(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017472
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】生分解性樹脂用可塑剤、それを含む樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20240201BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240201BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240201BHJP
C08K 5/11 20060101ALI20240201BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240201BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
C08L67/00 ZBP
C08K3/26
C08K3/04
C08K5/11
C08K3/013
C08L101/16
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120118
(22)【出願日】2022-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】服部 祐介
(72)【発明者】
【氏名】笹川 剛紀
(72)【発明者】
【氏名】堀江 実季
(72)【発明者】
【氏名】高松 頼信
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002CF031
4J002CF051
4J002CF181
4J002CF191
4J002DA026
4J002DA036
4J002DA037
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE186
4J002DE236
4J002DG046
4J002DG056
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
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4J002FA016
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4J002FD016
4J002FD017
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4J002GG01
4J002GG02
4J002GL00
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4J200AA05
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4J200BA13
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4J200BA15
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4J200BA18
4J200BA20
4J200CA01
4J200DA16
4J200DA17
4J200DA24
4J200DA25
4J200DA28
4J200EA21
(57)【要約】
【課題】無機充填剤を多量に配合した生分解性樹脂組成物であっても十分な柔軟性と良好な成形加工性を発現することができ、かつブリードを生じ難く、機械特性や外観の低下が抑制された生分解性樹脂用可塑剤、並びにそうした生分解性樹脂用可塑剤を含む樹脂組成物及び成形品を提供すること。
【解決手段】本発明は、生分解性樹脂成分と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有し、カーボンブラックを全質量の1質量%以上20質量%以下の量含有し、前記カーボンブラックは、よう素吸着量が40mg/g以上65mg/g以下、DBP吸収量が100ml/100g以上180ml/100g以下、平均粒子径が30nm以上60nm以下であることを特徴とする生分解性樹脂用可塑剤である。前記生分解性樹脂成分は、ガラス転移温度が60℃以下、特に40℃以下であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂成分と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有し、
カーボンブラックを全質量の1質量%以上20質量%以下の量含有し、
前記カーボンブラックは、よう素吸着量が40mg/g以上65mg/g以下、DBP吸収量が100ml/100g以上180ml/100g以下、平均粒子径が30nm以上60nm以下である
ことを特徴とする生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項2】
前記生分解性樹脂成分は、ガラス転移温度が60℃以下である、請求項1に記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項3】
前記生分解性樹脂成分と前記無機物質粉末とを質量比50:50~30:70の割合で含有する、請求項1に記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項4】
前記生分解性樹脂成分が、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)からなる群より選択される1又は2以上の生分解性樹脂成分である、請求項1に記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項5】
前記無機物質粉末が重質炭酸カルシウム粉末である、請求項1に記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項6】
前記重質炭酸カルシウム粉末の、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、請求項5に記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項7】
5質量%以上20質量%以下のクエン酸アセチルトリブチルをさらに含有する、請求項1に記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項8】
ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)からなる群より選択される1又は2以上の生分解性樹脂に、請求項1~7のいずれか1項に記載の生分解性樹脂用可塑剤を、全質量の0.1質量%以上50質量%以下の量含有する、生分解性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の生分解樹脂組成物から成形された成形品。
