(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174721
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】弁箱用の消失模型
(51)【国際特許分類】
B22C 7/02 20060101AFI20241210BHJP
F16K 27/04 20060101ALI20241210BHJP
B22C 9/04 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B22C7/02 102
F16K27/04
B22C9/04 R
B22C9/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092704
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】森村 克
(72)【発明者】
【氏名】西野 真依子
【テーマコード(参考)】
3H051
4E093
【Fターム(参考)】
3H051AA03
3H051BB03
3H051CC11
3H051DD02
3H051EE03
3H051FF02
4E093GB01
(57)【要約】
【課題】計測機器を収容可能な収容部を有する弁箱を好適に製造することができる弁箱用の消失模型を提供する。
【解決手段】鋳型4内に配置され、溶湯と置換されることで弁箱100を製造可能な弁箱用の消失模型1であって、弁体2を収容可能な弁本体部110に対応する弁本体形成部10と、継手120に対応する継手形成部20と、前記弁本体形成部10と前記継手形成部20との間に配置され、センサ3を収容可能な収容部130に対応する収容部形成部30と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型内に配置され、溶湯と置換されることで弁箱を製造可能な弁箱用の消失模型であって、
弁体を収容可能な弁本体部に対応する弁本体形成部と、
継手に対応する継手形成部と、
前記弁本体形成部と前記継手形成部との間に配置され、計測機器を収容可能な収容部に対応する収容部形成部と、
を具備する弁箱用の消失模型。
【請求項2】
前記収容部形成部は、
流体が流通する流路部に対応する流路部形成部と、
前記流路部と区画される区画部に対応する区画部形成部と、
前記流路部と前記区画部とを区画する壁部に対応する壁部形成部と、
を具備し、
前記壁部形成部は、
前記流路部形成部と前記区画部形成部とを連通する孔部を具備している、
請求項1に記載の弁箱用の消失模型。
【請求項3】
前記弁本体形成部、前記継手形成部、及び、前記収容部形成部は、互いに接合されており、
前記継手形成部は、
前記弁本体形成部及び前記収容部形成部のいずれにも接合可能な接合面を有している、
請求項1又は請求項2に記載の弁箱用の消失模型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁箱用の消失模型の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道管等の管路(流路)内の情報を取得する方法として、水質監視装置や流量計等の専用機器を流路の中途部に設置して恒久的に情報を取得する方法や、既存の消火栓等を介して各種センサを一時的に流路内に導入して情報を取得する方法がある。
【0003】
しかしながら、前者の方法では、設置費用が比較的高く、また専用の設置スペースが必要になる場合もあるため、管路網の情報を広範囲に取得することは困難である。また後者の方法では、限られた期間と場所での情報の取得は可能であるものの、管路網の情報を広範囲かつ恒久的に取得することは困難である。
【0004】
ここで、水道管等の管路には、流体の流路を開閉するバルブが適宜設けられる。一般的なバルブとしては、特許文献1に記載のようなバルブが知られている。このようなバルブは管路網において多数設置されているため、このバルブを用いて流路内の情報を取得することができれば、管路網の情報を広範囲かつ恒久的に取得することができる。このため、流路内の情報を取得する計測機器を収容可能なバルブが望まれる。
【0005】
