(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174756
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】設備保全システム及び設備保全方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20241210BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092763
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】韓 露
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴之
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
(57)【要約】
【課題】出張による保全サービスと遠隔による保全サービスの両方のコストを比較し、コストパフォーマンスの良い保守方法を提案する。
【解決手段】
設備の故障に対応する対応方法を判定する設備保全システムであって、設備の故障と原因が登録されたアセット知識データベースと、設備から出力される故障情報を受付ける入力部と、入力部が受付けた故障情報を基にアセット知識データベースを参照し故障原因を推定する故障原因推定部と、故障原因推定部が推定した故障原因に対応するための対応方法を判定する対応方法判定部と、対応方法判定部が判定した対応方法に必要なコストを設備が設置されている現地へ技術者が出向いて対応する出張対応のコストと遠隔で対応する遠隔対応のコストに分けて見積もるコスト見積部と、コスト見積部が見積もったコストのうち最もコストが小さい対応方法を出力する出力部を備える設備保全システム
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の故障に対応する対応方法を判定する設備保全システムであって、
設備の故障と原因が登録されたアセット知識データベースと、
設備から出力される故障情報を受付ける入力部と、
入力部が受付けた故障情報を基にアセット知識データベースを参照し故障原因を推定する故障原因推定部と、
故障原因推定部が推定した故障原因に対応するための対応方法を判定する対応方法判定部と、
対応方法判定部が判定した対応方法に必要なコストを設備が設置されている現地へ技術者が出向いて対応する出張対応のコストと遠隔で対応する遠隔対応のコストに分けて見積もるコスト見積部と、
コスト見積部が見積もった出張対応のコストと遠隔対応のコストのうちコストが小さい対応方法を提案する出力する出力部を備える設備保全システム。
【請求項2】
前記コスト見積部は出張対応のコストを見積もるとき、技術者が現地へ出向くための交通費と時間をコストとして見積もる請求項1に記載の設備保全システム。
【請求項3】
前記アセット知識データベースは故障情報に対応付けられた故障原因の発生確率を対応付けて格納し、
前記故障原因推定部は故障原因の発生確率を基に故障原因を推定する請求項2に記載の設備保全システム。
【請求項4】
前記入力部は故障対応のための費用と時間のどちらを優先するかを示すコスト情報を受付け、
前記コスト見積部がコスト情報に基づいてコストを見積もるときに使用する費用と時間のどちらを優先するかを示す重み係数を決定する重み係数算出部を備える請求項2に記載の設備保全システム。
【請求項5】
前記故障原因推定部は複数の故障原因を推定し、
前記コスト見積部は故障原因毎にコストを見積り、出張対応のコストの合計と遠隔対応のコストの合計を求め、
前記出力部は出張対応のコストの合計と遠隔対応のコストの合計のうち小さいコストを出力する請求項2に記載の設備保全システム。
【請求項6】
設備の故障に対応する対応方法を判定する設備保全方法であって、
入力部が設備から出力される故障情報を受付け、
故障原因推定部が入力部が受付けた故障情報を基に設備の故障と原因が登録されたアセット知識データベースを参照し故障原因を推定し、
対応方法判定部が故障原因推定部が推定した故障原因に対応するための対応方法を判定し、
コスト見積部が対応方法判定部が判定した対応方法に必要なコストを設備が設置されている現地へ技術者が出向いて対応する出張対応のコストと遠隔で対応する遠隔対応のコストに分けて見積もり、
