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  • 特開-車両の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174730
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
F02D45/00 364Z
F02D45/00 368Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092714
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA29
3G384CA05
3G384DA43
3G384ED07
3G384FA56
3G384FA68
3G384FA79
3G384FA80
(57)【要約】
【課題】エンジンの振動に起因する車両の乗り心地の変化を、適切に、検知または推定することが可能な車両の制御装置を提供する。
【解決手段】動力源としてエンジンを搭載し、前記エンジンで発生する振動に起因した車両の乗り心地を評価または推定する車両の制御装置において、車速が所定値以下であり、かつ、前記エンジンがアイドリング運転されている状態で、前記エンジンの加速度を分母とし車体の加速度を分子とする割合の初期値、および、前記割合の経時変化値をそれぞれ算出するとともに、前記経時変化値が、前記初期値よりも所定の判定条件以上大きくなった場合に、前記乗り心地が低下した旨を運転者に告知する(ステップS8)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として少なくともエンジンを搭載し、前記エンジンで発生する振動に起因した車両の乗り心地を評価または推定する車両の制御装置であって、
前記車両の運転状態および前記エンジンの運転状態、ならびに、前記エンジンの加速度および車体の加速度を検出する検出部と、
前記車両を制御するとともに、前記乗り心地を定量的に評価または推定するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
車速が所定値以下であり、かつ、前記エンジンがアイドリング運転されている状態で、前記エンジンの加速度を分母とし前記車体の加速度を分子とする割合の初期値、および、前記割合の経時変化値をそれぞれ算出するとともに、
前記経時変化値が、前記初期値よりも所定の判定条件以上大きくなった場合に、前記乗り心地が低下した、または、低下する予兆がある旨を運転者に告知する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンを搭載した車両の制御装置に関し、特に、エンジンの振動に起因する乗り心地の変化を検知または推定する車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド車両におけるエンジン始動に際して、エンジンの振動が車体に伝達されるのを抑制することを目的とした車両の制御装置が記載されている。この特許文献1に記載された車両の制御装置は、エンジンと車体との間に設けられるエンジンマウントの硬さの変動状態に応じて、運転者のアクセルペダルの踏み込み操作に関連したエンジン始動トルクやエンジン始動パワーを補正するように構成されている。また、この特許文献1には、車両の前後加速度に基づいて、エンジンマウントの硬さ、および、劣化状態を判定すること、ならびに、エンジンマウントの劣化を判定した場合に、エンジンマウントの交換を推奨する旨の警告を発することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-107512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された車両の制御装置では、例えば、エンジン始動時の振動に起因する車両の前後加速度に基づいて、エンジンマウントの硬化状態、および、柔化状態が判定される。それらエンジンマウントの硬化状態または柔化状態から、エンジンマウントの劣化状態を判定あるいは推定することができる。そして、エンジンマウントの劣化状態から、エンジンの振動に起因する車体の振動、および、車両の乗り心地の変化を推定することもできる。しかしながら、特許文献1に記載された車両の制御装置では、振動を発生させる強制力あるいは加振力について考慮されていない。そのため、エンジンマウントの劣化状態、および、車両の乗り心地を評価するには十分ではない。例えば、燃料の性状の影響によりエンジンで発生する振動が大きくなった場合に、見かけ上、エンジンマウントが劣化したように判定されてしまう。その結果、車両の乗り心地を適切に評価できない可能性がある。このように、エンジンの振動に起因する車両の乗り心地の変化を、適切に、検知または推定するには、未だ、改良の余地があった。
