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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174734
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】建物ユニットの連結構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
E04B1/348 Q
E04B1/348 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092723
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 敬哉
(57)【要約】
【課題】間隔を空けて建物ユニットを配置した場合において、建物ユニットが対向する部分の柱を省略しても建物の強度が低減され難い方法を提供する。
【解決手段】建物ユニット12の連結構造は、柱梁架構によって直方体形状に形成され、一方向に沿う第一梁(梁18)を備えた第一ユニット(建物ユニット12A)と、柱梁架構によって直方体形状に形成され、第一梁と同一直線上に配置された第二梁(梁18)を備え、第一ユニットと一方向に間隔を空けて配置された第二ユニット(建物ユニット12B)と、第一梁の中央部から第二梁の中央部に亘って、第一梁及び第二梁に平行に配置された補剛梁20と、補剛梁20と、第一梁及び第二梁のそれぞれと、を連結する連結部材30と、を有し、補剛梁20は、上下方向に配置されたウェブ22と、ウェブ22の上下端から横方向へ突出するフランジ24と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱梁架構によって直方体形状に形成され、一方向に沿う第一梁を備えた第一ユニットと、
柱梁架構によって直方体形状に形成され、前記第一梁と同一直線上に配置された第二梁を備え、前記第一ユニットと前記一方向に間隔を空けて配置された第二ユニットと、
前記第一梁の中央部から前記第二梁の中央部に亘って、前記第一梁及び前記第二梁に平行に配置された補剛梁と、
前記補剛梁と、前記第一梁及び前記第二梁のそれぞれと、を連結する連結部材と、
を有し、
前記補剛梁は、上下方向に配置されたウェブと、前記ウェブの上下端から横方向へ突出するフランジと、を備えている、
建物ユニットの連結構造。
【請求項2】
前記フランジは、前記ウェブに溶接によって固定され、前記ウェブの上下端のそれぞれにおいて、前記補剛梁の長手方向に沿って複数の部分に分割されている、
請求項1に記載の建物ユニットの連結構造。
【請求項3】
前記第一梁の端部が固定され、柱を接合可能な第一仕口部材と、
前記第二梁の端部が固定され、柱を接合可能な第二仕口部材と、
前記補剛梁と前記第一仕口部材とを連結する第一繋ぎプレートと、
前記補剛梁と前記第二仕口部材とを連結する第二繋ぎプレートと、
を備えた、
請求項1又は2に記載の建物ユニットの連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物ユニットの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、並設された建物ユニットと間隔をあけて配置された建物ユニットを居住空間の広さや設計の自由度を保ちつつ補強できる建物ユニットの連結構造が記載されている。この建物ユニットの連結構造では、補強梁を、第1の建物ユニットの外側端部から第3の建物ユニット及び第4の建物ユニットの外側端部までに亘って架け渡している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-163864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、補強梁を第1~第4の建物ユニットに架け渡すことにより、第1~第4の建物ユニットの突き合わされる部分の柱を取り外しても、第1~第4の建物ユニットの強度を保持することができる旨が記載されている。しかし、各ユニットの端部間に亘る長さの梁は重量が大きく、梁の自重による撓みや、梁を支持する柱の強度の検討を要する。また、長い梁はコストも大きくなる。