出力部がコスト見積部が見積もった出張対応のコストと遠隔対応のコストのうちコストが小さい対応方法を提案する設備保全方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備保全システム及び設備保全方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用複合機などの設備に故障が発生したとき、保全部門ではユーザから症状を聞き取り、故障原因の候補を推定する。この推定結果を基に設備が設置されているユーザサイトに出張するか遠隔対応するかを決定する必要がある。
【0003】
故障の対応方法は遠隔で保全又はユーザサイトへ出張しての保全の二種類の方法がある。特許文献1では不具合現象に対して復旧のために必要な処置作業の候補およびそれを特定するための診断作業の情報を含む保守支援Tree情報を管理する保守支援Tree情報管理部と、上記保守支援Tree中において、過去の事例数や保守作業員の経験値や診断作業や各作業にかかるコスト情報を使い、作業コストあるいは作業時間の期待値が最小となる作業の開始点を算出する最適作業算出部と、保守対象装置の復旧が完了するまで上記最適作業の算出を繰返すために、実行した作業の結果を反映して上記保守支援Tree情報を更新する診断作業実行部とを備える保守支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の保守支援システムでは保全サービスを行う場合に必要な出張に必要な移動時間と交通費に関するコストが考慮されていない。
【0006】
本発明の目的は、故障原因推定結果を用いて、出張に必要な移動時間と交通費に関するコストを定量化し、出張による保全サービスと遠隔による保全サービスの両方のコストを比較し、コストパフォーマンスの良い保守方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、設備の故障に対応する対応方法を判定する設備保全システムであって、設備の故障と原因が登録されたアセット知識データベースと、設備から出力される故障情報を受付ける入力部と、入力部が受付けた故障情報を基にアセット知識データベースを参照し故障原因を推定する故障原因推定部と、故障原因推定部が推定した故障原因に対応するための対応方法を判定する対応方法判定部と、対応方法判定部が判定した対応方法に必要なコストを設備が設置されている現地へ技術者が出向いて対応する出張対応のコストと遠隔で対応する遠隔対応のコストに分けて見積もるコスト見積部と、コスト見積部が見積もったコストのうち最もコストが小さい対応方法を出力する出力部を備える設備保全システムにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、出張に必要な移動時間と交通費に関するコストを定量化しコストパフォーマンスの良い保守方法を提案することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】本発明の実施例における親ノードが異常時の子ノード異常確率の例
【
図5】本発明の実施例における親ノードが正常時の子ノード異常確率の例
【
図6】本発明の実施例における保守知識ベイジアンネットワークの例
【
図7】本発明の実施例における保守知識ベイジアンネットワークの生成処理のフローチャートの例
【
図8】本発明の実施例における故障原因推定処理のフローチャートの例
【
図9】本発明の実施例における故障原因推定結果の例
【
図10】本発明の実施例における故障原因対応方法テーブルの例
【
図11】本発明の実施例における出張費用テーブルの例
【
図12】本発明の実施例における対応方法データの例
【
図13】本発明の実施例における出張対応データの例
【
図14】本発明の実施例における遠隔対応データの例
【
図15】本発明の実施例における出張・遠隔対応方式の決定支援処理のフローチャートの例
【
図15a】本発明の実施例における出張・遠隔対応方式の決定支援処理のフローチャートの処理S34の例
【
図15b】本発明の実施例における出張・遠隔対応方式の決定支援処理のフローチャートの処理S35の例
【
図15c】本発明の実施例における出張・遠隔対応方式の決定支援処理のフローチャートの処理S36の例
【
図15d】本発明の実施例における出張・遠隔対応方式の決定支援処理のフローチャートの処理S37の例
