(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174688
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 43/02 20060101AFI20241210BHJP
F16D 41/10 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F16D43/02
F16D41/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092651
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】畑中 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎
【テーマコード(参考)】
3J068
【Fターム(参考)】
3J068AA10
3J068BA01
3J068BB10
3J068GA02
(57)【要約】
【課題】従来技術と比較して騒音の発生を抑制できる逆入力遮断クラッチを提供する。
【解決手段】逆入力遮断クラッチは、ハウジングと、入力部材と、出力部材と、入力部材と係合可能な入力側被係合部53及び出力部材と係合可能な出力側被係合部54を有する一対の係合子5と、を備える。係合子5は、係合子本体50とは別部材で形成された駒部7を有する。駒部7は、係合子5のうち入力側被係合部53及び出力側被係合部54の少なくとも一方と対応する位置に設けられる。駒部7は、緩衝部材により形成されている。係合子5には、駒部7を収容する凹部55,56が形成されている。さらに凹部55,56には、駒部7と係合する係合突起57,58が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に被押圧面を有するハウジングと、
前記被押圧面よりも径方向の内側に設けられた入力側係合部を有し、前記被押圧面の軸方向と同軸に配置される入力部材と、
前記被押圧面よりも前記径方向の内側かつ前記入力側係合部よりも前記径方向の内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される出力部材と、
前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部、及び前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部を有し、前記径方向に沿う第一方向に互いに相対移動可能な一対の係合子と、
を備え、
前記第一方向は前記一対の係合子の近接離間方向と一致する方向であり、
前記入力部材に回転力が入力されると、前記一対の係合子は、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の内側に向かって互いに近づくように移動し、かつ前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記回転力を前記出力部材に伝達し、
前記出力部材に回転力が逆入力されると、前記一対の係合子は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の外側に向かって互いに離間するように移動し、前記被押圧面と前記押圧面とを摩擦係合させ、
前記係合子のうち前記入力側被係合部及び前記出力側被係合部の少なくとも一方と対応する位置には、前記係合子とは別部材で形成された駒部が設けられる、
逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記駒部は、緩衝部材により形成されている、
請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記駒部は、前記入力部材及び前記出力部材の少なくとも一方と接触する母材の表面に表面処理が施されている、
請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
前記出力部材と前記係合子との間で弾性的に挟持され、前記係合子が前記被押圧面に近づくように前記係合子を前記第一方向の外側に向かって付勢する弾性部材をさらに備える、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項5】
前記係合子は、前記駒部が収容される凹部を有し、
前記凹部の深さ方向の第一の位置において前記深さ方向と直交する前記凹部の断面積は、前記第一の位置よりも深さが浅い第二の位置において前記深さ方向と直交する前記凹部の断面積よりも大きい、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項6】
前記係合子は、前記駒部が収容される凹部を有し、
前記凹部には、前記駒部と係合する係合突起が設けられている、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項7】
前記凹部は、前記係合子から前記第一方向に凹むように設けられており、
前記係合突起は、前記凹部の底部から前記第一方向に突出しており、
前記係合突起の前記軸方向に沿う幅寸法は、前記係合子の前記軸方向に沿う厚み寸法よりも小さい、
請求項6に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項8】
前記凹部は、前記係合子から前記軸方向に凹むように設けられており、
前記係合突起は、前記凹部の底部から前記軸方向に突出しており、
前記駒部は、前記係合子の前記軸方向を向く面に設けられる、
請求項6に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項9】
前記駒部は、前記逆入力遮断クラッチに入力された回転トルクが所定の閾値未満である場合に前記入力部材及び前記出力部材の少なくとも一方と前記駒部とが接触し、かつ前記逆入力遮断クラッチに入力された回転トルクが前記所定の閾値以上である場合に前記入力部材及び前記出力部材の少なくとも一方と前記係合子とが接触するように前記第一方向の厚み寸法が設定されている、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源などの入力機構に接続される入力部材と、減速機などの出力機構に接続される出力部材と、を備え、入力部材から出力部材への回転力の伝達を許可するとともに出力部材から入力部材への回転力の逆入力を遮断する逆入力遮断クラッチの構成が知られている。これらの逆入力遮断クラッチでは、逆入力遮断クラッチの性能を向上するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、被押圧面を有する被押圧部材と、被押圧面の径方向内側において互いに同軸に設けられた入力部材及び出力部材と、正面視で入力部材及び出力部材の間に介在し、径方向に移動可能な一対の係合子と、を有する逆入力遮断クラッチの構成が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、出力部材に回転力が逆入力されると、係合子と出力部材との係合に基づき係合子が被押圧面に近づく方向に移動して被押圧面と摩擦係合することにより、出力部材に逆入力された回転力を遮断できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の従来技術においては、組み立て作業性及び逆入力遮断クラッチの動作性を確保する観点から、入力部材及び出力部材のいずれにも回転力が入力されていない中立状態で、入力部材と係合子との間、及び、出力部材と係合子との間にそれぞれ隙間が設けられている。