【0005】
この発明は上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、エンジンの振動に起因する車両の乗り心地の変化を、適切に、検知または推定することが可能な車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、動力源として少なくともエンジンを搭載し、前記エンジンで発生する振動に起因した車両の乗り心地または快適性を評価または推定する車両の制御装置であって、前記車両の運転状態および前記エンジンの運転状態、ならびに、前記エンジン本体の加速度および車体の加速度を検出する検出部と、前記車両を制御するとともに、前記乗り心地を定量的に評価または推定するコントローラと、を備え、前記コントローラは、車速が0近傍の所定値以下であり、かつ、前記エンジンがアイドリング運転されている状態で、前記エンジンの加速度を分母とし前記車体の加速度を分子とする割合の初期値、および、前記割合の経時変化値をそれぞれ算出するとともに、前記経時変化値が、前記初期値よりも所定の判定条件以上大きくなった場合に、前記乗り心地が低下した、または、低下する予兆がある旨を運転者に告知することを特徴とするものである。
【0007】
なお、この発明における前記コントローラは、前記各加速度の検出値をそれぞれ周波数分析して、前記周波数分析結果の前記エンジンの爆発1次周波数成分で前記初期値および前記経時変化値をそれぞれ算出するように構成してもよい。
【0008】
また、この発明における前記コントローラは、前記エンジンの暖機が完了した状態で、前記初期値および前記経時変化値をそれぞれ算出するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明の車両の制御装置では、車両の乗り心地や快適性を定量的に表すために、車体振動、すなわち、車体の加速度が検出される。また、その車体振動の発生源となるエンジンの振動、すなわち、エンジンの加速度も検出される。そして、それら車体の加速度およびエンジンの加速度の初期値に対する変化状況(すなわち、経時変化値)に基づいて、車両の乗り心地あるいは快適性が評価される。例えば、加速度の経時変化値が初期値よりも、所定値以上大きくなった場合、あるいは、加速度の初期値と経時変化値との割合が、所定倍以上大きくなった場合などに、車両の点検や部品交換などが必要なレベルまで、車両の乗り心地が低下した、または、乗り心地が低下する予兆があると評価される。それとともに、その評価結果が運転者に告知される。そのため、車体の振動が大きくなり、車両の乗り心地が低下する場合に、そのような状態を、適切に検知するとともに、速やかに運転者に認識させ、車両の点検や部品交換の実施を運転者に促すことができる。
【0010】
なお、上記のような加速度の初期値および経時変化値を算出する場合には、加速度の周波数分析が実施され、その周波数分析結果によって得られるエンジンの爆発1次周波数成分を用いて、加速度の初期値および経時変化値が求められる。すなわち、エンジンの振動成分が最も大きい周波数成分を取り出して、加速度の初期値および経時変化値を算出することができる。そのため、エンジンの振動に起因する車両の乗り心地の変化を適切に検知することができる。
【0011】
また、上記のような加速度の初期値および経時変化値は、エンジンの暖機が完了して、アイドリングの回転数が安定した状態で算出される。そのため、加速度を計測するのに適した条件の下で、エンジンの振動に起因する車両の乗り心地の変化を適切に検知することができる。
【0012】
したがって、この発明の車両の制御装置によれば、エンジンの振動に起因する車両の乗り心地の変化を、適切に、推定して評価することができる。また、その乗り心地の評価結果を基に運転者に対する告知を行うことにより、車両の点検や部品交換の必要性を運転者に認識させ、適切な時機に点検や部品交換を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、この発明の車両の制御装置で制御の対象にする車両の構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、この発明の車両の制御装置で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図3図3は、図2のフローチャートで示す制御の中で実施される周波数分析の一例を説明するための図であって、図3の(a)は、エンジン本体の加速度(振動)における周波数分析結果を示し、図3の(b)は、車体の加速度(振動)における周波数分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0015】
