の前記磁石を挟み込むように配置されて、
前記径方向において、一対の前記環状部材は、前記コア部の外方に配置されて、
一対の前記環状部材のうち、少なくとも一方の前記環状部材は、前記回転軸の回転バランスを調整するために加工された加工領域を備える、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項8】
前記コア部の前記外周面は、一対の前記環状部材それぞれの内周面に当接して、
一対の前記環状部材それぞれ、および/または、前記コア部は、前記内周面、および/または、前記外周面に配置される溝部、を備えて、
前記軸心方向において、前記溝部は、前記環状部材の一方向側と他方向側とに通じて、
前記第1樹脂材は、前記溝部の中に充填される、
請求項7に記載の回転電機。
【請求項9】
前記ロータは、複数の前記磁石の外周面を覆うように、複数の前記磁石に巻き付けられるフィラメント材、を備え、
前記第1樹脂材は、複数の前記磁石と巻き付けられた前記フィラメント材との間に充填される、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項10】
前記軸心方向において、前記回転軸の一部は、前記コア部として機能する、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項11】
前記ロータは、前記回転軸の周方向において、複数の前記磁石を覆うように配置される円筒状のスリーブ、を備え、
前記第1樹脂材は、複数の前記磁石と前記スリーブとの間に充填される、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項12】
前記軸心方向において、前記スリーブの一端部は、一対の前記環状部材のうち一方の前記環状部材の一部を覆い、
前記軸心方向において、前記スリーブの他端部は、一対の前記環状部材のうち他方の前記環状部材の一部を覆う、
請求項7に従属する請求項11に記載の回転電機。
【請求項13】
請求項1に記載の回転電機と、
前記回転電機の回転により回転するインペラと、
を有してなる、
ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機およびポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機およびポンプが一体に構成されていて、取扱液の漏洩が無い構造を備えるシールレスモータポンプの1つとして、ウェットモータポンプが用いられている。回転電機は、回転軸、回転軸に取り付けられているロータ、およびステータを備える。ウェットモータポンプでは、ロータおよびステータは、取扱液に接液している。
【0003】
回転電機が備えるロータの構造は、磁石がロータコアの外周面に取り付けられたSPM(Surface Permanent Magnet)構造と、磁石がロータコアの内部に埋め込まれたIPM(Interior permanent Magnet)構造と、に大別される。
【0004】
SPM構造のロータでは、磁石がロータコアの内部に埋め込まれていない。そのため、SPM構造のロータの外径(以下「ロータ径」という。)は、IPM構造のロータ径よりも小さくできる。しかし、SPM構造のロータでは磁石がロータコアの外周面に取り付けられているため、ロータの回転数が増加すると、ロータの回転に伴う遠心力による磁石の剥離が生じ得る。そのため、SPM構造のロータでは、磁石の剥離を防ぐために、磁石の外周面に円筒状のスリーブが取り付けられている。この場合、スリーブには磁石の剥離に耐えられる厚みが必要となり、ロータ径が大きくなる。しかしながら、ロータ径が大きくなると、ロータに接液している取扱液の抵抗(摩擦)によるエネルギーの損失(いわゆる流体損)が大きくなる。したがって、SPM構造のロータは、高速回転に適していない。
【0005】
これまでにも、SPM構造のロータにおいて、継ぎ目の無い円筒状の磁石を用いることにより、磁石の強度を高める手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、円筒状の磁石をロータコアの外周面に取り付けるためには、ロータコアが磁石に圧入されなければならない。そのためには、高精度に製造された磁石が必要になる。しかしながら、一般的に、磁石は焼結で製造されるため、圧入に必要な寸法精度を有する磁石の製造は難しく、切削による磁石の加工も難しい。また、高速回転に必要な出力を得るためには、ロータコアは細く、かつ、長くなり、同ロータコアに対応する円筒状の磁石の製造はより困難になる。したがって、高速回転に適したPM構造のロータの実現は難しい。
【0008】
本発明は、高速回転に適したSPM構造のロータを備える回転電機およびポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様における回転電機は、ロータと、前記ロータの回転が伝達される回転軸と、を有してなり、前記ロータ、または、前記回転軸は、円柱状の外周面を有するコア部、を備えて、前記ロータは、前記コア部に固定される複数の磁石と、複数の前記磁石を前記コア部に固定する第1樹脂材と、を備えて、複数の前記磁石それぞれの形状は、継ぎ目の無い円環状であり、複数の前記磁石それぞれは、前記コア部の径方向において前記コア部の外方に配置されて、前記コア部の軸心方向に沿って配置されて、前記第1樹脂材は、前記コア部と複数の前記磁石との間に充填される。
【0010】
本発明の一実施態様におけるポンプ装置は、前述の実施態様に記載の回転電機と、前記回転電機の回転により回転するインペラと、を有してなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高速回転に適したSPM構造のロータを備える回転電機およびポンプ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るポンプ装置の実施の形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図1のポンプ装置が備える本発明に係る回転電機の実施の形態を示す部分模式断面図である。
【
図3】
図2の回転電機が備えるロータのAA線における模式断面図である。
【
図4】
図2の回転電機が備えるロータの部分拡大模式断面図である。
【
図5】
図2の回転電機が備えるロータのBB線における模式断面図である。
【
図6】
図2の回転電機が備えるロータの分解模式断面図である。
【
図7】本発明に係る回転電機の第2実施形態を示す部分模式断面図である。
【
図8】
図7の回転電機が備えるロータのCC線における模式断面図である。
【
図9】本発明に係る回転電機の第3実施形態を示す部分模式断面図である。
【
図10】
図9の回転電機が備えるロータのDD線における模式断面図である。
【
図11】本発明に係る回転電機の第4実施形態を示す部分模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るポンプ装置および回転電機の実施の形態が、以下に説明される。以下の説明において、各図面は、適宜参照される。各図面において、同一の部材および要素については同一の符号が付されて、重複する説明は省略される。また、各要素の寸法比率は、説明の便宜上、誇張されている場合が有り、各図面に示されている比率に限定されない。
【0014】
以下の説明において、本発明に係るポンプ装置の一例として、ポンプ部およびモータ部が一体に構成されているウェットモータポンプ(以下単に「ポンプ」という。)が説明される。ポンプは、取扱液の漏洩が無い構造を有するシールレスモータポンプであり、ポンプの全体が取扱液内に浸漬されていて、取扱液の一部がモータ部内にも導入される構造を有する。
【0015】
●ポンプ装置(1)●
●ポンプ装置(1)の構成
先ず、本発明に係るポンプ装置(以下単に「ポンプ装置」という。)の実施の形態が、以下に説明される。
【0016】
図1は、ポンプ装置の実施の形態を示す模式断面図である。
同図は、取扱液の流れを白抜き矢印で示している。同図は、説明の便宜上、ポンプ装置1を簡略化して示している。
【0017】
ポンプ装置1は、取扱液(例えば、水)の送液に用いられる。ポンプ装置1は、ポンプ部2、モータ部3、およびインペラ4を有してなる。
【0018】
以下の説明において、「前方向」はモータ部3に対してインペラ4が位置している方向であり、「後方向」は前方向の反対方向である。
【0019】
ポンプ部2は、取扱液を吸込み、吐出する。ポンプ部2は、筐体21、ポンプ室22、吸込管23、吐出管24、および内部流路25を備える。
【0020】
筐体21は、モータ部3を収容すると共に、インペラ4が収容されるポンプ室22、および内部流路25を区画している。筐体21は、例えば、ステンレス鋼製である。筐体21の前端部は、前方に向けて円筒状に延伸されていて、吸込管23を形成している。筐体21の後端部は、後方に向けて円筒状に延伸されていて、吐出管24を形成している。筐体21とモータ部3(後述される筐体5)との間には、前後方向に沿うように内部流路25が形成されている。内部流路25は、ポンプ室22と吐出管24とに連通している。すなわち、筐体21は、ポンプ室22、吸込管23、吐出管24、および内部流路25を構成している。
【0021】
吸込管23は、ポンプ室22に吸い込まれる取扱液の流路である。
【0022】
吐出管24は、ポンプ室22から吐出される取扱液の流路である。
【0023】
内部流路25は、吸込管23からポンプ室22に吸い込まれた取扱液が吐出管24に案内される流路である。
【0024】
モータ部3は、所定の駆動条件で駆動して、ポンプ室22内のインペラ4を回転させる。モータ部3は、筐体21に収容されている。モータ部3は、本発明に係る回転電機の一例である。モータ部3の具体的な構成は、後述される。
【0025】
インペラ4は、後述される回転軸7の前端部7aに取り付けられていて、同回転軸7の回転に伴い回転する。すなわち、インペラ4は、モータ部3の回転により回転する。インペラ4は、回転することにより、吸込管23からポンプ室22内に吸い込まれた取扱液を内部流路25および吐出管24を介して吐出させる。
【0026】
●モータ部(1)●
●モータ部(1)の構成
次に、モータ部3の構成が、以下に説明される。
【0027】
図2は、モータ部3の実施の形態を示す部分模式断面図である。
同図は、モータ部3の構成の一部を省略して示している。同図は、後述される回転軸7を非断面で示している。同図は、後述されるロータRを模式的に示している。以下の説明において、
図1は、適宜参照される。
【0028】
モータ部3は、筐体5、モータ室6、回転軸7、磁石部8、一対の環状部材9,10、スリーブ11、樹脂材12、ステータ13、および軸受14,15を備える。回転軸7の一部(後述される大径部71)、磁石部8、一対の環状部材9,10、スリーブ11、および樹脂材12は、本発明におけるロータRを構成している。すなわち、モータ部3は、ロータRを備える。
【0029】
筐体5は、回転軸7、磁石部8、一対の環状部材9,10、スリーブ11、ステータ13、および軸受14,15を収容するモータ室6を区画している。筐体5は、例えば、ステンレス鋼製である。筐体5は、液導入口51,52を備える。
【0030】
液導入口51,52は、筐体5を貫通している孔である。液導入口51,52は、内部流路25とモータ室6とに連通していて、取扱液をモータ室6に導入している。液導入口51,52は、例えば、筐体5の前部に配置されている。
【0031】
なお、本発明において、液導入口51,52は、筐体5の後部や中央部に配置されていてもよい。