このため、隙間に起因したがたつきが生じ、入力部材又は出力部材に回転トルクが入力された際に騒音が発生するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、従来技術と比較して騒音の発生を抑制できる逆入力遮断クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る逆入力遮断クラッチは、内周面に被押圧面を有するハウジングと、前記被押圧面よりも径方向の内側に設けられた入力側係合部を有し、前記被押圧面の軸方向と同軸に配置される入力部材と、前記被押圧面よりも前記径方向の内側かつ前記入力側係合部よりも前記径方向の内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される出力部材と、前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部、及び前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部を有し、前記径方向に沿う第一方向に互いに相対移動可能な一対の係合子と、を備え、前記第一方向は前記一対の係合子の近接離間方向と一致する方向であり、前記入力部材に回転力が入力されると、前記一対の係合子は、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の内側に向かって互いに近づくように移動し、かつ前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記回転力を前記出力部材に伝達し、前記出力部材に回転力が逆入力されると、前記一対の係合子は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の外側に向かって互いに離間するように移動し、前記被押圧面と前記押圧面とを摩擦係合させ、前記係合子のうち前記入力側被係合部及び前記出力側被係合部の少なくとも一方と対応する位置には、前記係合子とは別部材で形成された駒部が設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の逆入力遮断クラッチによれば、従来技術と比較して騒音の発生を抑制できる逆入力遮断クラッチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る逆入力遮断クラッチの断面図。
【
図3】第1実施形態に係る係合子、弾性部材及び駒部を組み合わせた状態の斜視図。
【
図4】第1実施形態に係る一方の係合子及び駒部の分解斜視図。
【
図5】第2実施形態に係る入力部材、係合子及び駒部の接触前における位置関係を示す説明図。
【
図6】第2実施形態に係る入力部材、係合子及び駒部の低トルク時における位置関係を示す説明図。
【
図7】第2実施形態に係る入力部材、係合子及び駒部の高トルク時における位置関係を示す説明図。
【
図8】第2実施形態に係る出力部材、係合子及び駒部の接触前における位置関係を示す説明図。
【
図9】第2実施形態に係る出力部材、係合子及び駒部の低トルク時における位置関係を示す説明図。
【
図10】第2実施形態に係る出力部材、係合子及び駒部の高トルク時における位置関係を示す説明図。
【
図11】第2実施形態において逆入力があった場合における出力部材、係合子及び駒部の接触前における位置関係を示す説明図。
【
図12】第2実施形態において逆入力があった場合における出力部材、係合子及び駒部の低トルク時における位置関係を示す説明図。
【
図13】第2実施形態において逆入力があった場合における出力部材、係合子及び駒部の高トルク時における位置関係を示す説明図。
【
図14】第3実施形態に係る逆入力遮断クラッチの斜視図。
【
図17】第3実施形態の変形例に係る一方の係合子及び駒部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明において、軸方向、径方向、および周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1の中心軸線Cの軸方向、径方向、および周方向をいう。
【0011】
(第1実施形態)
(逆入力遮断クラッチ)
図1は、第1実施形態に係る逆入力遮断クラッチ1の断面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図1及び
図2に示すように、逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2と、出力部材3と、ハウジング4と、1対の係合子5と、弾性部材6と、を備える。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2に入力される回転力を出力部材3に伝達する。一方、逆入力遮断クラッチ1は、出力部材3に逆入力される回転力を遮断して入力部材2に伝達しない、またはその一部のみを入力部材2に伝達して残部を遮断する逆入力遮断機能を有する。
【0012】
(入力部材)
入力部材2は、不図示の電動モータなどの入力機構に接続される。入力部材2には、入力機構からの回転力が入力される。入力部材2は、入力軸本体21と、一対の腕部23と、を有する。入力軸本体21は、軸方向の入力機構側に設けられている。入力軸本体21は、中心軸線Cを中心とする円柱状(又は円筒状)に形成されている。以下の説明において、入力部材2のうち入力機構と接続される側を軸方向の第一側といい、その反対を軸方向の第二側という場合がある。
【0013】
一対の腕部23は、入力軸本体21から軸方向の第二側に向かって延びている。腕部23は、入力軸本体21と一体形成されている。腕部23は、入力軸本体21の径方向の両端に一対設けられている。よって腕部23は、入力軸本体21よりもやや径方向の外側にオフセットした位置に設けられている。
図2に示すように、腕部23は、軸方向から見て、一辺が湾曲した台形状に形成されている。腕部23は、径方向の内側に面する入力側係合部25と、径方向の外側に面する曲面部26と、入力側係合部25及び曲面部26の端部同士を接続する2つの側面部27と、を有する。曲面部26は、中心軸線Cを中心とする円弧状に形成されている。
【0014】
腕部23は、後述する係合子5の数に応じて複数設けられる。本実施形態では、一対の係合子5が設けられることに応じて、一対の腕部23が設けられている。なお、腕部23の数は2個に限られず、係合子5の数に応じて、腕部23の数を1個、あるいは3個以上としてもよい。
【0015】
(出力部材)
図1に示すように、出力部材3は、不図示の減速機などの出力機構に接続され、回転力(回転トルク)を出力する。出力部材3は、入力部材2と同軸上に配置されている。
図1及び
図2に示すように、出力部材3は、出力軸本体31と、挿入部32と、を有する。出力軸本体31は、軸方向の第二側に設けられている。出力軸本体31は、中心軸線Cを中心とする円柱状(又は円筒状)に形成されている。
【0016】
挿入部32は、出力軸本体31の軸方向の第一側の端部から軸方向の第一側に向かって延びている。挿入部32は、出力軸本体31と一体形成されている。挿入部32は、後述する一対の係合子5間に挿入される部分であり、入力部材2の一対の腕部23よりも径方向内側に配置されている。本実施形態において、挿入部32のうち一対の係合子5間に挿入される基端部(例えば止め輪39(
図1参照)よりも軸方向の第二側に位置する部分)は、板状に形成されている。なお、挿入部32の基端部の形状は板状に限定されない。挿入部32の先端部(例えば止め輪39よりも軸方向の第一側に位置する部分)は、円柱状に形成されている。挿入部32の先端部は、ベアリング46を介して入力部材2に相対回転可能に嵌合している。ベアリング46は、例えば転がり軸受や滑り軸受等である。挿入部32の基端部の外周面は、挿入部32の厚み方向(
図2の上下方向)の両側にそれぞれ面する一対の出力側係合部35と、一対の出力側係合部35の端部同士を接続する一対の側面部36と、を有する。
【0017】
図2に示すように、各出力側係合部35は、挿入部32の短軸方向に対して直交する平坦面により構成されている。各出力側係合部35は、一対の係合子5にそれぞれ面している。出力側係合部35は、入力部材2の入力側係合部25よりも径方向の内側に設けられている。一対の側面部36は、出力側係合部35の両端部同士をそれぞれ接続している。
【0018】
挿入部32の出力側係合部35及び側面部36は、後述する係合子5の数に応じて複数設けられる。本実施形態では、一対の係合子5が設けられることに応じて、一対の出力側係合部35及び側面部36が設けられている。なお、出力側係合部35の数は2個に限られず、係合子5の数に応じて、出力側係合部35の数を1個、あるいは3個以上としてもよい。
【0019】
(ハウジング)
ハウジング4は、円筒状に形成されている。ハウジング4は、図示しない他の部材に固定されて、その回転が拘束されている。ハウジング4は、入力部材2及び出力部材3と同軸上に配置されている。ハウジング4は、入力部材2、出力部材3、及び一対の係合子5を収容している。ハウジング4は、第一収容孔41と、第二収容孔42と、被押圧面40と、を有する。
