(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174723
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】店舗内空気調和機の運転制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/65 20180101AFI20241210BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20241210BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20241210BHJP
F24F 130/20 20180101ALN20241210BHJP
F24F 120/20 20180101ALN20241210BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/64
F24F11/72
F24F130:20
F24F120:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092707
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】中島 佑介
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA08
3L260AB02
3L260BA23
3L260BA74
3L260CA08
3L260CA34
3L260EA07
3L260EA27
3L260FA02
3L260FB01
3L260HA01
(57)【要約】
【課題】日射に起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することが可能な店舗内空気調和機の運転制御システムを提供する。
【解決手段】この店舗内空気調和機の運転制御システム100では、店舗内制御装置3は、日射量取得部7において取得された日射量と、店舗内の快適性の指標値とに基づいて、店舗内空気調和機1の運転を切り替える制御を行うように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
店舗内に配置されるとともに、冷房運転と暖房運転と送風運転と停止とが切り替え可能な空気調和機と、
店舗に配置される、日射量を取得する日射量取得部と、
前記空気調和機の運転モードを切り替える制御部と、を備え、
前記制御部は、前記日射量取得部において取得された日射量と、店舗内の快適性の指標値とに基づいて、前記空気調和機の運転を切り替える制御を行うように構成されている、店舗内空気調和機の運転制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記日射量取得部において取得された日射量に基づいて、前記空気調和機の送風運転と停止とを切り替える快適性の指標値の境界値をシフトする制御を行うように構成されている、請求項1に記載の店舗内空気調和機の運転制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記日射量取得部において取得した日射量が第1所定値以下である場合、または、前記日射量取得部において取得した日射量が前記第1所定値よりも大きい第2所定値以上である場合に、前記空気調和機の送風運転と停止とを切り替える快適性の指標値の境界値をシフトする制御を行うように構成されている、請求項2に記載の店舗内空気調和機の運転制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記日射量取得部において取得した日射量が前記第1所定値以下である場合に、前記空気調和機の停止と店舗内の室温を上昇させるための送風運転である暖房運転寄りの送風運転とを切り替える快適性の指標値の境界値を暖房運転側にシフトさせて、前記空気調和機を停止させる快適性の指標値の範囲を大きくする制御を行うように構成されている、請求項3に記載の店舗内空気調和機の運転制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記空気調和機の停止と暖房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を暖房運転側にシフトさせることにより、前記空気調和機を停止させる快適性の指標値の範囲と暖房運転寄りの送風運転を行う快適性の指標値の範囲とが重複する場合は、暖房運転寄りの送風を行わずに、前記空気調和機を停止させる制御を行うように構成されている、請求項4に記載の店舗内空気調和機の運転制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記日射量取得部において取得した日射量が前記第2所定値以上である場合に、前記空気調和機の停止と店舗内の室温を低下させるための送風運転である冷房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を停止側にシフトさせて、冷房運転寄りの送風運転を行う快適性の指標値の範囲を大きくする制御を行うように構成されている、請求項3に記載の店舗内空気調和機の運転制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記日射量取得部において取得した日射量が前記第2所定値以上であって、所定時間範囲内に快適性の指標値が小さくなることが予測される場合は、前記空気調和機の停止と冷房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を停止側にシフトさせる制御を行わないように構成されている、請求項6に記載の店舗内空気調和機の運転制御システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記空気調和機の暖房運転を開始した場合に、暖房運転と暖房運転寄りの送風運転とが短時間に切り替わることを抑制するために、暖房運転と暖房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を暖房運転寄りの送風側にシフトする制御を行うように構成されている、請求項4に記載の店舗内空気調和機の運転制御システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記空気調和機の冷房運転を開始した場合に、冷房運転と冷房運転寄りの送風運転とが短時間に切り替わることを抑制するために、冷房運転と冷房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を冷房運転寄りの送風側にシフトする制御を行うように構成されている、請求項6に記載の店舗内空気調和機の運転制御システム。
【請求項10】
前記日射量取得部は、店舗に設けられる日射計または太陽光発電機の少なくとも一方を含み、