このため、間隔を空けて建物ユニットを配置した場合において、建物ユニットが対向する部分の柱を省略しても建物の強度が低減され難い別の方法が求められる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、間隔を空けて建物ユニットを配置した場合において、建物ユニットが対向する部分の柱を省略しても建物の強度が低減され難い方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様の建物ユニットの連結構造は、柱梁架構によって直方体形状に形成され、一方向に沿う第一梁を備えた第一ユニットと、柱梁架構によって直方体形状に形成され、前記第一梁と同一直線上に配置された第二梁を備え、前記第一ユニットと前記一方向に間隔を空けて配置された第二ユニットと、前記第一梁の中央部から前記第二梁の中央部に亘って、前記第一梁及び前記第二梁に平行に配置された補剛梁と、前記補剛梁と、前記第一梁及び前記第二梁のそれぞれと、を連結する連結部材と、を有し、前記補剛梁は、上下方向に配置されたウェブと、前記ウェブの上下端から横方向へ突出するフランジと、を備えている。
【0007】
第一態様の建物ユニットの連結構造では、直方体形状に形成された第一ユニットと第二ユニットとが一方向に間隔を空けて配置されている。そして、当該一方向に沿う第一ユニットの第一梁及び第二ユニットの第二梁が連結部材を介して補剛梁に連結されている。このため、第一梁、第二梁及び補剛梁が一体化して、大梁が形成される。
【0008】
ここで、補剛梁は、上下方向に沿うウェブを備えている。このため、大梁の撓みが抑制される。
【0009】
また、補剛梁は、ウェブの上下端から横方向へ突出するフランジを備えている。このため、大梁の横座屈が抑制される。
【0010】
これにより、第一ユニットと第二ユニットとが対向する部分において、第一梁と第二梁とをそれぞれ支持する柱を省略しても、大梁が短期荷重及び長期荷重に抵抗することができる。
【0011】
また、補剛梁は、第一梁の中央部から第二梁の中央部に亘って配置されている。すなわち、仮に第一ユニットと第二ユニットとが対向する部分の柱を省略した場合、撓みが他の部分より大きくなる部分に補剛梁が配置されている。また、座屈長さの中心部に補剛梁が配置されている。これにより、大梁の撓みと横座屈とを効率的に抑制している。
【0012】
このように、この建物ユニットの連結構造では、間隔を空けて建物ユニットを配置した場合において、建物ユニットが対向する部分の柱を省略しても、建物の強度が低減され難い。
【0013】
そして、間隔を空けて建物ユニットを配置し、建物ユニットが対向する部分の柱を省略することで、建物内部に広い無柱空間を形成することができる。
【0014】
第二態様の建物ユニットの連結構造は、第一態様の建物ユニットの連結構造において、前記フランジは、前記ウェブに溶接によって固定され、前記ウェブの上下端のそれぞれにおいて、前記補剛梁の長手方向に沿って複数の部分に分割されている。
【0015】
第二態様の建物ユニットの連結構造では、補剛梁のフランジがウェブに溶接によって固定されている。一般的に、溶接による接合では、溶接歪みが生じる可能性がある。仮に上フランジをウェブに溶接した際にウェブが変形すると、下フランジを溶接し難くなる。このような溶接歪みは、母材の全長に対して溶接長さが長い場合に、引張力が大きくなって生じ易い。
【0016】
そこで、この建物ユニットの連結構造では、フランジがウェブの上下端のそれぞれにおいて、補剛梁の長手方向に沿って複数の部分に分割されている。これにより溶接長さが短くなり引張力が分散され、溶接歪みが抑制される。
【0017】
第三態様の建物ユニットの連結構造は、第一態様又は第二態様の建物ユニットの連結構造において、前記第一梁の端部が固定され、柱を接合可能な第一仕口部材と、前記第二梁の端部が固定され、柱を接合可能な第二仕口部材と、前記補剛梁と前記第一仕口部材とを連結する第一繋ぎプレートと、前記補剛梁と前記第二仕口部材とを連結する第二繋ぎプレートと、を備える。
【0018】
第三態様の建物ユニットの連結構造では、補剛梁と第一梁の端部が固定された第一仕口部材とが第一繋ぎプレートで連結されている。同様に、補剛梁と第二梁の端部が固定された第二仕口部材とが第二繋ぎプレートで連結されている。
【0019】
このため、仮に第一ユニット及び第二ユニットの上方に別の建物ユニットが置かれて柱が設置された場合に、当該柱の荷重を、第一繋ぎプレート及び第二繋ぎプレートで受けて補剛梁で支持できる。これにより、第一繋ぎプレート及び第二繋ぎプレートがない場合と比較して荷重をスムーズに大梁へ伝達し易い。
【発明の効果】
【0020】
本開示によると、建物ユニットが対向する部分の柱を省略しても建物の強度が低減され難い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る建物ユニットの連結構造が適用される建物ユニットの配置の一例を示した斜視図である。