【0020】
図1に示すように、第一収容孔41は、ハウジング4を軸方向に貫通している。第一収容孔41は、中心軸線Cと同軸に形成されている。第一収容孔41は、ハウジング4のうち軸方向の第二側に設けられている。第一収容孔41の内側には、出力部材3の出力軸本体31が収容されている。第一収容孔41の内径は、出力部材3における出力軸本体31の外形よりも大きい。第一収容孔41は、ベアリング45を介して出力部材3を回転可能に保持している。
【0021】
第二収容孔42は、ハウジング4を軸方向に貫通している。第二収容孔42は、中心軸線Cと同軸に形成されている。第二収容孔42は、第一収容孔41よりも軸方向の第一側に設けられている。第二収容孔42の内径は、第一収容孔41の内径よりも大きい。第二収容孔42の内側には、入力部材2の腕部23が収容されている。第二収容孔42の内側であって腕部23のさらに内側には、出力部材3の挿入部32が収容されている。第二収容孔42の内径は、入力部材2における一対の腕部23の外形よりも大きい。第二収容孔42の内側では、ハウジング4に対して入力部材2が相対回転可能に収容されている。
【0022】
第二収容孔42の内周面は、被押圧面40とされている。被押圧面40は、中心軸線Cと同軸となるように形成されている。被押圧面40は、入力部材2及び出力部材3と同軸に設けられている。被押圧面40の径方向内側には、入力部材2の入力側係合部25及び出力部材3の出力側係合部35が設けられている。
【0023】
(係合子)
図3は、第1実施形態に係る係合子5、弾性部材6及び駒部7を組み合わせた状態の斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る一方の係合子5及び駒部7の分解斜視図である。
図2から
図4に示すように、一対の係合子5は、半円形状に構成されており、ハウジング4の径方向内側に配置されている。一対の係合子5は、径方向に沿う第一方向D1において互いに近接離間するように移動可能に構成されている。第一方向D1は、ハウジング4の径方向に沿う方向であって、かつ一対の係合子5の対向方向である。また、軸方向及び第一方向D1のそれぞれと直交する方向を第二方向D2という場合がある。第一方向D1及び第二方向D2のうち径方向の外側を向く方向を第一方向D1の外側及び第二方向D2の外側と言う場合がある。
一対の係合子5はそれぞれ、押圧面51と、底面52と、入力側被係合部53と、出力側被係合部54と、少なくとも1個以上の凹部55,56と、少なくとも1個以上の係合突起57,58と、少なくとも1個以上の駒部7と、を有する。
【0024】
押圧面51は、ハウジング4の被押圧面40を押し付ける径方向外側の面であり、円弧状の凸面となっている。なお、被押圧面40と面する係合子5の外周面の一部が押圧面51とされていてもよい。押圧面51は、逆入力遮断クラッチ1のロック状態(出力部材3からの逆入力が遮断された状態)において、被押圧面40を押圧する。押圧面51の曲率半径は、被押圧面40の曲率半径以下となっている。押圧面51は、1個の係合子5について2箇所設けられ、楔効果により係合子5と被押圧面40間の摩擦係合力が大きくなるように形成されている。2個の押圧面51は、互いに係合子5の周方向に離間した位置に設けられている。なお、押圧面51は、係合子5の外周面全体又は一部によって直接構成してもよいし、係合子5のその他の部分に比べて摩擦係数の大きい表面性状を有するように形成してもよい。例えば押圧面51は、係合子5に貼着や接着などにより固定した摩擦材によって構成してもよい。係合子5の各押圧面51は、ハウジング4の径方向内側に面している。
【0025】
係合子5の底面52は、押圧面51より径方向の内側に設けられている。底面52は、詳しくは後述する係合子5の出力側被係合部54とともに、半円形状の係合子5の直線部分を形成している。本実施形態において、底面52は、後述する一対の凸部59及び出力側凹部56を除いてほぼ平坦面状に形成されている。一対の係合子5の底面52は、径方向において互いに対向している。
一対の係合子5をハウジング4の径方向内側に配置した状態で、被押圧面40と押圧面51との間、および、一対の底面52と出力部材3の間の少なくとも一方に隙間が存在するように、被押圧面40の内径寸法と係合子5の外形寸法が設定されている。
【0026】
入力側被係合部53は、正面視における係合子5の中央部を軸方向に貫通する孔である。入力側被係合部53は、第二方向D2に長い長孔状に形成されている。入力側被係合部53には、入力部材2の腕部23が挿入される。入力側被係合部53は、腕部23と係合する。入力側被係合部53は、入力部材2の腕部23を緩く挿入できる大きさを有している。具体的に、入力側被係合部53の内側に入力部材2の腕部23を挿入した状態で、腕部23と入力側被係合部53の内周面との間に隙間が存在するように形成されている。よって、中立状態において、腕部23は、入力側被係合部53(つまり係合子5)に対して入力部材2の回転方向への微小な変位が可能であり、係合子5は、腕部23に対して第一方向D1への微小な変位が可能である。入力側被係合部53のうち入力部材2と接触する部分には、詳しくは後述する駒部7が設けられている。駒部7が係合子本体50に取り付けられることにより、入力側被係合部53の少なくとも一部が形成される。
【0027】
出力側被係合部54は、半円形状に形成された係合子5の直線部分(底面52)のうち、第二方向D2の中央部近傍に位置する部分である。出力側被係合部54は、入力側被係合部53よりも径方向(第一方向D1)の内側に設けられている。出力側被係合部54には、出力部材3の挿入部32が係合する。出力側被係合部54の少なくとも一部は、詳しくは後述する駒部7が係合子本体50に取り付けられることにより形成される。駒部7が係合子本体50に取り付けられた状態で、出力側被係合部54は、底面52と連続する平坦面状となっている。
【0028】
図2及び
図3に示すように、係合子5の底面52には、係合子5の底面52から他方の係合子5側に向かって突出するように形成された凸部59が一体形成されている。凸部59は、係合子5の底面52において第二方向D2に離間して一対設けられている。一対の凸部59は、第二方向D2において、底面52の最端部よりも内側かつ出力側被係合部54よりも外側に設けられている。本実施形態において凸部59は、第一方向D1を高さ方向とする四角柱状に形成されている。
【0029】
凸部59の突出高さは、例えば係合子5のロック解除状態(入力部材2から出力部材3への回転力の伝達が許容された状態)において第一方向D1に対向する一対の係合子5における凸部59同士が第一方向D1に隙間を有して対向するような高さに設定されている。
【0030】
図1及び
図2に示すように、逆入力遮断クラッチ1が組み立てられた状態において、入力部材2の腕部23は、一対の係合子5のそれぞれの入力側被係合部53に軸方向から挿入され、かつ、出力部材3の挿入部32は、一対の係合子5の出力側被係合部54同士の間に軸方向から挿入される。すなわち、一対の係合子5は、それぞれの出力側被係合部54により、出力部材3の挿入部32を径方向外側から挟むように配置される。
【0031】
図1に示すように、係合子5の軸方向の両側には、軸方向における各部材の位置決めを行うための端板38が設けられる。また、係合子5に対して軸方向の第一側には、各部材の位置決めを行うための止め輪39が設けられている。位置決めする機能の他に、例えば係合子5と出力部材3及び入力部材2との接触を防止して摩耗を抑制する機能を有するように端板38等の部品を設けてもよい。
【0032】
図4に示すように、凹部55,56は、係合子本体50の内側に凹むように形成されている。本実施形態では、1個の係合子5に対して凹部が2個設けられている。以下の説明において、2個の凹部のうち一方を入力側凹部55と言い、他方を出力側凹部56と言う場合がある。これらを互いに区別しない場合には単に凹部55,56と言う場合がある。
【0033】