前記制御部は、前記日射計の測定値または前記太陽光発電機の発電量と、店舗内の快適性の指標値とに基づいて、前記空気調和機の運転を切り替える制御を行うように構成されている、請求項1に記載の店舗内空気調和機の運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、店舗内空気調和機の運転制御システムに関し、特に、空気調和機の運転を行う店舗内空気調和機の運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の運転を行う店舗内空気調和機の運転制御システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、空調負荷を予測する空調負荷予測装置と、空調負荷予測装置で予測された空調負荷に基づいて空調制御を行うビルコントローラとを備えるビル制御装置が開示されている。空調負荷予測装置は、ビル内環境設定値と、空調負荷データと、カレンダ情報とに基づいて、暑い場合は数値が大きくなるとともに寒い場合は数値が小さくなる快適性の指標値(PMV値)を算出し、快適性を維持できる範囲内での省エネルギーを意図した空調負荷を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているように快適性の指標値に基づいて空気調和機(空調)の運転を制御する場合、快適性の指標値を算出するための値には日射量が含まれていないため、日射量とは関係なく快適性が維持できるように空気調和機が制御される。この場合に、室温が大きく上昇すると、快適性の指標値が変化し空気調和機の運転が制御されるが、日射による室温の上昇は緩やかな上昇であるため、日射量が大きくなってから室温が大きく上昇するまでの時間が掛かり、快適性の指標値に反映されるまでの時間が掛かる。このため、日射量が大きく、人が暑さを感じやすくなる場合であっても、快適性の指標値に反映されて快適性を維持するように空気調和機の運転が制御されるまでの時間が掛かる分、快適性が損なわれるという問題点がある。また、室温が大きく低下すると、快適性の指標値が変化し空気調和機の運転が制御されるが、日射量が小さくなったことに起因する室温の低下は、緩やかな低下であるため、日射量が小さくなってから快適性の指標値に反映されるまでの時間が掛かる。このため、日射量が小さくなり、人が寒さを感じやすくなる場合であっても、快適性の指標値に反映されて快適性を維持するように空気調和機の運転が制御されるまでの時間が掛かる分、快適性が損なわれるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、日射に起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することが可能な空気調和機の運転システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による店舗内空気調和機の運転制御システムは、店舗内に配置されるとともに、冷房運転と暖房運転と送風運転と停止とが切り替え可能な空気調和機と、店舗に配置される、日射量を取得する日射量取得部と、空気調和機の運転モードを切り替える制御部と、を備え、制御部は、日射量取得部において取得された日射量と、店舗内の快適性の指標値とに基づいて、空気調和機の運転を切り替える制御を行うように構成されている。
【0008】
この発明の一の局面による店舗内空気調和機の運転制御システムでは、上記のように、制御部は、日射量取得部において取得された日射量と、店舗内の快適性の指標値とに基づいて、空気調和機の運転を切り替える制御を行うように構成されている。これにより、快適性の指標値に加えて、日射量に基づいて空気調和機の運転が切り替わるため、たとえば、日射量が大きく、室温が徐々に上昇することにより暑さを感じやすくなる場合に、予め送風運転により風を送ることによって室温を下げて、涼しく感じさせることができるため、快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。また、日射量が小さくなり、店舗内の温度が徐々に低下することにより寒さを感じやすくなる場合に、予め空気調和機の運転を停止させることにより、空気調和機から吹き出される風に起因して寒さを感じることを抑制することができるため、快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。これらの結果、日射に起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による店舗内空気調和機の運転制御システムにおいて、好ましくは、制御部は、日射量取得部において取得された日射量に基づいて、空気調和機の送風運転と停止とを切り替える快適性の指標値の境界値をシフトする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、日射量に応じて空気調和機の送風運転と停止とのうち快適性の指標値を損なうことを効果的に抑制することができる最適な空気調和機の運転が行えるように、空気調和機の送風運転と停止とを切り替える快適性の指標値の境界値をシフトすることができるため、日射に起因して日射熱が得られない条件下において送風の風量によって生じる店舗内の快適性が損なわれることをより効果的に抑制することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、制御部は、日射量取得部において取得した日射量が第1所定値以下である場合、または、日射量取得部において取得した日射量が第1所定値よりも大きい第2所定値以上である場合に、空気調和機の送風運転と停止とを切り替える快適性の指標値の境界値をシフトする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、たとえば、送風運転によって空気を送ることに起因して人が寒さを感じやすくなるため、停止したほうが好ましい境界の日射量を第1所定値に設定することによって、第1所定値以下の日射量が小さい場合に、空気調和機を停止させて、快適性を向上させることができる。また、たとえば、停止運転よりも送風運転を行って風を送ることによって人が涼しさを感じやすくなる境界の日射量を第2所定値に設定することにより、第2所定値以上の日射量が大きい場合に、送風運転を積極的に行って快適性を向上させることができる。これらの結果、日射量が大きい場合と、日射量が小さい場合との両方において、快適性の指標値を損なわないように空気調和機を運転することができるため、日射に起因して店舗内の快適性が損なわれることをより効果的に抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による店舗内空気調和機の運転制御システムにおいて、好ましくは、制御部は、日射量取得部において取得した日射量が第1所定値以下である場合に、空気調和機の停止と店舗内の室温を上昇させるための送風運転である暖房運転寄りの送風運転とを切り替える快適性の指標値の境界値を暖房運転側にシフトさせて、空気調和機を停止させる快適性の指標値の範囲を大きくする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、空気調和機を停止させる快適性の指標値の範囲を大きくする制御を行うように構成されていることにより、日射量が第1所定値以下と低いことに起因して寒さを感じやすい場合に、空気調和機の送風運転を積極的に停止させることができるため、空気調和機から吹き出される風に起因して人が寒さを感じることを抑制することができる。