図2】本実施形態に係る建物ユニットの連結構造が示された斜視図である。
図3】(A)は本実施形態に係る補剛梁、連結部材及び繋ぎプレートを示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線断面図である。
図4】(A)は本実施形態に係る補剛梁を、連結部材及び繋ぎプレートを介して建物ユニットに連結した状態を示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線断面図である。
図5】繋ぎプレートの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態に係る建物ユニットの連結構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0023】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0024】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0025】
<建物ユニットの連結構造>
(建物ユニット)
図1には、建物10を形成する複数の建物ユニット12A、12B、12C及び12Dが並べられた状態が示されている。建物ユニット12Aと12Bとの組み合わせは、本開示の第一ユニット及び第二ユニットの組み合わせの一例である。同様に、建物ユニット12Cと12Dとの組み合わせは、本開示の第一ユニット及び第二ユニットの組み合わせの一例である。
【0026】
なお、以下の説明において、特に限定する必要がない場合は、建物ユニット12A、12B、12C及び12Dを、単に建物ユニット12と称す場合がある。
【0027】
それぞれの建物ユニット12は、仕口部材14に柱16及び梁18が接合されて形成されている。仕口部材14は角型鋼管であり、互いに直交する2つの側面のそれぞれに梁18が接合されている。また、仕口部材14は柱16を接合可能な部材である。
【0028】
梁18は鋼製のチャンネル材であり、両端がそれぞれ異なる仕口部材14に接合されている。4つの仕口部材14及び4本の梁18によって、X方向及びY方向に沿う枠状のフレームFが形成され、このフレームFは、水平方向に寝かせて配置されている。
【0029】
フレームFは、上下方向に間隔を空けて配置され、それぞれのフレームFが角型鋼管の柱16によって連結されている。換言すると、フレームFを構成する仕口部材14に、柱16の上端または下端が接合されている。これにより、柱梁架構によって直方体形状に形成された建物ユニット12が形成されている。
【0030】
(建物ユニットの相互配置)
建物ユニット12Aと12Bとは、X方向(本開示の一方向の一例)に間隔を空けて配置されている。建物ユニット12Cと12Dとは、X方向に間隔を空けて配置されている。建物ユニット12Aと12Cとは、Y方向に近接して配置されている。建物ユニット12Bと12Dとは、Y方向に近接して配置されている。
【0031】
建物ユニット12AにおいてX方向に沿う梁18(本開示の第一梁の一例)と、建物ユニット12BにおいてX方向に沿う梁18(本開示の第二梁の一例)とは、同一直線状に配置されている。同様に、建物ユニット12CにおいてX方向に沿う梁18(本開示の第一梁の一例)と、建物ユニット12DにおいてX方向に沿う梁18(本開示の第二梁の一例)とは、同一直線状に配置されている。
【0032】
また、建物ユニット12AにおいてY方向に沿う梁18と、建物ユニット12CにおいてY方向に沿う梁18とは、同一直線状に配置されている。同様に、建物ユニット12BにおいてY方向に沿う梁18と、建物ユニット12DにおいてY方向に沿う梁18とは、同一直線状に配置されている。
【0033】
(上階の構成)
建物ユニット12は建物10の1階部分を構成する。この建物ユニット12の上方には、同様の構成の建物ユニット12を配置して、建物10の2階を構成してもよい。2階を構成する建物ユニットは、建物ユニット12A、12B、12C及び12Dの何れかの上方に配置してもよいし、全ての上方に配置してもよい。なお、2階以上に配置する建物ユニット12においても、本開示の建物ユニットの連結構造を適用できる。
【0034】
(補剛梁)
建物ユニット12Aにおいて建物ユニット12B及び12Cと対向する角部では、柱16が省略されている。同様に、建物ユニット12Bにおいて建物ユニット12A及び12Dと対向する角部、建物ユニット12Cにおいて建物ユニット12A及び12Dと対向する角部、建物ユニット12Dにおいて建物ユニット12B及び12Cと対向する角部でも、柱16が省略されている。なお、以下の説明においては、これらの角部を、角部Jと称す場合がある。