入力側凹部55は、入力側被係合部53から第一方向D1の底面52側へ向かって凹んでいる。係合子5及び入力部材2が組み合わされた状態において、入力側凹部55は、第二方向D2において入力部材2と対応する位置に設けられている。入力側凹部55は、係合子本体50を軸方向に貫通するように形成されている。これにより、例えば軸方向からのプレスにより入力側凹部55を形成することが可能となっている。軸方向から見て、入力側凹部55の外形は、第一方向D1の外側(押圧面51側)から内側(底面52側)へ向かうにつれて第二方向D2の幅が広がるように形成されている(
図2も参照)。換言すれば、入力側凹部55の深さ方向(第一方向D1)の第一の位置において深さ方向と直交する入力側凹部55の断面積は、第一の位置よりも深さが浅い第二の位置において深さ方向と直交する入力側凹部55の断面積よりも大きい。
【0034】
出力側凹部56は、係合子5の底面52から第一方向D1の押圧面51側へ向かって凹んでいる。係合子5及び出力部材3が組み合わされた状態において、出力側凹部56は、第二方向D2において出力部材3と対応する位置に設けられている。出力側凹部56は、係合子本体50を軸方向に貫通するように形成されている。これにより、入力側凹部55と同様、例えば軸方向からのプレスにより出力側凹部56を形成することが可能となっている。軸方向から見て、出力側凹部56の外形は、第一方向D1の内側(底面52側)から外側(押圧面51側)へ向かうにつれて第二方向D2の幅が広がるように形成されている(
図2も参照)。すなわち、入力側凹部55と同様に、出力側凹部56の深さ方向(第一方向D1)の第一の位置において深さ方向と直交する出力側凹部56の断面積は、第一の位置よりも深さが浅い第二の位置において深さ方向と直交する出力側凹部56の断面積よりも大きい。
【0035】
このように形成された入力側凹部55及び出力側凹部56は、それぞれの底部が互いに第一方向D1に連通しない程度の深さを有して形成されている。また本実施形態においては、出力側凹部56の第二方向D2に沿う幅寸法は、入力側凹部55の第二方向D2に沿う幅寸法よりも大きい。
【0036】
係合突起57,58は、上述した各凹部55,56にそれぞれ設けられている。つまり、本実施形態では、1個の係合子5に対して係合突起が2個設けられている。以下の説明において、2個の係合突起のうち入力側凹部55と対応して設けられるものを入力側係合突起57と言い、出力側凹部56に対応して設けられるものを出力側係合突起58と言う場合がある。これらを互いに区別しない場合には単に係合突起57,58と言う場合がある。
【0037】
入力側係合突起57は、入力側凹部55の底部から第一方向D1の押圧面51側へ向かって突出している。入力側係合突起57は、第二方向D2において入力側凹部55のほぼ中央に設けられている。入力側係合突起57は、例えば第一方向D1を高さ方向とする四角柱状に形成されている。
図4に示すように、入力側係合突起57の軸方向に沿う幅寸法W1は、係合子本体50の軸方向に沿う厚み寸法T1よりも小さい。よって、入力側係合突起57の軸方向の両端は、係合子本体50の軸方向を向く端面よりも軸方向の内側に位置している。
【0038】
出力側係合突起58は、出力側凹部56の底部から第一方向D1において他方の係合子5側へ向かって突出している。出力側係合突起58は、第二方向D2において出力側凹部56のほぼ中央に設けられている。出力側係合突起58は、例えば第一方向D1を高さ方向とする四角柱状に形成されている。入力側係合突起57と同様に、出力側係合突起58の軸方向に沿う幅寸法W2は、係合子本体50の軸方向に沿う厚み寸法T1よりも小さい。よって、出力側係合突起58の軸方向の両端は、係合子本体50の軸方向を向く端面よりも軸方向の内側に位置している。幅寸法W1及び幅寸法W2は同等であってもよいし、異なってもよい。
【0039】
図2から
図4に示すように、駒部7は、上述した各凹部55,56にそれぞれ収容されている。本実施形態において、1個の係合子5に対して駒部7は2個設けられている。2個の駒部7のうち一方を入力側駒部71と言い、他方を出力側駒部72と言う場合がある。これらを互いに区別しない場合には単に駒部7と言う場合がある。本実施形態において、駒部7は、入力側被係合部53及び出力側被係合部54の両方とそれぞれ対応する位置に設けられる。
【0040】
入力側駒部71は、入力側凹部55に収容されている。入力側駒部71は、入力側凹部55に収容された状態(以下、収容状態と言う場合がある。)において入力側係合突起57と係合する。具体的に、入力側駒部71は、入力側係合突起57よりも第二方向D2の外側に配置される一対の本体部71aと、一対の本体部71a同士を接続する一対の接続部71bと、を有する。本体部71aは、第一方向D1から見て、入力側係合突起57の両側部分における入力側凹部55の底部と同等の形状(例えば矩形状)に形成されている。接続部71bは、各本体部71aの軸方向の両端部同士を接続している。一対の本体部71a及び一対の接続部71bに囲まれた中央のスペースには、入力側係合突起57が挿入される。本実施形態において、入力側駒部71の外周部の形状は、入力側凹部55の内周部の形状と同等となっている。すなわち、収容状態において入力側駒部71の外形は、第一方向D1における入力側凹部55の底部側へ向かうにつれて第二方向D2の幅が広がるように形成されている。よって入力側駒部71を取り付ける際には、入力側駒部71を弾性変形させながら入力側凹部55に収容する。
【0041】
図3及び
図4に示すように、係合子5に形成された入力側凹部55に対して、入力側被係合部53側から第一方向D1に沿って入力側駒部71を押し込むことにより、入力側凹部55に入力側駒部71が収容される。このとき入力側駒部71が入力部材2と対応する位置に設けられるので、入力側駒部71の少なくとも一部は、入力側被係合部53として機能する。駒部7の収容状態(
図2及び
図3参照)において、入力側駒部71のうち第一方向D1の外側を向く上面と、入力側被係合部53のうち入力側凹部55が形成されていない部分の上面と、がほぼ面一となる。収容状態において、入力側係合突起57の頂部は、入力側駒部71の上面に対して低い位置に位置している。また、収容状態において、入力側駒部71の軸方向の両側を向く面と、係合子5(係合子本体50)の軸方向の両側を向く面と、がそれぞれ面一となっている。本実施形態において、入力部材2の入力側係合部25は、常に入力側駒部71を介して係合子5(係合子本体50)と接触する。すなわち、入力部材2に入力された回転力は、入力側駒部71を介して係合子5に伝達されるものであって、入力側係合部25と係合子本体50とは直接接触しないように形成されている。
【0042】
図2から
図4に示すように、出力側駒部72は、出力側凹部56に収容されている。出力側駒部72は、出力側凹部56に収容された状態(以下、収容状態と言う場合がある。)において出力側係合突起58と係合する。具体的に、出力側駒部72は、出力側係合突起58よりも第二方向D2の外側に配置される一対の本体部72aと、一対の本体部72a同士を接続する一対の接続部72bと、を有する。本体部72aは、第一方向D1から見て、入力側係合突起57の両側部分における入力側凹部55の底部と同等の形状(例えば矩形状)に形成されている。接続部72bは、各本体部72aの軸方向の両端部同士を接続している。一対の本体部72a及び一対の接続部72bに囲まれた中央のスペースには、出力側係合突起58が挿入される。本実施形態において、出力側駒部72の外周部の形状は、出力側凹部56の内周部の形状と同等となっている。すなわち、収容状態において出力側駒部72の外形は、第一方向D1における出力側凹部56の底部側へ向かうにつれて第二方向D2の幅が広がるように形成されている。よって出力側駒部72を取り付ける際には、出力側駒部72を弾性変形させながら出力側凹部56に収容する。
【0043】
図3及び
図4に示すように、係合子5に形成された出力側凹部56に対して、底面52側から第一方向D1に沿って出力側駒部72を押し込むことにより、出力側凹部56に出力側駒部72が収容される。このとき出力側駒部72が出力部材3と対応する位置に設けられるので、出力側駒部72の少なくとも一部は、出力側被係合部54として機能する。駒部7の収容状態(