この結果、日射量が小さいことに起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。また、空気調和機を停止させることにより、消費電力量の増加を抑制することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、制御部は、空気調和機の停止と暖房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を暖房運転側にシフトさせることにより、空気調和機を停止させる快適性の指標値の範囲と暖房運転寄りの送風運転を行う快適性の指標値の範囲とが重複する場合は、暖房運転寄りの送風を行わずに、空気調和機を停止させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、日射量が第1所定値以下である場合は、空気調和機から吹き出される風により寒さを感じやすくなる場合があるため、空気調和機の送風運転を行わず停止させることにより人が寒さを感じることを抑制することができる。また、送風運転を行わないことにより、停止運転から加熱された空気を送風する暖房運転に切り替えることができるため、停止運転から空気を加熱せずに送風する送風運転に切り替える場合と比べて、人が温かさを感じやすくなる。これらの結果、日射量が小さいことに起因して店舗内の快適性が損なわれることをより効果的に抑制することができる。
【0013】
上記一の局面において、好ましくは、制御部は、日射量取得部において取得した日射量が第2所定値以上である場合に、空気調和機の停止と店舗内の室温を低下させるための送風運転である冷房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を停止側にシフトさせて、冷房運転寄りの送風運転を行う快適性の指標値の範囲を大きくする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、日射量が大きく日射によって人が暑さを感じやすい場合に、送風運転により積極的に風を送ることができるため、人が涼しさを感じやすくなる。この結果、日射量が大きいことに起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0014】
上記一の局面による店舗内空気調和機の運転制御システムにおいて、好ましくは、制御部は、日射量取得部において取得した日射量が第2所定値以上であって、所定時間範囲内に快適性の指標値が小さくなることが予測される場合は、空気調和機の停止と冷房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を停止側にシフトさせる制御を行わないように構成されている。このように構成すれば、日射量取得部において取得した日射量が第2所定値以上であって、所定時間範囲内に快適性の指標値が小さくなることが予測される場合は、快適性の指標値を小さくするために送風運転を積極的に行う必要がないため、送風運転を停止させることにより、空気調和機の消費電力量の増加を抑制することができる。
【0015】
上記一の局面による店舗内空気調和機の運転制御システムにおいて、好ましくは、制御部は、空気調和機の暖房運転を開始した場合に、暖房運転と暖房運転寄りの送風運転とが短時間に切り替わることを抑制するために、暖房運転と暖房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を暖房運転寄りの送風側にシフトする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、暖房運転を開始した直後は店舗内の温度を設定温度に調整するまでに時間がかかる場合があるため、暖房運転と暖房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を暖房運転寄りの送風側にシフトすることにより、空気調和機の運転が短時間に切り替わることを抑制することができる。ここで、空気調和機を停止から運転に切り替える場合、コンプレッサを運転させることにより消費電力量が大きくなるため、空気調和機の運転が短時間に切り替わることを抑制することによって、消費電力量の増加を抑制することができる。
【0016】
上記一の局面による店舗内空気調和機の運転制御システムにおいて、好ましくは、制御部は、空気調和機の冷房運転を開始した場合に、冷房運転と冷房運転寄りの送風運転とが短時間に切り替わることを抑制するために、冷房運転と冷房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を冷房運転寄りの送風側にシフトする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、冷房運転を開始した直後は店舗内の温度を設定温度に冷却する時間がかかる場合があるため、冷房運転と冷房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を冷房運転寄りの送風側にシフトすることにより、空気調和機の運転が短時間に切り替わることを抑制することができる。ここで、空気調和機を停止から運転に切り替える場合、コンプレッサを運転させることにより消費電力量が大きくなるため、空気調和機の運転が短時間に切り替わることを抑制することによって、消費電力量の増加を抑制することができる。
【0017】
上記一の局面による店舗内空気調和機の運転制御システムにおいて、好ましくは、日射量取得部は、店舗に設けられる日射計または太陽光発電機の少なくとも一方を含み、制御部は、日射計の測定値または太陽光発電機の発電量と、店舗内の快適性の指標値とに基づいて、空気調和機の運転を切り替える制御を行うように構成されている。このように構成すれば、日射計の測定値または太陽光発電機の発電量とから測定された日射量に基づいて、日射に起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、日射に起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することが可能な空気調和機の運転制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態による運転制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態による空気調和機および熱供給排気機器を店舗内に配置した店舗を示す上面図である。
【
図3】快適性の指標値と空気調和機の運転と制御部の判定との関係を示す図である。
【
図4】快適性の指標値と、店舗内温度を設定温度にするための必要加熱量または必要冷却量との関係を示すグラフである。
【
図5】日射量が第1所定値以下の場合の快適性の指標値と空気調和機の運転と制御部の判定との関係を示す図である。
