(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174733
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】位置補正方法、プログラム及び位置補正装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/10 20060101AFI20241210BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B25J9/10 A
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092720
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】391035603
【氏名又は名称】五洋商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】津田 佳祐
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS07
3C707BS10
3C707KS03
3C707KT01
3C707KT05
3C707LT12
(57)【要約】
【課題】金型に対するハンド部の位置を容易に補正できる位置補正方法を提供する。
【解決手段】位置補正方法は、(a)金型6が適正位置に位置している場合に、金型6のマーク18が撮影画像における所定の位置に位置するように、カメラ10によりマーク18を撮影するステップと、(b)前記(a)でマーク18を撮影した時の多関節ロボット8の位置を示すロボット座標に基づいて、マーク基準座標を算出するステップと、(c)金型6が適正位置から変位位置に変位した場合に、多関節ロボット8がティーチングポイントに位置している状態で、カメラ10によりマーク18を撮影するステップと、(d)前記(c)で撮影した撮影画像における所定の位置からのマーク18の変位量に基づいて、マーク変位座標を算出するステップと、(e)マーク基準座標及びマーク変位座標に基づいて、金型6に対するハンド部28の位置の補正値を算出するステップとを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に対する多関節ロボットのハンド部の位置を補正するための位置補正方法であって、
(a)前記金型が適正位置に位置している場合に、前記ハンド部に配置されたカメラにより、前記金型の表面に配置されたマークが撮影画像における所定の位置に位置するように、前記マークを撮影するステップと、
(b)前記(a)で前記マークを撮影した時の前記多関節ロボットの位置を示すロボット座標に基づいて、前記マークの基準位置を示すマーク基準座標を算出するステップと、
(c)前記金型が前記適正位置から変位位置に変位した場合に、前記多関節ロボットが前記(a)で前記マークを撮影した時の前記多関節ロボットの位置であるティーチングポイントに位置している状態で、前記カメラにより前記マークを撮影するステップと、
(d)前記(c)で撮影した撮影画像における前記所定の位置からの前記マークの変位量に基づいて、前記マークの変位位置を示すマーク変位座標を算出するステップと、
(e)前記マーク基準座標及び前記マーク変位座標に基づいて、前記金型に対する前記ハンド部の位置の補正値を算出するステップと、を含む
位置補正方法。
【請求項2】
前記多関節ロボットは、
アーム部と、
前記アーム部の先端部に配置され、前記アーム部に対して回転軸線を中心に回転可能な前記ハンド部と、を有し、
前記(a)では、(i)前記ハンド部が前記アーム部に対して第1の回転位置にある時に、前記マークが第1の撮影画像における前記所定の位置に位置するように前記カメラにより前記マークを撮影し、その後、(ii)前記ハンド部が前記アーム部に対して第1の回転位置から所定の回転角度だけ回転した第2の回転位置にある時に、前記マークが第2の撮影画像における前記所定の位置に位置するように前記カメラにより前記マークを撮影し、
前記(b)では、前記第1の撮影画像を撮影した時の前記多関節ロボットの位置を示す第1のロボット座標、前記第2の撮影画像を撮影した時の前記多関節ロボットの位置を示す第2のロボット座標、及び、前記所定の回転角度に基づいて、前記マーク基準座標を算出する
請求項1に記載の位置補正方法。
【請求項3】
前記金型は矩形状に形成され、
前記マークは、前記金型の前記表面における四隅にそれぞれ対応して配置された第1のマーク、第2のマーク、第3のマーク及び第4のマークを含み、
前記第1のマークと前記第4のマークとは対角状に配置され、且つ、前記第2のマークと前記第3のマークとは対角状に配置されており、
前記(e)では、(i)前記(c)で撮影した前記撮影画像における前記所定の位置からの前記マークの互いに直交する二方向における変位量、及び、(ii)前記金型が前記適正位置に位置している状態での、前記第1のマークの基準位置を示す前記マーク基準座標と前記第4のマークの基準位置を示す前記マーク基準座標とを結ぶ第1の直線と、前記第2のマークの基準位置を示す前記マーク基準座標と前記第3のマークの基準位置を示す前記マーク基準座標とを結ぶ第2の直線との交点の位置を示す第1の交点座標を算出し、前記金型が前記適正位置から前記変位位置に変位している状態での、前記第1のマークの変位位置を示す前記マーク変位座標と前記第4のマークの変位位置を示す前記マーク変位座標とを結ぶ第3の直線と、前記第2のマークの変位位置を示す前記マーク変位座標と前記第3のマークの変位位置を示す前記マーク変位座標とを結ぶ第4の直線との交点の位置を示す第2の交点座標を算出し、前記第1の交点座標と前記第2の交点座標とが一致した状態で、前記第1の直線と前記第3の直線とのなす角度を、前記補正値として算出する