【請求項10】
前記成形品が押出シートである、請求項9に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂用可塑剤、並びに当該生分解性樹脂用可塑剤を含む樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性樹脂は、微生物の作用や加水分解により、自然界に元来存在する物質へ分解されることから、環境に優しい樹脂として注目されている。こうした生分解性樹脂、例えばポリ乳酸に対し、環境負荷の小ささを損なわずに良好な諸特性等を付与するため、炭酸カルシウム等の様々な成分を配合することも提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
ポリ乳酸を始めとする生分解性樹脂には、柔軟性に欠ける短所がある。この短所は、特に炭酸カルシウム等の無機充填剤を配合した場合に顕著となる。そうした点を改善するために、生分解性樹脂に種々の可塑剤を配合することが検討されて来た(特許文献2~6等)。
【0004】
例えば、特許文献3にはポリアルキレンオキシド系の可塑剤が、特許文献4にはポリアルキレンオキシド単位とグリセリルエーテル単位とを有する可塑性が、それぞれ開示されている。また、特許文献5にはベンゾエート系可塑剤が、特許文献6には末端カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を有する3-ヒドロキシアルカン酸のオリゴマーからなる可塑剤が、それぞれ開示されている。特許文献2記載の発明では、炭酸カルシウムを高配合した生分解性樹脂組成物の柔軟化を目的に、ポリブチレンアジペートテレフタレート又はポリブチレンサクシネートアジペートが可塑剤として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-119850号公報
【特許文献2】特許第6919571号公報
【特許文献3】特開2005-336448号公報
【特許文献4】特開2006-22268号公報
【特許文献5】特表2015-512466号公報
【特許文献6】特開2019-131720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ポリアルキレンオキシド系やベンゾエート系、アジペート系等の可塑剤は、ポリ乳酸を始めとする生分解性樹脂との相溶性が低く、均一分散が困難である。そのため、生分解性樹脂中に配合しても、十分な柔軟性が得られない場合がある。特に、炭酸カルシウム等の無機充填剤を多量配合した生分解性樹脂組成物では、これら可塑剤によって柔軟性を付与し、成形加工性を改善することは困難である。ポリアルキレンオキシド系等の汎用の可塑剤にはまた、保管から使用時に樹脂組成物中からブリードして、樹脂組成物の機械特性や外観を悪化させる欠点もある。例えば夏季の自動車等では、内装材の樹脂組成物から遊離した可塑剤が揮発して窓ガラス内面に付着し、視界を妨げる、フォギングという現象が生じる場合もある。
【0007】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、生分解性樹脂との相溶性に優れ、無機充填剤を多量に配合した生分解性樹脂組成物であっても十分な柔軟性と良好な成形加工性を発現することができ、かつブリードを生じ難く、機械特性や外観の低下が抑制された生分解性樹脂用可塑剤、並びにそうした生分解性樹脂用可塑剤を含む樹脂組成物及び成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、無機充填剤を含む生分解性樹脂の組成物にさらに特定のカーボンブラックを特定量含有させることによって、上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0009】
(1) 生分解性樹脂成分と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有し、
カーボンブラックを全質量の1質量%以上20質量%以下の量含有し、
前記カーボンブラックは、よう素吸着量が40mg/g以上65mg/g以下、DBP吸収量が100ml/100g以上180ml/100g以下、平均粒子径が30nm以上60nm以下である
ことを特徴とする生分解性樹脂用可塑剤。
【0010】
(2) 前記生分解性樹脂成分は、ガラス転移温度が60℃以下である、上記(1)の生分解性樹脂用可塑剤。
【0011】
(3) 前記生分解性樹脂成分と前記無機物質粉末とを質量比50:50~30:70の割合で含有する、上記(1)又は(2)の生分解性樹脂用可塑剤。
【0012】
(4) 前記生分解性樹脂成分が、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)からなる群より選択される1又は2以上の生分解性樹脂成分である、上記(1)~(3)の何れか一つの生分解性樹脂用可塑剤。
【0013】
(5) 前記無機物質粉末が重質炭酸カルシウム粉末である、上記(1)~(4)の何れか一つの生分解性樹脂用可塑剤。
【0014】
(6) 前記重質炭酸カルシウム粉末の、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、上記(5)の生分解性樹脂用可塑剤。
【0015】
(7) 5質量%以上20質量%以下のクエン酸アセチルトリブチルをさらに含有する、上記(1)~(6)の何れか一つの生分解性樹脂用可塑剤。
【0016】
(8) ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)からなる群より選択される1又は2以上の生分解性樹脂に、上記(1)~(7)の何れか一つの生分解性樹脂用可塑剤を、全質量の0.1質量%以上50質量%以下の量含有する、生分解性樹脂組成物。
【0017】
(9) 上記(8)の生分解樹脂組成物から成形された成形品。
【0018】
(10) 前記成形品が押出シートである、上記(9)の成形品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生分解性樹脂との相溶性に優れ、無機充填剤を多量に配合した生分解性樹脂組成物であっても十分な柔軟性と良好な成形加工性を発現することができ、かつブリードを生じ難く、機械特性や外観の低下が抑制された生分解性樹脂用可塑剤、並びにそうした生分解性樹脂用可塑剤を含む樹脂組成物及び成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0021】
≪生分解性樹脂用可塑剤≫
本発明は、生分解性樹脂成分と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有し、
カーボンブラックを全質量の1質量%以上20質量%以下の量で含有し、
カーボンブラックのよう素吸着量が40mg/g以上65mg/g以下、DBP吸収量が100ml/100g以上180ml/100g以下、平均粒子径が30nm以上60nm以下である