【0032】
また、本発明において、液導入口51,52の数は、取扱液をモータ室6に導入可能な数であればよく、「2」に限定されない。
【0033】
回転軸7は、ロータRの回転により回転して、回転動力をインペラ4に伝達する。回転軸7の形状は、円柱状である。回転軸7は、大径部71、および、大径部71よりも小さい外径を有する小径部72,73を備える。
【0034】
以下の説明において、「軸心方向」は回転軸7の回転軸心に沿う方向(前後方向)であり、「径方向」は回転軸7の半径方向であり、「周方向」は回転軸7の円周方向である。軸心方向において、回転軸7の前端部7aは、ポンプ室22内に突出している。
【0035】
軸心方向において、大径部71および小径部72,73の形状は円柱状であり、大径部71および小径部72,73は円柱状の外周面71a,72a,73aを有する。軸心方向において、大径部71は、回転軸7の中央に配置されている。小径部72は大径部71よりも前方に大径部71に隣接して配置されていて、小径部73は大径部71よりも後方に大径部71に隣接して配置されている。すなわち、軸心方向において、小径部72,73は、大径部71を挟み込むように、大径部71の両側(外側)に配置されている。換言すれば、大径部71は、小径部72,73の間に位置している。このように、大径部71および小径部72,73は、1つの軸体(回転軸7)を構成している。軸心方向視において、大径部71は、小径部72,73と同心状に配置されている。すなわち、回転軸7の軸心は、大径部71の軸心および小径部72,73の軸心と一致している。ここで、大径部71(軸心方向において、小径部72,73に挟まれた回転軸7の一部)は、ロータRのロータコアとして機能している。このように、大径部71がロータコアとして機能することにより、回転軸7にロータコアが外装される場合(回転軸7とロータコアとが別体の場合)と比較して、ロータコアの外径(後述されるロータ径)は、回転軸7の外径に近い大きさまで小さくできる。大径部71は、本発明におけるコア部の一例である。すなわち、大径部71は、コア部として機能している。
【0036】
磁石部8は、大径部71に固定されて、ステータ13に生じる回転磁界により回転軸7を回転させる。磁石部8は、複数(本実施の形態では8つ)の磁石81,82,83,84,85,86,87,88を備える。すなわち、磁石部8は、複数の磁石(磁石81~88)の集合体である。各磁石81~88は、例えば、ネオジム磁石(希土類磁石)などの永久磁石である。
【0037】
なお、本発明において、各磁石81~88は、モータ部3に使用可能な永久磁石であればよく、ネオジム磁石に限定されない。すなわち、例えば、各磁石81~88は、サマリウムコバルト磁石やフェライト磁石でもよい。
【0038】
図3は、ロータRの
図2のAA線における模式断面図である。
同図は、説明の便宜上、磁石83の断面を示しているが、磁石83の断面の形状は、その他の磁石81,82,84~88の断面の形状と共通している。したがって、磁石83の構成および形状は、磁石81,82,84~88の構成および形状と共通している。同図は、説明の便宜上、後述される磁極の仮想的な境界(現実の境界は明確ではない)を破線で示している。以下の説明において、
図2は、適宜参照される。
【0039】
各磁石81~88の形状は、継ぎ目の無い円環状である。各磁石81~88の内径は、大径部71の外径よりも大きい。磁石81は、前面81a、後面81b、外周面81c、および内周面81dを備える。同様に、各磁石82~88は、前面82a,83a,84a,85a,86a,87a,88a、後面82b,83b,84b,85b,86b,87b,88b、 外周面82c,83c,84c,85c,86c,87c,88c、および、内周面82d,83d,84d,85d,86d,87d,88dを備える。前面81a~88aは本発明における第1面の一例であり、後面81b~88bは本発明における第2面の一例である。
【0040】
大径部71(回転軸7)は各磁石81~88に対して隙間嵌めされていて、内周面81d~88dと大径部71の外周面71aとの間には樹脂材12が浸入可能な隙間が形成されている。すなわち、径方向において、各磁石81~88は、大径部71の外方に配置されている。軸心方向において、各磁石81~88は相互に離間して(当接することなく)、軸心方向に沿って配置されている。
【0041】
周方向において、各磁石81~88は、交互に並ぶ複数の磁極(本実施の形態ではS極およびN極の2極)を有する。周方向において、各磁石81~88の磁極の位置は、同じである。すなわち、軸心方向において、各磁石81~88のS極は隣り合う各磁石81~88のS極と対向していて、各磁石81~88のN極は隣り合う各磁石81~88のN極と対向している。
【0042】
なお、本発明において、磁石部8が備える磁石の数は「8」に限定されない。すなわち、例えば、磁石部8は、「2」~「7」、または、「9」以上の磁石を備えていてもよい。ここで、軸心方向において、磁石部8としての長さ(厚み)および磁石の数は、モータ部3の駆動に必要とされる磁束に応じて適宜設定される。すなわち、例えば、モータ部3の仕様が同じ場合、軸心方向において、磁石部8の長さ(厚み)は同じであり、磁石の数が増えると各磁石の長さ(厚み)は短くなる。
【0043】
また、本発明において、各磁石81~88の磁極の数は、偶数であればよく、「2極」に限定されない。すなわち、例えば、各磁石81~88の磁極の数は、「4極」、「6極」でもよい。
【0044】
図4は、ロータRの部分拡大模式断面図である。
同図は、回転軸7を非断面で示している。以下の説明において、
図2は、適宜参照される。
【0045】
環状部材9,10は、回転軸7が回転しているときの回転バランス(回転軸7の回転バランス)を調整するダミーウェイトとして機能する。環状部材9,10は、例えば、ステンレス鋼製である。環状部材9,10の形状は、円環状である。環状部材9の形状は、後述される加工領域92の有無を除き、環状部材10の形状と同じである。径方向において、環状部材9,10は、大径部71の外方に取り付けられている(固定されている)。環状部材9,10の外径は、各磁石81~88の外径と略同じである。環状部材9,10の内径は、大径部71の外径と略同じである。
【0046】
図5は、ロータRの
図2のBB線における模式断面図である。
同図は、説明の便宜上、環状部材9の断面を示している。以下の説明において、
図2および
図4は、適宜参照される。
【0047】
環状部材9は、複数(本実施の形態では6つ)の溝部91a,91b,91c,91d,91e,91f、加工領域92、前面9a、後面9b、外周面9c、および内周面9dを備える。大径部71が環状部材9に圧入されることにより、径方向において、環状部材9は大径部71の外方に取り付けられている。すなわち、内周面9dは、大径部71の外周面71aに当接している。以下の説明において、各溝部91a~91fが特に区別されないとき、各溝部91a~91fは「溝部91」と記載されている。
【0048】
溝部91は、軸心方向(前後方向)に沿うように内周面9dに形成されている溝である。軸心方向において、溝部91は、環状部材9の前方側(一方向側)と後方側(他方向側)とに通じている。軸心方向視において、溝部91の形状は、略半円状である。周方向において、各溝部91a~91fは、内周面9dに等間隔に配置されている。溝部91は、大径部71の外周面71aと対向している。その結果、溝部91は、同外周面71aと共に、環状部材9の前方側と後方側とを連通させている孔を構成している。換言すれば、溝部91は、環状部材9の前端側(前面9a側)と後端側(後面9b側)とに通じている。
【0049】
本説明において主に参照される図面は、
図2および
図4に戻る。
加工領域92は、回転軸7の回転バランスを調整するための加工が施されている領域である。加工は、例えば、環状部材9の前部の外周面9cの一部が切削されることにより施されている。すなわち、加工領域92は、回転軸7の回転バランスを調整するために環状部材9の外周面9cの一部が切削されることにより形成される領域である。
図4に示されるとおり、本実施の形態では、環状部材9のみに同加工が施されていて、環状部材10には同加工が施されていない。すなわち、本実施の形態では、一対の環状部材9,10のうち、環状部材9のみが加工領域92を備えていて、環状部材10は加工領域を備えていない。
【0050】
環状部材10は、複数(本実施の形態では6つ)の溝部101、後面10a、前面10b、外周面10c、および内周面10dを備える。大径部71が環状部材10に圧入されることにより、径方向において、環状部材10は大径部71の外方に取り付けられている。すなわち、内周面10dは、大径部71の外周面71aに当接している。
【0051】
溝部101は、軸心方向(前後方向)に沿うように内周面10dに形成されている溝である。軸心方向において、溝部101は、環状部材10の前方側(一方向側)と後方側(他方向側)とに通じている。軸心方向視において、溝部101の形状(不図示)は、略半円状である。周方向において、各溝部101は、内周面10dに等間隔に配置されている。溝部101は、大径部71の外周面71aと対向している。その結果、溝部101は、同外周面と共に、環状部材10の後面10a側と前面10b側とを連通させている孔を構成している。換言すれば、溝部101は、環状部材10の後端側(後面10a側)と前端側(前面10b側)とに通じている。
【0052】
環状部材9は磁石部8(磁石81)の前方に配置されていて、環状部材10は磁石部8(磁石88)の後方に配置されている。すなわち、軸心方向において、一対の環状部材9,10は、磁石81~88を挟み込むように配置されている。例えば、金属の切削加工などにより製造される環状部材9,10は、焼結により製造される各磁石81~88よりも加工し易い。そのため、各磁石81~88を加工するよりも環状部材9,10を加工する方が、回転軸7の回転バランスは容易に調整可能である。
【0053】
なお、本発明において、回転軸7の回転バランスが取れているとき、環状部材9は加工領域92を備えていなくてもよい。一方、回転軸7の回転バランスに応じて、環状部材9,10それぞれが加工領域を備えていてもよい。環状部材10が加工領域を備える場合、加工は、加工領域92と同様に、環状部材10の後部の外周面10cの一部が切削される。
【0054】
スリーブ11は、磁石部8(磁石81~88)を保護する。また、スリーブ11は、各磁石81~88の回転軸7からの剥離を防止すると共に、仮に各磁石81~88が剥離した場合に、各磁石81~88の飛散を防止する。スリーブ11は、例えば、ステンレス鋼製である。スリーブ11の形状は、軸心方向において両端が開口している円筒状である。軸心方向において、スリーブ11は、前端部11aおよび後端部11bを備える。前端部11aは本発明におけるスリーブの一端部の一例であり、後端部11bは本発明におけるスリーブの他端部の一例である。スリーブ11の内径は、各磁石81~88の外径、および、環状部材9,10の外径よりも大きい。
【0055】
スリーブ11の内部には、回転軸7(大径部71)の一部、各磁石81~88、および環状部材9,10の一部が収容されている。スリーブ11の前端部11aは、環状部材9の後半部にオーバーラップするように配置されている。スリーブ11の後端部11bは、環状部材10の前半部にオーバーラップするように配置されている。すなわち、軸心方向および周方向において、スリーブ11は、各磁石81~88、および環状部材9、10の一部を覆うように配置されている。環状部材9のうち、スリーブ11に覆われていない部分(前半部)は、切削可能な領域(加工領域92)となり得る。同様に、環状部材10のうち、スリーブ11に覆われていない部分(後半部)は、切削可能な領域(環状部材10の加工領域)となり得る。このように、環状部材9,10それぞれはスリーブ11に覆われていない切削可能な領域を有している。そのため、環状部材9,10は、加工し易い。したがって、回転軸7の回転バランスは、容易に調整可能である。