【0035】
柱16の省略によって建物10の強度が低減することを抑制するために、建物10には図2に示す補剛梁20が設けられている。補剛梁20は、建物ユニット12AにおいてX方向に沿う梁18の中央部から建物ユニット12BにおいてX方向に沿う梁18の中央部に亘って、これらの梁18に平行に配置されている。なお、「中央部」とは、梁18を長手方向(軸方向)に3等分した際に中央に位置する範囲を指す。
【0036】
また、補剛梁20は、建物ユニット12A及び12Cに挟まれる位置から、建物ユニット12B及び12Dに挟まれる位置に亘って配置されている。
【0037】
図3(A)~(C)に示すように、補剛梁20は、ウェブ22及びフランジ24を備えている。図3(B)に示すように、ウェブ22は上下方向に沿って配置された鋼板であり、上下端のそれぞれにフランジ24が溶接されている。フランジ24はウェブ22の上下端から横方向へ突出した板材である。
【0038】
なお、フランジ24の突出方向は、図1に示す建物ユニット12A及び12Cに挟まれる位置においては建物ユニット12A側及び12C側である。同様に、建物ユニット12B及び12Dに挟まれる位置においては建物ユニット12B側及び12D側である。
【0039】
図3(A)に示すように、フランジ24は、補剛梁20の長手方向に沿って複数の部分に分割されている。換言すると、フランジ24には、補剛梁20の長手方向に沿って間欠部Vを有している。
【0040】
具体的には、フランジ24には、補剛梁20の長手方向に沿って2箇所の間欠部Vが設けられ、フランジ24は、補剛梁20の長手方向に沿って3つの部分に分割されている。
【0041】
間欠部Vが設けられる位置は特に限定されるものではないが、図2に示す状態において、少なくとも建物ユニット12A及び12Cに挟まれる位置又は建物ユニット12B及び12Dに挟まれる位置に設けられる。
【0042】
図4(B)、(C)に示すように、補剛梁20の梁せいは、建物ユニット12における梁18の梁せいより大きい。矢印Nを用いて示したように、建物ユニット12の上方にさらに建物ユニット12が配置される場合は、補剛梁20の上端部が上階の建物ユニット12の梁18に挟まれて配置される。
【0043】
(補剛梁の連結-連結部材)
図3(A)、(B)に示すように、補剛梁20には、連結部材30が連結されている。連結部材30は長尺方向が上下方向に沿うように配置された鋼製のチャンネル材であり、フランジの先端がウェブ22に溶接されている。
【0044】
また、連結部材30は、ウェブ22の両面において、ウェブ22の長手方向に複数箇所設けられている。ウェブ22の長手方向における連結部材30の数量は、ウェブ22の長さに応じて適宜変更されるが、本実施形態においては4つ設けられている。
【0045】
図4(A)に示すように、連結部材30は、補剛梁20と、建物ユニット12AにおいてX方向に沿う梁18及び建物ユニット12BにおいてX方向に沿う梁18のそれぞれと、を連結している。すなわち、図4(A)の紙面下側に配置された建物ユニット12A及び12Bにおけるそれぞれの梁18が、連結部材30を介して補剛梁20によって連結されている。
【0046】
同様に、連結部材30は、補剛梁20と、建物ユニット12CにおいてX方向に沿う梁18及び建物ユニット12DにおいてX方向に沿う梁18のそれぞれと、を連結している。すなわち、図4(A)の紙面上側に配置された建物ユニット12C及び12Dにおけるそれぞれの梁18が、連結部材30を介して補剛梁20によって連結されている。
【0047】
また、図4(B)に示すように、建物ユニット12A及び12Cにおいて、それぞれ対向して配置された梁18同士が、連結部材30を介して補剛梁20によって連結されている。
【0048】
同様に、建物ユニット12B及び12Dにおいて、それぞれ対向して配置された梁18同士が、連結部材30を介して補剛梁20によって連結されている。なお、連結部材30と梁18とは、図示しないボルトを用いて連結されている。
【0049】
このように、補剛梁20は、建物ユニット12A、12B、12C及び12Dにそれぞれ設けられた4つの梁18(一端が角部J(図1参照)側に配置された梁18)を一体化している。
【0050】
なお、建物ユニット12の上方に2階の建物ユニット12を配置する場合、当該建物ユニット12の梁18は、1階の建物ユニット12の梁18の上方に配置される。2階の建物ユニット12の梁18に、補剛梁20は連結されない。
【0051】