ことを特徴とする生分解性樹脂用可塑剤である。
【0022】
<生分解性樹脂用可塑剤中の成分の概要>
本発明は、生分解性樹脂成分を無機物質粉末及び特定のカーボンブラックと共に含有することを特徴とする。本発明は特定の理論により限定されるものではないが、無機物質粉末やカーボンブラックの配合によって、生分解性樹脂成分の分子量が低下し、可塑化効果を奏している可能性が考えられる。生分解性樹脂は一般に加水分解性の部位を有するため、無機物質粉末、特に炭酸カルシウム等の塩基性の無機物質粉末の共存下で加水分解し、低分子量成分を生じる場合がある。また、本発明で配合されるカーボンブラックは、マイクロ波吸収体として機能し得る。そのため、マイクロ波を照射すると、生分解性樹脂用可塑剤全体が加熱され、生分解性樹脂成分が低分子量化する。それらによる効果として、配合する相手材の生分解性樹脂(母材)を、可塑化することが可能になると考えられる。
【0023】
上記の他、母材の生分解性樹脂の結晶性が、可塑剤中に含まれる生分解性樹脂成分の配合によって低下し、柔軟性が付与される可能性も考えられる。生分解性樹脂母材はまた、加水分解性部位同士の相互作用によって生分解性樹脂用可塑剤と相溶し得る。その結果として、本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、ポリアルキレンオキシド系等の汎用可塑剤に比べて相手材中に均一に分散し、柔軟性を発現すると共にブリードの発生が抑制されている可能性がある。
【0024】
本発明の生分解性樹脂用可塑剤中の成分については後に詳記するが、生分解性樹脂成分の種類に特に制限はない。代表的な例として、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)等が挙げられるが、これらに限定されない。2種以上の生分解性樹脂を併用することも可能である。
【0025】
ここで、本発明の生分解性樹脂用可塑剤を構成する生分解性樹脂成分は、可塑剤を配合する対象母材となる生分解性樹脂と、同一又は類似の化学構造を有することが好ましい。例えば、ポリ乳酸が母材となる場合はポリ乳酸を、ポリヒドロキシブチレートやポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)が母材となる場合はポリヒドロキシブチレートを生分解性樹脂成分とすることができる。配合対象の母材となる生分解性樹脂と、同一又は類似の化学構造を有する樹脂を成分とすることにより、本発明の生分解性樹脂用可塑剤は生分解性樹脂母材中により均一に分散し、良好な柔軟性を発現すると共にブリードがさらに生じ難くなって、機械特性や外観の低下を抑制することが容易となる。
【0026】
本発明の生分解性樹脂用可塑剤中に含まれる無機物質粉末の種類にも特に制限はないが、炭酸カルシウム粉末、さらには重質炭酸カルシウム粉末が、特にJIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下の重質炭酸カルシウム粉末が好ましい。炭酸カルシウム等の無機物質粉末の共存により、可塑剤中の生分解性樹脂成分は低分子量化する場合がある。無機物質粉末は、上記の生分解性樹脂50~10質量部に対して50~90質量部となる比率で配合される。生分解性樹脂と無機物質粉末との質量比は、50:50~30:70の割合であることが好ましい。無機物質粉末、特に重質炭酸カルシウム粉末が上記のような比率で含まれていると、生分解性樹脂成分が室温で液状又は半液状となった場合にも可塑剤は固形又は半固形材料となって取扱性が良好となる一方、可塑化効果が無機充填剤の多量配合によって阻害されるおそれも低い。
【0027】
本発明の生分解性樹脂用可塑剤の特徴の一つは、カーボンブラック(以下で「CB」と略す場合がある。)として、よう素吸着量が40mg/g以上65mg/g以下、DBP吸収量が100ml/100g以上180ml/100g以下、平均粒子径が30nm以上60nm以下のものを配合する点である。これらは比較的高ストラクチャーのカーボンであり、旧ASTM等で主としてHAF、MAF、FEF、GPF等に分類されるCBに相当するが、FEF-CB等以外のカーボンブラックを用いることもできる。これらCBを全質量の1~20質量%含有することにより、マイクロ波照射後に生分解性樹脂成分が低分子量化し、可塑化効果を発現する。また、たとえ生分解性樹脂成分が液状となっても、可塑剤は固形又は半固形材料となり、取扱が容易となる。一方で、可塑化効果が補強性カーボンの多量配合によって阻害されるおそれも抑制できる。
【0028】
本発明の生分解性樹脂用可塑剤においては、生分解性樹脂成分が低分子量化し、例えばガラス転移温度が60℃以下となっていることが、優れた可塑化効果を発現する上で好ましい、ここで、上記のように本発明で用いる高ストラクチャーのCBは、マイクロ波吸収体として機能し得るため、マイクロ波照射に伴う生分解性樹脂用可塑剤全体の温度上昇、及びそれに由来する生分解性樹脂成分の低分子量化に寄与する。こうして、例えば低いガラス転移温度となった生分解性樹脂成分を含有する実施形態の可塑剤は、さらに優れた可塑化効果を発現することが可能となる。そのため、本発明の実施形態の一つとして、上記成分を含有する生分解性樹脂用可塑剤に、マイクロ波を照射して得られる生分解性樹脂用可塑剤も挙げることができる。以下では、こうした本発明の生分解性樹脂用可塑剤の実施形態の幾つかについて概説する。
【0029】
<本発明の実施形態>
上記のように本発明は、上記成分を含有する生分解性樹脂用可塑剤に、マイクロ波を照射して得られる生分解性樹脂用可塑剤も包含する。本実施形態の生分解性樹脂用可塑剤では、多くの場合生分解性樹脂成分のガラス転移温度が低下しており、良好な可塑化効果が発現する。例えば生分解性樹脂成分が、ガラス転移温度50~60℃前後の一般的なポリ乳酸やガラス転移温度60~70℃程度の生分解性コポリマー等であっても、マイクロ波照射によってガラス転移温度が低下し、場合によっては液状又は半液状となって、可塑化効果がさらに顕著となる。本発明のさらに他の実施形態は、生分解性樹脂成分のガラス転移温度が60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、さらにまた好ましくは30℃以下、特に好ましくは20℃以下である、上記生分解性樹脂用可塑剤である。
【0030】
尚、生分解性樹脂成分の分子量、及びそれに関連するガラス転移温度は、可塑剤調製時の熱分解や加水分解によっても低下させ得る。特に、無機物質粉末として炭酸カルシウム粉末等を用いた場合は、生分解性樹脂成分との混合物全体が弱アルカリ性となるため、加水分解による樹脂成分の分子量低下が起こり易くなる。このように、生分解性樹脂成分の分子量やガラス転移温度の低下は、マイクロ波照射と混合時の分解反応の双方を利用して行ってもよいが、主としてマイクロ波照射によってなされることが好ましい。混合時の分解によって生分解性樹脂成分のガラス転移温度を低下させると、組成分布と分子量分布の両方の規則性が低下する場合がある。一方でマイクロ波照射によれば、たとえ生分解性樹脂成分が液状化するレベルであっても、組成や分子量の分布が狭い樹脂を含む可塑剤となり得る。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態は、