このようなバルブを構成する弁箱の製造方法としては、消失模型を用いた鋳造方法が一般的に知られている。このため、計測機器を収容可能な収容部を有する弁箱を好適に製造することができる消失模型が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の一態様は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、計測機器を収容可能な収容部を有する弁箱を好適に製造することができる弁箱用の消失模型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
本開示の一態様に係る弁箱用の消失模型は、鋳型内に配置され、溶湯と置換されることで弁箱を製造可能な弁箱用の消失模型であって、弁体を収容可能な弁本体部に対応する弁本体形成部と、継手に対応する継手形成部と、前記弁本体形成部と前記継手形成部との間に配置され、計測機器を収容可能な収容部に対応する収容部形成部と、
を具備するものである。
本開示の一態様によれば、計測機器を収容可能な収容部を有する弁箱を好適に製造することができる。
【0010】
本開示の一態様に係る前記収容部形成部は、流体が流通する流路部に対応する流路部形成部と、前記流路部と区画される区画部に対応する区画部形成部と、前記流路部と前記区画部とを区画する壁部に対応する壁部形成部と、を具備し、前記壁部形成部は、前記流路部形成部と前記区画部形成部とを連通する孔部を具備しているものである。
本開示の一態様によれば、計測機器を収容可能な収容部を有する弁箱を好適に製造することができる。
【0011】
本開示の一態様に係る前記弁本体形成部、前記継手形成部、及び、前記収容部形成部は、互いに接合されており、前記継手形成部は、前記弁本体形成部及び前記収容部形成部のいずれにも接合可能な接合面を有しているものである。
本開示の一態様によれば、消失模型の汎用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、計測機器を収容可能な収容部を有する弁箱を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一実施形態に係る弁箱用の消失模型の斜視図。
【
図3】(a)消失模型の右側面図。(b)消失模型の左側面図。
【
図6】(a)
図2におけるA1-A1断面図。(b)
図2におけるB1-B1断面図。
【
図8】消失模型を用いて製造された弁箱の側面断面図。
【
図9】消失模型を用いて弁箱を製造する様子を模式的に示した側面断面図。
【
図11】第二実施形態に係る弁箱用の消失模型の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F及び矢印Bで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向及び後方向と定義して説明を行う。
【0015】
以下では、本発明の一実施形態に係る弁箱用の消失模型1について説明する。
【0016】
消失模型1は、水道管内を流通する水の管理に用いられる弁箱100の製造に使用されるものである。以下では、まず弁箱100について説明を行う。
【0017】
図8に示す弁箱100は、水道管内の水の流通を制御するバルブ装置を構成するものである。より詳細には、弁箱100は、水の流路を仕切る弁体2や、水道管内の情報を取得するセンサ3等と共に、バルブ装置を構成する。弁箱100は、地中に設置されたバルブボックス(不図示)の下方において水道管に接続される。弁箱100は、左右方向に延びる水の流路を形成する。弁箱100は、鋳造により製造される。なお、弁箱100の製造方法の詳細な説明は後述する。
【0018】
弁箱100は、弁本体部110、継手120及び収容部130を具備する。なお、
図8では説明の便宜上、弁箱100の各部分の境界を二点鎖線で示している。なお、後述するように、弁箱100は消失模型1と概ね同形状である。
【0019】
弁本体部110は、弁体2と共にバルブ装置の弁を構成する部分である。上記弁としては、例えば弁本体部110の流路(後述する流路部111)を仕切ることで閉塞する仕切り弁(例えばソフトシール仕切弁)を採用可能である。弁本体部110は、弁箱100の左右方向途中部を構成する。弁本体部110は、流路部111及び弁体収容部112を具備する。
【0020】
流路部111は、弁本体部110において水が流通する流路を形成する部分である。流路部111は、弁本体部110の下側部分を構成する。流路部111は、弁本体部110を左右に貫通する中空部分(流路となる部分)を区画する略円筒形状に形成されている。