請求項1に記載の位置補正方法。
【請求項4】
前記マークは、前記金型の前記表面に複数配置されている
請求項1又は2に記載の位置補正方法。
【請求項5】
前記マークは、略円形状に形成されている
請求項1~3のいずれか1項に記載の位置補正方法。
【請求項6】
前記金型は、前記表面にインサート穴が形成されたインサート成形用の金型であり、
前記多関節ロボットの前記ハンド部は、前記インサート穴に挿入するためのインサート部品を把持可能である
請求項1~3のいずれか1項に記載の位置補正方法。
【請求項7】
請求項1に記載の位置補正方法をコンピュータに実行させる
プログラム。
【請求項8】
金型に対する多関節ロボットのハンド部の位置を補正するための位置補正装置であって、
プロセッサとメモリとを備え、
前記プロセッサは、前記メモリを用いて、
(a)前記金型が適正位置に位置している場合に、前記ハンド部に配置されたカメラにより、前記金型の表面に配置されたマークが撮影画像における所定の位置に位置するように、前記マークを撮影し、
(b)前記(a)で前記マークを撮影した時の前記多関節ロボットの位置を示すロボット座標に基づいて、前記マークの基準位置を示すマーク基準座標を算出し、
(c)前記金型が前記適正位置から変位位置に変位した場合に、前記多関節ロボットが前記(a)で前記マークを撮影した時の前記多関節ロボットの位置であるティーチングポイントに位置している状態で、前記カメラにより前記マークを撮影し、
(d)前記(c)で撮影した撮影画像における前記所定の位置からの前記マークの変位量に基づいて、前記マークの変位位置を示すマーク変位座標を算出し、
(e)前記マーク基準座標及び前記マーク変位座標に基づいて、前記金型に対する前記ハンド部の位置の補正値を算出する制御を実行する
位置補正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型に対する多関節ロボットのハンド部の位置を補正するための位置補正方法、プログラム及び位置補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インサート成形における自動化装置では、多関節ロボットを備えた部品挿入装置が用いられていることが多い(例えば、特許文献1参照)。多関節ロボットは、多関節アーム部と、多関節アーム部の先端部に配置されたハンド部とを有している。この部品挿入装置では、まず、ハンド部によりインサート部品を把持し、次いで、成形機のダイプレート(以下、単に「ダイプレート」という)上の適正位置に着脱可能に取り付けられた金型に対してハンド部を水平方向(金型のパーティング面と平行な面方向)に移動させることにより、金型のパーティング面である上面に形成されたインサート穴の真上にインサート部品を位置させる。最後に、ハンド部を金型の上面に向けて下方に移動させることにより、インサート部品を金型のインサート穴に挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した部品挿入装置では、金型をダイプレートから取り外して、金型のメンテナンス(例えば洗浄等)を行うことがある。金型のメンテナンスの完了後に、金型をダイプレートに再度取り付けた際に、金型のダイプレートに対する取り付け位置が上記適正位置から変位することがある。
【0005】
そのため、従来の部品挿入装置では、金型をダイプレートに対して着脱する毎に、多関節ロボットの動作プログラム又は教示位置を人手によって修正して、インサート部品のインサート位置(挿入位置)を補正する必要があり、大変手間が掛かるという課題が生じる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、その目的は、金型に対する多関節ロボットのハンド部の位置を容易に補正することができる位置補正方法、プログラム及び位置補正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る位置補正方法は、金型に対する多関節ロボットのハンド部の位置を補正するための位置補正方法であって、(a)前記金型が適正位置に位置している場合に、前記ハンド部に配置されたカメラにより、前記金型の表面に配置されたマークが撮影画像における所定の位置に位置するように、前記マークを撮影するステップと、(b)前記(a)で前記マークを撮影した時の前記多関節ロボットの位置を示すロボット座標に基づいて、前記マークの基準位置を示すマーク基準座標を算出するステップと、(c)前記金型が前記適正位置から変位位置に変位した場合に、前記多関節ロボットが前記(a)で前記マークを撮影した時の前記多関節ロボットの位置であるティーチングポイントに位置している状態で、前記カメラにより前記マークを撮影するステップと、(d)前記(c)で撮影した撮影画像における前記所定の位置からの前記マークの変位量に基づいて、前記マークの変位位置を示すマーク変位座標を算出するステップと、(e)前記マーク基準座標及び前記マーク変位座標に基づいて、前記金型に対する前記ハンド部の位置の補正値を算出するステップと、を含む。
【0008】