生分解性樹脂成分、
無機物質粉末、及び
よう素吸着量が40mg/g以上65mg/g以下、DBP吸収量が100ml/100g以上180ml/100g以下、平均粒子径が30nm以上60nm以下のカーボンブラックを、
前記生分解性樹脂成分と前記無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で、かつ前記カーボンブラックを全質量の1質量%以上20質量%以下の含有量にて、混合する工程、並びに、
マイクロ波照射工程
を含む、生分解性樹脂用可塑剤の製造方法である。
【0032】
本発明のさらにまた別の実施形態は、前記マイクロ波照射工程によって前記生分解性樹脂成分のガラス転移温度を60℃以下とする、生分解性樹脂用可塑剤の製造方法である。
【0033】
<生分解性樹脂用可塑剤中の成分の詳細>
以下では、本発明の生分解性樹脂用可塑剤を構成する各主成分について、詳記する。
【0034】
[生分解性樹脂]
本発明の生分解性樹脂用可塑剤に含まれ得る生分解性樹脂成分としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)からなる群より選択される1又は2以上の樹脂等が挙げられる。以下では、これら生分解性樹脂の幾つかについて詳記する。
【0035】
(ポリ乳酸)
本発明の生分解性樹脂用可塑剤の可塑化効果を、さらに顕著にする観点からは、生分解性樹脂成分はポリ乳酸が好ましい。本発明において「ポリ乳酸」とは、原料モノマーとして乳酸成分のみを縮重合させて得られるポリ乳酸ホモポリマー、及び、原料モノマーとして乳酸成分と該乳酸成分と共重合可能なその他のモノマー成分とを縮重合させて得られるポリ乳酸コポリマーを包含する。本発明においては、ポリ乳酸として知られる任意の重合体を使用できる。
【0036】
また、ポリ乳酸は主鎖に不斉炭素を持つため、乳酸単位のみからなるホモポリマーであっても、光学純度100%の結晶性ポリL-乳酸とポリD-乳酸、光学純度0%の非晶性ポリDL乳酸、及びその中間の光学純度を持つポリ乳酸が存在する。さらに、ポリL-乳酸とポリD-乳酸とを、溶液あるいは溶融状態で混合することにより、ステレオコンプレックスポリ乳酸が形成されることも知られている。また、ポリL-乳酸ブロックとポリD-乳酸ブロックとからなるブロックコポリマーも知られている。
【0037】
ポリL-乳酸又はポリD-乳酸は、直接溶融重合法、固相重合法、乳酸の直接縮重合法、ラクチドの溶融開環重合法等により製造することができる。これらのうち、ラクチドの溶融開環重合が、経済的に好ましい。溶融開環重合法でポリL-乳酸又はポリD-乳酸を製造するとき、乳酸のL-体、D-体を導入するためL-ラクチド、D-ラクチドを使用する。尚、D-ラクチド又はD-乳酸は供給源が限られている上に流通量が少なく、ポリL-乳酸単位の原料となるL-ラクチド又はL-乳酸と比較して市場価格が高いため、ポリL-乳酸を用いることが経済的観点からは望ましい。
【0038】
ポリDL乳酸は、L-乳酸単位及びD-乳酸単位からなるランダム共重合体である。L乳酸単位とD乳酸単位との比は、特に限定されるものではなく、例えばL乳酸単位/D乳酸単位=60/40~40/60程度、より好ましくは55/45~45/55程度とすることができる。経済面からは、L-乳酸単位の配合量をD-乳酸単位の配合量よりも大きくすることが好ましい。
【0039】
ポリL-乳酸とポリD-乳酸とは相互に立体規則性が異なっているため、両者を混合及び溶融した後に結晶化させると、いわゆるステレオコンプレックスを形成する。尚、一般に、ポリ乳酸のステレオコンプレックス体としては、ポリL-乳酸とポリD-乳酸とを原料とするものであるが、これらに加えて、あるいはこれらの一方に代えて、ポリ乳酸のDLブロックコポリマーを原料として用いてステレオコンプレックス体とすることも可能である。
【0040】
ポリ乳酸ブロックコポリマーは、それぞれ1つ以上のL-乳酸セグメントとD-乳酸セグメントとを含むステレオブロック共重合体である。L-乳酸セグメント、D-乳酸セグメントとは、L-乳酸又はD-乳酸の2以上の重合体を意味する。その重量平均分子量(Mw)としては、特に限定されるものではないが、好ましい重量平均分子量は500以上300,000以下、より好ましくは5,000以上100,000以下である。分子量が500を下回ると、L-乳酸セグメントとD-乳酸セグメントとが隣接構造を形成し難く、液状あるいは非晶状になる場合がある。一方、300,000を越えると流動性が低下するために、やはり隣接構造が形成し難くなる。
【0041】
さらに、ポリ乳酸ステレオブロック共重合体のL-乳酸セグメントとD-乳酸セグメントとの配合比には、特に限定はなく、少なくとも各1以上のセグメントが共重合していれば良く、総セグメント数は、2~2,000程度が好ましい。
【0042】
ポリ乳酸コポリマーにおいて、乳酸と共重合可能なその他のモノマー成分としては、特に限定されないが、例えば、オキシ酸、二価アルコール類、三価以上の多価アルコール類、芳香族ヒドロキシ化合物、二価のカルボン酸、三価以上の多価カルボン酸、ラクトン類等が挙げられる。
【0043】
オキシ酸としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシヘプタン酸等のオキシ酸が挙げられる。
【0044】
二価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチエレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0045】
三価以上の多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0046】
芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA等が挙げられる。
【0047】
二価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、5-スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
三価以上の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0049】
ラクトン類としては、例えば、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5-オキセパン-2-オン等が挙げられる。
【0050】
(他の生分解性樹脂成分)