【0021】
弁体収容部112は、弁体2が収容される部分である。弁体収容部112は、弁本体部110の上側部分を構成する。弁体収容部112は、弁体2を収容可能な形状に形成される。弁体収容部112は、下端部に形成された開口部112aを介して、流路部111と連通している。開口部112aは、弁体2を挿通可能に形成されている。
【0022】
継手120は、水道管に接続される部分である。継手120は、左右方向に延出する略円筒形状に形成されている。継手120は、弁箱100の左右方向両端部を構成する。
【0023】
収容部130は、水道管内を計測する計測機器を収容可能な部分である。本実施形態では、上記計測機器として、弁箱100の流路(後述する流路部131)の内部の情報を取得可能なセンサ3を採用している。センサ3としては、流路内を流通する水の流速を計測可能な流速センサや、水の水質を計測可能な水質センサを採用可能である。なお、センサ3としては、上述した例に限定されず、流路内の情報を取得可能な種々のセンサを採用可能である。また、収容部130に収容可能な機器としては、センサ3に限定されず、流路内を撮影可能なカメラや通信機器、バッテリー等の種々の機器を採用可能である。
【0024】
収容部130は、弁箱100の左右方向途中部であって、弁本体部110よりも右側の部分(弁本体部110と右端の継手120との間の部分)を構成する。収容部130は、流路部131及び機器収容部132を具備する。
【0025】
流路部131は、収容部130において水が流通する流路を形成する部分である。流路部131は、収容部130の下側部分を構成する。流路部131は、収容部130を左右に貫通する中空部分(流路となる部分)を区画する略円筒形状に形成されている。
【0026】
機器収容部132は、センサ3(計測機器)が収容されると共に、流路部131と区画された空間を形成する部分である。機器収容部132は、収容部130の上側部分を構成する。機器収容部132は、センサ3を収容可能な形状に形成される。機器収容部132は、区画部133及び壁部134を具備する。
【0027】
区画部133は、センサ3が収容される空間を水平方向に区画する側壁を構成する部分である。
【0028】
壁部134は、センサ3が収容される空間を上下方向に区画する底部を構成する部分である。また、壁部134は、流路部131の上部を構成する。すなわち壁部134は、機器収容部132の底部と、流路部131の上部と、を兼ねている。壁部134は、流路部131と区画部133(区画部133の内部)とを区画する。壁部134は、挿通孔134aを具備する。
【0029】
挿通孔134aは、壁部134を上下方向に貫通する孔である。挿通孔134aは、壁部134の平面視略中央に形成される。挿通孔134aは、流路部131と区画部133とを連通する。
図8に示すように、挿通孔134aには、センサ3(計測機器)が挿通される。挿通孔134aの内径は、センサ3を含む種々の計測機器に対応可能なように、各種計測機器の外径よりも大きく形成される。センサ3の外径と挿通孔134aの内径との間には、隙間を埋める中間部品(不図示)が設けられる。上記中間部品としては、例えば筒状に形成されたセンサ3のホルダー等を採用可能である。
【0030】
図8に示すように、弁箱100の流路部111、流路部131及び左右の継手120は、互いに連通し、左右方向に延びる流路を形成する。弁箱100により構成されるバルブ装置は、上記流路を弁本体部110の弁体2で仕切ったり、収容部130のセンサ3を用いて、上記流路を流通する水の情報を取得することができる。
【0031】
本実施形態では、弁箱100は、弁箱100に対応する形状の消失模型1を用いた鋳造方法により製造される。以下では、
図9を参照して、消失模型1を用いた鋳造方法の説明を行う。
【0032】
まず、消失模型1を鋳型4内において砂(鋳物砂)に埋め込むように配置し、振動の付与や減圧により隙間に鋳物砂を充填させる。なお、図例では、鋳物砂を塗りつぶして示している。次に、鋳型4内に溶湯(不図示)を供給する。これにより、消失模型1が溶湯と置換されて、弁箱100が形成される。上記弁箱100は、鋳型4から取り出された後、鋳肌に対する適宜の表面処理や、穴あけ加工等の加工が行われる。上記製造方法によれば、弁本体部110、継手120及び収容部130を備える弁箱100を鋳造により一体成型することができる。