図1に、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veの駆動系統および制御系統の一例を示してある。図1に示す車両Veは、駆動力源として、エンジン(ENG)1を搭載しており、エンジン1の出力トルクを、トランスアクスル2やデファレンシャルギヤ(図示せず)等を介して、駆動輪3へ伝達する構成となっている。また、車両Veは、検出部4、および、コントローラ(ECU)5を備えている。
【0016】
なお、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、エンジン1のような内燃機関を搭載した車両Veであればよく、図1に示すような、駆動力源としてエンジン1だけ搭載するいわゆるエンジン車両に限定されない。例えば、エンジン1とモータ(図示せず)を駆動力源とするハイブリッド車両(図示せず)であってもよい。あるいは、発電機(図示せず)を駆動するための動力源としてエンジン1を搭載したシリーズ方式のハイブリッド車両(図示せず)、もしくは、いわゆるレンジエクステンダーと称されるような電気自動車(図示せず)であってもよい。
【0017】
また、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、図1に示すように、駆動トルクを前輪(駆動輪)3に伝達し、前輪3で駆動力を発生させる前輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、駆動トルクを、例えばプロペラシャフト(図示せず)等を介して後輪6に伝達し、後輪6で駆動力を発生させる後輪駆動車(図示せず)であってもよい。あるいは、車両Veは、トランスファ機構(図示せず)を設けて、駆動トルクを前輪3および後輪6の両方に伝達し、それら前輪3および後輪6の両方で駆動力を発生させる四輪駆動車(図示せず)であってもよい。
【0018】
検出部4は、車両Veを制御する際に必要な各種のデータや情報を取得するための機器あるいは装置であり、例えば、電源部、マイクロコンピュータ、センサー、および、入出力インターフェース等を含んでいる。特に、この発明の実施形態における検出部4は、車両Veの運転状態、および、エンジン1の運転状態を検出するとともに、車両Veの乗り心地や快適性を定量的に評価するための各種のデータを検出する。具体的には、エンジン1本体の加速度を検出するエンジン加速度センサ4a、および、車体7の加速度を検出する車体加速度センサー4bを有している。その他に、検出部4は、例えば、車速を検出する車速センサー4c、エンジン1の回転数(エンジン回転数)を検出するエンジン回転数センサー4d、エンジン1の冷却水の温度を検出する水温センサー4e、エンジン1のオイルの温度を検出する油温センサー4fなどを有している。そして、検出部4は、後述するコントローラ5と電気的に接続されており、上記のような各種センサーや機器・装置等の検出値または算出値に応じた電気信号等を検出データとしてコントローラ5に出力する。
【0019】
コントローラ5は、例えば、マイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置であり、この発明の実施形態におけるコントローラ5は、車両Veを制御するとともに、特に、車両Veの乗り心地や快適性を定量的に評価または推定する。コントローラ5には、上記の検出部4で検出または算出された各種データ等が入力される。コントローラ5は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントローラ5は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上記のように車両Veを制御するように構成されている。なお、車両Veは、上記のような車両Veの乗り心地や快適性を評価または推定した結果を運転者に告知して認識させるための“告知手段”を備えており、コントローラ5は、その“告知手段”の動作(告知内容)を制御する。図1に示す例では、車両Veは、“告知手段”としてディスプレイ8を備えている。したがって、コントローラ5は、ディスプレイ8の動作(表示内容)を制御し、車両Veの乗り心地や快適性の評価結果または推定結果を運転者に表示して認識させる。また、図1では一つのコントローラ5が設けられた例を示しているが、コントローラ5は、制御する装置や機器毎に、あるいは、制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
【0020】