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素にはなるべく同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【0011】
本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例および同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。
【0012】
また、実施例で説明する処理部は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0013】
実施例で説明するテーブル、領域等はデータベース(DB)であっても良く主記憶メモリに記憶されたデータであっても良い。
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例におけるシステム構成図の例である。設備保全システムはCPU(Central Processing Unit)2、メモリ3外部記憶装置4を備える計算機で構成されている。本実施例ではスタンドアロンの計算機を用いた構成で説明するがクラウド上のサーバで実現しても良く、各々の機能を分割し複数の計算機で実現しても良い。
【0015】
メモリ3には金銭的コストと時間的コストのどちらを優先した計算を行うかを決める重み係数決定部7、遠隔で保全を行うのか出張により現地で保全を行うのかを決める対応方法判定部8、入力されて設備の状態やアラームに基づいて故障原因を推定する故障原因推定部9、故障に対応するためのコストを見積もるコスト見積部19、入出力処理を行う入出力部10をそなえる。
【0016】
外部記憶装置4には故障モード対応方法データベース11とアセット知識データベース12を備える。故障モード対応方法データベース11には故障に対して遠隔で対応するのか出張で対応するのかを定めた故障原因対応TBL(テーブル)13、出張にかかる時間と費用を記載した出張費用TBL(テーブル)を格納している。
【0017】
アセット知識データベース12には機能故障やアラームとその原因である故障モードを対応付けた保守知識データ15、故障原因の発生する確率を格納した故障確率16、親ノード異常時子ノード異常確率17、親ノード正常時子ノード異常確率18を格納している。
【0018】
アセット知識データベースは、保守知識が蓄積されたデータベースである。保守知識とは、例えば、保守マニュアルや、FMEAなどから抽出される情報であり、例えば
図2に示すような保守知識データ、
図3~5に示す確率設定用のデータが含まれる
図2は本発明の実施例における保守知識データの例である。機能故障は冷却水が循環しない、部品2が格納できないなどの故障現象を示す。故障モードは故障の原因を示す。チェック項目はチ設備のセンサデータや環境、設備、コンポーネントなどのように、チェックすべき項目を格納する欄である。
【0019】
チェック項目は、故障モードが発生する時に発生可能な現象を洗い出し、その現象が発生したかどうかをチェックするためのものである。一つの故障モードに対応するチェック項目は一つとは限らない。その機能故障が発生するとよく発生するアラーム情報も含まれる。
【0020】
図3は、本発明の実施例における故障確率の例である。ベイジアンネットワークを作成するときに設定する確率設定用のデータである。故障モードの名称が格納される故障モード41と、状態42と、確率43を含んで構成される。この表に基づいて、各故障モードの発生確率を知ることができる。
【0021】
状態42は、YまたはNが格納されており、それぞれ故障モードの発生状態と非発生状態を意味している。これら状態は、同一の故障モードに係るYとNの確率を加算すると1になるように設定される。
【0022】
確率43は、故障モードの状態の確率が格納されている。ここで故障モードの確率は、故障モードの状態YとNを、それぞれ50%などの固定の値を入れても良い。しかし、これに限られず、過去の履歴などから計算することもできる。故障モードの発生状態の確率は、例えば、故障履歴のうち、当該故障モードの発生件数から総件数を除算した値である。
【0023】