【0033】
以下では、上述したような消失模型を用いた鋳造で想定される問題について説明する。
【0034】
一般的な消失模型を用いた鋳造方法では、鋳枠内への鋳物砂の振動充填および減圧による砂圧によって消失模型が変形する場合がある。ここで、本実施形態のように、収容部130を有する弁箱100を製造する場合は、消失模型において、流路部131側と区画部133側とを区画する部分、すなわち壁部134に対応する部分が形成される。また、鋳造においては、鋳物のうち厚みが薄い箇所や、湯道が不連続となる箇所では、ひけ巣や湯回り不良等の鋳造欠陥が発生し易いことから、鋳物品質を安定させるために、鋳造後に穴あけ加工を行うことが一般的に行われている。このため、一般的な鋳造方法においては、比較的厚みが薄い部分である壁部134の挿通孔134aは、鋳造後に穴あけ加工(切削加工)等を行うことで形成される。この場合、消失模型の壁部134に対応する部分は、孔を有さない壁状に形成される。
【0035】
上述のような消失模型を鋳物砂に埋め込んだ場合、当該消失模型の壁部134に対応する部分には鋳物砂は充填されず、上記部分の周辺は、流路部131側と区画部133側との間において鋳物砂が不連続となる。このため、上記部分は、鋳物砂の振動充填や、減圧による砂圧によって変形や割れ等が発生し易くなる。なお、上述した変形は、消失模型の長手方向(流通方向)を上下方向に向けて(縦向きで)配置した場合(
図9を参照)と、消失模型の長手方向を水平方向に向けて(横向きで)配置した場合と、のいずれの場合でも発生する可能性がある。
【0036】
本実施形態に係る消失模型1は、上述したような変形や割れ等を防止し、収容部130を有する弁箱100を好適に製造することができる。以下では、
図1から
図7まで、並びに
図10を用いて、消失模型1について説明する。
【0037】
消失模型1は、鋳造において溶湯と置換されることで弁箱100を製造するための模型である。消失模型1は、弁箱100と概ね同寸同形状に形成される。消失模型1は、例えば発泡スチロール等で形成される。消失模型1は、弁本体形成部10、継手形成部20及び収容部形成部30を具備する。
【0038】
図10に示すように、消失模型1の各部分(弁本体形成部10、継手形成部20及び収容部形成部30)は、互いに別体に形成されている。消失模型1は、上記各部分が接着剤等により互いに接合されて形成される。
【0039】
弁本体形成部10は、弁箱100の弁本体部110に対応する部分である。すなわち、弁本体形成部10は、消失模型1の左右方向途中部を構成する。弁本体形成部10は、流路部形成部11、弁体収容部形成部12、及び接合面13を具備する。
【0040】
図6(b)及び
図7に示す流路部形成部11は、弁本体部110の流路部111に対応する部分である。すなわち、流路部形成部11は、弁本体形成部10の下側部分を構成すると共に、弁本体形成部10を左右に貫通する中空部分(流路となる部分)を区画する略円筒形状に形成されている。
【0041】
弁体収容部形成部12は、弁本体部110の弁体収容部112に対応する部分である。すなわち、弁体収容部形成部12は、弁本体形成部10の上側部分を構成する。
図1、
図6(b)及び
図7に示すように、弁体収容部形成部12は、上方に向けて開口する略箱形状に形成される。また、
図1及び
図4に示すように、弁体収容部形成部12は、平面視において、略矩形状に形成される。
【0042】
弁体収容部形成部12の上端部には、水平方向に延びる鍔部が形成されている。また、
図7に示すように、弁体収容部形成部12の下端部には、弁体収容部112の開口部112aに対応し、流路部形成部11と連通する開口部12aが形成される。
【0043】
図10に示す接合面13は、弁本体形成部10の接合対象(継手形成部20及び収容部形成部30)に対して接合される面である。接合面13は、弁本体形成部10の左右方向の両側面を構成する。左右の接合面13は、互いに同形状に形成されている。
【0044】
図1に示す継手形成部20は、弁箱100の継手120に対応する部分である。すなわち、継手形成部20は、消失模型1の左右方向両端部を構成する。左右の継手形成部20は、互いに同形状に形成されている。継手形成部20は、左右方向に延出する略円筒形状に形成されている。継手形成部20の延出方向先端部は、他の部分に対して拡径するフランジが設けられている。