【0056】
樹脂材12は、各磁石81~88を大径部71に固定すると共に、スリーブ11を所定位置(各磁石81~88、および環状部材9,10の一部を覆う位置)に固定する。樹脂材12は、例えば、エポキシ系樹脂の接着材であり、液状の接着剤が硬化することにより本発明における第1樹脂材として機能している。樹脂材12は、溝部91,101の中、大径部71と各磁石81~88との間、隣り合う磁石81~88同士の間、磁石81と環状部材9との間、磁石88と環状部材10との間、各磁石81~88とスリーブ11との間、および、環状部材9,10の一部とスリーブ11との間に充填されている。このとき、樹脂材12は、大径部71の外周面71a、環状部材9,10の溝部91,101,後面9b,前面10b,および外周面9c、10cの一部、各磁石81~88の内周面81d~88d,前面81a~88a,後面81b~88b,および外周面81c~88d、および、スリーブ11の内周面に当接している。すなわち、各磁石81~88は、樹脂材12により完全に覆われていて、外部に露出していない。また、樹脂材12は溝部91,101の中にも充填されている。そのため、取扱液は、溝部91,101を介してロータRの内部へ浸入しない。このため、各磁石81~88は、取扱液で満たされているモータ室6内において、取扱液に接液しない。
【0057】
前述のとおり、大径部71、各磁石81~88、一対の環状部材9,10、スリーブ11、および樹脂材12は、本発明におけるロータRを構成している。すなわち、ロータRは、各磁石81~88、一対の環状部材9,10、スリーブ11、および樹脂材12を備える。本発明におけるロータRは、磁石部8が大径部71の外周面71aに取り付けられたSPM構造のロータとして機能している。
【0058】
本説明において主に参照される図面は、
図1および
図2に戻る。
ステータ13は、ロータR(回転軸7)を回転させる回転磁界を生成する。径方向において、ステータ13の内周面は、ロータRの外周面(例えば、スリーブ11の外周面)に直接対向している。ステータ13は、ロータRを回転させる公知のステータである。
【0059】
軸受14,15は、筐体5に取り付けられていて、回転軸7を回転自在に支持している。軸受14は回転軸7の前部(小径部72)を支持していて、軸受15は回転軸7の後部(小径部73)を支持している。軸受14,15は、例えば、公知のボールベアリングである。
【0060】
●モータ部(1)の製造工程
次に、モータ部3の製造工程(製造方法)が、以下に説明される。以下の説明において、
図1~
図5は、適宜参照される。
【0061】
図6は、ロータRの分解模式断面図である。
同図は、回転軸7を非断面で示している。
【0062】
先ず、回転軸7、一対の環状部材9,10、および8つの磁性体が準備される。モータ部3の主な製造工程は、環状体取付工程、スリーブ取付工程、樹脂材充填工程、着磁工程、組込工程、および加工工程を含む。
【0063】
「磁性体」は、着磁される前の各磁石81~88(磁石部8)の素体である。そのため、以下の説明において、各磁性体には、対応する着磁後の磁石81~88と同一の符号「81~88」が付されている。すなわち、例えば、磁性体81は着磁後に磁石81となる素体であり、磁性体82は着磁後に磁石82となる素体である。
【0064】
次いで、環状の部材、すなわち、一対の環状部材9,10、および各磁性体81~88が回転軸7に取り付けられる(環状体取付工程)。
【0065】
環状体取付工程において、先ず、大径部71が、後方から環状部材9に圧入される。このとき、溝部91は、大径部71の外周面71aと共に、環状部材9の前方側と後方側とを連通させる孔を構成している。
【0066】
次いで、大径部71は、各磁性体81~88に対して、前方から隙間嵌めの状態で挿通される(遊嵌される)。すなわち、大径部71は、磁性体81、磁性体82、・・・、磁性体88に対して、順に挿通される。
【0067】
次いで、大径部71が、前方から環状部材10に圧入される。このとき、溝部101は、大径部71の外周面71aと共に、環状部材10の前方側と後方側とを連通させる孔を構成している。また、軸方向において、環状部材9の後面9bと環状部材10の前面10bとの間の距離が、磁石部8の長さよりも僅かに長くなるように、環状部材10は大径部71に取り付けられている。そのため、環状部材9と磁性体81との間、隣り合う磁性体81~88同士の間、および、磁性体88と環状部材10との間には、各磁性体81~88が前後方向に移動可能な隙間が形成可能である。また、大径部71の外周面71aと各磁性体81~88の内周面81d~88dとの間には、隙間嵌めの僅かな嵌め合い代による隙間が形成されている。
【0068】
次いで、環状部材9,10および各磁性体81~88が取り付けられた回転軸7が、スリーブ11に対して、遊嵌される(スリーブ取付工程)。これにより、回転軸7(大径部71)、各磁性体81~88、環状部材9,10、およびスリーブ11が樹脂材12で固定される前のロータR(樹脂材12を除くロータR)が構成される。
【0069】
次いで、各磁性体81~88を大径部71に固定させると共に、スリーブ11を各磁性体81~88に固定させるため(すなわち、ロータRを回転軸7に固定させるため)に、樹脂材12がロータRの内部に充填される(樹脂材充填工程)。樹脂材12は、例えば、公知の真空含浸処理で充填される。
【0070】
真空含浸処理の一例では、先ず、樹脂材12で固定される前のロータRおよび回転軸7がチャンバ(不図示)内に収容されて、同チャンバ内が真空雰囲気に減圧される。このとき、チャンバ内には、予め、液状の樹脂材12が溜められた容器も収容されている。また、樹脂材充填工程の目的は、ロータR内に樹脂材12を充填することであるため、樹脂材12が充填される箇所以外のロータRや回転軸7(小径部72,73)の表面などは、樹脂材12が付着しないようにマスキングされている。
【0071】
次いで、真空雰囲気下において、ロータRおよび回転軸7が樹脂材12の容器内に浸漬される。このとき、樹脂材12は、環状部材9,10の溝部91,101、および、環状部材9,10とスリーブ11との間からロータRの内部に含浸される。このとき、毛細管現象などにより、樹脂材12は、各磁石81~88の間、磁石81と環状部材9との間、および、磁石88と環状部材10との間に含侵される。また、樹脂材12の表面張力などの影響により、軸方向視において、各磁性体81~88の中心と、回転軸7(大径部71)の中心と、が一致するように、各磁性体81~88は径方向に移動する。同様に、各磁性体81~88同士の間の間隔が略等間隔になるように、各磁性体81~88が軸心方向に移動する。その結果、各磁石81~88は、相互に当接していない。次いで、チャンバ内の気圧が真空雰囲気から大気雰囲気に戻される。その結果、樹脂材12は、溝部91,101の中、大径部71と各磁性体81~88との間、隣り合う磁性体81~88同士の間、磁性体81と環状部材9との間、磁性体88と環状部材10との間、各磁性体81~88とスリーブ11との間、および、環状部材9,10の一部とスリーブ11との間に含浸される(充填される)。
【0072】
その後、樹脂材12が硬化することにより、各磁性体81~88は大径部71に固定されて、スリーブ11は各磁性体81~88および環状部材9,10に固定される。
【0073】
次いで、各磁性体81~88が公知の着磁方法により着磁される(着磁工程)。着磁工程により、各磁性体81~88は、例えば2極の磁極を有する磁石81~88になる。これにより、回転軸7、各磁石81~88、環状部材9,10、およびスリーブ11が樹脂材12により一体化された(固定された)SPM構造のロータRが製造される。
【0074】
次いで、回転軸7、ロータR、ステータ13、および軸受14,15が、筐体5内に組み込まれる(組込工程)。
【0075】
次いで、必要に応じて、回転軸7(ロータR)の回転バランスを調整するために環状部材9,10の一部が加工されて、加工領域92が形成される(加工工程)。
【0076】
なお、本発明において、着磁工程は、加工工程の後に行われてもよい。
【0077】
このような製造方法により、モータ部3が製造される。本発明において、磁石部8は、それぞれ継ぎ目の無い円環状の8つの磁石81~88で構成されている。そのため、遠心力が加えられたときの各磁石81~88の引張強度は、継ぎ目が有る磁石の引張強度よりも高くなる。また、各磁石81~88は、樹脂材12により一体化されて、固定されている。そのため、ロータRの回転(回転軸7の回転)に伴う遠心力による各磁石81~88の剥離は、生じ難い。その結果、磁石81~88の飛散は生じ難く、スリーブ11に必要な強度は小さくなる。したがって、スリーブ11の厚み、すなわち、ロータRの外径(以下「ロータ径」という。)は、小さくできる。そのため、モータ室6内でロータRに接液している取扱液の抵抗(摩擦)によるエネルギー損失(流体損)は、低減される。これにより、ロータRは、高速回転にも耐えられる。したがって、高速回転に適したSPM構造のロータRが、実現される。
【0078】
また、大径部71は、各磁石81~88に隙間嵌めにより遊嵌されている。そのため、焼結により製造される各磁性体(磁石)81~88に求められる寸法精度は、ロータコアが圧入される従来の円環状の磁石に求められる寸法精度よりも緩和される。また、磁石部8は、各磁石81~88に分割されている。そのため、焼結により製造される各磁性体(磁石)81~88に求められる寸法精度は、従来の1つの長い円筒状の磁石に求められる寸法精度よりも緩和される。さらに、ロータRの組立は、寸法精度が求められる従来の1つの長い円筒状の磁石が使用されるロータの組立よりも容易になる。
【0079】
さらに、隣り合う磁石81~88同士の間には、樹脂材12が浸入可能な隙間が形成されていて、樹脂材12は同隙間に充填されている。このとき、各磁石81~88は、樹脂材12により一体化されている。ここで、ロータコアである大径部71(回転軸7)の熱膨張率は、各磁石81~88の熱膨張率と異なる。そのため、ポンプ装置1が使用される温度環境がロータRの製造時の温度環境と異なる場合、軸方向において、大径部71と磁石部8との間には熱膨張量/熱収縮量の差異が生じる。大径部71および磁石部8は共に高いヤング率を有する金属製であるため、同差異が吸収できず、大径部71と磁石部8との間には大きな歪み力(応力)が生じてしまう。その結果、仮に、磁石部8が分割されていない構造を有していた場合、大径部71への磁石部8の固定は難しくなる。本実施の形態では、磁石部8が8つの磁石81~88に分割されており、大径部71と各磁石81~88との間に生じる膨張/収縮量の差異は、磁石部8が分割されていない場合の同差異よりも小さくなる。また、各磁石81~88同士の間に金属よりも低いヤング率を有する樹脂材12が充填されているため、熱膨張/熱収縮による歪み力(応力)は同樹脂材12により緩和(吸収)される。このように、大径部71と各磁石81~88とに生じる熱膨張/滅収縮の影響は、抑制される。
【0080】
●まとめ(1)