本態様によれば、金型が適正位置から変位位置に変位した場合に、人手により多関節ロボットの動作プログラム又は教示位置を修正する必要が無く、金型に対する多関節ロボットのハンド部の位置を容易に補正することができる。
【0009】
例えば、本発明の第2の態様に係る位置補正方法では、第1の態様において、前記多関節ロボットは、アーム部と、前記アーム部の先端部に配置され、前記アーム部に対して回転軸線を中心に回転可能な前記ハンド部と、を有し、前記(a)では、(i)前記ハンド部が前記アーム部に対して第1の回転位置にある時に、前記マークが第1の撮影画像における前記所定の位置に位置するように前記カメラにより前記マークを撮影し、その後、(ii)前記ハンド部が前記アーム部に対して第1の回転位置から所定の回転角度だけ回転した第2の回転位置にある時に、前記マークが第2の撮影画像における前記所定の位置に位置するように前記カメラにより前記マークを撮影し、前記(b)では、前記第1の撮影画像を撮影した時の前記多関節ロボットの位置を示す第1のロボット座標、前記第2の撮影画像を撮影した時の前記多関節ロボットの位置を示す第2のロボット座標、及び、前記所定の回転角度に基づいて、前記マーク基準座標を算出するように構成してもよい。
【0010】
本態様によれば、マーク基準座標を容易に且つ精度良く算出することができる。
【0011】
例えば、本発明の第3の態様に係る位置補正方法では、第1の態様又は第2の態様において、前記金型は矩形状に形成され、前記マークは、前記金型の前記表面における四隅にそれぞれ対応して配置された第1のマーク、第2のマーク、第3のマーク及び第4のマークを含み、前記第1のマークと前記第4のマークとは対角状に配置され、且つ、前記第2のマークと前記第3のマークとは対角状に配置されており、前記(e)では、(i)前記(c)で撮影した前記撮影画像における前記所定の位置からの前記マークの互いに直交する二方向における変位量、及び、(ii)前記金型が前記適正位置に位置している状態での、前記第1のマークの基準位置を示す前記マーク基準座標と前記第4のマークの基準位置を示す前記マーク基準座標とを結ぶ第1の直線と、前記第2のマークの基準位置を示す前記マーク基準座標と前記第3のマークの基準位置を示す前記マーク基準座標とを結ぶ第2の直線との交点の位置を示す第1の交点座標を算出し、前記金型が前記適正位置から前記変位位置に変位している状態での、前記第1のマークの変位位置を示す前記マーク変位座標と前記第4のマークの変位位置を示す前記マーク変位座標とを結ぶ第3の直線と、前記第2のマークの変位位置を示す前記マーク変位座標と前記第3のマークの変位位置を示す前記マーク変位座標とを結ぶ第4の直線との交点の位置を示す第2の交点座標を算出し、前記第1の交点座標と前記第2の交点座標とが一致した状態で、前記第1の直線と前記第3の直線とのなす角度を、前記補正値として算出するように構成してもよい。
【0012】
本態様によれば、補正値を容易に且つ精度良く算出することができる。
【0013】
例えば、本発明の第4の態様に係る位置補正方法では、第1の態様~第3の態様のいずれか一態様において、前記マークは、前記金型の前記表面に複数配置されているように構成してもよい。
【0014】
本態様によれば、補正値をより精度良く補正することができる。
【0015】
例えば、本発明の第5の態様に係る位置補正方法では、第1の態様~第4の態様のいずれか一態様において、前記マークは、略円形状に形成されているように構成してもよい。
【0016】
本態様によれば、マークを撮影する際のカメラの向きを考慮する必要が無いため、金型に対する多関節ロボットのハンド部の位置をより容易に補正することができる。
【0017】
例えば、本発明の第6の態様に係る位置補正方法では、第1の態様~第5の態様のいずれか一態様において、前記金型は、前記表面にインサート穴が形成されたインサート成形用の金型であり、前記多関節ロボットの前記ハンド部は、前記インサート穴に挿入するためのインサート部品を把持可能であるように構成してもよい。
【0018】
本態様によれば、ハンド部により把持されたインサート部品のインサート位置を容易に補正することができる。
【0019】
例えば、本発明の第7の態様に係るプログラムは、第1の態様~第6の態様のいずれか一態様に係る位置補正方法をコンピュータに実行させる。
【0020】
また、本発明の第8の態様に係る位置補正装置は、金型に対する多関節ロボットのハンド部の位置を補正するための位置補正装置であって、プロセッサとメモリとを備え、前記プロセッサは、前記メモリを用いて、(a)前記金型が適正位置に位置している場合に、前記ハンド部に配置されたカメラにより、前記金型の表面に配置されたマークが撮影画像における所定の位置に位置するように、前記マークを撮影し、(b)前記(a)で前記マークを撮影した時の前記多関節ロボットの位置を示すロボット座標に基づいて、前記マークの基準位置を示すマーク基準座標を算出し、(c)前記金型が前記適正位置から変位位置に変位した場合に、前記多関節ロボットが前記(a)で前記マークを撮影した時の前記多関節ロボットの位置であるティーチングポイントに位置している状態で、前記カメラにより前記マークを撮影し、(d)前記(c)で撮影した撮影画像における前記所定の位置からの前記マークの変位量に基づいて、前記マークの変位位置を示すマーク変位座標を算出し、(e)前記マーク基準座標及び前記マーク変位座標に基づいて、前記金型に対する前記ハンド部の位置の補正値を算出する制御を実行する。