【
図6】日射量が第1所定値以下の場合の快適性の指標値と空気調和機の運転との関係を示すグラフである。
【
図7】日射量が第2所定値以上の場合の快適性の指標値と空気調和機の運転と制御部の判定との関係を示す図である。
【
図8】日射量が第2所定値以上の場合の快適性の指標値と空気調和機の運転との関係を示すグラフである。
【
図9】暖房運転開始時の快適性の指標値と空気調和機の運転と制御部の判定との関係を示す図である。
【
図10】暖房運転開始時の快適性の指標値と空気調和機の運転との関係を示すグラフである。
【
図11】冷房運転開始時の快適性の指標値と空気調和機の運転と制御部の判定との関係を示す図である。
【
図12】冷房運転開始時の場合の快適性の指標値と空気調和機の運転との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[実施形態]
図1および
図2を参照して、一実施形態による店舗内空気調和機1の運転制御システム100の構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、店舗内空気調和機1の運転制御システム100は、店舗内空気調和機1と、複数の店舗内熱供給排出機器2と、店舗内制御装置3とを備える。店舗内空気調和機1の運転制御システム100は、店舗内制御装置3により、店舗内空気調和機1を制御して、店舗50内を冷却または加熱するために用いられる。なお、店舗内制御装置3は、特許請求の範囲に記載した「制御部」の一例である。店舗内空気調和機1は、特許請求の範囲に記載した「空気調和機」の一例である。
【0023】
図2に示すように、店舗内空気調和機1は、店舗50内の天井に複数配置される。実施形態では、3台設けられている。店舗内空気調和機1は、図示しない熱交換器を含み、外部空気を加熱または冷却し、加熱または冷却された外部空気と、室内空気との間で熱交換を行うことにより、店舗50内の空気を加熱または冷却する。なお、
図2では、天井側をZ1とし、床側をZ2とする。また、天井および壁に配置される機器は実線で表し、床に配置される機器は破線で表す。
図2は、店舗50内の配置を模式的に示している。
【0024】
店舗内空気調和機1は、室内機と、室外機と、リモコンとを含む。室内機は、店舗50内の空気を吸い込みまたは吐出し、目標とする温湿度に制御するためのユニットである。店舗内空気調和機1は、店舗50内の空気を吸い込む店舗内空気吸い込み口と、店舗50内に空気を吐出する店舗内吐出口とを含む。室外機は、主に店舗50の外に配置され、室内機と冷媒配管を通して接続されている。室外機は、封入された冷媒を圧縮、凝縮または蒸発することで室内機が目標とする冷媒温度および冷媒状態で送出するとともに、使用後の冷媒を循環回収するサイクル運転を行うためのユニットである。リモコンは、店舗内空気調和機1の運転を制御するための外部入力と表示手段とを備える。店舗内空気調和機1は、店舗50内を冷却する冷房運転と、店舗50内を加熱する暖房運転と、店舗50内に送風し、空気を循環させる送風運転と、停止とが切り替え可能である。
【0025】
図1および
図2に示すように、複数の店舗内熱供給排出機器2は、ショーケース2aと、正圧化空調機2bと、外気導入空調機2cと、デシカント空調機2dと、照明2eと、換気扇2fとを含む。店舗内熱供給排出機器2は、店舗50内に対する熱の供給、店舗50内から外部に熱を排出、または吸熱のうち少なくとも1つを行う機器である。なお、店舗50には、ショーケース2a以外に、熱量の増減に略関与しない陳列棚15が配置されている。なお、熱量の増減に関与する店舗内熱供給排出機器2と、熱量の増減に略関与しない陳列棚15などをまとめて店舗内機器とする。
【0026】
ショーケース2aは、冷蔵ショーケースと、冷凍ショーケースとを含む。ショーケース2aは、運転モードとして冷却運転と、加熱運転と、除霜運転と、停止とが行われる。ショーケース2aは、図示しない冷媒が循環する冷凍サイクルを含む。また、ショーケース2aは、冷凍サイクルの一部である、主に冷媒を圧縮および送出するためのコンプレッサを内蔵したショーケース室外機が別となっている別置型ショーケースと、コンプレッサが内蔵されている内蔵型ショーケースとを含む。ショーケース2aは、冷媒の蒸発熱により冷却されるとともに、ヒータまたは冷媒の凝縮熱を使用し加熱される。
【0027】
別置型ショーケースは、冷却(チルド)状態と、常温状態と、加熱状態とを切り替えることができる什器である。この場合、冷却または常温の温度を向上させるために冷却が行われるとともに、常温、加熱の温度を向上させるために加熱が行われる。また、棚ごとに気流を管理する(棚ごとに冷却状態と加熱状態とを分ける)構造を持つものもあり、冷却状態と加熱状態とを混在させる機器もある。
【0028】
別置型ショーケースは、別置型リーチインショーケースと、別置型ウォークインショーケースとを含む。別置型リーチインショーケースは、主にガラスドアで密閉されたショーケースであり、ガラスドアを開けて商品が補充される。また、別置型リーチインショーケースでは、冷蔵、冷凍温度帯の機器がある。温度を向上させるために冷却を行う。
【0029】
別置型ウォークインショーケースとは、冷却された室内に人が入り、商品の保管および補充を行うことができるプレハブ配置型のショーケースである。
【0030】
内蔵型ショーケースは、内蔵型リーチインケースと、内蔵型アイスケースとを含む。内蔵型リーチインケースと、内蔵型アイスケースとは、別置型リーチインショーケースと同様に、主にガラスドアで密閉されたショーケースであり、ガラスドアを開けて商品が補充される。
【0031】
正圧化空調機2bは、店舗50内を外部に対して正圧(圧力が高い)状態にし、外気が侵入しないようにするための装置である。正圧化空調機2bは、店舗内制御装置3により設定目標値になるように回転数を制御される。
【0032】
外気導入空調機2cは、ファンを駆動させて店舗50内に強制的に外気を導入するための装置である。外気導入空調機2cは、店舗内制御装置3により風量、風向、およびファンの回転数を制御される。
【0033】
デシカント空調機2dは、吸湿材を介して外気または店舗50内の空気を除湿して、店舗50内に放出する装置である。店舗内制御装置3は、店舗50内の現在湿度と、店舗50内の目標湿度との差によりデシカント空調機2dの運転強度を決定する制御を行う。
【0034】
照明2eは、店舗50内に設けられる。照明2eは、たとえば、LED(Light Emitting Diode)を含む。
【0035】
換気扇2fは、ファンを使用して店舗50内の空気を強制排気する。
【0036】
図1および
図2に示すように、店舗内制御装置3は、オンライン環境においてクラウドと組み合わせるシステムでも良い。店舗内制御装置3は、通信手段と、受信した値を記憶するメモリ部と、演算部とを含む。店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1と、店舗内熱供給排出機器2とを制御する。店舗内制御装置3は、店舗50内に配置されている店舗内空気調和機1と、店舗内熱供給排出機器2と相互の通信可能である。店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1と店舗内熱供給排出機器2とから、現在の状態を取得するとともに、取得した状態に基づき、店舗内空気調和機1と店舗内熱供給排出機器2とに指令を行う。