図3参照)において、出力側駒部72のうち第一方向D1の内側を向く下面と、底面52のうち入力側凹部55が形成されていない部分の下面と、がほぼ面一となる。収容状態において、出力側係合突起58の頂部は、出力側駒部72の下面に対して凹んだ高さ位置に位置している。また、収容状態において、出力側駒部72の軸方向の両側を向く面と、係合子5(係合子本体50)の軸方向の両側を向く面と、がそれぞれ面一となっている。本実施形態において、出力部材3の出力側係合部35は、常に出力側駒部72を介して係合子5(係合子本体50)と接触する。すなわち、出力部材3に逆入力された回転力は、出力側駒部72を介して係合子5に伝達されるものであって、出力側係合部35と係合子本体50とは直接接触しないように形成されている。
【0044】
上述した各駒部7は、係合子本体50とは別部材で形成される。本実施形態において、駒部7は、緩衝部材により形成されている。緩衝部材の一例として、グリース耐性のあるゴムや樹脂等の弾性材料や、空気層により衝撃を吸収する発泡材料等が挙げられる。
なお、本実施形態では駒部7が緩衝部材である例について説明したが、これに限られない。例えば駒部7は、母材が金属であり、かつ収容状態において入力部材2及び出力部材3の少なくとも一方と接触する表面部分に表面処理が施されたものであってもよい。
【0045】
(弾性部材)
図2及び
図3に示すように、弾性部材6は、係合子5と出力部材3との間に弾性的に挟持されて配置されている。弾性部材6は、例えば板バネである。弾性部材6は、係合子5を径方向(第一方向D1)の外側、すなわち被押圧面40(
図2参照)に近づく方向に向かって付勢可能に設けられている。具体的に、弾性部材6は、係合子5及び出力部材3に挟持されて荷重を受けることにより変形可能に形成されており、変形時の復元力により係合子5を第一方向D1の外側へ向かって付勢する。例えば弾性部材6は、常に係合子5を付勢するように形成されている。
【0046】
弾性部材6は、全体が平板状に形成されている。弾性部材6が係合子5と出力部材3との間に挟持された状態で、弾性部材6の軸方向に沿う幅寸法は、係合子5の軸方向に沿う厚み寸法T1(
図4参照)より大きい。
図3に示すように、弾性部材6には、1個の貫通孔62と、一対の切欠き61と、が形成されている。貫通孔62は、弾性部材6の略中央部に設けられ、弾性部材6を厚み方向に貫通している。貫通孔62は、平面視で弾性部材6の外形よりも一回り小さい矩形状に形成されている。貫通孔62の軸方向に沿う幅寸法は、係合子5の軸方向に沿う厚み寸法T1よりも若干大きい。よって、貫通孔62には、少なくとも係合子5の一部が入り込むことが可能となっている。
【0047】
一対の切欠き61は、弾性部材6の長手方向(係合子5と出力部材3との間に挟持された状態における第二方向D2)の両側から弾性部材6の内側へ向かってそれぞれ凹むように形成されている。一対の切欠き61には、係合子5の一対の凸部59がそれぞれ嵌る。係合子5の一対の凸部59間に弾性部材6が配置されることにより、弾性部材6の第二方向D2及び軸方向への移動が規制される。
【0048】
(逆入力遮断クラッチの動作)
次に、本実施形態の逆入力遮断クラッチ1の動作について
図2を参照しながら説明する。
まず、入力機構から入力部材2に回転力が入力されると、入力部材2の腕部23が中心軸線Cを中心として入力部材2の回転方向(例えば、反時計方向)に回転する。すると、腕部23における入力側係合部25と側面部27との間の境界部分(ポイントP1参照)が入力側被係合部53の内面を径方向の内側に向けて押圧し、一対の係合子5を、被押圧面40から離れる方向にそれぞれ移動させる。つまり、一対の係合子5は、入力側被係合部53を介して入力部材2からの回転力が作用することにより、径方向の内側に向かって互いに近接するように移動する。これにより、一対の係合子5の底面52が互いに近づく方向に移動し、一対の出力側被係合部54が出力部材3の挿入部32を径方向の両側から挟持する。
【0049】
これにより、出力部材3における挿入部32の出力側係合部35と係合子5の底面52とが平行となり、挿入部32と一対の出力側被係合部54とを、ガタツキなく係合させる。よって、入力部材2に入力された回転力が、一対の係合子5を介して出力部材3に伝達され、出力部材3から出力される。
なお、入力部材2を時計方向に回転させた場合についても、同様の動作が行われる。
【0050】
次に、出力機構から出力部材3に回転力が逆入力された場合を説明する。出力部材3に回転力が逆入力されると、出力部材3の挿入部32が、一対の出力側被係合部54同士の内側で、出力部材3の回転方向(例えば、反時計方向)に回転する。すると、挿入部32の出力側係合部35と側面部36との間の境界部分(ポイントP2参照)が出力側被係合部54を径方向の外側に向けて押圧する。加えて、挿入部32と出力側被係合部54との間に挟持された弾性部材6に生じている復元力により、弾性部材6は、係合子5の出力側被係合部54をさらに径方向の外側に向けて押圧する。これにより、一対の係合子5を被押圧面40に近づく方向にそれぞれ移動させる。つまり、一対の係合子5は、出力部材3と出力側被係合部54との係合に基づいて、径方向の外側に向かって互いに離間するように移動する。これにより、一対の係合子5のそれぞれの押圧面51を、ハウジング4の被押圧面40に対して押し付ける。このとき、押圧面51と被押圧面40とは、押圧面51の周方向に関する全範囲または少なくとも一部で摩擦係合する。
【0051】
この結果、出力部材3に逆入力された回転力が、不図示の他の部材に固定されたハウジング4に伝わることで完全に遮断されて入力部材2に伝達されないか、或いは、出力部材3に逆入力された回転力の一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断される。
【0052】
本実施形態の逆入力遮断クラッチ1は、上述の動作が可能となるように、各構成部材間の隙間の大きさが調整されている。
例えば、出力部材3に回転力が逆入力されることによって係合子5の押圧面51が被押圧面40に接触した状態(ロック状態)において、入力部材2が中立位置に位置する。入力部材2の中立位置とは、腕部23の入力側係合部25が入力側被係合部53と平行となる位置である。換言すれば、腕部23の入力側係合部25と入力側被係合部53の内面との間に、出力部材3の挿入部32の境界部分(ポイントP2)が出力側被係合部54を押圧することに基づいて押圧面51が被押圧面40を押圧することを許容する隙間が存在するようにしている。これにより、出力部材3に回転力が逆入力された場合に、係合子5が径方向の外側に移動するのを腕部23によって阻止されることがないようにしている。さらに、押圧面51が被押圧面40に接触した後も、押圧面51と被押圧面40との接触部に作用する面圧が、出力部材3に逆入力された回転力の大きさに応じて変化するようにすることで、出力部材3のロックまたは半ロックが適正に行われるようにしている。
【0053】
(作用、効果)
本実施形態の逆入力遮断クラッチ1によれば、係合子5のうち入力側被係合部53及び出力側被係合部54の少なくとも一方と対応する位置に、係合子5とは別部材で形成された駒部7が設けられる。係合子5とは別部材で形成された駒部7を設けることにより、入力部材2又は出力部材3に回転トルクが入力された際に、入力部材2又は出力部材3と係合子5との接触の勢いが駒部7により低減(吸収)される。よって、駒部を設けることなく係合子を形成する従来技術と比較して、中立状態において入力部材2又は出力部材3と係合子5との間に隙間Sを設けた場合であっても、係合子5と入力部材2又は出力部材3との接触時におけるがたつきに起因した接触音の発生を抑制できる。
したがって、従来技術と比較して騒音の発生を抑制できる逆入力遮断クラッチ1を提供できる。
【0054】
駒部7は緩衝部材により形成されているので、入力部材2又は出力部材3と係合子5との接触の勢いをより効果的に低減できる。よって、従来技術と比較して騒音の発生をより一層抑制した逆入力遮断クラッチ1とすることができる。
【0055】
駒部7は、入力部材2又は出力部材3と接触する部分(表面)に表面処理が施されたものとされてもよい。表面処理は、例えば入力部材2又は出力部材3と係合子5との接触音を低減するように処理されている。この場合、例えば駒部7を金属や樹脂等の比較的硬度の高い材料により形成した場合であっても、入力部材2又は出力部材3と係合子5とが直接接触する従来技術と比較して、接触音の発生を抑制することができる。またこの場合、駒部7を比較的硬い材料で形成できるので、入力部材2又は出力部材3と係合子5との間の力の伝達ロスを減少させることができる。また、駒部7を含む係合子5全体の強度を高めることができる。よって、駒部7の材料選択の自由度を高め、逆入力遮断クラッチ1の汎用性を高めることができる。