【0021】
本態様によれば、金型が適正位置から変位位置に変位した場合に、人手により多関節ロボットの動作プログラム又は教示位置を修正する必要が無く、金型に対する多関節ロボットのハンド部の位置を容易に補正することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様に係る位置補正方法等によれば、金型に対する多関節ロボットのハンド部の位置を容易に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】実施の形態に係る部品挿入装置の外観を示す斜視図である。
【
図1B】実施の形態に係る部品挿入装置の外観を示す概略図である。
【
図2】実施の形態に係る部品挿入装置のハンド部及び金型を抜き出して示す概略斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る位置補正装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態に係る位置補正装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図4のフローチャートのステップS102の処理を説明するための図である。
【
図6】
図4のフローチャートのステップS103の処理を説明するための図である。
【
図7】
図4のフローチャートのステップS103の処理を説明するための図である。
【
図8】
図4のフローチャートのステップS103の処理を説明するための図である。
【
図9】
図4のフローチャートのステップS104の処理を説明するための図である。
【
図10】
図4のフローチャートのステップS104の処理を説明するための図である。
【
図11】
図4のフローチャートのステップS104の処理を説明するための図である。
【
図12】
図4のフローチャートのステップS105の処理を説明するための図である。
【
図13】
図4のフローチャートのステップS106の処理を説明するための図である。
【
図14】
図4のフローチャートのステップS106の処理を説明するための図である。
【
図15】
図4のフローチャートのステップS106の処理を説明するための図である。
【
図16】
図4のフローチャートのステップS106の処理を説明するための図である。
【
図17】
図4のフローチャートのステップS106の処理を説明するための図である。
【
図18】
図4のフローチャートのステップS106の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0025】
(実施の形態)
[1.部品挿入装置の構成]
まず、
図1A~
図3を参照しながら、実施の形態に係る部品挿入装置2の構成について説明する。
図1Aは、実施の形態に係る部品挿入装置2の外観を示す斜視図である。
図1Bは、実施の形態に係る部品挿入装置2の外観を示す概略図である。
図2は、実施の形態に係る部品挿入装置2のハンド部28及び金型6を抜き出して示す概略斜視図である。
図3は、実施の形態に係る位置補正装置12の構成を示すブロック図である。
【0026】
なお、
図1A~
図2において、金型6の左右方向をX軸方向、金型6の前後方向をY軸方向、金型6の上下方向をZ軸方向として説明する。また、Z軸方向のプラス側を「上」、Z軸方向のマイナス側を「下」として説明する。
【0027】
実施の形態に係る部品挿入装置2は、射出成形の一種であるインサート成形における自動化装置に用いられる装置である。
図1Aに示すように、部品挿入装置2は、ダイプレート4と、金型6と、多関節ロボット8と、カメラ10と、位置補正装置12とを備えている。実際には、部品挿入装置2及び金型6は
図1Aに示すような構成を有しているが、以下では、理解を容易にするために、部品挿入装置2及び金型6の各構成を
図1B及び
図2に示すように簡略化して説明する。
【0028】
ダイプレート4は、金型6を着脱可能に取り付けるための台である。ダイプレート4の上面は、金型6を載置するために平坦状に形成されている。
【0029】
金型6は、インサート成形用の金型であり、例えばXY平面視で矩形状の平板状に形成されている。金型6は、例えば複数のボルト(図示せず)で、ダイプレート4に着脱可能に取り付けられている。
図2に示すように、金型6のパーティング面である表面6aには、一対のインサート穴14,16が形成されている。一対のインサート穴14,16は、左右方向(X軸方向)に間隔を置いて配置されている。また、一対のインサート穴14,16の各々は、例えば断面円形状に形成されており、金型6の厚み方向(Z軸方向)に沿って延在している。なお、一対のインサート穴14,16の各直径は、例えば約5mmである。本実施の形態では、金型6に一対のインサート穴14,16が形成されるようにしたが、これに限定されず、1個又は3個以上のインサート穴が形成されるようにしてもよい。また、本実施の形態では、金型6が上下に開閉するタイプで説明するが、これに限定されず、金型6が左右に開閉するタイプであってもよい。
【0030】
また、金型6の表面6aにおける四隅の各近傍にはそれぞれ、複数のマーク18,20,22,24(18~24)が配置されている。ここで、マーク18は第1のマークの一例であり、マーク20は第2のマークの一例であり、マーク22は第3のマークの一例であり、マーク24は第4のマークの一例である。マーク18とマーク24とは対角状に配置され、且つ、マーク20とマーク22とは対角状に配置されている。