上記のように、動力源としてエンジン1を搭載した車両Veにおいては、エンジン1で発生する振動が、車体7および車両Veの運転者や搭乗者に伝わると、車両Veの乗り心地あるいは快適性に影響する。例えば、エンジン1本体、および、エンジン1の周辺部品(図示せず)などの経年変化や劣化により、エンジン1から車体7に伝わる振動が大きくなると、車両Veの乗り心地や快適性が低下してしまい、車両Veの点検・修理や部品交換等が必要になる場合がある。そのような車両Veの乗り心地の変化を検知し、車両Veの点検・修理や部品交換等の必要性を早期に判断するために、この発明の実施形態における車両Veのコントローラ5は、例えば、次の図2のフローチャートに示す制御を実行するように構成されている。
【0021】
図2のフローチャートに示す制御は、車両Veの停車時で、かつ、エンジン1がアイドリング運転されている状態で実行される。そのため、先ず、ステップS1では、車速が0であり、かつ、エンジン1がアイドリング運転の状態であるか否かが判断される。この場合、車両Veがほぼ停止している状態を含めて判断してもよく、したがって、車速が0であるか否かを判断する代わりに、車速が(0に近い)所定車速以下であるか否かを判断してもよい。
【0022】
車速が0ではない、または、エンジン1がアイドリング運転の状態ではないことの少なくともいずれかであることにより、このステップS1で“No”と判断された場合は、以降の各ステップの制御を実行することなく、この図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0023】
それに対して、車速が0であり、かつ、エンジン1がアイドリング運転の状態であることにより、ステップS1で“Yes”と判断された場合には、ステップS2へ進む。
【0024】
ステップS2では、エンジン1の冷却水の温度(エンジン水温)が所定の温度範囲内の値であるか否かが判断される。この場合の所定の温度範囲は、エンジン1の暖機が完了している状態を判定するための閾値として、予め定められている。エンジン水温が所定の温度範囲内の値である場合に、エンジン1の暖機が完了していて、エンジン1のアイドリング運転が安定する状態であると判断される。
【0025】
エンジン水温が所定の温度範囲外の値であることにより、このステップS2で“No”と判断された場合は、エンジン1のアイドリング運転が安定しない状態であると判断される。そのため、以降の各ステップの制御を実行することなく、この図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0026】
それに対して、エンジン水温が所定の温度範囲内の値であることにより、ステップS2で“Yes”と判断された場合には、ステップS3へ進む。
【0027】
ステップS3では、エンジン1本体の加速度(エンジン加速度)、および、車体7の加速度(車体加速度)が検出される。それとともに、各加速度の検出値に対して周波数分析が実施される。そして、周波数分析結果から、図3に示すように、エンジン加速度のエンジン爆発1次周波数成分Gpp_F、および、車体加速度のエンジン爆発1次周波数成分Gb_Fがそれぞれ求められる。エンジン爆発1次周波数は、エンジン1が燃焼運転する際に、エンジン1の爆発に起因して発生する振動の周波数である。この図3のフローチャートに示す制御例では、エンジン回転数をNe[rpm]、エンジン1の気筒数をn、および、エンジン爆発1次周波数をF[Hz]とすると、エンジン爆発1次周波数Fは、
F=Ne×(n/2)/60
の計算式から算出される。
【0028】
ステップS4では、上記のエンジン加速度および車体加速度の計測回数が、所定回数以上であるか否か、すなわち、所定回数分以上の各加速度の計測値が保存または記憶されたか否かが判断される。
【0029】
エンジン加速度および車体加速度の計測回数が、未だ、所定回数未満であることにより、このステップS4で“No”と判断された場合は、ステップS5へ進む。
【0030】
ステップS5では、現在までのエンジン加速度および車体加速度の計測結果から、エンジン加速度(具体的には、エンジン加速度のエンジン爆発1次周波数成分Gpp_F)を分母とし、車体加速度(具体的には、車体加速度のエンジン爆発1次周波数成分Gb_F)を分子とする割合(Gb_F/Gpp_F)が算出され、保存または記憶される。
【0031】
続いて、ステップS6では、上記のようなエンジン加速度と車体加速度との割合(Gb_F/Gpp_F)の初期値αとして、初回から現在までのエンジン加速度と車体加速度との割合(Gb_F/Gpp_F)の平均値が算出され、保存または記憶される。
【0032】