図7及び
図10に示すように、左側の継手形成部20は、弁本体形成部10の流路部形成部11に接続される。また、右側の継手形成部20は、後述する収容部形成部30の流路部形成部31に接続される。継手形成部20は、接合面21を具備する。
【0045】
図10に示す接合面21は、継手形成部20の接合対象(弁本体形成部10及び継手形成部20)に対して接合される面である。本実施形態では、左側の継手形成部20の接合面21は、弁本体形成部10の左側の接合面13に対して接合される。また、右側の継手形成部20の接合面21は、後述する収容部形成部30の第一接合面35に対して接合される。このように、継手形成部20の接合面21は、弁本体形成部10及び収容部形成部30のいずれにも接合可能に形成されている。
【0046】
収容部形成部30は、弁箱100の収容部130に対応する部分である。すなわち、収容部形成部30は、消失模型1の左右方向途中部であって、弁本体形成部10よりも右側の部分(弁本体形成部10と右端の継手形成部20との間の部分)を構成する。収容部形成部30は、流路部形成部31、機器収容部形成部32、第一接合面35及び第二接合面36を具備する。
【0047】
図6(a)及び
図7に示す流路部形成部31は、収容部130の流路部131に対応する部分である。すなわち、流路部形成部31は、収容部形成部30の下側部分を構成すると共に、収容部形成部30を左右に貫通する中空部分(流路)を区画する略円筒形状に形成されている。
【0048】
機器収容部形成部32は、収容部130の機器収容部132に対応する部分である。すなわち、機器収容部形成部32は、収容部形成部30の上側部分を構成する。
図1、
図6(a)及び
図7に示すように、機器収容部形成部32は、上方に向けて開口する略箱形状に形成される。また、
図1及び
図4に示すように、機器収容部形成部32は、平面視において、略矩形状に形成される。機器収容部形成部32の左右寸法及び前後寸法は、弁体収容部形成部12の各寸法よりも大きく形成されている。機器収容部形成部32は、区画部形成部33及び壁部形成部34を具備する。
【0049】
区画部形成部33は、機器収容部132の区画部133に対応する部分である。区画部形成部33は、機器収容部形成部32の側壁を構成する。
図1に示すように、区画部形成部33の上端部には、水平方向に延びる鍔部が形成されている。
【0050】
壁部形成部34は、機器収容部132の壁部134に対応する部分である。壁部形成部34は、機器収容部形成部32の底部を構成する。また、壁部形成部34は、流路部形成部31と区画部形成部33(区画部形成部33の内部)とを区画する。壁部形成部34は、孔部34aを具備する。
【0051】
孔部34aは、壁部形成部34を上下方向に貫通する孔である。孔部34aは、壁部形成部34の平面視略中央に形成される。孔部34aは、流路部形成部31と区画部形成部33とを連通する。孔部34aは、壁部134の挿通孔134aに対応する位置に形成される。孔部34aの内径は、挿通孔134a(
図8を参照)の内径よりも小さい寸法に形成可能である。
【0052】
図9に示すように、壁部形成部34に孔部34aを形成したことで、消失模型1を鋳物砂に埋め込んだ場合に、当該孔部34aを介して流路部形成部31側と区画部形成部33側との鋳物砂を連続させることができる。また、消失模型1を用いた鋳造を行った場合、鋳造直後の弁箱100の壁部134には、孔部34aに対応する孔(鋳抜き孔)が形成される。本実施形態においては、上記孔を利用して、挿通孔134aを形成することができる。具体的には、上記孔部34aに対応する孔に対して切削加工等の加工を施すことで、挿通孔134aを形成することができる。
【0053】
図10に示す第一接合面35は、継手形成部20の接合面21に対して接合される面である。本実施形態では、第一接合面35が右方を向くように、収容部形成部30を配置している。
【0054】
第二接合面36は、弁本体形成部10の接合面13に対して接合される面である。本実施形態では、第二接合面36が左方を向くように、収容部形成部30を配置している。
【0055】