【0031】
複数のマーク18~24の各々は、例えば略円形状である。複数のマーク18~24の各々は、金型6の表面6aを切削加工で掘り込むことにより構成される。あるいは、複数のマーク18~24の各々は、例えば、印刷又は塗装することにより構成されてもよいし、金型6の表面6aに粘着シールを貼り付けることにより構成されてもよい。
【0032】
多関節ロボット8は、多関節アーム部26(アーム部の一例)と、ハンド部28とを有している。
【0033】
多関節アーム部26は、所定のワーキングエリア内において、ハンド部28の位置をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に(すなわち、3次元的に)変更させる。多関節アーム部26aの先端部には、円板状のツールフランジ30が回転可能に支持されている。
【0034】
ハンド部28は、例えばXY平面視で略T字状の平板状に形成されており、支持部28aと把持部28bとを有している。支持部28aは、把持部28bの長手方向における中央部から、側方に向けて延在している。なお、本実施の形態では、ハンド部28をXY平面視で略T字状の平板状に形成したが、これに限定されず、例えばI字状の平板状等、任意の形状に形成してもよい。
【0035】
ハンド部28の支持部28aは、多関節アーム部26の先端部に配置されている。より具体的には、ハンド部28の支持部28aは、ツールフランジ30を介して、多関節アーム部26の先端部に回転軸線32を中心に回転可能に支持されている。なお、回転軸線32は、ツールフランジ30の径中心を通り、且つ、上下方向に対して平行な直線である。ハンド部28の把持部28bの下面には、一対のインサート部品34,36を把持可能である。一対のインサート部品34,36の各々は、例えば、インサート成形に用いられる円柱形状の金属部品等である。なお、一対のインサート部品34,36の各直径はそれぞれ、金型6の一対のインサート穴14,16の各直径よりも小さい。
【0036】
インサート成形では、まず、
図2に示すように、一対のインサート部品34,36がそれぞれ、各インサート位置である金型6の一対のインサート穴14,16の各真上に位置している状態から、多関節アーム部26がハンド部28を金型6の表面6aに向けて下方に移動させる。これにより、一対のインサート部品34,36がそれぞれ、一対のインサート穴14,16に挿入される。次いで、金型6の表面6aに成形用の樹脂を注入することにより、一対のインサート部品34,36と当該樹脂とが一体成形されたインサート成形品が作製される。
【0037】
なお、本実施の形態では、一対のインサート部品34,36の各々を円柱形状に形成したが、これに限定されず、例えば、四角柱形状に形成してもよいし、コネクタピン等のような複雑な形状に形成してもよい。この場合、金型6の一対のインサート穴14,16の各断面形状はそれぞれ、一対のインサート部品34,36の各断面形状と略同一である。実際には、インサート穴14とインサート部品34との間、及び、インサート穴16とインサート部品36との間にはそれぞれ、例えば0.01~0.03mm程度の隙間が形成されている。
【0038】
カメラ10は、ハンド部28の把持部28bの側面に配置されている。カメラ10は、ハンド部28が金型6の表面6aの上方に位置している際に、金型6の表面6aを上方から撮影する。
【0039】
位置補正装置12は、金型6に対する多関節ロボット8のハンド部28の位置(すなわち、一対のインサート部品34,36の各インサート位置)を補正するための装置である。
図3に示すように、位置補正装置12は、プロセッサ38と、メモリ40とを有している。プロセッサ38は、カメラ10の撮影動作を制御する。また、プロセッサ38は、カメラ10で撮影された撮影画像を取得し、取得した撮影画像に基づいて、メモリ40に記憶されたプログラムを実行することにより、金型6に対するハンド部28の位置を補正するための補正値を算出する。そして、プロセッサ38は、算出した補正値に基づいて、多関節ロボット8の駆動を制御する。
【0040】
[2.位置補正装置の動作]
[2-1.位置補正装置の全体動作]
次に、
図4を参照しながら、実施の形態に係る位置補正装置12の全体動作について説明する。
図4は、実施の形態に係る位置補正装置12の動作の流れを示すフローチャートである。
【0041】
図4に示すように、まず、カメラ10を多関節ロボット8のハンド部28に取り付ける(S101)。
【0042】
次いで、位置補正装置12のプロセッサ38は、カメラ10で金型6を撮影した撮影画像から、マッチング画像と一致する箇所を特定する(S102)。
【0043】
次いで、プロセッサ38は、多関節ロボット8の座標軸(以下、「ロボット座標軸」という)と、カメラ10の座標軸(以下、「カメラ座標軸」という)とを一致させる(S103)。
【0044】
次いで、プロセッサ38は、複数のマーク18~24の各々の基準位置をそれぞれ示す複数のマーク基準座標を算出する(S104)。
【0045】
次いで、プロセッサ38は、複数のマーク18~24の各々の変位位置をそれぞれ示す複数のマーク変位座標を算出する(S105)。
【0046】
次いで、プロセッサ38は、複数のマーク基準座標及び複数のマーク変位座標に基づいて、金型6に対するハンド部28の位置を補正するための補正値を算出する(S106)。