以上説明された実施の形態によれば、モータ部3は、ロータRおよび回転軸7を備える。回転軸7は、大径部71を備える。ロータRは、大径部71に固定される複数(8つ)の磁石81~88、および、磁石81~88を大径部71に固定する樹脂材12を備える。各磁石81~88の形状は、継ぎ目の無い円環状である。この構成によれば、遠心力が加えられたときの各磁石81~88の引張強度は継ぎ目が有る磁石の引張強度よりも高くなるため、ロータRの回転に伴う遠心力による各磁石81~88の剥離は生じ難く、磁石81~88の飛散も生じ難い。そのため、ロータR(モータ部3)において、スリーブ11の厚みは薄く、ロータ径は小さくできる。したがって、モータ室6内でロータRに接液している取扱液の抵抗(摩擦)によるエネルギー損失(流体損)は、低減される。これにより、ロータRは、高速回転にも耐えられる。したがって、高速回転に適したSPM構造のロータRが、実現される。
【0081】
また、径方向において、各磁石81~88は大径部71の外方に配置されていて、軸心方向において、大径部71に沿って配置されている。樹脂材12は、大径部71と各磁石81~88との間、および、隣り合う磁石81~88同士の間に充填されている。この構成によれば、焼結により製造される各磁性体(磁石)81~88に求められる寸法精度は、ロータコアが圧入される従来の円環状の磁石に求められる寸法精度よりも緩和される。また、磁石部8は、各磁石81~88に分割されている。そのため、焼結により製造される各磁性体(磁石)81~88に求められる寸法精度は、従来の1つの長い円筒状の磁石に求められる寸法精度よりも緩和される。また、ロータRの組立は、寸法精度が求められる従来の1つの長い円筒状の磁石が使用されるロータの組立よりも容易になる。さらに、大径部71と各磁石81~88との間に生じる熱膨張量/熱収縮量の差異は、磁石部8が分割されていない場合の同差異よりも小さくなる。
【0082】
さらに、以上説明された実施の形態によれば、ポンプ装置1は、モータ部3およびインペラ4を備える。この構成によれば、高速回転に適したSPM構造のロータRを備えるポンプ装置1が実現される。
【0083】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、軸心方向において、樹脂材12は、隣り合う磁石81~88同士の間に充填されている。この構成によれば、熱膨張/熱収縮による歪み力(応力)は、樹脂材12により緩和される。そのため、大径部71と各磁石81~88とに生じる熱膨張/熱収縮の影響は、抑制される。
【0084】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、ロータRは、大径部71に取り付けられている円環状の一対の環状部材9,10を備える。軸心方向において、一対の環状部材9,10は、複数の磁石81~88を挟み込むように配置されている。径方向において、一対の環状部材9,10は、大径部71の外方に配置されている。一対の環状部材9,10のうち、少なくとも一方の環状部材(例えば、環状部材9)は、回転軸7の回転バランスを調整するために加工された加工領域92を備える。この構成によれば、軸心方向において、焼結により製造される各磁石81~88よりも加工し易い環状部材9,10が、各磁石81~88を挟み込むように配置されている。その結果、回転軸7の回転バランスは、容易に調整可能である。
【0085】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、大径部71の外周面71aは一対の環状部材9,10それぞれの内周面9d,10dに当接している。一対の環状部材9,10それぞれは、環状部材9,10の内周面9d,10dに配置されている溝部91,101を備える。軸心方向において、溝部91,101は、環状部材9,10の一方向側と他方向側とに通じている。この構成によれば、大径部71が環状部材9,10それぞれに圧入されていても、樹脂材12は、溝部91,101からロータRの内部に充填(含浸)可能である。
【0086】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、樹脂材12は、溝部91,101の中に充填されている。この構成によれば、取扱液は、溝部91,101を介してロータRの内部へ浸入しない。
【0087】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、大径部71(回転軸7の一部)は、ロータコアのコア部として機能している。この構成によれば、コア部の外径は、回転軸7の外径近くまで小さくできる。その結果、ロータ径は、さらに小さくできる。
【0088】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、周方向において、ロータRは、各磁石81~88を覆うように配置される円筒状のスリーブ11を備える。樹脂材12は、各磁石81~88とスリーブ11との間に充填されている。この構成によれば、各磁石81~88(磁石部8全体)が樹脂材12により覆われて保護されていて、磁石部8の表面はスリーブ11によっても保護されている。磁石部8は樹脂材12およびスリーブ11により全体が覆われている(保護されている)ため、外部に露出されない。そのため、各磁石81~88は取扱液で満たされているモータ室6内において、取扱液に接液しない。その結果、取扱液による磁石部8の損傷(磁石部8への影響)は、無い。
【0089】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、スリーブ11の前端部11aは環状部材9の一部(後半部)を覆っていて、スリーブ11の後端部11bは環状部材10の一部(前半部)を覆っている。この構成によれば、周方向において、スリーブ11は、各磁石81~88、および環状部材9,10の一部を覆うように配置されている。環状部材9のうち、スリーブ11に覆われていない部分(前半部)は、組み立てられたロータRにおいて切削可能な領域(加工領域92)となり得る。同様に、環状部材10のうち、スリーブ11に覆われていない部分(後半部)は、組み立てられたロータRにおいて切削可能な領域(環状部材10の加工領域)となり得る。また、環状部材9,10それぞれにはスリーブ11に覆われていない切削可能な領域が存在しているため、環状部材9,10は、加工し易い。そのため、回転軸7の回転バランスは、容易に調整可能である。
【0090】
なお、第1実施形態において、隣り合う各磁石81~88それぞれは相互に当接していて、樹脂材12は隣り合う磁石81~88同士の間に充填されていなくてもよく、あるいは、樹脂材12は凹凸などにより部分的に含侵されていてもよい。また、樹脂材12は、隣り合う磁石81~88それぞれのうち、一部の磁石81~88間に充填されていなくてもよい。この構成でも、高速回転に適したSPM構造のロータRは、実現可能である
【0091】
●モータ部(2)●
●モータ部(2)の構成
次に、本発明に係る回転電機(モータ部)の別の実施の形態(以下「第2実施形態」という。)が、先に説明された実施の形態(以下「第1実施形態」という。)と異なる点を中心に、以下に説明される。第2実施形態に係るモータ部は、磁石に第2樹脂材が塗布されている点が、第1実施形態に係るモータ部と異なる。以下の第2実施形態の説明において、説明の便宜上、第1実施形態と同じ部材、および共通している機能を有する部材には、第1実施形態と同じ符号が付されていて、詳細な説明は省略される。以下の説明において、
図1~
図6は、適宜参照される。
【0092】
図7は、本発明に係るモータ部の第2実施形態を示す部分模式断面図である。
同図は、モータ部3Aの構成の一部を省略して示している。同図は、回転軸7を非断面で示している。
【0093】
モータ部3Aは、筐体5、モータ室6、回転軸7、磁石部8A、一対の環状部材9,10、スリーブ11、樹脂材12、ステータ13、および軸受14,15を備える。大径部71、磁石部8A、一対の環状部材9,10、スリーブ11、および樹脂材12は、本発明におけるロータRAを構成している。すなわち、モータ部3Aは、ロータRAを備える。第2実施形態では、ポンプ装置1は、モータ部3に代えてモータ部3Aを備える。
【0094】
磁石部8Aは、大径部71に固定されて、ステータ13に生じる回転磁界により回転軸7を回転させる。磁石部8Aは、複数(本実施の形態では8つ)の磁石81~88、および、樹脂材89を備える。各磁石81~88は、前面81a~88a、後面81b~88b、外周面81c~88c、および内周面81d~88dを備える。
【0095】
樹脂材89は、隣り合う各磁石81~88同士の間に樹脂材12が充填される隙間を形成すると共に、樹脂材12と同様に、各磁石81~88同士の間において、各磁石81~88の熱膨張/収縮による応力を緩和(吸収)する。樹脂材89は、例えば、樹脂材12と同じエポキシ系樹脂の接着材である。樹脂材89は、各磁石81~88の前面81a~88aおよび後面81b~88bに塗布されている。軸心方向において、樹脂材89の長さ(厚み)は、例えば、数十μm~数百μmである。すなわち、樹脂材89は、薄膜状である。樹脂材89は、本発明における第2樹脂材の一例である。
【0096】
なお、本発明において、樹脂材89の材料は、エポキシ系樹脂の接着剤に限定されない。
【0097】
図8は、モータ部3Aの
図7のCC線における模式断面図である。
同図は、磁石81の前面81aに塗布されている樹脂材89の前面を含む仮想平面における断面を示している(すなわち、樹脂材89は、非断面で示されている。)。同図は、説明の便宜上、磁石81の外周面81cおよび内周面81dを二点鎖線で示している。
【0098】
樹脂材89は、磁石81の前面81aおよび後面81bそれぞれの6箇所に塗布されている6つの樹脂材89a,89b,89c,89d,89e,89fを含む。各樹脂材89a~89fは、周方向において等間隔に配置されている。各樹脂材89a~89fは、前面81aおよび後面81bそれぞれの内方端から外方端まで、径方向に沿うように、塗布されている。すなわち、各樹脂材89a~89fは、放射状に塗布されている。軸心方向視において、前面81aに塗布されている各樹脂材89a~89fの位置は、後面81bに塗布されている各樹脂材89a~89fの位置と同じである。周方向において、隣り合う樹脂材89a~89f同士の間には、樹脂材12が充填されている。以下の説明において、各樹脂材89a~89fが特に区別されないとき、各樹脂材89a~89fは「樹脂材89」と記載されている。
【0099】
樹脂材89は、磁石82~88の前面82a~88aおよび後面82b~88bにも、磁石81と同様に塗布されている。すなわち、磁石82~88の前面82a~88aおよび後面82b~88bそれぞれには、6箇所に樹脂材89a~89fが塗布されている。したがって、樹脂材89は、各磁石81~88同士の間、磁石81と環状部材9との間、および、磁石88と環状部材10との間に配置されている。
【0100】
なお、本発明において、前面81a~88aおよび後面81b~88bそれぞれに放射状に塗布されている樹脂材89の数は、「6」に限定されない。すなわち、例えば、同樹脂材89の数は「5」以下でもよく、あるいは、「7」以上でもよい。また、各樹脂材89a~89fは、隣り合う樹脂材89a~89f同士が連結されるように塗布されていてもよい。この場合、例えば、各樹脂材89a~89fは、リング状の樹脂材89により一体となるように塗布されていてもよい。この場合、リング状の樹脂材89は、例えば、径方向において各樹脂材89a~89fの内方部同士に連結するように塗布される。
【0101】
●モータ部(2)の製造工程
次に、モータ部3Aの製造工程(製造方法)が、以下に説明される。以下の説明において、
図6~
図8は、適宜参照される。