乳酸以外の生分解性樹脂成分もまた、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。例えば、乳酸-グリコール酸コポリマー、グリコール酸-カプロラクトンコポリマー、グリコール酸-炭酸トリメチレンコポリマー等を生分解性樹脂成分とすることもできる。
【0051】
[無機物質粉末]
本発明の生分解性樹脂用可塑剤に含まれ得る無機物質粉末としては、特に限定されず、例えば、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等の炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酸化物、若しくはこれらの水和物の粉末状のものが挙げられ、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレイ、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、黒鉛、さらには上記以外の特性を有するカーボンブラック等が挙げられる。これらは合成のものであっても天然鉱物由来のものであっても良く、また、これらは単独又は2種類以上併用して使用され得る。
【0052】
さらに、無機物質粉末の形状としても、特に限定される訳ではなく、粒子状、フレーク状、顆粒状、繊維状等の何れであっても良い。また、粒子状としても、一般的に合成法により得られる様な球形のものであっても、あるいは、天然鉱物を粉砕にかけることにより得られる様な不定形状のものであっても良い。
【0053】
これらの無機物質粉末として、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレイ、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等であり、特に炭酸カルシウム粉末が好ましい。さらに炭酸カルシウムとしては、合成法により調製されたもの、いわゆる軽質炭酸カルシウムと、石灰石等CaCO3を主成分とする天然原料を機械的に粉砕分級して得られる、いわゆる重質炭酸カルシウムの何れであっても良く、これらを組合わせることも可能であるが、経済性の観点で、好ましくは、重質炭酸カルシウムである。
【0054】
ここで、重質炭酸カルシウムとは、天然の石灰石等を機械的に粉砕・加工して得られるものであって、化学的沈殿反応等によって製造される合成炭酸カルシウムとは明確に区別される。尚、粉砕方法には乾式法と湿式法とがあるが、経済性の観点で、乾式法が好ましい。
【0055】
また、無機物質粉末の分散性又は反応性を高めるために、無機物質粉末の表面を予め常法に従い表面改質しておいても良い。表面改質法としては、プラズマ処理等の物理的な方法や、カップリング剤や界面活性剤で表面を化学的に表面処理するもの等が例示できる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の何れのものであっても良く、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩等が挙げられる。
【0056】
無機物質粉末は、粒子であることが好ましい。また、無機物質粉末、特に重質炭酸カルシウム粉末は、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であることがより好ましく、1.5μm以上3.0μm以下であることがさらに好ましい。尚、平均粒子径の測定機器としては、例えば、島津製作所社製の比表面積測定装置SS-100型を好ましく用いることができる。特に、その粒子径分布において、粒子径45μmを超える粒子を含有しないことが好ましい。他方、粒子が細かくなり過ぎると、前述した生分解性樹脂と混練した際に粘度が著しく上昇し、製造が困難になる虞がある。
【0057】
[カーボンブラック]
本発明の生分解性樹脂用可塑剤に含まれ得るカーボンブラック(CB)は、よう素吸着量が40mg/g以上65mg/g以下、DBP吸収量が100ml/100g以上180ml/100g以下、平均粒子径が30nm以上60nm以下の特性を有する。カーボンブラックは、一般に天然ガス、石油、石油系重質油等の不完全燃焼や熱分解によって製造される。製造方法によってチャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等に分類されるが、本発明においては上記特性を有する限り、どのようなCBを使用することもできる。2種以上のCBを併用することも可能である。上記のように、こうした特性のCBは比較的ストラクチャーが高く、マイクロ波吸収能が良好であり、その一方で配合対象のポリマー(複合材)の硬度を上昇させ難い。そのため、本発明における成分として好適である。
【0058】
CB市販品の多くはファーネスブラックであり、一般に0.2~0.4%程度の水素量を有する。また、ファーネスで製造後に曝される雰囲気に応じて、粒子表面にカルボニル基等の種々の官能基を有しているが、本発明で使用するCBはこれらに限定されない。平均粒子径30~60nmのCBは、前記のように主としてHAF、MAF、FEF、GPF等に分類される。本発明においても、HAF、MAF、FEF、GPF等のCB、特にMAF-CB又はFEF-CBを使用することができるが、これらに限定されない。但し、マイクロ波照射後の可塑化効果を特に高める観点からは、よう素吸着量が40~50mg/g、特に40~45mg/g、DBP吸収量が100~150ml/100g、特に100~130ml/100g、平均粒子径が35~55nm、特に40~48nmのCBを使用することが好ましい。
【0059】
[クエン酸アセチルトリブチル]
本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、可塑化成分として汎用の可塑剤をさらに含有していてもよい。汎用可塑剤としては、例えば、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-2-メトキシエチル、酒石酸ジブチル、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ジアセチン、エポキシ化大豆油等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
より好ましくは、上記可塑剤のうち、クエン酸アセチルトリブチルを、生分解性樹脂用可塑剤の全質量に対して5質量%以上20質量%以下、特に8質量%以上15質量%以下の量にて含有する。クエン酸アセチルトリブチルは、重質炭酸カルシウムとの組み合わせにおいて、生分解性樹脂の生分解性や可塑剤配合後の母材の機械特性を損い難い利点を有する。
【0061】
[その他の添加剤]