【0047】
以下、上述したステップS101~S106の各処理について詳細に説明する。
【0048】
[2-2.ステップS101の処理]
図1Bを参照しながら、上述したステップS101の処理について説明する。
図1Bに示すように、作業員等は、カメラ10のレンズ面が金型6の表面6aに対して平行となるように、且つ、カメラ10の光軸が金型6の表面6aに対して垂直となるように、カメラ10を多関節ロボット8のハンド部28の側面に取り付ける。
【0049】
なお、ステップS101~S104では、金型6は、ダイプレート4上の適正位置(すなわち、一対のインサート部品34,36がそれぞれ一対のインサート穴14,16に挿入可能な位置)に取り付けられているものとする。
【0050】
[2-3.ステップS102の処理]
図5を参照しながら、上述したステップS102の処理について説明する。
図5は、
図4のフローチャートのステップS102の処理を説明するための図である。
【0051】
プロセッサ38は、
図5の(a)に示すマッチング画像42を予め登録しておく。マッチング画像42は、マークのサンプルを示す画像である。
【0052】
次いで、プロセッサ38は、カメラ10から、金型6の表面6aの一部を撮影した
図5の(b)に示す撮影画像44を取得する。次いで、プロセッサ38は、撮影画像44から、
図5の(a)に示すマッチング画像42と一致する箇所(例えばマーク18)を特定し、特定した箇所の中心の座標であるマッチング座標を取得する。
【0053】
[2-4.ステップS103の処理]
図6~
図8を参照しながら、上述したステップS103の処理について説明する。
図6~
図8は、
図4のフローチャートのステップS103の処理を説明するための図である。
【0054】
図6に示すように、ロボット座標軸は、ワールド座標軸(X1-Y1座標軸)と、ツール座標軸(X2-Y2座標軸)とを有している。ワールド座標軸は、多関節アーム部26に基づく座標軸である。また、ツール座標軸は、ツールフランジ30の回転角度に基づく座標軸である。ツールフランジ30の回転角度が0°の場合には、ツール座標軸はワールド座標軸と一致する。一方、カメラ座標軸(X3-Y3座標軸)は、例えばツールフランジ30の回転角度等により変動する。
【0055】
このように、ロボット座標軸とカメラ座標軸とが互いに異なるため、以下のようにして両者を一致させる必要がある。
【0056】
まず、プロセッサ38は、カメラ10が金型6のマーク18の上方まで移動するように、多関節アーム部26を駆動し、カメラ10にマーク18を撮影させる。
【0057】
次いで、
図7の(a)に示すように、プロセッサ38は、マーク18がカメラ10により撮影された撮影画像46における一端部に位置するように多関節アーム部26を駆動し、この状態でマーク18のマッチング座標を取得する。
【0058】
次いで、
図7の(b)に示すように、プロセッサ38は、マーク18がカメラ10により撮影された撮影画像48における他端部(上記一端部と反対側の端部)に位置するように多関節アーム部26を駆動し、この状態でマーク18のマッチング座標を取得する。
【0059】
次いで、
図8の(a)に示すように、プロセッサ38は、2つの撮影画像46,48からそれぞれ、2つのマーク18の各マッチング座標を取得する。
【0060】
次いで、
図8の(b)に示すように、プロセッサ38は、2つの撮影画像46,48を重ね合わせた状態で、2つのマッチング座標を結ぶ直線50と、水平方向に延在する基準線52とのなす角度φを算出する。
【0061】
次いで、
図8の(c)に示すように、プロセッサ38は、直線50が基準線52と一致するように、カメラ座標軸を、算出した角度φだけ回転させる。これにより、カメラ座標軸をロボット座標軸のツール座標軸と一致させることができる。なお、以降の各ステップでは、プロセッサ38は、内部処理で座標変換を行うことにより、カメラ座標軸とロボット座標軸のツール座標軸とが一致した各座標を取得する。
【0062】
[2-5.ステップS104の処理]
図9~
図11を参照しながら、上述したステップS104の処理について説明する。
図9~
図11は、
図4のフローチャートのステップS104の処理を説明するための図である。
【0063】
図9の(a)に示すように、プロセッサ38は、カメラ10が金型6のマーク18の上方まで移動するように、多関節アーム部26を駆動し、カメラ10にマーク18を撮影させる。この時、ハンド部28は、多関節アーム部26に対して第1の回転位置にあるものとする。プロセッサ38は、カメラ座標軸(=ロボット座標軸)において、マーク18の座標から撮影画像54の中心の座標までの、x軸方向の距離x1及びy軸方向の距離y1を算出する。
【0064】
次いで、
図9の(b)に示すように、プロセッサ38は、算出したx軸方向の距離x1及びy軸方向の距離y1に対応する距離だけ、カメラ10を移動させるように多関節アーム部26を駆動する。これにより、マーク18は撮影画像54(第1の撮影画像の一例)の中心(所定の位置の一例)に移動し、マーク18の座標は撮影画像54の中心の座標と一致するようになる。また、プロセッサ38は、この時の多関節ロボット8の位置(具体的には、ツールフランジ30の径中心の位置)を示す第1のロボット座標(xa,ya)を算出する。なお、プロセッサ38は、算出した第1のロボット座標(xa,ya)を、ティーチングポイントとして記憶する。
【0065】
次いで、