【0102】
先ず、回転軸7、一対の環状部材9,10、および8つの磁性体81~88が準備される。モータ部3Aの主な製造工程は、塗布工程、環状体取付工程、スリーブ取付工程、樹脂材充填工程、着磁工程、組込工程、および加工工程を含む。
【0103】
次いで、樹脂材89が、各磁性体81~88の前面81a~88aおよび後面81b~88bに塗布される(塗布工程)。具体的には、各樹脂材89a~89fは、径方向に沿うように、周方向において等間隔に(放射状に)塗布される。このとき、各樹脂材89a~89fは、例えば、マスキングテープやマスクにより被塗布部以外が覆われた状態で、スプレーや刷毛などにより塗布される。次いで、各磁性体81~88に塗布された樹脂材89が乾燥される。
【0104】
次いで、環状の部材、すなわち、一対の環状部材9,10、および各磁性体81~88が回転軸7に取り付けられる(環状体取付工程)。
【0105】
環状体取付工程において、環状部材10は各磁性体81~88を前方に軽く押し付けるように、大径部71に取り付けられている。周方向において、各磁性体81~88に塗布されている各樹脂材89a~89fが同じ位置になるように、各磁性体81~88は配置されている。そのため、例えば、隣り合う磁性体81,82同士の間において、後面81bに塗布されている樹脂材89は前面82aに塗布されている樹脂材89に当接している。その結果、周方向において、隣り合う樹脂材89a~89f同士の間には、樹脂材12が充填される隙間が形成されている。同隙間は、隣り合う各磁性体82~88同士の間においても、同様に形成されている。また、大径部71の外周面71aと各磁性体81~88の内周面81d~88dとの間には、隙間が形成されている。
【0106】
なお、本発明において、樹脂材89を乾燥させることなく環状体取付工程が実行されて、隣り合う磁石81~88同士が樹脂材89により接着されていてもよい。
【0107】
次いで、スリーブ取付工程および樹脂材充填工程が実行される。樹脂材充填工程において、樹脂材12は、溝部91,101の中、大径部71と各磁性体81~88との間、隣り合う磁性体81~88同士の間(隣り合う樹脂材89a~89fの間)、磁性体81と環状部材9との間(隣り合う樹脂材89a~89fの間)、磁性体88と環状部材10との間(隣り合う樹脂材89a~89fの間)、各磁性体81~88とスリーブ11との間、および、環状部材9,10の一部とスリーブ11との間に含浸される(充填される)。すなわち、樹脂材12は、樹脂材89にも当接している。その後、樹脂材12が硬化される。
【0108】
次いで、着磁工程、組込工程、および加工工程が実行される。
【0109】
このような製造方法により製造されるモータ部3Aでは、第1実施形態に係るモータ部3と同様に、遠心力が加えられたとき、各磁石81~88の引張強度は高く、各磁石81~88の剥離は生じ難い。そして、ロータ径は、小さくできる。そのため、モータ室6内におけるエネルギー損失(流体損)は低減されて、ロータRAは高速回転にも耐えられる。したがって、高速回転に適したSPM構造のロータRAが、実現される。
【0110】
同様に、各磁性体(磁石)81~88に求められる寸法精度は、従来の磁石に求められる寸法精度よりも緩和される。したがって、ロータRAの組立は、従来のロータの組立よりも容易になる。
【0111】
隣り合う磁石81~88同士の間には、樹脂材89により、樹脂材12が浸入可能な隙間が確実に形成されていて、樹脂材12は同隙間に充填されている。すなわち、第2実施形態では、各磁石81~88同士の間に金属よりも低いヤング率を有する樹脂材12が充填されていて、樹脂材89も塗布されている。そのため、熱膨張/熱収縮による歪み力(応力)は同樹脂材12,89によりさらに緩和(吸収)される。
【0112】
なお、環状体取付工程において、環状部材9の後面9bと環状部材10の前面10bとの間の距離が、磁石部8の長さよりもやや長くなるように、環状部材10は大径部71に取り付けられていてもよい。この場合、樹脂材12は、第1実施形態と同様に、対向する樹脂材89同士の間、対向する樹脂材89と環状部材9,10との間にも充填されていてもよい。
【0113】
また、樹脂材充填工程において、樹脂材12は、例えば、毛細管現象により、対向する樹脂材89同士の間、対向する樹脂材89と環状部材9,10との間にも充填されていてもよい。
【0114】
●まとめ(2)
以上説明された第2実施形態によれば、モータ部3Aでは、第1実施形態に係るモータ部3と同様の効果が得られる。
【0115】
また、以上説明された第2実施形態によれば、ロータRAは、隣り合う磁石81~88同士の間に配置される樹脂材89を備える。樹脂材89は、隣り合う磁石81~88同士の間において、樹脂材12に当接している。この構成によれば、各磁石81~88同士の間に金属よりも低いヤング率を有する樹脂材12,89が充填・塗布されているため、熱膨張/熱収縮による歪み力(応力)は同樹脂材12,89によりさらに緩和(吸収)される。
【0116】
さらに、以上説明された第2実施形態によれば、樹脂材89は、各磁石81~88の前面81a~88aおよび後面81b~88bに塗布されている。この構成によれば、樹脂材89の厚みおよび形状は、任意に調整できる。そのため、各磁石81~88同士の間に充填される樹脂材12の位置や量も任意に調整できる。
【0117】
なお、第2実施形態において、各磁石81~88に塗布される樹脂材89の形状は、本実施の形態に限定されない。すなわち、例えば、前面81a~88aに塗布される樹脂材89の形状は、後面81b~88bに塗布される樹脂材89の形状と異なっていてもよい。また、例えば、前面82a~88aに塗布される樹脂材89は、後面81b~87bに塗布される樹脂材89と対向しないように配置されていてもよい。さらに、例えば、樹脂材89は、各磁石81~88と同心円状のリング状に塗布されていてもよい。
【0118】
また、第2実施形態において、樹脂材89はシール状に構成されていて、各磁石81~88に貼り付けられていてもよい。
【0119】
さらに、第2実施形態において、各樹脂材89の厚みは、異なっていてもよい。換言すれば、隣り合う磁石81~88同士の間、磁石81と環状部材9との間、および磁石88と環状部材10との間の間隔は、異なっていてもよい。すなわち、例えば、軸心方向において、各樹脂材89の厚みは、コア部の中央部からコア部の端部に向かうにつれて厚くなるように構成されていてもよい。大径部71と磁石部8との間の熱膨張量/熱収縮量の差異により、軸心方向において、同差異による歪み力(応力)は、中央部から離れるほど大きくなる。この構成によれば、各樹脂材89は、第2実施形態における樹脂材89よりも応力を吸収できる。
【0120】
●モータ部(3)●
●モータ部(3)の構成
次に、本発明に係る回転電機(モータ部)のさらに別の実施の形態(以下「第3実施形態」という。)が、第1実施形態および第2実施形態と異なる点を中心に、以下に説明される。第3実施形態に係るモータ部は、スペーサを備える点が、第1実施形態および第2実施形態に係るモータ部と異なる。以下の第3実施形態の説明において、説明の便宜上、第1実施形態と同じ部材、および共通している機能を有する部材には、第1実施形態と同じ符号が付されていて、詳細な説明は省略される。以下の説明において、
図1~
図6は、適宜参照される。
【0121】
図9は、本発明に係るモータ部の第3実施形態を示す部分模式断面図である。
同図は、モータ部3Bの構成の一部を省略して示している。同図は、回転軸7を非断面で示している。
【0122】
モータ部3Bは、筐体5、モータ室6、回転軸7、磁石部8、一対の環状部材9,10、スリーブ11、樹脂材12、ステータ13、軸受14,15、およびスペーサ部16を備える。大径部71、磁石部8、一対の環状部材9,10、スリーブ11、および樹脂材12は、本発明におけるロータRBを構成している。すなわち、モータ部3Bは、ロータRBを備える。第3実施形態では、ポンプ装置1は、モータ部3に代えてモータ部3Bを備える。
【0123】
スペーサ部16は、隣り合う磁石81~88同士の間、環状部材9と磁石81との間、および、環状部材10と磁石88との間に配置されていて、これらの間に樹脂材12が充填されるための隙間を形成している。スペーサ部16は、複数(本実施の形態では9つ)のスペーサ161,162,163,164,165,166,167,168,169を備える。各スペーサ161~169は、本発明における第2樹脂材の一例である。
【0124】
図10は、ロータRBの
図9のDD線における模式断面図である。
同図は、スペーサ162の前面を含む仮想平面における断面を示している(すなわち、スペーサ162は、非断面で示されている。)。同図は、説明の便宜上、スペーサ162の前面を示しているが、スペーサ162の形状は、その他のスペーサ161,163~169の形状と共通している。したがって、スペーサ162の構成および形状は、スペーサ161,163~169の構成および形状と共通している。以下の説明において、
図9は、適宜参照される。
【0125】
スペーサ162の形状は、円環状、かつ、略歯車状である。スペーサ162は、例えば、合成樹脂製(例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂)である。径方向において、スペーサ162は、大径部71の外方に配置されている。軸心方向において、スペーサ162は、磁石81と磁石82との間に配置されていて、磁石81,82に当接している。スペーサ162は、円環状の本体部200、6つの歯部201,202,203,204,205,206、外周面207、および内周面208を備える。各歯部201~206は、径方向において本体部200から外方に向けて突出している。周方向において、各歯部201~206は、等間隔に配置されている。外周面207は、歯部201~206の外周を含む凹凸状である。スペーサ162の内径は大径部71の外径よりも大きく、スペーサ162の外径は各磁石81~88の外径、および環状部材9,10の外径よりも小さい。説明の便宜上、以下の説明において、他のスペーサ161,163~169が備える「本体部」、「歯部」、「外周面」、および「内周面」には、スペーサ162が備える「本体部200」、「歯部201~206」、「外周面207」、および「内周面208」に対して付されている符号と同一の符号が付されている。
【0126】
図10に示されるように、各スペーサ161~169は、隣り合う磁石81~88同士の間、磁石81と環状部材9との間、および磁石88と環状部材10との間に配置されている。すなわち、スペーサ161は磁石81と環状部材9との間、スペーサ163は磁石82と磁石83との間、スペーサ164は磁石83と磁石84との間、スペーサ165は磁石84と磁石85との間、スペーサ166は磁石85と磁石86との間、スペーサ167は磁石86と磁石87との間、スペーサ168は磁石87と磁石88との間、スペーサ169は磁石88と環状部材10との間に配置されている。
【0127】
また、軸心方向において、各スペーサ161~169の長さ(厚み)は、同じである。したがって、軸心方向において、隣り合う磁石81~88同士の間、磁石81と環状部材9との間、および磁石88と環状部材10との間の間隔は、同じである。
【0128】
前述のとおり、各スペーサ161,163~169の構成および形状は、スペーサ162の構成および形状と共通している。そのため、各スペーサ161,163~169の構成および形状の説明は、省略される。
【0129】
●モータ部(3)の製造工程
次に、モータ部3Bの製造工程(製造方法)が、以下に説明される。以下の説明において、