【0037】
また、店舗内制御装置3は、インターネット網または専用の通信手段のいずれかである通信網40により上位端末と連携することにより上位サーバ20との情報伝達、指令値の受信を行う。店舗内制御装置3は、上位サーバ20からの指令に応じて、店舗内空気調和機1と、店舗内熱供給排出機器2とから、現在の状態を取得するとともに、取得した状態に基づき、店舗内空気調和機1と店舗内熱供給排出機器2とに指令を行う。店舗内制御装置3は、たとえば、制御端末である。たとえば、店舗内制御装置3は、各ショーケース2aに設定された目標温度と現在庫内温度値を比較してショーケース2aの内部の冷却または加熱を行う。
【0038】
図1および
図2に示すように、店舗内制御装置3は、通信網40によって時計サーバ30と通信する。また、店舗内制御装置3は、店舗内温湿度計4と、店舗外温湿度計5と、カーテン6と、日射量取得部7と、電力量計8と、出入り検出用センサ9と、伝導熱検出用センサ10とを制御する。
【0039】
店舗内温湿度計4は、店舗50内に設けられ、店舗50内の温度および湿度を計測する。店舗内温湿度計4で測定された店舗50内温度および店舗50内外湿度のデータは、店舗内制御装置3と送信される。店舗内温湿度計4は、店舗内温度の偏りおよび気流の影響が小さい場所で、かつ、人の高さに配置される。たとえば、店舗内温湿度計4は、人の滞留の大きい会計場所13の近く、または、日射の影響を受けやすい窓側、または、冷気による影響が受けやすいショーケース2aの近くに配置される。会計場所13とは、キャッシュレジスターが配置されている場所である。
【0040】
店舗外温湿度計5は、店舗50外に設けられ、店舗50外の温度および湿度を計測する。店舗外温湿度計5で測定された店舗50外温度および店舗50外湿度のデータは、店舗内制御装置3と送信される。店舗外温湿度計5は、直射日光の影響を受けない箇所に配置される。
【0041】
カーテン6は、店舗50の窓に取り付けられている。カーテン6は、日射による店舗50内への熱影響を低減するように配置される。店内訴求効果の向上のため、遮光が不要な場合には、カーテン6は開状態にされる。カーテン6は、たとえば、ロールカーテンであり、巻取り部は天井側(上部)に配置される。カーテン6は、自動で巻き取られた開状態と、延ばされた閉状態とが切り替えられる。カーテン6の巻取り部の近傍にスイッチが設けられており、店舗内制御装置3は、スイッチにより開状態または閉状態のいずれの状態かを検知する。カーテン6は、手動で開状態と閉状態とを切り替えられてもよく、店舗内制御装置3が、カーテン6の状態を切り替える制御を行ってもよい。また、巻取り部は床部(下部)に配置しても良い。また、カーテン6は、横開きのカーテンでもよい。また、カーテンの開閉としてブラインドの開閉またはスライドを用いてもよい。
【0042】
日射量取得部7は、店舗50内に差し込む日射量を取得する装置である。日射量取得部7で検出された日射量は、店舗内制御装置3に送信される。日射量取得部7は、たとえば、日射計または太陽光発電機のうち少なくとも一方を含む。
【0043】
電力量計8は、店舗内熱供給排出機器2の電力量を計測するための計測器である。電力量計8は、店舗内熱供給排出機器2の運転状態を検出し、熱量の導出量の算出、または各機器の運転状態のデータを作成するために使用される。電力量計8で検出された電力量は、店舗内制御装置3に送信される。
【0044】
出入り検出用センサ9は、たとえば、人感センサまたはカメラである。出入り検出用センサ9は、店舗50内に流出入する人と、店舗50内を移動する人と、店舗50内に滞留する人とを検出するために用いられる。出入り検出用センサ9の検出結果は、店舗内制御装置3に送信される。
【0045】
伝導熱検出用センサ10は、店舗50内に流入する熱量、および店舗50内から放出される熱量を検出するための検出部である。伝導熱検出用センサ10の検出結果は、店舗内制御装置3に送信される。
【0046】
(店舗内制御装置3の制御)
店舗内制御装置3は、日射量取得部7において取得された日射量と、店舗内の快適性の指標(PMV値)とに基づいて、店舗内空気調和機1の運転を切り替える。快適性の指標は、PMV値(Predicted Mean Vote)である。
【0047】
PMV値は、店舗50内の温度と、相対湿度と、平均放射温度と、平均風速と、人の活動量と、人の着衣量とから得られる快適性の指標である。人の活動量と、人の着衣量とは予め設定されており、着衣量は、季節により異なる。たとえば、夏期は、0.5に設定し、冬期は、1.0に設定される。季節は、時計サーバ30から得られた情報に基づく。人の活動量は、立ち仕事が多い店舗50の場合は、座り仕事が多い仕事と比べて高く設定する。店舗50内の温度と、相対湿度とは、店舗内温湿度計4に基づいて取得される。店舗50内の平均放射温度は、店舗内温湿度計4などから得られる。
【0048】
PMV値は、快適を0とし、「やや暑い」を1とし、「暑い」を2とし、「非常に暑い」を3とする。また、「やや寒い」を-1とし、「寒い」を-2とし、「非常に寒い」を-3とする。正の値の場合、値が大きくなるにつれ不快に感じるものとする。また、負の値の場合、値が小さくなるにつれ不快に感じるものとする。
【0049】
日射量取得部7が、日射計の場合は、店舗内制御装置3は、測定値に基づいて日射量を取得する。日射量取得部7が、太陽光発電機の場合は、店舗内制御装置3は、発電量から日射量を取得する。
【0050】
図3に示すように、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1の運転を5段階で判定して、切り替える。たとえば、PMV値A1が0.5以上の場合に、判定1として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1を冷房運転に切り替える。PMV値A1が0.2以上0.5未満の場合に、判定2として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1を冷房運転寄りの送風運転に切り替える。PMV値A1が-0.2より大きく0.2未満の場合に、判定3として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1の運転を停止させる。PMV値A1が-0.5より大きく-0.2以下の場合に、判定4として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1を暖房運転寄りの送風運転に切り替える。PMV値A1が-0.5以下の場合に、判定5として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1を暖房運転に切り替える。なお、PMV値の境界値は、任意に設定される。店舗内制御装置3は、冷房運転と、暖房運転と、店舗内の室温を上昇させるための送風運転である暖房運転寄りの送風運転と、店舗内の室温を低下させるための送風運転である冷房運転寄りの送風運転とを行うように店舗内空気調和機1を制御する。