図10に示すように、プロセッサ38は、ハンド部28を、多関節アーム部26に対して第1の回転角度から第2の回転角度まで所定の回転角度Aだけ回転させる。次いで、プロセッサ38は、上述と同様にして、マーク18が撮影画像56(第2の撮影画像の一例)の中心に移動するように、多関節アーム部26を駆動してカメラ10を移動させる。また、プロセッサ38は、この時の多関節ロボット8の位置(具体的には、ツールフランジ30の径中心の位置)を示す第2のロボット座標を(xb,yb)を算出する。
【0066】
次いで、
図11に示すように、プロセッサ38は、取得した第1のロボット座標(xa,ya)及び第2のロボット座標(xb,yb)と、ハンド部28の回転角度Aとを用いて、回転行列の演算を行うことにより、マーク18の基準位置(すなわち、適正位置に位置している金型6におけるマーク18の位置)を示すマーク基準座標を算出する。
【0067】
同様にして、プロセッサ38は、他の3つのマーク20,22,24についても、マーク20の基準位置を示すマーク基準座標、マーク22の基準位置を示すマーク基準座標、及び、マーク24の基準位置を示すマーク基準座標を算出する。
【0068】
[2-6.ステップS105の処理]
図12を参照しながら、上述したステップS105の処理について説明する。
図12は、
図4のフローチャートのステップS105の処理を説明するための図である。
【0069】
プロセッサ38は、多関節ロボット8をマーク18に対応するティーチングポイントに位置させた状態で、カメラ10にマーク18を撮影させる。この時、金型6がダイプレート4上の適正位置に位置している場合には、マーク18は、カメラ10により撮影された撮影画像の中心に位置するようになる。
【0070】
一方、例えば金型6のメンテナンスのために、金型6をダイプレート4に対して着脱した場合には、
図12に示すように、金型6は、ダイプレート4上の適正位置(
図12において破線で示す位置)から変位位置(
図12において実線で示す位置)に変位することがある。この場合、マーク18は、カメラ10により撮影された撮影画像58の中心から変位した位置に位置している。プロセッサ38は、カメラ座標軸において、マーク18の座標から撮影画像58の中心の座標までの、X3軸方向の距離x及びY3軸方向の距離y(すなわち、互いに直交する二方向における変位量)を算出する。そして、プロセッサ38は、算出したx及びyを、補正値として取得する。
【0071】
同様にして、プロセッサ38は、他の3つのマーク20,22,24についても、補正値x及びyをそれぞれ算出する。
【0072】
次いで、プロセッサ38は、マーク18のマーク基準座標と、マーク18に対応する補正値x,yとに基づいて、マーク18のマーク変位座標を算出する。また、プロセッサ38は、マーク20のマーク基準座標と、マーク20に対応する補正値x,yとに基づいて、マーク20のマーク変位座標を算出する。また、プロセッサ38は、マーク22のマーク基準座標と、マーク22に対応する補正値x,yとに基づいて、マーク22のマーク変位座標を算出する。また、プロセッサ38は、マーク24のマーク基準座標と、マーク24に対応する補正値x,yとに基づいて、マーク24のマーク変位座標を算出する。
【0073】
[2-7.ステップS106の処理]
図13~
図18を参照しながら、上述したステップS106の処理について説明する。
図13~
図18は、
図4のフローチャートのステップS106の処理を説明するための図である。
【0074】
図13の(a)に示すように、プロセッサ38は、複数のマーク18~24の各々のマーク基準座標から、適正位置に位置している金型6の交点Gの位置を示す第1の交点座標を算出する。この交点Gは、金型6が適正位置に位置している状態での、マーク18の基準位置を示すマーク基準座標とマーク24の基準位置を示すマーク基準座標とを結ぶ第1の直線と、マーク20の基準位置を示すマーク基準座標とマーク22の基準位置を示すマーク基準座標とを結ぶ第2の直線との交点である。
【0075】
次いで、
図13の(b)に示すように、プロセッサ38は、複数のマーク18~24の各々のマーク変位座標から、変位位置に位置している金型6の交点Gの位置を示す第2の交点座標を算出する。この交点Gは、金型6が適正位置から変位位置に変位している状態での、マーク18の変位位置を示すマーク変位座標とマーク24の変位位置を示すマーク変位座標とを結ぶ第3の直線と、マーク20の変位位置を示すマーク変位座標とマーク22の変位位置を示すマーク変位座標とを結ぶ第4の直線との交点である。
【0076】
次いで、プロセッサ38は、
図13の(a)に示す交点Gと
図13の(b)に示す交点Gとが一致した状態で、
図13の(a)において破線で示す第1の直線と、
図13の(b)において一点鎖線で示す第3の直線とのなす角度θを、補正値として算出する。なお、プロセッサ38は、
図13の(a)に示す交点Gと
図13の(b)に示す交点Gとが一致した状態で、
図13の(a)において破線で示す第2の直線と、
図13の(b)において一点鎖線で示す第4の直線とのなす角度θを、補正値として算出してもよい。
【0077】
なお、本実施の形態では、プロセッサ38は、第1の直線と第2の直線との交点Gの位置を示す第1の交点座標、及び、第3の直線と第4の直線との交点Gの位置を示す第2の交点座標を算出したが、これに限定されない。例えば、金型6の表面に配置されたマークの数が2個である場合には、プロセッサ38は、2個のマークの中点の位置を示す中点座標を算出すればよい。また例えば、金型6の表面に配置されたマークの数が3個である場合には、プロセッサ38は、3個のマークを各頂点とする三角形の重心の位置を示す重心座標を算出すればよい。