図6、
図6および
図9は、適宜参照される。
【0130】
先ず、回転軸7、一対の環状部材9,10、8つの磁性体81~88、および9つのスペーサ161~169が準備される。モータ部3Bの主な製造工程は、環状体取付工程、スリーブ取付工程、樹脂材充填工程、着磁工程、組込工程、および加工工程を含む。
【0131】
次いで、環状の部材、すなわち、各磁性体81~88、一対の環状部材9,10、および各スペーサ161~169が回転軸7に取り付けられる(環状体取付工程)。
【0132】
環状体取付工程において、大径部71は、各スペーサ161~169および各磁性体81~88に対して、前方から交互に隙間嵌めの状態で挿通される(遊嵌される)。すなわち、大径部71は、スペーサ161、磁性体81、スペーサ162、磁性体82、・・・、スペーサ168、磁性体88、およびスペーサ169に対して、順に挿通される。
【0133】
環状体取付工程において、環状部材10は、各磁性体81~88および各スペーサ161~169を前方に軽く押し付けるように、大径部71に取り付けられている。すなわち、各スペーサ161~169は、環状部材9と磁性体81との間、各磁性体81~88同士の間、および、磁性体88と環状部材10との間に配置されている。そのため、環状部材9と磁性体81との間、隣り合う磁性体81~88同士の間、および、磁性体88と環状部材10との間には、各スペーサ161~169の厚み分の隙間が形成されている。また、大径部71の外周面71aと、各磁性体81~88の内周面81d~88dおよび各スペーサ161~169の内周面208との間には、隙間が形成されている。
【0134】
次いで、スリーブ取付工程および樹脂材充填工程が実行される。樹脂材充填工程において、樹脂材12は、溝部91,101の中、大径部71と各磁性体81~88との間、隣り合う磁性体81~88同士の間、磁性体81と環状部材9との間、磁性体88と環状部材10との間、各磁性体81~88とスリーブ11との間、および、環状部材9,10の一部とスリーブ11との間に含浸される(充填される)。すなわち、樹脂材12は、各スペーサ161~169にも当接している。このとき、樹脂材12の表面張力などの影響により、軸方向視において、各スペーサ161~169の中心と、回転軸7(大径部71)の中心と、が一致するように、各スペーサ161~169は径方向に移動する。
【0135】
その後、樹脂材12が硬化されることにより、各磁性体81~88および各スペーサ161~169は大径部71に固定されて、スリーブ11は各磁性体81~88、環状部材9,10、および各スペーサ161~169に固定される。
【0136】
次いで、着磁工程、組込工程、および加工工程が実行される。
【0137】
このような製造方法により製造されるモータ部3Bでは、第1実施形態に係るモータ部3と同様に、遠心力が加えられたとき、各磁石81~88の引張強度は高く、各磁石81~88の剥離は生じ難い。そして、ロータ径は、小さくできる。そのため、モータ室6内におけるエネルギー損失(流体損)は低減されて、ロータRBは高速回転にも耐えられる。したがって、高速回転に適したSPM構造のロータRBが、実現される。
【0138】
同様に、各磁性体(磁石)81~88に求められる寸法精度は、従来の磁石に求められる寸法精度よりも緩和される。したがって、ロータRBの組立は、従来のロータの組立よりも容易になる。
【0139】
隣り合う磁石81~88同士の間には、各スペーサ161~169により、樹脂材12が浸入可能な隙間が確実に形成されている。また、軸心方向において、同隙間の大きさは、各スペーサ161~169の厚みにより任意に調整可能である。樹脂材12は同隙間に充填されている。すなわち、第3実施形態では、各磁石81~88同士の間に金属よりも低いヤング率を有する樹脂材12が充填されていて、スペーサ161~169も配置されているため、熱膨張/熱収縮による歪み力(応力)はさらに緩和(吸収)される。
【0140】
●まとめ(3)
以上説明された第3実施形態によれば、モータ部3Bでは、第1実施形態に係るモータ部3と同様の効果が得られる。また、熱膨張/熱収縮による歪み力(応力)は、樹脂材12および各スペーサ161~169によりさらに緩和される。
【0141】
また、以上説明された第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、回転軸7の回転バランスは、容易に調整可能である。樹脂材12は溝部91,101からロータRの内部に充填(含浸)可能であり、各磁石81~88はモータ室6内において取扱液に接液しない。
【0142】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、ロータRBは、隣り合う磁石81~88同士の間に配置される複数のスペーサ162~168を備える。各スペーサ162~168は、樹脂材12に当接している。この構成によれば、隣り合う磁石81~88同士の間に、スペーサ162~168の厚さ分に相当する隙間が確実に形成可能である。そのため、樹脂材12は同隙間にも充填されていて、各磁石81~88および各スペーサ162~168は樹脂材12により一体化されている。その結果、ロータRB(モータ部3B)の強度は、高まる。また、各スペーサ161~169の厚みおよび形状は、任意に調整できる。そのため、各磁石81~88同士の間に充填される樹脂材12の位置や量も任意に調整できる。
【0143】
なお、第3実施形態において、隣り合う磁石81~88同士の間、磁石81と環状部材9との間、および磁石88と環状部材10との間に所定の隙間が確保できれば、各スペーサ161~169の形状は、略歯車状に限定されない。すなわち、例えば、各スペーサ161~169は、歯部201~206を備えていなくてもよい。この場合、各スペーサ161~169の形状は、
図3に示されるような本体部200のみで構成されている円環状、その他多角形状でもよい。
【0144】
また、第3実施形態において、各スペーサ161~169の厚みは、異なっていてもよい。換言すれば、隣り合う磁石81~88同士の間、磁石81と環状部材9との間、および磁石88と環状部材10との間の間隔は、異なっていてもよい。すなわち、各スペーサ161~169の厚みは、大径部71と磁石部8との間に生じる熱膨張/熱収縮に応じて適宜決められてもよい。すなわち、例えば、軸心方向において、各スペーサ161~169の厚みは、コア部の中央部からコア部の端部に向かうにつれて厚くなるように構成されていてもよい。前述のとおり、大径部71と磁石部8との間の熱膨張量/熱収縮量の差異により、軸心方向において、同差異による歪み力(応力)は、中央部から離れるほど大きくなる。この構成によれば、各スペーサ161~169は、第3実施形態におけるスペーサ161~169よりも応力を吸収できる。
【0145】
●モータ部(4)●
●モータ部(4)の構成
次に、本発明に係る回転電機(モータ部)のさらに別の実施の形態(以下「第4実施形態」という。)が、第1実施形態と異なる点を中心に、以下に説明される。第4実施形態に係るモータ部は、フィラメント材を備える点が、第1実施形態と異なる。以下の第4実施形態の説明において、説明の便宜上、第1実施形態と同じ部材、および共通している機能を有する部材には、第1実施形態と同じ符号が付されていて、詳細な説明は省略される。以下の説明において、
図1~
図6は、適宜参照される。
【0146】
図11は、本発明に係るモータ部の第4実施形態を示す部分模式断面図である。
同図は、モータ部3Eの構成の一部を省略して示している。同図は、回転軸7を非断面で示している。
図12は、
図11に示されるモータ部3Eの部分拡大模式断面図である。
【0147】
モータ部3Eは、筐体5、モータ室6、回転軸7、磁石部8(磁石81~88)、一対の環状部材9E,10E、スリーブ11、樹脂材12、ステータ13、軸受14,15、およびフィラメント材17を備える。大径部71、磁石部8、一対の環状部材9E,10E、スリーブ11、樹脂材12、およびフィラメント材17は、本変形例におけるロータREを構成している。すなわち、モータ部3Eは、ロータREを備える。本変形例では、ポンプ装置1は、モータ部3に代えてモータ部3Eを備える。
【0148】
環状部材9Eは、フィラメント材17が配置されるための段部93を備える。段部93は、環状部材9Eの外周面9cの後部がリング状に切削されることにより形成されている。段部93は、スリーブ11および樹脂材12に覆われている。
【0149】
環状部材10Eは、フィラメント材17が配置されるための段部103を備える。段部103は、環状部材10Eの外周面10cの前部がリング状に切削されることにより形成されている。段部103は、スリーブ11および樹脂材12に覆われている。
【0150】
フィラメント材17は、磁石部8の外周面および段部93,103を覆うように、各磁石81~88および環状部材9E,10Eに巻き付けられている。フィラメント材17は、例えば、高い引張強度を有するカーボン糸である。
【0151】
樹脂材12は、第1実施形態で説明された隙間に加えて、フィラメント材17間、各磁石81~88とフィラメント材17との間、環状部材9E,10Eとフィラメント材17との間、および、スリーブ11とフィラメント材17との間に充填されている。換言すれば、樹脂材12は、巻き付けられたフィラメント材17を内包(包含)するように、フィラメント材17間に充填されている。その結果、巻き付けられたフィラメント材17は、樹脂材12と共に、フィラメント材17により高度が強化された樹脂層、すなわち、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)層を構成する。硬化した樹脂材12およびフィラメント材17は、磁石部8の外周面および段部93,103を覆っている。そのため、ロータREの強度は、第1実施形態におけるロータRの強度よりも高まる。
【0152】
●モータ部(4)の製造工程
次に、モータ部3Eの製造工程(製造方法)が、以下に説明される。以下の説明において、
図6、
図11および
図12は、適宜参照される。
【0153】
モータ部3Eの主な製造工程(製造方法)は、環状体取付工程、巻付工程、スリーブ取付工程、樹脂材充填工程、着磁工程、組込工程、および加工工程を含む。
【0154】
先ず、環状体取付工程が実行される。次いで、フィラメント材17が、一対の環状部材9E,10Eの段部93,103および各磁性体81~88の外周面81c~88cに巻き付けられる(巻付工程)。フィラメント材17の巻き付けは、例えば、公知のフィラメントワインディング法により行われる。
【0155】
次いで、スリーブ取付工程、樹脂材充填工程、着磁工程、組込工程、および加工工程が実行される。
【0156】
前述のとおり、樹脂材充填工程において、第1実施形態で説明された隙間に加えて、フィラメント材17間、各磁石81~88とフィラメント材17との間、環状部材9E,10Eとフィラメント材17との間、および、スリーブ11とフィラメント材17との間に充填されている。
【0157】
このような製造方法により製造されるモータ部3Eでは、各磁石81~88はCFRP層により第1実施形態に係るモータ部3よりも強固に保護されるため、各磁石81~88の剥離はさらに生じ難い。そして、後述のとおり、スリーブ11の厚みが薄くなり、または、スリーブ11が不要となるため、ロータ径はさらに小さくできる。そのため、モータ室6内におけるエネルギー損失(流体損)は低減されて、ロータREは高速回転にも耐えられる。したがって、高速回転に適したSPM構造のロータREが、実現される。
【0158】