【0051】
図4に示すように、PMV値A1が-0.2より大きく0.2未満の場合、店舗内を快適にするために温度を上昇させるために必要な必要加熱量と、店舗内を快適にするために温度を低下させるために必要な必要冷却量とが0であるか、または0とみなすことができるため、店舗内は快適な状態である。そのため、店舗内空気調和機1を運転する必要がなく、店舗内空気調和機1の運転を停止する。また、PMV値が-0.5より大きく-0.2以下の場合と、0.2以上0.5未満の場合とは、必要加熱量または必要冷却量とがわずかにあるが、PMV値が0に近いためであるため、店舗内を温めるまたは冷却することを行わず送風運転を行う。PMV値が0.5以上の場合は、必要冷却量に応じて店舗内空気調和機1内において店舗内空気を冷却する温度を調整して、冷房運転を行う。PMV値が-0.5以下の場合は、必要加熱量に応じて店舗内空気調和機1内において店舗内空気を加熱する温度を調整して、暖房運転を行う。
図3および
図4に示す店舗内制御装置3の店舗内空気調和機1の運転を切り替える制御は、日射量が第1所定値より大きく第2所定値未満である場合に行われる制御である。
【0052】
図5および
図6に示すように、店舗内制御装置3は、日射量取得部7において取得した日射量が第1所定値以下である場合に、店舗内空気調和機1の停止と店舗内の室温を上昇させるための送風運転である暖房運転寄りの送風運転とを切り替える快適性の指標値の境界値を暖房運転側にシフトさせて、店舗内空気調和機1を停止させる快適性の指標値の範囲を大きくする制御を行う。具体的には、店舗内制御装置3は、第1シフト値に基づいて、店舗内空気調和機1の停止と店舗内の室温を上昇させるための送風運転である暖房運転寄りの送風運転とを切り替える快適性の指標値の境界値を暖房運転側にシフトさせる制御を行う。店舗内空気調和機1の運転制御システム100は、第1シフト値が固定値として設定されている。第1シフト値は、たとえば、-0.2であり、PMV値A1が-0.2に第1シフト値を加えた-0.4より大きく0.2未満の場合に、判定3として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1の運転を停止させる。また、PMV値A1が-0.5より大きく-0.2に第1シフト値を加えた-0.4以下の場合に、判定4として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1を暖房運転寄りの送風運転に切り替える。第1所定値は、たとえば、0を含み、店舗50内の温度に影響を与えないわずかな日射量である。
図6では、シフト前の境界値を一点鎖線で示し、シフト後の境界値を破線で示している。
【0053】
店舗内制御装置3は、空気調和機の停止と暖房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を暖房運転側にシフトさせることにより、空気調和機を停止させる快適性の指標値の範囲と暖房運転寄りの送風運転を行う快適性の指標値の範囲とが重複する場合は、暖房運転寄りの送風を行わずに、空気調和機を停止させる制御を行う。たとえば、第1シフト値が-0.3の場合、PMV値A1が-0.2に第1シフト値を加えた-0.5より大きく0.2未満の場合に、判定3として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1の運転を停止させる。この場合、判定4を行うPMV値の範囲と、判定3を行うPMV値の範囲とが重複するため、判定4に基づいて、暖房運転寄りの送風運転を行う制御は行わず、停止運転を行う。つまり、-0.5以下になると停止運転から暖房運転に切り替わる。また、店舗内制御装置3は、判定3に第1シフト値を加えた場合に、上限値と下限値とが同値になる場合は、その判定に基づく店舗内空気調和機1の運転を行わない。
【0054】
ここで、平均風速とPMVとの関係を説明する。店舗50内の温度を20℃とし、相対湿度を30%とし、平均放射温度を20℃とし、人の活動量を1.4metとし、人の着衣量を1.0cloとして、平均風速を変えた場合のPMV値を算出した。平均風速が、1.0m/sの場合、PMV値は、-0.66となった。平均風速が、0.5m/sの場合、PMV値は、-0.47となった。平均風速が、0m/sの場合、PMV値は、-0.04となった。店舗内空気調和機1の強風運転の平均風速を0.5m/sとすると、空調を停止した場合の平均風速0m/sと比べて、PMV値が0(快適)から離れる方向に小さくなることがわかる。そのため、店舗内空気調和機1から吹き出される風の平均風速により、PMV値に影響が及ぶことが分かる。
【0055】
図7および
図8に示すように、店舗内制御装置3は、日射量取得部7において取得した日射量が第2所定値以上である場合に、店舗内空気調和機1の停止と店舗内の室温を低下させるための送風運転である冷房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を停止側にシフトさせて、冷房運転寄りの送風運転を行う快適性の指標値の範囲を大きくする制御を行う。店舗内制御装置3は、第2シフト値に基づいて、店舗内空気調和機1の停止と店舗内の室温を低下させるための送風運転である冷房運転寄りの送風運転とを切り替える快適性の指標値の境界値を停止側にシフトさせる制御を行う。運転制御システム100は、第2シフト値が固定値として設定されている。第2シフト値は、たとえば、-0.2であり、PMV値A1が-0.2より大きく0.2に第2シフト値を加えた0未満の場合に、判定3として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1の運転を停止させる。また、PMV値A1が0.2に第3シフト値を加えた0以上0.5未満の場合に、判定2として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1を冷房運転寄りの送風運転に切り替える。第2所定値は、第1所定値よりも大きく、たとえば、店舗50内の空気の温度を5℃以上上昇させるような日射量である。
図8では、シフト前の境界値を一点鎖線で示し、シフト後の境界値を破線で示している。
【0056】
店舗内制御装置3は、判定3に第2シフト値を加えた場合に、上限値と下限値とが同値になる場合は、その判定に基づく店舗内空気調和機1の運転を行わない。
【0057】
店舗内制御装置3は、日射量取得部7において取得した日射量が第2所定値以上であって、所定時間範囲内に快適性の指標値が小さくなることが予測される場合は、空気調和機の停止と冷房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を停止側にシフトさせる制御を行わない。所定時間範囲内に快適性の指標値が小さくなることが予測される場合とは、たとえば、所定時間範囲内に日射量が低減するような場合であり、具体的には、所定時間範囲を1時間として、1時間後に日没を迎える場合、1時間後に天気が崩れる(晴れから曇りに変わる)と予測される場合などである。