【0078】
ここで、
図14に示すように、ハンド部28を多関節アーム部26(
図1B参照)に対して補正値θだけ回転させた場合、カメラ10の位置は、ハンド部28を回転させる前後で大きく移動する。これは、XY平面視で、カメラ10がハンド部28の回転中心である回転軸線32から離隔しているためである。このことを考慮して、プロセッサ38は、後述する補正値θxyを算出する。
【0079】
図15に示すように、金型6がダイプレート4上の適正位置から変位位置に変位した場合には、ハンド部28が補正前の位置(すなわち、予めプログラムされた、一対のインサート部品34,36のインサートを実行するための位置)(以下、「インサート実行位置」という)に移動すると、一対のインサート部品34,36の各インサート位置がそれぞれ一対のインサート穴14,16に対して変位するようになる。そのため、上述した補正値θと補正値x,yとを用いて、金型6に対するハンド部28のインサート実行位置を補正する必要がある。
【0080】
まず、
図16に示すように、プロセッサ38は、多関節アーム部26を駆動することにより、ツールフランジ30の径中心(回転軸線32)を中心に、金型6に対してハンド部28を補正値θだけ回転させる。この時、一対のインサート部品34,36の各々はツールフランジ30の径中心から離隔しているため、ハンド部28の回転に伴う一対のインサート部品34,36の各移動量が大きくなる。そのため、この段階では、一対のインサート部品34,36の各インサート位置はそれぞれ、一対のインサート穴14,16と一致していない。
【0081】
次いで、
図17に示すように、プロセッサ38は、多関節アーム部26を駆動することにより、金型6に対してハンド部28を補正値x,yだけ水平方向に(すなわち、XY平面内で)移動させる。ここで、水平方向とは、金型6の表面6aと平行な面方向である。この段階でも、一対のインサート部品34,36の各インサート位置はそれぞれ、一対のインサート穴14,16と一致していない。
【0082】
次いで、プロセッサ38は、複数のマーク18~24のうち特定のマーク(例えば、マーク24)と、
図17に示すように移動させたインサート位置とを結ぶ直線をRとした時、直線Rと補正値θとを用いて座標軸変換を行う。次いで、プロセッサ38は、移動させたインサート位置と座標軸変換を行った位置との差分を算出し、算出した当該差分を補正値θxyとして取得する。
【0083】
次いで、
図18に示すように、プロセッサ38は、多関節アーム部26を駆動することにより、特定のマーク(例えば、マーク24)を中心に、金型6に対してハンド部28を補正値θxyだけ回転させる。これにより、一対のインサート部品34,36の各インサート位置はそれぞれ、一対のインサート穴14,16と一致するようになり、金型6に対するハンド部28のインサート実行位置の補正が完了する。
【0084】
なお、本実施の形態では、複数のマーク18~24のうち1つのマークに対して上記差分を算出して補正値θxyを取得したが、これに限定されず、複数のマーク18~24の各々に対して上記差分を算出して、これら複数の差分の平均値を補正値θxyとして取得してもよい。
【0085】
[3.効果]
本実施の形態では、金型6がダイプレート4上の適正位置から変位位置に変位した場合に、人手により多関節ロボット8の動作プログラム又は教示位置を修正する必要が無いため、金型6に対する多関節ロボット8のハンド部28のインサート実行位置を容易に補正することができる。
【0086】
(変形例)
以上、本発明の実施の形態に係る位置補正装置について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0087】
上記実施の形態では、複数のマーク18~24の各々を略円形状に形成したが、これに限定されず、例えば楕円形状又は多角形状等、任意の形状に形成してもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、複数のマーク18~24をそれぞれ金型6の表面6aにおける四隅の各近傍に配置したが、これに限定されず、金型6の表面6aにおける任意の箇所に配置してもよい。
【0089】
また、上記実施の形態では、金型6の表面6aに複数のマーク18~24を配置したが、これに限定されず、1つのマークのみを配置してもよい。
【0090】
なお、本発明は、上記第1の態様~第6の態様のいずれか一態様に係る位置補正方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、例えばインサート成形に用いられる位置補正装置等として適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
2 部品挿入装置
4 ダイプレート
6 金型
6a 表面
8 多関節ロボット
10 カメラ
12 位置補正装置
14,16 インサート穴
18,20,22,24 マーク
26 多関節アーム部
28 ハンド部
28a 支持部
28b 把持部
30 ツールフランジ
32 回転軸線
34,36 インサート部品
38 プロセッサ
40 メモリ
42 マッチング画像
44,46,48,54,56,58 撮影画像
50 直線
52 基準線