図4は、本発明の実施例における親ノードが異常時の子ノード異常確率の例である。親ノード51、状態52、子ノード53、子ノード状態54、確率55を含んで構成される。ある故障モードが発生した際に、チェック項目が異常と正常の確率を示している。
【0024】
親ノード51には、故障モードの名称が格納されている。この表にて状態52には、Yが格納されており、故障モードの発生状態を意味している。
【0025】
子ノード53には、チェック項目が格納されており、ここではセンサ名が格納されている。子ノード状態54には、チェック項目の状態が格納されており、ここでは当該センサの状態が格納されている。確率55には、チェック項目の状態の確率が格納されており、ここではセンサの状態の確率が格納されている。同一のチェック項目の状態に係る異常と正常の確率を加算すると1.0(100%)になるように設定される。
【0026】
異常の時100%、正常の時0%などの固定値を設定することができ、過去の故障履歴から計算しても良い。
【0027】
図5は本発明の実施例における親ノードが正常時の子ノード異常確率の例である。子ノード61と、子ノード状態62と、確率63とを含む。
【0028】
子ノード61には、チェック項目が格納されており、ここではチェック項目が格納されている。子ノード状態62には、チェック内容が格納されており、ここではチェック項目の状態が格納されている。確率63には、チェック項目の状態の確率が格納されており、ここではセンサの状態の確率が格納されている。同一のチェック項目の状態に係る異常と正常の確率を加算すると1.0(100%)になるように設定される。
【0029】
異常の時0%、正常の時100%なとの固定値に設定してもよく、過去の故障履歴から計算してもよい。
【0030】
図1の故障原因推定部は、設備に異常が発生したとき、原因推定用の保守知識ベイジアンネットワークを生成し、保全員やユーザから入力を受付けた故障の症状の情報に従ってチェック項目を保守知識ベイジアンネットワークに入力し、各故障モードの発生確率を計算する。
《保守知識ベイジアンネットワーク生成処理》
図7は、本発明の実施例における保守知識ベイジアンネットワークの生成処理のフローチャートの例である。この処理は故障原因推定部9によってアセット知識データベース12に格納された保守知識データ15を使用して実行される。
【0031】
図6は、本発明の実施例における保守知識ベイジアンネットワークの例である。この保守知識ベイジアンネットワークはアラーム、機能故障、故障モード、チェック項目の4階層構造のベイジアンネットワークであり、矢印は因果関係を示す。
【0032】
矢印の元が親ノードであり原因を示す。矢印の先は子ノードであり結果を示す。保守知識ベイジアンネットワーク生成処理フローは以下のようになる。
【0033】
まず、アセット知識データベースから保守知識データ15を取得する(S11)。次に、保守知識データ15の各セルからベイジアンネットのノードを作成する(S12)。このとき、同じ内容のセルは1つのノードとして生成する。
【0034】
そして、各ノードを保守知識データ15に記載した因果関係に従って親子関係のリンクを張る(S13)。
【0035】
リンクは各ノードを保守知識データ15に記載した因果関係に従って親子関係のリンクを張る。具体的には、
「故障モード」→「機能故障」、「故障モード」→「チェック項目」、「機能故障」→「アラーム」のような因果関係(親子関係)となり矢印を設定する。
【0036】
設定された矢印に故障確率16の確率を事前確率として設定する(S14)。次に、親ノード異常時子ノード異常確率17と、親ノード正常時子ノード異常確率18を用いて親子関係を示す矢印に事後確率を設定する(S15)。
【0037】
図8は本発明の実施例における故障原因推定処理のフローチャートの例である。入力部経由で保全員やユーザから故障の症状の情報を受付ける(S21)。
図16に示すような入力画面を用いて、保全員や設備のユーザから提供された設備の故障の情報に従って、チェック項目に「異常」または「正常」を入力する。
【0038】
「異常」は発生していることを意味し、「正常」は発生していないことを意味する。発生しているかどうかが不明の場合は入力しない。例えば、「オイルが漏れる」という情報があった場合にはチェック項目「オイルが漏れる」に「異常」を入れる。その他のチェック項目に入力しない。
【0039】