同様に、各磁性体(磁石)81~88に求められる寸法精度は、従来の磁石に求められる寸法精度よりも緩和される。したがって、ロータRCの組立は、従来のロータの組立よりも容易になる。
【0159】
隣り合う磁石81~88同士の間には、樹脂材12が充填されている。そのため、熱膨張/熱収縮による歪み力(応力)は同樹脂材12により緩和(吸収)される。
【0160】
●まとめ(4)
以上説明された第4実施形態によれば、モータ部3Eでは、第1実施形態に係るモータ部3と同様の効果が得られる。
【0161】
また、以上説明された第4実施形態によれば、ロータREは、複数の磁石81~88の外周面81c~88cを覆うように、複数の磁石81~88に巻き付けられるフィラメント材17を備える。樹脂材12は、各磁石81~88と、巻き付けられたフィラメント材17と、の間に充填されている。この構成によれば、各磁石81~88の外周面81c~88cおよび段部93,103がCFRP層で覆われる。そのため、ロータREの強度は、第1実施形態におけるロータRの強度よりも高まる。また、各磁石81~88がCFRP層で保護されているため、スリーブ11の必要性は第1実施形態よりも低くなる。そのため、スリーブ11の厚みはさらに薄くでき、ロータREがスリーブ11を備えない構成も許容できる(スリーブ11が不要となる)。
【0162】
なお、第4実施形態において、モータ部3Eの製造工程は、さらに、樹脂材12のうち、CFRP層を構成している部分の外周面が円柱状に切削される樹脂材切削工程を備えていてもよい。この場合、樹脂材充填工程は巻付工程の後に実行されて、樹脂材切削工程は巻付工程の後に実行されて、スリーブ取付工程は巻付工程の後に実行される。さらに、樹脂材充填工程は、スリーブ取付工程の後に再度実行される。また、モータ部3Eの製造工程が樹脂材切削工程を備えている場合、ロータREはスリーブ11に圧入されてもよい。この場合、2回目の樹脂材充填工程は、不要となる。
【0163】
また、第4実施形態において、フィラメント材17の巻き付けによりロータREの強度が十分確保できている場合、モータ部3Eは、スリーブ11を備えていなくてもよい。この場合、樹脂材充填工程の後、樹脂材12のうち、CFRP層を構成している部分の外周面の表面は、環状部材9E、10Eの外周面9c,10cに合わせて切削される。
【0164】
●その他の実施形態●
なお、本発明において、ポンプ装置1で使用される取扱液は、極低温の液体水素や高温の液体でもよい。磁石部8の全体は樹脂材12により覆われている(保護されている)ため、磁石部8は外部に露出されない。そのため、磁石部8は取扱液で満たされているモータ室6内において、取扱液に接液しない。その結果、取扱液による磁石部8の損傷(磁石部8への影響)は、無い。
【0165】
また、本発明において、コア部は、大径部71により構成されていなくてもよい。すなわち、例えば、コア部は、回転軸7とは別体に構成されていてもよい。この場合、軸心方向において、回転軸7は、直径が同じ円筒状の軸部で構成されていてもよく、コア部は回転軸7が挿通された円筒状の鉄心により構成されてもよい。つまり、ロータR~REがコア部を備えていてもよい。
【0166】
さらに、本発明において、環状部材9,10,9E,10Eに代わり、または、環状部材9,10,9E,10Eと共に大径部71が溝部を備えていてもよい。この場合、大径部71が備える溝部は、大径部71の外周面71aに配置されていて、環状部材9,10,9E,10Eの前方側と後方側とに通じるように形成されている。
【0167】
さらにまた、本発明において、大径部71は、環状部材9,10,9E,10Eに圧入されていなくてもよい。すなわち、例えば、環状部材9,10,9E,10Eの内径が大径部71の外径よりも大きくなるように構成されていて、大径部71は環状部材9,10,9E,10Eに隙間嵌めにより遊嵌されていてもよい。この場合、環状部材9,10,9E,10Eと大径部71との間に形成される隙間から樹脂材12がロータR~RE内に浸入可能であるため、環状部材9,10,9E,10Eの溝部91,101は不要となる。
【0168】
さらにまた、本発明において、溝部91は、環状部材9の前方側(一方向側)と後方側(他方向側)とに通じていればよく、軸心方向に沿って配置されていなくてもよい。また、軸心方向視において、溝部91の形状は、略半円状に限定されない。
【0169】
さらにまた、本発明において、筐体5は液導入口51,52を備えていなくてもよい。このとき、例えば、取扱液は軸受14,15を通過することにより、ポンプ室22およびモータ室6の内部に導入されていてもよい。
【0170】
さらにまた、本発明において、各磁石81~88は、継ぎ目の無い円環状である。そのため、回転軸7の回転に伴う遠心力による各磁石81~88の剥離は生じ難く、各磁石81~88の飛散も生じ難い。そのため、モータ部3~3Bは、スリーブ11を備えていなくてもよい。
【0171】
さらにまた、本発明が成立するのであれば、各実施形態の構成は、相互に組合せ可能である。すなわち、例えば、ロータRA,RBがフィラメント材17を備えていてもよい。また、例えば、ロータRBが樹脂材89を備えていてもよい。
【0172】
●本発明の実施態様●
次に、以上説明した各実施形態から把握される本発明の実施態様について、各実施形態において記載された用語と符号とを援用しつつ、以下に記載する。
【0173】
本発明の第1の実施態様は、ロータ(例えば、ロータR~RE)と、前記ロータの回転が伝達される回転軸(例えば、回転軸7)と、を有してなり、前記ロータ、または、前記回転軸は、円柱状の外周面(例えば、外周面71a)を有するコア部(例えば、大径部71)、を備え、前記ロータは、前記コア部に固定される複数の磁石(例えば、磁石81~88)と、複数の前記磁石を前記コア部に固定する第1樹脂材(例えば、樹脂材12)と、を備えて、複数の前記磁石それぞれの形状は、継ぎ目の無い円環状であり、複数の前記磁石それぞれは、前記コア部の径方向において前記コア部の外方に配置されて、前記コア部の軸心方向に沿って配置されて、前記第1樹脂材は、前記コア部と複数の前記磁石との間に充填される、回転電機(例えば、モータ部3~3E)である。
この構成によれば、ロータの回転に伴う遠心力による複数の磁石それぞれの剥離や飛散は生じ難い。また、この構成によれば、モータ室内でロータに接液している取扱液の抵抗(摩擦)によるエネルギー損失(流体損)は、低減されるため、高速回転に適したロータが実現される。
【0174】
本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記第1樹脂材は、隣り合う前記磁石同士の間に充填される、回転電機である。
この構成によれば、各磁石と大径部とに生じる熱膨張/熱収縮による歪み力(応力)は、緩和される。
【0175】
本発明の第3の実施態様は、第2の実施態様において、前記ロータは、隣り合う前記磁石同士の間に配置される第2樹脂材(例えば、樹脂材89、スペーサ161~169)、を備えて、前記第2樹脂材は、前記第1樹脂材に当接する、回転電機(例えば、モータ部3A,3B)である。
この構成によれば、軸心方向において、熱膨張/熱収縮による歪み力(応力)は2つの樹脂材により緩和(吸収)される。
【0176】
本発明の第4の実施態様は、第3の実施態様において、前記軸心方向において、前記磁石それぞれは、一方向側に面する第1面(例えば、前面81a~88a)と、他方向側に面する第2面(例えば、81b~88b)と、を備えて、前記第2樹脂材(例えば、樹脂材89)は、前記磁石それぞれの前記第1面と前記第2面とに付けられる、回転電機(例えば、モータ部3A)である。
この構成によれば、各磁石同士の間に充填される樹脂材の位置や量も任意に調整できる。
【0177】
本発明の第5の実施態様は、第3の実施態様において、前記第2樹脂材は、隣り合う前記磁石同士の間に配置されるスペーサ(例えば、スペーサ161~169)により構成される、回転電機(例えば、モータ部3B)である。
この構成によれば、隣り合う磁石同士の間に、スペーサの厚さ分に相当する隙間が確実に形成可能である。
【0178】
本発明の第6の実施態様は、第3の実施態様において、前記軸心方向において、前記第2樹脂材の厚みは、前記コア部の中央部から前記コア部の端部に向かうにつれて厚くなるように構成される、回転電機である。
この構成によれば、軸心方向において、熱膨張/熱収縮による歪み力(応力)は、さらに緩和(吸収)される。
【0179】
本発明の第7の実施態様は、第1の実施態様において、前記ロータは、前記コア部に取り付けられる円環状の一対の環状部材(例えば、環状部材9,10,9E,10E)、を備え、前記軸心方向において、一対の前記環状部材は、複数の前記磁石を挟み込むように配置されて、前記周方向において、一対の前記環状部材は、前記コア部の外方に配置されて、一対の前記環状部材のうち、少なくとも一方の前記環状部材は、前記回転軸の回転バランスを調整するために加工された加工領域(例えば、加工領域92)を備える、回転電機である。
この構成によれば、回転軸の回転バランスは、容易に調整可能である。
【0180】
本発明の第8の実施態様は、第7の実施態様において、前記コア部の前記外周面は、一対の前記環状部材それぞれの内周面(例えば、内周面9d、10d)に当接して、一対の前記環状部材それぞれ、および/または、前記コア部は、前記内周面、および/または、前記外周面に配置される溝部(例えば、溝部91,101)、を備えて、前記溝部は、前記環状部材の一方向側(例えば、前方側)と他方向側(例えば、後方側)とに通じる、回転電機である。
この構成によれば、コア部が一対の環状部材それぞれに圧入されていても、樹脂材は、溝からロータの内部に充填(含浸)可能である。
【0181】
本発明の第9の実施態様は、第8の実施態様において、前記第1樹脂材は、前記溝部の中に充填される、回転電機である。
この構成によれば、取扱液は、溝部を介してロータの内部へ浸入しない。
【0182】
本発明の第10の実施態様は、第1の実施態様において、前記ロータ(例えば、ロータRE)は、複数の前記磁石の外周面を覆うように、複数の前記磁石に巻き付けられるフィラメント材(例えば、フィラメント材17)、を備え、前記第1樹脂材は、複数の前記磁石と巻き付けられた前記フィラメント材との間に充填される、回転電機(例えば、モータ部3E)である。
この構成によれば、フィラメント材によりCFRP層が構成される。そのため、ロータの強度は、より高まる。
【0183】
本発明の第11の実施態様は、第1の実施態様において、前記軸心方向において、前記回転軸の一部(例えば、大径部71)は、前記コア部として機能する、回転電機である。
この構成によれば、コア部の外径は、回転軸の外径近くまで小さくできる。その結果、ロータ径は、さらに小さくできる。
【0184】
本発明の第12の実施態様は、第1乃至第11のいずれか1の実施態様において、前記ロータは、前記周方向において、複数の前記磁石を覆うように配置される円筒状のスリーブ(例えば、スリーブ11)、を備え、前記第1樹脂材は、複数の前記磁石と前記スリーブとの間に充填される、回転電機である。
この構成によれば、複数の磁石が樹脂材により覆われて保護されていると共に、磁石部の表面はスリーブによっても保護されている。
【0185】
本発明の第13の実施態様は、第12の実施態様において、前記軸心方向において、前記スリーブの一端部(例えば、前端部11a)は、一対の前記環状部材のうち一方の前記環状部材(例えば、環状部材9)の一部(例えば、後半部)を覆い、前記軸心方向において、前記スリーブの他端部(例えば、後端部11b)は、一対の前記環状部材のうち他方の前記環状部材(例えば、環状部材10)の一部(例えば、前半部)を覆う、回転電機である。