【0056】
逆入力遮断クラッチ1は弾性部材6を有し、弾性部材6は、係合子5が被押圧面40に近づくように係合子5を第一方向D1の外側に向かって付勢する。よって、弾性部材6の付勢力により、各部品同士の隙間に起因したがたつきの発生を抑制できる。これにより、がたつきに起因した騒音や振動の発生を抑制できる。また、弾性部材6は、係合子5を径方向外側に向かって付勢するので、出力部材3から回転力が逆入力された場合に、係合子5が径方向の外側に移動し易くなる。これにより、回転力が逆入力された場合に、より確実に係合子5の回転をロックすることができる。駒部7と弾性部材6とを併用することにより、部品同士のがたつきを抑え、より一層騒音(接触音)の発生を抑えることができる。
【0057】
駒部7は、係合子5に形成された凹部(入力側凹部55及び出力側凹部56)に収容される。これにより、駒部7を設けることによる係合子5の大型化を抑制できる。また、駒部7が収容される凹部55,56は、深さ方向の浅い側から深い側へ向かって断面積が増加するように形成されている。これにより、凹部55,56に収容された駒部7が凹部55,56から離脱し難くすることができる。駒部7を収容する際には、例えば駒部7を弾性変形させて凹部55,56へ押し込むことにより容易に駒部7を凹部55,56に収容できる。よって、係合子5の大型化を抑制し、かつ駒部7を安定的に設置できる。
【0058】
凹部55,56には、駒部7と係合する係合突起(入力側係合突起57及び出力側係合突起58)が設けられている。これにより、駒部7が凹部55,56からより離脱し難くすることができる。よって、駒部7を安定的に設置できる。
【0059】
凹部55,56は、係合子5から第一方向D1に沿って凹むように形成される。これにより、係合子5のうち入力部材2又は出力部材3と対向する面に沿って駒部7を設けることができる。よって、入力部材2又は出力部材3と駒部7とを確実に接触させることができる。また、係合子5の軸方向への寸法の大型化を抑制できる。また、駒部7の厚みを変更することにより、入力部材2又は出力部材3と駒部7との接触状態を調整できる。例えば駒部7の第一方向D1に沿う厚みを厚くした場合には、入力部材2又は出力部材3と係合子5とが常に駒部7を介して間接的に接触する(すなわち、入力部材2又は出力部材3と係合子5とが直接接触しない)ように逆入力遮断クラッチ1を形成できる。これにより、入力部材2又は出力部材3と係合子5との接触時における騒音の発生をより一層抑制できる。一方、駒部7の第一方向D1に沿う厚みを薄くした場合には、入力部材2又は出力部材3からの回転トルクが小さいときのみ、駒部7を介して入力部材2又は出力部材3を係合子5と間接的に接触させ、回転トルクが大きいときには入力部材2又は出力部材3と係合子5とが直接接触するように逆入力遮断クラッチ1を形成できる。これにより、入力部材2又は出力部材3と係合子5との間の力の伝達ロスを低減しつつ従来技術よりも接触時における騒音の発生を抑制できる。よって、逆入力遮断クラッチ1の汎用性を高めることができる。
さらに、係合突起57,58の軸方向に沿う幅寸法W1,W2は、係合子5の軸方向に沿う厚み寸法T1よりも小さい。これにより、凹部55,56に収容された駒部7が係合子5の軸方向を向く面から外側へ突出することを抑制できる。よって、例えば出力部材3と係合子5との間に板バネ等の弾性部材6を設けた場合であっても、駒部7と弾性部材6との干渉を抑制できる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。なお、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図5は、第2実施形態に係る入力部材2、係合子5及び駒部7の接触前における位置関係を示す説明図である。
図6は、第2実施形態に係る入力部材2、係合子5及び駒部7の低トルク時における位置関係を示す説明図である。
図7は、第2実施形態に係る入力部材2、係合子5及び駒部7の高トルク時における位置関係を示す説明図である。本実施形態では、逆入力遮断クラッチ201に入力された回転トルクの大きさに応じて入力部材2又は出力部材3と係合子本体50との接触関係が変わる点で上述した第1実施形態と相違している。
【0061】
第2実施形態において、駒部7は、弾性変形可能な緩衝部材により形成されている。第2実施形態では、入力部材2又は出力部材3から入力された回転力(回転トルク)の大きさによって駒部7が弾性変形することにより、入力部材2又は出力部材3と係合子5との接触状態が変化するように、駒部7の厚み等が設定されている。
【0062】
具体的に、
図5に示すように、入力部材2の腕部23が係合子5と接触する前の状態においては、第1実施形態と同様、腕部23と係合子5の間には隙間Sが設けられている。また、係合子5のうち入力部材2と対向する部分には入力側駒部71が設けられている。入力側駒部71の係合子本体50からの突出高さH1は、腕部23と係合子5との隙間Sよりも小さい。
図6に示すように、入力部材2から所定の閾値未満である低トルクの回転力が入力されると、入力部材2の腕部23(入力側係合部25)と入力側駒部71とが接触し、かつ入力部材2と係合子本体50とは直接接触しない。よって、低トルク時には、入力部材2から入力された回転力は、入力側駒部71を介して係合子5に伝達される。一方、
図7に示すように、入力部材2から所定の閾値以上である高トルクの回転力が入力されると、入力側駒部71が弾性変形することにより、入力部材2の腕部23(入力側係合部25)と係合子本体50とが直接接触する。よって、高トルク時には、入力部材2から入力された回転力の一部が入力側駒部71を介して係合子本体50に伝達されるとともに、回転力の残りの一部は係合子本体50に直接伝達される。
【0063】
出力部材3に対しても同様に、回転力(回転トルク)の大きさに応じて、出力部材3と係合子5との接触状態が変化するように出力側駒部72が形成されている。
具体的に、
図8は、第2実施形態に係る出力部材3、係合子5及び駒部7の接触前における位置関係を示す説明図である。
図9は、第2実施形態に係る出力部材3、係合子5及び駒部7の低トルク時における位置関係を示す説明図である。
図10は、第2実施形態に係る出力部材3、係合子5及び駒部7の高トルク時における位置関係を示す説明図である。
【0064】
図8に示すように、出力部材3の挿入部32が係合子5と接触する前の状態においては、第1実施形態と同様、挿入部32と係合子5の間には隙間Sが設けられている。また、係合子5のうち出力部材3と対向する部分には出力側駒部72が設けられている。出力側駒部72の係合子本体50からの突出高さH2は、挿入部32と係合子5との隙間Sよりも小さい。
図9に示すように、入力部材2から係合子5を介して出力部材3へ伝達される回転力が所定の閾値未満である(低トルクである)場合、係合子本体50に取り付けられた出力側駒部72と出力部材3の挿入部32(出力側係合部35)とが接触し、かつ係合子本体50と出力部材3とは直接接触しない。よって、低トルク時には、係合子5を介して入力部材2から入力された回転力は、出力側駒部72を介して出力部材3に伝達される。一方、
図10に示すように、出力部材3へ伝達される回転力が所定の閾値以上である(高トルクである)場合、一対の係合子5が互いに近づく方向へ移動するとともに出力側駒部72が弾性変形することにより、係合子5と出力部材3とが略平行に接触する。すなわち、係合子本体50と出力部材3の挿入部32(入力側係合部25)とが直接接触する。よって、高トルク時には、入力部材2から係合子5に入力された回転力の一部が出力側駒部72を介して係合子本体50に伝達されるとともに、回転力の残りの一部は係合子本体50に直接伝達される。
【0065】
また、不図示の出力機構を介して出力部材3に逆入力が作用した場合の作用についても説明する。
図11は、第2実施形態において逆入力があった場合における出力部材3、係合子5及び駒部7の接触前における位置関係を示す説明図である。
図12は、第2実施形態において逆入力があった場合における出力部材3、係合子5及び駒部7の低トルク時における位置関係を示す説明図である。