本発明の生分解性樹脂用可塑剤には、必要に応じて、補助剤としてその他の添加剤を配合することも可能である。その他の添加剤としては、例えば、色剤、カップリング剤、流動性改良材(流動性調整剤)、架橋剤、分散剤、紫外線吸収剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、上記以外の酸化防止剤及び安定剤等を配合しても良い。これらの添加剤は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、これらは、後述の混練工程において配合しても良く、混練工程の前にあらかじめ原料成分中に配合していても良い。本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物において、これらのその他の添加剤の添加量は、所望の物性及び成形加工性を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、無機物質粉末充填樹脂組成物全体の質量を100%とした場合に、これらその他の添加剤はそれぞれ約0~10質量%程度、特に0.04~5質量%程度の割合で、かつ当該その他の添加剤全体で10質量%以下となる割合で配合されることが望まれる。
【0062】
[生分解性樹脂用可塑剤の組成]
本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、生分解性樹脂成分と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で、好ましくは質量比50:50~30:70の割合で含有する。本発明の生分解性樹脂用可塑剤はまた、上記特性のカーボンブラックを、全質量の1~20質量%、好ましくは2~15質量%、より好ましくは3~12質量%、特に好ましくは5~10質量%含有する。こうした組成であれば、マイクロ波照射による生分解性樹脂成分のガラス転移温度の調整が容易で、生分解性樹脂成分がたとえ液状化しても取扱性が低下し難い上、多量充填に伴う硬度上昇も抑制し得る。
【0063】
本発明の好ましい実施形態においては、生分解性樹脂用可塑剤は、10~50質量%、特に30~45質量%の生分解性樹脂成分;45~89質量%、特に50~70質量%の無機物質粉末;1~20質量%、例えば3~15質量%、特に5~12質量%の上記カーボンブラック;20質量%以下、特に5~15質量%の任意的なクエン酸アセチルトリブチル;及び10質量%以下程度、特に0.04~5質量%程度の任意的なその他添加剤を;生分解性樹脂用可塑剤全体で100質量%、かつ生分解性樹脂成分:無機物質粉末の質量比が50:50~10:90となる量にて含有する。
【0064】
<生分解性樹脂用可塑剤の製造方法>
本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、上記の成分を混合、例えば溶融混練することにより、製造することができる。溶融混練は、各成分を均一に分散させる傍ら、高い剪断応力を作用させて混練することが好ましい。混合装置としても、一般的な押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等種々のものを用いることができるが、例えば二軸混練機で混練することが好ましい。
【0065】
本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、混練後に任意の大きさ及び形状のペレットに加工されてもよい。ペレットの形状は特に限定されず、例えば、円柱、球形、楕円球状等であっても良い。ペレットのサイズは特に限定されない。例えば、球形ペレットの場合、直径1~10mmであり得る。楕円球状のペレットの場合、縦横比0.1~1.0、縦横の長さ1~10mmであり得る。円柱ペレットの場合、直径1~10mm、長さ1~10mmであり得る。
【0066】
こうして製造された本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、そのまま生分解性樹脂母材に配合することもできるが、可塑剤中の生分解性樹脂成分のガラス転移温度を60℃以下に低下させた上で生分解性樹脂母材に配合することが好ましい。前述のように、生分解性樹脂成分のガラス転移温度が60℃以下、中でも50℃以下、特に40℃以下であれば、より良好な可塑化効果が発現する。生分解性樹脂成分のガラス転移温度を低減させる上で、上記のようにして製造された混練物やその成形品に、マイクロ波を照射することが好ましい。
【0067】
[マイクロ波照射]
マイクロ波照射の方法に、特に制限はない。尚、マイクロ波とは周波数が300MHz~300GHz(波長が1m~1mm)の電磁波である。工業、 科学、及び医療用装置(ISM装置)には、中心周波数13.560MHz(周波数範囲13.553~13.567MHz)、中心周波数27.120MHz(周波数範囲26.957~27.283MHz)、中心周波数40.680MHz(周波数範囲40.66~40.70MHz)、中心周波数2450MHz(周波数範囲2400~2500MHz)、及び中心周波数5800MHz(周波数範囲5725~5875MHz)等の周波数帯が規定されている。本発明においては、いずれの周波数帯のマイクロ波を用いることもできる。これらの中でも2450MHz帯のマイクロ波は、低価格な発振管が市販されているので、照射装置のコストを低減できる利点がある。
【0068】
マイクロ波照射による加熱方式にも特に制限はなく、箱形オ-ブン方式、導波管方式、マイクロ波アンテナ方式、共振器方式等、種々の公知の方式を採用することができる。複数種の加熱方式を、併用することも可能である。製造量が少ない場合は、食品業務用や家庭用の電子レンジを使用することもできる。市販のマイクロ波照射装置、に、ペレット形状又はシート状もしくはフィルム状の上記混練物を入れ、2450MHz帯のマイクロ波を1~3分間、特に1~2分間照射することにより、可塑剤中の生分解性樹脂成分の分子量を低下させ、例えばガラス転移温度を60℃以下、特に50℃以下に調整することができる。生分解性樹脂成分を液状又は半液状とすることも可能である。
【0069】
≪生分解性樹脂組成物≫
本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、各種の生分解性樹脂に配合することにより、配合対象(母材)の生分解性樹脂の柔軟性を改善することができる。本発明の生分解性樹脂用可塑剤を含有する生分解性樹脂組成物は、優れた柔軟性を有すると共に成形加工性が良好で、かつブリードを生じ難く、機械特性や外観の低下が抑制されている。配合対象(母材)とする生分解性樹脂に特に制限はなく、本発明の生分解性樹脂用可塑剤に含有される生分解性樹脂成分と同様の樹脂を使用することができる。
【0070】
本発明はまた、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)からなる群より選択される1又は2以上の生分解性樹脂に、上記した本発明の生分解性樹脂用可塑剤を、全質量の0.1質量%以上50質量%以下の量含有する、生分解性樹脂組成物である。
【0071】
本発明の生分解性樹脂組成物は、例えば<生分解性樹脂用可塑剤の製造方法>についての説明に記載した方法で、生分解性樹脂母材に本発明の生分解性樹脂用可塑剤を混合、具体的には溶融混練する等の方法により、製造することができる。溶融混練方法にも特に制限はなく、<生分解性樹脂用可塑剤の製造方法>において記載した方法を援用することができる。