(補剛梁の連結-繋ぎプレート)
図3(A)、(C)に示すように、補剛梁20には、繋ぎプレート40が連結されている。繋ぎプレート40はL字状に折り曲げて形成された鋼材であり、上下方向に沿う片40Aがウェブ22に溶接されている。一方、横方向に沿う片40Bが、補剛梁20の長手方向と直交する方向へ突出している。
【0052】
繋ぎプレート40は、4つ設けられている。図4(A)に示すように、それぞれの繋ぎプレート40は、建物ユニット12A、12B、12C及び12Dそれぞれの角部Jに位置する仕口部材14に接合されている。
【0053】
建物ユニット12の上端部に設けられた仕口部材14は、図4(C)に示すように、その上端部に、水平方向に沿う板材であるトッププレート14Aを備えている。繋ぎプレート40の片40Bは、このトッププレート14Aに図示しないボルトを用いて接合される。
【0054】
矢印Nを用いて示したように、建物ユニット12の上方にさらに建物ユニット12が配置される場合は、繋ぎプレート40の片40Bは、トッププレート14Aとベースプレート14Bとの間に挟まれて配置される。ベースプレート14Bは、上階の建物ユニット12における仕口部材14の下端部に備えられた水平方向に沿う板材である。
【0055】
このように、4つの繋ぎプレート40は、補剛梁20と、建物ユニット12A、12B、12C及び12Dそれぞれの角部Jに位置する仕口部材14と、を連結している。
【0056】
なお、角部Jにおける建物ユニット12Aの仕口部材14及び建物ユニット12Bの仕口部材14の組み合わせは、本開示における第一仕口部材及び第二仕口部材の組み合わせの一例である。
【0057】
同様に、角部Jにおける建物ユニット12Cの仕口部材14及び建物ユニット12Dの仕口部材14の組み合わせは、本開示における第一仕口部材及び第二仕口部材の組み合わせの一例である。
【0058】
また、建物ユニット12Aに連結された繋ぎプレート40及び建物ユニット12Bに連結された繋ぎプレート40の組み合わせは、本開示における第一繋ぎプレート及び第二繋ぎプレートの組み合わせの一例である。
【0059】
同様に、建物ユニット12Cに連結された繋ぎプレート40及び建物ユニット12Dに連結された繋ぎプレート40の組み合わせは、本開示における第一繋ぎプレート及び第二繋ぎプレートの組み合わせの一例である。
【0060】
<作用及び効果>
本開示の実施形態に係る建物ユニットの連結構造では、図1に示すように、直方体形状に形成された第一ユニットと第二ユニット(建物ユニット12Aと12B、又は、建物ユニット12Cと12D)とがX方向に間隔を空けて配置されている。
【0061】
そして、図4(A)に示すように、X方向に沿う建物ユニット12Aの梁18及び建物ユニット12Bの梁18が、連結部材30を介して補剛梁20に連結されている。このため、建物ユニット12A、12Bの梁18及び補剛梁20が一体化して、大梁が形成される。
【0062】
同様に、X方向に沿う建物ユニット12Cの梁18及び建物ユニット12Dの梁18も、連結部材30を介して補剛梁20に連結されている。このため、大梁には、建物ユニット12C、12Dの梁18が一体化される。
【0063】
ここで、補剛梁20は、図3(B)、(C)に示すように、上下方向に沿うウェブ22を備えている。このため、大梁の撓みが抑制される。
【0064】
また、補剛梁20は、ウェブ22の上下端から横方向へ突出するフランジ24を備えている。このため、大梁の横座屈が抑制される。
【0065】
これにより、建物ユニット12Aと12Bとが対向する部分及び建物ユニット12Cと12Dとが対向する部分(角部J)において、梁18を支持する柱16を省略しても、大梁が短期荷重及び長期荷重に抵抗することができる。
【0066】
また、補剛梁20は、建物ユニット12AにおいてX方向に沿う梁18の中央部から建物ユニット12BにおいてX方向に沿う梁18の中央部に亘って配置されている。同様に、補剛梁20は、建物ユニット12CにおいてX方向に沿う梁18の中央部から建物ユニット12DにおいてX方向に沿う梁18の中央部に亘って配置されている。
【0067】
すなわち、柱16が省略されて撓みが他の部分より大きくなる部分に補剛梁20が配置されている。また、座屈長さの中心部に補剛梁20が配置されている。これにより、大梁の撓みと横座屈とを効率的に抑制している。
【0068】
このように、この建物ユニットの連結構造では、間隔を空けて建物ユニット12を配置した場合において、建物ユニット12が対向する部分の柱16を省略しても、建物10の強度が低減され難い。
【0069】