入力された情報を基に保守知識ベイジアンネットワークを生成する(S22)。保守知識ベイジアンネットを用いて各故障モードの発生確率を計算し、対応方法判定部8に推定結果を出力する。故障原因推定結果は
図10のようになる。各故障モード92に対応した発生確率93が計算される。
【0040】
次に、出張・遠隔対応方式の決定支援処理について説明する。
【0041】
図10は本発明の実施例における故障原因対応方法テーブルの例である。故障原因101と故障の対応方法102が格納されている。
【0042】
図11は本発明の実施例における出張費用テーブルの例である。設備を所有している顧客103、設備が設置されている場所への往復移動時間104、移動のための交通費105を対応付けて格納している。
【0043】
図12は本発明の実施例における対応方法データの例である。故障モード107毎に出張で対応しなければならない故障か、遠隔で対応できる故障かを示す対応方式108、当該故障モードである可能性を示す確率109を対応付けて格納している。
【0044】
図13は本発明の実施例における出張対応データの例である。
図12のデータから対応方法が出張のものだけを集めたテーブルである。
【0045】
図14は本発明の実施例における遠隔対応データの例である。
図12のデータから対応方法が遠隔のものだけを集めたテーブルである。
【0046】
図15でこれらのテーブルを用いてコストパフォーマンスの高い対応方法を提案する本発明の実施例における出張・遠隔対応方式の決定支援処理のフローチャートの例を説明する。
【0047】
保全員端末5から入力された故障モード対応方法データベースの故障原因対応方法、ユーザ情報を入出力部10経由で受付ける。このとき、金銭的コストと時間的コストのどちらを重要視するかを示す重みづけ情報を受け取っても良い。受け取ったユーザ情報を基にベイジアンネットワークを用いて得られた故障原因推定結果を得る(S31)。
【0048】
各々の故障原因に基づいて故障原因対応TBL13を参照し対応方法を決定し、対応方法と推定された故障原因の確率を対応付けた対応方法判定情報91を作成する(S32)。
【0049】
対応方法判定情報91の各々の故障モード107について、対応方法108が遠隔の故障と出張の故障に分ける(S33)。
【0050】
コスト見積部19は、対応方法が遠隔の故障について金銭的コストM遠隔を求める(S34)。対応方法が遠隔の故障について各々の時間コストT遠隔を求める(S35)。
【0051】
S34で行うM遠隔の計算処理は
図15aに示す。まずM遠隔、Mkjを0にし、初期化をする(S001)。遠隔対応データの行数kを受け取り、この処理をk回繰り返す。
図14に示す毎行の故障モードの確率を「P遠隔k」とする(S002)。毎回処理S002を行う時に、出張対応データの行数jを受け取り、処理を循環する。
図13に示す毎行の故障モードの確率を「P出張j」とし、下記の式(1)に従って金銭的コストを計算する(S003)。
【0052】
T交通は
図11に示す交通時間、M交通は交通費である。M人件費は保守作業を行う保全員の毎時間の人件費である。
【0053】
Mkj= P出張j×(1-P遠隔k)×(T交通×M人件費・H+M交通費) (1)
毎回処理S003を行う時にMkjをM遠隔に加算する(S004)。k×j回S003の処理を行い、M遠隔を得る(S005)。
【0054】
S35行うT遠隔の計算処理は
図15bに示す。まずT遠隔、Tkjを0にし、初期化をする(S011)。遠隔対応データの行数kを受け取り、この処理をk回繰り返す。
図14に示す毎行の故障モードの確率を「P遠隔k」とする(S012)。毎回処理S002を行う時に、出張対応データの行数jを受け取り、処理を繰り返す。
図13に示す毎行の故障モードの確率を「P出張j」とし、下記の式(1)に従って時間的コストを計算する(S013)。
【0055】
Tkj=P出張j×(1-P遠隔k)×T交通 (2)
毎回処理S003を行う時にTkjをT遠隔に加算する(S014)。k×j回S003の処理を行い、M遠隔を得る(S015)。
【0056】
重みづけ情報に基づいて金銭的コストと時間的コストの各々の重みを乗じて合算し、遠隔対応のコストであるコスト遠隔を求める(S36)。重みづけ情報は予め定められた重みを設定しても良く、金銭的コストと時間的コストを同じ重みづけとしても良い。
【0057】