【0058】
図9および
図10に示すように、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1の暖房運転を開始した場合に、暖房運転と暖房運転寄りの送風運転とが短時間に切り替わることを抑制するために、暖房運転と暖房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を暖房運転寄りの送風側にシフトする制御を行う。具体的には、第3シフト値を加えて、暖房運転と暖房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を暖房運転寄りの送風側にシフトする制御を行う。運転制御システム100は、第3シフト値が固定値として設定されている。第3シフト値は、たとえば、0.2であり、PMV値A1が-0.5に0.2を加えた-0.3以下の場合に、判定5として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1を暖房運転に切り替える。PMV値A1が-0.5に第3シフト値0.2を加えた-0.3以上-0.2以下の場合に、判定4として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1を暖房運転寄りの送風運転に切り替える。この場合、第3シフト値と合わせて運転時間を条件とし、または、第3シフト値とは別に運転時間を条件として、店舗内空気調和機1が長時間運転されないように調整してもよい。
図10では、シフト前の境界値を一点鎖線で示し、シフト後の境界値を破線で示している。
【0059】
図11および
図12に示すように、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1の冷房運転を開始した場合に、冷房運転と冷房運転寄りの送風運転とが短時間に切り替わることを抑制するために、冷房運転と冷房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を冷房運転寄りの送風側にシフトする制御を行うように構成されている。具体的には第4シフト値を引いて、暖房運転と暖房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を暖房運転寄りの送風側にシフトする制御を行う。運転制御システム100は、第4シフト値が固定値として設定されている。第4シフト値は、たとえば、0.2であり、PMV値A1が0.5に0.2を引いた0.3以上の場合に、判定1として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1を冷房運転に切り替える。PMV値A1が0.2以上0.5に0.2を引いた0.3未満の場合に、判定2として、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1を冷房運転寄りの送風運転に切り替える。この場合、第4シフト値と合わせて運転時間を条件とし、または、第4シフト値とは別に運転時間を条件として、店舗内空気調和機1が長時間運転されないように調整してもよい。
図12では、シフト前の境界値を一点鎖線で示し、シフト後の境界値を破線で示している。
【0060】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0061】
本実施形態では、上記のように、店舗内制御装置3は、日射量取得部7において取得された日射量と、店舗内の快適性の指標値とに基づいて、店舗内空気調和機1の運転を切り替える制御を行うように構成されている。これにより、快適性の指標値に加えて、日射量の大きさに基づいて店舗内空気調和機1の運転が切り替わるため、たとえば、日射量が大きく、室温が徐々に上昇することにより暑さを感じやすくなる場合に、予め送風運転により風を送ることによって室温を下げて、涼しく感じさせることができるため、快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。また、日射量が小さくなり、店舗内の温度が徐々に低下することにより寒さを感じやすくなる場合に、予め店舗内空気調和機1の運転を停止させることにより、空気調和機から吹き出される風に起因して寒さを感じることを抑制することができるため、快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。これらの結果、日射に起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、店舗内制御装置3は、日射量取得部7において取得された日射量に基づいて、店舗内空気調和機1の送風運転と停止とを切り替える快適性の指標値の境界値をシフトする制御を行うように構成されている。これにより、日射量に応じて店舗内空気調和機1の送風運転と停止とのうち快適性の指標値を損なうことを効果的に抑制することができる最適な店舗内空気調和機1の運転が行えるように、店舗内空気調和機1の送風運転と停止とを切り替える快適性の指標値の境界値をシフトすることができるため、日射に起因して日射熱が得られない条件下において送風の風量によって生じる店舗内の快適性が損なわれることをより効果的に抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、店舗内空気調和機1は、日射量取得部7において取得した日射量が第1所定値以下である場合、または、日射量取得部7において取得した日射量が第1所定値よりも大きい第2所定値以上である場合に、店舗内空気調和機1の送風運転と停止とを切り替える快適性の指標値の境界値をシフトする制御を行うように構成されている。これにより、たとえば、送風運転によって空気を送ることに起因して人が寒さを感じやすくなるため、停止したほうが好ましい境界の日射量を第1所定値に設定することによって、第1所定値以下の日射量が小さい場合に、店舗内空気調和機1を停止させて、快適性を向上させることができる。また、たとえば、停止運転よりも送風運転を行って風を送ることによって人が涼しさを感じやすくなる境界の日射量を第2所定値に設定することにより、第2所定値以上の日射量が大きい場合に、送風運転を積極的に行って快適性を向上させることができる。これらの結果、日射量が大きい場合と、日射量が小さい場合との両方において、快適性の指標値を損なわないように店舗内空気調和機1を運転することができるため、日射に起因して店舗内の快適性が損なわれることをより効果的に抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、店舗内制御装置3は、日射量取得部7において取得した日射量が第1所定値以下である場合に、店舗内空気調和機1の停止と店舗内の室温を上昇させるための送風運転である暖房運転寄りの送風運転とを切り替える快適性の指標値の境界値を暖房運転側にシフトさせて、店舗内空気調和機1を停止させる快適性の指標値の範囲を大きくする制御を行うように構成されている。