そして、間隔を空けて建物ユニット12を配置し、建物ユニット12が対向する部分の柱16を省略することで、建物10の内部に広い無柱空間を形成することができる。
【0070】
また、本開示の建物ユニットの連結構造では、図3(B)に示すように、補剛梁20のフランジ24がウェブ22に溶接によって固定されている。一般的に、溶接による接合では、溶接歪みが生じる可能性がある。仮に上フランジをウェブに溶接した際にウェブが変形すると、下フランジを溶接し難くなる。このような溶接歪みは、母材の全長に対して溶接長さが長い場合に、引張力が大きくなって生じ易い。
【0071】
そこで、この建物ユニットの連結構造では、図3(A)に示すように、フランジ24がウェブ22の上下端のそれぞれにおいて、補剛梁20の長手方向に沿って複数の部分に分割されている。これにより溶接長さが短くなり引張力が分散され、溶接歪みが抑制される。
【0072】
また、本開示の建物ユニットの連結構造では、図4(A)、(C)に示すように、補剛梁20と、角部Jにおいて梁18の端部が固定された仕口部材14と、が繋ぎプレート40で連結されている。
【0073】
このため、仮に建物ユニット12の上方に上階の建物ユニット12が置かれて柱16が設置された場合に、当該柱16の荷重を、繋ぎプレート40で受けて補剛梁20で支持できる。これにより、繋ぎプレート40がない場合と比較して荷重をスムーズに大梁へ伝達し易い。
【0074】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、図4(A)に示すように、繋ぎプレート40を4つ設けている。そして、それぞれの繋ぎプレート40を、建物ユニット12A、12B、12C及び12Dそれぞれの角部Jに位置する仕口部材14に接合したが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0075】
例えば図5に示す繋ぎプレート50のように、建物ユニット12Aの角部Jに位置する仕口部材14と、建物ユニット12Bの角部Jに位置する仕口部材14に架け渡してもよい。同様に、繋ぎプレート50を、建物ユニット12Cの角部Jに位置する仕口部材14と、建物ユニット12Dの角部Jに位置する仕口部材14に架け渡してもよい。
【0076】
これにより、それぞれの繋ぎプレート50は、離して置かれた2つの建物ユニット12におけるそれぞれの仕口部材14を連結する。このような繋ぎプレート50によると、補剛梁20の横座屈抑制効果が大きい。
【0077】
なお、本開示においては、繋ぎプレート40または50を省略してもよい。これらを省略しても、補剛梁20のフランジ24により、大梁の横座屈抑制効果を得られる。この際、フランジ24の突出幅を適宜変更すればよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、補剛梁20のフランジ24を、補剛梁20の長手方向に沿って複数の部分に分割したが、本発明の実施形態はこれに限らない。溶接歪みの程度が小さければ、フランジ24を補剛梁20の全長に亘って配置してもよい。
【0079】
また、上記実施形態においては、角部Jにおいて柱16を省略しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。本開示では、補剛梁20を設けることにより柱16を省略しても建物10の強度が低減され難い効果を得ることができるが、例えば柱16に代えて柱16より細い柱や間柱を配置してもよい。
【0080】
また、上記実施形態においては、補剛梁20が建物ユニット12A、12B、12C及び12Dを連結しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば建物ユニット12C及び12Dを省略し、補剛梁20が建物ユニット12A及び12Bのみを連結するものとしてもよい。このような場合、補剛梁20は建物10の外周部に配置される。このため、建物10の外周部にガレージ等を形成する場合に、広い開口部を形成できる。このように、本開示は様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0081】
12 建物ユニット
12A 建物ユニット(第一ユニット)
12B 建物ユニット(第二ユニット)
12C 建物ユニット(第一ユニット)
12D 建物ユニット(第二ユニット)
14 仕口部材(第一仕口部材、第二仕口部材)
18 梁(第一梁、第二梁)
20 補剛梁
22 ウェブ
24 フランジ
30 連結部材
40 繋ぎプレート(第一繋ぎプレート、第二繋ぎプレート)
50 繋ぎプレート
図1
図2
図3
図4
図5