図13は、第2実施形態において逆入力があった場合における出力部材3、係合子5及び駒部7の高トルク時における位置関係を示す説明図である。
【0066】
図11に示すように、出力部材3の挿入部32が係合子5と接触する前の状態においては、上述した正入力があった場合と同様なので説明を省略する。
図12に示すように、出力部材3から所定の閾値未満である低トルクの逆入力が入力されると、出力部材3の挿入部32(出力側係合部35)と係合子本体50に取り付けられた出力側駒部72とが接触し、かつ出力部材3と係合子本体50とは直接接触しない。よって、低トルク時には、出力部材3から入力された回転力は、出力側駒部72を介して係合子本体50に伝達される。一方、
図13に示すように、出力部材3から所定の閾値以上である高トルクの逆入力が入力されると、出力側駒部72が弾性変形することにより、出力部材3の挿入部32(入力側係合部25)と係合子本体50とが直接接触する。よって、高トルク時には、出力部材3から逆入力された回転力の一部が出力側駒部72を介して係合子本体50に伝達されるとともに、回転力の残りの一部は係合子本体50に直接伝達される。その後、上述したとおり、一対の係合子5が互いに離間する方向に移動し、一対の押圧面51が摩擦係合することにより、逆入力は遮断される。
【0067】
第2実施形態の逆入力遮断クラッチ1によれば、入力部材2又は出力部材3からの回転トルクが所定の閾値未満のとき、入力部材2又は出力部材3と係合子5とが、駒部7を介して間接的に接触する。一方回転トルクが所定の閾値以上であるとき、入力部材2又は出力部材3と係合子5とが直接接触する。これにより、入力部材2又は出力部材3に回転トルクが入力された際に、入力部材2又は出力部材3と係合子5との間の力の伝達ロスを低減できる。ここで、回転初期には低トルクである場合が多い。よって、少なくとも入力部材2又は出力部材3の回転初期には、入力部材2又は出力部材3と駒部7とが接触するので、回転初期から入力部材2又は出力部材3が直接係合子5と接触する従来技術と比較して、接触時における騒音の発生を抑制できる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。なお、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図14は、第3実施形態に係る逆入力遮断クラッチ301の斜視図である。
図15は、
図14のXV-XV線に沿う断面図である。
図16は、
図15のXVI拡大図である。本実施形態では、駒部7を設ける位置が上述した第1実施形態と相違している。
【0069】
第3実施形態において、係合子5は、第1実施形態における入力側凹部55、出力側凹部56、入力側係合突起57、出力側係合突起58、入力側駒部71及び出力側駒部72の代わりに、第一凹部381、第二凹部382、第一係合突起391、第二係合突起392、第一駒部373及び第二駒部374を有する。
第一凹部381は、係合子5の入力側被係合部53と底面52との間に設けられている。第一凹部381は、係合子5のうち軸方向の出力機構側(軸方向の第二側)の端面から軸方向の内側に凹むように設けられている。第一凹部381の第一方向D1の両端部は、係合子5の入力側被係合部53及び底面52に向けて開放されている。
【0070】
第二凹部382は、係合子本体50のうち第一凹部381とは反対側の端面に形成されている。第二凹部382は、係合子5の入力側被係合部53と底面52との間に設けられている。第二凹部382は、係合子5のうち軸方向の入力機構側(軸方向の第一側)の端面から軸方向の内側に凹むように設けられている。第一凹部381の第一方向D1の両端部は、係合子5の入力側被係合部53及び底面52に向けて開放されている。
【0071】
このように形成された第一凹部381及び第二凹部382は、それぞれの底部が互いに軸方向に連通しない程度の深さを有して形成されている。本実施形態において、第一凹部381の形状と第二凹部382の形状が同等となっている。
【0072】
第一係合突起391は、第一凹部381の底部から軸方向の第二側へ向かって突出している。第一係合突起391は、第二方向D2において第一凹部381のほぼ中央に設けられている。
図14に示すように、第一係合突起391の第一方向D1に沿う長さ寸法は、係合子5における入力側被係合部53と底面52との間の長さ寸法よりも小さい。つまり、第一係合突起391の第一方向D1の両端は、第一凹部381の第一方向D1の両端よりも内側に位置している。
図16に示すように、第一係合突起391は、軸方向において係合子本体50の端面と同等の高さまで突出している。
【0073】
第二係合突起392は、第二凹部382の底部から軸方向の第一側へ向かって突出している。第二係合突起392は、第二方向D2において第二凹部382のほぼ中央に設けられている。
図14に示すように、第二係合突起392の第一方向D1に沿う長さ寸法は、係合子5における入力側被係合部53と底面52との間の長さ寸法よりも小さい。つまり、第二係合突起392の第一方向D1の両端は、第二凹部382の第一方向D1の両端よりも内側に位置している。
図16に示すように、第二係合突起392は、軸方向において係合子本体50の端面と同等の高さまで突出している。
【0074】
第一駒部373は、第一凹部381に収容されて第一係合突起391と係合している。第一駒部373は、係合子5の軸方向を向く面に設けられる。第一駒部373の形状は、第1実施形態における駒部7の形状と同等となっている。すなわち第一駒部373は、一対の本体部71aと、一対の本体部71a同士を接続する一対の接続部71bと、を有する(
図4参照)。第一凹部381に対して、軸方向の第二側から第一駒部373を押し込むことにより、第一凹部381に第一駒部373が収容される。
【0075】
第二駒部374は、第二凹部382に収容されて第二係合突起392と係合している。よって第二駒部374は、係合子5の軸方向を向く面に設けられる。第二駒部374の形状は第一駒部373の形状と同等となっているため、詳細な説明は省略する。第二凹部382に対して、軸方向の第一側から第二駒部374を押し込むことにより、第二凹部382に第二駒部374が収容される。
【0076】
各駒部7の収容状態において、
図16に示すように、各駒部7の第一方向D1における一方(
図16の上方側)の端部は、係合子本体50の入力側被係合部53を規定する端面よりも上方に突出している。同様に、各駒部7の第一方向D1における他方(
図16の下方側)の端部は、係合子本体50の底面52を規定する端面よりも下方に突出している。よって、入力部材2又は出力部材3に回転力が作用した場合に、入力部材2及び出力部材3は、係合子本体50よりも先に各駒部7と接触可能となっている。
【0077】
第3実施形態の逆入力遮断クラッチ301によれば、凹部381,382は、係合子5から軸方向に凹むように形成され、駒部7は、係合子5の軸方向を向く面に沿って設けられる。これにより、係合子5の径方向への寸法の大型化を抑制できる。また、駒部7の配置の自由度を高め、逆入力遮断クラッチ301の汎用性を高めることができる。さらに、入力部材2又は出力部材3に対して駒部7及び係合子5の両方を対向させることができる。よって、特に回転トルクの大きさによって入力部材2又は出力部材3と係合子5との接触状態を変化させたい場合に好適である。すなわち、入力部材2又は出力部材3からの回転トルクが小さいときには、入力部材2又は出力部材3と係合子5とを、駒部7を介して間接的に接触させ、回転トルクが大きいときには、入力部材2又は出力部材3と係合子5とを直接接触させることができる。
【0078】
(第3実施形態の変形例)
次に、本発明の第3実施形態の変形例について説明する。以下の説明において、上述した第3実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
図17は、第3実施形態の変形例に係る一方の係合子5及び駒部7の断面図である。
図17は、上述した第3実施形態の
図16と対応する。本変形例では、凹部381,382に対する駒部7の寸法が上述した第3実施形態と相違している。
【0079】
第3実施形態の変形例において、各駒部7は、第3実施形態と同様に、係合子5の軸方向を向く面に沿って設けられる。
本変形例において、各駒部7(第一駒部473及び第二駒部474)の第一方向D1における一方(