これにより、店舗内空気調和機1を停止させる快適性の指標値の範囲を大きくする制御を行うように構成されていることにより、日射量が第1所定値以下と低いことに起因して寒さを感じやすい場合に、店舗内空気調和機1の送風運転を積極的に停止させることができるため、店舗内空気調和機1から吹き出される風に起因して人が寒さを感じることを抑制することができる。この結果、日射量が小さいことに起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。また、店舗内空気調和機1を停止させることにより、消費電力量の増加を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1の停止と暖房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を暖房運転側にシフトさせることにより、店舗内空気調和機1を停止させる快適性の指標値の範囲と暖房運転寄りの送風運転を行う快適性の指標値の範囲とが重複する場合は、暖房運転寄りの送風を行わずに、空気調和機を停止させる制御を行うように構成されている。これにより、日射量が第1所定値以下である場合は、店舗内空気調和機1から吹き出される風により寒さを感じやすくなる場合があるため、店舗内空気調和機1の送風運転を行わず停止させることにより人が寒さを感じることを抑制することができる。また、送風運転を行わないことにより、停止運転から加熱された空気を送風する暖房運転に切り替えることができるため、停止運転から空気を加熱せずに送風する送風運転に切り替える場合と比べて、人が温かさを感じやすくなるこれらの結果、日射量が小さいことに起因して店舗内の快適性が損なわれることをより効果的に抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、店舗内制御装置3は、日射量取得部7において取得した日射量が第2所定値以上である場合に、店舗内空気調和機1の停止と店舗内の室温を低下させるための送風運転である冷房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を停止側にシフトさせて、冷房運転寄りの送風運転を行う快適性の指標値の範囲を大きくする制御を行うように構成されている。これにより、日射量が大きく日射によって人が暑さを感じやすい場合に、送風運転により積極的に風を送ることができるため、人が涼しさを感じやすくなる。この結果、日射量が大きいことに起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、店舗内制御装置3は、日射量取得部7において取得した日射量が第2所定値以上であって、所定時間範囲内に快適性の指標値が小さくなることが予測される場合は、店舗内空気調和機1の停止と冷房運転寄りの送風とを切り替える快適性の指標値の境界値を停止側にシフトさせる制御を行わないように構成されている。これにより、日射量取得部7において取得した日射量が第2所定値以上であって、所定時間範囲内に快適性の指標値が小さくなることが予測される場合は、快適性の指標値を小さくするために送風運転を積極的に行う必要がないため、送風運転を停止させることにより、店舗内空気調和機1の消費電力量の増加を抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1の暖房運転を開始した場合に、暖房運転と暖房運転寄りの送風運転とが短時間に切り替わることを抑制するために、暖房運転と暖房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を暖房運転寄りの送風側にシフトする制御を行うように構成されている。これにより、暖房運転を開始した直後は店舗内の温度を設定温度に調整するまでに時間がかかる場合があるため、暖房運転と暖房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を暖房運転寄りの送風側にシフトすることにより、店舗内空気調和機1の運転が短時間に切り替わることを抑制することができる。ここで、店舗内空気調和機1を停止から運転に切り替える場合、コンプレッサを運転させることにより消費電力量が大きくなるため、店舗内空気調和機1の運転が短時間に切り替わることを抑制することによって、消費電力量の増加を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、店舗内制御装置3は、店舗内空気調和機1の冷房運転を開始した場合に、冷房運転と冷房運転寄りの送風運転とが短時間に切り替わることを抑制するために、冷房運転と冷房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を冷房運転寄りの送風側にシフトする制御を行うように構成されている。これにより、冷房運転を開始した直後は店舗内の温度を設定温度に冷却する時間がかかる場合があるため、冷房運転と冷房運転寄りの送風との快適性の指標値の境界値を冷房運転寄りの送風側にシフトすることにより、店舗内空気調和機1の運転が短時間に切り替わることを抑制することができる。ここで、店舗内空気調和機1を停止から運転に切り替える場合、コンプレッサを運転させることにより消費電力量が大きくなるため、店舗内空気調和機1の運転が短時間に切り替わることを抑制することによって、消費電力量の増加を抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、日射量取得部7は、店舗50に設けられる日射計または太陽光発電機の少なくとも一方を含み、店舗内制御装置3は、日射計の測定値または太陽光発電機の発電量と、店舗内の快適性の指標値とに基づいて、店舗内空気調和機1の運転を切り替える制御を行うように構成されている。これにより、日射計の測定値または太陽光発電機の発電量とから測定された日射量に基づいて、日射に起因して店舗内の快適性が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0071】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0072】
たとえば、上記実施形態では、日射量取得部7は、日射計または太陽光発電機である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、日射量取得部7は、上位サーバ20であり、店舗内制御装置3は、上位サーバ20から供給された天気予報に基づいて日射量を取得してもよい。
【0073】
また、第1シフト値と、第2シフト値と、第3シフト値と、第4シフト値とが固定値である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、第1シフト値と、第2シフト値と、第3シフト値と、第4シフト値とが、設定値であってもよい。また、この場合、店舗内空気調和機1の配置場所または季節などに応じて設定されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 店舗内空気調和機(空気調和機)
3 店舗内制御装置(制御部)
7 日射量取得部
50 店舗
100 運転制御システム