次にコスト見積部19は、対応方法が出張の故障につても金銭的コストの合計であるM出張を求め(S37)、時間的コストの合計であるT出張を求める(S38)。同様に重みづけ情報にもとづいたコスト出張を求める(S39)。
【0058】
S36で行うM出張の計算処理を
図15cに示す。まずM出張、Mkjを0にし、初期化をする(S021)。遠隔対応データの行数kを受け取り、この処理をk回繰り返す。
図14に示す毎行の故障モードの確率を「P遠隔k」とする(S022)。毎回処理S022を行う時に、出張対応データの行数jを受け取り、処理を循環する。
図13に示す毎行の故障モードの確率を「P出張j」とし、下記の式(1)に従って金銭的コストを計算する(S023)。
Mkj=P遠隔k×(1-P出張j)×[(T遠隔+T交通)×M人件費・H+M交通費] (3)
毎回処理S023を行う時にMkjをM出張に加算する(S024)。k×j回S023の処理を行い、M出張を得る(S025)。
【0059】
S37行うT出張の計算処理は
図15dに示す。まずT出張、Tkjをにし、初期化をする(S031)。遠隔対応データの行数kを受け取り、この処理をk回繰り返す。
図14に示す毎行の故障モードの確率を「P遠隔k」とする(S032)。毎回処理S032を行う時に、出張対応データの行数jを受け取り、処理を繰り返す。
図13に示す毎行の故障モードの確率を「P出張j」とし、下記の式(1)に従って時間的コストを計算する(S033)。
Tkj=P出張j×(1-P遠隔k)×T交通 (4)
毎回処理S033を行う時にTkjをT出張に加算する(S034)。k×j回S033の処理を行い、T出張を得る(S035)。
【0060】
コスト見積部19は、遠隔対応のコストと出張対応のコストを比較し(S40)、遠隔対応のコストの方が高い場合は出力部が
図17に示す結果表示メッセージ170「出張の対応方法のコストが少ないため、出張を推奨する」のような情報を保全員へ出力し(S41)、出張コストの方が高い場合は出力部が結果表示メッセージ170を「遠隔の対応方法のコストが少ないため、遠隔を推奨する」のような情報を保全員へ出力する(S42)。
【0061】
最後にコスト計算結果172に「M遠隔」、「T遠隔」、「M出張」、「T出張」を出力する(S43)。
【0062】
図17は本発明の実施例における結果表示画面の例である。コスト計算結果172では4つのケースのコストを示す。4つのケースとは、実際に発生した故障モードの対応方式(出張/遠隔)と、保守員の判断で採用した対応方式(出張/遠隔)を合わせた4つのケースである。
【0063】
4つのケースの中には出張対応が必要な故障モードが発生し、保守員が出張対応で対処した場合と、遠隔対応が必要な故障モードが発生し、保守員が遠隔対応で対処した場合の二つは理想的な場合である。理想的な場合は必要以外の費用や時間がかからないことを意味する。
【0064】
例えば、出張対応が必要な故障モードF1が発生し、保守員が症状から判断した対応方法で出張とすると、出張の費用と時間のみがかかることになるため、この場合は理想的な場合である。
【0065】
出張対応が必要な故障モードF1が発生し、保守員が症状から判断した対応方法で遠隔とすると、遠隔対応してなかなか設備が回復せず、出張対応することになり、出張の費用と時間だけでなく遠隔対応の費用もかかってしまうため、この場合は理想的な場合ではない。
【0066】
コスト計算結果172には4つのケースのコスト、理想的な場合よりかかった費用と時間を(1)~(4)に示す。(1)と(4)は理想的なケースであり、理想からの乖離は費用:0円、作業時間:0時間と表示する。
(2)では、理想からの乖離は費用:「M遠隔」円 作業時間:「T遠隔」時間と表示する。
(3)では、理想からの乖離は 費用:「M出張」円 作業時間:「T出張」時間と表示する。「M遠隔」、「T遠隔」、「M出張」、「T出張」は
図15に示したフローチャートより計算された値である。
【符号の説明】
【0067】
1 設備保全システム、2 CPU、3 メモリ、4 外部記憶装置、5 保全員端末、6 保全員、7 重み係数決定部、8 対応方法判定部、9 故障原因推定部、10 入出力部、11 故障モード対応方法データベース、12 アセット知識データベース、13 故障原因対応TBL、14 出張費用TBL、15 保守知識データ、16 故障確率、17 親ノード異常時子ノード異常確率、18 親ノード正常時子ノード異常確率、19 コスト見積部