【0072】
ここで、本発明の生分解性樹脂用可塑剤を配合する相手材は、上記のような生分解性樹脂の他に、無機物質粉末を含有する複合材(以下で「生分解性樹脂複合材」と表記して生分解性樹脂の「母材」と区別する場合がある。)であってもよい。本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、炭酸カルシウム等の無機充填剤を多量配合した生分解性樹脂複合材であっても、優れた柔軟性を付与し、成形加工性を改善することができる。
【0073】
相手材とする生分解性樹脂複合材の組成に特に制限はないが、生分解性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合、特に質量比50:50~30:70の割合で含有することが好ましい。こうした生分解性樹脂複合材はしばしば脆く、成形性に劣るが、本発明の生分解性樹脂用可塑剤の配合によって優れた柔軟性と良好な成形加工性が付与され得る。無機物質粉末、及び任意的に配合するその他添加剤の種類に特に制限はなく、本発明の生分解性樹脂用可塑剤に配合されるのと同様のものを使用することができる。例えば10~50質量%、特に30~45質量%の生分解性樹脂成分;45~90質量%、特に50~70質量%の無機物質粉末;及び10質量%以下程度、特に0.04~5質量%程度の任意的なその他添加剤を含有する生分解性樹脂複合材であってもよい。
【0074】
上記の生分解性樹脂複合材はまた、生分解性樹脂以外に、下記のような樹脂を含有していてもよい:
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチル-1-ペンテン、エチレン-環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;
エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体の金属塩(アイオノマー)、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂;
ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;
ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂;
アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン(AS)共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体等のポリスチレン系樹脂;
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリ塩化ビニル系樹脂;
ポリフェニレンスルフィド;
ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテル系樹脂等
が挙げられる。
ただし、生分解性を奏しやすいという観点から、生分解性樹脂複合材は、生分解性樹脂以外の樹脂を含まないか、含むとしても少量(例えば、生分解性樹脂複合材に対して1.0質量%以下)であることが好ましい。
【0075】
生分解性樹脂複合材に本発明の生分解性樹脂用可塑剤を配合する方法にも特に制限はなく、<生分解性樹脂用可塑剤の製造方法>について上記した方法及び装置により、生分解性樹脂複合材に本発明の生分解性樹脂用可塑剤を混合、例えば溶融混練すればよい。ここで、生分解性樹脂複合材と生分解性樹脂用可塑剤の組成が類似していると、溶融混練がスムーズに進行し、生分解性樹脂用可塑剤の分散をより均質化させることが容易となる。例えば、生分解性樹脂複合材と生分解性樹脂用可塑剤とが同じポリ乳酸を含有し、かつ重質炭酸カルシウムを同程度含有すると、両者は溶融粘度が似通ったものになるため、混練機中でスムーズに混合し得る。
【0076】
≪成形品≫
上記した本発明の生分解性樹脂組成物は、種々の形状に成形することができる。本発明はまた、上記の生分解樹脂組成物から成形された成形品を包含する。本発明の成形品は、柔軟な上に成形加工性も良好なので、種々の公知の加工法によって様々な形状に成形することができる。また、ブリードを生じ難く、機械特性や外観が良好なため、各種形状の物品として様々な用途に使用することができる。
【0077】
本発明の成形品は、例えば、シート、フィルム、容器体(食品容器等)、日用品(各種使い捨て製品等)、自動車用部品、電気電子部品、各種消耗品(建築部材等の分野におけるもの等)等であり得る。
【0078】
本発明の樹脂組成物は成形加工性が良好であるため、特に、押出成形やインフレーション成形に適する。したがって、本発明の成形品は、好ましくは押出成形品、例えばフィルム、シート、中空品等、特に押出シートである。
【0079】
インフレーション成形品としては、フィルム、シート、袋(レジ袋等)が挙げられる。
インフレーション成形品の肉厚は特に限定されないが、好ましくは10μm~200μm、さらに好ましくは30μm~100μmである。
【0080】
<成形品の製造方法>
本発明の成形品の製造方法は、得ようとする成形品に応じて適宜選択できる。上記した押出成形法やインフレーション成形法の他に、射出成形法、発泡射出成形法、射出圧縮成形法、ブロー成形法、プレス成形法、カレンダー成形法、真空成形法等、種々の方法を採用することができる。成形条件は、生分解性樹脂組成物の組成や、成形品の種類等に応じて適宜設定できる。
【0081】
尚、成形品がシートやフィルム等である場合、その成形時又は成形後に、一軸若しくは二軸方向、又は多軸方向に延伸しても良いし、しなくとも良い。
【実施例0082】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
以下の実施例においては、下記の原材料を用いて、各種生分解性樹脂用可塑剤及び生分解性樹脂複合材を調製し、両者を混練して生分解性樹脂組成物を調製した。
・樹脂成分(P)
P-1:ポリL-乳酸(重量平均分子量Mw:130,000、融点:172℃)
P-2:ポリブチレンアジペートテレフタレート70質量%、及びポリL-乳酸(P-1)30質量%からなる混合樹脂
【0084】
・無機物質粉末(I)
I-1:重質炭酸カルシウム粒子(平均粒径:2.2μm、BET比表面積:1.0m2/g、真円度:0.85)
I-2:シリカ
【0085】
・カーボンブラック(CB)
CB-1:FEF-CB(よう素吸着量45mg/g、DBP吸収量121ml/100g、平均粒子径44nm)
CB-2:MAF-CB(よう素吸着量58mg/g、DBP吸収量158ml/100g、平均粒子径38nm)
CB-3:ISAF-CB(よう素吸着量118mg/g、DBP吸収量91ml/100g、平均粒子径22nm)
CB-4:SRF-CB(よう素吸着量26mg/g、DBP吸収量68ml/100g、平均粒子径66nm)
【0086】
・添加剤(A)