上記消失模型1は、弁本体形成部10、継手形成部20及び収容部形成部30の各接合面(接合面13、接合面21、第一接合面35及び第二接合面36)同士を接合(接着)して各部を一体化することで、弁箱100に対応した形状に形成される。
【0056】
上述の如き消失模型1によれば、収容部130を有する弁箱100を好適に製造することができる。すなわち、仮に壁部形成部34に孔部34aを形成しない場合、上記壁部形成部34の周辺部分は、流路部形成部31側と区画部形成部33側との間において鋳物砂が不連続となり、鋳物砂の振動充填や、減圧による砂圧によって変形や割れ等が発生し易くなる。
【0057】
一方、本実施形態に係る消失模型1では、壁部形成部34に孔部34aを形成することで、当該孔部34aを介して流路部形成部31側と区画部形成部33側の鋳物砂が連続することになる。これによって、砂圧による消失模型1(特に、
図9において一点鎖線で囲んだ壁部形成部34の周辺部分)の変形や割れ等を防止することができる。また、本実施形態では、上記孔部34aを消失模型1に設けたことで形成される壁部134の孔を活用して、センサ3を挿通可能な挿通孔134aを形成することができる。
【0058】
また、本実施形態では、継手形成部20の接合面21を、弁本体形成部10及び収容部形成部30のいずれにも接合可能に形成している。これにより、消失模型1(弁本体形成部10、継手形成部20及び収容部形成部30)の汎用性を向上させることができる。具体的には、継手形成部20が弁本体形成部10及び収容部形成部30のいずれにも接合することができるため、例えば収容部形成部30を用いることなく、弁本体形成部10の左右両側に継手形成部20を直接接合することで、収容部130がない弁箱100を製造可能な消失模型を形成することもできる。
【0059】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0060】
以下では、
図11から
図17までを参照して、本発明の第二実施形態について説明する。なお、以下の第二実施形態の説明では、第一実施形態との相違点について説明し、共通する構成については、適宜説明を省略する。
【0061】
第二実施形態に係る消失模型1Aは、収容部形成部30を2つ備えている点で、第一実施形態に消失模型1とは異なる。
図11、
図12、
図14、
図15及び
図17に示すように、消失模型1Aは、弁本体形成部10の左右方向両側に、それぞれ収容部形成部30が設けられている。一対の収容部形成部30は、互いに左右対称に配置される。また、一対の収容部形成部30には、それぞれ継手形成部20が設けられている。
【0062】
消失模型1Aは、
図10に示す第一実施形態の消失模型1を構成する部分(弁本体形成部10、継手形成部20及び収容部形成部30)と同様な部分を組み合わせて形成することができる。具体的には、弁本体形成部10の左右方向両側の接合面13に、それぞれ収容部形成部30の第二接合面36を接合する。また、一対の収容部形成部30の第一接合面35に、それぞれ継手形成部20の接合面21を接合する。このように、本実施形態によれば、消失模型1と共通の部分(弁本体形成部10、継手形成部20及び収容部形成部30)を用いて、一対の収容部形成部30を有する消失模型1Aを形成することができ、各部分の汎用性を向上させることができる。
【0063】
図17に示すように、本実施形態においては、一対の収容部形成部30の各壁部形成部34に孔部34aを形成したことで、第一実施形態と概ね同様、鋳造を行う際の砂圧による消失模型1Aの変形や割れ等を防止することができる。
【0064】
上述の如き消失模型1Aによれば、弁本体部110の左右方向両側にそれぞれ(一対の)収容部130を設けた弁箱を鋳造により一体成型することができる。上記弁箱によれば、一対の収容部130のそれぞれに計測機器(センサ3等)を収容することができる。これにより、例えば各収容部130に同じ種類の計測機器を設けて、弁体2の上流側及び下流側の情報(例えば圧力やカメラの映像等)をそれぞれ取得することができる。また、例えば各収容部130に互いに異なる複数の計測機器を設けて、異なる種類の複数の情報(例えば流速及び水質等)を取得することができる。
【0065】
以上の如く、本実施形態に係る弁箱用の消失模型1、1Aは、
鋳型4内に配置され、溶湯と置換されることで弁箱100を製造可能な弁箱用の消失模型1、1Aであって、
弁体2を収容可能な弁本体部110に対応する弁本体形成部10と、