図16の上方側)の端部は、係合子本体50の入力側被係合部53を規定する端面よりも上方に突出している。一方、各駒部7の第一方向D1における他方(
図16の下方側)の端部は、係合子本体50の底面52を規定する端面よりも内側に位置している。さらに、各駒部7の軸方向に沿う厚み寸法は、各凹部の軸方向に沿う深さ寸法よりも小さい。よって、各駒部7における軸方向の外側の端面は、係合子本体50の軸方向を向く端面よりも軸方向の内側に位置している。
【0080】
第3実施形態の変形例の逆入力遮断クラッチ401によれば、特に出力部材3と対応する部分において、駒部7が係合子本体50に対して突出しない。これにより、出力部材3と係合子5との間に設けられた弾性部材6との干渉を抑制できる。
なお、例えば各駒部7の第一方向D1における他方(
図16の下方側)の端部が、係合子本体50の底面52を規定する端面よりも下方に突出するように駒部7を設けてもよい。この場合であっても、各駒部7における軸方向の外側の端面が係合子本体50の端面よりも軸方向の内側に位置していれば、弾性部材6との干渉を抑制可能である。
【0081】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の第1実施形態では、駒部7は、入力側被係合部53及び出力側被係合部54の両方とそれぞれ対応する位置に設けられたが、これに限られない。駒部7は、入力側被係合部53及び出力側被係合部54の少なくとも一方と対応する位置に設けられればよく、例えば入力側被係合部53と対応する位置にのみ駒部7が設けられてもよい。但し、入力部材2及び出力部材3と係合子5との接触時の音の発生を抑制してより静音効果を得られる点で、入力側被係合部53及び出力側被係合部54の両方とそれぞれ対応する位置に駒部7が設けられる本実施形態の構成は優位性がある。
【0082】
各凹部55,56,381,382、各係合突起57,58,391,392及び各駒部7の形状は上述した形状に限定されない。
第2から3実施形態において、凹部381,382は、第1実施形態と同様に、深さ方向の底部側へ向かうにつれて深さ方向と直交する断面積が大きくなるように形成されてもよい。また、各凹部55,56,381,382は、深さ方向の底部側へ向かうにつれて深さ方向と直交する断面積が一定となるように形成されてもよい。この場合、各係合突起57,58,391,392の周長に対して各駒部7の孔の周長を小さくすることにより、弾性変形の締りバメを行って駒部7を保持してもよい。或いは、各凹部55,56,381,382の穴の周長に対して各駒部7の外形の周長を大きくすることにより、弾性変形の締りバメを行ってもよい。或いは、接着剤等を用いて駒部7を保持してもよい。
【0083】
第3実施形態において、回転トルクの大きさによらず常に駒部7を介して係合子本体50と入力部材2又は出力部材3とが接触するようにしてもよい。また、第3実施形態において、第2実施形態の構成を組み合わせてもよい。すなわち、回転トルクの大きさに応じて係合子本体50と入力部材2又は出力部材3との接触関係が変わるように各駒部7を形成してもよい。
【0084】
上述の各実施形態では、逆入力遮断機構としてリンク構造を用いないリンクレス方式の逆入力遮断クラッチ1を例に説明したが、これに限られない。逆入力遮断機構として公知技術であるリンク機構を用いたリンク方式の逆入力遮断クラッチにおいて、上述した駒部7を有する構成を採用してもよい。
【0085】
なお、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
(1)内周面に被押圧面を有するハウジングと、
前記被押圧面よりも径方向の内側に設けられた入力側係合部を有し、前記被押圧面の軸方向と同軸に配置される入力部材と、
前記被押圧面よりも前記径方向の内側かつ前記入力側係合部よりも前記径方向の内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される出力部材と、
前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部、及び前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部を有し、前記径方向に沿う第一方向に互いに相対移動可能な一対の係合子と、
を備え、
前記第一方向は前記一対の係合子の近接離間方向と一致する方向であり、
前記入力部材に回転力が入力されると、前記一対の係合子は、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の内側に向かって互いに近づくように移動し、かつ前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記回転力を前記出力部材に伝達し、
前記出力部材に回転力が逆入力されると、前記一対の係合子は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の外側に向かって互いに離間するように移動し、前記被押圧面と前記押圧面とを摩擦係合させ、
前記係合子のうち前記入力側被係合部及び前記出力側被係合部の少なくとも一方と対応する位置には、前記係合子とは別部材で形成された駒部が設けられる、
逆入力遮断クラッチ。
(2)
前記駒部は、緩衝部材により形成されている、
(1)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(3)
前記駒部は、前記入力部材及び前記出力部材の少なくとも一方と接触する母材の表面に表面処理が施されている、
(1)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(4)
前記出力部材と前記係合子との間で弾性的に挟持され、前記係合子が前記被押圧面に近づくように前記係合子を前記第一方向の外側に向かって付勢する弾性部材をさらに備える、
(1)から(3)のいずれか1つに記載の逆入力遮断クラッチ。
(5)
前記係合子は、前記駒部が収容される凹部を有し、
前記凹部の深さ方向の第一の位置において前記深さ方向と直交する前記凹部の断面積は、前記第一の位置よりも深さが浅い第二の位置において前記深さ方向と直交する前記凹部の断面積よりも大きい、
(1)から(4)のいずれか1つに記載の逆入力遮断クラッチ。
(6)
前記係合子は、前記駒部が収容される凹部を有し、
前記凹部には、前記駒部と係合する係合突起が設けられている、
(1)から(5)のいずれか1つに記載の逆入力遮断クラッチ。
(7)
前記凹部は、前記係合子から前記第一方向に凹むように設けられており、
前記係合突起は、前記凹部の底部から前記第一方向に突出しており、
前記係合突起の前記軸方向に沿う幅寸法は、前記係合子の前記軸方向に沿う厚み寸法よりも小さい、
(6)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(8)
前記凹部は、前記係合子から前記軸方向に凹むように設けられており、
前記係合突起は、前記凹部の底部から前記軸方向に突出しており、
前記駒部は、前記係合子の前記軸方向を向く面に設けられる、
(6)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(9)
前記駒部は、前記逆入力遮断クラッチに入力された回転トルクが所定の閾値未満である場合に前記入力部材及び前記出力部材の少なくとも一方と前記駒部とが接触し、かつ前記逆入力遮断クラッチに入力された回転トルクが前記所定の閾値以上である場合に前記入力部材及び前記出力部材の少なくとも一方と前記係合子とが接触するように前記第一方向の厚み寸法が設定されている、
(1)から(8)のいずれか1つに記載の逆入力遮断クラッチ。
【符号の説明】
【0086】
1,201,301,401 逆入力遮断クラッチ
2 入力部材
3 出力部材
4 ハウジング
5 係合子
6 弾性部材
7 駒部
25 入力側係合部
35 出力側係合部
40 被押圧面
51 押圧面
53 入力側被係合部
54 出力側被係合部
55 入力側凹部(凹部)
56 出力側凹部(凹部)
57 入力側係合突起(係合突起)
58 出力側係合突起(係合突起)
381 第一凹部(凹部)
382 第二凹部(凹部)
391 第一係合突起(係合突起)
392 第二係合突起(係合突起)
D1 第一方向
W1,W2 (軸方向に沿う係合突起の)幅寸法
T1 (軸方向に沿う係合子の)厚み寸法