A-1:クエン酸アセチルトリブチル
A-2:ラウリルジエタノールアミドとジエタノールアミンを含有する帯電防止剤
【0087】
[実施例1~4、比較例1~4]
<生分解性樹脂用可塑剤の作製>
上記の各原材料を、後記する表1に示す配合量にて、(株)パーカーコーポレーション製同方向回転二軸混練押出機HK-25D(φ25mm、L/D=41)に投入した。これをシリンダー温度190~200℃でストランド押出後、冷却、カットすることで、各種組成の生分解性樹脂用可塑剤のペレットを作製した。
【0088】
<マイクロ波照射>
上記で調製したペレットの一部に、マイクロ波照射装置を用いて、2450MHz帯のマイクロ波を照射した。また、照射前後の生分解性樹脂用可塑剤のガラス転移温度(Tg:生分解性樹脂成分のTgと同等)を、株式会社島津製作所社製のDSCを用いて測定した。
【0089】
<生分解性樹脂複合材の作製>
40質量部のP-1、60質量部のI-1、及び1質量部のA-2を、(株)パーカーコーポレーション製同方向回転二軸混練押出機HK-25D(φ25mm、L/D=41)に投入し、上記生分解性樹脂用可塑剤と同様にして、ペレット状の生分解性樹脂複合材-1を作製した。
【0090】
<生分解性樹脂組成物の作製・成形>
上記で得られた各生分解性樹脂用可塑剤のペレット33質量部を、それぞれ67質量部の生分解性樹脂複合材-1中に溶融混練した。溶融混練は、(株)パーカーコーポレーション製同方向回転二軸混練押出機HK-25Dを使用し、上記と同様にして行った。得られたペレットを射出成型機に投入し、ダンベル型の試験片を成形した。
【0091】
<生分解性樹脂組成物試料の試験>
各生分解性樹脂組成物試料について、上記ダンベル形状の試験片を用い、可塑化効果の指標としての射出成形時の成形性及び成形後試料の柔軟性、並びに耐ブリード性を、以下のようにして評価した。評価結果を、生分解性樹脂用可塑剤の組成と共に、表1に示す。
【0092】
(成形性)
・〇:欠け等の外観不良のないダンベル型試験片を、容易に得ることができた。
・△:成形条件を繰り返し検討することにより、外観不良のない試験片が得られた。
・×:成形条件を変化させても、欠け等の外観不良を伴う試験片しか得られなかった。
【0093】
(柔軟性)
上記の試験片を
図1のように手で折り曲げ、以下の基準に従って柔軟性を評価した。
・◎:試験片を160°前後まで3回折り曲げたが、破断しなかった。
・〇:試験片を160°前後まで2~3回折り曲げない限り、破断しなかった。
・△:試験片を120~160°程度折り曲げると、1回で破断してしまった。
・×:試験片を90~120°程度折り曲げると、1回で破断してしまった。
【0094】
(耐ブリード性)
上記の試験片を80℃のオーブン中に保管し、一定時間ごとに外観を観察してブリードの有無を目視観察し、以下の基準で評価した。
・◎:試験片を80℃に24時間保持しても、ブリードは殆ど観察されなかった。
・〇:試験片を80℃に24時間保持すると、ブリードが観察された。
・△:試験片を80℃に6時間保持すると、ブリードが僅かに観察され、24時間後には著しいブリードが観察された。
・×:試験片を80℃に6時間保持したのみで、著しいブリードが観察された。
【0095】
【0096】
本発明に従う生分解性樹脂用可塑剤を配合した実施例1~4の生分解性樹脂組成物では、生分解性樹脂用可塑剤を配合していない比較例1の生分解性樹脂組成物に比べ、ダンベル型試験片への成形が容易な上に柔軟性が改善され、耐ブリード性も良好であった。特に、マイクロ波を照射して生分解性樹脂成分のガラス転移温度を低下させた実施例2~4では、生分解性樹脂組成物が柔軟で、優れた可塑化効果が発現した。一方で、よう素吸着量が極めて大きなCB-3を用いると、生分解性樹脂用可塑剤自体の製造が不可能となった(比較例2)。また、比較的低ストラクチャーのCB-4を配合した比較例3の生分解性樹脂用可塑剤や、カーボンブラック不含の比較例4の生分解性樹脂用可塑剤を配合しても、満足な可塑化効果は得られなかった。
【0097】
[比較例5]
実施例1において得られた生分解性樹脂複合材-1を、(株)パーカーコーポレーション製同方向回転二軸混練押出機HK-25D中に70質量部投入し、溶融後に、汎用可塑剤であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステルを30質量部配合し、実施例1と同様にして試験片を作製した。得られた試験片を80℃のオーブン中に6時間保持したところ、著しいブリードが観察された。成形性も低く外観が悪い成形品しか得られず、本発明の生分解性樹脂用可塑剤に比べて特段優れた効果は見られなかった。
【0098】
[実施例5~10、比較例6~7]
<生分解性樹脂用可塑剤の作製>
表2に示す配合の各種生分解性樹脂用可塑剤のペレットを、実施例1と同様にして作成した。別途に、30質量部のP-2、70質量部のI-1、及び1質量部のA-2を用いて、実施例1と同様にして、ペレット状の生分解性樹脂複合材-2を作製した。次いで、15質量部の各種生分解性樹脂用可塑剤と85質量部の生分解性樹脂複合材-2とを、実施例1と同様にして混練・成形し、ダンベル型試験片を作成して、評価試験を行った。評価結果を表2に示す。
【0099】
【0100】
本発明に従う生分解性樹脂用可塑剤を配合した実施例5~10の生分解性樹脂組成物では、生分解性樹脂用可塑剤を配合していない比較例6の生分解性樹脂組成物に比べ、ダンベル型試験片への成形が容易な上に柔軟性が大きく改善され、耐ブリード性も良好であった。特に、クエン酸アセチルトリブチルを配合した実施例8~10では、優れた可塑化効果が発現した。尚、重質炭酸カルシウムの代わりにシリカを配合した実施例7では、可塑化効果は他の実施例ほどには大きくなかった。無機物質粉末としては重質炭酸カルシウム粉末が好ましいことが示唆される。また、生分解性樹脂成分量の少ない比較例7の生分解性樹脂用可塑剤は、溶融混練による作製自体が不可能であった。
【0101】
以上より、本発明によれば、無機充填剤を多量に配合した生分解性樹脂組成物であっても十分な柔軟性と良好な成形加工性を発現することができ、かつブリードを生じ難く、機械特性や外観の低下が抑制された生分解性樹脂用可塑剤、並びにそうした生分解性樹脂用可塑剤を含む樹脂組成物及び成形品を提供し得ることが、明らかとなった。
前記生分解性樹脂成分が、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)からなる群より選択される1又は2以上の生分解性樹脂成分である、請求項1に記載の生分解性樹脂用可塑剤。
前記生分解性樹脂成分が、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)からなる群より選択される1又は2以上の生分解性樹脂成分である、請求項1に記載の生分解性樹脂用可塑剤。
前記重質炭酸カルシウム粉末の、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、請求項4に記載の生分解性樹脂用可塑剤。