継手120に対応する継手形成部20と、
前記弁本体形成部10と前記継手形成部20との間に配置され、計測機器(センサ3)を収容可能な収容部130に対応する収容部形成部30と、
を具備するものである。
【0066】
このように構成することにより、センサ3を収容可能な収容部130を有する弁箱100を好適に製造することができる。具体的には、消失模型1、1Aを用いることで、弁本体部110、継手120及び収容部130を有する弁箱100を鋳造により一体的に製造することができる。
【0067】
また、前記収容部形成部30は、
流体(水)が流通する流路部131に対応する流路部形成部31と、
前記流路部131と区画される区画部133に対応する区画部形成部33と、
前記流路部131と前記区画部133とを区画する壁部134に対応する壁部形成部34と、
を具備し、
前記壁部形成部34は、
前記流路部形成部31と前記区画部形成部33とを連通する孔部34aを具備しているものである。
【0068】
このように構成することにより、センサ3を収容可能な収容部130を有する弁箱100を好適に製造することができる。具体的には、壁部形成部34に孔部34aを形成することで、当該孔部34aを介して流路部形成部31側と区画部形成部33側の鋳物砂が連続することになる。これによって、砂圧による消失模型1、1A(特に、壁部形成部34の周辺部分)の変形や割れ等を防止することができる。
【0069】
また、前記弁本体形成部10、前記継手形成部20、及び、前記収容部形成部30は、互いに接合されており、
前記継手形成部20は、
前記弁本体形成部10及び前記収容部形成部30のいずれにも接合可能な接合面21を有しているものである。
【0070】
このように構成することにより、消失模型1、1A(弁本体形成部10、継手形成部20、及び、収容部形成部30)の汎用性を向上させることができる。具体的には、継手形成部20が弁本体形成部10及び収容部形成部30のいずれにも接合することができるため、例えば収容部形成部30を用いることなく弁本体形成部10の左右両側に継手形成部20を直接接合することで、収容部130がない弁箱を製造可能な消失模型を形成することもできる。
【0071】
また、本実施形態によれば、弁本体形成部10、継手形成部20及び収容部形成部30を用いて、一対の収容部形成部30を備える消失模型1Aを形成することもできる。
【0072】
なお、本実施形態に係るセンサ3は、本発明に係る計測機器の実施の一形態である。
【0073】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、上記各実施形態で示した消失模型1、1Aの各部(弁本体形成部10、継手形成部20及び収容部形成部30)の具体的な構成は一例であり、上記各部の形状等は任意に変更することができる。
【0075】
また、上記各実施形態では、収容部形成部30が1つの消失模型1と、収容部形成部30が2つの消失模型1Aと、を示したが、本発明はこれに限るものではない。消失模型1を構成する各部の数は適宜設定可能である。
【0076】
また、上記各実施形態では、互いに別体に形成された弁本体形成部10、継手形成部20及び収容部形成部30を接合して消失模型1、1Aを形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、消失模型1、1Aの各部を一体的に形成してもよい。
【0077】
また、上記各実施形態では、弁箱100の収容部130に、計測機器を直接的に収容した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、流路部131を流通する水を取水可能な取水装置を収容部130に設けて、収容部130の外部に配置された計測機器を取水装置に接続することで、収容部130に計測機器を間接的に収容するようにしてもよい。
【0078】
また、上記各実施形態では、弁箱100(バルブ装置)を水道管に接続するものとしたが、弁箱100(バルブ装置)の適用対象は水道管に限定されるものではなく、種々の設備に適用可能である。また、弁箱100を流通する流体は、水に限定されるものではなく、種々の流体を適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 消失模型
10 弁本体形成部
20 継手形成部
30 収容部形成部