上記のようにして、ステップS6で、エンジン加速度と車体加速度との割合(Gb_F/Gpp_F)の初期値αが算出されて保存されると、その後、この図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0033】
一方、エンジン加速度および車体加速度の計測回数が、所定回数以上となったことにより、上記のステップS4で“Yes”と判断された場合には、ステップS7へ進む。
【0034】
ステップS7では、今回(最新)のエンジン加速度および車体加速度の計測結果から、経時変化値αとして、エンジン加速度と車体加速度との割合(Gb_F/Gpp_F)が算出されるとともに、その経時変化値αと上記の初期値αとの割合(α/α)が、所定倍以上であるか否かが判断される。この場合の所定倍の値は、エンジン1の振動に起因して、車両Veの乗り心地や快適性が、車両Veの点検・修理や部品交換等の実施が推奨されるレベルまで低下している状態を判定するための閾値(すなわち、所定の判定条件)として、予め定められている。各加速度の経時変化値αと初期値αとの割合(α/α)が、所定倍以上である場合に、車両Veの点検・修理や部品交換等の実施が推奨される状態であると判断される。
【0035】
したがって、各加速度の経時変化値αと初期値αとの割合(α/α)が、所定倍未満であることにより、このステップS7で“No”と判断された場合は、未だ、車両Veの点検・修理や部品交換等の必要はない、もしくは、その必要性は低いと判断される。そのため、以降のステップの制御を実行することなく、この図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0036】
それに対して、各加速度の経時変化値αと初期値αとの割合(α/α)が、所定倍以上であることにより、ステップS7で“Yes”と判断された場合には、ステップS8へ進む。
【0037】
そして、ステップS8では、車両Veの乗り心地あるいは快適性が、車両Veの点検・修理や部品交換等が必要なレベルまで低下した、または、そのようなレベルまで低下する予兆がある趣旨の内容が、運転者に告知される。前述の図1で示した車両Veは、“告知手段”としてディスプレイ8を備えているので、上記のような車両Veの乗り心地や快適性が低下した旨をディスプレイ8に表示させ、運転者に認識させる。
【0038】
なお、この発明の実施形態における“告知手段”は、図1で示したようなディスプレイ8に限定されるものではない。“告知手段”として、例えば、車両Veの音響装置(図示せず)による音声案内で、運転者に告知してもよい。あるいは、表示ランプ(図示せず)や警告灯(図示せず)などの簡易的な装置で、運転者に告知してもよい。
【0039】
上記のようにして、ステップS8で、車両Veの乗り心地あるいは快適性が低下した旨の告知が行われると、その後、この図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0040】
以上のように、この発明の実施形態における車両の制御装置では、車両Veの乗り心地や快適性を定量的に表すために、車体振動、すなわち、車体加速度が検出される。また、その車体振動の発生源となるエンジンの振動、すなわち、エンジン加速度も検出される。そして、それら車体加速度およびエンジン加速度の初期値と経時変化値に基づいて、車両Veの乗り心地あるいは快適性が評価される。そして、車両Veの点検や部品交換などが必要なレベルまで、車両Veの乗り心地が低下した、または、乗り心地が低下する予兆があると評価されると、その評価結果が運転者に告知される。そのため、車体7の振動が大きくなり、車両Veの乗り心地が低下してしまう場合に、そのような状態を、適切に検知するとともに、速やかに運転者に認識させ、車両Veの点検や部品交換の実施を運転者に促すことができる。
【0041】
したがって、この発明の実施形態における車両の制御装置によれば、エンジン1の振動に起因する車両Veの乗り心地の変化を、適切に、推定して評価することができる。また、その乗り心地の評価結果を基に運転者に対する告知を行うことにより、車両Veの点検や部品交換の必要性を運転者に認識させ、適切な時機に点検や部品交換を実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 エンジン(ENG)
2 トランスアクスル(TA)
3 駆動輪(前輪)
4 検出部
4a (検出部の)エンジン加速度センサー
4b (検出部の)車体加速度センサー
4c (検出部の)車速センサー
4d (検出部の)エンジン回転数センサー
4e (検出部の)水温センサー
4f (検出部の)油温センサー
5 コントローラ(ECU)
6 後輪
7 車体
8 ディスプレイ(告知手段)
Ve 車両
図1
図2
図3