この構成によれば、一対の環状部材のうち、スリーブに覆われていない部分(前半部)は、切削可能な領域(加工領域)となり得る。
【0186】
本発明の第14の実施態様は、第1の実施態様に記載の回転電機と、前記回転電機の回転により回転するインペラ(例えば、インペラ4)と、を有してなる、ポンプ装置(例えば、ポンプ装置1)である。
この構成によれば、ポンプ装置は、高速回転に適したSPM構造のロータを備えるポンプ装置として実現される。
【符号の説明】
【0187】
1 ポンプ装置
3 モータ部(回転電機)
3A モータ部(回転電機)
3B モータ部(回転電機)
3E モータ部(回転電機)
7 回転軸
71 大径部(コア部)
71a 外周面
8 磁石部
8A 磁石部
81~88 磁石(磁性体)
89 樹脂材(第2樹脂材)
9,10 環状部材
9E,10E 環状部材
9d,10d 内周面
91,101 溝部(溝)
92 加工領域
11 スリーブ
11a 前端部(一端部)
11b 後端部(他端部)
12 樹脂材(第1樹脂材)
16 スペーサ部
161~169 複数のスペーサ(第2樹脂材)
17 フィラメント材
【手続補正書】
【提出日】2024-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータの回転が伝達される回転軸と、
を有してなり、
前記回転軸は、
円柱状の外周面を有するコア部、
を備えて、
前記ロータは、
前記コア部に固定される複数の磁石と、
複数の前記磁石を前記コア部に固定する第1樹脂材と、
を備えて、
複数の前記磁石それぞれの形状は、継ぎ目の無い円環状であり、
複数の前記磁石それぞれは、
前記コア部の径方向において、前記コア部の外方に配置されて、
前記コア部の軸心方向に沿って配置されて、
前記第1樹脂材は、前記コア部と複数の前記磁石との間に充填されて、
前記軸心方向において、前記回転軸の一部は、前記コア部として機能する、
回転電機。
【請求項2】
前記軸心方向において、前記第1樹脂材は、隣り合う前記磁石同士の間に充填される、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ロータは、隣り合う前記磁石同士の間に配置される第2樹脂材、を備えて、
前記第2樹脂材は、前記第1樹脂材に当接する、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記軸心方向において、前記磁石それぞれは、
一方向側に面する第1面と、
他方向側に面する第2面と、
を備えて、
前記第2樹脂材は、前記磁石それぞれの前記第1面と前記第2面とに付けられる、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第2樹脂材は、隣り合う前記磁石同士の間に配置されるスペーサにより構成される、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項6】
前記軸心方向において、前記第2樹脂材の厚みは、前記コア部の中央部から前記コア部の端部に向かうにつれて厚くなるように構成される、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項7】
前記ロータは、前記コア部に取り付けられる円環状の一対の環状部材、を備え、
前記軸心方向において、一対の前記環状部材は、複数の前記磁石を挟み込むように配置されて、
前記径方向において、一対の前記環状部材は、前記コア部の外方に配置されて、
一対の前記環状部材のうち、少なくとも一方の前記環状部材は、前記回転軸の回転バランスを調整するために加工された加工領域を備える、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項8】
前記コア部の前記外周面は、一対の前記環状部材それぞれの内周面に当接して、
一対の前記環状部材それぞれ、および/または、前記コア部は、前記内周面、および/または、前記外周面に配置される溝部、を備えて、
前記軸心方向において、前記溝部は、前記環状部材の一方向側と他方向側とに通じて、
前記第1樹脂材は、前記溝部の中に充填される、
請求項7に記載の回転電機。
【請求項9】
前記ロータは、複数の前記磁石の外周面を覆うように、複数の前記磁石に巻き付けられるフィラメント材、を備え、
前記第1樹脂材は、複数の前記磁石と巻き付けられた前記フィラメント材との間に充填される、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項10】
前記ロータは、前記回転軸の周方向において、複数の前記磁石を覆うように配置される円筒状のスリーブ、を備え、
前記第1樹脂材は、複数の前記磁石と前記スリーブとの間に充填される、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項11】
前記軸心方向において、前記スリーブの一端部は、一対の前記環状部材のうち一方の前記環状部材の一部を覆い、
前記軸心方向において、前記スリーブの他端部は、一対の前記環状部材のうち他方の前記環状部材の一部を覆う、
請求項7に従属する請求項10に記載の回転電機。
【請求項12】
請求項1に記載の回転電機と、
前記回転電機の回転により回転するインペラと、
を有してなる、
ポンプ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の一実施態様における回転電機は、ロータと、前記ロータの回転が伝達される回転軸と、を有してなり、前記回転軸は、円柱状の外周面を有するコア部、を備えて、前記ロータは、前記コア部に固定される複数の磁石と、複数の前記磁石を前記コア部に固定する第1樹脂材と、を備えて、複数の前記磁石それぞれの形状は、継ぎ目の無い円環状であり、複数の前記磁石それぞれは、前記コア部の径方向において前記コア部の外方に配置されて、前記コア部の軸心方向に沿って配置されて、前記第1樹脂材は、前記コア部と複数の前記磁石との間に充填されて、前記軸心方向において、前記回転軸の一部は、前記コア部として機能する。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取扱液を送液するポンプに用いられる回転電機であって、
ロータと、
前記ロータの回転が伝達される回転軸と、
前記回転軸の一部と、前記ロータと、が収容される収容室を区画する筐体と、
を有してなり、
前記筐体は、
前記収容室内に前記取扱液を導入する液導入口、
を備えて、
前記回転軸は、
円柱状の外周面を有するコア部、
を備えて、
前記ロータは、
前記コア部に固定される複数の磁石と、
複数の前記磁石を前記コア部に固定する第1樹脂材と、
を備えて、
複数の前記磁石それぞれの形状は、継ぎ目の無い円環状であり、
複数の前記磁石それぞれは、
前記コア部の径方向において、前記コア部の外方に配置されて、
前記コア部の軸心方向に沿って配置されて、
前記第1樹脂材は、前記コア部と複数の前記磁石との間に充填されて、
前記コア部は、前記回転軸に取り付けられておらず、前記回転軸と一体に形成されて、
前記軸心方向において、前記回転軸の一部は、前記コア部として機能する、
回転電機。
【請求項2】
前記軸心方向において、前記第1樹脂材は、隣り合う前記磁石同士の間に充填される、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ロータは、隣り合う前記磁石同士の間に配置される第2樹脂材、を備えて、
前記第2樹脂材は、前記第1樹脂材に当接する、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記軸心方向において、前記磁石それぞれは、
一方向側に面する第1面と、
他方向側に面する第2面と、
を備えて、
前記第2樹脂材は、前記磁石それぞれの前記第1面と前記第2面とに付けられる、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第2樹脂材は、隣り合う前記磁石同士の間に配置されるスペーサにより構成される、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項6】
前記軸心方向において、前記第2樹脂材の厚みは、前記コア部の中央部から前記コア部の端部に向かうにつれて厚くなるように構成される、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項7】
前記ロータは、前記コア部に取り付けられる円環状の一対の環状部材、を備え、
前記軸心方向において、一対の前記環状部材は、複数の前記磁石を挟み込むように配置されて、
前記径方向において、一対の前記環状部材は、前記コア部の外方に配置されて、
一対の前記環状部材のうち、少なくとも一方の前記環状部材は、前記回転軸の回転バランスを調整するために加工された加工領域を備える、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項8】
前記コア部の前記外周面は、一対の前記環状部材それぞれの内周面に当接して、
一対の前記環状部材それぞれ、および/または、前記コア部は、前記内周面、および/または、前記外周面に配置される溝部、を備えて、
前記軸心方向において、前記溝部は、前記環状部材の一方向側と他方向側とに通じて、
前記第1樹脂材は、前記溝部の中に充填される、
請求項7に記載の回転電機。
【請求項9】
前記ロータは、複数の前記磁石の外周面を覆うように、複数の前記磁石に巻き付けられるフィラメント材、を備え、
前記第1樹脂材は、複数の前記磁石と巻き付けられた前記フィラメント材との間に充填される、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項10】
前記ロータは、前記回転軸の周方向において、複数の前記磁石を覆うように配置される円筒状のスリーブ、を備え、
前記第1樹脂材は、複数の前記磁石と前記スリーブとの間に充填される、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項11】
前記軸心方向において、前記スリーブの一端部は、一対の前記環状部材のうち一方の前記環状部材の一部を覆い、
前記軸心方向において、前記スリーブの他端部は、一対の前記環状部材のうち他方の前記環状部材の一部を覆う、
請求項7に従属する請求項10に記載の回転電機。
【請求項12】
請求項1に記載の回転電機と、
前記回転電機の回転により回転するインペラと、
を有してなる、
ポンプ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の一実施態様における回転電機は、取扱液を送液するポンプに用いられる回転電機であって、ロータと、前記ロータの回転が伝達される回転軸と、前記回転軸の一部と、前記ロータと、が収容される収容室を区画する筐体と、を有してなり、前記筐体は、前記収容室内に前記取扱液を導入する液導入口、を備えて、前記回転軸は、円柱状の外周面を有するコア部、を備えて、前記ロータは、前記コア部に固定される複数の磁石と、複数の前記磁石を前記コア部に固定する第1樹脂材と、を備えて、複数の前記磁石それぞれの形状は、継ぎ目の無い円環状であり、複数の前記磁石それぞれは、前記コア部の径方向において前記コア部の外方に配置されて、前記コア部の軸心方向に沿って配置されて、前記第1樹脂材は、前記コア部と複数の前記磁石との間に充填されて、前記コア部は、前記回転軸に取り付けられておらず、前記回転軸と一体に形成されて、前記軸心方向において、前記回転軸の一部は、前記コア部として機能する。